説明

収差補正器及び位相板を備えたTEM

【課題】当該発明は、像の質を改善するための補正器(330)及びコントラストを改善するための位相板(340)を備えたTEMに関係する。
【解決手段】改善されたTEMは、対物系のレンズ及び位相板の間に完全に置かれた補正系を具備すると共に、位相板における回折平面の拡大された像を形成するために補正器のレンズを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
当該発明は、粒子の実質的に平行なビームで試料を照射すること及び試料を通じて透過させられた粒子を検出することによって試料の像を形成するための装置に関係するが、その装置は、
・ 粒子のビームを生成させるための粒子源、
・ 平行なビームを形成するためのコンデンサー系
・ 試料位置に試料を保持するための試料ホルダー、
・ 試料の拡大された像を形成するための対物系のレンズ、
・ 試料を通過したビームの散乱されてない部分が実質的に丸いフォーカスを形成する平面に位置させられた位相板、
・ 対物系のレンズの収差を補正するための補正系、及び
・ 試料の拡大された像をさらに拡大するための投射系
:を具備するものである。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、“Effect of a physical phase plate on contrast transfer in an aberration−corrected transmission electron microscope”,D.Gerthsen et al.,Microsc.Microanal.13(Suppl.2)2007,pages 126−127(非特許文献1)から知られる。
【0003】
透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)(TEM)においては、電子源によって生成させられた電子のビームは、試料を照明する電子の平行なビームへと形成される。試料は、電子の一部が試料を通過すると共に電子の一部が試料において吸収されるように、非常に薄いものである。電子のいくつかは、他のものが、散乱することなしに試料を通過する一方で、それらが試料に入るところと異なる角度でそれらが試料を出るように、試料において散乱される。蛍光スクリーン又はCCDカメラのような、検出器に試料を結像させることによって、強度の変動は、像平面に帰着する。強度のゆらぎは、一部分において試料の一部における電子の吸収に、並びに、一部分において散乱された及び散乱されてない電子の間の干渉に、よるものである。後者の機構は、ほとんど電子が吸収されない試料、例.生物学的な組織のような低いZの材料、を観察するとき、特に重要なものである。
【0004】
相互に干渉する電子から結果として生じる像のコントラストは、電子が散乱される角度に依存する。特定の空間周波数を備えた物体は、特定の角度でビームを散乱させるが、散乱する角度は、空間周波数に比例するものである。低い空間周波数については、散乱する角度は、ゼロに近いものであると共にコントラストは、ゼロに近いものである、より高い空間周波数については、コントラストは、空間周波数に依存するものであるが、正のコントラスト及び負のコントラストの間でゆらぐ。これは、いわゆるコントラスト伝達関数(Contrast transfer function)(CTF)によって記載される。CTFが、低い空間周波数についてゼロに近いものである際には、大きい構造は、像において分解されることができない。
【0005】
1947年に、Boersch(ベルシュ)は、位相板の導入が、低い空間周波数が最大を示すCTFに帰着するであろうということと共に、大きい構造が、このように結像されることができることを記載した、“U(ウムラウト)ber die Kontraste von Atomen im Elektronenmikroskop”,H.Boersch,Z.Naturforschung 2A(1947),p.625−633(非特許文献2)を参照のこと。最近では、このような位相板は、TEMのものにおいて首尾良く導入されてきたものである。位相板は、試料を照明する平行なビームが、試料を通過してしまった後で、集束させられる平面に置かれる構造である。この平面において、全ての散乱されてない電子は、散乱された電子が、他の位置に結像させられる一方で、一点に集束される。位相板は、例.π/2の散乱された及び散乱されてない電子の間の位相シフトを引き起こすが、それによって余弦様の挙動へCTFの正弦様の挙動を転換するものである。
【0006】
