説明

受信方法およびそれを利用した無線装置

【課題】データ送信における制御の精度を向上させる。
【解決手段】 処理部22は、複数のアンテナ12のうちの少なくともひとつから、各アンテナ12に対応したデータを送信する。制御部30は、第2無線装置でのレート情報を第2無線装置に提供させるための要求信号を生成する。処理部22は、要求信号を送信する際に、データを送信するためのアンテナ12以外のアンテナ12も含んだ複数のアンテナ12から、複数のアンテナ12のそれぞれに対応した既知信号も送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信技術および受信技術に関し、特に複数のアンテナから信号を送信し、また複数のアンテナによって信号を受信する送信方法および受信方法ならびにそれらを利用した無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速なデータ伝送を可能にしつつ、マルチパス環境下に強い通信方式として、マルチキャリア方式のひとつであるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式がある。このOFDM変調方式は、無線LAN(Local Area Network)の標準化規格であるIEEE802.11a,gやHIPERLAN/2に適用されている。このような無線LANにおけるバースト信号は、一般的に時間と共に変動する伝送路環境を介して伝送され、かつ周波数選択性フェージングの影響を受けるので、受信装置は一般的に伝送路推定を動的に実行する。
【0003】
受信装置が伝送路推定を実行するために、バースト信号内に、2種類の既知信号が設けられている。ひとつは、バースト信号の先頭部分において、すべてのキャリアに対して設けられた既知信号であり、いわゆるプリアンブルやトレーニング信号といわれるものである。もうひとつは、バースト信号のデータ区間中に一部のキャリアに対して設けられた既知信号であり、いわゆるパイロット信号といわれるものである(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】Sinem Coleri,Mustafa Ergen,Anuj Puri, and Ahmad Bahai,"Channel Estimation Techniques Based on Pilot Arrangement in OFDM Systems",IEEE Transactions on broadcasting,vol.48,No.3,pp.223−229,Sept.2002.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤレス通信において、周波数資源を有効利用するための技術のひとつが、アダプティブアレイアンテナ技術である。アダプティブアレイアンテナ技術は、複数のアンテナのそれぞれにおいて、処理対象の信号の振幅と位相を制御することによって、アンテナの指向性パターンを制御する。このようなアダプティブアレイアンテナ技術を利用して、データレートを高速化するための技術にMIMO(Multiple Input Multiple Output)システムがある。当該MIMOシステムは、送信装置と受信装置がそれぞれ複数のアンテナを備え、それぞれのアンテナに対応したチャネルを設定する。すなわち、送信装置と受信装置との間の通信に対して、最大アンテナ数までのチャネルを設定することによって、データレートを向上させる。さらに、このようなMIMOシステムに、OFDM変調方式を組合せれば、データレートはさらに高速化される。
【0005】
MIMOシステムにおいて、データの通信に使用すべきアンテナの数を増減することによって、データレートの調節も可能になる。さらに、適応変調の適用によって、データレートの調節がより詳細になされる。このようなデータレートの調節を確実に実行するために、送信装置は、受信装置から、受信装置との間の無線伝送路に適したデータレートに関する情報(以下、「レート情報」という)を取得している方が望ましい。一方、MIMOシステムにおいてレート情報が定期的に伝送されない場合、送信装置は、受信装置に対して、レート情報の送信を要求するための信号(以下、「レート要求信号」という)を送信する。
【0006】
また、MIMOシステムでの送信装置と受信装置におけるアンテナの指向性パターンの組合せは、例えば、以下の通りである。ひとつは、送信装置のアンテナがオムニパターンを有し、受信装置のアンテナがアダプティブアレイ信号処理でのパターンを有する場合である。別のものは、送信装置のアンテナと受信装置のアンテナの両者が、アダプティブアレイ信号処理でのパターンを有する場合である。前者の方がシステムを簡略化できるが、後者の方が、アンテナの指向性パターンをより詳細に制御できるので、特性を向上できる。後者の場合、送信装置が送信のアダプティブアレイ信号処理を実行するために、受信装置から、伝送路推定用の既知信号を予め受信する必要がある。アダプティブアレイアンテナ制御の精度を向上させるために、送信装置は、送信装置に含まれた複数のアンテナと、受信装置に含まれた複数のアンテナ間のそれぞれの伝送路特性を取得する方が望ましい。そのため、受信装置は、すべてのアンテナから伝送路推定用の既知信号を送信する。以下、データの通信に使用すべきアンテナの本数に関係なく、複数のアンテナから送信される伝送路推定用の既知信号を「トレーニング信号」という。
【0007】
本発明者はこうした状況下、以下の課題を認識するに至った。受信装置によるレート情報の決定に誤差が含まれていれば、MIMOシステムによる通信に誤りが生じ、伝送品質の低下および実効的なデータレートの低下がもたらされる。そのため、受信装置によるレート情報の決定は、正確になされる必要がある。また、実効的なデータレートを高めるためには、送信装置と受信装置間において、データ以外の信号、例えば、レート要求信号やトレーニング信号の伝送が、少ない方が望ましい。さらに、送信装置と受信装置のいずれかが、バッテリー駆動である場合、消費電力も低い方が望ましい。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、データを伝送する際の制御の精度を向上させる送信方法およびそれを利用した無線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の無線装置は、複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナから、可変データレートに対応した通信対象の無線装置に、各アンテナに対応したデータを送信する送信部と、通信対象の無線装置との間の無線伝送路に適したデータレートについての情報を当該無線装置に提供させるための要求信号を生成し、生成した要求信号をデータとして送信部から送信させる制御部とを備える。送信部は、要求信号を送信する際に、データを送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナも含んだ複数のアンテナから、複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号も送信する。
【0010】
「データレート」を決定する要因には、一例として、変調方式、誤り訂正の符号化率、MIMOシステムにおいて使用されるアンテナの本数がある。ここでは、「データレート」がこれらの任意の組合せによって決定されてもよいし、これらのうちのひとつによって決定されてもよい。
【0011】
この態様によると、通信対象の無線装置に対して要求信号を送信する際に、複数のアンテナから既知信号を送信するので、通信対象の無線装置におけるデータレートの情報であって、かつ既知信号にもとづいて新たに生成されたデータレートの情報を取得でき、情報の精度を向上できる。
【0012】
送信部は、要求信号を送信する際に、少なくとも複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号に対して、ビームフォーミングを実行してもよい。この場合、ビームフォーミングを実行することによって、通信対象の無線装置における信号強度を増加でき、より高速な値を有したデータレートの情報を取得できる。
【0013】
複数のアンテナのうち、通信対象の無線装置からのデータを受信する際に使用すべき少なくともひとつのアンテナを選択する選択部をさらに備えてもよい。送信部は、選択部において選択されたアンテナから、既知信号を送信してもよい。この場合、制御信号を送信すべきアンテナの数を削減するので、消費電力を低減できる。
【0014】
複数のアンテナによって、通信対象の無線装置から、受信用の既知信号を受信する受信部をさらに備えてもよい。選択部は、受信部において受信した既知信号をもとに、複数のアンテナのそれぞれに対応した無線品質を導出し、無線品質のよいアンテナを優先的に選択してもよい。
【0015】
「無線品質」は、無線回線の品質であり、これは、任意のパラメータによって評価されればよく、例えば、信号強度、遅延スプレッド、干渉量を含む。また、これらの組合せによって評価されてもよい。この場合、無線品質のよいアンテナを優先的に選択するので、データの伝送品質の悪化を抑制できる。
【0016】
複数のアンテナによって、通信対象の無線装置から、受信用の既知信号を受信する受信部と、複数のアンテナのうち、既知信号を送信すべき少なくともひとつのアンテナを選択する選択部とをさらに備えてもよい。選択部は、受信部において受信した受信用の既知信号をもとに、複数のアンテナのそれぞれに対応した無線品質を導出し、無線品質のよいアンテナを優先的に選択してもよい。この場合、送信の際に使用すべきアンテナの本数と、受信の際に使用すべきアンテナの本数を独立に設定できる。
【0017】
本発明の別の態様もまた、無線装置である。この装置は、複数のアンテナのうち、通信対象の無線装置からのデータを受信する際に使用すべき少なくともひとつのアンテナを選択する選択部と、選択部において選択された少なくともひとつのアンテナに含まれたアンテナから、通信対象の無線装置に、各アンテナに対応したデータを送信し、かつ選択部において選択された少なくともひとつのアンテナから、各アンテナに対応した既知信号も送信する送信部と、を備える。
【0018】
この態様によると、データを受信すべきアンテナから既知信号を送信するので、通信対象の無線装置における指向性の悪化を抑制でき、かつデータを受信すべきアンテナを選択するので、消費電力を低減できる。
【0019】
本発明のさらに別の態様もまた、無線装置である。この装置は、複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナから送信された可変データレートのデータであって、かつ各アンテナに対応したデータを受信する無線装置であって、データを送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナも含んだ複数のアンテナから送信された既知信号であって、かつ複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号を受信する受信部と、受信部において受信した既知信号をもとに、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトルを計算する受信応答ベクトル計算部と、受信応答ベクトル計算部において計算された受信応答ベクトルから、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトル間の相関を計算する相関計算部と、相関計算部において計算された相関をもとに、データに対するデータレートを決定する決定部と、を備える。
【0020】
この態様によると、受信応答ベクトル間の相関を考慮するので、複数のアンテナのそれぞれから送信された信号間の影響を反映でき、決定したデータレートの正確性を向上できる。
【0021】
本発明のさらに別の態様もまた、無線装置である。この装置は、複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナから送信された可変データレートのデータであって、かつ各アンテナに対応したデータを受信する無線装置であって、データを送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナも含んだ複数のアンテナから送信された既知信号であって、かつ複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号を受信する受信部と、受信部において受信した既知信号をもとに、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトルを計算する受信応答ベクトル計算部と、受信応答ベクトル計算部において計算された受信応答ベクトルから、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトル間の電力比を計算する電力比計算部と、電力比計算部において計算された電力比とをもとに、データに対するデータレートを決定する決定部と、を備える。
【0022】
この態様によると、受信応答ベクトル間の強度比を考慮するので、複数のアンテナのそれぞれから送信された信号間の影響を反映でき、決定したデータレートの正確性を向上できる。
【0023】
受信部において受信される既知信号は、複数のキャリアを使用しており、決定部は、複数のキャリアのいずれかの状態をもとに、データに対するデータレートを決定してもよい。「複数のキャリアのいずれか」は、すべてのキャリアにおける相関や強度比が最もよいもの、最も悪いもの、予め定めた規則に対応したものであればよい。また、すべてのキャリアにおける相関や強度比の平均を計算することによって、擬似的なひとつのキャリアに対応させてもよい。また、一部のキャリアにおける相関や強度比の平均を計算することによって、擬似的なひとつのキャリアに対応させてもよい。この場合、複数のキャリアを使用するシステムに適用できる。「状態」とは、相関や電力比を含み、信号の品質を示す情報であればよい。
【0024】
受信部は、既知信号を受信する際に、データレートについての情報の要求も受信し、受信部において受信した要求に対する応答として、決定部において決定したデータレートを通知する通知部をさらに備えてもよい。この場合、既知信号を受信する際に、要求信号も受信するので、決定したデータレートの情報を通知でき、精度の高いデータレートの情報を供給できる。
【0025】
本発明のさらに別の態様もまた、無線装置である。この装置は、複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナのそれぞれに対応した第1既知信号と、第1既知信号を送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナも含んだ複数のアンテナのそれぞれに対応した第2既知信号と、第1既知信号を送信するための少なくともひとつのアンテナのそれぞれに対応したデータが含まれたバースト信号を生成する生成部と、複数のアンテナを介して、生成部において生成されたバースト信号を送信する送信部と、を備える。
【0026】
「第1既知信号」の一例は、通信対象の無線装置おいてAGCを設定させるための信号であり、「第2既知信号」の一例は、通信対象の無線装置において伝送路の特性を推定させるための信号である。この態様によると、第1既知信号とデータを送信するためのアンテナを同一にするので、受信側において第1既知信号による推定結果をデータの受信に使用でき、データの受信の特性を向上できる。
【0027】
生成部は、第2既知信号のうち、第1既知信号を送信するための少なくともひとつのアンテナに対応した部分と、第1既知信号を送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナに対応した部分とを異なったタイミングに配置させてもよい。この場合、第2既知信号のうち、第1既知信号を送信するための少なくともひとつのアンテナに対応した部分に対して、第1既知信号を送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナに対応した部分の影響を小さくできるので、受信側において、第1既知信号を送信するための少なくともひとつのアンテナに対応した部分での第2既知信号にもとづく推定の精度を向上できる。
【0028】
生成部は、第2既知信号を送信すべきアンテナの数まで、第1既知信号を送信すべきアンテナの数を増加させ、増加される前のアンテナのそれぞれに対応したデータを分割し、分割したデータを増加したアンテナに対応させてもよい。この場合、第1既知信号とデータを送信するためのアンテナを同一にするので、受信側において第1既知信号による推定結果をデータの受信に使用でき、データの受信の特性を向上できる。
【0029】
生成部は、複数のサブキャリアを使用しつつ、バースト信号に含まれたデータを生成し、データの分割をサブキャリアを単位にして実行してもよい。この場合、分割されたデータ間の干渉を小さくできる。
【0030】
本発明のさらに別の態様もまた、無線装置である。この装置は、複数のアンテナのそれぞれからバースト信号を送信する送信部と、送信部から送信すべきバースト信号であって、かつ複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号と、既知信号の後段に配置されるデータとを含んだバースト信号を生成する生成部と、生成部において生成されるバースト信号に含まれるデータのデータレートを決定する決定部とを備える。生成部では、データが複数のアンテナのうちの少なくともひとつに対応している場合、対応すべきアンテナの数を増加させることによって、当該データを複数のアンテナに対応させ、決定部では、生成部がデータを複数のアンテナに対応させる場合、データを複数のアンテナに対応させる前でのデータレートよりも、低いデータレートに決定する。
【0031】
この態様によると、複数のアンテナのそれぞれにデータを対応させる場合において、対応させられたアンテナからの無線伝送路の特性が、データの伝送に適していない場合であっても、データレートを低くすることによって、データの誤りの発生を低減できる。
【0032】
生成部は、既知信号とデータに対して複数のサブキャリアを使用しつつ、複数のアンテナのそれぞれを単位にして、既知信号のそれぞれに使用すべきサブキャリアの組合せを変えており、かつデータを複数のアンテナに対応させる際に、データと同一のアンテナから送信される既知信号でのサブキャリアの組合せを当該データに使用してもよい。この場合、データを複数のアンテナに対応させる場合において、ひとつのアンテナに対応した既知信号とデータに同一のサブキャリアを使用することによって、それぞれのデータに対して使用すべきサブキャリアの選択を容易にできる。
【0033】
本発明のさらに別の態様もまた、無線装置である。この装置は、複数のアンテナのそれぞれからバースト信号を送信する送信部と、送信部から送信すべきバースト信号であって、かつ複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号と、既知信号の後段に配置されるデータとを含んだバースト信号を生成する生成部とを備える。生成部は、データが複数のアンテナのうちの少なくともひとつに対応している場合、対応すべきアンテナの数を増加させることによって、当該データを複数のアンテナに対応させる手段と、既知信号とデータに対して複数のサブキャリアを使用しつつ、複数のアンテナのそれぞれを単位にして、既知信号のそれぞれに使用すべきサブキャリアの組合せを変えており、かつデータを複数のアンテナに対応させる際に、データと同一のアンテナから送信される既知信号でのサブキャリアの組合せを当該データに使用する手段とを含む。
【0034】
