説明

反転装置および画像形成装置

【課題】反転後の被搬送媒体における搬送方向の先頭を、反転前の被搬送媒体における搬送方向の先頭にする。
【解決手段】記録シートPを、軸線X(+)に沿って搬入部30に搬入し、この記録シートPは、搬入部30と異なった高さ位置(搬入部30よりもZ(+)方向の高い位置)にある排出部40に向けて反転部50で移動される。反転部50は、搬入部30で搬入された記録シートPを、Y(−)軸方向→Z(+)軸方向→Y(+)軸方向に移動させる間に、当該記録シートPを折り返して移動させる。つまり、反転部50は、搬送方向に対して左側の辺を先頭に弧を描いて前記排出部40に反転させて移動させる。
被搬送媒体の表裏を反転させる場合に、反転後の被搬送媒体における搬送方向の先頭を、反転前の被搬送媒体における搬送方向の先頭にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反転装置およびこの反転装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、用紙の表裏に画像を形成することができる画像形成装置は、画像形成部で用紙の表側に画像を形成した後、用紙反転機構を用いて用紙の表裏を反転し、これを再び画像形成部に送って用紙の裏側に画像を形成する。上記用紙反転機構にはいくつか方式があり、そのひとつにスイッチバック方式がある。この方式は、用紙を搬送経路の途中に存在する袋小路へと用紙を搬送経路の上流側から入れた後、下流側から抜き出すことで表裏の反転を行っている(例えば、特許文献1等)。
さらに、他の反転機構としては、搬送方向に対して軸方向が45°をなす反転再給紙ローラを配置し、この反転再給紙ローラを通過させることにより、用紙の向きを90°変えて、表裏を反転させる機構もある(例えば、特許文献2等)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−341596号公報
【特許文献2】特開2000−259064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、被搬送媒体の表裏を反転させる場合に、反転後の被搬送媒体における搬送方向の先頭を、反転前の被搬送媒体における搬送方向の先頭にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載の反転装置の構成は、表面及び裏面を有する被搬送媒体が、当該被搬送媒体の一端側から第1の方向に搬入される搬入部と、前記搬入部に搬入された被搬送媒体を、前記第1の方向に対して前記表面に沿って直交する成分を有する第2の方向に移動させた後、当該直交する成分の反対方向である成分を有する第3の方向に折り返して移動させることにより、前記被搬送媒体の表裏を反転させる反転部と、前記反転部により表裏が反転された被搬送媒体が、当該被搬送媒体の一端側から排出される排出部と、を具備することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の反転装置の構成は、上記反転装置において、前記搬入部および前記排出部は、前記搬入部および前記排出部は、被搬送媒体を受け入れる方向に回転し、被搬送媒体を表裏で挟み込む一対のローラである第1のローラ対と、前記被搬送媒体において、前記受け入れる方向と異なった軸を回転軸として回転し、被搬送媒体を表裏で挟み込む一対のローラである第2のローラ対と、前記各ローラ対をなす一対のローラのうち、一方のローラ、他方のローラ或いは両方のローラを移動させる移動機構であって、被搬送媒体を受け入れる際には、前記第1のローラ対のローラを接近させる一方、前記第2のローラ対のローラを離間させ、被搬送媒体を送り出す際には、前記第1のローラ対のローラを離間させる一方、前記第2のローラ対のローラを接近させる移動機構とを、それぞれ備えることが好ましい。
【0007】
請求項3に記載の反転装置の構成は、上記反転装置において、前記第1のローラ対による被搬送媒体の受け入れ方向の上流側になるほど、前記第2のローラ対に含まれるローラの外周の径が小さくなる部分が設けられていることが好ましい。
【0008】
請求項4に記載の反転装置の構成は、上記反転装置において、前記被搬送媒体を第2のローラ対の各ローラ間に案内する案内部を備えることが好ましい。
