説明

収縮性フィルム

【課題】透明性に優れ、薄肉でも高い剛性を有し、表裏非対称フィルムであっても優れたカール抑制効果と、実用的フィルム強度及びシール性に優れたフィルムを提供すること。
【解決手段】内部層(C)と、前記内部層(C)の両面の一方に表面層(A)と、他方に表面層(E)と、前記内部層(C)と前記表面層(A)との間に接着層(B)と、前記内部層(C)と前記表面層(E)との間に接着層(D)と、を有する少なくとも5層からなる収縮性フィルムであって、前記内部層(C)がポリ乳酸系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂で構成される層であり、前記表面層(A)がポリ乳酸系樹脂で構成される層であり、前記表面層(E)がポリオレフィン系樹脂で構成される層である、収縮性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に収縮包装用途に好適に用いられる収縮性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の節約のため、包装用フィルムの省資源化、具体的には包装方法の見直しによるフィルムの使用面積の削減やフィルムの薄肉化、植物由来原料の使用等で、フィルムの使用量の削減を進めることが望まれている。しかしながら、シャンプーやボディソープの容器等の非食品包装用途においては、商品そのものが重いものであったり、形が複雑であったりするため、現状は、成形のしやすいポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等の軟質樹脂を原料とする必要があり、その場合、軟質樹脂フィルムの厚みを13〜20μm程度として剛性を補う必要がある。
剛性の高いフィルムも開発されており、特許文献1には、共重合ポリエステル系樹脂を用いた硬質熱収縮性フィルムが開示されている。
【0003】
さらに昨今の、地球環境問題に関して、環境適性に優れる容器包装材料のニーズが年々高まってきており、廃棄物削減の観点からの容器包装材料の薄肉化及びCO2排出量低減のために従来の石油由来原料から植物由来原料への転換の進展に大きな期待が寄せられている。
植物由来樹脂と石油系樹脂を用いたシュリンク包装用フィルムとして、特許文献2には、表裏層にポリ乳酸系樹脂、中間層としてポリオレフィン系樹脂、接着層として、酸変性ポリオレフィン樹脂、SEBS、又はエチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル共重合体等を用いて、製造した熱収縮性積層フィルムが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特公平5−33896号公報
【特許文献2】特開2006−218857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されたフィルムでは、特に非食品包装用として用いた場合に、シール性が不十分であり、さらなる改良が望まれていた。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、透明性に優れ、薄肉でも高い剛性を有し、表裏非対称フィルムであってもカール抑制効果に優れるため良好な包装機走行性を発揮し、実用的フィルム強度及びシール性に優れた収縮性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂で構成される内部層に対して、ポリ乳酸系樹脂で構成される層と、ポリオレフィン系樹脂で構成される層と、を表面層として有し、前記2つの表面層と内部層との間にそれぞれ接着層を有する少なくとも5層からなる収縮性フィルムとすることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の収縮性フィルムを提供する。
[1]
内部層(C)と、前記内部層(C)の両面の一方に表面層(A)と、他方に表面層(E)と、前記内部層(C)と前記表面層(A)との間に接着層(B)と、前記内部層(C)と前記表面層(E)との間に接着層(D)と、を有する少なくとも5層からなる収縮性フィルムであって、
前記内部層(C)がポリ乳酸系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂で構成される層であり、
前記表面層(A)がポリ乳酸系樹脂で構成される層であり、
前記表面層(E)がポリオレフィン系樹脂で構成される層である、収縮性フィルム。
[2]
前記ポリオレフィン系樹脂が、0.890〜0.930g/cm3の密度を有するエチレン−α−オレフィン共重合体及び/又は70〜160℃に融解ピーク温度を有するポリプロピレン系共重合体を含有する、前記[1]に記載の収縮性フィルム。
[3]
前記接着層(B)及び前記接着層(D)が、2〜50質量%のスチレン含量を有するスチレン系エラストマー、0.850〜0.890g/cm3の密度を有するポリプロピレン系エラストマー、0.850〜0.880g/cm3の密度を有する超低密度ポリエチレン、及び15〜60質量%の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を50質量%以上含有する柔軟樹脂で構成される層である、前記[1]又は[2]に記載の収縮性フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂で構成される内部層に対して、ポリ乳酸系樹脂で構成される層を一方の表面層とし、ポリオレフィン系樹脂で構成される層をもう一方の表面層とし、2つの表面層と内部層との間にそれぞれ接着層を有する少なくとも5層からなる収縮性フィルムとすることで、透明性に優れ、薄肉でも高い剛性を有し、表裏非対称フィルムであっても優れたカール抑制効果と、実用的フィルム強度及びシール性に優れたフィルムを得ることができる。また、本発明は、地球温暖化対策としての焼却時の炭酸ガス排出量削減、及びフィルムの薄肉化による廃棄物削減等の環境適性に優れる収縮性フィルムを提供することができる。さらには、本発明は、実包装を行った際に、良好な包装機走行性を発揮し、熱収縮時には、収縮不足による緩みやシール線端部の角残りもなく、被包装物に密着したタイトで、優れた光沢を有する包装体を得ることができる収縮性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施の形態という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