このような位相シフトは、例.一時的に散乱されてない電子を加速させること若しくは減速させること(いわゆるBoerschの位相板)によって、又は、例.炭素の薄いホイルを通じて散乱された電子を通過させること(いわゆるZernike(ゼルニケ)タイプの位相板、“Transmission electron microscopy with Zernike phase plate”,R.Danev et al.,Ultramicroscopy 88(2001),pages 243−252(非特許文献3)を参照のこと)によって、引き起こされることができる。また、Aharonov−Bohm(アハロノフ−ボーム)効果に基礎が置かれた磁気的な位相板は、知られる(“Experimental confirmation of Aharonov−Bohm effect using a toroidal magnetic field confined by a superconductor”,N.Osakabe et al.,Phys.Review A,Vol.34(1986)No.2,pages 815−822(非特許文献4)を参照のこと)。
【0007】
Boerschの位相板は、位相板の物理的な構造によるこれらの散乱された電子の遮断無しに散乱された電子(の大部分)を通過させるための非常に小さい直径を有するものでなければならない。このような位相板の製造は、例.Hitachiへの米国特許第5,814,815号(特許文献1)に、及び、Glaeserへの国際出願WO2006/017252(特許文献2)に、記載される。
【0008】
TEMのものにおける最近の発達は、このような装置の対物系のレンズの収差を補正するものであると共にそれによって前記のTEMのものの分解能を改善するものである、収差補正器の導入である。
【0009】
このような補正系は、例.CEOS Gmbh,Heidlberg Germanyへの欧州特許EP1057204B1(特許文献3)から知られる。このような補正系を備えたTEMのものは、今、商業的に入手可能なもの、例.FEI Co.,Hillsboro,USAのTitanTM 80−300である。
【0010】
このような補正系は、対物系のレンズ及びTEMの投射系の間に置かれる。補正系は、六重極子に対物系のレンズの後側焦平面を結像させるものである、レンズ・ダブレットの形態における伝達系を具備する。前記の六重極子は、そのとき、レンズのダブレットによって別の六重極子に結像させられると共に、最後にアダプターレンズは、TEMの投射系のために物体の像を形成するために使用される。
【0011】
他の補正系が、知られるが、各々が、それの自身の好都合なこと及び不都合なことを備えたものであることは、留意されることである。差異は、主光線が補正系を通過する正確な様式にのみならず、伝達系、多重極子(四重極子/八重極子対六重極子)の数及びタイプ、多重極子の間におけるレンズの数、などにあることがある。
【0012】
Gerthsen et al.の論文において、対物系のレンズの後側焦平面に挿入された位相板を備えた収差を補正する系を組み合わせることは、提案されることである。
【0013】
対物系のレンズの前記の後側焦平面に位相板を備えた電子顕微鏡を構築するとき問題は、この平面が、アクセスすることが非常に困難なものである:対物系のレンズが、典型的には1−5mmの焦点距離を有する際には、後側焦平面は、対物系のレンズを形成する二つの極片の一つの穴の内側に又はそれの近くに物理的に位置させられる、ということである。
【0014】
対物系のレンズの後側焦平面が、アクセスすることが困難なものであることがある別の理由は、生物学的な試料が、しばしば低温の条件に結像されるというものである、すなわち:試料は、沸騰する窒素又は沸騰するヘリウムのものに近い低温の温度に保持される。これは、寒冷の遮蔽物で試料の位置を囲むことによって達成されるが、前記の寒冷の遮蔽物は、前記の低温の温度に近い又はそれにおける温度に保持される。後側焦平面は、典型的には試料の位置から取り除かれたミリメートルのみであると共に、従って低温の遮蔽物は、また、対物系のレンズの後側焦平面に非常に近い又はそれにおけるものである。
【0015】
試料それ自体が、低温の温度に保たれないときでさえ、抗汚染遮蔽物は、しばしば、試料の付近における汚染を予防するために使用される。これらの抗汚染遮蔽物は、試料の近所に位置決めされた及び液体窒素の温度に保たれた遮蔽物、即ち、前に述べられた寒冷の遮蔽物に非常に類似のもの、である。
【0016】
後側焦平面が、アクセスすることが困難なものであるなおも別の理由は、このような位相板が、良好にセンタリングされるのでなければならないというものである。これは、ビームに関してアパーチャを位置決めするための、TEMのものについて知られた位置決めする機構に類似の、センタリング機構を要求する。この位置決めする機構は、例.対物系のレンズの極片における穴を介して、後側焦平面へのアクセスを必要とする。当業者に知られたように、このような穴は、対物系のレンズの対称性を乱すと共にそれによってレンズの質を劣化させることがある。また、位置決めすることのために、好ましくはモーターを含むものである、顕微鏡の外側における機構は、必要とされる。このような部分は、良好に機械的に、X線、二次電子、などを検出するための補助の検出器のような、また試料の平面において又はそれの付近に位置決めされることを必要とするTEMの他の部分と干渉することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,814,815A号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/017252号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第1057204号明細書
