説明

取引中継方法および取引中継システム

【課題】全銀フォーマット以外の独自フォーマットの振込依頼データを全銀フォーマットに変換して処理する。
【解決手段】金融機関2の振込中継システム1は、独自フォーマットで作成された振込依頼データを変換する変換ルールを依頼者3の識別情報に関連付けて格納する変換ルールDB、変換済データファイルに必要なデータが含まれているかを検証する共通検証ルールを格納する共通検証ルールDB、SWIFT経由で依頼者識別情報を含む振込依頼データを受信する手段、変換ルールDBから依頼者に関する変換ルールを読み込んでデータファイルに変換する手段、共通検証ルールDBから共通検証ルールを読み込んで変換済データファイルを検証する手段、データファイルから必要なデータを抽出して全銀フォーマット用の電子ファイルを生成する手段、および基幹システム5に対して電子ファイルを送信する手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振込などの資金移動処理の中継方法および取引中継システムに関し、さらに詳しくは、外国の金融機関や顧客企業から送信された独自フォーマットの振込等の依頼データから、金融機関の基幹システムが全銀フォーマットの電文を生成できるように資金移動の取引処理を中継する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、海外の顧客(外国法人、国内法人の海外支店、海外居住又は一時滞在の個人など)から振込などの資金移動の依頼を受け付ける場合(以下、海外からの振込)は、国内の金融機関は、顧客が依頼した現地の金融機関からSWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)のネットワークを通じて振込依頼データファイルを受領する。ここで、SWIFTとは、各国の金融機関同士の送金約定内容等の電文のやりとりを行う国際的な通信ネットワークである。
【0003】
SWIFTの主なサービスとして、定型フォーマットの電子メッセージを送受信するFIN(Financial Messaging)サービスと、容量の大きい電子ファイルを転送できるFileActサービスとが用意されている。FileActサービスは、大量の金融取引データの配信に適しており、振込依頼データファイルの項目名やデータ属性、入力ポリシーなどの制約が少ない。そのため、多数件の振込を自社の内部データを流用して簡便に依頼したい大企業や、振込依頼に際して独自の取引条件等を付加したい顧客や金融機関にとって利便性が高い。
【0004】
一方で、FileActサービスを利用した振込依頼を処理する国内の金融機関は、独自フォーマットの電子ファイルの中から必要なデータを抽出して全銀フォーマットの電文を作成する必要がある。従来から、この作業は、金融機関が受領した振込依頼データファイルを紙面に印刷し、担当者がこの中から全銀フォーマットに必要な項目を目視で選別・抽出し、日付、数値、テキスト等のデータ形式などに配慮しながら手作業で送金依頼電文を作成/送信している。また、送信時期、エラー発生時の対応、送金処理が完了した後の応答(結果報告)なども、担当者が顧客ごとの取り決めや振込依頼データファイルの特記事項などを確認しながら行っている。
【0005】
また、金融機関との間で専用線(VPN)を敷設している大企業などの一部の顧客から振込依頼を受け付ける場合(以下、ファームバンキング)も、上記したSWIFTのFileActサービスと同様に、金融機関は、顧客(依頼者)が作成した独自フォーマットの振込依頼データファイルを受け取って、全銀フォーマットの電文を作成する必要がある。
【0006】
このような複数のネットワークプロトコルが介在する送金処理の負荷を軽減し、人手が介在することによるヒューマンエラーやデータの改ざん等を防止する方策として、例えば、以下の特許文献1および2が参考になる。
【0007】
特許文献1では、まず在日外資系企業の海外統括会社などの顧客の端末14から、変換サーバー10に英文等の振込依頼データが送信される。変換サーバー10は、顧客データベース、振込先データベース等を参照して全銀フォーマットに準拠した全銀振込依頼データを作成し、金融機関の振込処理コンピュータ18に送信する。従って、金融機関は、海外からの振込依頼においても、通常の振込みと同様に全銀フォーマットの振込依頼データを受け取ることができる。
【0008】
また、特許文献2では、EB(エレクトロニックバンキング)センタ11にウェブサーバ12と通信制御装置14とを設置し、顧客企業4と金融機関1との間の通信プロトコルで受付けたデータを全銀プロトコルによる送信データに変換するようにしている。従って、金融機関は、顧客との専用線を介した振込依頼においても、通常の振込みと同様に全銀フォーマットの振込依頼データを受け取ることができる。また、金融機関サイドで顧客毎に専用の通信プログラムを開発して顧客に配布する必要がなく、顧客および金融機関のコンピュータ環境(コンピュータのスペック、OSのバージョンアップ等)に依存しない振込処理フローを構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−006443号公報
【特許文献2】特開2003−223560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した特許文献1、2は何れも、振込依頼者(外国の金融機関や顧客)と金融機関との間に、データ変換専用のシステム(変換サーバー10、EBセンタ11の通信制御装置14やウェブサーバ12)を介在させている。そのため、以下のような課題が新たに生じる。
【0011】
まず、データ変換専用システムの構築・運営コストや負荷、およびセキュアな通信回線を金融機関や振込依頼者とデータ変換専用システムとの間に敷設・管理するコストや負荷が新たに発生する。そのため、現在の金融機関内での手作業での負荷は軽減されるとしても、海外からの振込みやファームバンキングでの振込依頼は金融機関全体の処理件数に占める割合は多くないので、費用対効果の点で実現性に乏しい。特に、一の金融機関が単独でデータ変換専用システムを設置・運営することは現実的でない。
【0012】
また、ファームバンキングは、顧客企業と金融機関との契約に基づいているため、データ変換専用システムを介在させるためには、新たに顧客と契約を締結し直す必要がある。