本実施の形態の収縮性フィルム(以下、単に「フィルム」と略称する場合がある。)は、内部層(C)と、内部層(C)の両面の一方に表面層(A)と、他方に表面層(E)と、内部層(C)と表面層(A)との間に接着層(B)と、内部層(C)と表面層(E)との間に接着層(D)と、を有する少なくとも5層からなる収縮性フィルムである。
そして、内部層(C)はポリ乳酸系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂で構成される層であり、表面層(A)はポリ乳酸系樹脂で構成される層であり、表面層(E)はポリオレフィン系樹脂で構成される層である。
【0012】
[表面層(A)]
本実施の形態のフィルムは、ポリ乳酸系樹脂からなる表面層(A)(以下、単に(A)と略称する場合がある。)を有する。
本実施の形態において、(A)をポリ乳酸系樹脂で構成することにより、樹脂自体の硬さにより、フィルム同士が密着せず、アンチブロッキング性に優れ、大量の滑剤やアンチブロッキング剤を使用しなくてもよいので、光沢性に優れるフィルムとすることができる。
また、ポリ乳酸系樹脂で構成される(A)を、包装体の外側になるようにすることで、包装体としてのアイキャッチ効果が向上し、商品性が高まり、包装体同士の滑り性にも優れる為、商品の出し入れや陳列時にも作業性がよい。
(A)において、ポリ乳酸系樹脂中ポリ乳酸を50質量%以上含有していることが好ましい。(A)中で、ポリ乳酸が50質量%以上含まれることとなり、剛性に優れるフィルムを得ることができる。
【0013】
本実施の形態におけるポリ乳酸は、植物中の澱粉等を乳酸発酵して、モノマーである乳酸を得た後、直接重縮合する方法、乳酸のプレポリマーを解重合して得たラクチドを開環重縮合する方法等によって製造することができる。
ポリ乳酸中、L−乳酸とD−乳酸のモル比(L−乳酸/D−乳酸)は100/0〜0/100であり、好ましくは100/0〜80/20又は0/100〜20/80であり、より好ましくは99.5/0.5〜85/15又は15/85〜0.5/99.5である。また、ポリ乳酸は、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸との共重合体であってもよい。
【0014】
ポリ乳酸の重量平均分子量は、50,000〜1,000,000であることが好ましく、より好ましくは80,000〜500,000であり、さらに好ましくは100,000〜300,000である。
重量平均分子量が50,000以上の場合、フィルムの実用的な機械的強度が得られやすく、1,000,000以下の場合は成形加工性が良好である。
本実施の形態において、重要平均分子量は、多成分からなる試料を分析する際に、成分を分離して分析する分離分析法であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置により測定することができる。
【0015】
ポリ乳酸の融解ピーク温度は、150〜170℃であることが好ましい。
融解ピーク温度が150℃以上の場合、フィルムへの剛性付与の観点で好ましく、170℃以下の場合、押出性の観点で好ましい。
本実施の形態において、融解ピーク温度は、示差操作熱量計により、測定される。示差操作熱量計とは、試料の温度を等速度で昇温(又は降温)を行い試料の発熱・吸熱量を定量するものであり、得られる吸熱カーブのピーク値より求めることができる。
【0016】
ポリ乳酸のガラス転移温度は、45〜65℃であることが好ましい。
ガラス転移温度が45℃以上の場合、寸法安定性の観点で好ましく、65℃以下の場合、低温収縮性の観点から好ましい。
本実施の形態において、ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置により、求めることができる。動的粘弾性測定装置とは、弾性、粘性を併せ持つ高分子の力学的特性を分析する方法のひとつであり、弾性に相当する貯蔵弾性率と粘性に相当する損失弾性率、また貯蔵弾性率と損失弾性率の比であり、振動吸収性を反映する損失正接(tanδ)の温度依存性、周波数依存性が測定できる。本願記載のガラス転移点は1.0Hzの周波数で、5℃/分の速度で昇温したときに測定されるtanδのピーク値から、求めることができる。
【0017】
本実施の形態に用いられるポリ乳酸系樹脂には、その他任意の可塑剤や熱可塑性樹脂を50質量%以下の範囲で混合してもよい。可塑剤や熱可塑性樹脂としては、例えば、グリセリンジアセトモノカプリレート等のグリセリン脂肪酸エステル、乳酸エステル類、乳酸と脂肪族ポリエステルのブロック共重合体等の可塑剤、エポキシ基を含有するアクリル−スチレン系共重合樹脂等の改質材、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシアルカン酸類、及びポリビニールアルコール等の生分解性樹脂、脂肪族ポリエステル、並びに非晶性ポリエステル類等が挙げられる。
【0018】
[表面層(E)]
本実施の形態のフィルムは、ポリオレフィン系樹脂からなる表面層(E)(以下、単に(E)と略称する場合がある。)を有する。
本実施の形態において、(E)をポリオレフィン系樹脂で構成することにより、シール性に優れるフィルムとすることができる。
(E)において、ポリオレフィン系樹脂中ポリオレフィン系重合体を50質量%以上含有していることが好ましい。(E)中で、ポリオレフィン系重合体が50質量%以上含まれることにより、フィルム強度に優れるフィルムを得ることができる。ポリオレフィン系重合体を65質量%以上含有することがより好ましく、70質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0019】
本実施の形態に用いられるポリオレフィン系樹脂には、その他任意の可塑剤や熱可塑性樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂を50質量%以下の範囲で混合してもよい。
【0020】
本実施の形態において、ポリオレフィン系重合体としては、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリプロピレン系共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが、耐ピンホール性、耐引き裂き性、収縮後の角残りの柔軟化を向上させる点で好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン系重合体を1種で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0021】
