説明

収容容器

【課題】外気中に存在する異物や微生物等により水性液状体が汚染されることを防止でき、しかも、少ない水性液状体であっても容易に排出させることが可能な収容容器を提供する。
【解決手段】流体密に形成されて内圧を上昇可能な収容室15と、収容室15内の内圧上昇時に開口可能なノズル25aを有する排出部21とを備え、収容室15に水性液状体が収容されて排出部21から排出される収容容器10であり、収容室15内に外気を導入可能な外気導入部33を備え、外気導入部33は、収容室15と容器外とを連通する外気連通路31を有し、外気連通路31が微生物の透過を阻止可能な疎水性メンブレンフィルタ29により閉塞されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容室に収容された水性液状体を排出部から排出可能な収容容器、特に、排出部から外気に含まれる異物や微生物が収容室内に侵入しないように構成された収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収容容器に収容された点眼剤等の各種の水性液状体には、通常、外気中に存在する微生物の繁殖などによる品質の劣化を防止するために、防腐剤、抗菌剤等の保存剤が含有されていた。このような保存剤は水性液状体の目的成分ではなく、更に、保存剤による弊害なども生じ易いことから、出来るだけ少なく抑えることが望まれていた。
【0003】
そのため、点眼液等の水性液状体を収容する収容容器として、外気中に存在する異物や微生物等が収容室内に侵入することを防止するように構成し、保存剤を使用せずに水性液状体を収容可能にしたものも提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、外層と、外層から剥離可能な内層とが積層された所謂デラミボトルからなり、排出部に逆止弁と微生物の透過を阻止するフィルタとが設けられた吐出容器が提案されている。
【0005】
この吐出容器では、外層を押圧することで収容室の内圧を上昇させ、この内圧で逆止弁を開いて、水性液状体をフィルタを通して排出部から排出でき、一方、排出後に外層が復元すると、内層と外層との間に外気が導入され、内層が収縮状態を維持してフィルタから収容室に外気が収容されることが防止されるようになっている。そのため、フィルタより上流側の水性液状体が外気中に存在する異物や微生物により汚染されることが防止でき、水性液状体に保存剤を含有させる必要がない。
【特許文献1】特開2002−80055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなデラミボトルでは、水性液状体を排出後に内層が収縮した状態となって外気を吸引しないないため、使用を繰り返すことにより内層の収縮量が増加する。そして、水性液状体の排出量の累積が多くなると、内層の内壁面同士が当接する結果、それ以上の内層の収縮が不可能となり、水性液状体の排出が終了する。ところが、内層が規則正しく変形することは極めて困難であって不定形に変形され易く、しかも、フィルタを透過させるには十分な内圧が必要であるため、内層の内部である収容室内には多量の水性液状体が残留した状態で使用を終了することになり、水性液状体の無駄が多かった。
【0007】
仮に、このようなデラミボトルの収容室に予め気体を収容しておき、収容室内の気体により内圧を上昇し易くしたとしても、使用を繰り返す間に、収容室内の気体が一旦排出されてしまえば、水性液状体の排出量の累積が多くなると同様の現象が生じることになる。
【0008】
そこで、本発明は、外気中に存在する異物や微生物等により水性液状体が汚染されることを防止でき、しかも、少ない水性液状体であっても容易に排出させることが可能な収容容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明は、流体密に形成されて内圧を上昇可能な収容室と、該収容室内の内圧上昇時に開口可能な閉止弁を有する排出部とを備え、前記収容室に水性液状体が収容されて前記排出部から排出される収容容器において、前記収容室内に外気を導入可能な外気導入部を備え、該外気導入部は、収容室と容器外とを連通する外気連通路を有し、該外気連通路が微生物の透過を阻止可能な疎水性メンブレンフィルタにより閉塞されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記疎水性メンブレンフィルタは、透過孔の孔径が0.45μm以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記疎水性メンブレンフィルタは、前記収容室の前記排出部側端部に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記外気連通路は、外表面に形成された通気口と、該通気口と連通した通気路と、該通気路の少なくとも一部に設けられた前記通気口より広い拡開部とを有し、前記疎水性メンブレンフィルタは、前記拡開部において前記外気連通路を閉塞することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え 