説明

取出し具

【課題】収納ドーム内に収納された内容物を直接触れずに取り出して、所望の所に供給できる。
【解決手段】基材シート11の表面11aに、内容物Cが収納された収納ドーム12が複数設けられてなるPTP包装体13から内容物Cを取り出す取出し具1において、基材シート11の裏面11b側を支持するとともに、収納ドーム12からの内容物Cが通過可能な通過孔25を有する支持部21と、支持部21に通過孔25の開口面に沿って延びるヒンジ軸回りに回動可能に連結されるとともに、支持部21が基材シート11の裏面11b側を支持した状態で、基材シート11の表面11a側から裏面11b側に向けて収納ドーム12を押圧可能なレバー部材23と、を備え、支持部21には、通過孔25を通過した収納ドーム12からの内容物Cが収容される収容部24が配設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取出し具に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤やカプセル剤等の内容物の包装形態として、内容物を収納する多数の収納ドームを表面側に設けた基材シートの裏面にアルミ箔を貼着してなり、収納ドームを裏面側に向けて押圧することにより、収納ドーム内の内容物がアルミ箔を破って内容物が押し出されるようにした、いわゆるPTP(press through pack)包装体が広く用いられている。
例えば、下記特許文献1には、PTP包装体の管理を容易にするケースとして、基材シートの表面側に配置され、収納ドームを基材シートの表面側から押圧したとき、指先が進入可能な大きさの収納孔を整列開設したプレート本体と、収納孔に対応する位置に、内容物を取り出し可能な大きさの取出孔を整列開設するとともに、プレート本体との間で基材シートを挟持する挟持プレートと、を有する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−255256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、収納ドーム内に収納された内容物を直接触れずに取り出して、所望の所に供給することに対しては改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、収納ドーム内に収納された内容物を直接触れずに取り出して、所望の所に供給できる取出し具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る取出し具は、基材シートの表面に、内容物が収納された収納ドームが複数設けられてなるPTP包装体から前記内容物を取り出す取出し具において、前記基材シートの裏面側を支持するとともに、前記収納ドームからの前記内容物が通過可能な通過孔を有する支持部と、該支持部に前記通過孔の開口面に沿って延びるヒンジ軸回りに回動可能に連結されるとともに、前記支持部が前記基材シートの裏面側を支持した状態で、前記基材シートの表面側から裏面側に向けて前記収納ドームを押圧可能なレバー部材と、を備え、前記支持部には、前記通過孔を通過した前記収納ドームからの前記内容物が収容される収容部が配設されていることを特徴としている。
【0007】
このような特徴により、基材シートの裏面側を支持した状態で、支持部に対してヒンジ軸回りにレバー部材を回動させ、レバー部材により収納ドームを押圧して収納ドーム内の内容物を押し出すことで、内容物が通過孔を通過して収容部内に収容される。その後、取出し具からPTP包装体を取り外し、収容部内に収容されている内容物ごと取出し具を移動させ、所望の所で収容部から内容物を落下させて供給する。以上より、収納ドーム内の内容物を直接触れることなく取り出して、所望の所に供給することができる。
【0008】
また、本発明の取出し具において、前記収容部は、前記支持部に前記通過孔の開口面に沿ってスライド可能に設けられていてもよい。
【0009】
この場合には、収容部を、通過孔と連通する連通位置と、収容部内の内容物が取り出せる取出し位置と、の間でスライド移動させることができる。そして、連通位置では通過孔を介して収容部内に内容物を収容できる。一方で、取出し位置では収容部を開放できるため、例えば、取出し具からPTP包装体を引き抜いたり、レバー部材を支持部から引き上げて離したりする等の動作を行わずに、収容部内の内容物を所望の所に供給できる。
【0010】
また、本発明の取出し具において、前記支持部には、前記レバー部材をヒンジ軸方向の両側から支持するガイド壁が一対立設されていてもよい。
【0011】