本実施の形態における高圧法低密度ポリエチレンは、フィルムの成形性を向上させるため、メルトインデックス(190℃、2.16kg)が0.1〜5.0g/10分であることが好ましい。
本実施の形態において、メルトインデックスは、JIS K7210に規定の方法により測定することができる。
【0022】
本実施の形態におけるエチレン−α−オレフィン共重合体は、例えば、密度が0.890〜0.930g/cm3である、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数が3〜18のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種の単量体と、の共重合体が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が0.890g/cm3以上であることにより、低温でもシールすることのできるフィルムとすることができる。より好ましくは0.900g/cm3以上であり、さらに好ましくは0.903g/cm3以上である。エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が0.930g/cm3以下であることにより、収縮性及び包装仕上がりに優れるフィルムとすることができる。より好ましくは0.925g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.920g/cm3以下である。
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトインデックス(190℃、2.16kg)は、0.2〜10g/10分であることが好ましい。
【0023】
エチレン−α−オレフィン共重合体を製造する際に用いられる重合触媒は特に限定されず、マルチサイト触媒やシングルサイト触媒等のいずれでもよいが、本実施の形態のフィルムを製造する際に、押出し成形時の目やにの発生が少なく、滑り性も良好である点、本実施の形態のフィルムとして、低温シール性や耐引き裂き強度が得られやすい点で、シングルサイト触媒が好ましい。また、シングルサイト触媒で得られるものは、チーグラー系触媒で得られるものに比べ、同密度のもので比較すると、低温で融解しやすいものが得られる傾向にあるため、より低温収縮性が向上し、非包装物の角に残りやすい収縮皺が少なくなり、包装時の仕上がりが向上する。
【0024】
本実施の形態におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル基含量が5〜26質量%であることが好ましく、押出負荷の軽減や押出安定性の付与の観点から、メルトインデックス(190℃、2.16kg)が0.2〜10g/10分であることが好ましい。
【0025】
本実施の形態におけるポリプロピレン系共重合体は、プロピレンと炭素数2、又は4乃至9のα−オレフィンとの共重合体であり、DSC(昇温速度:10℃/分)による融解ピーク温度は、低温収縮性の観点から160℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。ポリプロピレン系共重合体の融解ピーク温度は、フィルム同士のブロッキングによるトラブル回避の観点から70℃以上であることが好ましく、延伸時の耐熱安定性を付与するために90℃以上であることがより好ましい。ポリプロピレン系共重合体を製造する際に用いられる重合触媒は、上記エチレン系重合体と同様に、マルチサイト触媒やシングルサイト触媒等のいずれでもよい。
本実施の形態において、融解ピーク温度は、示差操作熱量計により得られる吸熱カーブのピーク値により求めることができる。具体的には、10℃/分の速度で0℃から200℃まで昇温し、200℃で一分間保持した後、10℃/分の速度で200℃から0℃まで降温して、一分間保持し、再び10℃/分の速度で0℃から200℃まで昇温した際に得られる融解カーブのピーク値を融解ピーク温度とした。
【0026】
本実施の形態において、エチレン−α−オレフィン共重合体及びポリプロピレン系共重合体から選ばれる少なくとも1種を含有するポリオレフィン系樹脂により表面層(E)を構成させる場合には、シール性に優れる収縮性フィルムとすることができ、収縮性シュリンクフィルムとして好適である。
本実施の形態において、収縮性シュリンクフィルムとする場合には、収縮仕上がり等に優れるフィルムとすることができる。また、表面層(E)の組成は、用いられる包装形態のシール方法により、適宜調整することができる。
本実施の形態において、収縮性シュリンクフィルムとしてシールする場合、(E)の組成としてエチレン−α−オレフィン共重合体を用いることがより好ましく、また、できるだけ低温・低圧でシールする方が好ましい。低温シールが好ましい理由としてはシール温度が高いとシーラーの熱でシール部が収縮して小皺となり、次工程の収縮トンネル内で収縮させても皺が解消されないためである。低圧シールが好ましい理由としては包装機械の部品の中でも消耗の激しいシーラーの寿命を延ばすためである。
【0027】
本実施の形態において、包装速度を上げて、高速でシールを行いたい場合には、高周波シールを用いるとよい。高周波シールとは、分子振動による発熱により樹脂が溶融、溶着することを利用したシール方法であり、シール時間が非常に短時間で済むと言った特徴がある。高周波シールでは、シール部以外の部分には比較的熱がかからず、また、封筒張りシール、合掌シール、いずれの場合でも、フィルムとフィルムを重ね合わせた面同士が溶着するので、シール電極との滑り性が良好であり、シール線の外観が良好になるといった特徴もある。高周波シールを用いる場合は、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体(EMMAなど)や、エチレン−エチルアクリル酸エステル共重合体(EEAなど)等のエチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体等を5〜50質量%の範囲で、表面層(E)にブレンドするとよい。エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体はエチレン−α−オレフィン共重合体との相溶性が高いため、ポリオレフィン系樹脂とした場合でも、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体が高周波を受けて発熱・溶融すると、これに引き続いてエチレン−α−オレフィン共重合体も溶融し、ポリオレフィン系樹脂においても高い高周波シール性を得ることが可能である。