前記収容室は、弾性変形可能な容器壁により形成され、該容器壁が押圧されることで前記収容室内の内圧を上昇可能であると共に、前記容器壁の復元力により、前記外気導入部から外気を吸引可能であることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか一つに記載の構成に加え、前記閉止弁は、前記排出部の先端に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1又は2に記載の発明によれば、収容室内の内圧上昇時に開口可能な閉止弁を備えているので、閉止弁が開口される間は収容室内の内圧が高く、収容室内に外気が導入されることがなく、また、内圧上昇時以外には閉塞しているため収容室内に外気が導入されることがない。そのため、排出部から外気中に存在する異物や微生物が収容室内に侵入することがない。
【0016】
そして、収容室内に外気を導入可能な外気導入部を備えているので、収容室内の水性液状体の量が減少すると、その分、外気導入部から気体が導入されるが、外気導入部の外気連通路が微生物の透過を阻止可能な疎水性メンブレンフィルタにより閉塞されているので、外気導入部から外気が収容室内に導入されても、外気中に存在する異物や微生物が収容室内に侵入することがない。そのため、収容室内に収容されている水性液状体が外気中に存在する異物や微生物により汚染されることを防止できる。
【0017】
しかも、収容室内の水性液状体の量が減少した分、外気導入部から外気が導入されるため、収容室内の水性液状体の残量が少なくなっても、収容室内に十分な気体を存在させることができる。そのため、収容室内の内圧を容易に上昇させることが可能で、水性液状体の残量が少なくても容易に排出させることが可能である。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、疎水性メンブレンフィルタが収容室の排出部側端部に配置されているので、収容容器を使用する際、排出部を下向きにして保持すれば、水性液状体により疎水性メンブレンフィルタを覆うことができ、収容室内の内圧を上昇させる際に、疎水性メンブレンフィルタから収容室内の気体が透過して外気へ放出されることを防止できる。そのため、収容室内の内圧を容易に上昇させ易くでき、収容室内の水性液状体の排出が容易である。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、外気連通路が外表面に形成された通気口より広い拡開部を有し、この拡開部において疎水性メンブレンフィルタが外気連通路を閉塞しているので、疎水性メンブレンフィルタの透過面積をより広く設けることができる。そのため、透過孔径が非常に小さく、透過抵抗の大きい疎水性メンブレンフィルタであっても、外気を容易に吸引することが可能となり、使用時に容器壁が短時間で復元させることができるなど、使い勝手がよい。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、収容室が弾性変形可能な容器壁により形成され、この容器壁が押圧されることで収容室内の内圧を上昇可能であると共に、容器壁の復元力により、外気導入部から外気を吸引可能であるので、収容室内の内圧を昇降するための特別な構造が不要であり、収容容器の構成を簡単にできる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、閉止弁が排出部の先端に設けられているので、閉止弁を通過後の水性液状体が排出部に残留することを防止し易く、排出部に残留した水性液状体が外気中の異物や微生物により汚染されることを防止し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
図1及び図2は、この実施の形態の収容容器を示す。
【0023】