【0013】
一方で、コストや負荷を軽減するために、複数の金融機関が共同でデータ変換専用システム(サーバ)を設置・運営したり、公的な第三者機関に運営を委託する場合には、上記した顧客との個別の契約の問題に加えて、金融機関同士や運営主体との法的責任や費用負担を明確にする必要がある。さらに、各金融機関の内部フローやその顧客との間の処理フローを全てシステムに反映させる必要があるため、システムが複雑化し安定的な稼動が容易ではない。特に、この場合は、振込のタイミングや処理結果の報告などに関する顧客からの個別の指示、および顧客の属性等に基づく金融機関サイドの個別対応を実現することが困難となる。
【0014】
本発明の目的は、SWIFTネットワークや顧客専用線を介して受け付けた独自フォーマットの資金移動依頼データを整備した上で金融機関内の既存の基幹システムに受け渡し、全体としての資金移動の処理の負荷を大幅に軽減することができる取引中継方法および取引中継システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点における取引中継方法は、金融機関(2)に設置され、基幹システム(5)と接続される取引中継システム(1)によって、依頼者(3)から依頼された資金移動の処理を中継する。
【0016】
前記取引中継システム(1)は、全銀フォーマットと異なるフォーマットで作成された資金移動の依頼データを所定のファイル形式のデータファイルに変換するための変換ルールを依頼者(3)の識別情報に関連付けて格納する変換ルールデータベース(18)と、変換されたデータファイルに全銀プロトコルに準拠した電文フォーマット(全銀フォーマット)の生成に必要なデータが全て含まれているかを検証するための共通検証ルールを格納する共通検証ルールデータベース(19)とを備える。
【0017】
前記方法は、前記取引中継システム(1)のファイル受信手段(23)が、前記依頼者(3)から、依頼者(3)の識別情報を含む資金移動の依頼データを受信するステップ(S1)と、前記取引中継システム(1)のファイル変換手段(24)が、前記受信した依頼データに含まれる依頼者識別情報に基づいて、前記変換ルールデータベース(18)から当該依頼者(3)に関する変換ルールを読み込んで依頼データを所定のファイル形式のデータファイルに変換するステップ(S2、S3)と、前記取引中継システム(1)の検証手段(25)が、前記共通検証ルールデータベース(19)から共通検証ルールを読み込んで前記変換されたデータファイルを検証するステップ(S4、S5)と、前記取引中継システム(1)の電子ファイル生成手段(29)が、前記変換されたデータファイルに全銀フォーマットに必要なデータが全て含まれていると判定された場合(S5)に、当該データファイルから全銀フォーマットに必要なデータを抽出して電子ファイルを作成するステップ(S9)と、前記取引中継システム(1)の電子ファイル送信手段(30)が、全銀フォーマットの電文を生成する基幹システム(5)に前記作成された電子ファイルを送信するステップ(S17)とを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明の第2の観点における取引中継システム(1)は、金融機関(2)の基幹システム(5)に接続され、依頼者(3)から依頼された資金移動の中継処理を実行する。
このシステム(1)は、全銀フォーマットと異なるフォーマットで作成された資金移動の依頼データを所定のファイル形式のデータファイルに変換するための変換ルールを依頼者(3)の識別情報に関連付けて格納する変換ルールデータベース(18)と、変換されたデータファイルに全銀プロトコルに準拠した電文フォーマット(全銀フォーマット)の生成に必要なデータが全て含まれているかを検証するための共通検証ルールを格納する共通検証ルールデータベース(19)と、前記依頼者(3)から、依頼者(3)の識別情報を含む資金移動の依頼データを受信するファイル受信手段(23)と、前記受信した依頼データに含まれる依頼者識別情報に基づいて、前記変換ルールデータベース(18)から当該依頼者(3)に関する変換ルールを読み込んで依頼データを所定のファイル形式のデータファイルに変換するファイル変換手段(24)と、前記検証ルールデータベースから共通検証ルールを読み込んで前記変換されたデータファイルを検証する検証手段(25)と、前記変換されたデータファイルに全銀フォーマットに必要なデータが全て含まれていると判定された場合に、当該データファイルから全銀フォーマットに必要なデータを抽出して電子ファイルを生成する電子ファイル手段(29)と、生成された電子ファイルを全銀フォーマットの電文を生成する基幹システム(5)に送信する電子ファイル送信手段(30)とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、SWIFTネットワークや顧客専用線(VPN)を介して受け付けた独自フォーマットの振込等の依頼データを整備して金融機関内の既存の基幹システムに受け渡すことができる。電子ファイルは、全銀フォーマットに準拠した形式で作成することができるので、基幹システムでは受け取った電子ファイルに基づいて容易かつ確実に全銀フォーマットの取引電文を作成できる。従って、金融機関の担当者の負荷を軽減でき、金融機関の外部にデータ変換専用のシステムを構築する必要もない。
【0020】
また、本発明の好ましい実施形態では、依頼者を予め複数の分類に区分し、分類毎に電子ファイルの生成および/または送信(中継処理)までの待機時間を設定し、依頼者から資金移動の依頼を受け付けた場合に、その依頼者の待機時間に従ったタイミングで中継処理を実行する。従来は、依頼者から資金移動の依頼を受け付けると、基幹システムが取引電文を生成して全銀システムに送信していた。そのため、後日、依頼者から依頼内容の修正や取消しが依頼された場合に、修正等の煩雑な処理により業務効率の低下を招いていた。また、依頼者が指定した資金移動の実行期日前の修正等であっても所定の手数料が発生するなど、顧客サービスの点でも問題があった。
【0021】