この態様によると、データを複数のアンテナに対応させる場合において、ひとつのアンテナに対応した既知信号とデータに同一のサブキャリアを使用することによって、それぞれのデータに対して使用すべきサブキャリアの選択を容易にできる。
【0035】
本発明のさらに別の態様は、送信方法である。この方法は、複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナから、可変データレートに対応した通信対象の無線装置に、各アンテナに対応したデータを送信する送信方法であって、通信対象の無線装置との間の無線伝送路に適したデータレートについての情報を当該無線装置に提供させるための要求信号を生成し、生成した要求信号をデータとして送信する際に、データを送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナも含んだ複数のアンテナから、複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号も送信する。
【0036】
本発明のさらに別の態様もまた、送信方法である。この方法は、複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナから、通信対象の無線装置に、各アンテナに対応したデータを送信する送信方法であって、複数のアンテナのうち、通信対象の無線装置からのデータを受信する際に使用すべき少なくともひとつのアンテナを選択し、かつ選択された少なくともひとつのアンテナから、各アンテナに対応した既知信号も送信する。
【0037】
本発明のさらに別の態様もまた、送信方法である。この方法は、複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナから、可変データレートに対応した通信対象の無線装置に、各アンテナに対応したデータを送信するステップと、通信対象の無線装置との間の無線伝送路に適したデータレートについての情報を当該無線装置に提供させるための要求信号を生成するステップを備える。送信するステップは、生成した要求信号をデータとして送信する際に、データを送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナも含んだ複数のアンテナから、複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号も送信する。
【0038】
送信するステップは、要求信号を送信する際に、少なくとも複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号に対して、ビームフォーミングを実行してもよい。複数のアンテナのうち、通信対象の無線装置からのデータを受信する際に使用すべき少なくともひとつのアンテナを選択するステップをさらに備え、送信するステップは、選択されたアンテナから、既知信号を送信してもよい。複数のアンテナによって、通信対象の無線装置から、受信用の既知信号を受信するステップをさらに備え、選択するステップは、受信した既知信号をもとに、複数のアンテナのそれぞれに対応した無線品質を導出し、無線品質のよいアンテナを優先的に選択してもよい。
【0039】
複数のアンテナによって、通信対象の無線装置から、受信用の既知信号を受信するステップと、複数のアンテナのうち、既知信号を送信すべき少なくともひとつのアンテナを選択するステップとをさらに備えてもよい。選択するステップは、受信した受信用の既知信号をもとに、複数のアンテナのそれぞれに対応した無線品質を導出し、無線品質のよいアンテナを優先的に選択してもよい。
【0040】
本発明のさらに別の態様もまた、送信方法である。この方法は、複数のアンテナのうち、通信対象の無線装置からのデータを受信する際に使用すべき少なくともひとつのアンテナを選択するステップと、選択された少なくともひとつのアンテナに含まれたアンテナから、通信対象の無線装置に、各アンテナに対応したデータを送信し、かつ選択された少なくともひとつのアンテナから、各アンテナに対応した既知信号も送信するステップと、を備える。
【0041】
送信するステップにおいて送信すべきバースト信号であって、かつ既知信号とデータとを含んだバースト信号を生成するステップと、生成するステップにおいて生成されるバースト信号に含まれるデータのデータレートを決定するステップとをさらに備え、生成するステップでは、既知信号を送信すべきアンテナのうちの少なくともひとつにデータが対応している場合、対応すべきアンテナの数を増加させることによって、既知信号を送信すべきアンテナに、当該データを対応させ、決定するステップでは、生成するステップにおいて、既知信号を送信すべきアンテナに、データを対応させる場合、既知信号を送信すべきアンテナに、データを対応させる前でのデータレートよりも、低いデータレートに決定してもよい。生成するステップは、既知信号とデータに対して複数のサブキャリアを使用しつつ、複数のアンテナのそれぞれを単位にして、既知信号のそれぞれに使用すべきサブキャリアの組合せを変えており、かつ既知信号を送信すべきアンテナに、データを対応させる際に、データと同一のアンテナから送信される既知信号でのサブキャリアの組合せを当該データに使用してもよい。
【0042】
送信するステップにおいて送信すべきバースト信号であって、かつ既知信号とデータとを含んだバースト信号を生成するステップをさらに備え、生成するステップは、既知信号を送信すべきアンテナのうちの少なくともひとつにデータが対応している場合、対応すべきアンテナの数を増加させることによって、既知信号を送信すべきアンテナに、当該データを対応させるステップと、既知信号とデータに対して複数のサブキャリアを使用しつつ、複数のアンテナのそれぞれを単位にして、既知信号のそれぞれに使用すべきサブキャリアの組合せを変えており、かつ既知信号を送信すべきアンテナに、データを対応させる際に、データと同一のアンテナから送信される既知信号でのサブキャリアの組合せを当該データに使用するステップとを含んでもよい。
【0043】
本発明のさらに別の態様は、受信方法である。この方法は、複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナから送信された可変データレートのデータであって、かつ各アンテナに対応したデータを受信する受信方法であって、データを送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナも含んだ複数のアンテナから送信された既知信号であって、かつ複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号をもとに、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトルを計算し、計算した受信応答ベクトルから、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトル間の相関を計算し、相関をもとに、データに対するデータレートを決定する。
【0044】
本発明のさらに別の態様もまた、受信方法である。この方法は、複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナから送信された可変データレートのデータであって、かつ各アンテナに対応したデータを受信する受信方法であって、データを送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナも含んだ複数のアンテナから送信された既知信号であって、かつ複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号をもとに、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトルを計算し、計算した受信応答ベクトルから、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトル間の電力比を計算し、電力比をもとに、データに対するデータレートを決定する。
【0045】
本発明のさらに別の態様もまた、受信方法である。この方法は、複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナから送信された可変データレートのデータであって、かつ各アンテナに対応したデータを受信する受信方法であって、データを送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナも含んだ複数のアンテナから送信された既知信号であって、かつ複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号を受信するステップと、受信した既知信号をもとに、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトルを計算するステップと、計算された受信応答ベクトルから、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトル間の相関を計算するステップと、計算された相関をもとに、データに対するデータレートを決定するステップと、を備える。
【0046】
本発明のさらに別の態様もまた、受信方法である。この方法は、複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナから送信された可変データレートのデータであって、かつ各アンテナに対応したデータを受信する受信方法であって、データを送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナも含んだ複数のアンテナから送信された既知信号であって、かつ複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号を受信するステップと、受信した既知信号をもとに、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトルを計算するステップと、計算された受信応答ベクトルから、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトル間の電力比を計算するステップと、計算された電力比とをもとに、データに対するデータレートを決定するステップと、を備える。
【0047】
受信するステップにおいて受信される既知信号は、複数のキャリアを使用しており、決定するステップは、複数のキャリアのいずれか状態をもとに、データに対するデータレートを決定してもよい。受信するステップは、既知信号を受信する際に、データレートについての情報の要求も受信し、受信した要求に対する応答として、決定するステップにおいて決定したデータレートを通知するステップをさらに備えてもよい。
【0048】
本発明のさらに別の態様もまた、送信方法である。この方法は、複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナのそれぞれに対応した第1既知信号と、第1既知信号を送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナも含んだ複数のアンテナのそれぞれに対応した第2既知信号と、第1既知信号を送信するための少なくともひとつのアンテナのそれぞれに対応したデータが含まれたバースト信号を送信する
【0049】
本発明のさらに別の態様もまた、送信方法である。この方法は、複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナのそれぞれに対応した第1既知信号と、第1既知信号を送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナも含んだ複数のアンテナのそれぞれに対応した第2既知信号と、第1既知信号を送信するための少なくともひとつのアンテナのそれぞれに対応したデータが含まれたバースト信号を生成するステップと、複数のアンテナを介して、生成するステップにおいて生成されたバースト信号を送信するステップと、を備える。
【0050】
生成するステップは、第2既知信号のうち、第1既知信号を送信するための少なくともひとつのアンテナに対応した部分と、第1既知信号を送信するための少なくともひとつのアンテナ以外のアンテナに対応した部分とを異なったタイミングに配置させてもよい。生成するステップは、第2既知信号を送信すべきアンテナの数まで、第1既知信号を送信すべきアンテナの数を増加させ、増加される前のアンテナのそれぞれに対応したデータを分割し、分割したデータを増加したアンテナに対応させてもよい。生成するステップは、複数のサブキャリアを使用しつつ、バースト信号に含まれたデータを生成し、データの分割をサブキャリアを単位にして実行してもよい。
【0051】
生成するステップは、第2既知信号を送信すべきアンテナの数まで、第1既知信号を送信すべきアンテナの数を増加させながら、増加される前のアンテナのそれぞれに対応したデータを増幅されたアンテナの数に分割し、第2既知信号を送信すべきアンテナのそれぞれに、分割したデータを対応させてもよい。生成するステップは、少なくとも第2既知信号とデータに対して複数のサブキャリアを使用しつつ、第2既知信号を送信すべきアンテナを単位にして、第2既知信号のそれぞれに使用すべきサブキャリアの組合せを変えており、かつ第2既知信号を送信すべきアンテナのそれぞれに、分割したデータを対応させる際に、データと同一のアンテナから送信される第2既知信号でのサブキャリアの組合せを当該データに使用してもよい。
【0052】
生成するステップにおいて生成されるバースト信号に含まれるデータのデータレートを決定するステップをさらに備え、決定するステップでは、生成するステップにおいて、第2既知信号を送信すべきアンテナの数まで、第1既知信号を送信すべきアンテナの数を増加させない場合でのデータレートよりも、生成するステップにおいて、第2既知信号を送信すべきアンテナの数まで、第1既知信号を送信すべきアンテナの数を増加させる場合でのデータレートを低くしてもよい。
【0053】
本発明のさらに別の態様もまた、送信方法である。この方法は、複数のアンテナのそれぞれからバースト信号を送信するステップと、送信するステップにおいて送信すべきバースト信号であって、かつ複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号と、既知信号の後段に配置されるデータとを含んだバースト信号を生成するステップと、生成するステップにおいて生成されるバースト信号に含まれるデータのデータレートを決定するステップとを備える。生成するステップでは、データが複数のアンテナのうちの少なくともひとつに対応している場合、対応すべきアンテナの数を増加させることによって、当該データを複数のアンテナに対応させ、決定するステップでは、生成するステップにおいてデータを複数のアンテナに対応させる場合、データを複数のアンテナに対応させる前でのデータレートよりも、低いデータレートに決定する。
【0054】
生成するステップは、既知信号とデータに対して複数のサブキャリアを使用しつつ、複数のアンテナのそれぞれを単位にして、既知信号のそれぞれに使用すべきサブキャリアの組合せを変えており、かつデータを複数のアンテナに対応させる際に、データと同一のアンテナから送信される既知信号でのサブキャリアの組合せを当該データに使用してもよい。
【0055】
本発明のさらに別の態様もまた、送信方法である。この方法は、複数のアンテナのそれぞれからバースト信号を送信するステップと、送信するステップにおいて送信すべきバースト信号であって、かつ複数のアンテナのそれぞれに対応した既知信号と、既知信号の後段に配置されるデータとを含んだバースト信号を生成するステップとを備える。生成するステップは、データが複数のアンテナのうちの少なくともひとつに対応している場合、対応すべきアンテナの数を増加させることによって、当該データを複数のアンテナに対応させるステップと、既知信号とデータに対して複数のサブキャリアを使用しつつ、複数のアンテナのそれぞれを単位にして、既知信号のそれぞれに使用すべきサブキャリアの組合せを変えており、かつデータを複数のアンテナに対応させる際に、データと同一のアンテナから送信される既知信号でのサブキャリアの組合せを当該データに使用するステップとを含む。
【0056】
本発明のさらに別の態様もまた、無線装置である。この装置は、複数の系列にそれぞれ配置される第1既知信号と第2既知信号と、複数の系列のうちの少なくともひとつに配置されるデータとを含んだ複数の系列のバースト信号を生成する生成部と、生成部において生成された複数の系列のバースト信号のうち、第2既知信号とデータに対して直交行列をそれぞれ乗算することによって、直交行列が乗算された第2既知信号と、複数の系列の数まで増加させたデータとを生成する手段と、複数の系列のそれぞれに対応したタイムシフト量によって、直交行列が乗算された第2既知信号内での循環的なタイムシフトを系列単位に実行しつつ、複数の系列の数まで増加させたデータ内での循環的なタイムシフトを系列単位に実行して、複数の系列のバースト信号を変形する手段とを含む変形部と、変形部において変形された複数の系列のバースト信号を出力する出力部とを備える。生成部において生成された複数の系列のバースト信号に含まれる第1既知信号は、所定の周期を有しており、変形部での複数の系列のそれぞれに対応したタイムシフト量のうちの少なくともひとつが、第1既知信号が有した所定の周期以上である。
【0057】
この態様によると、データの系列の数が第2既知信号の系列の数よりも少なくても、直交行列による乗算と循環的なタイムシフト処理を実行するので、データの系列の数を第2既知信号の系列の数に一致できる。また、第2既知信号にも、データ系列と同様の処理を実行するので、通信対象となる無線装置に対して、データ受信の際に、第2既知信号を使用させられる。また、第1既知信号には、データ系列と同様の処理を実行しないので、タイムシフト量を大きくでき、通信対象となる無線装置における受信特性を改善できる。
【0058】
本発明のさらに別の態様もまた、送信方法である。この方法は、複数の系列にそれぞれ配置される第1既知信号と第2既知信号と、複数の系列のうちの少なくともひとつに配置されるデータとを含んだ複数の系列のバースト信号のうち、第2既知信号とデータに対して直交行列をそれぞれ乗算することによって、直交行列が乗算された第2既知信号と、複数の系列の数まで増加させたデータとを生成するステップと、複数の系列のそれぞれに対応したタイムシフト量によって、直交行列が乗算された第2既知信号内での循環的なタイムシフトを系列単位に実行しつつ、複数の系列の数まで増加させたデータ内での循環的なタイムシフトを系列単位に実行するステップと、循環的なタイムシフトが実行された第2既知信号とデータとを含むように変形された複数の系列のバースト信号を出力するステップとを備える。生成するステップにおける含まれる第1既知信号は、所定の周期を有しており、実行するステップでの複数の系列のそれぞれに対応したタイムシフト量のうちの少なくともひとつが、第1既知信号が有した所定の周期以上である。
【0059】
生成するステップは、複数の系列のバースト信号のそれぞれに対して複数のサブキャリアを使用しており、複数の系列にそれぞれ配置される第2既知信号は、各系列に対して、異なったサブキャリアを使用してもよい。出力するステップは、変形された複数の系列のバースト信号を複数のアンテナに対応させながら出力してもよい。
【0060】
本発明のさらに別の態様もまた、無線装置である。この装置は、可変データレートに対応した通信対象の無線装置に、少なくともひとつの系列に配置されたデータを出力する出力部と、通信対象の無線装置との間の無線伝送路に適したデータレートについての情報を当該無線装置に提供させるための要求信号を生成し、生成した要求信号をデータとして出力部から出力させる制御部とを備える。出力部は、要求信号を出力する際に、データを出力するための少なくともひとつの系列以外の系列も含んだ複数の系列から、複数の系列のそれぞれに配置された既知信号も出力する。
