説明

受信機およびGPS腕時計

【課題】従来のGPS腕時計は、ユーザーが連続で受信ボタンを操作することにより、それに応じて受信動作を行った場合には、受信動作回数分だけ消費電力が増えることになり、電池寿命を著しく短くするという問題があった。
【解決手段】本発明のGPS腕時計は、過去の受信履歴情報に基づき、受信の可否を判断する。すなわち受信履歴情報を参照して、受信の必要がないと判断された場合には受信動作を禁止する。その結果、ユーザーの使い勝手を高めつつ、低消費電力化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信機およびこれを用いたGPS腕時計に関する。

【背景技術】
【0002】
現在、我々の生活は様々な無線受信機に囲まれている。
無線受信機は有線の受信機と比較した場合、ケーブルを接続する必要がないため、携帯型の受信機として特に適している。
【0003】
例えば現在広く利用されている受信機として、GPS受信機が挙げられる。GPS信号は高度約2万メートルの軌道を周回しているGPS衛星から送信されており、このGPS衛星には原子時計が備えられている。GPS信号には、この原子時計により作り出される時刻情報が含まれており、複数の衛星からこの時刻情報を受信し、処理することで自己の位置を算出することができる。
このように、GPS衛星から送信される無線信号を受信することで、移動しながらでも自己の現在位置を知ることができ、例えばカーナビゲーションシステムなどで広く利用されている。
【0004】
GPS信号の別の利用方法として、GPS信号に含まれる時刻情報による時刻修正が挙げられる。前述の通り、GPS信号には原子時計により生成される正確な時刻情報が含まれており、これを受信することで正確な時刻情報が得られる。そこで、機器の内部に時刻計時装置を備えている機器において、GPS信号を受信する機能を付加し、それによってGPS信号に含まれる時刻情報を受信し、受信した時刻情報に基づいて内部時計を修正すれば、常に正確な時刻を得ることができる。例えば腕時計にGPS受信機能を付加すれば、常に正確な時刻を腕時計に表示することができ、非常に有用である。
【0005】
自動で正確な時刻への修正を行う時計としては、長波電波修正時計が広く知られている。これは、長波(LF)帯の標準電波を利用するものである。標準電波とは、長波帯の搬送波(40k〜77.5kHz)に世界標準時の情報を重畳させた信号であり、日本、アメリカ、ドイツ等で送信されている。標準電波を受信する受信機を腕時計の筐体内に搭載し、例えば一日一回、所定の時刻に受信動作を行い、受信した情報に基づいて内部の時計を修正するものである。
このような動作によって、時計の時刻表示は常に一定の小さな誤差の範囲内に収まることになる。標準電波の特徴としては、信号帯域周波数が低いことと、信号帯域幅が非常に狭帯域であることが挙げられる。この標準電波の特徴は、良くも悪くも長波電波修正時計の特徴を決定付けている。
【0006】
まず、信号帯域周波数が低いため、受信機を非常に低消費電力にすることができる。例えば非特許文献1によれば、電圧1.1V、消費電流 38uAという、非常に低消費電力の受信回路が報告されている(但し、信号処理に伴う消費電力は含まない)。これは腕時計という他の携帯機器に比べても低消費電力化の要求が厳しい機器にとって、非常に好適な特徴と言える。
また、信号が非常に狭帯域であるため、信号処理に高速処理が求められない。そのため、低消費電力に特化したCPUを用いることが出来る。これも、腕時計という機器に非常に好適な特徴である。
【0007】
一方、標準電波の特徴から生じる問題点もいくつかある。
まず、標準電波の送信されていない地域では、時刻修正を行うことが出来ない。これは地上-地上間通信を行っている以上仕方のないことである。
また、狭帯域であるがゆえに、タイムコードが非常に長く、時刻修正に非常に長い時間がかかる。具体的にはタイムコードの一周期が1分であるため、通常は短くても1分、長い場合には1回の受信に5分以上かかることもある。これもタイムコードの仕様上、改善が難しい問題である。
【0008】
これらの問題点を解決する手段として、前述のGPS受信機能付き腕時計(以降、GPS腕時計と呼ぶ)が期待されている。GPS信号は衛星-地上間通信であり、衛星の周回軌道は全世界にまたがっているため、世界中のどこでも受信を行うことができる。また、送信データの周期が標準電波に比べて短いため、長波電波修正時計比べて短時間で時刻修正が可能となる。
【0009】
GPS腕時計の問題点としては、受信機の消費電力が大きいことが挙げられる。これは主に受信する信号の信号帯域周波数、および信号帯域幅に由来するものである。しかしこれは今後改善の余地がある。データフォーマットに起因する問題ではなく、通信機器の性能に起因するものであるため、今後の技術開発によって解決していくと考えられる。今後のGPS腕時計の開発は、低消費電力化技術にかかっているといっても過言ではない。
【0010】
一般に消費電力を減らす方法として、間欠動作がよく行われる。
間欠動作の方法は様々であるが、基本的な考え方はどの場合も同じで、不要な場合には非動作状態に切り換えることで、累積の消費電力、すなわち消費エネルギーを低減するものである。
【0011】
例えば特許文献1に示されているように、受信動作と受信動作の間で受信機への電源供給を止めることで、消費電力の低減を図り、電池の長寿命化を実現している。
特許文献1に示した従来技術を図11を用いて説明する。図11は特許文献1に示した従来技術の受信機を表わしており、その主旨が変わらない範囲で簡略化した図である。
【0012】
図11に示した受信機は、アンテナ101と、チューナー回路102と、信号処理回路103と、CPU104と、電源部105とを有しており、チューナー回路102と信号処理回路103は電源部105より電源を供給され、電源部105はCPU104によって制御されている。
【0013】
CPU104の内部には受信を終了した時点からカウントをスタートするカウンタ1041と、カウンタの値に基づいて受信から所定時間(例えば24時間)経過したかどうかを判断して電源105を制御する判断部1042とを有している。
【0014】
CPU104は、GPS信号の受信を終了した時点からカウンタをスタートさせるとともに、電源部105からチューナー回路102および信号処理回路103への電源供給を停止するよう、電源部105を制御する。この間、チューナー回路102および信号処理回路103は動作を停止しているため、その状態(非動作状態)での消費電力は動作状態での消費電力に比べて非常に小さな値となる。