この収容容器10は、一方側の開口部13を設けて容器壁11により流体密に形成された収容室15を有する容器本体17と、容器本体17の開口部13に流体密に装着された排出部21とを備えており、排出部21が図示しない被覆キャップにより不使用時に被覆されるように構成されている。ここで、流体密とは、気密及び液密であることを言い、大気等の気体や液体の出入りが、不可避的に生じるものを除いて阻止される構造である。
【0024】
収容容器10の容器本体17は、形状保持性を有し、弾性変形可能な樹脂、軟質硝子等から適宜な中空形状に形成されており、容器壁11が押圧されることで、収容室15内の内圧を大気圧より上昇可能であると共に、容器壁11の復元力により復元することで、収容室15内の内圧を下降可能となっている。
【0025】
この容器壁11の材料としては、特に限定されるものではないが、弾性を有し、収容室15に収容される水性液状体に対して安定で溶出物等を生じ難いポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー等の樹脂などが挙げられる。
【0026】
収容容器10の排出部21は、中空部23aを有して容器本体17の開口部13に流体密に固着された固着キャップ23と、固着キャップ23の中空頂部フランジ23bに密着固定された基部25b及び基部25bから中空頂部フランジ23b外側へ突出するノズル25aを有するノズル成形体25と、固着キャップ23の中空部23a内に配置されてノズル成形体25の基部25bを中空頂部フランジ23bに押付けて固定する固定リング27と、固着キャップ23の内壁面と固定リング27とに接合された疎水性メンブレンフィルタ29とを備えている。
【0027】
固着キャップ23は、容器本体17の開口部13に嵌合部23cを嵌合固着させることにより、容器本体17に流体密に固着されている。ここでは、溶着フランジ23dを開口部13の端部に溶着していてもよい。また、図示しない被覆キャップにより被覆されていて、使用時に露出される外表面には、外部と中空部23aとを連通する通気口23eが形成されている。更に、中空部23aの内壁面には、この通気口23eと連通して、軸線方向に延びる溝形状の通気路23fが設けられている。この固着キャップ23は容器本体17に流体密に固着可能な材料から形成されている。
【0028】
排出部21のノズル成形体25は、円形板状の基部25bに閉止弁としてのノズル25aが突設されており、基部25b及びノズル25aの内部に収容室15から連通する流路25cが設けられている。
【0029】
基部25bは、固着キャップ23の中空頂部フランジ23bの全周囲に密着して固定可能に形成されている。また、固定された状態で固着キャップ23の通気路23fを閉塞しない形状となっている。
【0030】
ノズル25aは、先端側が楔形状を呈し、楔形状の先端に、流路25cと外部とを連通可能なスリット25dが設けられている。固着キャップ23に固定された状態では、スリット25dが排出部21の先端に配置されるようになっている。このスリット25dは、流路25c内の内圧上昇時に、弾性変形して開口し、収容室15に収容された水性液状体の流動が可能となり、一方、流路25c内の内圧下降時には、弾性により閉塞し、水性液状体の流動が不能となるように構成されている。
【0031】
このようなノズル成形体25は、スリット25dを自己の弾性により水性液状体の流動が不能となる程度に閉塞できる弾性材料により形成されている。特に、疎水性を有する材料とすれば、閉塞時にスリット25d内に水性液状体が滞留することを防止できて好適である。このようなノズル成形体25を構成する材料としては、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、合成ゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマー等のエラストマーなどが挙げられる。
【0032】
排出部21の固定リング27は、ノズル成形体25の基部25bに当接して固着キャップ23の中空頂部フランジ23bに向けて加圧するように、固着キャップ23に固定されている。固定方法としては、例えば図示しない突起を固着キャップ23の内壁面に設けて、その突起に固定リング27を係止するようにしてもよく、固定リング27を固着キャップ23の内壁面に溶着してもよい。
【0033】