【特許文献4】米国特許第6,744,048B2号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/284528A1号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第10,2005,040267A1号明細書
【特許文献7】国際公開第99/38188A号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】GERTHSEN D.et al.,“Effect of a Physical Phase Plate on Contrast Transfer in an Aberration−Corrected Transmission Electron Microscope”,MICROSCOPY AND MICROANALYSIS,SPRINGER,NEW YORK,NY,US,vol.13,No.Suppl.2,1 January 2007,pages 126−127
【非特許文献2】H.Boersch,“U(ウムラウト)ber die Kontraste von Atomen im Elektronenmikroskop”,Z.Naturforschung 2A(1947),p.625−633
【非特許文献3】“Transmission electron microscopy with Zernike phase plate”,R.Danev et al.,Ultramicroscopy 88(2001),pages 243−252
【非特許文献4】N.Osakabe et al.,“Experimental confirmation of Aharonov−Bohm effect using a toroidal magnetic field confined by a superconductor”,Phys.Review A,Vol.34(1986)No.2,pages 815−822
【非特許文献5】MARKUS WIDERSPAHN,“Groundbreaking Development Project for Biotechnologies”,CARL ZEISS PRESS RELEASE,NEW ELECTRON MICROSCOPE,23 February 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
位相板及び補正系を備えた改善されたTEMについての要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
その目的のために、当該発明に従った装置は、
・補正系の少なくとも一部分は、試料の位置及び位相板の間に置かれる、と共に、
・補正系の前記の少なくとも一部分は、位相板の平面に対物系のレンズの後側焦平面を結像させるために備え付けられる
ということにおいて特徴付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】図1Aは、概略的に、先行技術のBoerschの位相板を示す。
【図1B】図1Bは、概略的に、先行技術のBoerschの位相板を示す。
【図2】図2は、位相板無しの及び有りのTEMのコントラスト伝達関数を示す。
【図3】図3は、概略的に、先行技術の補正系を示す。
【図4】図4は、概略的に、当該発明に従った補正系及び位相板の好適な実施形態を示す。
【図5】図5は、概略的に、補正系及び位相板の間における追加されたレンズとともに、当該発明に従った補正系及び位相板を示す。
【図6】図6は、概略的に、当該発明に従ったTEMを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
Gerthsenの論文においては、位相板は、対物系のレンズの後側焦平面に置かれる。これは、位相板が、対物系のレンズ及び補正系の間に位置決めされることを暗示すると共に、このように前に述べられた不都合なことを示す。
【0023】
当該発明は、対物系のレンズ及び位相板の間における補正系の少なくとも一部分を置くことによって、位相板は、よりアクセス可能な平面に置かれることができるという、及び、補正系の光学素子が、位相板へと対物系のレンズの後側焦平面を結像させるために使用されることができるという、洞察に基礎が置かれる。位相板は、対物系のレンズの後側焦平面から取り除かれた平面においてこのように位置決めされるが、それによって前に述べられた不都合なことを回避するものである。これは、補正系の光学素子を使用することで達成されるが、このように後側焦平面及び位相板が置かれる平面の間における光学素子の追加を回避するものであると共に、従って追加された複雑さ及び追加された空間無しにこのような追加的な光学素子によって導入される。