【0061】
この態様によると、通信対象の無線装置に対して要求信号を出力する際に、複数の系列に配置された既知信号を出力するので、通信対象の無線装置におけるデータレートの情報であって、かつ既知信号にもとづいて新たに生成されたデータレートの情報を取得でき、情報の精度を向上できる。
【0062】
本発明のさらに別の態様もまた、無線装置である。この装置は、複数の系列のうちの少なくともひとつに配置される第1既知信号と、複数の系列のそれぞれに配置される第2既知信号と、第1既知信号と同一の系列に配置されるデータが含まれたバースト信号を生成する生成部と、生成部において生成されたバースト信号を出力する出力部と、を備える。
【0063】
この態様によると、第1既知信号とデータを配置すべき系列を同一にするので、受信側において第1既知信号による推定結果をデータの受信に使用でき、データの受信の特性を向上できる。
【0064】
生成部において生成されるバースト信号に含まれるデータのデータレートを決定する決定部をさらに備え、決定部では、生成部が、複数の系列の数まで、第1既知信号を配置すべき系列の数を増加させない場合でのデータレートよりも、生成部が、複数の系列の数まで、第1既知信号を配置すべき系列の数を増加させる場合でのデータレートを低くしてもよい。
【0065】
本発明のさらに別の態様もまた、無線装置である。この装置は、複数の系列のバースト信号を出力する出力部と、出力部から出力すべきバースト信号であって、かつ複数の系列のそれぞれに配置される既知信号と、既知信号の後段に配置されるデータとを含んだバースト信号を生成する生成部と、生成部において生成されるバースト信号に含まれるデータのデータレートを決定する決定部とを備える。生成部では、データが複数の系列のうちの少なくともひとつに配置されている場合、配置すべき系列の数を増加させることによって、当該データを複数の系列に配置させ、決定部では、生成部がデータを複数の系列に配置させる場合、データを複数の系列に配置させる前でのデータレートよりも、低いデータレートに決定する。
【0066】
この態様によると、複数の系列のそれぞれにデータを配置させる場合において、配置させられた系列からの無線伝送路の特性が、データの伝送に適していない場合であっても、データレートを低くすることによって、データの誤りの発生を低減できる。
【0067】
生成部は、既知信号とデータに対して複数のサブキャリアを使用しつつ、複数の系列のそれぞれを単位にして、既知信号のそれぞれに使用すべきサブキャリアの組合せを変えており、かつデータを複数の系列に配置させる際に、データと同一の系列に配置される既知信号でのサブキャリアの組合せを当該データに使用してもよい。
【0068】
本発明のさらに別の態様もまた、無線装置である。この装置は、複数の系列のバースト信号を出力する出力部と、出力部から出力すべきバースト信号であって、かつ複数の系列のそれぞれに配置される既知信号と、既知信号の後段に配置されるデータとを含んだバースト信号を生成する生成部とを備える。生成部は、データが複数の系列のうちの少なくともひとつに配置されている場合、配置すべき系列の数を増加させることによって、当該データを複数の系列に配置させる手段と、既知信号とデータに対して複数のサブキャリアを使用しつつ、複数の系列のそれぞれを単位にして、既知信号のそれぞれに使用すべきサブキャリアの組合せを変えており、かつデータを複数の系列に配置させる際に、データと同一の系列に配置される既知信号でのサブキャリアの組合せを当該データに使用する手段とを含む。
【0069】
この態様によると、データを複数の系列に配置させる場合において、ひとつの系列に配置された既知信号とデータに対して、同一のサブキャリアを使用することによって、それぞれのデータに対して使用すべきサブキャリアの選択を容易にできる。
【0070】
本発明のさらに別の態様もまた、送信方法である。この方法は、可変データレートに対応した通信対象の無線装置に、少なくともひとつの系列に配置されたデータを出力するステップと、通信対象の無線装置との間の無線伝送路に適したデータレートについての情報を当該無線装置に提供させるための要求信号であって、かつ出力するステップからデータとして出力される要求信号を生成するステップとを備える。出力するステップは、要求信号を出力する際に、データを出力するための少なくともひとつの系列以外の系列も含んだ複数の系列から、複数の系列のそれぞれに配置された既知信号も出力する。
【0071】
本発明のさらに別の態様もまた、送信方法である。この方法は、複数の系列のうちの少なくともひとつに配置される第1既知信号と、複数の系列のそれぞれに配置される第2既知信号と、第1既知信号と同一の系列に配置されるデータが含まれたバースト信号を生成するステップと、生成されたバースト信号を出力するステップと、を備える。
【0072】
本発明のさらに別の態様もまた、送信方法である。この方法は、複数の系列のバースト信号を出力するステップと、出力するステップにおいて出力すべきバースト信号であって、かつ複数の系列のそれぞれに配置される既知信号と、既知信号の後段に配置されるデータとを含んだバースト信号を生成するステップとを備える。生成するステップは、データが複数の系列のうちの少なくともひとつに配置されている場合、配置すべき系列の数を増加させることによって、当該データを複数の系列に配置させるステップと、既知信号とデータに対して複数のサブキャリアを使用しつつ、複数の系列のそれぞれを単位にして、既知信号のそれぞれに使用すべきサブキャリアの組合せを変えており、かつデータを複数の系列に配置させる際に、データと同一の系列に配置される既知信号でのサブキャリアの組合せを当該データに使用するステップとを含む。
【0073】
複数のアンテナによって、通信対象の無線装置から受信した信号をもとに、データを送信するための複数のアンテナの少なくともひとつを設定するステップをさらに備え送信するステップは、データを送信すべき少なくともひとつのアンテナとして、設定するステップにおいて設定された少なくともひとつのアンテナを使用してもよい。複数のアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナによって、通信対象の無線装置から受信した信号をもとに、データを送信するための少なくともひとつのアンテナであって、かつ選択するステップにおいて選択されたアンテナのうちの少なくともひとつのアンテナを設定するステップをさらに備え、送信するステップは、データを送信すべき少なくともひとつのアンテナとして、設定するステップにおいて設定された少なくともひとつのアンテナを使用してもよい。
【0074】
複数のアンテナによって、通信対象の無線装置から受信した信号をもとに、データを送信するための少なくともひとつのアンテナを設定するステップをさらに備え、生成するステップは、データを対応させるべき少なくともひとつのアンテナとして、設定するステップにおいて設定された少なくともひとつのアンテナを使用してもよい。出力するステップにて出力される複数の系列のそれぞれは、複数のアンテナのそれぞれに対応づけられており、かつ複数のアンテナによって、通信対象の無線装置から受信した信号をもとに、データを出力するための少なくともひとつのアンテナを設定するステップをさらに備え、出力するステップは、データを出力すべき少なくともひとつの系列として、設定するステップにおいて設定された少なくともひとつのアンテナに対応した系列を使用してもよい。
【0075】
出力するステップにて出力される複数の系列のそれぞれは、複数のアンテナのそれぞれに対応づけられており、かつ複数のアンテナによって、通信対象の無線装置から受信した信号をもとに、データを出力するための少なくともひとつのアンテナを設定するステップをさらに備え、生成するステップは、データを配置すべき少なくともひとつの系列として、設定するステップにおいて設定された少なくともひとつのアンテナに対応した系列を使用してもよい。送信するステップにて送信すべきバースト信号であって、かつ既知信号とデータとを含んだバースト信号を生成するステップをさらに備え、生成するステップでは、既知信号を送信すべきアンテナのうちの少なくともひとつにデータが対応している場合、既知信号のうち、データを送信すべきアンテナ以外のアンテナから送信される部分での信号の振幅が、既知信号のうち、データを送信すべきアンテナから送信される部分での信号の振幅よりも小さい値に規定されていてもよい。
【0076】
生成するステップでは、第2既知信号のうち、データを送信すべきアンテナ以外のアンテナから送信される部分での信号の振幅が、第2既知信号のうち、データを送信すべきアンテナから送信される部分での信号の振幅よりも小さい値に規定されていてもよい。生成するステップでは、第2既知信号のうち、データを配置すべき系列以外の系列に配置される部分での信号の振幅が、第2既知信号のうち、データを配置すべき系列に配置される部分での信号の振幅よりも小さい値に規定されていてもよい。出力するステップにて出力すべきバースト信号であって、かつ既知信号とデータとを含んだバースト信号を生成するステップをさらに備え、生成するステップでは、既知信号を配置すべき系列のうちの少なくともひとつにデータが配置されている場合、既知信号のうち、データを配置すべき系列以外の系列に配置される部分での信号の振幅が、既知信号のうち、データを配置すべき系列に配置される部分での信号の振幅よりも小さい値に規定されていてもよい。
【0077】
送信するステップにて送信すべきバースト信号であって、かつ既知信号とデータとを含んだバースト信号を生成するステップをさらに備え、生成するステップでは、既知信号を送信すべきアンテナのうちの少なくともひとつにデータが対応している場合、既知信号のうち、データを送信すべきアンテナ以外のアンテナから送信される部分において使用されるサブキャリアの数が、既知信号のうち、データを送信すべきアンテナから送信される部分において使用されるサブキャリアの数よりも小さい値に規定されていてもよい。生成するステップでは、第2既知信号のうち、データを送信すべきアンテナ以外のアンテナから送信される部分において使用されるサブキャリアの数が、第2既知信号のうち、データを送信すべきアンテナから送信される部分において使用されるサブキャリアの数よりも小さい値に規定されていてもよい。
【0078】
生成するステップでは、第2既知信号のうち、データを配置すべき系列以外の系列に配置される部分において使用されるサブキャリアの数が、第2既知信号のうち、データを配置すべき系列に配置される部分において使用されるサブキャリアの数よりも小さい値に規定されていてもよい。出力するステップにて出力すべきバースト信号であって、かつ既知信号とデータとを含んだバースト信号を生成するステップをさらに備え、生成するステップでは、既知信号を配置すべき系列のうちの少なくともひとつにデータが配置されている場合、既知信号のうち、データを配置すべき系列以外の系列に配置される部分において使用されるサブキャリアの数が、既知信号のうち、データを配置すべき系列に配置される部分において使用されるサブキャリアの数よりも小さい値に規定されていてもよい。
【0079】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0080】
本発明によれば、データを伝送する際の制御の精度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0081】
(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例1は、ふたつの無線装置(以下、便宜上、「第1無線装置」と「第2無線装置」という)によって構成されるMIMOシステムに関する。MIMOシステムにおける第1無線装置と第2無線装置は、共にアダプティブアレイ信号処理を実行する。また、MIMOシステムは、アンテナの本数、変調方式、誤り訂正の符号化率の各値を変えることによって、データレートを変更する。その際、送信側の無線装置は、受信側の無線装置に対してレート要求信号を送信する。例えば、第1無線装置が第2無線装置にデータを送信する場合、第1無線装置は、第2無線装置に対して、レート要求信号を送信する。
【0082】
第2無線装置は、自らのレート情報を第1無線装置に通知するが、当該レート情報は、以下の場合に誤りを含む。ひとつ目は、第2無線装置がレート情報を決定してからある程度の期間を要している場合である。ふたつ目は、第2無線装置がレート情報を決定したときと、第1無線装置からのデータを受信するときにおいて、送信に使用される第1無線装置のアンテナの本数が異なる場合である。なお、これらの具体的な説明は、後述する。本実施例に係る第1無線装置は、第2無線装置から取得するレート情報を正確なものにするために、レート要求信号を送信する際に、トレーニング信号も付加する。その結果、第2無線装置は、トレーニング信号によってレート情報を更新できるので、レート情報が正確になる。
【0083】
また、第1無線装置から第2無線装置にデータを送信する場合、第1無線装置は、トレーニング信号にもとづいて、送信ウエイトベクトルを予め導出してなければならない。そのために、第1無線装置は、第2無線装置にトレーニング信号の送信を要求する(以下、要求のための信号を「トレーニング要求信号」という)。第2無線装置は、トレーニング要求信号にしたがい、第1無線装置にトレーニング信号を送信する。その際、消費電力を低減するために、第2無線装置は、すべてのアンテナからトレーニング信号を送信するのではなく、第1無線装置からデータを受信すべきアンテナからトレーニング信号を送信する。
【0084】
図1は、本発明の実施例1に係るマルチキャリア信号のスペクトルを示す。特に、図1は、OFDM変調方式での信号のスペクトルを示す。OFDM変調方式における複数のキャリアのひとつをサブキャリアと一般的に呼ぶが、ここではひとつのサブキャリアを「サブキャリア番号」によって指定するものとする。ここでは、IEEE802.11a規格と同様に、サブキャリア番号「−26」から「26」までの53サブキャリアが規定されている。なお、サブキャリア番号「0」は、ベースバンド信号における直流成分の影響を低減するため、ヌルに設定されている。それぞれのサブキャリアは、可変に設定された変調方式によって変調されている。変調方式には、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、QSPK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、64QAMのいずれかが使用される。
【0085】
また、これらの信号には、誤り訂正方式として、畳み込み符号化が適用されている。畳み込み符号化の符号化率は、1/2、3/4等に設定される。さらに、MIMOシステムにおいて使用されるアンテナの本数は、可変に設定される。その結果、変調方式、符号化率、アンテナ本数の値が可変に設定されることによって、データレートも可変に設定される。以下、前述のごとく、データレートに関する情報を「レート情報」というが、レート情報は、変調方式、符号化率、アンテナ本数のそれぞれの値を含む。ここでは、特に必要のない限り、変調方式、符号化率、アンテナ本数のそれぞれの値を説明しないものとする。
【0086】
図2は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、無線装置10と総称される第1無線装置10a、第2無線装置10bを含む。また、第1無線装置10aは、アンテナ12と総称される第1アンテナ12a、第2アンテナ12b、第3アンテナ12c、第4アンテナ12dを含み、第2無線装置10bは、アンテナ14と総称される第1アンテナ14a、第2アンテナ14b、第3アンテナ14c、第4アンテナ14dを含む。第1無線装置10aと第2無線装置10bのうちの一方が、送信装置に対応し、他方が受信装置に対応する。また、第1無線装置10aと第2無線装置10bのうちの一方が基地局装置に対応し、他方が端末装置に対応する。
【0087】
通信システム100の構成を説明する前に、MIMOシステムの概略を説明する。データは、第1無線装置10aから第2無線装置10bに送信されているものとする。第1無線装置10aは、第1アンテナ12aから第4アンテナ12dのそれぞれから、異なったデータを送信する。その結果、データレートが高速になる。第2無線装置10bは、第1アンテナ14aから第4アンテナ14dによって、データを受信する。さらに、第2無線装置10bは、アダプティブアレイ信号処理によって、受信したデータを分離して、第1アンテナ12aから第4アンテナ12dのそれぞれから送信されたデータを独立に復調する。
【0088】
ここで、アンテナ12の本数は「4」であり、アンテナ14の本数も「4」であるので、アンテナ12とアンテナ14の間の伝送路の組合せは「16」になる。第iアンテナ12iから第jアンテナ14jとの間の伝送路特性をhijと示す。図中において、第1アンテナ12aと第1アンテナ14aとの間の伝送路特性がh11、第1アンテナ12aから第2アンテナ14bとの間の伝送路特性がh12、第2アンテナ12bと第1アンテナ14aとの間の伝送路特性がh21、第2アンテナ12bから第2アンテナ14bとの間の伝送路特性がh22、第4アンテナ12dから第4アンテナ14dとの間の伝送路特性がh44と示されている。なお、これら以外の伝送路は、図の明瞭化のために省略する。
【0089】
第2無線装置10bは、アダプティブアレイ信号処理によって、第1アンテナ12aから第2アンテナ12bによってそれぞれ送信されたデータを独立して復調できるように動作する。さらに、第1無線装置10aも、第1アンテナ12aから第4アンテナ12dに対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。このように送信側である第1無線装置10aにおいてもアダプティブアレイ信号処理を実行することによって、MIMOシステムにおける空間の分割を確実にする。その結果、複数のアンテナ12において送信される信号間の干渉が小さくなるので、データの伝送特性を向上できる。
【0090】
第1無線装置10aは、第1アンテナ12aから第4アンテナ12dから、それぞれ異なったデータを送信する。また、送信すべきデータのレートや容量に応じて、第1無線装置10aは、使用すべきアンテナ12の本数を制御する。例えば、送信すべきデータの容量が大きければ、「4」本のアンテナ12を使用し、送信すべきデータの容量が小さければ、「2」本のアンテナ12を使用する。また、第1無線装置10aは、使用すべきアンテナ12の本数を決定する際に、第2無線装置10bにおけるレート情報を参照する。例えば、第2無線装置10bが「2」本のアンテナ14による受信を指示する場合に、第1無線装置10aは、「2」本のアンテナ12を使用する。さらに、第1無線装置10aは、データを送信する際に、アンテナ12に対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。そのため、第1無線装置10aは、第2無線装置10bからトレーニング信号を予め受信し、トレーニング信号にもとづいて送信ウエイトベクトルを導出する。詳細は後述する。
【0091】
第2無線装置10bは、第1アンテナ14aから第4アンテナ14dに対して、アダプティブアレイ信号処理を実行して、第1無線装置10aからのデータを受信する。また、前述のごとく、第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、レート情報を通知したり、トレーニング信号を送信する。なお、第1無線装置10aと第2無線装置10bの動作が、反対になってもよい。