この固定リング27には、ノズル成形体25の流路25cに対応する部位には、厚さ方向に貫通する孔からなる流路27cが設けられている。また、固定リング27の疎水性メンブレンフィルタ29側の表面には、流路27cの全周囲に疎水性メンブレンフィルタ29を固定するフィルタ固定部27aが設けられると共に、フィルタ固定部27aの周囲には、固着キャップ23の通気路23fと連通する段差状或いは凹状に形成された通気路拡開部27bが設けられている。この通気路拡開部27bの形状は、凹状、溝状など自在に設定可能であり、少なくともフィルタ固定部27aが流路27cの全周囲に存在した状態で、疎水性メンブレンフィルタ29と出来るだけ広い面積で対向するように形成されることが好ましい。
【0034】
排出部21の疎水性メンブレンフィルタ29は、平坦な円形形状を呈し、固定リング27の流路27cに対応する位置に、貫通孔からなる流路29cが設けられている。この疎水性メンブレンフィルタ29は、流路29cの全周囲が固定リング27のフィルタ固定部27aに隙間無く接合されると共に、全周縁側が固着キャップ23の環状段差部23gに隙間無く接合されている。この疎水性メンブレンフィルタ29は、このように接合されることで、収容室15の排出部21側の端部に配置されると共に、通気路拡開部27bを閉塞している。
【0035】
このような疎水性メンブレンフィルタ29は、気体を透過可能であると同時に、水性液状体の透過を阻止することにより微生物の透過を阻止可能な部材であり、膜状、シート状、多孔質体などからなり、多数の微細な透過孔を有している。このような疎水性メンブレンフィルタ29としては、例えば、透過孔の孔径が0.45μm以下の所謂無菌フィルタが好適である。このような透過孔の孔径であれば、殆どの微生物の透過を阻止することが可能だからである。特に、透過孔の孔径が0.22μm以下であるのがよい。
【0036】
また、この疎水性メンブレンフィルタ29は、水性液状体に対する十分な疎水性を有することが必要である。透過孔が微細であるため、疎水性を有しない場合には、水性液状体により湿潤された後に、気体が透過不能となり易いからであり、また、収容室15に収容された水性液状体を排出する際に、水性液状体が透過してノズル25a以外の部位から排出されるおそれがあるからである。
【0037】
このような疎水性フィルタ29としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂のような材料からなるフィルタを使用することができる。また、この疎水性は、材料自体が有するものであってもよく、シリコンオイル等をコーティングするなどにより付与されてもよい。
【0038】
このような排出部21では、固着キャップ23、ノズル成形体25、固定リング27、及び疎水性メンブレンフィルタ29が一体化された状態で、通気口23eと、溝形状の通気路23fと、通気路拡開部27bとにより、収容容器10の外部から収容室15までを連通する外気連通路31が構成されている。更に、この外気連通路31が通気路拡開部27bにおいて、疎水性メンブレンフィルタ29により閉塞されることにより、疎水性メンブレンフィルタ29を透過した外気のみが収容室15内に導入されるように構成された外気導入部33が構成されている。そして、この外気導入部33では、固定リング27の通気路拡開部27bの疎水性メンブレンフィルタ29と対向する開口面積が、固着キャップ23に形成された通気口23eの開口面積に比べて大幅に大きく形成されている。
【0039】
次に、以上のような構成を有する収容容器10の使用状態について説明する。
このような収容容器10は、収容室15に各種の水性液状体が収容されて使用される。この水性液状体は、使用時に収容容器10に収容してもよいが、予め収容容器10に収容しておくのが好ましい。収容作業による水性液状体の汚染が生じ難いからである。
【0040】
この水性液状体としては、水、水溶液、水分散液等の各種の液体や、水性のゲルなどが含まれる。この収容容器10の性質上、微生物が繁殖可能な液状体を収容することが好適であり、例えば、防腐剤、抗菌剤等の保存剤を含有しない無菌又は制菌状態の薬液や液状食品等を収容するのが好適である。収容室15が流体密に構成されていると共に、ノズル25aから外気を吸引することが少なく、また、外気導入部33から収容室15に導入される外気には微生物が存在しないため、収容室15内に収容されている液状体が外気中に存在する微生物による汚染を受け難く、液状体を高品質に維持することが可能だからである。
【0041】
まず、収容室15に水性液状体を収容した状態で、不使用時には、図示しない被覆キャップを装着して、ノズル25aや通気口23eを被覆しておく。これにより、ノズル25aの表面やスリット25dや外気導入部33に、外気中の異物や微生物等を付着し難くできる。
