説明

反転機構

【課題】反転機構に関し、製造工程中で個片の情報搭載媒体を吸引、吸引解除で後工程に移送させる際に介在される反転機構での移送を確実とする。
【解決手段】反転機構11を、回転外輪部12に固定内輪部13を内包させた形態とし、回転外輪部12に情報搭載媒体である個片インレットを長手方向で吸着するための小径のエア孔21を軸方向に多数形成させて円周上で多列形成させ、固定内輪部13に個片インレットを負圧エアで吸着する負圧領域32及び個片インレットを正圧エアで吸着解除する正圧領域34を仕切壁33を介在させて形成し、当該仕切壁33の回転外輪部12の内周面との当接先端部分に負圧領域32と正圧領域34とを共存させた波状先端部33Bを形成させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個片の情報搭載媒体を前工程から後工程に反転させて移送する反転機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、ICモジュールとアンテナを備えて非接触でデータ授受可能なRFIDメディアが安価となってICカードの他にラベルとして使用されることも一般化してきており、用途に応じて種々の大きさのものがある。このようなRFIDをラベルとして多数貼付したシートとして出荷する際に、基本的にはラベルが総て良品であることが必要であり、製造工程中で特に良品のみを貼付機構に移送させる際に介在される反転機構での移送を確実とすることが望まれる。
【0003】
従来、例えば、RFIDラベルシート製造装置として、例えば特許文献1,2に開示されているものがある。特許文献1,2は、インレットを個片に断裁し、個々をバキューム部等の貼付機構で接着剤が塗布されている台紙(剥離紙)上に順次貼付してラベルとする装置として開示されている。
【0004】
そこで、上記のような製造装置上で、個々に読み取り検査を行い、良品のインレットのみを台紙上に貼着機構により貼着するために反転機構を介して移送する製造装置に適用した場合として、図6及び図7を示して説明する。図6は従来のRFIDラベルシート製造装置の概略構成図であり、図7は図6における反転機構の個片インレットの保持回転移送動作の説明図である。
【0005】
図6(A)において、RFIDラベルシート製造装置111は、インレットロール112から例えば送りローラ113A,113Bにより搬送される。このインレットロール112は、図6(B)に示すように、RFIDであるインレット141が例えば1列の所定間隔で形成されたものである。このインレット141が読み取り検査で良品とされたもののみが個片に断裁されて個片インレットとして台紙への貼着対象となる。
【0006】
上記送りローラ113A,113B間にRFID読取検査部114が配置され、インレットロール112上の各インレット141に対して読み取り検査を行って良品か不良品かの判定を行い、判定結果を制御部117に送出する。インレットロール112は、検査後にインレット断裁部115に送り込まれる。インレット断裁部115は、インレット断裁上刃121とインレット断裁下刃122とにより構成され、回転断裁によって図6(B)の個片インレット143とさせる。当該インレット断裁下刃122は個片インレット143を個々に吸引保持する機構である。
【0007】
断裁後の個片インレット143は、該当のインレット141が良品であるか、不良品であるかの情報に基づいて制御部117がインレット断裁下刃122の吸引が制御され、良品の個片インレットのみが吸引保持され、不良品と判定されたインレット141の場合には吸引保持されずに不良インレット回収部123に回収させる。インレット断裁下刃122に吸引保持された個片インレット143は、当該インレット断裁下刃122の回転でインレット貼付部116の反転機構131に渡される。当該反転機構131は個片インレット143を吸引保持し、回転搬送によりインレット貼付部116のラベル貼付機構132に供給する。
【0008】
上記反転機構131は、図6(C)、(D)に示すように、カップ状の回転外輪部151と、これに内包される固定内輪部171とにより構成される。回転外輪部151は、軸方向に小径のエア孔161が多数形成され、円周上で多列形成され、図示しない回転軸と連結されて回転自在のものである。
【0009】
また、固定内輪部171は、上記回転外輪部151を回転させる回転軸を貫通させる貫通穴が形成された筒状のもので、内輪胴部171に、内輪負圧領域172と内輪正圧領域174とが仕切壁173を挟んで切り欠きにより形成されたものである。当該内輪負圧領域172は、上記インレット断裁下刃122から受け渡される位置に配置される。当該内輪正圧領域174は、上記ラベル貼付機構132に受け渡す位置に配置される。