【0024】
当該発明は、前に述べられたタイプの位相板の全てとともに使用されることができることは、述べられることである。
【0025】
位相板がよりアクセス可能なものに存する平面を作るための代替の方法が、JOELへの米国特許第US6,744,048号に記載されることは、留意されることである。この特許において、(レンズ・ダブレットの形態における)標準的な伝達光学部品は、よりアクセス可能なものである異なる位置において対物系のレンズの後側焦平面の1:1の像を作るために使用される。
【0026】
この代替の方法の不都合なことは、このような伝達光学部品の導入が、対物系のレンズ及び収差を補正する系の間に(追加的な)レンズ・ダブレットを導入するというものであるが、追加された複雑さに帰着する。
【0027】
追加されたダブレット及びレンズの間におけるドリフト空間の別の不都合なことは、機器の追加された高さである。収差が補正されたTEMのものは、すでに、かなりの高さを示す:収差が補正されたTitanTM 80−300は、3.4メートルを超過する高さを有する。このようなTEMのものが位置させられる部屋の高さの要件は、高さにおいて4メートルを超えるものであることが推奨される。これらの部屋が、良好な条件付けるもの、温度の条件付けるもの、防音すること、及び振動からの隔離を必要とする際に、これらの部屋の費用は、これらの機器を取り付けるための費用に対してかなり加わることがある。さらにこのような機器の高さを増加させることは、これらの費用におけるさらなる増加に至ることがある。
【0028】
別のこのような方法が、“Adapting the spatial−frequency band pass of in−focus phase−contrast aperture for biological applications”,R.M.Glaeser et al.,Microsc.Microanal.13(Suppl.2)2007,page 1214CD−1215CDに記載されることは、さらに留意されることである。ここで、対物系のレンズ及び位相板の間におけるリレーレンズは、後側焦平面の大きくされた像を形成するために提案される。この論文は、また、位相板が備え付けられたTEMを改善するための収差を補正する素子の使用を示唆する。しかしながら、論文は、どのようにTEM、位相板、及び補正系を組み合わせるかを開示するものではない。
【0029】
この方法の不都合なことは、リレーレンズの導入が、機器の複雑さに加わることである。この方法の別の不都合なことは、追加されたリレーレンズが、また、機器の高さに加わることになるというものであるが、それは、前に述べられたように、不都合なことである。
【0030】
この方法の不都合なことは、リレーレンズそれ自体が、また、収差を導入するというものであるが、それは、対物系のレンズの収差に対して比較されたとき、無視できるものではないことがある。従って、試料の収差の無い像、−又は少なくとも低減された収差を備えた像−を得るために、リレーレンズの収差は、同様に補正されるべきであるが、補正系の要求に加わるものである。
【0031】
当該発明に従った装置の実施形態において、補正系は、対物系のレンズの球面収差の少なくとも一部分を補正する。
【0032】
Gerthsen et al.の前に述べられた論文において参照された、及び、CEOS Gmbh,Heidelberg,Germanyによって生産された、及び、例.FEI Company,Hillsboro,USAのTitanTM 80−300に組み込まれた、補正系は、対物系のレンズの球面収差を補正する。
【0033】
球面収差だけではなく色収差もまた補正されるTEMのものが、知られることは、留意されることである。
【0034】
当該発明に従った装置の好適な実施形態において、補正系は、対物系のレンズ及び位相板の間に完全に置かれる。
【0035】
この実施形態において、完全な補正系は、対物系のレンズ及び位相板の間に置かれることがある。
【0036】
追加的な補正系が、走査型透過型電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope)(STEM)として動作することの可能な機器に使用されることがあるが、それにおいては微細に集束させられたビームが、試料にわたって走査されることは、留意されることである。補正系は、前記の微細に集束させられたビームを形成するレンズの収差を補正するために使用されることがある。
【0037】
追加的な補正系が、例.対物系のレンズの色収差の効果、を最小にするために使用されることがあることは、さらに留意されることである。
【0038】
当該発明に従った装置の別の好適な実施形態において、位相板は、対物系のレンズの後側焦平面の拡大された像が、形成される平面に置かれる。
【0039】