この場合には、レバー部材を間に挟んでヒンジ軸方向の両側にガイド壁を立設することで、レバー部材の操作時にレバー部材がヒンジ軸方向にずれるのを抑制して、レバー部材により収納ドームを介して内容物を確実に押し込むことができる。これにより、収納ドーム内の内容物を確実に収容部に供給することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る取出し具によれば、収納ドーム内に収納された内容物を直接触れずに取り出して、所望の所に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態における取出し具の側面図である。
【図2】図1に示す取出し具の断面図である。
【図3】図2に相当する断面図であって、取出し具の動作説明図である。
【図4】他の構成の取出し具を示す側面図である。
【図5】図4のA矢視図である。
【図6】図4,5に示す取出し具の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る取出し具を説明する。
本実施形態に係る取出し具1は、図1,2に示されるように、基材シート11の表面11aに、錠剤やカプセル剤等の内容物Cを収納した収納ドーム12が複数設けられてなるPTP包装体13から内容物Cを取り出すためのものであって、基材シート11の裏面11b側を支持する支持部21と、支持部21にヒンジ部22を介して回動可能に連結されたレバー部材23と、PTP包装体13から取り出される内容物Cを収容する収容部24と、を備えている。
【0015】
なお、PTP包装体13は、収納ドーム12を表面11a側に設けた基材シート11の裏面11bに例えばアルミ箔14のようなシール材(シートやフィルム)を貼着してなり、収納ドーム12を裏面11b側(アルミ箔14側)に向けて押圧することにより、収納ドーム12内の内容物Cによりアルミ箔14が破られて内容物Cが押し出されるようにしたものである。以下、PTP包装体13の厚さ方向に沿う基材シート11側を上側、アルミ箔14側を下側という。
【0016】
支持部21は、平面視の外形が収納ドーム12よりも大きい長方形状の板材であり、PTP包装体13を支持したときに、収納ドーム12に対応する位置に内容物Cが通過可能な通過孔25(図2参照)を有している。支持部21における長手方向の一端側の周縁部には、上方に向けて立設された側壁部26が形成されている。この側壁部26は、支持部21における短手方向の全域に亘って形成されるとともに、高さがPTP包装体13の基材シート11とアルミ箔14との合計厚さよりも高くなるように形成されている。なお、以下の説明では、平面視において、支持部21の長手方向を単に長手方向(図1中左右方向)、長手方向に直交する短手方向を単に短手方向(図1中奥行き方向)という。
【0017】
レバー部材23は、ヒンジ部22を介して側壁部26の上端に一体的に連結された側面視で階段状の板材であり、通過孔25の開口面に沿う方向のうち、短手方向に沿って延びるヒンジ部22のヒンジ軸回りに支持部21に対して回動可能に構成されている。レバー部材23は、支持部21の上方で支持部21に対向して配置されており、PTP包装体13を支持部21で支持したときに、収納ドーム12を上方から覆うように配置される。具体的に、レバー部材23は、ヒンジ部22から長手方向の他端側に向けて延在し、収納ドーム12の表面形状に倣って形成された押圧部31(図2参照)と、押圧部31から長手方向の他端側に向かうに従い上方に向けて延びる傾斜部32と、傾斜部32から長手方向に沿って延びる操作部33と、を備えている。
【0018】
押圧部31における長手方向の他端側には、下方に向けて突出する突起部34(図2参照)が形成されている。突起部34の下端は、PTP包装体13を支持部21で支持したときに、収納ドーム12における長手方向の他端側寄りで収納ドーム12に対向配置される。
操作部33は、操作者の指等で押し下げ操作するためのものであって、傾斜部32を介して押圧部31に連結されることで、押圧部31よりも上方に位置している。
【0019】
また、レバー部材23を間に挟んで短手方向(ヒンジ軸方向)の両側には、一対のガイド壁35が配置されている。これらガイド壁35は、側面視で矩形状の板材であり、長手方向の一端側で上述した支持部21における長手方向の一端側、及び側壁部26に連結部36を介して連設されている。したがって、長手方向において、ガイド壁35の連結部36以外の部分には、ガイド壁35と支持部21との間に上下方向で隙間を有しており、この隙間がPTP包装体13の差込口37として機能している。また、ガイド壁35の上端部には、対向するガイド壁35に向かってそれぞれ突出する係合凸部41(図2参照)が形成され、上述したレバー部材23(押圧部31)がアンダーカット嵌合されている。これにより、レバー部材23が支持部21と上下方向で対向する位置に支持されている。
