説明

反応解析方法

【課題】従来の偏光を利用した反応解析装置は、試料支持体上の微小の光学的変化を光量の変化として捉える際に、光量変化の程度が試料支持体の光透過性部分の膜厚、屈折率や入射光の入射角、波長、光量への依存について何ら開示されていない。
【解決手段】生物試料の一部に偏光を入射させる第1の光学素子と、生物試料の一部で反射された反射光のP偏光及びS偏光の偏光面をnπ+π/2(n:0,1…整数)回転させて反射させる第2の光学素子と、からの反射光が第2の試料に入射され、検光子により消光させて生物試料の解析を行う反応解析方法であり、光不透過性層と光透過性層と生物試料に関する反応層とを有し、反応前と反応後に生物試料に関する反応層の層厚が変化する試料支持体を用いて、試料支持体への入射角におけるS偏光反射率が0.25以下で、且つ光透過性層におけるS、P偏光の位相差の正負の反転による光量の変化を検出することにより反応結果を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料支持体上に形成された反応層における正対試料の膜厚の変化を光量の変化として検出する反応解析法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、偏光を利用した反応解析法は物体の表面で光が反射する際の偏光状態の変化を観測して、物体自体の光学定数、または その表面に付着した薄膜の厚みや光学定数を知る方法である。この偏光解析法は、生物物理分野へも応用されるようになり、抗原抗体反応に用いるタンパク質膜の厚さの測定、タンパク質の吸着膜の測定、固液界面における血漿タンパクの測定にも応用されるようになっている。
【0003】
上記抗原抗体反応に用いるタンパク質の厚さを測定する技術としては、例えば、非特許文献1に開示されている。上記タンパク質の吸着膜の測定に関する技術としては、非特許文献2および非特許文献3に開示されている。また、固液界面における血漿タンパクの測定に関する技術としては、非特許文献4に開示されている技術が知られている。
【0004】
ここで、偏光解析法について説明する。屈折率m の基板の上にp−1層の多層膜が付けてある場合その上の屈折率m の媒質から光が入射した場合の反射光の振幅反射率を振幅反射率=rP,0 として、このm の媒質の厚さをd とし、その上にさらにmP+1 の媒質を重ねて上方から光を入射させた時に、振幅反射率=rP+1,0 の反射光になるとすれば、
【数1】

【0005】
で表される。ここで、屈折率m は複素屈折率で表され、
【数2】

【0006】
ρP+1,P はp+1層とp層界面での振幅反射率でrP,0 は、
【数3】

【0007】
で表されるので多層膜の反射率は順次階層的に値を代入して最終の反射率を求めることができる。S偏光、P偏光成分の反射率はρP+1,P の項に各々S偏光の振幅反射率、P偏光の振幅反射率を適用することにより求まる。例えば、
【数4】

【0008】
偏光解析装置では試料によって反射されたS、P成分の偏光反射率比が測定され、S偏光の振幅反射率をASS、P偏光の振幅反射率をASPとすると、
【数5】