【0042】
そして、使用時には、ノズル25a及び通気口23eを外気に露出させ、ノズル25aが下向きになるように配置する。このとき、収容室15の内部には、水性液状体だけが収容されていてもよく、水性液状体と共に気体が収容されていてもよい。
【0043】
この状態で、容器本体17の容器壁11を外部から加圧して収容室15内の内圧を大気圧より上昇させると、収容室15内の内圧と共に、収容室15と連通するノズル25a内の流路25c内の内圧が上昇する。このとき流路25c内には重力により水性液状体が存在しており、水性液状体が収容室15内の内圧で加圧された状態となる。
【0044】
すると、流路25c内の内圧により、ノズル25aの先端のスリット25dが内圧に応じて弾性変形して開き、これにより水性液状体がスリット25dから排出される。水性液状体が点眼液の場合、スリット25dから排出される水性液状体は、ノズル25aの先端から滴下される程度に排出されるのが好適である。
【0045】
この排出時には、収容室15内の排出部21側には外気連通路31が配置されているが、この収容室15内の排出部21側の端部に疎水性メンブレンフィルタ29が配置されているため、この排出時には、疎水性メンブレンフィルタ29に表面に水性液状体が接触する。そのため、収容室15内に存在する気体は、外気連通路31に透過しない。
【0046】
また、排出時に収容容器10を傾斜させるなどにより、疎水性メンブレンフィルタ29の一部が露出された状態、即ち、収容室15内の気体が疎水性メンブレンフィルタ29に接触した状態で排出操作を行った場合、気体が疎水性メンブレンフィルタ29を透過して外気連通路31を経由して外気に放出される可能性がある。しかし、一部であれば疎水性メンブレンフィルタ29の気体の透過抵抗があるため、収容室15内の内圧を十分に上昇させることが可能である。
【0047】
なお、ノズル25aを上向きにして容器本体17の容器壁11を外部から加圧した場合には、疎水性メンブレンフィルタ29を透過して外気連通路31を経由して外気に放出される。
【0048】
このようにして、水性液状体の所望量の排出が終了した後、容器本体17の容器壁11の加圧を解除すると、収容室15内から排出された水性液状体の体積分、収容室15内の内圧が下降する。また、収容室15内の気体を外気連通路31から排出した場合には、その分、収容室15内の内圧が下降する。
【0049】
すると、収容室15内が負圧になるため、外気導入部33から外気が収容室15内に導入される。このとき、外気は、固着キャップ23の通気口23eから取り込まれ、外気連通路31を通して通気路拡開部27bに達し、この通気路拡開部27bを閉塞している疎水性メンブレンフィルタ29を透過して、収容室15内に導入される。
【0050】
そのため、外気中に存在する異物や微生物は疎水性メンブレンフィルタにより除去され、気体だけが収容室15内に収容される。このとき、疎水性メンブレンフィルタ29では、透過孔の径が微細であるため、透過抵抗が大きいが、通気路拡開部27bが通気口23eに比べて大幅に拡開されているため、疎水性メンブレンフィルタ29の透過面積を大きく確保でき、これにより短時間に外気を収容室15内に取り込むことが可能である。
【0051】
そして、このように疎水性メンブレンフィルタ29を透過させて大気を収容することにより、外気中の異物や微生物が収容室15内に収容されることがない。また、ノズル25aの先端のスリット25dは排出時に開口するだけであるため、排出後には閉塞し、ノズル25aからも外気中の異物や微生物が収容室15内に収容されることがない。その結果、このような排出を繰り返しても、収容室15内の水性液状体が外気中の異物や微生物により汚染されることを確実に防止される。
【0052】
その後、このような使用を繰り返すと、収容室15内に収容されている水性液状体は、徐々に減少し、そして、使用期間の終了時には、収容されている水性液状体の量が非常に少なくなる。しかし、その分、収容室15内に存在する大気の量をが増加しており、収容室15内に常に十分な気体を存在させることができる。そのため、ノズル25aを下向きに配置すれば、ノズル25aの流路25c内に水性液状体を満たすことができ、この状態で容器壁11を加圧すれば、収容室15内の気体を加圧することができるため、収容室15の内圧を確実に上昇させることが可能である。そのため、最後まで水性液状体を内圧により排出することができる。
【0053】