【0092】
図3(a)−(b)は、通信システム100でのバーストフォーマットの構成を示す。図3(a)は、使用されるアンテナ12の数が「2」である場合のバーストフォーマットである。図の上段が、第1アンテナ12aから送信されるバースト信号を示し、図の下段が、第2アンテナ12bから送信されるバースト信号を示す。「Legacy STS(Short Training Sequence)」、「Legacy LTS(Long Training Sequence)」、「Legacy シグナル」は、IEEE802.11a規格に準拠した無線LANシステムのごとく、MIMOに対応していない通信システムと互換性を有する信号である。「Legacy STS」は、タイミング同期およびAGC(Automatic Gain Control)等に使用され、「Legacy LTS」は、伝送路推定に使用され、「Legacy シグナル」は、制御情報を含む。「MIMOシグナル」以降は、MIMOシステムに特有の信号であり、「MIMOシグナル」は、MIMOシステムに対応した制御情報を含む。「第1MIMO−STS」と「第2MIMO−STS」は、タイミング同期およびAGC等に使用され、
「第1MIMO−LTS」と「第2MIMO−LTS」は、伝送路推定に使用され、「第1データ」と「第2データ」は、送信すべきデータである。
【0093】
図3(b)は、図3(a)と同様に、データの送信のために「2」本のアンテナ12が使用される場合のバーストフォーマットである。しかしながら、前述のトレーニング信号が付加されている。トレーニング信号は、図中において、「第1MIMO−STS」、「第1MIMO−LTS」から「第4MIMO−STS」、「第4MIMO−LTS」に対応する。また、「第1MIMO−STS」、「第1MIMO−LTS」から「第4MIMO−STS」、「第4MIMO−LTS」は、第1アンテナ12aから第4アンテナ12dによってそれぞれ送信される。なお、前述のごとく、トレーニング信号が送信されるアンテナ12の数は、「4」より小さくなってもよい。「第1MIMO−STS」から「第4MIMO−STS」は、互いの干渉が小さくなるようなパターンによって構成されている。「第1MIMO−LTS」から「第4MIMO−LTS」も同様である。ここでは、これらの構成の説明を省略する。一般的に、「Legacy LTS」や図3(a)における「第1MIMO−LTS」等が、トレーニング信号といわれる場合もあるが、ここでは、トレーニング信号を前述のような図3(b)の信号に限定する。すなわち、「トレーニング信号」とは、通信対象の無線装置10に伝送路推定を実行させるために、送信すべきデータの数、すなわち系列の数にかかわらず、推定させるべき伝送路に応じた系列の数のMIMO−LTSに相当する。以下、「第1MIMO−STS」から「第4MIMO−STS」を「MIMO−STS」と総称し、「第1MIMO−LTS」から「第4MIMO−LTS」を「MIMO−LTS」と総称し、「第1データ」と「第2データ」を「データ」と総称する。
【0094】
図4は、通信システム100での比較対象となる通信手順を示すシーケンス図である。ここでは、第1無線装置10aが、第2無線装置10bのレート情報を取得する動作を示す。説明を簡潔にするために、アダプティブアレイ信号処理の動作を省略する。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、レート要求信号を送信する(S10)。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、レート情報を送信する(S12)。第1無線装置10aは、レート情報にもとづいて、データレートを設定する(S14)。すなわち、レート情報を参照しながら、データレートを設定する。第1無線装置10aは、設定されたデータレートによって、データを送信する(S16)。第2無線装置10bは、データに対して、受信処理を実行する(S18)。
【0095】
以上のような動作によれば、前述のごとく、第2無線装置10bにおけるレート情報は、以下の場合に誤りを含む。ひとつ目は、第2無線装置10bがレート情報を決定してからある程度の期間を要している場合である。すなわち、第1無線装置10aと第2無線装置10bとの間の伝送路の特性は、一般的に変動しており、それに応じてレート情報の内容も変動する。例えば、レート情報を決定したときに、50Mbpsでの受信が可能であったが、第1無線装置10aからデータを受信するときに、10Mbpsでの受信が限界となる場合がある。ふたつ目は、第2無線装置10bがレート情報を決定したときと、第1無線装置10aからデータを受信するときにおいて、使用される第1無線装置のアンテナの本数が異なる場合である。すなわち、第2無線装置10bがレート情報を決定する場合に、すべてのアンテナ12からのトレーニング信号を受けていなければ、未知の伝送路が存在し、正確なレート情報を導出できなくなる。例えば、第1アンテナ12aと第2アンテナ12bからの信号にもとづいてレート情報を導出すれば、第3アンテナ12cと第4アンテナ12dの影響が考慮されておらず、その結果、レート情報に誤差が含まれる。
【0096】
図5は、通信システム100での比較対象となる別の通信手順を示すシーケンス図である。ここでは、MIMOによってデータが伝送される動作を示す。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、トレーニング要求信号を送信する(S20)。トレーニング要求信号は、図3(a)の「第1データ」や「第2データ」に含まれる。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、トレーニング信号を送信する(S22)。第1無線装置10aは、受信したトレーニング信号にもとづいて、送信ウエイトベクトルを導出し、これを設定する(S24)。第1無線装置10aは、送信ウエイトベクトルを使用しながら、データを送信する(S26)。第2無線装置10bは、受信したデータに対して、受信ウエイトベクトルを導出し、これを設定する(S28)。さらに、第2無線装置10bは、受信ウエイトベクトルにもとづいて、データの受信処理を実行する(S30)。
【0097】
以上の動作によれば、第2無線装置10bは、すべてのアンテナ14からトレーニング信号を送信しているので、消費電力が増加する。一方、レート情報におけるデータレートがある程度低い場合に、使用すべきアンテナ14の数が少なくてもよい場合がある。その場合に、使用する予定のないアンテナ14からトレーニング信号を送信しなくても、伝送品質の悪化を抑えられる。特に、第2無線装置10bが端末装置であり、バッテリー駆動である場合には、消費電力の低減が望まれている。
【0098】
図6は、第1無線装置10aの構成を示す。第1無線装置10aは、無線部20と総称される第1無線部20a、第2無線部20b、第4無線部20d、処理部22と総称される第1処理部22a、第2処理部22b、第4処理部22d、変復調部24と総称される第1変復調部24a、第2変復調部24b、第4変復調部24d、IF部26、選択部28、制御部30、レート情報管理部32を含む。また信号として、時間領域信号200と総称される第1時間領域信号200a、第2時間領域信号200b、第4時間領域信号200d、周波数領域信号202と総称される第1周波数領域信号202a、第2周波数領域信号202b、第4周波数領域信号202dを含む。なお、第2無線装置10bも同様の構成を有する。また、第1無線装置10aや第2無線装置10bが、基地局装置であるか、端末装置であるかによって、異なった構成が含まれるが、ここでは、説明を明確にするために、それらを省略する。
【0099】
無線部20は、受信動作として、アンテナ12において受信した無線周波数の信号を周波数変換し、ベースバンドの信号を導出する。無線部20は、ベースバンドの信号を時間領域信号200として処理部22に出力する。一般的に、ベースバンドの信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線によって伝送されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。また、AGCやA/D変換部も含まれる。無線部20は、送信動作として、処理部22からのベースバンドの信号を周波数変換し、無線周波数の信号を導出する。ここで、処理部22からのベースバンドの信号も時間領域信号200として示す。無線部20は、無線周波数の信号をアンテナ12に出力する。また、PA(Power Amplifier)、D/A変換部も含まれる。時間領域信号200は、時間領域に変換したマルチキャリア信号であり、デジタル信号であるものとする。さらに、無線部20において処理される信号は、バースト信号を形成しており、そのバーストフォーマットは、図3(a)−(b)に示した通りである。
【0100】
処理部22は、受信動作として、複数の時間領域信号200をそれぞれ周波数領域に変換し、周波数領域の信号に対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。処理部22は、アダプティブアレイ信号処理の結果を周波数領域信号202として出力する。ひとつの周波数領域信号202が、図2におけるひとつのアンテナ14から送信された信号に対応し、これはひとつの伝送路に対応した信号に相当する。処理部22は、送信動作として、変復調部24から、周波数領域の信号としての周波数領域信号202を入力し、周波数領域の信号に対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。さらに、処理部22は、アダプティブアレイ信号処理した信号を時間領域に変換し、時間領域信号200として出力する。送信処理において使用すべきアンテナ12の数は、制御部30によって指定されるものとする。ここで、周波数領域の信号である周波数領域信号202は、図1のごとく、複数のサブキャリアの成分を含むものとする。図を明瞭にするために、周波数領域の信号は、サブキャリア番号の順に並べられて、シリアル信号を形成しているものとする。
【0101】
図7は、周波数領域の信号の構成を示す。ここで、図1に示したサブキャリア番号「−26」から「26」のひとつの組合せを「OFDMシンボル」というものとする。「i」番目のOFDMシンボルは、サブキャリア番号「1」から「26」、サブキャリア番号「−26」から「−1」の順にサブキャリア成分を並べているものとする。また、「i」番目のOFDMシンボルの前に、「i−1」番目のOMDMシンボルが配置され、「i」番目のOFDMシンボルの後ろに、「i+1」番目のOMDMシンボルが配置されているものとする。
【0102】
図6に戻る。変復調部24は、受信処理として、処理部22からの周波数領域信号202に対して、復調および復号を実行する。なお、復調および復号は、サブキャリア単位でなされる。変復調部24は、復号した信号をIF部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、符号化および変調を実行する。変復調部24は、変調した信号を周波数領域信号202として処理部22に出力する。送信処理の際に、変調方式および符号化率は、制御部30によって指定されるものとする。当該指定は、前述のレート情報にもとづいてなされる。
【0103】
IF部26は、受信処理として、複数の変復調部24からの信号を合成し、ひとつのデータストリームを形成する。IF部26は、データストリームを出力する。また、IF部26は、送信処理として、ひとつのデータストリームを入力し、これを分離する。さらに、分離したデータを複数の変復調部24に出力する。
【0104】
以上のような構成によって、要求信号を送信する場合を説明する。処理部22は、図3(a)あるいは(b)のごとく、複数のアンテナ12のうちの少なくともひとつから、各アンテナ12に対応したデータを送信する。使用すべきアンテナ12の数が「2」である場合、図3(a)あるいは(b)での「第1データ」と「第2データ」に相当する。データの送信に使用すべきアンテナ12の数は、制御部30によって指示されるものとする。さらに、処理部22は、図3(a)のような「Legacy STS」等のデータ以外の信号も付加する。また、データの送信に使用すべきアンテナ12の数が「4」になれば、図3(a)−(b)に示されていない「第3データ」と「第4データ」が付加される。このようなデータは、可変データレートに対応した第2無線装置10bに送信される。
【0105】
制御部30は、第2無線装置10bでのレート情報を第2無線装置10bに提供させるための要求信号を生成する。さらに、制御部30は、生成した要求信号を変復調部24に出力する。処理部22は、要求信号を送信する際に、データを送信するためのアンテナ12以外のアンテナ12も含んだ複数のアンテナ12から、複数のアンテナ12のそれぞれに対応した既知信号も送信する。ここで、要求信号は、図3(b)の「第1データ」や「第2データ」に割り当てられる。また、既知信号は、図3(b)において、「第1MIMO−STS」、「第1MIMO−LTS」から「第4MIMO−STS」、「第4MIMO−LTS」に相当する。その結果、図3(b)のごとく、データを送信するためのアンテナ12の本数が「2」であっても、処理部22は、「4」つのアンテナ12から既知信号、すなわちトレーニング信号を送信する。このように、要求信号とトレーニング信号を組合せて送信することによって、第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、トレーニング信号にもとづいてレート情報を生成させ、生成されたレート情報を取得できる。その結果、第1無線装置10aによって取得される第2無線装置10bのレート情報の精度が、向上する。
【0106】
以上の説明に対応して、要求信号とトレーニング信号を受信する場合を説明する。制御部30は、受信したトレーニング信号にもとづいて、レート情報を生成する。レート情報の生成方法は、任意のものでよい。例えば、無線部20において受信した信号の信号強度を測定し、測定した信号強度をしきい値と比較することによって、レート情報を生成してもよい。あるいは、処理部22において導出した受信ウエイトベクトルにもとづいて、レート情報を生成してもよい。なお、レート情報の生成の一例は、後述する。さらに、変復調部24において復調した結果にもとづいて、レート情報を生成してもよい。決定したレート情報は、変復調部24、処理部22、無線部20を介して送信されるとともに、レート情報管理部32に保持される。また、レート情報管理部32は、通信対称の無線装置10におけるレート情報も保持する。
【0107】
以上のような構成において、消費電力を低減するために、第1無線装置10aは、以下のように動作する。無線部20は、複数のアンテナ12によって、第2無線装置10bから、トレーニング信号を受信する。選択部28は、受信したトレーニング信号にもとづいて、複数のアンテナ12のうち、第2無線装置10bからのデータを受信する際に使用すべき少なくともひとつを選択する。より具体的には、以下の通りである。選択部28は、無線部20において受信したトレーニング信号をもとに、複数のアンテナ12のそれぞれに対応した信号強度を導出する。選択部28は、強度の大きいアンテナ12を優先的に選択する。例えば、データを受信する際に使用すべきアンテナ12の数が「3」である場合、選択部28は、強度の大きいアンテナ12から「3」つのアンテナ12を選択する。なお、選択されるべきアンテナ12の総数は、伝送すべきデータレートや消費電力の値にもとづいて、別途指定されるものとする。処理部22は、選択部28において選択されたアンテナ12を使用しながら、トレーニング信号を送信する。このように、トレーニング信号を送信すべきアンテナ12の数を削減することによって、消費電力を低減する。
【0108】
また、以上の動作は、要求信号を送信しない場合においても実行可能である。すなわち、第2無線装置10bからトレーニング要求信号を受けつけた場合にも、適用できる。すなわち、選択部28は、複数のアンテナ12のうち、第2無線装置10bからのデータを受信する際に使用すべき少なくともひとつを選択する。その際、選択は、制御部30からの指示にもとづいてなされる。処理部22は、第2無線装置10bに対して、複数のアンテナ12のうちの少なくともひとつから、各アンテナ12に対応したデータを送信し、かつデータの送信の際に使用すべきアンテナ12の本数に関係なく、選択部28において選択された各アンテナ12に対応したトレーニング信号も送信する。例えば、データは、「2」つのアンテナ12から送信され、トレーニング信号は、「3」つのアンテナ12から送信される。
【0109】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリのロードされた予約管理機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0110】
図8は、第1処理部22aの構成を示す。第1処理部22aは、FFT(Fast Fourier Transform)部40、合成部42、参照信号生成部44、受信ウエイトベクトル計算部54、分離部46、送信ウエイトベクトル計算部52、IFFT部48、プリアンブル付加部50を含む。また、合成部42は、乗算部56と総称される第1乗算部56a、第2乗算部56b、第4乗算部56d、加算部60を含む。また、分離部46は、乗算部58と総称される第1乗算部58a、第2乗算部58b、第4乗算部58dを含む。
【0111】
FFT部40は、複数の時間領域信号200を入力し、それぞれに対してフーリエ変換を実行して、周波数領域の信号を導出する。前述のごとく、ひとつの周波数領域の信号は、サブキャリア番号の順に、サブキャリアに対応した信号をシリアルに並べている。
【0112】
乗算部56は、受信ウエイトベクトル計算部54からの受信ウエイトベクトルによって、周波数領域の信号を重み付けし、加算部60は乗算部56の出力を加算する。ここで、周波数領域の信号は、サブキャリア番号の順に配置されているので、受信ウエイトベクトル計算部54からの受信ウエイトベクトルもそれに対応するように配置されている。すなわち、ひとつの乗算部56は、サブキャリア番号の順に配置された受信ウエイトベクトルを逐次入力する。そのため、加算部60は、サブキャリア単位で、乗算結果を加算する。その結果、加算された信号も、図7のごとく、サブキャリア番号の順にシリアルに並べられている。また、加算された信号が、前述の周波数領域信号202である。
【0113】
なお、以下の説明においても、処理対象の信号が周波数領域に対応している場合、処理は、基本的にサブキャリアを単位にして実行される。ここでは、説明を簡潔にするために、ひとつのサブキャリアにおける処理を説明する。そのため、複数のサブキャリアに対する処理には、ひとつのサブキャリアにおける処理をパラレルあるいはシリアルに実行することによって、対応される。
【0114】
参照信号生成部44は、「Legacy STS」、「Legacy LTS」、「第1MIMO−STS」、「第1MIMO−LTS」期間中は予め記憶した「Legacy STS」、「Legacy LTS」、「第1MIMO−STS」、「第1MIMO−LTS」を参照信号として出力する。またこれらの期間以外は、予め規定しているしきい値によって、周波数領域信号202を判定し、その結果を参照信号として出力する。なお、判定は硬判定でなく、軟判定でもよい。
【0115】