そしてカウンタの値がある所定値を超えた時点で再び電源部105からチューナー回路102および信号処理回路103への電源供給を再開し、受信動作を行う。
このように、受信が終了してから所定の時間内は受信動作を停止することで、常時受信動作を行う場合に比べて、累積の消費電力、すなわち消費エネルギーを大幅に低減することができる。
【0015】
ユーザーの立場からすると、任意のタイミングで受信動作を行える方が望ましい。
例えばGPS腕時計において、ユーザーが時刻修正をしたいと思った瞬間に受信ボタンを
押し、そのタイミングでGPS腕時計は受信および時刻修正を行えるものが望ましい。それによって、ユーザーは任意のタイミングで時刻修正を簡便に行うことができ、かつ受信動作を制御したという満足感を得ることができる。すなわち、非常に使い勝手のよいGPS腕時計を提供することが可能となる。
【0016】
また、このように任意のタイミングでの受信を許可することは、実効的な受信感度の向上にも効果的である。GPS信号のように周波数の高い電波は指向性が強いため、屋内やビルの間など、障害物の多い環境においてはその信号強度が急激に低下する。特許文献1に示した従来技術では、受信機自身が決定したタイミングで受信動作を行うため、受信機が良好な受信環境(例えば見通しのいい屋外)にいるのか、不良な受信環境(例えば屋内)にいるのかが不明である。そのため、不良な受信環境で受信動作を行った場合には受信に失敗し、無駄に電力を消費することになる。
それに対してユーザーが任意のタイミングで受信動作を行える場合には、事前にユーザーに対して良好な受信環境の条件について報知しておけば、不良な受信環境で受信を行う回数が少なくなり、実効的な受信感度の向上が見込まれる。
【0017】
以上のようにユーザーが任意のタイミングで受信を行えるとすると、様々な面でメリットがある。そのような受信機を実現するための技術として、外部入力手段を設けることで、任意のタイミングで受信動作を制御できる技術は過去に提案されている(例えば特許文献2、特許文献3参照)。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2007-263598
【特許文献2】特開2009-236560
【特許文献3】特開2009-53182
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】電気学会研究会資料 電子回路研究会 ECT-08-59〜63 「水晶フィルタレスCMOS電波時計受信回路」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
特許文献1に示した従来技術は、間欠的に受信動作を行うことで、受信機の実質的な使用時間を延ばす効果があるものの、受信動作に製品の使用者(以降ユーザーと呼ぶ)の意思を反映することができないという問題があることがわかった。すなわち、任意のタイミングで受信動作を行うことができないのである。
【0021】
上記の問題点を解決する技術が特許文献2および特許文献3に示されているが、その場合、新たな問題が生じる。ユーザーが連続で受信動作を行った場合、消費電力が大きくなり、電池寿命を著しく短くするという問題である。例えばGPS腕時計においては、搭載できる電池容量に対して、受信時の消費電力が非常に大きいため、連続で受信動作を行うと電池に蓄えられたエネルギーはすぐになくなってしまう。
【0022】
低消費電力化を図ろうとすればユーザーは任意のタイミングで受信を行うことができずユーザーの使い勝手を損なってしまい、一方ユーザーに任意のタイミングでの受信を許可すれば電池の寿命を短くする可能性がある。
すなわち、GPS腕時計のような受信機においては、低消費電力化とユーザーの使い勝手
を両立することは非常に難しい課題であると言える。
【0023】
本発明は上記問題点を解決するものであり、その目的とするところは、ユーザーの使い勝手を高めつつ、かつ低消費電力化を実現した受信機を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の課題を解決するため、本発明の受信機は、以下のような構成を採用する。
【0025】
無線信号を受信する受信部と、
前記受信部の動作および停止制御を行う受信制御部と、
前記受信制御部へ受信開始信号を出力する外部入力手段と、
を有する受信機であって、
前記受信制御部は
受信動作の可否を判断する受信可否判断手段と、
過去の受信動作に関する受信履歴情報を記憶している受信履歴記憶部と、
を有しており、
前記受信可否判断手段は、外部入力手段より受信指示信号が入力された場合、前記受信履歴記憶部に記憶されている受信履歴情報に基づいて受信動作の可否を判断して、前記受信部を動作または停止させる。
【0026】
前記受信履歴情報は、前回受信動作を行った時からの経過時間(動作後経過時間)であり、
前記受信可否判断手段は、前記外部入力手段より前記受信指示信号が入力された場合、前記動作後経過時間に基づいて受信可否の判断を行うことができる。
【0027】
前記受信履歴情報は、前回受信に成功した時からの経過時間(成功後経過時間)であり、前記受信可否判断手段は、前記外部入力手段より前記受信指示信号が入力された場合、前記成功後経過時間に基づいて受信可否の判断を行うことができる。
【0028】
前記受信履歴情報は、前記動作後経過時間と前記成功後経過時間であり、
前記受信可否判断手段は、前記外部入力手段より前記受信指示信号が入力された場合、前記動作後経過時間と前記成功後経過時間とに基づいて受信可否の判断を行うことができる。
【0029】
前記受信部を駆動するための電池と、
電池の残量を計測する電池残量計測手段と、
をさらに有し、
前記受信可否判断手段は前記受信履歴情報と前記電池残量計測手段からの情報とに基づいて受信可否の判断を行うことができる。
【0030】
受信可否の判断を表示する受信可否表示手段と、
をさらに有し、
前記受信可否表示手段は前記受信指示信号が入力された場合に前記受信可否判断手段の判断結果を表示することができる。
【0031】
前記受信可否表示手段は前記受信指示信号が入力された場合に、前記受信可否判断手段の判断結果が否であった場合のみ、前記受信可否判断手段の判断結果を表示することができる。
【0032】
前記の各受信機と、
時刻を計時する時刻計時手段と、計時した時刻を表示する時刻表示手段と、を有し、
前記時刻計時手段は、内部で計時した時刻を、前記受信機で受信したGPS信号に含まれる時刻情報で修正するGPS腕時計を構成することができる。