以上のような収容容器10によれば、収容室15内の内圧上昇時に開口可能なノズル25aを備えているので、ノズル25aが開口される間は収容室15内の内圧が高く、収容室15内に外気が導入されることがなく、また、内圧上昇時以外には閉塞しているため収容室15内に外気が導入されることがない。そのため、排出部21から外気中に存在する異物や微生物が収容室15内に侵入することがない。
【0054】
そして、収容室15内に外気を導入可能な外気導入部33を備えているので、収容室15内の水性液状体の量が減少すると、その分、外気導入部33から気体が導入されるが、外気導入部33の外気連通路が微生物の透過を阻止可能な疎水性メンブレンフィルタ29により閉塞されているので、外気導入部33から外気が収容室15内に導入されても、外気中に存在する異物や微生物が収容室15内に侵入することがない。そのため、収容室15内に収容されている水性液状体が外気中に存在する異物や微生物により汚染されることを防止できる。
【0055】
しかも、収容室15内の水性液状体の量が減少した分、外気導入部33から外気が導入されるため、収容室15内の水性液状体の残量が少なくなっても、収容室15内に十分な気体を存在させることができる。そのため、収容室15内の内圧を容易に上昇させることが可能で、水性液状体の残量が少なくても容易に排出させることが可能である。
【0056】
また、この収容容器10では、疎水性メンブレンフィルタ29が収容室15の排出部21側端部に配置されているので、収容容器10を使用する際、排出部21を下向きにして保持すれば、水性液状体により疎水性メンブレンフィルタ29を覆うことができ、収容室15内の内圧を上昇させる際に、疎水性メンブレンフィルタ29から収容室15内の気体が透過して外気へ放出されることを防止できる。そのため、収容室15内の内圧を容易に上昇させ易くでき、収容室15内の水性液状体の排出が容易である。
【0057】
更に、この収容容器10では、外気連通路31が外表面に形成された通気口23eより広い通気路拡開部27bを有し、この通気路拡開部27bにおいて疎水性メンブレンフィルタ29が外気連通路31を閉塞しているので、疎水性メンブレンフィルタ29の透過面積をより広く設けることができる。そのため、透過孔径が非常に小さく、透過抵抗の大きい疎水性メンブレンフィルタ29であっても、外気を容易に吸引することが可能となり、使用時に容器壁11が短時間で復元させることができるなど、使い勝手がよい。
【0058】
また、この収容容器10では、収容室15が弾性変形可能な容器壁11により形成され、この容器壁11が押圧されることで収容室15内の内圧を上昇可能であると共に、容器壁11の復元力により、外気導入部33から外気を吸引可能であるので、収容室15内の内圧を昇降するための特別な構造が不要であり、収容容器10の構成を簡単にできる。
【0059】
更に、この収容容器10では、ノズル25aが排出部21の先端に設けられているので、ノズル25aを通過後の水性液状体が排出部21に残留することを防止し易く、排出部21に残留した水性液状体が外気中の異物や微生物により汚染されることを防止し易い。
【0060】
なお、上記実施の形態では、閉止弁として、弾性変形可能なスリット25dを有するノズル25aにより構成したが、特に限定されるものではなく、収容室15内の内圧上昇時に水性液状体が流動可能に開口できると共に、内圧下降時に水性液状体の流動が阻止されるように閉塞できる構造のものであれば適宜選択可能である。
【0061】
例えば、図3に示されるように、ノズル25aにスリット25dを設ける代わりに、ノズル25aの頂部に開口25eを設けると共に、ノズル成形体25の流路25c内に球状体35を収容して、この球状体35により開口25eを閉塞することにより構成してもよい。ここでは、球状体35が、ノズル25aの弾性により流路25cの内壁面全周と密着すると共に開口25eの内面と密着しており、内圧上昇時に水性液状体を開口25eから流出させることができる。このようなノズル25aであっても、上記実施の形態と全く同様の作用効果を得ることが可能である。
【0062】
また、上記では、容器本体17として、弾性変形可能な容器壁11により形成されており、容器壁11を外部から押圧することで、水性液状体を排出するように構成したが、容器本体17が容易に弾性変形できない程度の硬質の容器壁により形成されていてもよい。その場合には、収容室15内の内圧を上昇させるための手段を別に設けることで、ノズル25aを内圧により開閉させるようにすればよい。