また、ガイド壁35の内面には、レバー部材23に係合して押し下げ操作を規制する係合突起44が形成されており、押し下げ終了状態においてレバー部材23のそれ以上の押し下げを防止することで、目的とする収納ドーム12のみを押圧するようにしている。
【0020】
ここで、収容部24は、上述した支持部21の通過孔25を下方から覆うように支持部21に一体的に形成されたカップ状の部材であり、通過孔25の開口縁から下方に向けて延在する筒部42と、筒部42の下端開口部を閉塞する底部43と、を備えている。収容部24は、内容物Cの取出し時に通過孔25を介して収納ドーム12内に連通可能に構成されるとともに、内容物Cを収容可能な大きさに形成されている。
【0021】
次に、上述した取出し具の使用方法について説明する。
まず、図1,2に示すように、PTP包装体13に取出し具1をセットする。具体的には、短手方向において、収納ドーム12と、取出し具1のレバー部材23とが同位置に配置されるように取出し具1を位置合わせした状態で、ガイド壁35と支持部21との間に形成された差込口37に長手方向の他端側からPTP包装体13を差し込む。これにより、PTP包装体13が差込口37内を長手方向の一端側に向けて進入するとともに、対向するガイド壁35間に収納ドーム12が進入する。この際、PTP包装体13における長手方向の一端側の端縁が連結部36に当接する位置まで差し込まれることで、レバー部材23における押圧部31の下方に収納ドーム12が配置される。
【0022】
次に、図3に示すように、PTP包装体13に取出し具1をセットした状態で、レバー部材23を押し下げ操作する(図3中矢印L1参照)。具体的には、レバー部材23の操作部33を押し下げることで、レバー部材23がヒンジ部22回りに下方に向けて回動する。これにより、押圧部31の突起部34が収納ドーム12の上面に突き当たり、突起部34を介して収納ドーム12が下方に向けて押圧される。すると、収納ドーム12が下方に向けて凹むように変形することで、収納ドーム12を介して内容物Cが下方に向けて押し出され、PTP包装体13のアルミ箔14のうち、収納ドーム12に対向する部分(収納ドーム12を下方から閉塞している部分)が破断される。これにより、収納ドーム12内が通過孔25を介して収容部24内に連通し、内容物Cが下方に落下することで、通過孔25を通過して収容部24内に収容される。
【0023】
その後、操作部33の押圧を解除すると、レバー部材23がガイド壁35の係合凸部41にアンダーカット嵌合する位置まで復元する。そして、PTP包装体13を長手方向の他端側に向けて引き抜く。これにより、内容物Cが収容部24内に収容された状態で、取出し具1からPTP包装体13が取り外される。その後、収容部24内に収容されている内容物Cごと取出し具1を移動させ、所望の所で収容部24から内容物Cを落下させて供給する。
【0024】
したがって、本実施形態では、PTP包装体13の裏面11b側を支持した状態で、支持部21に対してレバー部材23を回動させ、このレバー部材23により収納ドーム12を押圧して収納ドーム12内の内容物Cを押し出すことで、内容物Cが通過孔25を通過して収容部24内に収容される。その後、取出し具1からPTP包装体13を取り外し、収容部24内に収容されている内容物Cごと取出し具1を移動させ、所望の所で収容部24から内容物Cを落下させて供給する。以上より、収納ドーム12内の内容物Cを直接触れることなく取り出して、所望の所に供給することができる。
【0025】
また、レバー部材23を間に挟んで短手方向の両側にガイド壁35を配置することで、レバー部材23の押し下げ操作時にレバー部材23が短手方向にずれるのを抑制して、レバー部材23により収納ドーム12を介して内容物Cを下方に向けて確実に押し込むことができる。これにより、収納ドーム12内の内容物Cを確実に収容部24に供給することができる。
また、レバー部材23の操作部33を押圧部31に比べて上方に配置することで、レバー部材23の回動時において、レバー部材23(操作部33)が隣接する収納ドーム12等と干渉するのを抑制できる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、支持部21と収容部24を一体的に形成する場合について説明したが、これに限らず、支持部21と収容部24とを別体で形成し、収容部24を支持部21に対して長手方向にスライド移動可能に構成しても構わない。
具体的には、図4,5に示すように、短手方向において、支持部21における通過孔25を間に挟んだ両側には、長手方向に沿って延在する一対のレール部51が形成されている。レール部51は、通過孔25の開口縁から下方に向けて立設された側壁部52と、側壁部52の下端部から互いに対向する側壁部52に向けてそれぞれ延びる保持部53と、を備えている。
【0027】