【0010】
そして、固定内輪部171の一方の側端部に、内輪負圧領域172に連通する負圧ダクト穴175A,175Bが形成されて図6(A)のエア制御駆動部119からのダクトと接続されると共に、内輪正圧領域174と連通する正圧ダクト穴176が形成されてエア制御駆動部119からのダクトと接続されるものである。
【0011】
上記のような反転機構131は、図7(A)、(B)に示すように、インレット断裁下刃122から供給される良品の個片インレット143が、固定内輪部171の内輪負圧領域172の位置で回転している回転外輪部151の1列のエア孔161により負圧状態で吸着され、当該吸着した個片インレット143を回転させて固定内輪部171の内輪正圧領域174に達したときに正圧状態でラベル貼付機構132に受け渡すことで移送するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−044268号公報
【特許文献2】特開2005−044270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、回転外輪部151の1列のエア孔161で吸着した個片インレット143が、回転で内輪負圧領域172と内輪正圧領域174とを仕切っている仕切壁173の位置に達したとき、当該個片インレット143を吸着している負圧状態が解除されることとなり、ラベル貼付機構132への受け渡し位置に達する以前に落下する場合があるという問題がある。これは、個片インレット143は仕切壁173に達しても吸着状態を維持される場合が多いが、個片インレット143の重さや傾きなどで吸着状態が不十分な場合など、吸着状態が維持されないこともあり、大量に処理する場合に1個でもこのような落下するものがあると台紙120への貼着の抜けやバラツキを生じて補充などの不要な工程を要することとなるからである。
【0014】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、製造工程中で個片の情報搭載媒体を吸引、吸引解除で後工程に移送させる際に介在される反転機構での移送を確実とするRFIDラベルシート製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、個片の情報搭載媒体を、前工程から吸引して受け取り、その後吸引解除して後工程に受け渡す反転機構であって、前記情報搭載媒体を長手方向で吸着するための小径のエア孔が軸方向に多数形成されて円周上で多列形成され、回転軸と連結されて回転自在な回転外輪部と、前記回転外輪部に固定状態で内包されるもので、前記前工程から移送される情報搭載媒体を負圧エアで吸着する位置に対応して切り欠かれた負圧領域が形成されると共に、前記情報搭載媒体を正圧エアで吸着解除して移送する位置に対応して切り欠かれた正圧領域が当該負圧領域と仕切壁を介在して形成され、当該仕切壁の前記回転外輪部の内周面との当接先端部分に負圧領域と正圧領域とを共存させた波状先端部を形成させた固定内輪部と、を有する構成とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、反転機構を、回転外輪部に固定内輪部を内包させた形態とし、回転外輪部に情報搭載媒体を長手方向で吸着するための小径のエア孔を軸方向に多数形成させて円周上で多列形成させ、固定内輪部に情報搭載媒体を負圧エアで吸着する負圧領域及び情報搭載媒体を正圧エアで吸着解除する正圧領域を、仕切壁を介在させて形成し、当該仕切壁の回転外輪部の内周面との当接先端部分に負圧領域と正圧領域とを共存させた波状先端部を形成させる構成とすることにより、固定内輪部の負圧領域で回転外輪部のエア孔によって吸着された情報搭載媒体が仕切壁に達したときに波状先端部で正圧状態が存在するものであっても負圧状態が存在することで吸着状態が解除されることがなく、製造工程中で個片の情報搭載媒体を吸引、吸引解除で後工程に移送させる際に介在される反転機構での移送を確実とさせることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るRFIDラベルシート製造装置の一部を構成する反転機構の概略構成図である。
【図2】図1の反転機構における個片インレットの保持回転移送の概略図である。
【図3】図2の反転機構における個片インレットの保持回転移送動作の説明図(1)である。
【図4】図2の反転機構における個片インレットの保持回転移送動作の説明図(2)である。
【図5】図1の反転機構における仕切壁先端部の他の形状の説明図である。