【0009】
で与えられ、tanφ(振幅反射率比)とΔ(位相差)を上記の計算式に当てはめることにより屈折率、膜厚を求めている。
【0010】
また、偏光解析を行なう場合、従来より種々の方法があるが、例えば図15に示された偏光解析装置が用いられている。この装置はFaraday cellを用いたKingの光電的偏光解析装置であり、入射角固定の測定法の配置状態を示している。この装置は偏光子および検光子がステッピングモータ等で±0.002°に相当する精度で回転することができ、さらにファラディー効果により偏光状態に変調を加えて消光位置が探し易い機構になっている。
【0011】
このように図15に示した偏光解析装置を用いて消光条件を求めることにより、試料表面に付着した薄膜の厚みや光学定数を知ることができる。しかしながら、このような装置では、Faraday cellを備えなければならない、あるいは偏光子、検光子の両方を精度良く回転させる機構を備える必要がある等、簡便性にかけるのが欠点であった。また、多層膜構造において最上層の膜の微小の光学的変化を精度良く求めるのが困難であった。
【0012】
一方、偏光解析装置を抗原抗体反応などの分析装置として用いる場合には屈折率、膜厚などを測定することよりも抗原抗体反応の反応性が感度良く検出できれば良い。この目的のためには反応前の試料支持体を偏光解析装置に置いて消光させ、次に偏光子、検光子などの位置を固定したままで反応後の試料支持体を設置して光量の変化を測定し、抗原抗体反応を検出することができる。
【0013】
この方法を応用して免疫支持体上の抗体、および抗原による膜厚の変化を偏光解析法で測定するに当り、本出願人は、小型で簡便な光学系を備えた偏光解析装置およびこの光学系に適した試料支持体の構造を特許文献1および特許文献2において提案した。
【特許文献1】特開平5−203564号公報
【特許文献2】特開平5−203565号公報
【非特許文献1】A.Rothen and C.Mathot.Helvetica Chimica Acta,Vol.54(1971), ImmunologicalReactions Carried out at a Liquid-solid Interface
【非特許文献2】ULF Joensson,M.Malmqvist,Inger Roenberg,Jounalof Colloid and Interface Science,Vol.103,No.2(1985),Adsorption of Immunoglobulin G,Protein A and Fibronectin in the Submonolayer Regions Evaluated by a Combined Study of Ellipsometry and Radiotracer Techniqs
【非特許文献3】A.Rothen and C.Mathot.Surface Chemistry of Biologicalsystems (1970),IMMUNOLOGICAL REACTIONS CARRIED OUTAT A LIQIUID-SOLID INTERFACE WITHTHE HELP OF A WEAK ELECTRIC CURRENT
【非特許文献4】L.Vroman and A.L.Adams,SURFACESCIENCE 16(1969) FINDINGS WITH THERECORDING ELLIPSOMETER SUGGESTINGRAPID EXCHANGE OF SPECIFIC PLASMAPROTEINS AT LIQUID/SOLID INTERFACES
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし前述した特許文献1および特許文献2においては、提案した装置や従来の偏光解析装置を用いて試料支持体上の微小の光学的変化を光量の変化としてとらえる際に、その光量の変化の程度が試料支持体の光透過性部分の膜厚、屈折率や入射光の入射角、波長、光量に依存しているが、それ等についての何ら記載されていなかった。
【0015】
そこで本発明は、生物試料によって形成された多層膜構造上の微小な膜厚の変化による光量の変化を生物試料の反応結果として検出する偏光を利用した反応解析法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記目的を達成するために、生物試料の一部に偏光を入射させる第1の光学素子と、前記生物試料の前記一部で反射された反射光のP偏光及びS偏光の偏光面をnπ+π/2(n:0,1,2,…整数)回転させて反射させる第2の光学素子と、からの反射光が第2の試料に入射され、前記検光子により消光させることにより前記生物試料の解析を行う反応解析方法であって、光不透過性層と光透過性層と前記生物試料に関する反応層とを有し、反応前と反応後に前記生物試料に関する反応層の層厚が変化する試料支持体を用いて、前記試料支持体への入射角におけるS偏光反射率が0.25以下で、且つ前記光透過性層におけるS、P偏光の位相差に基づき光量の変化を検出することにより、前記反応結果を得る生物試料の反応解析方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、生物試料によって形成された多層膜構造上の微小な膜厚の変化による光量の変化を生物試料の反応結果として検出する反応解析法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、試料に入射する楕円偏光を
【数6】

【0019】
で表わし、レファレンス試料で反射した後、消光操作によりS成分の振幅がA、P成分の振幅がA tanφ の直線偏光になるものとし、両成分の振幅反射率をArs,Arp,位相差をΔ とすれば、
【数7】

【0020】
従って、
【数8】

【0021】
次いで、2つ目の測定試料の振幅反射率をASS,ASP,位相差をΔ とすると測定試料で反射した後の楕円偏光は以下のようになる。
【数9】

【0022】
従って、検出する反射光量I は、
【数10】

【0023】
となる。
【0024】
a.最適な装置設定を想定した場合、また、式(1)においてA sin φ は装置の設定に関わる量で、
【数11】

【0025】
ps +Aop =1より、A0 を消去し、微分により最適条件を求めると、
【数12】

【0026】
(1)式に代入してその値を式(4)(5)(8)に導入し、図3,図4,図5を得た。多層膜の反射率を求める際に用いた条件を以下に示す。従って、
【数13】