そこで本発明の好ましい実施形態では、依頼者の取引状況などに基づく修正等の発生率や、依頼者の取引量や契約の有無などに基づく顧客属性に応じて、依頼者ごとに最適なタイミングで基幹システムに対する中継処理を実行できるようにした。ここで、依頼者の分類は、契約の有無、取引量、取消率などの取引状況の順で優先的に適用して区分を設定することが好ましい。また、依頼者の区分は月次などの一定周期や、イベント発生時などの不定期で更新するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態のネットワーク構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る振込中継システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】同、顧客ごとの中継処理実行時期の判定基準と判定ルールを示す図である。
【図4】同、振込中継方法の全体処理工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態のネットワーク構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るシステムおよび方法を、図面を参照して詳述する。以下においては、資金移動の例として国内の口座から他の口座への振込を例示して説明するが、本発明は、国内の口座から外国の金融機関の外国通貨の口座への資金移動(外国送金)等にも適用可能である。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のネットワーク構成図である。この図において、符号1で示す振込中継システム(取引中継システム)は、SWIFTに加盟している国内の金融機関2に設置され、SWIFTプロトコルに準拠したネットワーク(SWIFT Net)および全銀プロトコルに準拠したネットワーク(全銀Net)を介して、SWIFT Net(SWIFTシステム)に接続可能な外国顧客3および全銀Net(全銀システム)に接続可能な国内の他の金融機関4(振込の被仕向け金融機関)とそれぞれ接続可能である。本実施形態では、上記したSWIFTのFile Actサービスを利用して振込依頼を受け付けるものとする。
【0025】
外国顧客3には、外国の金融機関3Aの他、SWIFTに加盟する一部の企業3Bなども含まれる。何れの外国顧客3からの振込依頼も、振込依頼データがSWIFT Net経由で送信されることに変わりはない。以下においては、外国の金融機関3Aを外国顧客3もしくは依頼者3と表記する。また、外国顧客3および他の金融機関4は、実際には外国顧客3の取引依頼システム(社内の専用/汎用コンピュータシステム)および他の金融機関4の取引処理システムであるが、説明の便宜上、外国顧客3、他の金融機関(被仕向け金融機関)4と表記する。外国の金融機関3Aに振込みを依頼する依頼者は法人または事業性個人であり、振込依頼は、依頼者の口座から1以上の他の口座への複数の振込みを指示する多数件一括振込み(総合振込)依頼であるものとする。
【0026】
振込中継システム1は、1または複数のコンピュータで構成されており、金融機関2の既存の基幹システム(勘定系システム、情報系システム等の取引処理システム)5やGatewayサーバー6、その他の関連するシステムと連携して、外国顧客3から依頼された振込の中継処理を実行する。なお、振込中継システム1は、基幹システム5と機能の一部を共用したり、基幹システム5の一部として構成してもよい。
【0027】
外国顧客3が作成した振込依頼データは、SWIFT Net上に設置されたSWIFT Netサーバー7の金融機関2の専用キュー8Aに一旦すべて保存される。振込中継システム1は、この振込依頼データをGatewayサーバー6を介して受信する。Gatewayサーバー6には、SWIFT管理者(本部、国内支部等)から全てのSWIFTメンバーに配布され、SWIFT経由の取引を処理するための専用のソフトウェア(SAG:SWIFT alliance gateway)9がインストールされ、常駐している。SAG9は、定期的にSWIFT Netサーバー7の当該金融機関2の専用キュー8Aにアクセスして、自行宛ての振込依頼データを取得する。一方、金融機関2から外国顧客3への振込処理の結果報告や後述する振込依頼データのチェック結果の報告などは、SAG9によって外国顧客3の専用キュー8Bに格納される。外国顧客3も、自行システムのSAG9を使用して振込処理の結果報告などを受領する。
【0028】
ここで、SWIFTのFile Actサービスにおいては、依頼者(外国顧客3)と受信者(金融機関2)とで振込依頼データを送受信する方式として、Store&Foward方式とリアルタイム方式とが用意されている。Store&Foward方式は、依頼者側の金融機関がSWIFT Netに送信した取引依頼データが受信者側の金融機関専用のキューに一旦格納され、受信者側の金融機関が定期的に自行のキューにアクセスしてその依頼データを受領する方式である。リアルタイム方式は、依頼者側および受信者側の金融機関がそれぞれ同時にSWIFT Netに接続し、振込依頼データをタイムラグなしに送受信する方式である。何れの方式を採用するかは、依頼者側の選択に委ねられる。ただ、Store&Foward方式でも、SAGが数分〜数十分程度の短い周期で専用キューにアクセスしているため、依頼者側の振込依頼データの送信およびキューへの保存(Store)から、受信者側の受信(Foward)までのタイムラグはほとんど問題とならない。
【0029】
本実施形態の振込中継システム1は、金融機関2内の基幹システム5とSWIFT Net(Gatewayサーバー6)とを中継するGCMS(Global Cash Management Service)中継サーバーとして機能する。具体的には、振込中継システム1は、SWIFT経由で受信した振込依頼データをCSVなどの所定フォーマットに変換する機能、変換されたデータファイルに全銀フォーマットの電文を作成するための必要項目が含まれているかなどをチェックする機能、データ不備などのエラーが発見された場合の外国顧客3への報告や、振込依頼データの変更・取消・振込完了の結果報告などを行う機能、振込電文作成用の電子ファイルを作成して基幹システム5に送信する機能、顧客毎の中継処理実行時期を管理する機能などを備える。
【0030】
上記した種々の機能を奏するため、本発明の実施形態に係る振込中継システム1は図2に示すように構成される。なお、図2では、単一のコンピュータシステムを想定し、必要な機能構成だけを示しているが、振込中継システム1を、複数のコンピュータシステムによる多機能の分散システムの一部として構成することもできる。