【0028】
[内部層(C)]
本実施の形態のフィルムは、ポリ乳酸系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂からなる内部層(C)(以下、単に(C)と略称する場合がある。)を有する。
本実施の形態において、(C)をポリ乳酸系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂で構成することにより、低カール性に優れるフィルムとすることができる。
【0029】
本実施の形態において、(C)がポリ乳酸系樹脂で構成される場合、表面層(A)に用いるポリ乳酸系樹脂よりも、結晶性が高いものを用いたり、(A)に可塑剤を用いて硬度差をつけることで、カールを抑制することができる。(C)にはポリ乳酸単独で用いるか、30質量%以下の共重合ポリエステル系可塑剤を用いてもよい。
本実施の形態において、(C)がポリプロピレン系樹脂で構成される場合、フィルムの延伸性が増すが、配向がかかりやすいので、フィルムの中心よりやや(A)層寄りへ配置することでカールを効果的に抑制することができる。具体的には、(C)の厚み方向の中心を、ポリ乳酸系樹脂からなる(A)の最表面より、フィルム厚み方向に、(E)へ向かって、15〜50%の位置に配置することで、フィルムのカールを防止することができる。(C)の厚み方向の中心は15〜45%の位置にあることが好ましく、15〜40%の位置にあることがより好ましい。
【0030】
(C)に用いるポリプロピレン系樹脂は70〜160℃に融解ピーク温度を有するポリプロピレン系共重合体を含有することが好ましい。
ブロッキング防止の観点で、融解ピーク温度は、70℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、カール防止のためには融解ピーク温度が100℃以上であることがさらに好ましい。一方、低温収縮性の観点からは160℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。(C)にはポリプロピレン系共重合体単独で用いるか、40質量%以下の低結晶性又は非晶性のポリオレフィン系共重合体を用いてもよい。低結晶性又は非晶性のポリオレフィン系共重合体としては、密度0.850〜0.890g/cm3のポリプロピレン系エラストマーが、融解ピーク温度70〜160℃を有するポリプロピレン系共重合体と相溶性が良好であるため、透明性の観点から好ましい。
【0031】
ポリプロピレン系共重合体のメルトインデックス(230℃、2.16kg)は、押出負荷の軽減や押出安定性の付与の観点から0.5〜10g/10分であることが好ましい。
【0032】
[接着層(B)及び接着層(D)]
本実施の形態のフィルムは、表面層(A)と内部層(C)の間に接着層(B)を、表面層(E)と内部層(C)の間に接着層(D)を有する(以下、単にそれぞれを(B)、(D)と略称する場合がある。また、接着層(B)及び接着層(D)を総称して接着層と記載する場合がある。)。
そして、接着層は、2〜50質量%のスチレン含量を有するスチレン系エラストマー、0.850〜0.890g/cm3の密度を有するポリプロピレン系エラストマー、0.850〜0.880g/cm3の密度を有する超低密度ポリエチレン、及び15〜60質量%の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を50質量%以上含有する柔軟樹脂で構成される層であることが好ましい。柔軟樹脂としては、55質量%以上含有することがより好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。
柔軟樹脂としては、1種で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
本実施の形態において、接着層を柔軟樹脂で構成することにより、延伸時に接着層自体に延伸配向がかかるのを抑制することができるので延伸後も高い接着強度を維持し、層間接着強度に優れるフィルムとすることができる。
【0033】
本実施の形態に用いられる柔軟樹脂には、その他任意の可塑剤や熱可塑性樹脂として、70〜160℃に融解ピーク温度を有するポリプロピレン系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂を50質量%以下の範囲で混合してもよい。ポリオレフィン系樹脂としては、45質量%以下の範囲で混合することがより好ましく、40質量%以下の範囲で混合することがさらに好ましい。
【0034】
本実施の形態において接着層のスチレン系エラストマーは、例えば、ビニル芳香族炭化水素とα−オレフィンと共役ジエンとのブロック共重合体及びその誘導体等が挙げられ、ビニル芳香族炭化水素とα−オレフィンと共役ジエンとのブロック共重合体としては、スチレンを代表とするビニル芳香族炭化水素が主体であるブロックと、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンを主体とするブロックと、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンを主体とするブロックとからなるブロック共重合体が挙げられる。その誘導体としては、前記ブロック共重合体であって、二重結合の少なくとも一部を水素添加処理したもの、又はマレイン酸やアミン、イミンで変性したもの等が挙げられる。中でもスチレンの含有量が50質量%以下のものが好ましく、40質量%以下のものがより好ましく、30質量%以下のものがさらに好ましい。
【0035】
スチレン系エラストマーのメルトインデックス(230℃、2.16kg)は、押出時の負荷軽減や押出安定性の付与の観点で1.0〜10g/10分であることが好ましい。
【0036】
スチレン系エラストマーに対し、ポリプロピレン系共重合体を50質量%以下の割合でブレンドすると、層間接着性を低下させずに、更に延伸安定性を向上させることが可能となる。ブレンドするポリプロピレン系共重合体としてはスチレン系エラストマーとの相溶性の向上および延伸安定性付与の観点から融解ピーク温度が70〜160℃のものが好ましく、より好ましくは90〜150℃、さらに好ましくは100〜140℃である。
【0037】