【0009】
請求項5に記載の反転装置の構成は、上記反転装置において、前記搬入部および前記排出部はそれぞれ2以上設けられることが好ましい。
【0010】
請求項6に記載の反転装置の構成は、上記反転装置において、各搬入部の搬入口側には、被搬送媒体の搬送を切り換える第1の切換機構を有する第1の分岐路を設け、前記反転部の途中には、被搬送媒体の搬送を切り換える第2の切換機構を有する第2の分岐路を設け、各排出部の排出口側には、排出される被搬送媒体を1つの通路に搬送する合流路を設け、前記被搬送媒体が搬送される前記第1の分岐路から前記合流路までの搬送経路の長さが、いずれの搬送経路であっても等しくすることが好ましい。
【0011】
請求項7に記載の画像形成装置の構成は、供給される被搬送媒体に画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段によって画像が形成された被搬送媒体を、反転させて前記画像形成手段に供給する請求項1〜6のいずれかに記載の反転装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の反転装置によれば、被搬送媒体の表裏を反転させた後の被搬送媒体における搬送方向の先頭を、反転前の被搬送媒体における搬送方向の先頭にすることができる。しかも、本発明のような反転部を備えていない装置に比べて、反転装置が占めるスペースを小さくし、且つ、被搬送媒体の収縮等によるサイズ変化に影響されることなく表裏の印字位置を合わせることができる。
請求項2に記載の反転装置によれば、搬入部或いは排出部では、第2のローラ対が邪魔することなく被搬送媒体を受け容れ、第1のローラ対が邪魔することなく送り出すことができる。
請求項3に記載の反転装置によれば、受け入れ方法の上流側に向けて、ローラの外周の径が小さくなる部分を備えていないローラを有する第2のローラ対に比べて、ローラ間に被搬送媒体を挿入し易くなる。
請求項4に記載の反転装置によれば、案内部を備えていないものに比べて、ローラ間に被搬送媒体を挿入し易くなる。
請求項5に記載の反転装置によれば、搬入部および排出部が1つの場合に比べて、複数の被搬送媒体の受け入れ間隔、送り出す間隔を短くすることができる。
請求項6に記載の反転装置によれば、搬送経路毎にその長さが異なる場合に比べて、被搬送媒体間の間隔を短くでき、被搬送媒体の搬送効率を高めることができる。
請求項7に記載の画像形成装置によれば、反転後の被搬送媒体における搬送方向の先頭を、反転前の被搬送媒体における搬送方向の先頭にしたまま表裏を反転して、その被搬送媒体に、表裏の印字位置ずれなく、画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る反転装置を備えた画像形成装置の構成を示した図である。
【図2】本実施形態による反転装置の構成を模式的に示す図である。
【図3】反転装置の動作を模式的に示す斜視図である。
【図4】反転装置を構成するローラ対の配置を示す斜視図である。
【図5】ローラ対の移動機構を示す図である。
【図6】変形例による反転装置の構成を模式的に示す図である。
【図7】変形例による反転装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<画像形成装置の構成>
(1)全体構成
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の構成を示す図である。この画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、T(透明トナーの各色に対応した像保持体を備えるタンデム型の画像形成装置である。画像形成装置1は、トナー像を像保持体に形成して記録シートに転写する画像形成ユニット10と、記録シートの搬送方向に対して画像形成ユニット10の下流側に配置された定着装置15と、反転装置25と、を具備する。
【0015】
また、予め決められたサイズに裁断された被搬送媒体となる記録シートPは、ローラやガイドによって装置内に設けられる通路を経由する。そして、その通路は、記録シートPが収容されたシート収容部17a,17b,17cから画像形成ユニット10を経由して定着装置15まで至る部分が供給通路21となり、定着装置15からシート排出部18に至る部分が排出通路22となり、排出通路22の途中から分岐して供給通路21に至る部分が再供給通路23となる。
