説明

取付用金具

【課題】各種機器類の充分な支持強度を得ることができしかも長期にその支持強度を保持する。
【解決手段】L型鋼からなるアングル材Aを介して互いに組付けられ締付用のボルト3で締付け固定される第1の部分材1,第2の部分材2を備えている。第1の部分材1は、アングル材Aの一方のフランジAaのみに対面されて一方のフランジAaの端縁が差込まれる差込用溝15が設けられるとともに締付用のボルト3が螺合されるナット14が固定されている。第2の部分材2は、アングル材Aの両フランジAa,Abに対面されて一方のフランジAaに対面する位置にナット14に対応して締付用のボルト3が挿通されるボルト孔が穿孔され他方のフランジAbに対面する位置に他方のフランジAbの端縁が差込まれる差込用溝26が設けられるとともに各種機器類を取付けるための取付用部品Bが取付け可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、L型鋼からなるアングル材に各種機器類を取付けるための取付用金具に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、L型鋼からなるアングル材に各種機器類を取付ける際には、アングル材に取付用ボルト、取付用ブラケット等を挿通するための取付用孔を穿孔することが行われている。この取付手段では、穿孔機を使用した騒音をともなう現場工事が必要で環境面から実施が困難な場合があるとともに、取付用孔の穿孔でアングルの強度が低下してしまうという不具合が発生している。このため、アングル材に取付用孔を穿孔することなく各種機器類を取付けることのできる技術の開発が要望されている。
【0003】
従来、アングル材に取付用孔を穿孔することなく各種機器類を取付けることを指向した技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1には、コ型鋼からなるアングル材の一方のフランジの端縁が差込まれる差込用溝が設けられた第1の部分材と、アングル材の他方のフランジの端縁が差込まれる差込用溝が設けられ機器類を取付けるための取付用ボルトが固定された第2の部分材とを備え、第1の部分材と第2の部分材とが組付けられて接合される部分がボルト締めで締付け固定される取付用金具が記載されている。
【0005】
特許文献1に係る取付用金具は、第1の部分材と第2の部分材とを組付けて接合される部分をボルト締めで締付け、第1の部分材、第2の部分材の差込溝とアングル材のフランジの端縁との間に強固な係合力を発生させて各種機器類を取付ける支持強度を得ることで、アングル材に取付用孔を穿孔することを不要にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭61−22096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る取付用金具では、第1の部分材、第2の部分材の接合される部分がアングル材から離れるように延長された位置に構成されているため、第1の部分材、第2の部分材の組付強度が低くなってしまい各種機器類の充分な支持強度を得ることができないという問題点がある。また、第1の部分材、第2の部分材の接合される部分に締付用のボルトが挿通されるボルト孔が穿孔され、別個に用意したボルト、ナットによる締付けが行われるため、経年によりナットが緩んで外れて取付けられた各種機器類が脱落するおそれがあるという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、各種機器類の充分な支持強度を得ることができしかも長期にその支持強度を保持することのできる取付用金具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明では、L型鋼からなるアングル材を介して互いに組付けられ締付用のボルトで締付け固定される第1の部分材、第2の部分材を備え、第1の部分材はアングル材の一方のフランジのみに対面されて一方のフランジの端縁が差込まれる差込用溝が設けられるとともに締付用のボルトが螺合されるナットが固定され、第2の部分材はアングル材の両フランジに対面されて一方のフランジに対面する位置にナットに対応して締付用のボルトが挿通されるボルト孔が穿孔され他方のフランジに対面する位置に他方のフランジの端縁が差込まれる差込用溝が設けられるとともに各種機器類を取付けるための取付用部品が取付けられている。
【0010】