本実施の形態において接着層のポリプロピレン系エラストマーは、例えば、密度が0.850〜0.890g/cm3であるポリプロピレン系エラストマーが、層間接着性の点で好ましく、エチレンが3〜20質量%含まれているものがより好ましい。
【0038】
本実施の形態において接着層の超低密度ポリエチレンは、密度が0.850〜0.880g/cm3のものが、押出安定性や接着性の観点から好ましく、より好ましくは0.855〜0.875g/cm3である。
コモノマーとしては、1−オクテン等のα−オレフィンコモノマーが10〜30質量%含まれているものが層間接着性の観点から好ましい。
押出時の負荷の軽減や押出安定性付与の観点からメルトインデックス(190℃,2.16kg)としては0.5〜10g/10分のものが好ましく、
より好ましくは1.0〜7.0g/10分、さらに好ましくは2.0〜6.0g/10分である。
【0039】
本実施の形態において接着層のエチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含量が15質量%以上であることが層間接着性の観点から好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。ブロッキング防止の観点から60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
本実施の形態において、柔軟樹脂として水添スチレン−エチレン−ブチレン共重合体を用いる場合には、延伸性が良好なポリプロピレン系樹脂を混合しても透明性が低下することもなく、また、より延伸安定性が向上する傾向にある。この時のポリプロピレン系樹脂は層間接着性の観点から、接着層において、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは45質量%以下である。
接着層に用いるプロピレン系樹脂としては、内部層に用いられるポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0041】
[収縮性フィルム]
本実施の形態の収縮性フィルムは、前記内部層(C)と、内部層(C)の両面の一方に前記表面層(A)と、他方に前記表面層(E)と、内部層(C)と表面層(A)との間に前記接着層(B)と、内部層(C)と表面層(E)との間に前記接着層(D)と、を有する少なくとも5層からなる収縮性フィルムである。
本実施の形態において、表面層(A)を有することにより、収縮性フィルムに剛性(腰)を付与することと、表面層(E)を有することにより、収縮性フィルムにシール性を付与することとの両立が可能となる。
【0042】
本実施の形態において、フィルム中に含まれるポリ乳酸系樹脂の合計の比率は、フィルムとしての強度を向上させるため、フィルム全体の質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、よりさらに好ましくは25質量%以上である。ポリ乳酸系樹脂の合計の比率は、シール性を向上させるため、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本実施の形態において、フィルム中に含まれる植物資源に由来する原料の合計の比率は、20質量%以上であることが好ましい。
【0043】
本実施の形態のフィルムは、その他の層として任意の樹脂層を有していてもよい。例えばガスバリア層として、エチレン−ビニルアルコール樹脂(EVOH)、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリグリコール酸樹脂等の少なくとも1種を含む樹脂層等が挙げられる。酸素によって変質する内容物を包装する場合においては、酸素吸収層を上記ガスバリア層と組み合わせて有していてもよい。
【0044】
本実施の形態のフィルムは、(A)〜(E)の各層において、それぞれ本来の特性を損なわない範囲で、防曇剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、石油系樹脂、抗菌剤、着色剤、各種界面活性剤、アンチブロック剤、無機フィラー、粘着付与剤等の任意の添加剤を含んでいてもよい。
【0045】
本実施の形態のフィルムは、コロナ処理やプラズマ処理、各種コーティング処理が施されていてもよく、必要に応じて他種フィルムとの各種ラミネ−ションに用いてもよい。
【0046】
本実施の形態のフィルムは、(A)〜(E)の各層の少なくとも1層が架橋されていてもよく、架橋されることにより各層においてゲル化されている部分を有していてもよい。
架橋によって、高収縮性の発現、及び収縮包装後の輸送やハンドリング後の緩みや弛みの発生を抑制するのに一層効果的である他、輸送中の振動によるフィルムの擦れ破れに対して有効である。また、架橋によってフィルムに耐熱性が付与されることにより、収縮温度範囲が広がり高速包装が可能となって生産性も向上する。
【0047】
本実施の形態のフィルムの厚みは、好ましくは5〜50μmであり、より好ましくは7〜30μmであり、さらに好ましくは8〜20μmである。
フィルムの厚みが5〜50μmの範囲であれば、重量物や突起物を有する被包装物に対しても破れを生じにくく有効である。
【0048】
少なくとも片側の表面層として配される表面層(E)の厚みは、好ましくは0.25〜20μm、より好ましくは0.35〜12μm、さらに好ましくは0.4〜8μmであり、使用する包装方法、シール方法等によって適宜選ばれる。
【0049】
本実施の形態のフィルムのヘイズ値は3.0以下であることが好ましい。3.0以下のヘイズ値を有するフィルムであれば、被包装物の視認性を低下させずに包装することができ、透明性に優れるフィルムとすることができる。
【0050】
本実施の形態のフィルムのグロス値は130以上であることが好ましい。130以上のグロス値を有するフィルムであれば、被包装物のアイキャッチ性を高めて、商品性を向上することができる。
【0051】
本実施の形態のフィルムの引張弾性率は800N/mm2以上であることが好ましい。800N/mm2以上の引張弾性率を有するフィルムであれば、シャンプーボトル等異型の被包装物であってもしっかりとした包装を可能にすることができ、剛性に優れるフィルムとすることができる。
【0052】
本実施の形態のフィルムの120℃における加熱収縮応力は80〜300g/mm2であることが好ましい。80g/mm2以上の加熱収縮応力を有するフィルムであれば、包装後に、フィルムが緩まずに被包装物にタイトに密着した包装体を得ることができる。また、300g/mm2以下の加熱収縮応力を有するフィルムであれば、収縮時におけるシール部への負担を軽減することができ、収縮時のシールパンクを抑制することができる。