【0027】
【表1】

【0028】
入射波長 6700Åいずれの場合も入射角70°でSiO 膜厚4100Å、入射角65°でSiO 膜厚4000Å、入射角60°でSiO 膜厚3900Å、入射角50°でSiO 膜厚3700Å付近で最大の反射光量を与えることがわかる。また、それらの膜厚近傍でのS偏光反射率、P偏光反射率、偏光反射率比、位相差を図6,図7,図8,図9に示す。これ等の結果を見るとP偏光反射率はほとんど変化がないが、S偏光反射率は最大の反射光量を与えるSiO 膜厚で反射率が最小となることがわかる。
【0029】
従って、その時偏光反射率比|Ap/As|は最大値を示す。一方、位相差もそれらの膜厚付近で大きく変化することがわかる。すなわち、最大の反射光量はS偏光反射率が最小で偏光反射率比が最大、そして位相差も大きく変化するような試料および装置設定により得られることがわかる。また、最適な装置設定を行なった場合にはλ/4板を45°に設定した場合に対し約2倍の反射光量が得られることがわかる。解析的な方法およびポアンカレ球を用いて計算した場合の結果はどちらも同じ結果が得られる。
【0030】
なお、理論的には、S偏光反射率は、最小となる膜厚が最適であるが、実際にSiウエハにSiO 膜を形成した場合に、膜厚は目標値に対して5〜10%のばらつきを持っている。従って、図16に示すように例えば、4000Åの膜を形成し、反射率が最低になるようにセンサチップを製作して、使用する場合に反射率を0.25以下であれば、実用上問題がなかった。従って、理論上ではS偏光反射率は最小であるが、実用上はS偏光反射率が0.25以下が好適する反射率であるものとする。
【0031】
次に、前述した第1実施例での計算結果を確認するための実験を行なった。実験は再現性のある任意の膜厚の薄膜が容易に作成できるLB膜を模擬試料として用いた。図10に示すように所定の膜厚のSiO膜にLB膜をステップ状に順次積層し、SiO膜のみのところで消光した後、種々の膜厚のLB膜を累積した位置での反射光量を測定し、計算結果と比較した。実験装置はλ/4板を45°の位置にセットしたものを用いたので計算式は(5)式または(8)式が使用可能であるが今回は(5)式を用いた。
a.確認実験のための計算計算結果を装置の出力に対応させるため光源の出力、受光素子の光電変換効率を以下のように付加した。
【数14】

【0032】
この式が最大の光量を与える装置設定を想定した場合の光量となる。
b.λ/4板を45度に設定した場合この設定は従来の偏光を利用した反応解析装置(以下、偏光解析装置と称する)に最も多く適用されている。
【数15】

【0033】
となるのでこれを(2)式に代入すると、
【数16】

【0034】
従って、
【数17】

【0035】
c.ポアンカレ球を用いた解析 図1を参照して順を追って偏光の状態を記述すると、(1)P(ポーラライザ)で偏光された光が入射面に対し、45°の角度で設置されたλ/4板を通過するとその光は45°の直線偏光を含む大円上に位置する(L )。
【0036】
(2)レファレンス試料をセットし、消光調整を行なうとレファレンス試料反射後の光は直線偏光になる(R)。この時の両成分の振幅反射率をArs,Arp及び位相差をΔとする。
【数18】

【0037】
この時アナライザはRの対心点Aに位置する。
(3)配置を固定したままで測定試料を測定した時の反射光をSとし、かつ両成分の振幅反射率をAss,Asp及び位相差をΔ とする。
【数19】

【0038】
このときAの位置で観測される相対光量Iは円弧RSの長さをcとすると、
【数20】

【0039】
球面上の3角形DSRに注目すると、
【数21】

【0040】
球面3角形の余弦定理、
【数22】

【0041】
より、
【数23】

【0042】
故に、
【数24】

【0043】
入射光量を1とすると全反射光量Iは、
【数25】

【0044】
従って、アナライザAの位置で観測される反射光量は以下の式で表される。
【数26】

【0045】
また、式(5)と(8)は等価のはずである。ここで、レファレンス試料、測定試料としては、図2に示すような、半導体基板1上にシリコン酸化膜(SiO)2、シラン膜3、抗原抗体反応層4からなる多層構造を想定した。反射光量の算出はある膜厚のSiO をレファレンス試料とし、そこから膜厚が200Å増加したものを測定試料としてその時の反射光量を前述の式を用いて計算した。これを順次200Åずつずらせてレファレンス試料、測定試料としてSiOの膜厚に対する反射光量の変化を得た。
【0046】
また計算に用いた偏光反射率、位相差は先の従来技術で述べた多層膜の反射率式から求めた。出力(P)はI (LD出力)が偏光プリズム通過後1/2に減少し、それがサンプルへの入射光となり反射光(I )は受光素子の光電変換効率(S)で電気信号に変換されアンプ(増幅率10 倍)で増幅される。従って、
【数27】