【0031】
振込中継システム1は、CPU11に、システムバス12を介してRAM13、入力装置14、出力装置15、通信制御装置16および不揮発性記憶媒体(ROMやHDDなど)で構成される記憶装置17が接続された構成を有する。記憶装置17は、上記した機能を奏するためのソフトウェアプログラムを格納するプログラム格納領域と、取得したデータや処理結果としてのデータ等を格納するデータ格納領域とを備えている。以下に説明するプログラム格納領域の各手段は、実際は独立したソフトウェアプログラム、そのルーチンやコンポーネントなどであり、CPU11によって記憶装置17から呼び出されRAM13のワークエリアに展開されて、データベース等を適宜参照しながら順次実行されることで、各機能を奏するものである。
【0032】
データ格納領域は、変換ルールデータベース(DB)18、共通検証ルールデータベース(DB)19、固有検証ルールデータベース(DB)20、および中継処理実行時期データベース(DB)21を備える。何れも、記憶媒体17内に確保された一定の記憶領域である。
【0033】
変換ルールDB18は、全銀フォーマットと異なる依頼者データフォーマットの振込依頼データを、金融機関2が予め設定した所定のファイル形式のデータファイルに変換するための変換ルールを依頼者の識別情報に関連付けて格納する。所定のファイル形式は、例えばCSV、固定長、XMLなどの、データ項目の検証、抽出、加工などが可能なフォーマットである。このファイル形式は、振込中継システム1として機能する金融機関2のコンピュータシステムのソフトウェアやハードウェアの環境と、依頼者(顧客)ごとに異なるSWIFT振込依頼データのフォーマット(依頼者データフォーマット)との双方を考慮して、設定される。
【0034】
依頼者データフォーマットは依頼者側の自由度が高いため、そのままでは自動処理に不向きであるが、例えば振込依頼データであれば、依頼者の書誌情報および口座特定情報、振込先の書誌情報および口座特定情報、振込金額、振込み指定日、担当金融機関の書誌情報などの振込の一連の処理に必要な情報は必ず含まれている。そのため、そのような必須の情報がそれぞれ振込依頼データのどの項目名に含まれているか、どのようなデータ形式(テキスト、数値、日付など)で入力されているか、どのようなポリシーでデータ入力されているか、などのルールを予め外国顧客3との間で共有しておくことで、必須の情報を容易かつ確実に特定して抽出することが可能になる。変換ルールは、依頼者毎や国毎に異なるファイル形式で設定することもできるし、逆に、金融機関2の環境のみに基づいて全ての依頼者で統一することもできる。後者の場合には変換ルールを依頼者の識別情報に関連付けておく必要はない。
【0035】
共通検証ルールDB19は、変換されたデータファイルに全銀プロトコルに準拠した電文フォーマット(全銀フォーマット)の生成に必要なデータが全て含まれているかを検証するための、全ての依頼者(依頼データ)に共通する検証ルールを格納する。例えば、振込みの依頼者の書誌情報や口座情報、振込み額や振込み指定日、受取人の書誌情報や口座情報などである。
【0036】
固有検証ルールDB20は、依頼者3と金融機関2との間で予め取り決めた、前記共通検証ルールとは異なる依頼者固有のフォーマット検証ルールを依頼者3の識別情報に関連付けて格納する。例えば、依頼者3が、複数件を一括で依頼(処理)する総合振込みにおいて振込み総額や複数の振込先ごとの合計額を特定のフィールドに明示すること、依頼者と受取人との間で取り決めた取引番号や会員番号、国コードなどを依頼者の欄に含めること(JP111 YAMADA TAROなど)、などが依頼者3から金融機関2に予め指示されているとする。このような場合に、それらの指示フィールド自体が振り込み依頼データに含まれているか、指示フィールドに指示情報が含まれているか(ブランクではないか)、などを固有の検証ルールとして設定しておく。このような固有の検証ルールは、上記した依頼者ごとの依頼者データフォーマットに密接に関連しているため、依頼者データフォーマットとセットで予め取り決めて格納しておくのが好ましい。
【0037】
本実施形態では、共通検証ルールおよび固有検証ルールの検証結果の通知形式(多数件一括報告、振込先別の報告、1件ごとの報告、報告フォーム等)および通知時期(週次、月次、即時など)を含む依頼者3の指示情報も、予め依頼者3から取得して固有検証ルールDB20に格納している。共通検証ルールおよび固有検証ルールを検証した結果、データの欠落や不備等のエラーが発見された場合は、例え書誌事項などの最小限の振込必須データが揃っていたとしても(共通検証ルールではエラーなし)、依頼された通りの振込みを実行することができない。そのため、エラーが発見された場合には常に依頼者3にエラーを通知する。すなわち、依頼者3の指示情報には、エラー報告の要否(報告不要の指示)は含まれていない。検証の結果、データが完備している場合に、振込完了の報告とは別に報告するかどうかは、依頼者が指定可能である。エラー報告には、データ欠落の項目や不備なデータの明示、エラーの理由などを含めるのが好ましい。
【0038】
中継処理実行時期DB21は、振込依頼データを受信した場合に、電文生成用の電子ファイルの生成および/または電子ファイルの基幹システム5への送信(中継処理)を即時に実行するか、または所定の待機時間経過後に実行するかに関する中継処理実行時期の情報を、前記依頼者の識別情報に関連付けて格納する。
【0039】
中継処理実行時期の情報は、具体的には振込依頼データの受信から何日目に電子ファイルを生成するか、または生成され保存されていた電子ファイルを何日目に基幹システム5に送信するか、の情報である。待機時間または中継処理実行時期は、振込依頼データの受領時から依頼者が設定した振込指示日までの期間(数時間〜2、3週間)を金融機関がどのような観点で活用するか、という内部の問題である。取引の確実性、安全性を担保するという観点では、依頼者3から振込依頼データを受領したら、速やかに電子ファイルを作成して基幹システム5に送信するのが好ましい。基幹システム5は、電文生成用のデータ(従来の振込依頼データや本実施形態の電子ファイルなど)を受領すると、速やかに取引電文を生成して全銀Netに送信する。
【0040】