受信ウエイトベクトル計算部54は、FFT部40からの周波数領域の信号、周波数領域信号202、参照信号にもとづいて、受信ウエイトベクトルを導出する。受信ウエイトベクトルの導出方法は、任意のものでよく、そのひとつはLMS(Least Mean Squeare)アルゴリズムによる導出である。また、受信ウエイトベクトルは、相関処理によって導出されてもよい。その際、周波数領域の信号と参照信号は、第1処理部22aからだけではなく、図示しない信号線によって、第2処理部22b等からも入力されるものとする。第1処理部22aにおける周波数領域の信号をx1(t)、第2処理部22bにおける周波数領域の信号をx2(t)と示し、第1処理部22aにおける参照信号をS1(t)、第2処理部22bにおける参照信号をS2(t)と示せば、x1(t)とx2(t)は、次の式のように示される。
【0116】
【数1】

ここで、雑音は無視する。第1の相関行列R1は、Eをアンサンブル平均として、次の式のように示される。
【数2】

参照信号間の第2の相関行列R2は、次の式のように計算される。
【0117】
【数3】

最終的に、第2の相関行列R2の逆行列と第1の相関行列R1を乗算することによって、受信応答ベクトルが導出される。
【数4】

さらに、受信ウエイトベクトル計算部54は、受信応答ベクトルから受信ウエイトベクトルを計算する。
【0118】
送信ウエイトベクトル計算部52は、受信ウエイトベクトルから、周波数領域信号202の重み付けに必要な送信ウエイトベクトルを推定する。送信ウエイトベクトルの推定方法は、任意とするが、最も簡易な方法として、受信ウエイトベクトルをそのまま使用すればよい。あるいは、受信処理と送信処理との時間差によって生じる伝搬環境のドップラー周波数変動を考慮し、従来の技術によって、受信ウエイトベクトルを補正してもよい。なお、ここでは、受信ウエイトベクトルをそのまま送信ウエイトベクトルに使用するものとする。
【0119】
乗算部58は、送信ウエイトベクトルによって、周波数領域信号202を重み付けし、その結果をIFFT部48に出力する。また、IFFT部48は、乗算部58からの信号に対して逆フーリエ変換を実行して、時間領域の信号に変換する。プリアンブル付加部50は、図3(a)−(b)のごとく、バースト信号の先頭部分に、プリアンブルを付加する。ここでは、「Legacy STS」、「Legacy LTS」、「第1MIMO−STS」、「第1MIMO−LTS」を付加する。プリアンブル付加部50は、プリアンブルを付加した信号を時間領域信号200として出力する。なお、以上の動作は、図6の制御部30によって制御されるものとする。図8において、第1時間領域信号200a等は、2カ所に示されている。これらは、ひとつの方向の信号であり、これらが、図6における双方向の信号である第1時間領域信号200a等に対応する。
【0120】
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図9は、通信システム100におけるデータレートの設定の手順を示すシーケンス図である。図9は、レート要求信号とトレーニング信号を送信する場合のシーケンス図であり、図4に対応する。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、図3(b)のごとく、レート要求信号とトレーニング信号を送信する(S40)。第2無線装置10bは、トレーニング信号にもとづいて、伝送路推定を行う(S42)。ここで、伝送路推定は、前述の受信ウエイトベクトルの導出に相当する。第2無線装置10bは、推定した伝送路にもとづいて、レート情報を更新する(S44)。ここで、レート情報の更新については、説明を省略する。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、レート情報を送信する(S46)。第1無線装置10aは、受けつけたレート情報を参照しながら、データレートを設定する(S48)。
【0121】
図10は、第1無線装置10aにおけるデータレートの設定の手順を示すフローチャートである。図10は、図9での第1無線装置10aの動作に対応する。処理部22は、図3(b)に示したトレーニング信号のフォーマットにて、レート要求信号を送信する(S50)。アンテナ12、無線部20、処理部22、変復調部24を介して、IF部26がレート情報を受けつけなければ(S52のN)、受けつけるまで待ち続ける。一方、IF部26が、レート情報を受けつければ(S52のY)、制御部30がデータレートの設定を行う(S54)。また、レート情報管理部32は、レート情報を保持する。
【0122】
図11は、通信システム100におけるデータレートの設定の別の手順を示すシーケンス図である。図11は、図9に対して、アダプティブアレイ信号処理を考慮し、かつ低消費電力化を目的とした処理のシーケンス図であり、図5に対応する。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、トレーニング要求信号を送信する(S60)。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、トレーニング信号を送信する(S62)。第1無線装置10aは、受信したトレーニング信号の強度にもとづいて、アンテナ12を選択する(S64)。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、図3(b)のごとく、レート要求信号とトレーニング信号を送信する(S66)。なお、トレーニング信号は、選択されたアンテナ12から送信される。
【0123】
第2無線装置10bは、トレーニング信号にもとづいて、伝送路推定を行う(S68)。第2無線装置10bは、推定した伝送路にもとづいて、レート情報を更新する(S70)。また、第2無線装置10bは、送信ウエイトベクトルを導出し、これを設定する(S72)。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、レート情報を送信する(S74)。その際、送信ウエイトベクトルを使用することによって、アダプティブアレイ信号処理を実行する。第1無線装置10aは、レート情報を含んだバースト信号にもとづいて、受信ウエイトベクトルを設定する(S76)。さらに、受信ウエイトベクトルを使用しながら、レート情報を受信処理する(S78)。第1無線装置10aは、受けつけたレート情報を参照しながら、データレートを設定する(S80)。
【0124】
図12は、第1無線装置10aにおけるデータレートの設定の別の手順を示すフローチャートである。図12は、図11での第1無線装置10aの動作に対応する。処理部22は、トレーニング要求信号を送信する(S90)。無線部20は、トレーニング信号を受信する(S92)。選択部28は、受信したトレーニング信号の強度をアンテナ12単位で測定し、測定した強度にもとづいて、アンテナ12を選択する(S94)。処理部22は、図3(b)に示したトレーニング信号のフォーマットにて、選択したアンテナ12からトレーニング信号を送信し、かつレート要求信号も送信する(S96)。
【0125】
アンテナ12、無線部20、処理部22、変復調部24を介して、IF部26がレート情報を受けつけなければ(S98のN)、受けつけるまで待ち続ける。一方、IF部26が、レート情報を受けつければ(S98のY)、処理部22は、受信ウエイトベクトルを設定する(S100)。また、処理部22、変復調部24、IF部26は、受信処理を実行する(S102)。制御部30がデータレートの設定を行う(S104)。また、レート情報管理部32は、レート情報を保持する。
【0126】
図13は、通信システム100での通信手順を示すシーケンス図である。図13は、トレーニング信号の送信において、低消費電力化を目的とした処理のシーケンス図である。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに対して、トレーニング要求信号を送信する(S110)。第2無線装置10bは、データを受信するときに使用すべきアンテナ14を選択する(S112)。また、第2無線装置10bは、選択したアンテナ14から、第1無線装置10aに対して、トレーニング信号を送信する(S114)。第1無線装置10aは、受信したトレーニング信号の強度にもとづいて、送信ウエイトベクトルを設定する(S116)。第1無線装置10aは、送信ウエイトベクトルを使用しながら、第2無線装置10bに対して、データを送信する(S118)。第2無線装置10bは、データを含んだバースト信号から、受信ウエイトベクトルを導出し、これを設定する(S120)。第2無線装置10b、受信ウエイトベクトルにもとづいて、受信処理を実行する(S122)。
【0127】
図14は、第2無線装置10bでの送信手順を示すフローチャートである。図14は、図13での第2無線装置10bの動作に対応する。アンテナ12、無線部20、処理部22、変復調部24を介して、IF部26がトレーニング要求信号を受けつけなければ(S130のN)、処理を開始しない。一方、IF部26がトレーニング要求信号を受けつければ(S130のY)、制御部30は、受信の際に使用すべきアンテナ14を選択する(S132)。処理部22は、選択したアンテナ14から、トレーニング信号を送信する(S134)。
【0128】
これまでの実施例においては、トレーニング信号を送信する際に、第1無線装置10aは、アダプティブアレイ信号処理、すなわちビームフォーミングを実行していなかった。これは、第2無線装置10bに、アンテナの指向性が無指向性である状態において、伝送路推定を行わせるためである。すなわち、第2無線装置10bに対して、本来の伝送路に近い状態において、伝送路推定を行わせるためである。前述のごとく、トレーニング信号とレート要求信号を組合せる場合、第1無線装置10aは、以下の処理を実行することによって、第2無線装置10bにおいて決定されるレート情報を高速にできる。第1無線装置10aがビームフォーミングを実行すれば、実行しないときと比較して、第2無線装置10bにおける受信時のSNR(Signal to Noise Ratio)が改善される。第2無線装置10bがSNRにもとづいて、データレートを決定している場合、SNRの改善によって、決定されるデータレートも高くなる。そのため、ここでは、レート要求信号を送信する場合、第1無線装置10aは、少なくともトレーニング信号に対して、ビームフォーミングを実行する。
【0129】
図15は、通信システム100におけるデータレートの設定のさらに別の手順を示すシーケンス図である。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、データを送信する(S140)。ここでは、第1無線装置10aと第2無線装置10bとの間において、通信が既に実行されており、データレートは所定の値に設定されているものとする。第1無線装置10aは、受信したデータにもとづいて、受信ウエイトベクトルを導出する(S142)。第1無線装置10aは、推定した受信ウエイトベクトルにもとづいて、送信ウエイトベクトルを導出し、これを設定する(S144)。なお、第1無線装置10aは、受信したデータに対して、受信処理を実行する。第1無線装置10aは、導出した送信ウエイトベクトルによって、ビームフォーミングを行いながら、第2無線装置10bに対して、図3(b)のごとく、レート要求信号とトレーニング信号を送信する(S146)。
【0130】
第2無線装置10bは、トレーニング信号にもとづいて、伝送路推定を行う(S148)。第2無線装置10bは、推定した伝送路にもとづいて、レート情報を更新する(S150)。また、第2無線装置10bは、送信ウエイトベクトルを導出し、これを設定する(S152)。第2無線装置10bは、第1無線装置10aに対して、レート情報を送信する(S154)。その際、送信ウエイトベクトルを使用することによって、アダプティブアレイ信号処理を実行する。第1無線装置10aは、レート情報を含んだバースト信号にもとづいて、受信ウエイトベクトルを設定する(S156)。さらに、受信ウエイトベクトルを使用しながら、レート情報を受信処理する(S158)。第1無線装置10aは、受けつけたレート情報を参照しながら、データレートを再設定する(S160)。
【0131】
図16は、第1無線装置10aにおけるデータレートの設定のさらに別の手順を示すフローチャートである。図16は、図15での第1無線装置10aの動作に対応する。無線部20は、データを受信する(S170)。処理部22は、受信ウエイトベクトルを計算し(S172)、送信ウエイトベクトルを設定する(S174)。処理部22は、図3(b)に示したトレーニング信号のフォーマットにて、送信ウエイトベクトルによってビームフォーミングを実行しつつ、アンテナ12からトレーニング信号を送信し、かつレート要求信号も送信する(S176)。
【0132】
アンテナ12、無線部20、処理部22、変復調部24を介して、IF部26がレート情報を受けつけなければ(S178のN)、受けつけるまで待ち続ける。一方、IF部26が、レート情報を受けつければ(S178のY)、処理部22は、受信ウエイトベクトルを設定する(S180)。また、処理部22、変復調部24、IF部26は、受信処理を実行する(S182)。制御部30がデータレートの設定を行う(S184)。また、レート情報管理部32は、レート情報を保持する。
【0133】
次に、レート情報の生成について説明する。レート情報の生成は、図9のステップ44においてなされ、また、第2無線装置10bによってなされる。レート要求信号の伝送の方向が、第2無線装置10bから第1無線装置10aであるとき、レート情報の生成は、第1無線装置10aにおいてもなされるが、ここでは、第2無線装置10bでの処理として説明する。その際、図6の構成は、アンテナ12からアンテナ14に変更される。図17は、制御部30の構成を示す。制御部30は、相関計算部70、電力比計算部72、処理対象決定部74、レート決定部76、記憶部78を含む。
【0134】
制御部30における処理の前提として、前述のごとく、図6の無線部20、処理部22、変復調部24は、アンテナ14によって、第1無線装置10aからのトレーニング信号を受信する。トレーニング信号は、図3(b)のごとく、第1データや第2データを送信するための第1アンテナ12a、第2アンテナ12b以外のアンテナ12も含んだ複数のアンテナ12から送信される。トレーニング信号は、「MIMO−LTS」に相当する。また、トレーニング信号のそれぞれは、複数のアンテナ12のそれぞれに対応するように規定されている。受信ウエイトベクトル計算部54は、受信したトレーニング信号をもとに、複数のアンテナ12にそれぞれ対応した受信応答ベクトルを計算する。受信応答ベクトルの計算方法は、前述の通りなので、説明を省略する。また、受信されるトレーニング信号には、前述のごとく、OFDM変調方式が適用されており、複数のサブキャリアが使用されている。そのため、受信応答ベクトルは、複数のサブキャリアのそれぞれに対して計算される。
【0135】
相関計算部70は、受信応答ベクトルから、複数のアンテナ12にそれぞれ対応した受信応答ベクトル間の相関を計算する。図1において、第1アンテナ12aに対応した伝送路特性、すなわち受信応答ベクトルは、「h11」、「h12」、「h13」、「h14」と示されているが、ここでは、これらをまとめて「h1」と総称し、アンテナ12の数を「2」とする。以上のように想定すれば、相関計算部70は、次の通り、相関値Sを計算する。
【数5】

このような相関値Sは、ひとつのサブキャリアに対応したものであり、相関計算部70は、複数のサブキャリアに対応した相関値Sをそれぞれ導出する。また、数5のうちの分子が、相関値Sであってもよい。
【0136】
電力比計算部72は、受信応答ベクトルから、複数のアンテナにそれぞれ対応した受信応答ベクトル間の電力比を計算する。電力比計算部72は、次の通り、電力比Rを計算する。
【数6】

このような電力比Rは、ひとつのサブキャリアに対応したものであり、電力比計算部72は、複数のサブキャリアに対応した電力比Rをそれぞれ導出する。
【0137】
処理対象決定部74は、複数のサブキャリアのそれぞれに対応した複数の相関値Sと複数の電力比Rを入力する。処理対象決定部74は、複数の相関値Sと複数の電力比Rから、データレートを決定する際に使用する対象を決定する。決定方法のひとつは、複数のサブキャリアのいずれかに対する相関値Sと電力比Rを選択することである。その際、図示しない測定部が、サブキャリアのそれぞれに対する信号強度を測定し、処理対象決定部74は、信号強度の大きいサブキャリアを選択する。あるいは、複数の相関値Sと複数の電力比Rに対して、それぞれ統計処理、例えば平均を実行し、統計処理された相関値Sと統計処理された電力比Rを計算する。以下、処理対象決定部74によって決定された相関値Sと電力比Rも、相関値Sと電力比Rという。
【0138】
レート決定部76は、処理対象決定部74からの相関値Sと電力比Rとをもとに、データに対するデータレートを決定する。その際、記憶部78に記憶された判定基準を参照する。図18は、記憶部78に記憶された判定基準の構造を示す。判定基準は、相関値と電力比によって二次元空間を形成するように規定されており、図示のごとく二次元空間は、複数の部分領域「A」、「B」、「C」、「D」によって分割されている。ここで、部分領域「A」から「D」のそれぞれは、所定のデータレートに対応している。例えば、アンテナ12の本数に対応させれば、「A」が「4本」に対応し、「B」が「3本」に対応し、「C」が「2本」に対応し、「D」が「1本」に対応する。
【0139】
なお、変調方式と符号化率も同様に規定されてもよく、これらの組合せによって、二次元空間がさらに多くの部分領域によって分割されていてもよい。図17に戻る。レート決定部76は、入力した相関値Sと電力比Rを判定基準に対応させ、入力した相関値Sと電力比Rが含まれる部分領域を特定する。さらに、レート決定部76は、特定された部分領域から予め規定されたデータレートを導出する。なお、制御部30は、以上の処理をレート要求信号を受けつけたときに実行する。また、レート情報を送信する際に、決定したデータレートを含める。なお、レート決定部76は、処理対象決定部74からの相関値Sと電力比Rのいずれか一方をもとに、データに対するデータレートを決定してもよい。その際、処理を簡易にできる。
【0140】
次に、図3(b)に示したバーストフォーマットを変形させたバーストフォーマットを説明する。図3(b)のごとく、トレーニング信号は、第2無線装置10bに複数の伝送路を推定させるために、複数のアンテナ12から送信される。前述のごとく、「第1MIMO−STS」等の部分は、第2無線装置10bにAGCの利得を設定させ、「第1MIMOーLTS」等の部分は、第2無線装置10bに伝送路を推定させる。図3(b)の構成では、以下に示す状況において、第1データ、第2データの受信特性が悪化するおそれがある。データが送信されないアンテナ、すなわち第3アンテナ12c、第4アンテナ12dからの伝送路における伝搬損失が、それら以外のアンテナからの伝送路における伝搬損失よりも小さい場合、「第3MIMO−STS」と「第4MIMO−STS」のために、第2無線装置10bでの受信強度がある程度大きくなる。そのため、AGCは、利得を低い値に設定する。その結果、「第1データ」と「第2データ」を復調する際に、利得が十分でなくなり、誤りが生じやすくなる。ここでは、このような伝送品質の悪化を抑制するためのバーストフォーマットを説明する。なお、バーストフォーマットは、制御部30からの指示にもとづき、処理部22において形成される。
【0141】