【図6】従来のRFIDラベルシート製造装置の概略構成図である。
【図7】図6における反転機構の個片インレットの保持回転移送動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図により説明する。本実施形態は、個片の情報搭載媒体を後にRFIDラベルとなる個片インレットとし、図6(A)に示すRFIDラベル製造装置に適用した場合として、図6(B)に示したインレット141が読み取り検査され、インレット断裁部115で個片インレット143に断裁されて良品のみが移送されてくる反転機構について説明する。この場合、インレットシートはインレット141が1列で形成された場合に限らず、多列形成されている場合にも適用でき、これに応じたRFID読取検査部、インレット断裁部、反転機構及びラベル貼付機構が用意されるものである。また、情報搭載媒体として、個片インレットであることに限らず、例えばバーコードや多次元コードが形成された個片体若しくは個片シートを製造する場合においても適用することができるものである。なお、本実施形態における図示は、説明を容易とするために実際寸法を無視して示している。
【0019】
図1に、本発明に係るRFIDラベルシート製造装置の一部を構成する反転機構の概略構成図を示す。ここで、反転機構は、図6(A)に示す個片の情報搭載媒体である個片インレットを、前工程であるインレット断裁部から吸引して受け取り、その後吸引解除して後工程であるラベル貼付機構に受け渡すものとして、その基本的構成は図6(C)と同様である。図1(A)において、カップ状の回転外輪部12(図6(C)の151に相当)と、これに内包される固定内輪部13(図6(C)の152に相当)とにより構成される。回転外輪部12は、個片インレットを長手方向で吸着するための小径のエア孔21(図6(C)の161に相当)が軸方向に多数形成され、これが円周上で多列形成されるもので、図示しない回転軸と連結されて回転自在のものである。
【0020】
また、固定内輪部13は、上記回転外輪部12を回転させる回転軸を貫通させる貫通穴が形成された筒状のもので、内輪胴部31に、内輪負圧領域32と内輪正圧領域34とが仕切壁33を介在させて切り欠きにより形成されたものである。当該内輪負圧領域32は、断裁機構であるインレット断裁部(図6(A)の115)から移送される個片インレットを負圧エアで吸着する位置(図6(A)のインレット断裁下刃122から受け渡される位置)に対応して形成される。当該内輪正圧領域174は、ラベル貼付機構(図6(A)の132)に吸着された個片インレットを正圧エアで吸着解除して移送する位置(ラベル貼付機構132に受け渡す位置)に対応して形成される。
【0021】
上記仕切壁33は、図1(B)に示すように、回転外輪部12の内周面との当接先端部分に負圧領域32と正圧領域34とを共存させた正弦波状の波状先端部33Bを形成させたものである。波状先端部33の形状としては、同図の正弦波状の他に、図5で説明する矩形波状、ジクザク状などがある。
【0022】
また、固定内輪部13の一方の側端部に、内輪負圧領域32に連通する負圧ダクト穴35A,35Bが形成されて図6(A)のエア制御駆動部119からのダクトと接続されると共に、内輪正圧領域34と連通する正圧ダクト穴36が形成されてエア制御駆動部119からのダクトと接続されるものである。
【0023】
上記回転外輪部12に固定内輪部13を内包させた状態が図1(C)に示される。この場合、上記波状先端部33Bの先端面が回転外輪部12の内周面と回転自在に当接される。また、波状先端部33Bと回転外輪部12に形成された各列のエア孔21とは、図1(D)に示すような関係となる。すなわち、波状先端部33Bの正弦波状の山部分と谷部分とにエア孔21が存在される関係となる。換言すれば、エア孔21の径に応じて正弦波状の寸法が設定され、通常、当該エア孔21の直径より大の幅とされる。
【0024】
ここで、図2に、図1の反転機構における個片インレットの保持回転移送の概略図を示す。図2(A)、(B)において、反転機構11は、インレット断裁下刃(図6(A)の122)から供給される良品の個片インレット41(図6(B)の143に相当)は、固定内輪部13の内輪負圧領域32の位置で回転している回転外輪部12の1列のエア孔21により負圧状態で吸着され、当該吸着した個片インレット41を回転させ、固定内輪部13の仕切壁33を通過させて内輪正圧領域34に達したときに正圧状態でラベル貼付機構(図6(A)の132)に受け渡すことで移送するものである。
【0025】