【0047】
演算条件を以下に示す。
【表2】

【0048】
結果を図11に示す。
b.サンプルの作製および測定上に示した4種のSiO 膜厚のSiウェハーを10×76mmの大きさに切断し、その上にLB膜を10mm間隔のステップ状に累積した。LB膜材料及び累積条件を下表に示す。
【表3】

【0049】
作製したサンプルを上述したような装置にセットし、自動的に10mmずつ移動させながら反射光量を測定した。測定は始めにLB膜の累積されていないSiO 膜の部分でポーラライザー(P)とアナライザー(A)を少しずつ回転させ消光位置を求める。次いでPとAの位置は固定したまま測定点にLB膜を累積した部分を移動させ各々の膜厚における反射光量を測定した。
【0050】
測定結果を図12に示す。1枚のSiウェハー上でもSiO 膜厚は数十Åのバラツキがあることや受光素子に10mm角のフォトダイオードを用いているが実際の受光スポットは1mmφ程度であるため素子のリニアリティが悪くなっていること、およびグラントムソンプリズムの消光比、λ/4板の透過率も理想状態に仮定していることなどから計算の結果と実測値は完全には一致していない。しかしながら、両者ともSiO 膜4000Åでの結果が最大の反射光量が得られることや相関係数からもわかるように反射光量とLB膜の厚さの両対数が直線関係になることから計算による予測が実測定を反映することがわかる。
【0051】
次に第3実施例について説明する。装置構成は前述したものと異なり、特許文献1及び特許文献2において提案した装置についても検討した。この装置は図13に示すようにレファレンス試料で反射した光の偏光面(XおよびY)がλ/4板またはプリズムを用いてπ/2回転して測定試料に入射するようになっている。前述した第1実施例と同様に計算式をたてると以下のようになる。
【数28】