一方で、即時に電子ファイルを生成して基幹システム5に送信してしまうと、後日、依頼者(外国顧客3)から振込依頼データの変更や依頼取消が通知された場合に、金融機関2にとっては取引変更や取消しなどの煩雑な処理が発生し、また依頼者3にとっては取消等の手数料がかかる場合もある。全ての顧客や振込依頼について一律に長い待機時間(取消等が容易にできる期間)を設定するのは上記した取引の確実性・安全性の観点で好ましくない。
【0041】
そこで、本実施形態では、客観的な統計データや顧客の属性、要望などに基づいて顧客ごとに待機時間(電子ファイル作成・送信時期)を設定することで、顧客サービスと業務効率とを両立させることにした。
【0042】
具体的には、金融機関2が所定の条件に従って依頼者(外国顧客)3を複数の依頼者区分に分類し、この区分に基づいて設定された中継処理実行時期を中継処理実行時期DB21に格納することにした。依頼者3を分類する所定の条件は、例えば、過去の一定期間内における金融機関2との取引の量(件数、総額、平均額、特定種類の取引の有無や量など)、過去の一定期間内における資金移動の依頼に関する処理不能の件数または不能率、過去の一定期間内における振込みの依頼受け付け後の依頼データの変更件数または変更率、および過去の一定期間内における振込みの依頼受け付け後の依頼取消の件数または取消率、の少なくとも何れかの統計データに基づく基準を含むのが好ましい。
【0043】
例えば、本実施形態では、図3(A)に示すように、振込依頼者となる顧客との契約において中継処理実行時期に関する特約条項があるか(基準1)、一定期間内における依頼者3と金融機関2との取引量などに基づいて設定される顧客区分(基準2)、および一定期間内における振込依頼の取消率(基準3)に従って、全ての顧客をA〜Dの4段階で分類している。取消率には、依頼内容の変更(率)も含んでいる。
【0044】
本実施形態では、基準1〜3の順に優先順位が設定されており、顧客を分類する際に、基準1〜3の順で該当するかどうかが判定されていく。この分類ごとに、振込み依頼を受け付けて(振込依頼データを受領して)から中継処理を実行(電子ファイルを基幹システムに送信)するまでの時間(待機時間)が、それぞれ当日、1営業日前、2営業日前、即時と設定されている。当日とは、振込指定日の当日、1(2)営業日前とは、振込指定日の1(2)営業日前、即時とは、受け付けたその日(または翌営業日)、にそれぞれ電子ファイルを作成して基幹システム5に送信する、という意味である。すなわち、当日が最も待機時間が長く、即時は待機時間が実質的に0である。顧客区分や取消率は、後述するように、その基になる統計データが月次で集計され毎月更新される。
【0045】
このような基準で各顧客を判定した結果を図3(B)に示す。図3(B)のW000の顧客は、特約はないが優良顧客であるため、統計データに拘らず区分A(振込み指定日の当日に処理)と判定される。なお、統計データの欄の「−」はデータを取得(更新)していないことを示す。X111〜Y222の顧客は、統計データに従ってそれぞれ区分B〜Dと判定される。一方、Z333の顧客は、統計データからすれば区分Cとなるが、特約条項の存在が優先するため区分D(即時処理)と判定される。
【0046】
図2に戻って、プログラム格納領域に格納されているソフトウェアプログラムは、本発明に関連するものだけを列挙すると、振込依頼データ受信手段(ファイル受信手段)23、ファイル変換手段24、検証手段25、報告出力手段(検証結果通知手段)26、待機時間検索手段27、中継処理実行時期監視手段28、電子ファイル生成手段29、電子ファイル送信手段30、および顧客区分更新手段31を備えている。
【0047】
振込依頼データ受信手段23は、依頼者3(外国顧客)から、全銀フォーマットと異なる依頼者データフォーマットで作成され、依頼者3の識別情報(SWIFTコード、顧客IDなど)を含む振込依頼データをゲートウェイサーバ6から受信する機能を有する。振込依頼データには、振込依頼者の書誌情報や口座情報、受取人の書誌情報や口座情報、振り込み金額、振込み指定日などの振込処理に必須の情報と、振込総額、振込先ごとの合計額、振込手数料の扱い、完了後の報告形態などの依頼人固有の情報とが含まれている。また、本実施形態の総合振込では、振込依頼者の情報は共通で、受取人の情報等が振込件数分だけ含まれている。
【0048】
ファイル変換手段24は、受信した振込依頼データに含まれる依頼者3の識別情報に基づいて、変換ルールデータベース18から当該依頼者3に関する変換ルールを読み込んで振込依頼データをCSVなどの所定のファイル形式のデータファイルに変換する機能を有する。依頼者データフォーマットは、作成者(依頼者)の自由度が高いため、そのままではデータの検証や全銀フォーマットの電文作成が困難であり、人手を介する必要がある。そのため、これらの処理を自動化する前提として、受信した振込依頼データをコンピュータシステムで自動的に検証・編集(加工)できるように、ファイル形式を変換する必要がある。
【0049】
検証手段25は、変換済のデータファイルについて、全ての依頼者に共通の共通検証ルールと、特定の依頼者から予め指示されている固有検証ルールとにしたがって検証する機能を有する。前者の共通ルール検証機能は、共通検証ルールDB19から共通検証ルールを読み込んで変換済のデータファイルに全銀フォーマットの振込電文に必須の情報が完備されているかを検証する機能である。後者の固有検証ルール検証機能は、依頼者識別情報に基づいて固有検証ルールDB20に依頼者固有の検証ルールが登録されているかを判定し、固有検証ルールが登録されている場合に、固有検証ルールを読み込んで、データファイルが依頼者3から指示されているフォーマットを完備しているかを検証する機能である。指示される固有のフォーマットとしては、上記した取引番号や会員番号、国コードなどを依頼者の欄に含めることなどが含まれる。
【0050】
報告出力手段26は、固有検証ルールDB20に格納された依頼者3の指示情報に従って、共通検証ルールおよび固有検証ルールの検証結果を依頼者に通知する機能である。何れの検証ルールについても、不備が発見された場合には指示通りの振込を実行できないことから、振込処理を行わずに発見された不備なデータ等を明示して報告する。
【0051】