【0053】
本実施の形態のフィルムの80℃における加熱収縮率は5〜40%であることが好ましい。80℃における加熱収縮率が、5〜40%の範囲内であることによりフィルムの低温収縮性が向上し、特に包装時の小じわが解消し、綺麗な包装体を得ることができる。80℃での加熱収縮率を満たすためには、ポリ乳酸系樹脂の融解ピーク温度以下で延伸すればよい。
本実施の形態のフィルムの120℃における加熱収縮率は40〜90%であることが好ましい。120℃における加熱収縮率が、40〜90%の範囲内であることにより、被包装物にあまり熱をかけずに包装体の角の部分でさえも、大きく収縮して角が残らず、綺麗な包装体が得られる。120℃での加熱収縮率を満たすためには、本実施の形態における樹脂の材料を用いたフィルムの流れ方向、巾方向にそれぞれ4倍以上の延伸を行うとよい。
【0054】
本実施の形態のフィルムのシール強度は100〜120℃のシール温度において、輸送時や陳列時の振動にも耐えられ、シール開きが起こりにくいことから、3.0N/25mm巾以上であることが好ましい。100〜120℃のシール温度において、3.0N/25mm巾以上のシール強度を有するフィルムであることにより、シール性に優れるフィルムとすることができる。
【0055】
本実施の形態のフィルムは、実施例記載の方法により測定したフィルム中央又は端の浮き上がりが5mm未満であることにより、カール抑制効果に優れるフィルムであり、包装時に合掌させて、重ねるフィルム端部同士がそろい、包装機での走行性を安定させることができる。
【0056】
本実施の形態のフィルムのアンチブロッキング性は、実施例記載の方法によりフィルム同士が滑り、抵抗無く、剥離するものであることが好ましい。その結果、包装時、収縮時のフィルム同士の重なりを抑制できることにより、包装仕上がりを向上させることができる。
【0057】
[収縮性フィルムの製造方法]
本実施の形態における収縮性フィルムの製造方法としては、ポリ乳酸系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂と、ポリ乳酸系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂、柔軟樹脂を、上記少なくとも5層からなるように配置した多層構成になるように多層のダイより溶融共押出して急冷し、延伸用原反を採取する。
【0058】
押出しは特に制限されるものではなく、多層のTダイや多層のサーキュラーダイを用いた方法等を用いることができるが、多層のサーキュラーダイを用いる方法が好ましい。サーキュラーダイを用いると、設備に関しての必要スペースや投資金額の点で有利であり、多品種少量生産に向き、熱収縮性がより得られやすい。
【0059】
急冷に使用する冷媒は通常60℃以下の水が好適に用いられ、溶融樹脂に直接接触させるか、もしくは金属ロールの内部冷媒として間接的に使用される。内部冷媒として用いる場合は水以外にもオイル他、公知のものが使用可能であり、場合によっては冷風の吹き付けと併用することも可能である。
【0060】
得られた延伸用原反を加熱し、面積延伸倍率で16〜60倍に延伸することが好ましい。面積延伸倍率は、より好ましくは20〜50倍であり、用途に応じて適宜選択されるが、必要に応じて延伸後に熱処理を行ってフィルムの加熱収縮率や加熱収縮応力の調整を行ってもよい。延伸方法は溶融押出直後のチューブに空気や窒素を吹き込んで、延伸を行うインフレーション法によっても収縮するフィルムが得られることもあるが、本実施の形態のフィルムのように高収縮性を発現させるためには、二軸に延伸される方法が好ましく、より好ましくは前述のサーキュラーダイで得られた延伸用原反を加熱二軸延伸するチューブラー法(またはダブルバブル法とも言う)である。
【0061】
延伸前、又は延伸後に架橋処理を行ってもよく、架橋処理を行う場合は、加熱して延伸する前にエネルギー線照射によって架橋処理を行うことがより好ましい。これにより延伸工程における延伸開始から終了までのフィルムの変動が一層小さくなって安定化し、より高倍率での延伸も可能となり、より薄肉でより高収縮性のフィルムが得られやすくなる。
延伸した後のフィルムにエネルギー線照射による架橋処理を行ってもよい。用いるエネルギー線としては紫外線、電子線、X線、γ線等の電離性放射線が挙げられ、好ましくは電子線であり、10〜300KGyの照射量範囲で使用することが好ましい。照射によって架橋する層は目的に応じて任意に選択することが可能であり、表面層付近を主に架橋したい場合は、延伸用原反の厚みに応じて加速電圧を調整することにより厚み方向での線量分布を調整して照射する方法、アルミ等の遮蔽板使用によって同様に線量分布を調整するマスク照射法、電子線を延伸用原反面に対して斜め方向より照射する方法等がある。
【0062】
所望の各層に任意の架橋阻害剤や架橋助剤(架橋促進剤)を添加してもよく、特に表面層(A)及び内部層(C)に対する架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、トリメチルプロパントリアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリメタアリルシアヌレート等が挙げられる。
【0063】
上述したような製造方法により得られる本実施の形態の収縮性フィルムは、熱収縮特性を有し、シュリンクフィルムとして好適であり、シュリンク包装後にフィルムにシワ、緩み、弛み等を発生することなく被包装物に密着して固定保持を持続することができる。また、シュリンク包装時にフィルムに発生する収縮力が大きくて被包装物を変形させて商品性を低下させてしまうような場合には、延伸後に熱弛緩処理等を加えて本実施の形態で特定した熱収縮特性の範囲内で自由に調整することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられる評価方法及び測定方法は以下のとおりである。
【0065】
(1)透明性(ヘイズ)
ASTM−D−1003に準拠して、測定を行った。
(2)光沢(グロス)
ASTM−D−2457に準拠して、測定を行った。
【0066】
(3)引張弾性率
株式会社島津製作所製のオートグラフを用いて、巾が10mm、長さが100mmのサイズに切り出した試料を、JIS K 7113に準拠して、引張弾性率の測定を行った。
【0067】
(4)加熱収縮率
