説明

収納トレイ

【課題】パネル状物品の破損を防止可能であって、且つ、収納したパネル状物品を取り出しが容易な収納トレイを提供すること。
【解決手段】収納トレイ1は、複数のトレイ本体11を積層させる収納トレイ1は、トレイ本体11に、パネルPの側部と当接する側壁部15及びパネルPの下面の外縁部を支持する支持部16を有する収納部12と、収納部12の一対の側部に設けられ、その支持部16と隣接する側面と底面との稜部にアンダーカットである突部21を有する指逃げ部13と、を備え、パネルPの主面方向及び上下方向の移動を、側壁部15、支持部16及び突部21にて規制する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル状物品を収納する収納トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや液晶パネル等の薄板状のパネル状物品の収納として、パネル状物品の外形状に凹んだ収納部に、パネル状物品を収納する収納トレイが知られている。このような、収納トレイとして、例えば、パネル状物品を複数枚積層させて収納される収納凹部を複数有するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1に記載された収納トレイは、互いに積層可能なパネル状物品は収納できても、その表面に、部品が載置されたものや、その表面に表面処理が行われ、積層できないパネル状物品を収納することは困難である。
【0004】
そこで、パネル本体に設けられた収納部にパネル状物品を載置し、このパネル本体上部にパネル本体を積層することで、パネル状物品を収納可能な収納トレイも知られている。このような収納トレイを、以下、図7〜9を用いて簡単に説明する。なお、図7は、従来の収納トレイ100の上面図、図8は収納トレイ100の図7に記載されたM−M断面を示す断面図、図9は収納トレイ100の図7に記載されたN−N断面を示す断面図である。
【0005】
収納トレイ100は、ポリプロピレン等の樹脂材料で真空成形されたトレイ本体101が複数積層されることで形成されている。図7〜9に示すように、トレイ本体101は、トレイ本体101に一体成型され、凹状に複数設けられた収納部102を備えている。また、トレイ本体101は、互いに積層可能に形成され、積層時に位置合わせを行う複数の係合部103が設けられている。
【0006】
収納部102は、真空成形により凹状に形成され、下方から開口する上方に向って漸次拡口する凹部である。収納部102は、側壁部105と、支持部106と、底面部107と、指逃げ部108と、を備えている。側壁部105は、下方から上方に向って漸次拡口するように傾斜する傾斜面105aに形成され、その一部が切欠して形成されている。
【0007】
支持部106は、側壁部105の下方に設けられ、パネル状物品Pの外縁部の一部を支持可能に形成されている。なお、支持部106は、側壁部105の内面とパネル状物品Pの外面とが略同一寸法となる位置に設けられている。底面部107は、支持部106で支持されたパネル状物品Pの下面を逃す(下面と底面部107との干渉を防止する)形状に形成されている。
【0008】
指逃げ部108は、側壁部105及び支持部106の一部が切欠する形状に真空成形時に形成され、パネル状物品Pを狭持して取り出し可能な逃げである。また、指逃げ部108は、図9に示すように、底面部107の一部から、底面部107よりもさらに下方に逃げるように形成されている。
【0009】
このように構成された収納トレイ100は、図7〜9に示されるように、パネル状物品Pをその収納部102に収納する。収納部102に収納されたパネル状物品Pは、その側面が、収納部102の側壁部105に支持されることで、パネル状物品Pの主面方向の移動が規制される。
【0010】
パネル状物品Pは、その下面が、支持部106により支持される。パネル状物品Pは、その上面が、積層されたトレイ本体101の底面部107及び指逃げ部108から離間して配置される。なお、パネル状物品Pの上方への移動は、その上方に位置する指逃げ部108により規制される。
【0011】
このように、パネル状物品Pは、積層されたトレイ本体101に収納されることで、その主面方向及び上下方向の移動が規制されることとなり、パネル状物品Pの搬送時等においては、パネル状物品Pの移動を防止することが可能に形成されている。即ち、収納トレイ100は、その収納部102に収納されたパネル状物品Pの移動を規制することで、搬送時にパネル状物品Pの破損を防止する。