図19(a)−(b)は、通信システム100でのバーストフォーマットの別の構成を示す。図19(a)は、3つのMIMO−LTSが3つのアンテナ12にそれぞれ割り当てられ、ふたつのデータがふたつのアンテナ12にそれぞれ割り当てられている場合に相当する。ここで、「Legacy STS」から「MIMOシグナル」までは、図3(b)と同一であるので、説明を省略する。「MIMO−LTS」は、「MIMO−STS」を送信するためのアンテナ12以外のアンテナ12も含んだ3つのアンテナ12のそれぞれに割り当てられる。すなわち、「MIMO−LTS」を送信すべきアンテナ12の数は、推定すべき伝送路の数に応じて決定される。一方、「MIMO−STS」を送信すべきアンテナ12の数は、「データ」を送信すべきアンテナ12の数に合わされる。すなわち、「MIMO−STS」と「データ」は、ふたつずつ規定され、さらにそれぞれは、同一のふたつのアンテナ12に割り当てられる。そのため、「データ」が受信されるときの信号強度が、AGCの利得を設定する際において「MIMO−STS」が受信されるときの信号強度に近くなる。その結果、AGCの利得による受信品質の悪化を抑制できる。
【0142】
図19(a)のバーストフォーマットにおいて、「MIMO−STS」は、アンテナ12から送信される。ここで、「第1MIMO−STS」と「第2MIMO−STS」は、互いに異なったサブキャリアを使用するように規定される。例えば、「第1MIMO−STS」は奇数番目のサブキャリア番号のサブキャリアを使用し、「第2MIMO−STS」は偶数番目のサブキャリア番号のサブキャリアを使用する。このようなサブキャリアの使用に関する両者の関係は、「トーン・インターリーブ」と呼ばれる。さらに、「MIMO−LTS」では、3つのアンテナ12の間において、トーン・インターリーブが実行される。「第1MIMO−LTS」等をトーン・インターリーブする際に、「第1MIMO−LTS」等のOFDMシンボル数が、トーン・インターリーブを実行しない場合の3倍に延長される。
【0143】
図19(b)は、ふたつのMIMO−LTSがふたつのアンテナ12にそれぞれ割り当てられ、ひとつのデータがひとつのアンテナ12に割り当てられている場合に相当する。前述のごとく、「データ」がひとつの場合、「MIMO−STS」は、「Legacy STS」と共用できる。「Legacy STS」は、MIMOシステムに対応していない通信システムとの互換性を保つために必要な信号であるので、省略できない。そのため、「MIMO−STS」が省略される。「Legacy STS」が「MIMO−STS」に相当するともいえる。
【0144】
図20は、通信システム100でのバーストフォーマットのさらに別の構成を示す。これは、図19(a)と同様に、3つのMIMO−LTSが3つのアンテナ12にそれぞれ割り当てられ、ふたつのデータがふたつのアンテナ12にそれぞれ割り当てられている場合に相当する。また、「MIMO−LTS」に関しては、図19(a)と同様である。制御部30は、「MIMO−LTS」を送信すべきアンテナ12の数まで、「MIMO−STS」を送信すべきアンテナ12の数を増加させる。すなわち、図示のごとく、アンテナ12の数を図19(a)の「2」から図20の「3」に増加させる。さらに、増加される前のアンテナ12のそれぞれに対応したデータを分割し、分割したデータを増加したアンテナ12に対応させる。
【0145】
ここで、増加される前のアンテナ12のそれぞれに対応したデータは、例えば、図19(a)の「第2データ」に相当する。制御部30は、「第2データ」を図20の「第1ハーフデータ」と「第2ハーフデータ」に分割する。さらに、制御部30は、データを分割する際に、データの分割をサブキャリアを単位にして実行する。すなわち、「第1ハーフデータ」と「第2ハーフデータ」とは、トーン・インターリーブの関係にある。この場合も、「データ」が受信されるときの信号強度が、AGCの利得を設定する際において「MIMO−STS」が受信されるときの信号強度に近くなる。その結果、AGCの利得による受信品質の悪化を抑制できる。
【0146】
図21(a)−(d)は、通信システム100でのバーストフォーマットのさらに別の構成を示す。これも、図19(a)と同様に、3つのMIMO−LTSが3つのアンテナ12にそれぞれ割り当てられ、ふたつのデータがふたつのアンテナ12にそれぞれ割り当てられている場合に相当する。また、「MIMO−STS」と「データ」に関しては、図19(a)と同様である。制御部30は、「MIMO−LTS」のうち、「MIMO−STS」を送信するためのアンテナ12に対応した部分と、「MIMO−STS」を送信するためのアンテナ12以外のアンテナ12に対応した部分とを異なったタイミングに配置させる。ここで、「MIMO−STS」を送信するためのアンテナ12は、第1アンテナ12aと第2アンテナ12bである。
【0147】
そのため、これらに対応した部分が「第1MIMO−LTS」と「第2MIMO−LTS」に相当する。一方、「MIMO−STS」を送信するためのアンテナ12以外のアンテナ12は、第3アンテナ12cであり、そのため、これに対応した部分が「第3MIMO−LTS」に相当する。図示のごとく、これらは、タイミングをずらして配置されている。なお、「第3MIMO−LTS」は、すべてのサブキャリアを使用するように規定されている。このようなフォーマットによれば、「第1MIMO−LTS」と「第2MIMO−LTS」をAGCによって増幅する際に、「第3MIMO−LTS」の影響を受けないので、これらによる伝送路の推定をより正確にできる。この場合も、「データ」が受信されるときの信号強度が、AGCの利得を設定する際において「MIMO−STS」が受信されるときの信号強度に近くなる。その結果、AGCの利得による受信品質の悪化を抑制できる。
【0148】
図21(b)は、ふたつのMIMO−LTSがふたつのアンテナ12にそれぞれ割り当てられ、ひとつのデータがひとつのアンテナ12に割り当てられている場合に相当する。図示のごとく、図21(a)に対応した構成になっている。図21(c)も図21(b)と同一の状況であるが、「第1MIMO−STS」を省略している。「Legacy STS」が「MIMO−STS」に相当するともいえる。図21(d)も図21(b)同一の状況であるが、図21(c)に比べて、さらに「MIMOシグナル」を省略している。そのため、バースト信号におけるオーバーヘッドを小さくできる。この場合、MIMOシステムのための制御信号を含んでいないので、予め当該バースト信号が送信されることを認識しておく必要がある。例えば、予めトレーニング要求信号が送信されている。
【0149】
以下、図20でのバーストフォーマットの変形例を説明する。図20のバーストフォーマットでは、MIMO−STSの数、MIMO−LTSの数、データの数を同一にしている。すなわち、3つのアンテナ12から、MIMO−STS、MIMO−LTS、データがそれぞれ送信される。このようなバーストフォーマットによれば、MIMO−STSとデータの数が同一なので、受信側において、データに対して受信処理を実行する際のAGCの設定に含まれる誤差が、低減される。また、MIMO−LTSが、複数のアンテナ12から送信されるので、受信側において、複数のアンテナ12に対応した伝送路の推定が可能になる。さらに、MIMO−STSとMIMO−LTSの数が同一なので、受信側において、MIMO−LTSから推定される伝送路の精度が高くなる。
【0150】
さらに、以下に説明する変形例では、以下のような利点が加えられる。例えば、アンテナ12の数が「3」であり、送信すべきデータが「2」系列である場合、送信すべき「2」系列のデータのいずれかが分割されることによって、データが「3」系列にされてから、それらが「3」つのアンテナ12のそれぞれに割り当てられる。このような場合において、データの分割およびアンテナ12の割り当ての組合せは、複数存在する。さらに、アンテナ12の数が増加すると、組合せの数も増加する。すなわち、データ系列のいずれかを分割して、アンテナ12のいずれかに割り当てる場合に、処理が複雑になることもあり得る。変形例のひとつ目は、送信すべきデータの系列の数が、アンテナ12の数よりも少ない場合であっても、処理量を削減しつつ、アンテナ12にデータを割り当てることを目的とする。このとき、アンテナ12の数は、少なくともMIMO−LTSが送信されるアンテナ12の数であってもよい。
【0151】
図22(a)−(b)は、図20でのバーストフォーマットを変形させたバーストフォーマットの構成を示しており、これは、ひとつ目の変形例に相当する。図22(a)−(b)は、これまでと同様に、最上段が第1アンテナ12aに対応する信号、中段が第2アンテナ12bに対応する信号、最下段が第3アンテナ12cに対応する信号を示す。これらがまとめられてバースト信号と呼ばれることもあれば、あるいは、ひとつのアンテナ12から送信される信号がバースト信号と呼ばれることもある。ここでは、それらを区別せずに使用する。なお、バースト信号には、既知信号としての「MIMO−LTS」等やデータが含まれる。図22(a)において、Legacy STS(以下、「L−STS」という)、Legacy−LTS(以下、「L−LTS」という)、Legacy シグナル(以下、「L−シグナル」という)、MIMO シグナル(以下、「MIMOシグナル」という)は、第1アンテナ12aのみに割り当てられる。
【0152】
これらに続く構成は、以下のようになる。なお、以下の説明において、データは、ふたつのアンテナ12に対応すべきものであるとする。すなわち、データの系列の数が、アンテナ12の数よりも小さい場合を想定する。図6の制御部30は、MIMO−LTSを送信すべきアンテナ12の数まで、MIMO−STSおよびデータを送信すべきアンテナ12の数を増加させる。すなわち、制御部30は、MIMO−LTSを送信すべきアンテナ12のうちの少なくともひとつにデータが対応している場合、対応すべきアンテナ12の数を増加させることによって、MIMO−LTSを送信すべきアンテナ12に、データを対応させる。ここで、MIMO−LTSを送信すべきアンテナ12の数は、「3」であるので、MIMO−STSおよびデータおよびデータを送信すべきアンテナ12の数も「3」になる。さらに、増加される前のアンテナ12のそれぞれに対応したデータ、すなわち「2」系列のデータを分割してから、MIMO−LTSを送信すべきアンテナ12の数のアンテナ12のそれぞれに、分割したデータを対応させる。
【0153】
これをさらに具体的に説明すると、制御部30は、IF部26に、「2」系列のデータをひとつにまとめさせ、まとめたデータを「3」つに分割して「3」つのアンテナ12に割り当てる。なお、データが、「2」系列に相当するものとし、ひとつのデータとしてもよい。その際は、データをまとめることなく、データは、「3」つに分割される。なお、アンテナ12の数は、「3」以外であってもよい。ここで、データの分割は、例えば、複数のアンテナ12のそれぞれに対して、ほぼ均等のデータ量となるようになされる。また、予め定められた規則にしたがって、データの分割がなされてもよい。以上の処理の結果、図22(a)のように、MIMO−STS、MIMO−LTS、データが、3つのアンテナ12にそれぞれ割り当てられる。図においてデータは、「第1分割データ」、「第2分割データ」、「第3分割データ」と示される。
【0154】
制御部30は、前述のごとく、MIMO−LTSとデータに対して複数のサブキャリアを使用しつつ、複数のアンテナ12のそれぞれを単位にして、MIMO−LTSのそれぞれに使用すべきサブキャリアの組合せを変えている。すなわち、第1アンテナ12aから第3アンテナ12cにそれぞれ対応したMIMO−LTSは、異なったサブキャリアを使用する。図22(a)において、第1MIMO−LTS(1)は、全サブキャリアのうちの1/3のサブキャリアを使用し、第2MIMO−LTS(1)も、全サブキャリアのうちの1/3のサブキャリアを使用し、第3MIMO−LTS(1)も、全サブキャリアのうちの1/3のサブキャリアを使用する。さらに、第1MIMO−LTS(1)から第3MIMO−LTS(1)において使用されるサブキャリアは、重なっていないものとする。第1MIMO−LTS(2)から第3MIMO−LTS(2)でも同様の関係が成り立ち、第1MIMO−LTS(3)から第3MIMO−LTS(3)でも同様の関係が成り立つ。また、第1MIMO−LTS(1)、第1MIMO−LTS(2)、第1MIMO−LTS(3)でも、互いに異なったサブキャリアを使用する。なお、第1MIMO−LTS(1)、第1MIMO−LTS(2)、第1MIMO−LTS(3)は、異なったシンボルに割り当てられたMIMO−LTSを示す。
【0155】
以上の規則は、ひとつのシンボルの期間に対して、複数のアンテナ12に割り当てられたMIMO−LTSのそれぞれが、互いに異なったサブキャリアを使用しているといえる。また、ひとつのアンテナ12に割り当てられたMIMO−LTSであって、かつ複数のシンボルにわたるMIMO−LTSのそれぞれは、互いに異なったサブキャリアを使用しつつ、全体として、使用されるべきすべてのサブキャリアを使用するといえる。さらに、MIMO−LTSを送信すべきアンテナに、データを対応させる際に、データと同一のアンテナ12から送信されるMIMO−LTSでのサブキャリアの組合せを当該データに使用する。例えば、第1分割データに使用するサブキャリアと、第1MIMO−LTS(1)に使用するサブキャリアを同一にする。このように処理することによって、データを分割するための処理量を削減しつつ、複数のアンテナ12のそれぞれにデータの割り当てが可能になる。
【0156】
また、先頭のMIMO−LTSとデータに使用されるサブキャリアが同一であるので、図示しない受信装置では、複数のシンボルに配置されたMIMO−LTSを受信すると、少なくとも先頭のMIMO−LTSから伝送路推定を実行し、その結果をもとに、データを復調する。先頭のMIMO−LTS以外のMIMO−LTSに使用されるサブキャリアは、データに使用されるサブキャリアと異なっているので、これらを復調に使用しなくても、復調の品質の悪化は抑制される。そのため、受信装置は、先頭のMIMO−LTS以外のMIMO−LTSに対する処理をスキップしてもよい。その結果、処理量を低減できると共に、IEEE802.11aの規格に準拠した受信装置と同様の処理を適用できる。
【0157】
図22(b)は、図22(a)の変形例であり、MIMO−STS以降は、図22(a)と同一である。L−STSからMIMOシグナルが、第2アンテナ12b、第3アンテナ12cにも割り当てられる。その際、例えば、第2アンテナ12b、第3アンテナ12cに割り当てられるL−STSには、CDD(Cyclic Delay Diversity)がなされている。すなわち、第2アンテナ12bに割り当てられるL−STSには、第1アンテナ12aに割り当てられるL−STSに対して、タイミングシフトがなされている。第3アンテナ12cに割り当てられるL−STSも同様である。
【0158】
図23は、図22(a)−(b)のバーストフォーマットに対応した送信手順を示すフローチャートである。トレーニング信号の送信が必要であり(S220のY)、かつデータを送信すべきアンテナ12の数が、トレーニング信号を送信すべきアンテナ12の数よりも小さければ(S222のY)、制御部30は、複数のアンテナ12のそれぞれを単位にして、トレーニング信号に対応したサブキャリアを取得する(S224)。さらに、制御部30は、取得したサブキャリアを使用しつつ、トレーニング信号を送信すべきアンテナ12に、データを対応させる(S226)。すなわち、複数のアンテナ12のそれぞれに対応したデータは、トレーニング信号と同様に、互いにトーン・インターリーブされている。
【0159】
制御部30は、少なくともトレーニング信号とデータから、バースト信号を生成する(S228)。一方、データを送信すべきアンテナ12の数が、トレーニング信号を送信すべきアンテナ12の数よりも小さくなければ(S222のN)、すなわちデータを送信すべきアンテナ12の数と、トレーニング信号を送信すべきアンテナ12の数が等しければ、制御部30は、少なくともトレーニング信号とデータから、バースト信号を生成する(S228)。無線装置10は、バースト信号を送信する(S230)。また、トレーニング信号の送信が必要でなければ(S220のN)、処理を終了する。
【0160】
次に、図20のバーストフォーマットのふたつ目の変形例を説明する。複数のアンテナ12からMIMO−LTSを送信するときに、複数のアンテナ12のうちのいずれかからの無線伝送路の特性が、データの伝送に適していない場合、当該アンテナ12から送信されるデータが誤る可能性がある。変形例のふたつ目は、複数のアンテナ12からデータを送信する場合であっても、データが誤る可能性を低くすることを目的とする。なお、本変形例におけるバーストフォーマットは、図20、図22(a)−(b)によって示される。
【0161】
図6の制御部30は、前述のごとく、MIMO−LTSを送信すべきアンテナ12のうちの少なくともひとつにデータが対応している場合、図20、図22(a)−(b)のごとく、対応すべきアンテナ12の数を増加させることによって、MIMO−LTSを送信すべきアンテナ12に、データを対応させる。また、制御部30は、バースト信号に含まれるデータのデータレートを決定している。さらに、制御部30は、MIMO−LTSを送信すべきアンテナ12に、データを対応させる場合、MIMO−LTSを送信すべきアンテナ12に、データを対応させる前でのデータレートよりも、低いデータレートに決定する。例えば、MIMO−LTSを送信すべきアンテナ12の数が「3」であり、データが「2」系列である場合、「2」系列のときのデータのデータレートが、100Mbpsであれば、「3」系列にしたときのデータのデータレートが、50Mbpsにされる。なお、「MIMO−LTSを送信すべきアンテナ12に、データを対応させる前でのデータレート」とは、それまでの通信において使用されていたデータレートであってもよく、あるいは、伝送路の特性に応じて決定されたデータレートであってもよい。ここで、データレートは、前述のごとく、変調方式、誤り訂正の符号化率、アンテナ12の数によって決定される。
【0162】
図24は、図22(a)−(b)のバーストフォーマットに対応した別の送信手順を示すフローチャートである。トレーニング信号の送信が必要であり(S200のY)、かつデータを送信すべきアンテナ12の数が、トレーニング信号を送信すべきアンテナ12の数よりも小さければ(S202のY)、制御部30は、トレーニング信号を送信すべきアンテナ12に、データを対応させる(S204)。さらに、制御部30は、データのデータレートを下げる(S206)。制御部30は、少なくともトレーニング信号とデータから、バースト信号を生成する(S208)。一方、データを送信すべきアンテナ12の数が、トレーニング信号を送信すべきアンテナ12の数よりも小さくなければ(S202のN)、すなわちデータを送信すべきアンテナ12の数と、トレーニング信号を送信すべきアンテナ12の数が等しければ、制御部30は、少なくともトレーニング信号とデータから、バースト信号を生成する(S208)。無線装置10は、バースト信号を送信する(S210)。また、トレーニング信号の送信が必要でなければ(S200のN)、処理を終了する。
【0163】
本発明の実施例によれば、通信対象の無線装置に対して要求信号を送信する際に、複数のアンテナからトレーニング信号を送信するので、通信対象の無線装置でのレート情報であって、かつトレーニング信号にもとづいて生成されたレート情報を取得でき、レート情報の精度を向上できる。また、トレーニング信号を使用することによって、様々な伝送路の影響を考慮しながらレート情報が決定されるので、レート情報の精度を向上できる。また、要求信号とトレーニング信号とを連続して送信するので、最新のレート情報を取得できる。また、最新のレート情報を取得できるので、伝搬路が変動する場合であっても、レート情報の誤差を小さくできる。また、通信対象の無線装置のレート情報が必要なときに、要求信号を送信することによって、レート情報が定期的に送信されない場合であっても、正確なレート情報を取得できる。また、レート情報の精度が向上することによって、データの誤りが低減し、データを伝送する際の制御の精度を向上できる。また、レート要求信号やトレーニング信号を組合せて送信するので、実効的なデータレートの低下を抑制できる。