【0052】
rs:レファレンス試料のS偏光反射率Arp:レファレンス試料のP偏光反射率ASS:測定試料のS偏光反射率Asp:測定試料のP偏光反射率Δ :レファレンス試料のS、P偏光の位相差から測定試料のS、P偏光の位相差を引いた値φ:入射直線偏光のレファレンス試料のS軸に対しての傾きこの式からもわかるようにφはπ/4の時すなわち45度の装置設定のとき値が最大になる。
【0053】
前述した第1実施例で用いた偏光反射率および位相差を用いて計算を行なった。その結果を図14に示す。これは第1実施例で得られた結果と同様に、入射角70°でSiO 膜厚4100Å、入射角65°でSiO 膜厚4000Å、入射角60°でSiO 膜厚3900Å、入射角50°でSiO 膜厚3700Å付近で最大の反射光量を与えることがわかる。
【0054】
それらの膜厚近傍でのS偏光反射率、P偏光反射率、偏光反射率比、位相差を図6,7,8及び9に示す。これ等の結果を見るとP偏光反射率はほとんど変化がないが、S偏光反射率は最大の反射光量を与えるSiO 膜厚で反射率が最小となることがわかる。従って、その時偏光反射率比|Ap/As|は最大値を示す。一方、位相差もそれらの膜厚付近で大きく変化することがわかる。すなわち、最大の反射光量はS偏光反射率が最小で偏光反射率比が最大、そして位相差も大きく変化するような試料および装置設定により得られることがわかる。
【0055】
なお、説明した実施例においては、レファレンス試料、測定試料を光不透過性の反射基板としてシリコン基板、光透過性の透明薄膜としてSiO 膜、シラン膜、抗原抗体反応をおこさせるためのタンパク膜や模擬試料としてSiO 膜上にLB膜を累積したものを用いたが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本発明の実施例の計算に適用できる材料は、例えば光不透過性の反射基板としては金、銀、アルミ等の金属やシリコン等の半導体など、光透過性の透明薄膜としてSiO の替わりに酸化アルミ、酸化チタン、酸化タンタル等の単層または複合膜、シラン膜の替わりにチタネート、チオールなどの有機薄膜の単層または複合膜、さらに抗原抗体反応をおこさせるためのタンパク膜も反応層として抗原、抗体、レセプターなどの受容体が単独またはデキストラン、セルロース等との混合体を使用すれば、液,尿等の検液中の抗原、抗体等の特異的検出にも使用可能である。
【0057】
また、これらの試料は多層膜を構成しているが、機能性デキストラン、セルロース等との混合体を用いることによりシラン膜等の有機薄膜を省略することも可能である。
【0058】
尚、末端にアミノ基、カルボキシル基、ビニル基、エポキシ基、チオール基、アリール基などを有するシラン膜の多層膜とし厚膜化することにより、SiO膜を薄膜化したり、省略することも可能である。
【0059】
本発明による計算結果を基にSiO 膜の厚さを1100Åから4000Åに変更し、入射角60度で測定を行なったところ約10倍の測定感度を得ることができた。
【0060】
以上のような構成の偏光解析装置における試料支持体及びその支持方法において、シミュレーションにより最適な測定条件を求め、さらにLB(Langmuir-Blodgett)法により試料支持体上にLB膜を形成し、標準試料を作成して確認を行なう。シミュレーションは始めに標準的な偏光解析装置の配置において行なう。標準的な偏光解析装置の配置は以下の配置とした。
【0061】
光源 → P → C → S → AP:ポーラライザ、C:コンペンセータ、S:試料、A:アナライザ試料は2つ用意し、1つはレファレンス試料とし、この試料を用いて消光させ、2つ目の測定試料で光量を測定することとする。従って、1つ目のレファレンス試料を反応前の試料、2つ目の試料を反応後の試料に対応させている。また、装置の条件は理想状態と仮定する。
【0062】
次いで、その結果を実験により確認するために所定の膜厚のSiO 膜にLB膜をステップ状に順次積層し、SiO 膜のみのところで消光した後、種々の膜厚のLB膜を累積した位置での反射光量を測定する。さらに、このシミュレーションを特許文献1及び特許文献2において提案した装置に適用する。
【0063】
以上詳述したように本発明によれば、免疫支持体上の抗体、および抗原によって形成された多層膜構造上の微小な膜厚の変化を偏光解析法で光量の変化として測定するに当り、測定の最適条件が得られる偏光解析装置における試料支持方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の試料支持方法を説明するための試料の設定による偏光の状態を示す図である。
【図2】本実施例の説明に用いる測定試料の構成例を示す図である。
【図3】装置設定を最適とした場合のSiO−200Å変化に対する反射光量を示す図である。
【図4】λ/4板を45°にした場合のSiO−200Å変化に対する反射光量を示す図である。
【図5】λ/4板を45°にした場合のポアンカレ球からのSiO−200Å変化に対する反射光量を示す図である。
【図6】本実施例において、膜厚近傍でのS偏光反射率くS成分反射率)を示す図である。
【図7】本実施例において、膜厚近傍でのP偏光反射率(P成分反射率)を示す図である。
【図8】本実施例において、膜厚近傍での偏光反射率比を示す図である。
【図9】本実施例において、膜厚近傍での位相差を示す図である。
【図10】反射光量測定をするための測定試料の構成例を示す図である。
【図11】図2に示す測定試料を用いて行った測定に基づく演算結果(反射率計算値〉を示す図である。
【図12】図10に示す測定試料を用いて行った測定に基づく測定結果(反射率実測値)を示す図である。
【図13】第2番目に示した装置構成例において測定試料に入射する反射光の状態を示す図である。
【図14】第1実施例で用いた偏光反射率および位相差を用いて、第2番目に示した装置構成例において算出した反射率を示す図である。
【図15】従来の偏光解析装置の概略的な構成を示す図である.
【図16】本実施例におけるS成分反射率において、SiO膜厚に対する反射率の特性を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1…半導体基板、2…シリコン酸化膜(SiO)、3…シラン膜、4…抗原抗体反応層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物試料の一部に偏光を入射させる第1の光学素子と、前記生物試料の前記一部で反射された反射光のP偏光及びS偏光の偏光面をnπ+π/2(n:0,1,2,…整数)回転させて反射させる第2の光学素子と、からの反射光が第2の試料に入射され、前記検光子により消光させることにより前記生物試料の解析を行う反応解析方法であって、
光不透過性層と光透過性層と前記生物試料に関する反応層とを有し、反応前と反応後に前記生物試料に関する反応層の層厚が変化する試料支持体を用いて、
前記試料支持体への入射角におけるS偏光反射率が0.25以下で、且つ前記光透過性層におけるS、P偏光の位相差に基づき光量の変化を検出することにより、前記反応結果を得ることを特徴とする生物試料の反応解析方法。
【請求項2】
前記反応解析方法において、
前記偏光が前記生物試料のS軸に対して50°乃至70°の範囲内で該生物試料に入射することを特徴とする請求項1に記載の反応解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−122405(P2008−122405A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333289(P2007−333289)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【分割の表示】特願平6−166903の分割
【原出願日】平成6年7月19日(1994.7.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】