対物系のレンズの後側焦平面の拡大された像を形成することの好都合なことは、例.Boerschの位相板が、位相板の与えられた直径について、あまり散乱されてない電子を遮るというものである。
【0040】
別の好都合なことは、位相板がセンタリングされるのでなければならない確度が軽減されるというものである。
【0041】
対物系のレンズの後側焦平面の拡大された像に位相板を置くことについてのなおも別の好都合なことは、散乱されてないビームの結果として生じるより低い電流密度である。
【0042】
位相板が、散乱されてないビームの焦点のまわりにセンタリングされるのでなければならないことは、留意されることである。前記の焦点は、高い電流密度を示すと共に、位相板のセンタリングの間に位相板の小さな構造は、この電流の大部分を遮断することがあるが、もしかすると位相板(の一部分)の過熱に帰着するものである。
【0043】
Glaeserの論文において提案されたリレーレンズが、また、対物系のレンズの後側焦平面の大きくされた像を形成することがあることは、さらに留意されることである。
【0044】
当該発明に従った装置のさらなる実施形態において、対物系のレンズの後側焦平面及び位相板が置かれる平面の間における倍率は、変動させられることができる。
【0045】
Gerthsen et al.の前に述べられた論文において、位相板の像は、図1に示される。それは、中央の構造、おおよそ50μmの内径を備えた囲むアパーチャに載せられた、おおよそ3μmの外径を備えた、現実の位相板、を示す。現実の位相板の外径は、小さい角度での散乱された電子の遮断を引き起こすが、低い空間周波数についてのカット・オフを導入するものである。囲むアパーチャの内径は、高度に散乱された電子の遮断を引き起こすと共に、このように高い空間周波数についてのカット・オフを導入する。
【0046】
位相板が位置させられる平面の倍率を変動させることによって、カット・オフ周波数は、異なる用途の要件を満たすようにするために、変動させられることができる。
【0047】
なおも当該発明に従った装置のさらなる実施形態において、補正系は、ダブレットを具備すると共に、後側焦平面及び位相板が置かれる平面の間における倍率は、ダブレットの倍率を変動させることによって、変動させられる。
【0048】
対物系のレンズの後側焦平面及び位相板が存する平面の間における倍率を変動させるためにダブレットの可変な倍率を使用することによって、倍率は、余分な光学的な部分品を追加すること無しに変動させられることができる。
【0049】
CEOS補正系において、これは、第一の六重極子へ後側焦平面を伝達するものである、伝達ダブレットとともにされることができる。
【0050】
前記の倍率を変化させるとき、例.補正系の多重極子、の励起を変化させることが、必要なことであることがあることは、留意されることである。
【0051】
別の実施形態において、補正系は、多重極子を具備すると共に、前記の多重極子及び位相板の間における二つのレンズは、倍率を変動させるために使用される。
【0052】
多重極子及び位相板の間におけるレンズのダブレットを使用することによって、補正系において多重極子の励起を変化させること無しに後側焦平面から位相板の平面までの倍率を変化させることは、可能なことである。
【0053】
当該発明に従った装置の別の実施形態において、レンズは、投射系の入口に試料を結像させるために補正系及び投射系の間に置かれる。
【0054】
このレンズは、対物系のレンズ、補正系、及び前記のレンズの組み合わせによって形成された像が、単独で前記の対物系のレンズのものに等しい倍率を有するように、試料の像を脱拡大する(demagnify)ために使用されることができる。好都合なことは、投射系が、そのとき、補正器及び位相板無しの機器のものと同一のものであることができるというものである。
【0055】
位相板が、このレンズの極片内に位置決めされることがあることは、留意されることである。
【0056】
このレンズが、試料の像の収差に寄与することがあることは、さらに留意されることである。当業者に知られたもののように、大きい穴及び大きい間隙を備えたレンズは、このレンズの収差を最小にするために使用されることがある。大きい間隙を備えたレンズを使用することは、これが、位相板を保持する位置決めする機構の簡単なアクセスを可能とする際には、このレンズの極片の間に位相板を位置決めするとき、特に好都合なことである。
【0057】
補正系が、また、前記のレンズの収差を補正することがあることは、述べられることである。
【0058】
当該発明に従った装置のなおも別の実施形態において、補正系は、さらに、少なくとも部分的に、対物系のレンズの色収差を補正する。
【0059】
当該発明に従った装置のまたさらに別の実施形態において、粒子のビームは、電子のビームである。
【0060】
当該発明に従った装置のなおも別の実施形態において、位相板は、格納式に載せられる。
【0061】