この手段では、第1の部分材、第2の部分材の接合される部分がアングル材の一方のフランジに対面する位置に構成されてアングル材に近接されることで、第1の部分材、第2の部分材の組付強度の低下が避けられる。また、第1の部分材に締付用のボルトが螺合されるナットが固定されることで、経年によりナットが緩んで外れてしまうことがなくなる。
【0011】
また、本発明では、第1の部分材は断面形状がコ字形に形成されてアングル材の一方のフランジとの間にナットの収容空間が設けられナットと同軸に締付用のボルトが挿通されるボルト孔が穿孔されている。
【0012】
この手段では、締付用のボルトが第1の部分材のボルト孔に挿通されてアングル材の一方のフランジ側に位置するナットに螺合される。
【0013】
また、本発明では、第1の部分材は第2の部分材のアングル材の一方のフランジに対面する部分の位置を規制するガイド部が設けられている。
【0014】
この手段では、第2の部分材のアングル材の一方のフランジへの対面が第1の部分材のガイド部によって規制される。
【0015】
また、本発明では、第2の部分材はアングル材の他方のフランジに対面する部分の断面形状がコ字形に形成されて各種機器類を取付けるための取付用部品が取付け可能な取付孔が穿孔され、第2の部分材の取付孔と径の異なる取付孔が穿孔されて第2の部分材のコ字形に嵌合可能なアダプタが備えられている。
【0016】
この手段では、第2の部分材の取付孔に対してアダプタを使用することで、大きさの異なる取付用部品の使用が可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る取付用金具は、第1の部分材、第2の部分材の接合される部分がアングル材の一方のフランジに対面する位置に構成されてアングル材に近接されることで、第1の部分材、第2の部分材の組付強度の低下が避けられるため、各種機器類の充分な支持強度を得ることができる効果がある。また、第1の部分材に締付用のボルトが螺合されるナットが固定されることで、経年によりナットが緩んで外れてしまうことがなくなるため、得られた各種機器類の充分な支持強度が長期に保持される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る取付用金具を実施するための形態の第1例の組付状態の斜視図である。
【図2】図1の拡大縦断面図である。
【図3】図1の分解状態図である。
【図4】図1の組付作業工程の断面図である。
【図5】本発明に係る取付用金具を実施するための形態の第2例の組付状態の断面図である。
【図6】本発明に係る取付用金具を実施するための形態の第3例の要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る取付用金具を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1〜図4は、本発明に係る取付用金具を実施するための形態の第1例を示すものである。
【0021】
第1例では、各種機器類を取付けるための取付用部品Bとしてボルトを使用するものを示してある。
【0022】
第1例は、図1〜図3に示すように、第1の部分材1、第2の部分材2、締付用のボルト3を主要部として構成されている。
【0023】
第1の部分材1は、基片11の両側にほぼ90度に屈曲された突出片12、12が設けられて断面がコ字形に形成され、L型鋼からなるアングル材Aの一方のフランジAaのみに突出片12、12の端面が対面されるようになっている。突出片12、12はフランジAaの幅よりも長い寸法に設けられている。基片11は、ほぼ中央部に締付用のボルト3が挿通されるボルト孔13が穿孔され、突出片12、12側の面にボルト孔13と同軸にナット14が溶接等により固定されている。突出片12、12とナット14は略同一面に揃えられている。突出片12、12は、ほぼ中央部にアングル材Aの一方のフランジAaの端縁が差込まれる差込用溝15、15が切込み形成され、差込用溝15の切込み方向(アングル材Aの一方のフランジAaの差込み方向)の両端部に基片11との角部から突出片12、12とは逆方向に突出した4個の小片形のガイド部16が設けられている。上記差込用溝15はフランジAaの幅の半分から2/3が差込まれる寸法が好ましい。
【0024】