なお、再供給通路23のうち、切換機構24から反転装置25までの通路が、記録シートPを180度反転する湾曲した経路となっているが、搬送方向に対して記録シートPの表裏が反転しているものではない。
【0016】
画像形成ユニット10は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)、T(透明トナー)に対応した画像形成エンジン10C,10M,10Y,10K,10Tを備えている。これらの画像形成エンジン10C,10M,10Y,10K,10Tは、いずれも像保持体である感光体ドラムと、感光体ドラムを決められた帯電電位に一様に帯電させる帯電装置と、各色毎の画像データに応じた光を感光体ドラムに照射して静電潜像を形成する露光装置と、静電潜像に各トナーを供給することで現像を行って感光体ドラムの表面にトナー像を形成する現像装置と、を備えている。
【0017】
画像形成エンジン10C,10M,10Y,10K,10Tによって形成されたトナー像は、複数のロールに掛け渡されて周回移動する中間転写ベルト4に転写(一次転写)される。さらに、このトナー像は、供給通路21に沿って搬送されてくる記録シートに転写(二次転写)される。
一方、排出通路22と再供給通路23とが分岐する場所には、定着装置15を通過した記録シートPを、シート排出部18に搬送するか反転装置25に搬送するかを切り換えるルーバー等からなる切換機構24が設けられている。
また、画像形成装置1は、画像形成ユニット10、定着装置15、切換機構24、反転装置25および通路21,22,23のローラ等を制御して、後述する動作を実行させる制御部(図示略)を備えている。
【0018】
(2)反転装置の構成
図2は反転装置25の模式図であり、図2(a)が正面図、図2(b)が図2(a)中の矢視IIb方向から見た図である。以下の説明において、記録シートPの搬送方向に対する3軸をX軸・Y軸・Z軸とする。図3に示すように、X軸は、記録シートPの反転装置25(搬入部30)への搬入方向となって、上流側がX(−)・下流側がX(+)となる。Y軸は、X軸に対して直交する水平方向となって、排出部40での上流側がY(−)・下流側がY(+)となる。Z軸は、X軸・Y軸と直交して記録シートPの高さ方向となって、上流側がZ(−)・下流側がZ(+)となる。各軸線と画像形成装置1との対応関係は、X軸が横方向、Y軸が奥行き方向、Z軸が高さ方向となる。
【0019】
反転装置25は、搬送された記録シートPを搬入部30に搬入し、この記録シートPは、搬入部30と異なった高さ位置(搬入部30よりもZ軸方向の高い位置)(Z(+))にある排出部40に向けて反転部50で表裏を反転させつつ移動される。反転部50は、図3に示すように、搬入部30で搬入された記録シートPを、搬入方向に対して左側の辺を先頭に弧を描かせて、前記排出部40に移動させる。
つまり、反転部50は、記録シートPを、当該記録シートPの搬入方向(X(+)方向)(第1の方向)に対して表面に沿って直交する成分を有する搬送方向(Y(−)方向)(第2の方向)に移動させた後、当該直交する成分の反対方向である成分を有する(Y(+)方向)(第3の方向)に折り返して移動させる。
【0020】
より具体的な構成を、図4および図5を参照しつつ説明する。図4は、搬入部30,排出部40,反転部50を構成するローラ対の配置を示す図であり、図5は、ローラ対の各ローラ間を移動させて離間・接近させる移動機構を示した図である。
【0021】
図4に示すように、搬入部30は、4つのローラ対からなり、軸線がY軸に平行に配置され、記録シートPを受け入れる方向に回転する第1のローラ対31,32,33と、第1のローラ対31,32,33の一端側の外側で、軸線がX軸に平行に配置され、記録シートPの左の辺を銜えて送り出す方向に回転する第2のローラ対34と、ローラ対31,32,33,34のうち、いずれか一方のローラを移動させて、ローラ間を近接・離間させる移動機構と、を有する。ローラ対31〜34は、X軸・Y軸上に広がる一の平面上に位置して配置される。この搬入部30では、記録シートPの搬入方向CがX(+)軸方向となる。
【0022】