【0012】
また、収納トレイ100には、指逃げ部108が設けられているため、パネル状物品Pを収納部102から取り出す際には、指逃げ部108からパネル状物品Pの側部を狭持することで、パネル状物品Pを取り出すことができる。このように、収納部102からパネル状物品Pを取り出し(摘出)が容易となり、作業性が良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−347570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した収納トレイでは、以下の問題があった。即ち、上述した収納トレイ100は、搬送時に落下等により衝撃が発生すると、その衝撃により、トレイ本体101が撓む等により、パネル状物品Pの上面が指逃げ部108により押圧される。
【0015】
即ち、通常の搬送時においては、パネル状物品Pの上方への移動を指逃げ部108の下面にて規制するが、衝撃印加時においては、指逃げ部108によりパネル状物品Pが押圧される。また、収納部102の指逃げ部108が形成されている部位は、この指逃げ部108により支持部106の一部が切欠している状態であり、パネル状物品Pの指逃げ部108に対向する部位は支持部106により支持されていない。
【0016】
支持部106に支持されていないパネル状物品Pの上面が指逃げ部108により押圧されると、パネル状物品Pにせん断応力が加わり、パネル状物品Pが破損する虞がある。このため、搬送時に収納トレイの落下等による衝撃印加があっても、パネル状物品Pが破損を防止可能な収納トレイの要望がある。
【0017】
なお、上述した指逃げ部108を設けない構成も考えられるが、指逃げ部を有さない場合には、収納部からパネル状物品の取り出しが困難であり作業性の低下となる。また、指逃げ部108を設けない構成とし、パネル状物品Pの上方への移動の規制は底面部107で行うと、パネル状物品Pの上方への移動を、パネル状物品Pの主面で規制することとなり、パネル状物品Pの主面又は主面に設けられた構成品を破損させる虞もある。
【0018】
そこで本発明は、パネル状物品の破損を防止可能であって、且つ、収納したパネル状物品を取り出しが容易な収納トレイを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の収納トレイは、次のように構成されている。
【0020】
本発明の一態様として、パネル状物品を収納する収納トレイであって、樹脂材料により成形され、互いに積層可能なトレイ本体と、前記トレイ本体に一体に成形され、前記パネル状物品の側部と当接し、前記パネル状物品の主面方向の移動を規制する側壁部、及び、前記側壁部内に設けられ、前記パネル状物品の下面の外縁部を支持する支持部を具備する収納部と、前記収納部に隣接して前記トレイ本体に一体に成形され、その前記支持部に隣接する側面及び底面の稜部に形成された前記支持部の下方に位置する突部を有し、前記突部が前記積層する他のトレイ本体の支持部と対向する逃げ部と、を備えることを特徴とする収納トレイが提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、収納部に収納されるパネル状物品の取り出しが容易であって、且つ、収納されたパネル状物品の破損を防止できる収納トレイを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る収納トレイの構成を示す上面図。
【図2】同収納トレイの要部構成を示す断面図。
【図3】同収納トレイの要部構成を示す断面図。
【図4】同収納トレイの要部構成を拡大して示す上面図。
【図5】本発明の変形例に係る収納トレイの要部構成を拡大して示す上面図。
【図6】本発明の変形例に係る収納トレイの要部構成を拡大して示す断面図。
【図7】従来の技術の収納トレイの構成を示す上面図。
【図8】同収納トレイの要部構成を示す断面図。
【図9】同収納トレイの要部構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態に係る収納トレイ1を、図1〜4を用いて説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る収納トレイ1の構成を示す上面図、図2は同収納トレイ1の要部構成を矢視AからA−A断面を模式的に示す断面図、図3は同収納トレイ1の要部構成を矢視BからB−B断面を模式的に示す断面図、図4は同収納トレイ1の収納部12及び指逃げ部(逃げ部)13を拡大して示す上面図である。なお、図1、4は、収納トレイ100の上面から視認した上面図を示しており、図2,3中の上方が収納トレイ1の上面側、下方が収納トレイ1の下面側として以下説明する。