100mm角のフィルム試料を120℃の温度に設定したエアーオーブン式恒温槽に入れ、自由に収縮する状態で10分間処理した後、それぞれ向き合う辺の中心点間距離を測定してフィルムの収縮量を求め、元の寸法で割った値の百分比でMD及びTDの加熱収縮率を表した。測定は2回行い、その平均値を120℃における収縮率とした。
恒温槽を80℃の温度に設定して同様に測定を行って、80℃における加熱収縮率を求めた。
【0068】
(5)加熱収縮応力
フィルムをMD、TDの各方向に幅10mmの短冊状にサンプリングし、それをストレインゲージ付のチャックにチャック間50mmに緩めることなくセットした。測定温度は120℃で測定した。
フィルムを120℃に加熱したシリコーンオイル中に浸漬し、10秒後の収縮力をMD、TDのそれぞれについて測定し、得られた収縮力の値を、浸漬前のフィルムの断面積で除した値を加熱収縮応力とした。測定数は各温度で各方向に5回行い、その平均値を120℃における加熱収縮応力とした。
【0069】
(6)シール強度
2枚重ねとした各フィルムをテスター産業株式会社製ヒートシーラー(TP−701−B)で、シール巾5mm、長さ300mmのシーラーを用いて、シール圧力が0.13MPa、シール時間が0.5秒になるように設定し、各シール温度におけるシール強度測定用試料を採取した。これをシール線に対して直角になるようにカットし、サンプル巾25mmの試料を得た。これを、株式会社 島津製作所製のオートグラフを用いて、チャック間50mm、引張速度が1000mm/minの条件で180°剥離を行い、最大荷重を求めてシール強度とした。
【0070】
(7)カール性評価
フィルムを5×5cmのサイズに切り出して、フィルムの両面にフィルム表面を覆う程度にタルクをまぶしてフィルム同士の密着を防止し、5分間ガラス板上に放置し、以下の基準に従い、カール性を評価した。
○:フィルム中央又は端の浮き上がりが5mm未満である。
×:フィルム中央又は端の浮き上がりが5mm以上である。
【0071】
(8)フィルムのアンチブロッキング性評価
130℃に設定したエアーオーブン式恒温槽中で、流れ方向、巾方向にそれぞれ10%収縮させたフィルムを、流れ方向に10cm、巾方向に5cmの寸法に2枚切り出し、それぞれの表面層(A)側同士を密着させて、流れ方向に5cmずつ、巾方向は完全に重なるようにし、20℃の室温下で、100gの荷重をかけて1分間放置した。2枚のフィルムを引っ張った際のフィルムの剥離性を評価した。
○:フィルム同士が滑り、抵抗無く、剥離するもの。
×:フィルム同士が滑らず、密着しているもの。
【0072】
(9)包装時の仕上がり
フィルムを所定の幅にスリットして、(株)フジキカイ製、ピローシュリンク包装機FW−3451A−αVを用いて、内部に約150gの粘土をいれたエフピコ製、PSPトレーKS−A12−30(白)を用いて包装速度40パック/分で120〜150℃のシュリンク温度範囲においてそれぞれのフィルムにとって、皺や弛みが少なく最も仕上がりのよい温度条件になるようシュリンクトンネル温度を設定し、目視による透明性が明らかに低下しない範囲で最もタイトに仕上がる条件で30個包装し、以下のように外観評価を行った。
○:トレー、容器に湾曲等の変形及び前後のシール線の端部に角残りが全くなく、商品性に優れる。
△:トレー、容器に若干の変形(幅方向の寸法が10%未満の変形)が見られるか、又は前後のシール線の端部に小さな角残りが認められ、商品性に若干問題有り。
×:トレー、容器に明らかな変形(幅方向の寸法10%以上の変形)が認められるか、前後のシール線の端部に収縮不足による明らかな角残りが認められ、商品性に問題有り。
【0073】
実施例及び比較例で用いた樹脂は以下のとおりである。
表面層(A)
PLA1:ポリ乳酸(L−乳酸/D−乳酸=96/4、融解ピーク温度157℃、ガラス転移温度:57℃、重量平均分子量:200,000)
【0074】
内部層(C)
PLA1
PLA2:ポリ乳酸(L−乳酸/D−乳酸=99/1、融解ピーク温度171℃、ガラス転移温度:57℃、重量平均分子量:200,000)
AD1:ポリ乳酸用フィルム柔軟性付与改質材、大日本インキ化学工業(株)製プラメート(登録商標) PD150
AD2:ポリ乳酸用フィルム柔軟性付与改質材、大日本インキ化学工業(株)製プラメート(登録商標) PD350
PP1:三元プロピレン共重合体、メルトインデックス:5.5g/10分、密度:0.890g/cm3、融解ピーク温度:135℃、(バセル社製 Adsyl 5C30F)
PP2:ポリプロピレン系エラストマー、密度:0.888g/cm3、(ダウ・ケミカル社製 バーシファイ(登録商標) DP2000)
【0075】
表面層(E)
LL1:シングルサイト系線状低密度ポリエチレン(α−オレフィンコモノマー=1−ヘキセン)、密度:0.913g/cm3、メルトインデックス:3.8g/10分(住友化学(株)製 スミカセンE(登録商標) FV402)
LL2:直鎖状低密度ポリエチレン(α−オレフィンコモノマー=1−オクテン)、密度:0.916g/cm3、メルトインデックス:1.0g/10分(ダウ・ケミカル社製 ELITE(登録商標) 5400G)
LL3:シングルサイト系線状低密度ポリエチレン(α−オレフィンコモノマー=1−ヘキセン)、密度:0.904g/cm3、メルトインデックス:4.0g/10分(宇部丸善ポリエチレン(株)製 ユメリット(登録商標) 0540F)
PP1
【0076】
接着層(B)及び(D)
SEBS1:水添スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン比:12質量%)、メルトインデックス:4.5g/10分、旭化成ケミカルズ(株)製タフテック(登録商標) H1221
VL1:超低密度ポリエチレン(α−オレフィンコモノマー=1−オクテン)、密度:0.870g/cm3、メルトインデックス:5.0g/10分(ダウ・ケミカル社製 AFFINITY(登録商標) EG8200G)
EVA1:エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量=25質量%、(日本ユニカー(株)製 NUC3195)
PP1
PP3:ポリプロピレン系エラストマー、密度=0.858g/cm3、(ダウ・ケミカル社製 バーシファイ(登録商標) DP3400)
【0077】
EMAA1:エチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル(株)製 ニュクレル(登録商標) N1108C)
PET1:共重合ポリエステル樹脂(イーストマンケミカル社製 PETG6763)
【0078】
[実施例1]