そこで、図3及び図4に、図2の反転機構における個片インレットの保持回転移送動作の説明図を示す。まず、図3(A)に示すように、インレット断裁下刃(図6(A)の122)から移送される良品の個片インレット41(直近のラベル貼付機構への移送対象を個片インレット41Aとする)は、固定内輪部13の内輪負圧領域32の位置で回転している回転外輪部12の1列のエア孔21により負圧状態で吸着されている。図3(B)に示すように、回転外輪部12の回転により吸着された個片インレット41Aは仕切壁33に達しても当該仕切壁33の波状先端部33Bの形状によって固定内輪部13の内輪負圧領域32に存在するうちは吸着されたままである。
【0026】
回転が進むと、図3(C)に示すように、吸着されている個片インレット41Aが仕切壁33の当接先端部33B上における波状部分の略中央部分に達したときには、当該個片インレット41Aを吸着しているエア孔21は、その波状の位置に応じて内輪負圧領域32と内輪正圧領域34とが共存した状態となる。この場合、内輪正圧領域34の正の圧力を内輪負圧領域32の負の圧力以下と設定することで、個片インレット41Aは負圧による吸着状態を維持した状態となる。すなわち、反転移送されている個片インレット41Aは、仕切壁33上に達しても落下することがないものである。
【0027】
そして、図4(A)、(B)に示すように、回転外輪部12の回転が進んで個片インレット41Aを吸着していたエア孔21が固定内輪部13の内輪正圧領域34に達したときに正圧状態で吸着状態が解除され、後工程のラベル貼付機構(図6(A)の132)に受け渡すことで移送するものである。
【0028】
このように、固定内輪部13の負圧領域32で回転外輪部12のエア孔21によって吸着された個片インレット41Aが仕切壁33に達しても波状先端部33Bで正圧状態が存在するものであっても負圧状態が存在することで吸着状態が解除されることがなく、製造工程中で特に良品のみを貼付機構に移送させる際に介在される反転機構での移送を確実とさせることができるものである。また、このような構成とすることにより、個片インレットのサイズ限定にとらわれずに移送を可能とすることができるものである。
【0029】
次に、図5に、図1の反転機構における仕切壁先端部の他の形状の説明図を示す。上記実施形態では、固定内輪部13における仕切壁33の波状先端部33Bを正弦波状とした場合を示したが、図5(A)に示すように矩形波状とし、また図5(B)に示すようにジグザク状としても同様の作用効果を奏することができるものである。共に、回転外輪部12に形成されているエア孔21が、山部分及び谷部分に配置されるような繰り返し状で形成されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の反転機構は、元シートから個片とされた個片インレットなどの情報搭載媒体を反転させて後工程に移送させる製造装置の産業分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
11,111 反転機構
12,151 回転外輪部
13,152 固定内輪部
21,161 エア孔
31,171 内輪胴部
32,172 内輪負圧領域
33,173 仕切壁
33A 仕切基部
33B 波状先端部
34,174 内輪正圧領域
35,175 負圧ダクト穴
36,176 正圧ダクト穴
41,143 個片インレット
141 インレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個片の情報搭載媒体を、前工程から吸引して受け取り、その後吸引解除して後工程に受け渡す反転機構であって、
前記情報搭載媒体を長手方向で吸着するための小径のエア孔が軸方向に多数形成されて円周上で多列形成され、回転軸と連結されて回転自在な回転外輪部と、
前記回転外輪部に固定状態で内包されるもので、前記前工程から移送される情報搭載媒体を負圧エアで吸着する位置に対応して切り欠かれた負圧領域が形成されると共に、前記情報搭載媒体を正圧エアで吸着解除して移送する位置に対応して切り欠かれた正圧領域が当該負圧領域と仕切壁を介在して形成され、当該仕切壁の前記回転外輪部の内周面との当接先端部分に負圧領域と正圧領域とを共存させた波状先端部を形成させた固定内輪部と、
を有することを特徴とする反転機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71817(P2013−71817A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212510(P2011−212510)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】