【0063】
更に、上記では、収容容器10として、容器本体17の一方側の開口部13に排出部21が装着された例について説明したが、特に限定されるものではなく、例えばシリンジのように、一方側に排出部を有し、他方側にプランジャ等により流体密に閉塞された容器であってもよい。その場合、容器壁11が弾性変形する代わりにプランジャにより収容室の内圧を上昇可能に構成することも可能である。
【0064】
また、上記では、外気連通路31を、固着キャップ23の通気口23eと連通する溝形状の通気路23fと、固着キャップ23に段差状に形成された通気路拡開部27bとにより形成したが、外気連通路の構成はこれらに限定されることなく、外気と収容室15内とを連通可能であれば、適宜変更可能である。
【0065】
更に、上記では、排出部21にノズル25aと外気導入部33とを設けた構成について説明したが、排出部21とは別に、外気導入部33を設けることも可能である。その場合、少なくとも収容室15と外気との間を連通する通気口又は通気路と、この通気口又は通気路を閉塞する疎水性メンブレンフィルタとを備えることが必要であり、その配置や構造は適宜選択することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の実施の形態の収容容器を示す断面図である。
【図2】図1の収容容器の排出部を示し、(a)は分解側面図、(b)は固着キャップの(a)のA−A断面図、(c)はノズル成形体の平面図、(d)は固定リングの底面図、(e)は疎水性メンブレンフィルタの平面図である。
【図3】この発明の実施の形態の排出部の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
10 収容容器
11 容器壁
15 収容室
17 容器本体
21 排出部
23 固着キャップ
23e 通気口
25 ノズル成形体
25a ノズル
25c 流路
25d スリット
27 固定リング
27a フィルタ固定部
27b 通気路拡開部
29 疎水性メンブレンフィルタ
31 外気連通路
33 外気導入部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体密に形成されて内圧を上昇可能な収容室と、該収容室内の内圧上昇時に開口可能な閉止弁を有する排出部とを備え、前記収容室に水性液状体が収容されて前記排出部から排出される収容容器において、
前記収容室内に外気を導入可能な外気導入部を備え、該外気導入部は、収容室と容器外とを連通する外気連通路を有し、該外気連通路が微生物の透過を阻止可能な疎水性メンブレンフィルタにより閉塞されていることを特徴とする収容容器。
【請求項2】
前記疎水性メンブレンフィルタは、透過孔の孔径が0.45μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の収容容器。
【請求項3】
前記疎水性メンブレンフィルタは、前記収容室の前記排出部側端部に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の収容容器。
【請求項4】
前記外気連通路は、外表面に形成された通気口と、該通気口と連通した通気路と、該通気路の少なくとも一部に設けられた前記通気口より広い拡開部とを有し、前記疎水性メンブレンフィルタは、前記拡開部において前記外気連通路を閉塞することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の収容容器。
【請求項5】
前記収容室は、弾性変形可能な容器壁により形成され、該容器壁が押圧されることで前記収容室内の内圧を上昇可能であると共に、前記容器壁の復元力により、前記外気導入部から外気を吸引可能であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の収容容器。
【請求項6】
前記閉止弁は、前記排出部の先端に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−82602(P2009−82602A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258652(P2007−258652)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(302053814)有限会社ケーアールビジネス (10)
【出願人】(597017247)株式会社ナミコス (9)
【Fターム(参考)】