排出部40は、3個のローラ対からなり、軸線がX軸に平行に配置され、記録シートPを受け入れる方向に回転する第1のローラ対41,42と、第1のローラ対41,42の一端側の外側で、軸線がY軸に平行に配置され、記録シートPの左の辺を銜えて送り出す方向に回転する第2のローラ対43と、ローラ対41,42,43のうち、いずれか一方のローラを移動させて、ローラ間を近接・離間させる移動機構と、を有する。ローラ対41〜43は、X軸・Y軸上に広がる他の平面上に配置され、この他の平面は、搬入部30の配置される前記一の平面上よりもZ軸方向に高い位置となる。この排出部40では、記録シートPの排出方向Dが、搬入方向Cと同じX軸(+)方向となる。
【0023】
反転部50は、軸線がX軸に平行に配置され、搬入部30から排出部40に向けて記録シートPを搬送する方向に回転する搬送用ローラ対51とガイド部材52(図2(b)参照)と、を有する。ローラ対51の高さ位置は、搬入部30と排出部40との間に位置する。なお、図4では、図示の関係上、搬送用ローラ対51を1つのみしか描写していないが、実際には、図2(b)に示すように、ガイド部材52に沿って2個以上配置される。この反転部50は、記録シートPをY(−)軸方向→Z(+)軸方向→Y(+)軸方向に移動させる間に、当該記録シートPを折り返して移動させる。
【0024】
ここで、ローラ対および移動機構の構造について、図5を参照しつつ説明する。なお、ローラ対および移動機構の構成は基本的に同じとなるため、搬入部30の第2のローラ対34を例に挙げて説明する。
第2のローラ対34は、駆動ローラ34Aと従動ローラ34Jとを有する。
駆動ローラ34Aは、軸線がY軸方向に沿って配置される駆動軸34Bと、この駆動軸34Bに設けられ、軸方向に離間した2個の駆動ロール34C,34Cとを有する。駆動軸34Bの一端は、駆動源に歯車列(いずれも図示せず)等を介して機械的に接続されており、駆動源の回転によって回転駆動される。
【0025】
従動ローラ34Jは、駆動軸34Bと平行に配置され高さ方向(Z軸方向)に離間して配置される従動軸34Kと、この従動軸34Kに設けられ、軸方向に離間し、駆動ロール34C,34Cに接触する従動ロール34L,34Lとを有する。従動軸34Kの両端は、Z軸方向に移動可能にスプリング34M,34Mで駆動ロール34Cに押し付けて支持される。
なお、スプリング34M、34Mと従動ローラ34Jの間にはベアリング(図示せず)を介して従動軸34Kが回転自在に支持されている。また、各ロール34C,34Lは、軸に対して2個設けた場合を図示したが、3個以上でもよい。
【0026】
また、駆動ロール34Cの一方の端面(Y(−)軸側)には、図5(b),(c)に示すように、テーパ面34Dが形成される。このテーパ面34Dは、記録シートPの受け入れ方向の上流側になるほど、駆動ロール34Cの外周の径が小さくなるように形成される。
さらに、従動軸34Kには、先端が駆動軸34Bに向けて傾斜する板状のガイド部34N,34Nが設けられる。ガイド部34N,34Nの先端は、従動ロール34Lの外周面よりもZ(−)軸側に突出する。
【0027】
このガイド部34Nは、搬送されて来た記録シートPの先頭をガイド部34Nによって駆動軸34Bに向かわせ、テーパ面34Dは、傾斜に沿って記録シートPの先頭をロール34C,34L間に案内する。このように、テーパ面34Dおよびガイド部34Nは、記録シートPを案内する案内補助部となる。また、ガイド部34Nは、その先端が従動ロール34Lの外周面よりも下側に突出しているから、記録シートPの先頭が従動ロール34Lに突き当たって止まることはない。
【0028】
移動機構60は、駆動源となるソレノイド61と、このソレノイド61から延びて矢印A方向に動作するアーム62と、アーム62の動作に伴って回転する回転軸63と、回転軸63に設けられ、従動軸34KをZ軸方向となる矢印B方向に上,下動する爪部64と、を有する。
【0029】
ソレノイド61は、アーム62を矢印A方向に進退するように動作する。ソレノイド61がアーム62を延びた状態にすると、爪部64は矢印B方向の下側に移動し、図5(b)に示すように、従動ローラ34Jを駆動ローラ34Aに接近させ、駆動ロール34Cと従動ロール34Lとを密着させる。この状態にあっては、駆動ロール34Cおよび従動ロール34Lは、記録シートPを表裏から挟み込むことになる。