表面層(A)として、PLA1を用い、これにアルミノシリケート系化合物(シルトンJC30)を0.05質量%混合した樹脂組成物をポリ乳酸系樹脂とした。
表面層(E)として、シングルサイト系線状低密度線状ポリエチレンとしてLL1にアンチブロッキング剤としてアルミノシリケート系化合物(シルトンJC30)を0.1質量%、エルカ酸アミド0.5質量%、及びグリセリンモノオレートとジグリセリンオレートを1:1で混合したものを1.0質量%添加した樹脂組成物をポリオレフィン系樹脂とした。
接着層(B)及び(D)として、水添スチレン系熱可塑性エラストマーであるSEBS−1を用い、内部層(C)として、ポリプロピレン系樹脂であるPLA1を用いて、層配置がPLA1/SEBS1/PLA1/SEBS1/LL1で、各層の厚み比率(%)が10/10/30/40/10となるように環状5層ダイを用いて押出した後、冷水にて急冷固化して折り幅130mm、厚みが約360μmの各層とも均一な厚み精度のチューブ状延伸用原反を採取した。これを2対の差動ニップロール間に通し、延伸開始点の加熱温度を約100℃になるようにしてエアー注入してバブルを形成させ、MDに6.0倍、TDに6.0倍延伸を行い(面積延伸倍率で36倍)、厚み10μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0079】
[実施例2〜10]
表1及び表2に示す樹脂構成に代えた以外は、実施例1と同様の方法、条件で行って、厚みが10μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1及び表2に示す。
【0080】
[実施例11〜13]
表3に示す樹脂構成で、チューブ状延伸用原反を折り幅130mm、厚みが約490μmに調整し、表3に示す延伸倍率で延伸を行った以外は、実施例1と同様の構成、方法、条件で行って、厚みが10μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表3に示す。
【0081】
[実施例14]
表3に示す樹脂構成に代えた以外は、実施例13と同様の方法、条件で行って、厚みが10μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表3に示す。
【0082】
[比較例1及び2]
表4に記載の樹脂構成で、実施例1と同様の操作を行い、厚み10μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表4に示す。
【0083】
[比較例3]
表4に記載の樹脂構成で、環状ダイからの押出し温度を190℃に調整し、インフレーション法によってブローアップ比率6倍で厚み12μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表4に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
表1〜表4の結果から、実施例1〜14の収縮性フィルムは、光沢性、透明性に優れ、薄くても剛性が高いフィルムであり、フィルム強度も優れていた。また、実施例1〜14の収縮性フィルムは、ほとんどカールしないため、包装機走行性も良好であり、収縮性も高いため、容器の変形もほとんどない、タイトな包装体を得ることができた。さらに、実施例1〜14の収縮性フィルムを用いた包装時の仕上がりにおいてもこの包装体は弛みがなく、美麗性の維持効果の高いフィルムであった。
実施例1〜14の収縮性フィルムは、シール性に優れるフィルムであった。
一方、表面層にポリエチレンテレフタレートを用いた比較例1の硬質熱収縮性フィルムは、80℃の加熱収縮率が十分でなく、100℃,120℃におけるシール強度が不十分なものであった。また、シール線端部に小さな角残りが認められたように、シール性が十分なものではなかった。
また、両方の表面層として、ポリ乳酸系樹脂を用いた比較例2の熱収縮性積層フィルムは、80℃の加熱収縮率が十分でなく、100℃,120℃におけるシール強度が不十分でありシール性が十分なものではなかった。
さらに、比較例3のフィルムでは、包装時にシール線端部に小さな角残りが認められた。また、100℃,120℃におけるシール強度が不足しており、包装時にシール部分(EMAA1層同士でシールされる部分)に剥離が起こり易い傾向があった。また、得られた包装体を指で押すとその部分が容易に緩むことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の収縮性フィルムは、食品及び非食品包装等のシュリンク包装分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部層(C)と、前記内部層(C)の両面の一方に表面層(A)と、他方に表面層(E)と、前記内部層(C)と前記表面層(A)との間に接着層(B)と、前記内部層(C)と前記表面層(E)との間に接着層(D)と、を有する少なくとも5層からなる収縮性フィルムであって、
前記内部層(C)がポリ乳酸系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂で構成される層であり、
前記表面層(A)がポリ乳酸系樹脂で構成される層であり、
前記表面層(E)がポリオレフィン系樹脂で構成される層である、収縮性フィルム。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂が、0.890〜0.930g/cm3の密度を有するエチレン−α−オレフィン共重合体及び/又は70〜160℃に融解ピーク温度を有するポリプロピレン系共重合体を含有する、請求項1に記載の収縮性フィルム。
【請求項3】
前記接着層(B)及び前記接着層(D)が、2〜50質量%のスチレン含量を有するスチレン系エラストマー、0.850〜0.890g/cm3の密度を有するポリプロピレン系エラストマー、0.850〜0.880g/cm3の密度を有する超低密度ポリエチレン、及び15〜60質量%の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を50質量%以上含有する柔軟樹脂で構成される層である、請求項1又は2に記載の収縮性フィルム。

【公開番号】特開2009−255392(P2009−255392A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107138(P2008−107138)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】