一方、収容部24の開口縁には、外側に向けて張り出すフランジ部54が形成され、このフランジ部54がレール部51における保持部53上に保持されている。これにより、収容部24は、通過孔25と連通する連通位置(図4,5参照)と、収容部24内の内容物Cが取り出せる取出し位置(図6参照)と、の間でレール部51上を長手方向に沿ってスライド移動可能とされている。この場合、上下方向において、取出し位置まで収容部24をスライド移動させることで(図6中矢印L2参照)、支持部21やレバー部材23と重ならない位置で収容部24を上方に向けて開放できるため、例えば、取出し具1からPTP包装体13を引き抜いたり、レバー部材23を支持部21から引き上げて離したりする等の動作を行わずに、収容部24内の内容物Cを所望の所に供給できる。
【0028】
また、図4,6に示すように、フランジ部54における長手方向の他端側に、収容部24のスライド移動時に通過孔25の開口縁に係止可能な係止突起61を設けるような構成にしても構わない。
具体的に、係止突起61は、フランジ部54における長手方向の他端側に形成され、長手方向の一端側に向かうに従い上方に向けて傾斜する舌片状の板材であり、その周囲が平面視コ字状のスリット62に囲まれている。係止突起61は、上下方向に弾性変形可能に構成されている。この場合、係止突起61は、上述した連通位置では、長手方向の他端側において支持部21下面に形成されたガイド溝63内に配置されている。また、係止突起61は、図6に示す取出し位置では、通過孔25における長手方向の一端側の開口縁に係止され、収容部24のそれ以上スライド移動を防止している。これにより、収容部24がレール部51から外れるのを防止することができる。
また、フランジ部54の長手方向の一端側には、短手方向に延設されて、連通位置の際にレール部51における長手方向の一端側壁面に当接することで、収容部24のスライド移動を規制する係止片64が設けられている。
【0029】
さらに、収容部24を支持部21に対して着脱可能に構成する等しても構わない。
また、上述した実施形態では、一つの収納ドーム12に対してレバー部材23、及び収容部24をそれぞれ一つずつ設けた場合について説明したが、これに限らず、複数の収納ドーム12内の内容物Cを一括して取り出すような構成にしても構わない。
【0030】
さらに、収容部24の開口端縁を支持部とし、この支持部から直接ヒンジ部22を介してレバー部材23を連結する構成にしても構わない。
また、上述した実施形態では、レバー部材23を階段状の板材に形成したが、単に平板でもよく、収納ドーム12を押し出せる構成であれば、その他の種々の構成を採用することが可能である。
また、上述した実施形態では、ヒンジ部22を短手方向に沿って形成したが、これに限らず、通過孔25の開口面に沿う方向であれば、例えばヒンジ部22を長手方向に沿って形成しても構わない。
【0031】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…取出し具 11…基材シート 11a…表面 11b…裏面 12…収納ドーム 13…PTP包装体 21…支持部 22…ヒンジ部 23…レバー部材 24…収容部 25…通過孔 35…ガイド壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの表面に、内容物が収納された収納ドームが複数設けられてなるPTP包装体から前記内容物を取り出す取出し具において、
前記基材シートの裏面側を支持するとともに、前記収納ドームからの前記内容物が通過可能な通過孔を有する支持部と、
該支持部に前記通過孔の開口面に沿って延びるヒンジ軸回りに回動可能に連結されるとともに、前記支持部が前記基材シートの裏面側を支持した状態で、前記基材シートの表面側から裏面側に向けて前記収納ドームを押圧可能なレバー部材と、を備え、
前記支持部には、前記通過孔を通過した前記収納ドームからの前記内容物が収容される収容部が配設されていることを特徴とする取出し具。
【請求項2】
前記収容部は、前記支持部に前記通過孔の開口面に沿ってスライド可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の取出し具。
【請求項3】
前記支持部には、前記レバー部材をヒンジ軸方向の両側から支持するガイド壁が一対立設されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の取出し具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−246035(P2012−246035A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120874(P2011−120874)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】