一方、ソレノイド61がアーム62を退いた状態にすると、爪部64は矢印B方向の上側に移動して従動軸34Kを上側に引き上げる。従動ローラ34Jが駆動ローラ34Aから引き離されると、図5(c)に示すように、従動ロール34Lが駆動ロール34Cから離間する。この際、従動ロール34Lの外周面と駆動ロール34Cの外周面との間には、記録シートPの厚さdよりも大きい隙間wが形成される。
【0030】
なお、図5に示す第2のローラ対34は、ローラ対を代表して説明したものであり、搬入部30および排出部40の他のローラ対31,32,33,41,42,43においても軸の長さやドラムの大きさ等の差異はあっても構成は同様となるため、その説明を省略する。以下の説明においては、同一の名称を用いるものとする。
【0031】
<反転装置の動作>
画像形成装置1の制御部は、画像形成ユニット10および定着装置15を経て表面に画像が形成された記録シートPを排出通路22に搬送する指示を、排出通路22の各ローラ対に与える。ここで、制御部が、両面印刷の指示を受けている場合、記録シートPを再供給通路23に搬送する指示を切換機構24に与え、表裏の反転した記録シートPを供給通路21に戻すために、再供給通路23の各ローラ対に搬送指示を与える。
さらに、制御部は、反転装置25のローラ対31,32,33,34,41,42,43,51および移動機構60に、以下のように動作する指示を与える。なお、ローラ対31,32,33,34,41,42,43,51の駆動軸は歯車列やタイミングベルト等を介してモータ(図示せず)に連結されているため、常に回転した状態となっているものとする。
【0032】
まず、搬入部30において、制御部は、記録シートPを受け入れるために、第1のローラ対31,32,33の駆動ロールと従動ロールとを密着させ、第2のローラ対34の駆動ロール34Cと従動ロール34Lとを離間させるように移動機構60を動作させる。
第1のローラ対31の駆動ロールと従動ロール間に挟まれた記録シートPは、図4に示すように、搬送方向(搬入方向C)の上流側(X(−)軸側)に位置した第1のローラ対31,32,33の順に搬送される。この際、第2のローラ対34では、駆動ロール34Cと従動ロール34Lとが離間して隙間wが形成されているから、この第2のローラ対34の部分にも、記録シートPが搬送される。この際、駆動ロール34Cに形成されたテーパ面34Dとガイド部34Nにより、記録シートPの先頭がロール34C,34Lに引っかからずに搬入される。
【0033】
搬入部30に記録シートPが搬入された段階で、制御部は、記録シートPを搬入部30から送り出すために、第2のローラ対34の移動機構60が駆動ロール34Cと従動ロール34Lとを密着させる。続いて、第1のローラ対31,32,33の移動機構を作動させ、駆動ロールと従動ロールとを離間させる。。これにより、駆動ロール34Cおよび従動ロール34Lは、記録シートPの搬入方向に対して左側の辺(図4中の左側で駆動ロール34Cと従動ロール34Lとに挟まれてる部分)を銜えて、記録シートPをこの部分を先頭にY(−)軸方向にある反転部50に向けて排出する。
反転部50を通過する記録シートPは、図2(b)に示すように、搬送用ローラ対51とガイド部材52により弧を描きながら反転した状態(表裏を入れ換えた状態)で、排出部40に搬送される。
【0034】
排出部40においても、制御部は、搬入部30と同様に、記録シートPを受け入れるために、第1のローラ対41,42の駆動ロールと従動ロールとを密着させ、第2のローラ対43の駆動ロールと従動ロールとを離間させるように各移動機構を動作させる。第1のローラ対41の駆動ロールと従動ロール間に挟まれた記録シートPは、搬送方向の上流側に位置した第1のローラ対41,42の順に搬送される。
排出部40に記録シートPが搬入された段階で、制御部は、記録シートPを送り出すために、第2のローラ対43の移動機構が駆動ロールと従動ロールとを密着させ、第1のローラ対41,42の移動機構を作動させ、続いて、駆動ロールと従動ロールとを離間させる。これにより、記録シートPは、図4に示すように、搬入部40に搬入された際の記録シートPの先頭をそのままに、再供給通路23の搬送方向(排出方向D(X(+)軸方向))に沿って排出部40から排出される。