多数のTEMのものは、走査型透過型電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope)(STEM)として動作することが可能なものである。STEMにおいて、試料は、電子の微細に集束させられたビームで走査されると共に、例.透過させられた電子の量は、検出される。STEMは、位相板についての必要性を有するものではない。位相板の存在は、それが、透過させられた電子の一部を遮断することがありそうなものである際には、反生産的な(contra-productive)ものであることさえある。格納式の位相板を使用することによって、位相板は、STEMモードにおいて装置を使用するとき、引っ込められることができると共に、位相板は、TEMモードにおいて装置を使用するとき、挿入されることができる。
【0062】
当該発明は、今、図の助けで解明されるが、そこでは、同一の符号は、対応する特徴を指す。
【0063】
その目的のために:
図1A及び図1Bは、概略的に、先行技術のBoerschの位相板を示す、
図2は、位相板無しの及び有りのTEMのコントラスト伝達関数を示す、
図3は、概略的に、先行技術の補正系を示す、
図4は、概略的に、当該発明に従った補正系及び位相板の好適な実施形態を示す、
図5は、概略的に、補正系及び位相板の間における追加されたレンズとともに、当該発明に従った補正系及び位相板を示す、並びに、
図6は、概略的に、当該発明に従ったTEMを示す。
【0064】
図1A及び図1Bは、概略的に、例.米国特許第5,814,815号に記載されたもののような、先行技術のBoerschの位相板を示す。
【0065】
円筒の形態における中央の構造は、それの軸1に沿った穴とともに示されるが、その穴の内側は、円筒の軸のまわりに配置された三つの環に形作られた電極2A,2B、及び3を示すものである。二つの外側の電極が、相互に電気的に接続される一方で、真ん中の電極3は、二つの外側の電極2A及び2Bから絶縁される。円筒の表面4A、4B、及び5を具備する導電性の外側の表面は、導電性の表面によって形成されるが、外側の電極2A,2Bは、前記の導電性の外側の表面の一部分である。
【0066】
位相板から、二つの又はより多くのスポーク6A,6Bは、位相板を保持するために延在する。スポークの外側は、円筒の導電性の外側の表面に接続された電気的に伝導性の層を示す。スポークの少なくとも一つは、外側の層から絶縁された内側の導電性のトラック7を示すが、内側のトラックは、真ん中の電極3に電気的に接続される。
【0067】
真ん中の電極へ電圧を印加することによって、(穴を通過する)散乱されてないビームの電子は、円筒の外側で進む電子と比べて(真ん中の電極の電圧に依存するが)より遅く又はより速く進むことになる。これは、ビームの散乱された部分が、真ん中の電極の電圧によって影響を受けてないものである際に、ビームの散乱された部分に関して位相シフトを経験するビームの散乱されてない部分に等価なものである。
【0068】
導電性の外側の層は、どの角度で散乱された電子が散乱されるのか、及び、このように、どの程度くまで散乱された電子が円筒から取り除かれるのか、と独立な、散乱されてない電子及び散乱された電子の間における均一な位相シフトを引き起こすようにするために、円筒を囲む。導電性の層は、散乱されてないビームに対する真ん中の電極3の効果を制限すると共に、真ん中の電極3における電圧のおかげで円筒の外側の電場を予防する。
【0069】
図2は、概略的に、位相板無しの及び有りのTEMのCTFを示す。
【0070】
CTFは、コントラスト対空間周波数を示す、コントラスト伝達関数である。当業者に知られたもののように、最適なコントラスト、+1のCTF又は−1のCTFのいずれかは、使用されることができる。CTFが0を示す空間分解能を備えた試料における構造は、コントラストを示すものではないと共に、このように不可視のものである。
【0071】
曲線Aは、位相板無しの顕微鏡についてのCTFを示す。CTFは、低い空間分解能について低いコントラストを示す。
【0072】
曲線Bは、位相板有りのTEMのCTFを示す。ここで、コントラストは、低い空間周波数において最適なものを示す。
【0073】
ブロックCは、位相板の構造による電子の遮断のせいで空間分解能より下の信号の欠如を表す。
【0074】
CTFの包絡線及びCTFが水平の軸のまわりで振動する周波数が、対物系のレンズの球面収差係数及び色収差係数、対物系のレンズのデフォーカス(すなわち:試料の平面及び対物系のレンズの物体平面間における距離)、などのような顕微鏡のパラメーターによって支配されることは、留意されることである。
【0075】
図3は、概略的に、CEOS Gmbh.,Heidelberg,Germanyへの米国特許US6,605,810に記載されたもののような先行技術の補正系を示す。このような補正系は、商業的に入手可能なものであると共に例.FEI Company,Hillsboro,USAのTitanTM 80−300TEMに組み込まれる。
【0076】