【0164】
また、トレーニング信号を送信すべきアンテナの数を削減するので、消費電力を低減できる。また、通信に使用すべきアンテナからはトレーニング信号を送信するので、特性の悪化を抑制できる。また、消費電力を低減できるので、バッテリー駆動の場合、動作期間を長くできる。また、消費電力を低減できるので、無線装置を小型化できる。また、信号強度の高いアンテナを優先的に選択するので、データの伝送品質の悪化を抑制できる。また、無線品質に応じてアンテナを選択するので、消費電力を低減しつつ、データの伝送品質の悪化を抑制できる。また、データを受信すべきアンテナから既知信号を送信するので、通信対象の無線装置において導出される送信ウエイトベクトルの悪化を抑制し、かつデータを受信すべきアンテナを選択するので、消費電力を低減できる。また、導出される送信ウエイトベクトルを正確にできるので、アンテナ指向性の悪化を抑制できる。
【0165】
また、トレーニング信号を送信する際に、ビームフォーミングを実行することによって、通信対象の無線装置における信号強度を増加でき、より高速な値を有したレート情報を取得できる。また、実際にデータを送信する際もビームフォーミングを実行するので、データの送信の際に適合したデータレートを取得できる。また、データレートを決定する際に、受信応答ベクトル間の相関値と受信応答ベクトル間の強度比を考慮するので、複数のアンテナのそれぞれから送信された信号間の影響を反映できる。また、決定したレート情報の正確性を向上できる。また、MIMOシステムにおいて、相関値が小さくなれば伝送特性が向上し、また強度比が小さくなれば向上するので、このような特性を反映するようにデータレートを決定できる。また、相関値と強度比にもとづいたデータレートの決定は、複数のキャリアを使用するシステムに適用できる。また、トレーニングを受信する際に、レート要求信号も受信するので、決定したレート情報を通知でき、精度の高いレート情報を供給できる。
【0166】
また、MIMO−STSとデータを送信するためのアンテナを同一にするので、受信側においてAGCの利得を設定する際のMIMO−STSが受信されるときの信号強度と、データが受信されるときの信号強度を近くできる。また、AGCの利得による受信品質の悪化を抑制できる。また、MIMO−STSを送信するためのアンテナに対応した部分に対して、MIMOを送信するためのアンテナ以外のアンテナに対応した部分による影響を小さくできるので、受信側において、MIMO−STSを送信するためのアンテナに対応した部分での伝送路推定の精度を向上できる。また、分割されたデータ間の干渉を小さくできる。
【0167】
また、MIMO−LTSを送信すべきアンテナに、データを対応させる場合において、対応させられたアンテナからの無線伝送路の特性が、データの伝送に適していない場合であっても、データレートを低くすることによって、データの誤りの発生を低減できる。また、MIMO−LTSを送信するアンテナの数の増加に応じて、MIMO−STSを送信するアンテナの数も増加でき、かつMIMO−STSを送信するアンテナの数と同一のデータの系列を送信できる。また、データの系列の数を増加させた場合においても、データの伝送品質の低下を抑制できる。また、データを複数のアンテナに対応させる場合において、ひとつのアンテナに対応したMIMO−LTSとデータに同一のサブキャリアを使用することによって、それぞれのデータに対して使用すべきサブキャリアの選択を容易にできる。また、MIMO−LTSを送信すべきアンテナの数や、データの系列の数が変化する場合であっても、アンテナへのデータの割当を容易にできる。また、図20に対するふたつの変形例を組合せることによって、両方の効果を得ることができる。
【0168】
(実施例2)
本発明の実施例2は、実施例1と同様に、MIMOシステムに関し、特に、MIMOシステムにおける送信装置に関する。本実施例に係る送信装置は、実施例1における第1無線装置や第2無線装置での送信機能に相当する。さらに、実施例1でのトレーニング信号を送信すべき状況と同一の状況において、送信装置は、トレーニング信号を送信する。ここでは、トレーニング信号を含んだバーストフォーマットを中心に説明し、トレーニング信号を送信すべき状況は、実施例1と同一であるので説明を省略する。送信装置は、複数のアンテナの数に応じた複数の系列のバースト信号を送信し、複数のMIMO−STSを複数の系列のバースト信号に配置させる。また、送信装置は、複数のMIMO−STSに続いて、複数のMIMO−LTSを複数の系列のバースト信号に配置させる。さらに、送信装置は、複数の系列のバースト信号のうちの一部にデータを配置させる。送信装置は、データにステアリング行列を乗算することによって、複数の系列の数までデータを増加させる。また、送信装置は、MIMO−LTSに対してもステアリング行列を乗算する。しかしながら、送信装置は、MIMO−STSに対してステアリング行列を乗算しない。以下、ステアリング行列を乗算した複数の系列のバースト信号も、これまでと区別せずに、「複数の系列のバースト信号」という。
【0169】
ここで、MIMO−STSは、所定の周期を有している。具体的には、1.6μsの周期の信号にガードインターバルが付加されている。なお、前述のステアリング行列には、系列単位に、循環的なタイムシフトを実行させる成分が含まれている。循環的なタイムシフトは、CDD(Cyclic Delay Diversity)と呼ばれるものであり、ここでは、MIMO−LTSに含まれるパターンの周期に対して、循環的なタイムシフトがなされる。データに対しても同様の処理がなされる。また、タイムシフト量は、複数の系列のバースト信号を単位にして異なっているが、これらのタイムシフト量のうちの少なくともひとつは、MIMO−STSでの周期以上に規定されている。以上の処理のごとく、送信装置は、複数の系列のバースト信号を変形させ、変形させた複数の系列のバースト信号を複数のアンテナからそれぞれ送信する。
【0170】
以上のような実施例に対応した課題は、以下のように示されてもよい。すなわち、通信対象の無線装置における伝送路推定の精度が向上するようなバーストフォーマットによって、トレーニング信号を送信したい。また、通信対象の無線装置におけるレート情報の精度が向上するようなバーストフォーマットによって、トレーニング信号を送信したい。また、このようなトレーニング信号を送信する場合であっても、データの通信品質の悪化を抑えるようなバーストフォーマットによって、データを送信したい。また、データを受信させるために、トレーニング信号を有効に利用したい。
【0171】
図25は、本発明の実施例2に係る送信装置300の構成を示す。送信装置300は、誤り訂正部310、インターリーブ部312、変調部314、プリアンブル付加部316、空間分散部318、無線部20と総称される第1無線部20a、第2無線部20b、第3無線部20c、第4無線部20d、アンテナ12と総称される第1アンテナ12a、第2アンテナ12b、第3アンテナ12c、第4アンテナ12dを含む。ここで、図25の送信装置300は、図6の第1無線装置10aの一部に相当する。
【0172】
誤り訂正部310は、誤り訂正のための符号化をデータに行う。ここでは、畳込み符号化を行うものとし、その符号化率は予め規定された値の中から選択する。インターリーブ部312は、畳込み符号化したデータをインターリーブする。さらに、インターリーブ部312は、データを複数の系列に分離してから出力する。ここでは、ふたつの系列に分離する。ふたつの系列のデータは、互いに独立したデータといえる。
【0173】
変調部314は、ふたつの系列のデータのそれぞれに対して、変調を実行する。プリアンブル付加部316は、変調されたデータに対してプリアンブルを付加する。そのため、プリアンブル付加部316は、プリアンブルとして、MIMO−STS、MIMO−LTS等を記憶する。プリアンブル付加部316は、複数の系列にそれぞれ配置されるMIMO−STSとMIMO−LTSと、複数の系列のうちの少なくともひとつに配置されるデータとを含んだ複数の系列のバースト信号を生成する。前述のごとく、データは、ふたつの系列によって形成されている。ここで、複数の系列を「4」とするので、4つの系列のバースト信号に、MIMO−STSとMIMO−LTSがそれぞれ配置され、4つの系列のバースト信号のうちのふたつにデータが配置される。その結果、プリアンブル付加部316からは、4つの系列のバースト信号が出力される。
【0174】
ここで、MIMO−STSの詳細については、説明を省略するが、例えば、少なくとも、複数の系列のバースト信号のうちのひとつに対応したSTSは、他の系列のバーストに対応したSTSに対して、少なくとも一部が異なったサブキャリアを使用するように規定されてもよい。また、STSは、STSのそれぞれに使用されるべきサブキャリアの数が等しく、かつ互いに異なったサブキャリアを使用するように規定されてもよい。また、前述のごとく、複数の系列のバースト信号のそれぞれは、複数のサブキャリアを使用しており、複数の系列のバースト信号に配置されるMIMO−LTSは、各系列に対して、異なったサブキャリアを使用する。すなわち、トーン・インターリーブがなされる。なお、複数の系列のバースト信号のそれぞれを「バースト信号」と呼んでもよく、複数の系列のバースト信号をまとめて「バースト信号」と呼んでもよいものとするが、ここでは、これらを区別せずに使用するものとする。
【0175】
空間分散部318は、複数の系列のバースト信号のうち、MIMO−LTSとデータに対してステアリング行列をそれぞれ乗算することによって、ステアリング行列が乗算されたMIMO−LTSと、複数の系列の数まで増加させたデータとを生成する。ここで、空間分散部318は、乗算を実行する前に、入力したデータの次数を複数の系列の数まで拡張する。入力したデータの数は、「2」であり、ここでは、「Nin」によって代表させる。そのため、入力したデータは、「Nin×1」のベクトルによって示される。また、複数の系列の数は、「4」であり、ここでは、「Nout」によって代表させる。空間分散部318は、入力したデータの次数をNinからNoutに拡張させる。すなわち、「Nin×1」のベクトルを「Nout×1」のベクトルに拡張させる。その際、Nin+1行目からNout行目までの成分に「0」を挿入する。
【0176】
また、ステアリング行列Sは、次のように示される。
【数7】

ステアリング行列は、「Nout×Nout」の行列である。また、Wは、直交行列であり、「Nout×Nout」の行列である。直交行列の一例は、ウォルシュ行列である。ここで、lは、サブキャリア番号を示しており、ステアリング行列による乗算は、サブキャリアを単位にして実行される。さらに、Cは、以下のように示され、CDD(Cyclic Delay Diversity)のために使用される。
【数8】

【0177】
ここで、δは、シフト量を示す。すなわち、空間分散部318は、複数の系列のそれぞれに対応したシフト量によって、直交行列が乗算されたMIMO−LTS内での循環的なタイムシフトを系列単位に実行しつつ、複数の系列の数まで増加させたデータ内での循環的なタイムシフトを系列単位に実行する。なお、MIMO−LTSの構造は、IEEE802.11a規格におけるLTSであるLegacy LTSと同様の構造を有している。また、シフト量は、系列を単位にして異なった値に設定される。その際に、複数の系列のそれぞれに対応したシフト量のうちの少なくともひとつが、MIMO−STSが有した所定の周期以上となるように設定される。MIMO−STSが有した周期は、1.6μsであるので、シフト量のうちの少なくともひとつは、例えば1.6μsとなるように設定される。そのような場合、MIMO−STSに対して、タイムシフトを行っても、シフトが発生しないことと等価になる。そのため、ここでは、MIMO−STSに対して、タイムシフトを行わない。以上の処理の結果、空間分散部318は、複数の系列のバースト信号を変形させる。
【0178】
無線部20は、アンテナ12と同一の数だけ設けられる。無線部20は、変形された複数の系列のバースト信号を送信する。その際、無線部20は、変形された複数の系列のバースト信号を複数のアンテナ12に対応させながら送信する。また、無線部20は、図示しないIFFT部、GI部、直交変調部、周波数変換部、増幅部を含む。IFFT部は、IFFTを行い、複数のサブキャリアキャリアを使用した周波数領域の信号を時間領域に変換する。GI部は、時間領域のデータに対して、ガードインターバルを付加する。直交変調部は、直交変調を実行する。周波数変換部は、直交変調された信号を無線周波数の信号に周波数変換する。増幅部は、無線周波数の信号を増幅するパワーアンプである。なお、空間分散部318は、図示しないIFFT部の後段に設けられてもよい。
【0179】
図26(a)−(b)は、送信装置300において生成されるバースト信号のバーストフォーマットを示す。図26(a)は、プリアンブル付加部316から出力される複数の系列のバースト信号におけるバーストフォーマットを示す。図26(a)は、図3(b)と同等であるので、説明を省略する。ここで、複数の系列である「4」つの系列のバースト信号のそれぞれに「4」つのMIMO−STSと「4」つのMIMO−LTSが付加されている。一方、複数の系列のうちの少なくともひとつである「2」つの系列のデータが、「第1データ」、「第2データ」として付加されている。図26(b)は、空間分散部318によって変形された複数の系列のバースト信号を示す。MIMO−STSは、図26(a)と同一である。図26(a)のMIMO−LTSは、ステアリング行列の乗算の結果、「MIMO−LTS’」となる。図26(b)では、これを「第1MIMO−LTS’」から「第4MIMO−LTS’」として示す。図26(a)の「第1データ」と「第2データ」は、ステアリング行列の乗算の結果、4つの系列のデータとなる。図26(b)では、これを「第1データ’」から「第4データ’」として示す。
【0180】
本発明の実施例によれば、データの系列の数がMIMO−LTSの系列の数よりも少なくても、直交行列による乗算と循環的なタイムシフト処理を実行するので、データの系列の数をMIMO−LTSの系列の数に一致できる。また、MIMO−LTSにも、データ系列と同様の処理を実行するので、通信対象となる無線装置に、データ受信の際に、MIMO−LTSを使用させられる。また、MIMO−STSには、データ系列と同様の処理を実行しないので、CDDにおけるタイムシフト量を大きくでき、通信対象となる無線装置における受信特性を改善できる。また、MIMO−LTSをすべてのアンテナから送信するので、受信側が、想定される伝送路を推定できる。また、データの系列の数がアンテナ数に等しくなくても、データにウォルシュ行列とCDDによる処理を実行することによって、すべてのアンテナから満遍なく信号を送信できる。また、データの電力をMIMO−LTSに合わせることができる。
【0181】
また、MIMO−LTSにもウォルシュ行列とCDDによる処理を実行するので、受信側において、MIMO−LTSによって推定した伝送路がデータの受信にそのまま使用できる。また、MIMO−LTSとデータに対して、十分大きなシフト量によって、CDDを実行すると、MIMO−LTSとデータの電力差が非常に小さくなるので、受信側でのAGCの設定の精度を向上できる。また、MIMO−STSに大きなシフト量によるタイムシフトが実行できないので、かかる場合に、MIMO−STSをすべてのアンテナに対応付けることによって、MIMO−STSとMIMO−LTSとの電力を合わせることができる。また、MIMO−STSに対して、CDDの処理を実行しなくても、MIMO−STSとMIMO−LTSの電力を合わせることができる。また、MIMO−LTSはトーン・インターリーブされているので、ウォルシュ行列とCDDによる処理によって、すべてのアンテナからMIMO−LTSを送信する場合であっても、送信電力を維持できる。また、ウォルシュ行列とCDDによる処理を行わない場合、3つのアンテナで2つの系列のデータを送信する場合、バースト信号内の各電力は、「3つのSTS」=「3つのLTS」>「2つのデータ」であるが、MIMO−LTSとデータに対してウォルシュ行列とCDDによる処理を行う場合、「3つのSTS」=「3つのLTS」=「3つのデータ」にできる。
【0182】
(実施例3)
実施例3は、実施例1と実施例2を組み合わせた実施例に相当する。すなわち、無線装置は、実施例1のようなバーストフォーマットによって構成されるトレーニング信号、すなわち複数の系列のバースト信号を生成する。また、無線装置は、生成した複数の系列のバースト信号に対して、実施例2のようなステアリング行列を乗算することによって、複数の系列のバースト信号を変形させる。さらに、無線装置は、変形させた複数の系列のバースト信号を複数のアンテナから送信する。ここで、無線装置は、複数の系列のバースト信号に含まれるMIMO−STS、MIMO−LTS、データのそれぞれにステアリング行列を乗算してもよい。
【0183】
実施例3に係る無線装置10は、図6の第1無線装置10aと同一のタイプである。また、無線装置10のうちの送信機能は、図25の送信装置300と同一のタイプである。制御部30やプリアンブル付加部316は、複数の系列のうちの少なくともひとつに配置されるMIMO−STSと、複数の系列のそれぞれに配置されるMIMO−LTSと、MIMO−STSと同一の系列に配置されるデータが含まれた複数の系列のバースト信号を生成する。また、制御部30やプリアンブル付加部316は、MIMO−LTSのうち、MIMO−STSを配置した系列に配置される部分と、MIMO−LTSのうち、MIMO−STSを配置した系列以外の系列に配置される部分とを異なったタイミングに配置させる。その結果、図21(a)のようなバーストフォーマットのバースト信号が生成される。さらに、空間分散部318は、生成された複数の系列のバースト信号に対して、ステアリング行列を乗算することによって、複数の系列のバースト信号を変形させる。空間分散部318は、MIMO−STSにもステアリング行列を乗算し、かつシフト量が任意の値にであるタイムシフトを行う。これら以外の動作は、実施例2と同一であるので、説明を省略する。
【0184】
図27は、本発明の実施例3に係るバーストフォーマットの構成を示す図である。図27は、空間分散部318から出力される複数の系列のバースト信号に対するバーストフォーマットに相当し、かつ図21(a)のバーストフォーマットにステアリング行列を乗算したバーストフォーマットに相当する。図27の「第1MIMO−STS’」から「第3MIMO−STS’」は、図21(a)の「第1MIMO−STS」と「第2MIMO−STS」とにステアリング行列を乗算した結果に相当する。このとき、ステアリング行列は、「3×3」の行列に相当するので、図21(a)の「第1MIMO−STS」と「第2MIMO−STS」には、「0」となる行が追加されることによって、「3×1」のベクトルに拡張される。図27の「第1MIMO−LTS’」から「第3MIMO−LTS’」は、図21(a)の「第1MIMO−LTS」と「第2MIMO−LTS」とにステアリング行列を乗算した結果に相当する。また、図27の「第4MIMO−LTS’」から「第6MIMO−LTS’」は、図21(a)の「第3MIMO−LTS」にステアリング行列を乗算した結果に相当する。データは、実施例2と同一である。
【0185】