【0024】
収納トレイ1は、複数のトレイ本体11を有し、これらトレイ本体11が複数積層されることで形成されている。収納トレイ1は、複数のパネルPを1枚毎に収納可能に形成されている。また、収納トレイ1は、収納したパネルPを搬送させる搬送部材である。なお、パネルPは、半導体ウエハや液晶パネル等の薄板状のパネル状物品である。
【0025】
トレイ本体11は、ポリプロピレン等の比較的軟質であって、所定の力で弾性変形可能な弾性力を有する樹脂材料で真空成形されている。なお、所定の力で弾性変形する弾性力とは、パネルPを支持可能、且つ、トレイ本体11の形状を維持可能な程度であって、パネルPに外力が印加した場合に、パネルPを破損しないよう弾性変形すればよく、その詳細は省略する。
【0026】
図1〜4に示すように、トレイ本体11は、このトレイ本体11に凹状に設けられた複数の収納部12と、収納部12の一対の側部に設けられた指逃げ部13と、を備えている。トレイ本体11は、積層時に位置合わせを行う複数の凹部及び凸部の位置合わせを行う係合部14を備えている。なお、この係合部14は、所謂スタッキング部であって、互いに積層(スタック)することで、積層するトレイ本体11の主面方向の位置合わせが可能であれば、その数量及び形状は適宜設定可能である。
【0027】
トレイ本体11は、収納部12、指逃げ部13及び係合部14が、例えば、真空成形法によって、ポリプロピレン製のシートが金型に形成されたキャビティー内に吸引されて成形される。なお、その際には、加熱時間や温度等の成形条件を適宜調整することで、トレイ本体11の各形状が形成される。
【0028】
収納部12は、真空成形によりトレイ本体11上面に開口する、凹状に形成された凹部であり、トレイ本体11上に行列を成して配置される。収納部12は、下方から開口する上方に向って漸次拡口して形成されている。収納部12は、側壁部15と、支持部16と、底面部17と、を備えている。
【0029】
なお、図1に記載されたトレイ本体11では、収納部12は、例えば、2行5列に配置されている例を記載しているが、収納部12の配置は、トレイ本体11のサイズや収納するパネルPの形状等によって、適宜設定可能である。
【0030】
側壁部15は、その内面により、パネルPの側部と当接することで、パネルPの主面方向の移動を規制可能に形成された収納部12の周壁である。側壁部15は、その下方から上方に向って漸次拡口するように傾斜する傾斜面15aで形成されている。
【0031】
側壁部15は、その対向する一対の側部が一部切欠して形成されている。具体的には、側壁部15は、収納部12の長辺となる部位が、支持部16の上面と同一面の高さまで切欠する切欠部15bを有している。また、側壁部15は、その稜部(角部)に形成された、パネルPの角部と干渉を回避する角逃部15cを有している。
【0032】
また、側壁部15は、例えば、図1に示すように、傾斜面15a及び切欠部15bが連続して一体に形成されることで、複数の収納部12の傾斜面15a及び切欠部15bを形成する。
【0033】
支持部16は、パネルPの側縁部を支持可能に形成されている。具体的には、支持部16は、側壁部15及び底面部17の間に設けられ、パネルPの外周に沿った枠形の面部である。支持部16は、側壁部15の内面とパネルPの外面とが略同一寸法となる位置に設けられている。
【0034】
底面部17は、支持部16から所定の距離離間する収納部12の底面を形成している。底面部17は、支持部16で支持されたパネルPの下面を逃す、即ち、パネルPの下面、又は、パネルPの下面に設けられた構成品と干渉しないように、支持部16の上面から底面まで所定の距離離間する空間を形成している。
【0035】
指逃げ部18は、真空成形により、トレイ本体11の上面に開口する、凹状に形成された凹部であり、収納部12の一対の側部に隣接して設けられている。図1に記載されたトレイ本体11では、指逃げ部18は、収納部12と交互に配置されている。なお、指逃げ部18は、図1に示すように、隣接する収納部12間に共用の指逃げ部13が設けられていてもよく、また、収納部12に対して一対設けられていてもよい。