【0035】
このように、反転装置25を通過した記録シートPは、表裏を反転した状態で再供給通路23に搬送され、再び供給通路21に供給される。そして、画像形成装置1の制御部は、供給通路21に搬送される反転した記録シートPの裏面に、画像形成ユニット10および定着装置15を経て画像を形成する。
【0036】
本実施形態による反転装置25は、記録シートPの表裏を反転させる場合に、反転後の記録シートPの搬送方向の先頭を、反転前の記録シートPの搬送方向の先頭とする。また、スイッチバック方式による反転機能に比べて、記録シートPを搬送方向に対して逆方向に搬送したりすることなく、記録シートPを反転させる。
また、反転装置25は、その占有面積が、特許文献2のように斜めに折り返して反転させる装置に比べて小さくなる。
さらに、特許文献2のように斜めに折り返して反転させる装置の場合には、記録シートPが連続的な長尺の場合には問題なく搬送することが可能だが、カット紙に於いては搬送路が傾斜している為、搬送構造が複雑になったり、厚い紙を走行し難い問題があったが、反転装置25のように、搬入部30、反転部50、排出部40のように、各部を通過する度に、記録シートPの方向を決めて移動させ、反転部50では、記録シートPに弧を描いて移動させているから、記録シートPを無理な姿勢にすること無く平易な構成で搬送することが出来、ジャム等搬送時の障害の発生し難くする。
【0037】
<変形例>
上記実施形態を次のように変形してもよい。
(1)前記実施形態では、反転装置の搬入部、排出部および反転部をそれぞれ1個ずつ設ける場合について説明したが、本発明はこれに限らず、複数個設ける場合でもよい。
具体的には、図6に示す反転装置25Aのような構成であってもよい。図6は、反転装置25Aの模式図であり、図6(a)が正面図、図6(b)が図6(a)中の矢視VIb方向から見た図である。
【0038】
この反転装置25Aは、2個の搬入部30A,30Bと、2個の排出部40A,40Bと、搬入部30A,30Bと排出部40A,40Bとを交互につなぐ反転部50Dと、を具備している。また、搬入部30A,30Bの搬入側には、記録シートPが搬入部30Aまたは30Bに搬送されるのを切り換える第1の切換機構26Aを有する第1の分岐路27Aが設けられ、反転部50Dの途中には、記録シートPが排出部40Aまたは40Bに搬送されるのを切り換える第2の切換機構26Bを有する第2の分岐路27Bが設けられ、排出部40A,40Bの排出側には、記録シートPを一つの通路に搬送する合流路28が設けられる。なお、交流路28の形状は、第1の分岐路27Aを上下で変転した形状なる。
【0039】
このように構成される反転装置25Aにあっては、搬入部30Aから反転部50Dに記録シートPを送り出している間に、別の搬入部30Bに次の記録シートPが搬入され、別の搬入部30Bから反転部50Dに記録シートPを送り出している間に、搬入部30Bに次の記録シートPが搬入される。この反転装置25Aでは、反転部25Dで連続して記録シートPを反転移動させることになり、実施形態の反転装置25のように、搬入部30と排出部40とを1ずつ設けているものに比べて、記録シートPの受け入れ間隔、送り出し間隔が短くなって、ひいては、反転装置25Aにおける記録シートPの反転処理が早くなる。
【0040】
さらに、反転装置25Aにおいて、切換機構26A,26Bによって形成される一の搬送経路と他の搬送路とが形成される。一の搬送経路は、第1の分岐路27A、搬入部30A、反転部50D、排出部40B、交流路28となり、他の搬送経路は、第1の分岐路27A、搬入部30B、反転部50D、排出部40A、交流路28となる。しかも、第1の分岐路27Aと交流路28とは上下で反転した形状となっているため、前記一の搬送経路と前記他の搬送経路とは等しい長さとなる。
これにより、両方の搬送経路を搬送する記録シートPのタイミングを合わせることで、搬送される各記録シートP間の隙間を短くでき、ジャムの発生を抑制する。
【0041】
(2)また、他の構成の反転装置の例として、図7に示す反転装置25Bがある。図7は、反転装置25Bの模式図であり、図7(a)が正面図、図7(b)が図7(a)中の矢視VIIb方向から見た図である。