待機時間検索手段27は、受領した振込依頼データに含まれる依頼者識別情報に基づいて、中継処理実行時期DB21から依頼者の中継処理実行時期(待機時間)を検索する機能である。上記したように、依頼者の待機時間は、A〜Dの顧客区分に従って設定されている。
【0052】
中継処理実行時期監視手段28は、検索された中継処理実行時期をメモリ等にセットし、コンピュータのリアルタイムクロックやCPUクロックなどの機能を利用して中継処理実行時期が到来したかを監視する機能である。中継処理実行時期の到来を検知した場合にCPU11に通知する。
【0053】
電子ファイル生成手段29は、変換済データファイルについて、共通検証ルールおよび固有検証ルールの何れにおいてもデータが完備していると判定された場合に、当該データファイルから全銀フォーマットに必要なデータを抽出して電文生成用の電子ファイルを生成する機能である。また、待機時間検索手段27によって待機時間が検索された場合には、電子ファイル生成手段29は生成した電子ファイルを図示しない未処理キューなどに保持しておき、中継処理実行時期監視手段28が待機時間の終了(中継処理実行時期の到来)を検知した場合に未処理キューから電子ファイルを取り出して電子ファイル送信手段30に転送する。なお、データ抽出だけを即時に実行して未処理キューに保持しておき、中継処理実行時期が到来したときに電子ファイルを生成するようにしてもよい。
【0054】
電子ファイル送信手段30は、電子ファイル生成手段29から生成された電子ファイルを受け取り、基幹システム5に対して送信する機能である。待機時間が設定されていて、電子ファイル生成手段29が即時に電子ファイルを生成して送信してきた場合には、電子ファイル送信手段30がその電子ファイルを未処理キューに格納しておき、中継処理実行時期が到来したときに電子ファイルを取り出して基幹システム5に送信する。
【0055】
顧客区分更新手段31は、所定周期(月次、半期など)や、特定のイベントの発生時(依頼者の決算期、取引件数の区切りごと、契約更新時等)に、上記した条件に従って中継処理実行時期DB21の顧客区分を更新する機能である。上記したように、金融機関2と依頼者3の契約(特約)によって中継処理実行時期が設定されている依頼者3については、取消率などの統計データに基づく基準での更新対象から除外するのが好ましい。また、イベント発生時には、関連する依頼者に限って顧客区分を更新するのが好ましい。
【0056】
次に、図4のフローチャートを参照して、本実施形態にかかる振込中継方法の処理工程を説明する。なお、顧客区分の更新については省略する。
【0057】
まず、振込中継システム1の振込み依頼データ受信手段23が、SWIFT Netサーバー7およびGatewayサーバー6を介して、依頼者(外国顧客)3からの振込み依頼データを受信する(S1)。データを受信すると、ファイル変換手段24が起動し、振込依頼データに含まれているSWIFTコードや顧客IDなどの依頼者識別情報に基づいて、変換ルールDB18からその依頼者3の変換ルールを特定し(S2)、振込依頼データをCSVなどの所定のフォーマットに変換する(S3)。これにより、後に続く検証(エラーチェック)やデータ抽出などの処理が可能になる。
【0058】
ついで、検証手段25が、まず全顧客共通の検証ルールで変換済データファイルを検証する(S4)。具体的には、全銀フォーマットの振込電文を作成するために、必須のデータが全て含まれているかをチェックする。
【0059】
必須のデータが完備されている場合には(S5のYes)、引き続き検証手段25が、依頼者3の固有検証ルールが登録されているかを固有検証ルールDB20から検索する(S6)。固有検証ルールが登録されている場合(S6のYes)、その固有検証ルールを読み出して変換済データファイルを検証する(S7)。この段階では、依頼者から予め指示されている振込形式や各データ項目への入力ポリシーなどをチェックする。固有検証ルールが完備している場合には(S8のYes)、電子ファイル生成手段29に対して電子ファイルの生成が指示される(S9)。
【0060】
一方、ステップS5およびS8において、何れかの検証ルールに対してデータの不備が検出された場合には(S5のNo、S8のNo)、報告出力手段26が固有検証ルールDB20から依頼者3の検証結果の通知形式などを特定し(S10)、その指示に従ったエラー報告を実行する(S11)。
【0061】
ステップS9で電子ファイルが生成されると、ついで、待機時間検索手段27が中継処理実行時期DB21から依頼者3の中継処理実行時期を検索する(S12)。中継処理実行時期が「即時」、すなわち待機時間が0であれば(S13のYes)、電子ファイル送信手段30が生成された電子ファイルを基幹システム5に直ちに送信する(S17)。
【0062】
一方、中継処理実行時期が即時以外で設定されている場合には(S13のNo)、待機時間検索手段27は、登録されている中継処理実行時期をメモリ等の監視対象フィールドにセットし(S14)、中継処理実行時期監視手段28が監視を開始する(S15)。この時、電子ファイル生成手段29が生成した電子ファイルは、一旦、図示しない未処理キューに保存される。中継処理実行時期監視手段28が、中継処理実行時期の到来(待機時間の終了)を検知すると(S16のYes)、CPU11から電子ファイル送信手段30に対して電子ファイルの送信が指示される。電子ファイル送信手段30は、未処理キューから電子ファイルを取り出して基幹システム5に送信する(S17)。このように、中継処理実行時期が到来するまでは、電文生成用の電子ファイルを基幹システム5とは別の振込中継システム1に保持している。そのため、その間に依頼者3から変更や取消が指示された場合でもデータ消去等によって容易に対処できる。また、中継処理実行時期を依頼者の属性や契約等によって複数段階で設定しているため、取引の安全性・確実性は維持しながら依頼者の要請を満たすことができる。
【0063】
電子ファイルを受信した基幹システム5が電文を作成し、基幹システム5から全銀Netの受信通知を受領すると、報告出力手段26が起動し、固有検証ルールDB20に格納されている依頼者3の報告形式を検索する(S18)。完了報告要の場合には(S19のYes)、報告出力手段26は登録されている報告形式で処理結果報告ファイルを作成し、Gatewayサーバー6に送信する(S20)。Gatewayサーバー6は、SAG9を利用して報告ファイルをSWIFT Netサーバー7の外国顧客専用キュー8bに格納する。