なお、制御部30やプリアンブル付加部316において生成される複数の系列のバースト信号のバーストフォーマットは、図22(a)−(b)に対応してもよい。これらのバーストフォーマットの説明は、実施例1と同一であるので、省略するが、空間分散部318は、このようなバースト信号に対して、ステアリング行列を乗算する。また、以上のトレーニング信号である複数の系列のバースト信号は、実施例1において、説明したタイミングにて送信されればよい。すなわち、制御部30が、無線装置10との間の無線伝送路に応じたデータレートについての情報を当該無線装置10に提供させるためのレート要求信号を生成し、無線装置10が、生成したレート要求信号を送信する際に、トレーニング信号が使用されればよい。詳細は、実施例1と同一であるので、説明を省略する。実施例1における複数のアンテナ12が、複数の系列のバースト信号に置き換えられることによって、実施例1に記載の発明は、実施例3に適用される。実施例3においては、前述のごとく、複数の系列のバースト信号にステアリング行列を乗算し、ステアリング行列を乗算した複数の系列の信号を複数のアンテナ12から送信する。
【0186】
本発明の実施例によれば、通信対象の無線装置に対してレート要求信号を出力する際に、ステアリング行列を乗算しながら、複数の系列に配置されたMIMO−LTSを出力するので、通信対象の無線装置におけるデータレートの情報であって、かつMIMO−LTSにもとづいて新たに生成されたデータレートの情報を取得でき、情報の精度を向上できる。また、実施例1において示した様々なバーストフォーマットにステアリング行列を乗算することによって、実施例1において示した様々なバーストフォーマットを複数のアンテナから送信できる。また、データ数が複数のアンテナ数より小さい場合であっても、ステアリング行列を乗算することによって、複数のアンテナからデータ等を送信できる。また、データ数が複数のアンテナ数より小さい場合であっても、ステアリング行列を乗算することによって、複数のアンテナからデータ等を送信するときと同様の効果が得られる。
【0187】
(実施例4)
実施例4は、実施例1から実施例3に適用可能なバーストフォーマットに関する。ここで、バーストフォーマットは、実施例1のごとく、アンテナから出力されるバースト信号として規定されてもよく、あるいは実施例2や3のごとく、制御部やプリアンブル付加部によって生成されるバースト信号として規定されてもよい。また、実施例4に係るバーストフォーマットは、トレーニング信号を送信する際のバースト信号に使用されるが、当該バーストフォーマットのバースト信号を送信すべきタイミングは、実施例1のごとく、トレーニング要求信号を受けつけた後や、レート要求信号を送信する際であってもよい。
【0188】
実施例4に係る無線装置10は、図6の第1無線装置10aと同一のタイプである。ここで、3種類のバーストフォーマットを説明する。3種類のバーストフォーマットのそれぞれは、実施例1のごとく、アンテナから出力されるバースト信号として規定される場合、あるいは実施例2や3のごとく、制御部やプリアンブル付加部によって生成されるバースト信号として規定される場合に細分化される。また、バースト信号が送信されるタイミングに応じて細分化される。ここでは、主として、バーストフォーマットそのものを説明する。また、細分化に対する具体的な実施は、実施例1から3の記載にもとづいてなされるものとする。
【0189】
3種類のバーストフォーマットは、MIMO−LTSを送信すべきアンテナ12の数が、データを送信すべきアンテナ12の数よりも多い場合、あるいはMIMO−LTSを配置する系列の数が、データを配置する系列の数よりも多い場合の変形例に相当する。これは、図3(b)、図19(a)−(b)、図21(a)−(d)、図26(a)の変形例ともいえる。
【0190】
ひとつ目の変形例を説明する。ここでは、図19(a)を使用しながら、ひとつ目の変形例を説明する。図19(a)では、第1アンテナ12aから第3アンテナ12cに対応するようにMIMO−LTSが配置され、かつ第1アンテナ12aと第2アンテナ12bに対応するようにデータが配置されている。変形例は、MIMO−LTSを送信すべきアンテナ12(以下、このようなアンテナ12のすべて、あるいはひとつを「LTS用アンテナ12」という)の数がデータを送信すべきアンテナ12(以下、このようなアンテナ12のすべて、あるいはひとつを「データ用アンテナ12」という)の数よりも多い場合において、データ用アンテナ12の選択に関する。この変形例に対する課題は、以下のように示される。データが送信されないアンテナ12では、MIMO−STSも送信されない。そのため、当該アンテナ12から送信されたMIMO−LTSの信号強度が、他のアンテナ12から送信されたMIMO−LTSの信号強度よりも受信側において大きくなれば、受信されたMIMO−LTSに歪みが生じやすくなる。そのため、データに誤りが生じやすくなり、通信品質が悪化しやすくなる。
【0191】
変形例に係る無線装置10は、図11のステップ64のごとく、複数のアンテナ12のそれぞれを単位にして、通信対象の無線装置10から受信した信号の強度を測定する。ここで、信号の強度の測定は、バースト信号のうち、MIMO−STSやMIMO−LTSの部分に限らず、バースト信号の任意の部分でなされてもよい。また、無線装置10は、測定した信号の強度にもとづいて、複数のアンテナ12の中から、データを送信するための少なくともひとつのアンテナ12を選択する。選択されたアンテナ12が、データ用アンテナ12に相当する。例えば、1番目と2番目の大きさの強度となる信号を受信したアンテナ12が選択される。より具体的に説明すれば、以下のようになる。無線装置10は、第1アンテナ12aから第3アンテナ12cにおいて受信した信号の強度を測定する。無線装置10は、測定した信号の強度の大きさに応じて、第1アンテナ12aと第2アンテナ12bを選択する。さらに、選択した第1アンテナ12aと第2アンテナ12bに対応させるようにデータを配置したバースト信号が生成される。ここで、送信側と受信側の無線伝送路の対称性が利用されている。
【0192】
なお、ひとつ目の変形例は、以下のような組合せも可能である。データを送信するために選択されるアンテナ12は、実施例1においてMIMO−LTSを送信するために選択されるアンテナ12に含まれていてもよい。そのため、図11、図12に適用されてもよい。また、変形例のバーストフォーマットを有したトレーニング信号は、実施例1のように、トレーニング要求信号を受けつけた後や、レート要求信号を送信する際に送信されてもよい。そのため、図4、図5、図9から図16に適用されてもよい。さらに、変形のバーストフォーマットが、アンテナ12に対応するように規定されておらず、実施例2や3のように、制御部30やプリアンブル付加部316によって生成されるバースト信号において規定されてもよい。その際、無線装置10のうちの送信機能は、図25の送信装置300と同一のタイプであってもよい。また、図25の送信装置300のごとく、ステアリング行列が適用されてもよい。
【0193】
ふたつ目の変形例を説明する。変形例は、LTS用アンテナ12の数がデータ用アンテナ12の数よりも多い場合において、LTS用アンテナ12のうち、データ用アンテナ12以外のアンテナ12から送信されるMIMO−LTSに関する。なお、ふたつ目の変形例に対する課題も、ひとつ目の変形例に対する課題と同様に示される。図19(a)の場合、LTS用アンテナ12のうち、データ用アンテナ12以外のアンテナ12とは、第3アンテナ12cに相当する。
【0194】
変形例では、第3アンテナ12cから送信される第3MIMO−LTSの振幅が、第1アンテナ12aおよび第2アンテナ12bから送信される第1MIMO−LTSおよび第2MIMO−LTSの振幅よりも小さい値に規定されている。これは、例えば、第3MIMO−LTSでの振幅が、第1MIMO−LTSと第2MIMO−LTSでの振幅の1/2になっている場合に相当する。なお、第1アンテナ12aおよび第2アンテナ12bは、データ用アンテナ12に相当する。変形例では、第3アンテナ12cから送信される第3MIMO−LTSの振幅を小さくすることによって、第3MIMO−LTSの信号強度を小さくできる。また、第3MIMO−LTSの信号強度が小さくなると、第3MIMO−LTSに対してMIMO−STSが付加されていなくても、MIMO−LTSに対する歪みが発生しにくくなる。また、受信側おいて、小さくしたMIMO−LTSの信号強度を補正することによって、正確な伝送路が推定できる
【0195】
なお、ふたつ目の変形例においても、ひとつ目の変形例と同様の組合せが可能である。すなわち、図3(b)、図19(a)−(b)、図21(a)−(d)に対して、一部のMIMO−LTSの振幅を小さくすることが有効である。また、図26(a)に対してもふたつ目の変形例が適用可能である。具体的には、ふたつ目の変形例に対してステアリング行列を適用してもよい。例えば、図19(a)のバーストフォーマットにふたつ目の変形例を適用し、その後、ステアリング行列を適用すれば、そのときのバーストフォーマットは、図27のように示される。
【0196】
3つ目の変形例を説明する。3つ目の変形例は、ふたつ目の変形例と同様に、LTS用アンテナ12の数がデータ用アンテナ12の数よりも多い場合において、LTS用アンテナ12のうち、データ用アンテナ12以外のアンテナ12から送信されるMIMO−LTSに関する。なお、3つ目の変形例に対する課題も、ひとつ目の変形例に対する課題と同様に示される。図19(a)の場合、LTS用アンテナ12のうち、データ用アンテナ12以外のアンテナ12とは、第3アンテナ12cに相当する。変形例では、第3アンテナ12cから送信される第3MIMO−LTSにおいて使用されるサブキャリアの数が、第1アンテナ12aおよび第2アンテナ12bから送信される第1MIMO−LTSおよび第2MIMO−LTSにおいて使用されるサブキャリアの数よりも小さい値に規定されている。
【0197】
これは、第1MIMO−LTSと第2MIMO−LTSには、「52サブキャリア」が使用されているが、第3MIMO−LTSには、「26サブキャリア」が使用されている場合に相当する。なお、第1アンテナ12aおよび第2アンテナ12bは、データ用アンテナ12に相当する。変形例では、第3MIMO−LTSに使用されるサブキャリア数を少なくすることによって、第3MIMO−LTSの信号強度を小さくできる。また、第3MIMO−LTSの信号強度が小さくなると、第3MIMO−LTSに対してMIMO−STSが付加されていなくても、MIMO−LTSに対する歪みが発生しにくくなる。また、送信側においてサブキャリアの一部を使用していないが、受信側において、所定のサブキャリアに対して推定された伝送路を内挿補完することによって、全てのサブキャリアに対する伝送路が推定できる。
【0198】
なお、3つ目の変形例においても、ひとつ目の変形例と同様の組合せが可能である。すなわち、図3(b)、図19(a)−(b)、図21(a)−(d)に対して、一部のサブキャリアを使用しないことが有効である。また、図26(a)に対して、3つ目の変形例が適用可能である。具体的には、3つ目の変形例に対してステアリング行列を適用してもよい。例えば、図19(a)のバーストフォーマットに3つ目の変形例を適用し、その後、ステアリング行列を適用すれば、そのときのバーストフォーマットは、図27のように示される。
【0199】
本発明の実施例によれば、MIMO−STSとデータを送信すべきアンテナを決める際に、受信した信号の強度が大きいアンテナを優先的に使用するので、通信対象の無線装置がバースト信号を受信したときに、MIMO−STSの信号強度がある程度大きくなる。そのため、AGCがある程度低い利得となるように設定されるので、AGCによるMIMO−LTSの歪みの発生確率を低減できる。また、MIMO−LTSに対する歪みの発生確率を低減できるので、データの誤り率の悪化を抑制できる。また、データの誤り率の悪化を防止できるので、通信品質の悪化を抑制できる。また、伝送路の推定を正確に実行できる。また、データの伝送効率を改善できる。
【0200】
また、データ用アンテナ以外のアンテナから送信されるMIMO−LTSの振幅が、他のMIMO−LTSの振幅よりも小さくされるので、受信側において、MIMO−LTSに対する歪みの発生確率を低減できる。また、データ用アンテナ以外のアンテナから送信されるMIMO−LTSでのサブキャリア数が、他のMIMO−LTSでのサブキャリア数よりも少なくされるので、受信側において、MIMO−LTSに対する歪みの発生確率を低減できる。また、ステアリング行列を使用する場合にも、適用できる。
【0201】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0202】
本発明の実施例1において、選択部28は、受信した信号の強度の大きいアンテナ12を優先的に選択している。しかしながらこれに限らず例えば、アンテナ12単位に遅延スプレッドを導出し、遅延スプレッドの小さいアンテナ12を優先的に選択してもよい。本変形例によれば、遅延波の影響が小さいアンテナ12を優先的に選択できる。つまり、無線品質のよいアンテナ12を優先的に選択すればよい。
【0203】
本発明の実施例1において、第1無線装置10aは、トレーニング信号を送信する際に使用すべきアンテナ12の本数と、トレーニング信号を受信する際に使用すべきアンテナ12の本数とを同一になるように制御している。しかしながらこれに限らず例えば、これらが異なるように制御を行ってもよい。すなわち、処理部22は、複数のアンテナ12によって、第2無線装置10bから、受信用のトレーニング信号を受信し、選択部28は、複数のアンテナ12のうち、トレーニング信号を送信すべき少なくともひとつのアンテナ12を選択する。その際、選択部28は、受信した受信用のトレーニング信号をもとに、複数のアンテナ12のそれぞれに対応した無線品質を導出し、無線品質のよいアンテナ12を優先的に選択してもよい。本変形例によれば、送信用のアンテナ12の本数と、受信用のアンテナ12の本数を独立に設定できる。
【0204】
本発明の実施例2と実施例1とを組み合わせた変形例も有効である。例えば、実施例において、無線部20から最終的に送信される複数の系列の数が、実施例1の記載にしたがって、アンテナ12の数よりも少なくてもよい。本変形例によれば、実施例1と実施例2とを組み合わせた効果が得られる。
【0205】
本発明の実施例1から4に対する任意の組合せも有効である。本変形例によれば、これらを組み合わせた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】本発明の実施例1に係るマルチキャリア信号のスペクトルを示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る通信システムの構成を示す図である。
【図3】図3(a)−(b)は、図2の通信システムでのバーストフォーマットの構成を示す図である。
【図4】図2の通信システムでの比較対象となる通信手順を示すシーケンス図である。
【図5】図2の通信システムでの比較対象となる別の通信手順を示すシーケンス図である。
【図6】図2の第1無線装置の構成を示す図である。
【図7】図6における周波数領域の信号の構成を示す図である。
【図8】図6の第1処理部の構成を示す図である。
【図9】図2の通信システムにおけるデータレートの設定の手順を示すシーケンス図である。
【図10】図6の第1無線装置におけるデータレートの設定の手順を示すフローチャートである。
【図11】図2の通信システムにおけるデータレートの設定の別の手順を示すシーケンス図である。
【図12】図6の第1無線装置におけるデータレートの設定の別の手順を示すフローチャートである。
【図13】図2の通信システムでの通信手順を示すシーケンス図である。
【図14】図13の第2無線装置での送信手順を示すフローチャートである。
【図15】図2の通信システムにおけるデータレートの設定のさらに別の手順を示すシーケンス図である。
【図16】図6の第1無線装置におけるデータレートの設定のさらに別の手順を示すフローチャートである。
【図17】図6の制御部の構成を示す図である。
【図18】図17の記憶部に記憶された判定基準の構造を示す図である。
【図19】図19(a)−(b)は、図2の通信システムでのバーストフォーマットの別の構成を示す図である。
【図20】図2の通信システムでのバーストフォーマットのさらに別の構成を示す図である。
【図21】図21(a)−(d)は、図2の通信システムでのバーストフォーマットのさらに構成を示す図である。
【図22】図22(a)−(b)は、図20でのバーストフォーマットを変形させたバーストフォーマットの構成を示す図である。
【図23】図22(a)−(b)のバーストフォーマットに対応した送信手順を示すフローチャートである。
【図24】図22(a)−(b)のバーストフォーマットに対応した別の送信手順を示すフローチャートである。
【図25】本発明の実施例2に係る送信装置の構成を示す図である。
【図26】図26(a)−(b)は、図25の送信装置において生成されるバースト信号のバーストフォーマットを示す図である。
【図27】本発明の実施例3に係るバーストフォーマットの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0207】
10 無線装置、 12 アンテナ、 14 アンテナ、 20 無線部、 22 処理部、 24 変復調部、 26 IF部、 28 選択部、 30 制御部、 32 レート情報管理部、 40 FFT部、 42 合成部、 44 参照信号生成部、 46 分離部、 48 IFFT部、 50 プリアンブル付加部、 52 送信ウエイトベクトル計算部、 54 受信ウエイトベクトル計算部、 56 乗算部、 58 乗算部、 60 加算部、 100 通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の系列のうちの少なくともひとつに配置される第1既知信号と、複数の系列のそれぞれに配置される第2既知信号と、第1既知信号と同一の系列に配置されるデータが含まれたバースト信号を受信する受信部と、
前記受信部において受信したバースト信号を処理する処理部とを備え、
前記受信部は、第2既知信号のうち、第1既知信号を配置した系列に配置される部分と、第2既知信号のうち、第1既知信号を配置した系列以外の系列に配置される部分とを異なったタイミングにて受信することを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記受信部は、第1既知信号をもとにAGCの利得を設定し、当該利得をもとに、第2既知信号のうち、第1既知信号を配置した系列に配置される部分と、第2既知信号のうち、第1既知信号を配置した系列以外の系列に配置される部分とをそれぞれ受信することを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記処理部は、複数の系列のそれぞれに対して、独立した動作を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の無線装置。
【請求項4】
複数の系列のうちの少なくともひとつに配置される第1既知信号と、複数の系列のそれぞれに配置される第2既知信号と、第1既知信号と同一の系列に配置されるデータが含まれたバースト信号を受信する場合に、第2既知信号のうち、第1既知信号を配置した系列に配置される部分と、第2既知信号のうち、第1既知信号を配置した系列以外の系列に配置される部分とを異なったタイミングにて受信することを特徴とする受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−81653(P2010−81653A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293744(P2009−293744)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2007−146075(P2007−146075)の分割
【原出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】