【0036】
指逃げ部13は、その底面積が、そのトレイ本体11の上面の開口面積よりも大に形成されている。具体的に説明すると、図3に示すように、指逃げ部13は、収納部12に隣接する内側面がその上方から下方に向って外方に傾斜する傾斜面により連続することで形成されている。これにより、指逃げ部13は、底面部の一部が支持部16の下方に位置する突部21が形成されている。
【0037】
なお、指逃げ部13は、例えば、真空成形時に、先ず、その上方が下方よりも拡口する凹状に形成後、支持部16の下方へと位置するように、指逃げ部13の支持部16と隣接する内側面と底面との稜部(角部)に突部21が形成されている。このため、突部21の肉厚は、トレイ本体11の他部の肉厚に比べ、若干薄く形成されることとなる。なお、この成形方法以外により突部21を成形してもよい。
【0038】
突部21は、図4中破線で示すように、トレイ本体11の上面側からは視認できない、支持部16の下方に位置するアンダーカットである。また、突部21は、指逃げ部13の支持部16の下方に位置する角部にのみ成形されている。
【0039】
突部21は、支持部16の下方に位置する角部(稜部)に、この角部に沿って直線状に成形される。このため、図3中右側の指逃げ部13では、隣接する1つの収納部12の支持部16の下方に位置する一方の側部にのみ突部21が形成されている。また、図3中左側の指逃げ部13では、隣接する2つの収納部12の支持部16の下方にそれぞれ突部21が設けられるため、支持部16の下方に位置する両方の側部に突部21が形成されている。
【0040】
突部21は、その下面が、図3に示すように、トレイ本体11を積層させた際に、支持部16と対向可能に形成されている。これにより、突部21は、支持部16に支持されたパネルPの上面の側縁部の一部と対向可能に形成されている。なお、突部21は、トレイ本体11を積層させた際に、突部21の下面とパネルPの側縁部とは、微小な隙間を有して離間する形状に形成されている。
【0041】
即ち、突部21は、収納部12に収納されたパネルPが上方に移動する際に、その下面により、パネルPが上方へ移動することを規制可能に形成されている。
【0042】
このように構成された収納トレイ1では、パネルPを収納部12に配置し、トレイ本体11を積層させることで、収納トレイ1内にパネルPを収納可能に形成されている。以下、収納トレイ1へのパネルPの収納について説明する。
【0043】
先ず、収納トレイ1に収納させるパネルPを収納部12の側壁部15へと挿入し、支持部16へと載置させ、支持部16によりパネルPを支持させる。このとき、側壁部15は、内面側に傾斜する傾斜面であるため、パネルPは、側壁部15により案内されて支持部16へと移動し、支持部16にて支持される。
【0044】
次に、支持部16でパネルPを支持させた状態で、トレイ本体11に他のトレイ本体11を配置させ、複数の係合部14によりトレイ本体11の位置決めを行うとともに、トレイ本体11同士を積層させる。
【0045】
パネルPは、その側部を側壁部15により規制されるとともに、その下面の外縁部は支持部16により支持されることとなる。また、パネルPは、その上面の外縁部が、突部21の下面と近接して、収納部12内に収納されることとなる。
【0046】
これにより、パネルPは、その主面方向の移動が側壁部15により規制されるとともに、その上下方向の移動が支持部16及び突部21により規制されることで、搬送時の振動に追従してパネルPが振動することを防止できる。
【0047】
また、収納トレイ1の搬送時において、例えば、収納トレイ1を落下させる等により衝撃が印加されたときには、パネルPは、その上面が突部21により上方への移動を規制されるとともに、突部21による下方の押圧は支持部16により支持されることとなる。即ち、パネルPは、突部21による押圧があっても支持部16により支持されることから、パネルPは、過大なせん断応力が印加されることはなく、パネルPの損傷を防止することができる。
【0048】
次に、収納トレイ1に収納されたパネルPを収納部12から取り出す場合を説明する。先ず、積層された上段のトレイ本体11を下段のトレイ本体11から脱離させる。次に、指逃げ部13へ指又はパネルPを取り出すアーム等の狭持手段を挿入し、その状態で、パネルPを摘むように、近接させる。
【0049】