補正系は、対物系のレンズ305の収差を補正するために使用される。試料は、試料の平面302において光軸301に位置決めされると共に対物系のレンズ305によって結像させられる。試料は、対物系のレンズの前側焦平面に置かれる。二つの主光線、試料の中心からある角度で来る光線303及び、光軸に平行な、試料からの軸外の点から来る光線304、は、この図において示される。光線304は、対物系のレンズの後側焦平面306において光軸と交差する(intercept)。補正系は、光軸301のまわりに配置される。レンズ310A,310Bによって形成された伝達ダブレットは、第一の六重極子311Aに後側焦平面を結像させる。レンズ312A,312Bによって形成されたダブレットは、第二の六重極子311Bに第一の六重極子を結像させる。補正器の働きの詳細な記載については、これによって参照によって組み込まれた、米国特許第US6,605,810号を参照のこと。
【0077】
上記特許に議論されたものではないが、しかし補正系に含まれたものは、軸に光線303を集束させるアダプターレンズ313であるが、それによって平面314に試料の像を形成する。この像は、試料の拡大された像を形成するようにするために、TEMにおいて(示されたものではない)投射系についての物体として使用される。このレンズを使用することで、補正されたTEMの投射系が、補正されたものではないTEMの投射系に同一のものであることができるように、補正系無しの装置の倍率に匹敵する前記の倍率を作ることは、可能なことである。
【0078】
対物系のレンズ305が、ここでは、レンズそれ自体の外側の試料の平面302とともに、薄いレンズとして示された便宜のためのものであることは、留意されることである。大部分のTEMのものは、対物系のレンズとして厚いレンズを使用するが、そこでは、試料の位置は、対物系のレンズの(磁)場内に置かれる。
【0079】
補正系が、対物系のレンズの収差を補正するだけでなく、補正系の他のレンズ(310A,310B,312A,312B,313)をもまた補正することは、また留意されることである。
【0080】
図4は、概略的に、当該発明に従った補正系及び位相板の好適な実施形態を示す。
【0081】
この実施形態において、図3に記載されたもののような、補正系330は、位相板340及び対物系のレンズ305の間に完全に置かれる。補正系のアダプターレンズ313の強さは、位相板に対物系のレンズの後側焦平面の像を形成するようにするために、わずかに変化させられる。この好適な実施形態において、追加的なアダプターレンズ341は、平面342に試料の像を形成するために追加されるが、前記の平面は、投射系についての物体平面として作用するものである。追加的なアダプターレンズは、補正系及び位相板無しの匹敵する装置において対物系のレンズによって形成される像と大きさにおいて匹敵する物体の像を形成するために使用される。
【0082】
レンズ310A,310Bによって形成されたダブレットが、位相板における後側焦平面の像の倍率を変動させるために使用されることができることは、留意されることである。これは、しかしながら、多重極子311A及び311Bの励起が、また、変化させられるべきであることを暗示する。倍率が、任意に選抜されることができないことは、さらに注意されることである。補正系の多重極子におけるビームの直径が、小さいものであるとき、多重極子の大きい励起は、必要とされるが、それは、例.散逸の問題(磁気的な多重極子)、フラッシュ・オーバー(静電気的な多重極子)、などに至ることがある。ビームの大きい直径は、しかしながら、ビームが、多重極子の内径に近いものであることを暗示するが、例.前記の六重極子の実用的な実施によって発生させられたより高次の多重極子の場(例.N>12でのN個の極の場)、から結果として生じる収差を導入するものである。
【0083】
図5は、概略的に、補正系及び位相板の間における追加されたレンズとともに、当該発明に従った補正系及び位相板を示す。
【0084】
この実施形態においては、位相板の平面における後側焦平面の倍率を変動させるための別の方法は、レンズ313及び314によって形成されたダブレットを使用することである。この場合には、補正系を通じた主光線は、前記の倍率を変化させるとき、変化させられないと共に、このように補正系の励起は、前記の倍率を変動させるとき、変化させられることを必要とするものではない。
【0085】
図6は、概略的に、当該発明に従ったTEMを示す。
【0086】