第2の部分材2は、2つの基片21、22がL字形に屈曲され、L型鋼からなるアングル材Aの両フランジAa、Abに対面されるようになっている。1つの基片21は、アングル材Aの一方のフランジAaに対面されるもので、第1の部分材1の基片11とほぼ同一の幅に形成されほぼ中央部に第1の部分材1のボルト孔13(ナット14)に対応して締付用のボルト3が挿通されるボルト孔23が穿孔されている。他の1つの基片2は、アングル材Aの他方のフランジAbに対面されるもので、両側にほぼ90度に屈曲された突出片24、24が設けられて断面がコ字形に形成され、ほぼ中央部に各種機器類を取付けるための取付用部品Bとしてのボルトが挿通される取付孔25が穿孔されている。突出片24、24はフランジAbの幅と同寸又は長く設けられ、端面がフランジAbに対面するようになっている。突出片24、24は、ほぼ中央部にアングル材Aの他方のフランジAbの端縁が差込まれる差込用溝26、26が切込み形成されている。
【0025】
締付用のボルト3は、第1の部分材1のボルト孔13と第2の部分材2のボルト孔23に挿通され第1の部分材1のナット14に螺合されるネジ部31と、ネジ部31の端部に設けられたナット径の頭部32とからなる通常の締付ボルトである。この締付用のボルト3は、ネジ部31にワッシャ4、バネワッシャ5を挿通して使用される。
【0026】
第1例を使用するには、まず、第2の部分材2の取付孔25に各種機器類を取付けるための取付用部品Bとしてのボルトを突出片24、24側から挿通しておく。そして、図4に示すように、第2の部分材2を傾斜させてアングル材Aに取付ける。即ち、第2の部分材2の1つの基片21がアングル材Aの一方のフランジAaとの間で広く間隔を確保するように、他の1つの基片をアングル材Aの他方のフランジAbに対して少しの角度θで傾斜させて、差込用溝26、26にアングル材Aの他方のフランジAbの端面を差込む。続いて、第2の部分材2の傾斜を維持した状態で、第1の部分材1をアングル材Aに取付ける。即ち、第1の部分材1の突出片12、12をアングル材Aの一方のフランジAaにスライドさせるようにして、差込用溝15にアングル材Aの一方のフランジAaの端縁を差込む。
【0027】
この後、第2の部分材2を第1の部分材1側に傾倒させて第2の部分材2の傾斜を解消する。
【0028】
この結果、第1の部分材1と第2の部分材2とがアングル材Aを介して組付けられる。このとき、第1の部分材1のガイド部16が第2の部分材2の1つの基片21の位置ずれを規制するため、第1の部分材1と第2の部分材2とが正確に組付けられる。
【0029】
この後、締付用のボルト3を第2の部分材2のボルト孔23と第1の部分材1のボルト孔13とに挿通して第1の部分材1のナット14に螺合させ、締付用のボルト3を締付ける。
【0030】
この結果、アングル材Aを介した第1の部分材1と第2の部分材2との組付けが強固に固定されることになる。
【0031】
第1の部分材1と第2の部分材2との組付け固定が完了すると、第2の部分材2に各種機器類を取付けるための取付用部品Bとしてのボルトが支持されて、実質的にアングル材Aに取付用部品Bが取付けられた格好となる。即ち、アングル材Aに取付用孔を穿孔することなく取付用部品Bを取付けることができる。従って、穿孔機を使用した騒音をともなう現場工事が必要になって環境面から実施が困難な場合が生じたり、取付用孔の穿孔でアングルの強度が低下してしまうという不具合が発生したりすることがない。
【0032】
そして、第1例によると、第1の部分材1、第2の部分材2の接合される部分がアングル材Aの一方のフランジAaに対面する位置に構成されてアングル材Aに近接され、第1の部分材1、第2の部分材2の組付強度の低下が避けられる。従って、各種機器類の充分な支持強度を得ることができる。また、第1の部分材1に締付用のボルト3が螺合されるナット14が固定されることで、経年によりナットが緩んで外れてしまうことがなくなる。従って、得られた各種機器類の充分な支持強度が長期に保持される。
【0033】
第1の部分材1の全体と第2の部分材2の一部とがコ字形に形成されて、第1の部分材1、第2の部分材2がアングル材Aに対して箱形の構造体を構成するため、組付けられた第1の部分材1、第2の部分材2が捻れ等に強い耐性を発揮する。また、第1の部分材1の全体と第2の部分材2の一部とがコ字形に形成されて、第1の部分材1、第2の部分材2のアングル材Aに対する接触面積が小さいため、腐食等による接着が避けられてアングル材Aからの取外しが不能になることはない。
【0034】
図5は、本発明に係る取付用金具を実施するための形態の第2例を示すものである。
【0035】
第2例は、締付用のボルト3について、ネジ部のみからなる寸切ボルト33として、寸切ボルト33に螺合される締付ナット34で締付けるけようにしてある。