この反転装置25Bは、2個の搬入部30A,30Bと、2個の排出部40A,40Bと、搬入部30Aと排出部40Aとをつなぐ2個の反転部50Aと、搬入部30Bと排出部40Bとをつなぐ反転部50Bと、を具備している。
【0042】
これにより、反転装置25Bでは、搬入部30A→反転部50→排出部40A、搬入部30B→反転部50→排出部40Bという2つの経路で記録シートPの反転移動を行うため、互いに干渉することなく記録シートPの反転移動を行う。この反転装置25Bでは、反転装置25Bから排出される記録シートPの速度は、再供給通路23を搬送する記録シートPの速度に依存することになる。よって、反転装置25Bは、先の変形例の反転装置25Aのように、1つの反転部50Dで反転移動させる装置に比べて、記録シートPの反転処理がより早くなる。
また、先の変形例の反転装置25Aでは、搬入部30と排出部40とを2個ずつ設けた場合を例示したが、3個以上で構成してもよい。さらに、この場合であっても、各搬送経路の長さが等しくなるように切換機構および分岐路,交流路の形状を形成してもよい。
【0043】
(3)前記実施形態の反転装置25では、搬入部30の上側に排出部40を配置する場合を例示したが、本発明はこれに限らず、搬入部30の下側に排出部40を配置する形状であってもよい。
ローラ対において、移動機構が従動軸を上,下動させてロール間に隙間を形成する構成としたが、従動軸を直接上,下動させる構成であっても、駆動軸を上,下動させる構成であっても、両方の軸を上,下動させる構成であってもよく、要は、記録シートPが搬入或いは排出に対して、ドラム間に隙間、或いは各ドラムを接近させる構成であればよい。
前記実施形態では、テーパ面34Dおよびガイド部34Nによって記録シートPをロール間に案内する案内補助部とした場合を例示したが、従動ロールの端面にテーパ面を形成し、先端がテーパ面に向けて傾斜する板状のガイド部を駆動軸34B側に設ける構成であってもよい。要は、案内補助部は、記録シートPの先頭がロールの端部に突き当たり難くするものであればよい。
【0044】
(4)前記実施形態では、反転部50が最初から最後まで弧を描いて記録シートPを搬送させるものとして説明したが、本発明はこれに限らず、反転部中の経路に記録シートPを直線的に移動する部分があってもよい。この場合には、反転部の途中には、記録シートPの折曲する弧状の経路が設けられることになる。
【0045】
(5)前記実施形態では、搬入部30から記録シートPを排出する際、排出部40から記録シートPを排出する際には、第2のローラ対で記録シートPの辺を銜えて送り出すように記載したが、本発明はこれに限らず、記録シートPの辺以外の部分を挟んで送り出すようにしてもよい。要は、搬入部30および排出部40は、搬入された記録シートPが搬入された方向と異なる方向に排出される構成を備えていればよい。
【0046】
(6)前記実施形態では、反転装置25における記録シートPの搬送方向が、X(+)軸方向→Y(−)軸方向→Z(+)軸方向→Y(+)軸方向→X(+)軸方向となって、記録シートPを反転させるために直交する軸線方向に反転させて搬送するものとして述べたが、実際には、記録シートPの搬入方向に対して直交する方向への動きに限らず、ベクトル的に直交する方向の成分を有していればよい。即ち、記録シートPの搬送方向に対して斜め方向に反転移動させるものであってもよい。
【0047】
(7)前記実施形態では、反転装置25を構成するローラ対31,32,33,34,41,42,43,51の駆動軸を、歯車列によって1つのモータに連結して常に回転した状態とするものとして述べたが、ローラ対毎に起動源を備える構成であっても、搬入部30、排出部40毎に駆動軸を駆動させる構成であってもよい。
前記実施形態では、図1に示すように、搬入部30および排出部50を画像形成装置1に対して高さ方向(縦方向)に離間して横方向に広がるように配置した場合を例示したが、本発明はこれに限らず、搬入部30および排出部50を、画像形成装置1に対して横方向に離間して高さ方向(縦方向)に広がるように配置してもよい。具体的には、画像形成装置1の搬入部30および排出部50を、画像形成装置1に対して前後方向、左右方向、或いは斜めの方向に配置してよい。
【符号の説明】
【0048】