図6は、光軸600に沿った、電子のような、粒子のビームを生成させる粒子源601を示す。粒子は、より高いエネルギー、例.400keV−1MeV、又は、より低いエネルギー、例.30keV、が、使用されることがあるとはいえ、80−300keVの典型的なエネルギーを有する。粒子のビームは、試料603に衝突する平行なビームを形成するためにコンデンサー系602によって操作されるが、試料は、試料ホルダー604と位置決めされる。試料ホルダーは、光軸に関して試料を位置決めすることができると共に光軸に対して垂直な平面において試料をシフトさせると共に前記の軸に関して試料をチルトさせることがある。対物系のレンズ305は、試料の拡大された像を形成する。対物系のものは、補正系330、例.図4において先に示されたもののような補正系、によって後に続けられる。アダプターレンズ341及び位相板340は、対物系のレンズの後側焦平面に共役させられた平面に置かれるが、前記の共役させられた平面は、補正系及び投射系606の間に位置決めされる。位相板は、位相板が光軸のまわりにセンタリングされることを可能にする、マニピュレーター605と位置決めされる。投射系は、検出器607に試料の拡大された像を形成するが、それによって例.0.05nm、の試料の細部を明かす。検出器は、蛍光スクリーン、又は、例.CCDカメラ、の形態をとることがある。例.蛍光スクリーンの場合においては、スクリーンは、ガラス窓608を介して目視されることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 軸
2A,2B,3 電極
4A,4B,5 円筒の表面
6A,6B スポーク
7 内側のトラック
301,600 光軸
302 試料の平面
303,304 光線
305 対物系のレンズ
306 後側焦平面
310A,310B,312A,312B レンズ
311A,311B 六重極子
313,341 アダプターレンズ
314,342 平面
330 補正系
340 位相板
601 粒子源
602 コンデンサー系
603 試料
604 試料ホルダー
605 マニピュレーター
606 投射系
607 検出器
608 ガラス窓
A,B 曲線
C ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の実質的に平行なビームで試料を照射すること及び試料を通じて透過させられた粒子を検出することによって試料の像を形成するための装置であって、
・ 粒子のビームを生成させるための粒子源、
・ 平行なビームを形成するためのコンデンサー系、
・ 試料位置に試料を保持するための試料ホルダー、
・ 試料の拡大された像を形成するための対物系のレンズ、
・ 試料を通過したビームの散乱されてない部分が実質的に丸いフォーカスを形成する平面に位置させられた位相板、
・ 対物系のレンズの収差を補正するための補正系、及び
・ 試料の拡大された像をさらに拡大するための投射系
:を具備する、装置において、
・ 補正系の少なくとも一部分は、試料位置及び位相板の間に置かれると共に、
・ 前記補正系の少なくとも一部分は、位相板の平面に対物系のレンズの後側焦平面を結像させるために備え付けられる
ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
補正系は、対物系のレンズの球面収差の少なくとも一部分を補正する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
補正系は、試料位置及び位相板の間に完全に置かれる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
位相板は、対物系のレンズの後側焦平面の拡大された像が形成される平面に置かれる、請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
対物系のレンズの後側焦平面及び位相板が置かれる平面の間の倍率は、変動させられることができる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
補正系は、ダブレットを具備すると共に、後側焦平面及び位相板が置かれる平面の間の倍率は、ダブレットの倍率を変動させることによって変動させられる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
補正系は、多重極子を具備すると共に、前記多重極子及び位相板の間の二つのレンズは、前記倍率を変動させるために使用される、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
補正系及び投射系の間にレンズは、投射系の入口に試料を結像させるために置かれる、請求項1乃至7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
補正系は、少なくとも部分的に対物系のレンズの色収差をさらに補正する、請求項1乃至8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
粒子のビームは、電子のビームである、請求項1乃至9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
位相板は、格納式に載せられる、請求項1乃至10のいずれかに記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−193963(P2009−193963A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31157(P2009−31157)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】