【0036】
第2例によると、締付用のボルト3を取付用部品Bとして兼用することができる。
【0037】
図6は、本発明に係る取付用金具を実施するための形態の第3例を示すものである。
【0038】
第3例は、第2の部分材2について、アダプタ6を使用している。
【0039】
アダプタ6は、基片61、突出片62、62でコ字形に形成され、基片61のほぼ中央部に第2の部分材2の各種機器類を取付けるための取付用部品Bとしてのボルトが挿通される取付孔25の径と異なる取付孔63が穿孔されている。なお、このアダプタ6は、第2の部分材2の突出片24、24の間に嵌合が可能に寸法設定されている。好ましくは、取付孔63の径の異なる複数個のアダプタ6を第1の部分材1、第2の部分材2、締付用のボルト3と組合わせて市場提供する。
【0040】
第3例によると、アダプタ6を使用することで、各種機器類を取付けるための取付用部品Bとしてのボルトの大きさを選択使用することが可能になって汎用性が高くなる。
【0041】
以上、図示した各例の外に、取付用部品Bを第2の部分材2に溶接等で固定しておくことも可能である。また、取付用部品Bをフック形、クランプ形等とすることも可能である。
【0042】
さらに、第1の部分材1、第2の部分材2の組付けが強固であるから、天地を逆にしたり吊下げや傾斜した姿勢での使用も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る取付用金具は、取付用部品を変更することで、L型鋼からなるアングル材に各種機器類を取付ける場合に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 第1の部分材
13 ボルト孔
14 ナット
15 差込用溝
16 ガイド部
2 第2の部分材
23 ボルト孔
26 差込用溝
3 ボルト(締付用の)
6 アダプタ
63 取付孔
A アングル
Aa フランジ(一方の)
Ab フランジ(他方の)
B 取付用部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L型鋼からなるアングル材を介して互いに組付けられ締付用のボルトで締付け固定される第1の部分材,第2の部分材を備え、第1の部分材はアングル材の一方のフランジのみに対面されて一方のフランジの端縁が差込まれる差込用溝が設けられるとともに締付用のボルトが螺合されるナットが固定され、第2の部分材はアングル材の両フランジに対面されて一方のフランジに対面する位置にナットに対応して締付用のボルトが挿通されるボルト孔が穿孔され他方のフランジに対面する位置に他方のフランジの端縁が差込まれる差込用溝が設けられるとともに各種機器類を取付けるための取付用部品が取付けられる取付用金具。
【請求項2】
請求項1の取付用金具において、第1の部分材は断面形状がコ字形に形成されてアングル材の一方のフランジとの間にナットの収容空間が設けられナットと同軸に締付用のボルトが挿通されるボルト孔が穿孔されていることを特徴とする取付用金具。
【請求項3】
請求項1または2の取付用金具において、第1の部分材は第2の部分材のアングル材の一方のフランジに対面する部分の位置を規制するガイド部が設けられていることを特徴とする取付用金具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの取付用金具において、第2の部分材はアングル材の他方のフランジに対面する部分の断面形状がコ字形に形成されて各種機器類を取付けるための取付用部品が取付け可能な取付孔が穿孔され、第2の部分材の取付孔と径の異なる取付孔が穿孔されて第2の部分材のコ字形に嵌合可能なアダプタが備えられていることを特徴とする取付用金具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−12710(P2011−12710A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155456(P2009−155456)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【特許番号】特許第4570681号(P4570681)
【特許公報発行日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(509148005)株式会社トライネット (2)
【Fターム(参考)】