なお、トレイ本体11は、弾性力を有していることから、指逃げ部13からパネルPを摘むように、支持部16と指逃げ部13との境目を押圧することで、トレイ本体11の一部、即ち、支持部16と指逃げ部13との境目周囲が弾性変形し、パネルPの側部を狭持する(摘む)ことが可能となる。このようにパネルPを狭持して上方に持ち上げることで、パネルPを収納部12から脱離させることが可能となる。
【0050】
このように構成された収納トレイ1によれば、パネルPは、側壁部15、支持部16及び突部21により主面方向及び上下方向でその移動が規制されるため、搬送時のパネルPの破損を防止することが可能となる。
【0051】
また、収納トレイ1の落下時においても、パネルPは、支持部16及び突部21により上下方向で狭持され、パネルPに過大なせん断応力が印加されることを防止できる。また、パネルPを規制するトレイ本体11は弾性を有していることから、支持部16及び突部21により落下の衝撃、及び、パネルPとトレイ本体11との圧縮応力等を吸収又は分散することが可能となり、パネルPに過大な圧縮応力等の応力が印加されることを防止できる。即ち、パネルPへ印加される応力を極力低減し、パネルPの破損を極力防止することが可能となる。このように、収納トレイ1は、パネルPの搬送時の破損を防止可能となる。
【0052】
さらに、パネルPは、半導体素子やプリント配線等が設けられていても、パネルPが設けられたトレイ本体11の底面部17と支持部16、及び、載置されたトレイ本体11の底面部17の下面と支持部16は、それぞれ所定の距離が設けられている。このため、パネルPの上方及び下方には、構成品と干渉を防止するための空間が形成されることとなる。
【0053】
この空間により、パネルPの表面に設けられた構成品がトレイ本体11と干渉することがなく、パネルPに設けられた構成品の破損も防止可能となる。なお、パネルPは、その上下方向は、支持部16及び突部21により、その外縁部が支持されているだけであるから、これら支持部16及び突部21がパネルPの表面の構成品と干渉することもない。
【0054】
突部21は、少なくとも、その一部が、指逃げ部13の他部よりも肉厚が薄く形成されている。即ち、突部21は、アンダーカットであり、真空成形において、突部21以外の指逃げ部13を成形しさらに突部21を成形するため、その突部21の肉厚(厚さ)は、指逃げ部13の他部の肉厚よりも比較的薄い形状に形成される。このため、突部21の弾性力は、トレイ本体11の突部21以外の弾性力よりも低い。
【0055】
このように突部21は、少なくともその一部の肉厚が薄く形成されることで、応力等をより吸収又は分散させることができ、より、パネルPを破損させることを極力防止可能となる。このように、突部21は、その成形方法により、パネルPの上下方向の移動の規制を行う規制部として、より適した弾性力を得ることが可能となる。
【0056】
上述したように本実施の形態に係る収納トレイ1によれば、収納部12に収納したパネルPをその主面方向及び上下方向にて移動を規制することで、搬送時の破損を防止することが可能となる。また、突部21により、収納トレイ1に衝撃が印加されても、パネルPへの過大な応力印加を防止し、パネルPの破損を防止することで、収納トレイ1の信頼性を向上することが可能となる。
【0057】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。上述した例では、突部21の一部の肉厚が、指逃げ部13の他部の肉厚よりも薄い構成として説明したがこれに限定されない。例えば、突部21を含む指逃げ部13の肉厚を均一とし、この指逃げ部13の肉厚を他のトレイ本体11の肉厚よりも薄くする構成でもよい。即ち、パネルPの上下方向の移動の規制時に、適した弾性力を得ることが可能であればよい。具体的には、突部21は、例えば、パネルPを支持可能な肉厚を有する支持部16よりも肉厚が薄い形状であればよい。
【0058】
また、突部21の肉厚が他のトレイ本体11の肉厚と同一の厚さであってもよい。即ち、突部21の肉厚を他のトレイ本体11の肉厚と同一の厚さとしても、突部21を支持部16と対向させる構成により、パネルPに応力が印加される効果は得られるため、突部21を肉薄とする効果以外の上述した効果は当然得られる。このように、突部21の肉厚をトレイ本体11の突部21以外の肉厚と同一の厚さとしても、従来の収納トレイに比べて、パネルPの破損を防止可能な効果を有することは言うまでもない。