【0064】
依頼者3から、完了報告不要と指示されている場合には(S19のNo)、金融機関2の全顧客共通のフォーマットで、金融機関2のデフォルト周期で、定型的な報告を作成して依頼者3に送信する。
【0065】
以上により、振込中継処理が完了する。
【0066】
(第2の実施形態)
次に、図5を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。図5は、第2の実施形態を示すネットワーク構成図である。第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して重複説明は省略する。
【0067】
この実施形態では、振込中継システム40は、金融機関2と専用回線(VPN:Virtual Private Network)によって接続される特定の企業などの顧客41から、この顧客41の独自フォーマットで作成された振込依頼データを受信する点に特徴を有する。振込中継システム40の基本的な機能は、第1の実施形態と同様である。
【0068】
この実施形態でも、顧客41の独自フォーマットに基づくファイル変換ルールを、顧客41の識別情報に関連付けて変換ルールDB18に登録しておき、顧客41から専用回線を介して受領した振込依頼データを当該変換ルールに従って変換する。その後の、変換済データファイルの検証(共通検証ルールおよび)、エラー報告、中継処理実行時期(待機時間)の設定および特定、電文用電子ファイルの作成および送信、の各機能は上記した第1の実施形態と同様である。
【0069】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲内で種々の変形・変更が可能である。
【0070】
例えば、上記した各実施形態では、SWIFT Netや専用回線(VPN)を介して依頼者からの振込依頼データを受信しているが、それ以外のネットワークを介して、または複数のネットワークを介して受信する場合にも本発明を好適に実施できる。
【0071】
また、基幹システムから全銀ネットワークに直接電文を送信する場合に限らず、銀行ANSWER(Automatic answer Network System for Electrical Request)を介して全銀ネットワークに電文を送信するようにしてもよい。ここで、銀行ANSWERとは、NTTデータ株式会社が提供している金融取引に特化したコンピュータ通信サービスである。顧客(依頼者)は、銀行ANSWERを利用することで、金融機関の基幹システムに接続されたANSWERセンターに振込や残高照会などの金融取引の手続きを自社の専用端末から直接依頼できる。
【0072】
また、本発明は振込以外の資金移動の処理にも適用可能であるが、処理の種類に応じて共通検証ルールや固有検証ルール、報告形態などの具体例が異なってくることは当業者であれば容易に理解できる。
【0073】
さらに、振込先が自行内の他の口座である場合には、仕向け金融機関2と被仕向け金融機関5とが同一となり、他行宛の振込よりも柔軟に対応できることは従来と同様である。
【0074】
また、中継処理実行時期(待機時間)が設定されている顧客であっても、振込指定日までの日数が待機時間より短い場合には、待機時間の経過を待たずに振込を実行するのが好ましい。そのためには、振込依頼を受け付けたときに、振込依頼データ受信手段または待機時間検索手段が、その顧客(依頼者)の中継処理実行時期(2営業日前等)の満了日と振込みの指定日との早い方の日付を、中継処理実行時期(yyyy年mm月dd日)として中継処理実行時期DBに格納するのが好ましい。
【符号の説明】
【0075】
1 振込中継システム(取引中継システム)
2 金融機関(仕向け)
3 依頼者(外国顧客)
4 被仕向け金融機関
5 基幹システム
6 Gatewayサーバー
7 SWIFT Netサーバー
8a、8b 専用キュー
11 CPU
12 システムバス
13 RAM
14 入力装置
15 出力装置
16 通信制御装置
17 記憶装置
18 変換ルールDB
19 共通検証ルールDB
20 固有検証ルールDB
21 中継処理実行時期DB
23 振込依頼データ受信手段(ファイル受信手段)
24 ファイル変換手段
25 検証手段
26 報告出力手段
27 待機時間検索手段
28 中継処理実行時期監視手段
29 電子ファイル生成手段
30 電子ファイル送信手段
31 顧客区分更新手段
40 振込中継システム
41 企業(顧客)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金融機関に設置され、基幹システムに接続される取引中継システムによって、依頼者から依頼された資金移動の処理を中継する方法であって、
前記取引中継システムは、全銀フォーマットと異なるフォーマットで作成された資金移動の依頼データを所定のファイル形式のデータファイルに変換するための変換ルールを依頼者の識別情報に関連付けて格納する変換ルールデータベースと、変換されたデータファイルに全銀プロトコルに準拠した電文フォーマット(全銀フォーマット)の生成に必要なデータが全て含まれているかを検証するための共通検証ルールを格納する共通検証ルールデータベースとを備え、
前記方法は、
前記取引中継システムのファイル受信手段が、前記依頼者から、依頼者の識別情報を含む資金移動の依頼データを受信するステップと、
前記取引中継システムのファイル変換手段が、前記受信した依頼データに含まれる依頼者識別情報に基づいて、前記変換ルールデータベースから当該依頼者に関する変換ルールを読み込んで依頼データを所定のファイル形式のデータファイルに変換するステップと、
前記取引中継システムの検証手段が、前記共通検証ルールデータベースから共通検証ルールを読み込んで前記変換されたデータファイルを検証するステップと、
前記取引中継システムの電子ファイル生成手段が、前記変換されたデータファイルに全銀フォーマットに必要なデータが全て含まれていると判定された場合に、当該データファイルから全銀フォーマットに必要なデータを抽出して、全銀フォーマットの取引電文を生成するための電子ファイルを生成するステップと、
前記取引中継システムの電子ファイル送信手段が、全銀フォーマットの取引電文を生成する取引処理システムに対して、前記生成された電子ファイルを送信するステップと