1…画像形成装置、、4…中間転写ベルト、10…用紙搬送部、15…定着装置、21…供給通路、22…排出通路、23…再供給通路、24…切換機構、25,25A,25B…反転装置、26A…第1の切換機構、26B…第2の切換機構、27A…第1の分岐路、27B…第2の分岐路、28…交流路、30A,30B…搬入部、31,32,33,41,42…第1のローラ対、34,43…第2のローラ対、51…搬送用ローラ対、34A…駆動ローラ、34B…駆動軸、34C…駆動ロール、34D…テーパ面、34J…従動ローラ、34K…従動軸、34L…従動ロール、34M…支持部、34N…ガイド部、40,40A,40B…搬入部、50,50A,50B,50D…反転部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び裏面を有する被搬送媒体が、当該被搬送媒体の一端側から第1の方向に搬入される搬入部と、
前記搬入部に搬入された被搬送媒体を、前記第1の方向に対して前記表面に沿って直交する成分を有する第2の方向に移動させた後、当該直交する成分の反対方向である成分を有する第3の方向に折り返して移動させることにより、前記被搬送媒体の表裏を反転させる反転部と、
前記反転部により表裏が反転された被搬送媒体が、当該被搬送媒体の一端側から排出される排出部と、を具備する
ことを特徴とする反転装置。
【請求項2】
請求項1に記載の反転装置において、
前記搬入部および前記排出部は、被搬送媒体を受け入れる方向に回転し、被搬送媒体を表裏で挟み込む一対のローラである第1のローラ対と、前記被搬送媒体において、前記受け入れる方向と異なった軸を回転軸として回転し、被搬送媒体を表裏で挟み込む一対のローラである第2のローラ対と、前記各ローラ対をなす一対のローラのうち、一方のローラ、他方のローラ或いは両方のローラを移動させる移動機構であって、被搬送媒体を受け入れる際には、前記第1のローラ対のローラを接近させる一方、前記第2のローラ対のローラを離間させ、被搬送媒体を送り出す際には、前記第1のローラ対のローラを離間させる一方、前記第2のローラ対のローラを接近させる移動機構とを、それぞれ備える
ことを特徴とする被搬送媒体反転装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の被搬送媒体反転装置において、
前記第1のローラ対による被搬送媒体の受け入れ方向の上流側になるほど、前記第2のローラ対に含まれるローラの外周の径が小さくなる部分が設けられている
ことを特徴とする被搬送媒体反転装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の被搬送媒体反転装置において、
前記被搬送媒体を第2のローラ対の各ローラ間に案内する案内部を備える
ことを特徴とする被搬送媒体反転装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1に記載の被搬送媒体反転装置において、
前記搬入部および前記排出部はそれぞれ2以上設けられる
ことを特徴とする被搬送媒体反転装置。
【請求項6】
請求項5に記載の被搬送媒体反転装置において、
各搬入部の搬入口側には、被搬送媒体の搬送を切り換える第1の切換機構を有する第1の分岐路を設け、前記反転部の途中には、被搬送媒体の搬送を切り換える第2の切換機構を有する第2の分岐路を設け、各排出部の排出口側には、排出される被搬送媒体を1つの通路に搬送する合流路を設け、
前記被搬送媒体が搬送される前記第1の分岐路から前記合流路までの搬送経路の長さが、いずれの搬送経路であっても等しくする
ことを特徴とする被搬送媒体反転装置。
【請求項7】
供給される被搬送媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によって画像が形成された被搬送媒体を、反転させて前記画像形成手段に供給する請求項1〜6のいずれか1に記載の被搬送媒体反転装置と、を備える
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−57381(P2011−57381A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208978(P2009−208978)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】