【0059】
また、上述した指逃げ部13は、他の形状構成であってもよい。以下、図5及び図6を用いて、収納トレイ1の指逃げ部13の変形例を説明する。なお、図5,6中、図1〜4と同様の構成には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0060】
例えば、上述した例では、突部21は、指逃げ部13の稜部に直線状に形成したが、これに限定されない。例えば、図5の左側に示す指逃げ部13Aのように、指逃げ部13Aの稜部に複数の曲面状の突部21Aを形成してもよい。
【0061】
また、上述した例では、指逃げ部13は、支持部16の一方の側面に一つ形成する構成としたがこれに限定されない。例えば、図5の右側に示す指逃げ部13Bのように、例えば、切欠部15bに複数形成してもよい。指逃げ部13Bは、パネルPの取り出し時に、パネルPを摘めればよく、指逃げ部13Bの寸法形状は、指又は狭持手段が挿入可能であればよい。
【0062】
また、上述した例では、突部21は、図2,3において、支持部16の面方向と略平行に形成された図が示されているがこれに限定されない。例えば、図6の上側に示す突部21Cのように、その稜部周囲において若干傾斜する傾斜部51を有する形状であってもよい。
【0063】
傾斜部51を有する突部21Cは、パネルPと当接する面を極力低減させることができる。また、例えば、パネルPの外縁形状に応じて、傾斜を設けても良い。例えば、パネルPの外縁が面取りされている等の場合には、この面取部の傾斜と平行な傾斜部51としても良い。このように、傾斜部51を設けることで、パネルPを規制する際に、パネルPの形状に応じて、パネルPに過度な圧力が印加されることを防止可能となる効果や、接触面積を低減させる効果を得ることができる。
【0064】
また、図6の下側に示す突部21Dのように、その突部21Dの先端にR部(曲面面取部)52を形成する構成であってもよい。突部21Dの先端にR部52を形成することで、パネルPの上面にその先端が当接する際に、パネルP上面への傷や当接時の打痕等の発生を防止可能となる。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…収納トレイ、11…トレイ本体、12…収納部、13…指逃げ部(逃げ部)、14…係合部、15…側壁部、15a…傾斜面、15b…切欠部、15c…角逃部、16…支持部、17…底面部、21…突部、100…収納トレイ、101…トレイ本体、102…収納部、103…係合部、105…側壁部、105a…傾斜面、106…支持部、107…底面部、108…指逃げ部、P…パネル状物品(パネル)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル状物品を収納する収納トレイであって、
樹脂材料により成形され、互いに積層可能なトレイ本体と、
前記トレイ本体に一体に成形され、前記パネル状物品の側部と当接し、前記パネル状物品の主面方向の移動を規制する側壁部、及び、前記側壁部内に設けられ、前記パネル状物品の下面の外縁部を支持する支持部を具備する収納部と、
前記収納部に隣接して前記トレイ本体に一体に成形され、その前記支持部に隣接する側面及び底面の稜部に形成された前記支持部の下方に位置する突部を有し、前記トレイ本体の積層時に前記突部が他の前記トレイ本体の支持部と対向する逃げ部と、
を備えることを特徴とする収納トレイ。
【請求項2】
前記逃げ部は、少なくとも、前記トレイ本体の積層時に前記支持部に対向する前記突部の一部が、前記逃げ部の他部又は前記支持部よりも肉厚が薄く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の収納トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−148510(P2011−148510A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9373(P2010−9373)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(592184706)東芝ロジスティクス株式会社 (15)
【出願人】(501073426)ダイセルパックシステムズ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】