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記依頼者は、自身の日本円の口座から他の口座への資金移動を依頼する顧客、またはこの顧客から資金移動の依頼を受け付けた外国の金融機関であって、SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)回線を利用可能な依頼者(以下、「外国顧客」と総称する)であり、
前記受信ステップは、前記外国顧客からSWIFT回線を介して資金移動の依頼データを受信する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記依頼者は、金融機関との間で個別に専用回線を敷設した特定の顧客であり、
前記受信ステップは、前記顧客との間の専用回線を介して資金移動の依頼データを受信する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記取引中継システムは、資金移動の依頼データのフォーマットに関する、前記共通検証ルールとは異なる依頼者固有の検証ルールを当該依頼者の識別情報に関連付けて格納する固有検証ルールデータベースをさらに備え、
前記検証ステップは、前記共通検証ルールおよび前記固有検証ルールに従って前記変換されたデータファイルを検証する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記固有検証ルールデータベースは、検証結果の通知要否および通知時期を含む依頼者の指示情報を依頼者の識別情報に関連付けてさらに格納し、
この方法は、前記取引中継システムの検証結果通知手段が、前記固有検証ルールデータベースに格納された依頼者の指示情報に従って、前記共通検証ルールおよび/または固有検証ルールの検証結果を依頼者に通知するステップをさらに備えた
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記取引中継システムは、さらに、資金移動の依頼データを受信した場合に電子ファイルの生成および/または送信(以下、「中継処理」)を即時に実行するか、所定の待機時間経過後に実行するかに関する中継処理実行時期を前記依頼者の識別情報に関連付けて格納する中継処理実行時期データベースを備え、
前記電子ファイル生成ステップおよび/または電子ファイル送信ステップは、前記中継処理実行時期が到来した場合に前記中継処理を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記中継処理実行時期データベースは、前記金融機関が所定の条件に従って依頼者を分類した複数の依頼者区分に基づいて設定された中継処理実行時期を格納し、
この方法は、
前記取引中継システムの待機時間検索手段が、前記受信した資金移動の依頼データに含まれる依頼者識別情報に基づいて、前記中継処理実行時期データベースから当該依頼者の中継処理実行時期を特定するステップと、
前記取引中継システムの中継処理実行時期監視手段が、前記特定された中継処理実行時期が到来したかを監視するステップと
をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記取引中継システムの依頼者区分更新手段が、所定周期若しくは特定のイベントの発生時に、所定の条件に従って少なくとも一部の依頼者について前記中継処理実行時期データベースの依頼者区分を更新するステップをさらに備えた
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記依頼者を分類するための所定の条件は、過去の一定期間内における金融機関との取引の量、過去の一定期間内における資金移動の依頼に関する処理不能の件数または処理不能率、過去の一定期間内における資金移動の依頼受け付け後の依頼データの変更件数または変更率、および過去の一定期間内における資金移動の依頼受け付け後の依頼取消の件数または取消率、の少なくとも何れかの統計データに基づく基準を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記更新ステップは、金融機関との契約によって中継処理実行時期が設定されている依頼者について、前記統計データに基づく基準での更新対象から除外することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
金融機関の基幹システムに接続され、依頼者から依頼された資金移動の処理を中継する取引中継システムであって、
全銀フォーマットと異なるフォーマットで作成された資金移動の依頼データを所定のファイル形式のデータファイルに変換するための変換ルールを依頼者の識別情報に関連付けて格納する変換ルールデータベースと、
変換されたデータファイルに全銀プロトコルに準拠した電文フォーマット(全銀フォーマット)の生成に必要なデータが全て含まれているかを検証するための共通検証ルールを格納する共通検証ルールデータベースと、
前記依頼者から、依頼者の識別情報を含む資金移動の依頼データを受信するファイル受信手段と、
前記受信した依頼データに含まれる依頼者識別情報に基づいて、前記変換ルールデータベースから当該依頼者に関する変換ルールを読み込んで依頼データを所定のファイル形式のデータファイルに変換するファイル変換手段と、
前記共通検証ルールデータベースから共通検証ルールを読み込んで前記変換されたデータファイルを検証する検証手段と、
前記変換されたデータファイルに全銀フォーマットに必要なデータが全て含まれていると判定された場合に、当該データファイルから全銀フォーマットに必要なデータを抽出して、全銀フォーマットの取引電文を生成するための電子ファイルを生成する電子ファイル生成手段と、
取引電文を生成する取引処理システムに対して、前記生成された電子ファイルを送信する電子ファイル送信手段と
を備えたことを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−159053(P2011−159053A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19395(P2010−19395)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
【出願人】(397077955)株式会社三井住友銀行 (120)
【Fターム(参考)】