【発明の効果】
【0033】
本発明の受信機およびこれを用いたGPS腕時計は、外部入力手段より受信指示信号が入力された場合、前回受信動作を行った時からの経過時間、または前回受信に成功した時からの経過時間、といった受信履歴情報に基づいて受信動作の可否を判断して、受信部を動作または停止させるものである。
また、電池の残量の情報も加味して受信動作の可否を判断して、受信部を動作または停止することもできる。
さらには、受信可否の判断結果を表示してユーザーに知らしめることもできる。
このような構成とすることにより、ユーザーの使い勝手を高めつつ、かつ受信部の動作および停止を適切に制御するため、低消費電力化を実現できるという優れた効果がある。

【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1に記載のGPS腕時計を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例1に記載のGPS腕時計の内部を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例1に記載のGPS腕時計で用いるパッチアンテナを示す構造図である。
【図4】本発明の実施例1に記載のGPS腕時計の機能を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例2に記載のGPS腕時計の機能を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例3に記載のGPS腕時計の機能を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施例3に記載のGPS腕時計の受信制御部に記憶されているテーブルの構成を表わす表である。
【図8】本発明の実施例4に記載のGPS腕時計の機能を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施例4に記載のGPS腕時計のBD回路で検出した電池電圧の検出レベルを表わす模式図である。
【図10】本発明の実施例4に記載のGPS腕時計の受信制御部に記憶されているテーブルの構成を表わす表である。
【図11】従来の受信機の機能を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
【実施例1】
【0036】
(概要構成)
図1は、本発明における受信機を内蔵したGPS腕時計を示す概略図である。GPS腕時計は、その表面に文字板11、秒針、分針、時針等の指針12が配置される時刻表示部と、外装である時計ケース13と、時計ケース13の外部にリューズ14、プッシュボタン15が配置される外部入力部等により構成されている。また図示はしないが、文字板11のすぐ裏には、太陽光を受けて発電する太陽電池が配置されている。
【0037】
図2は、図1の文字板および太陽電池を外した状態を表わしている。時計ケース13の中に、アンテナ21と、電池22とが12時-6時方向に直列に配置されている。そしてアンテナの上方に指針12を駆動するための輪列23が配置されており、リューズ14がこの輪列23の一部と
接している。また、アンテナ21と電池22の裏側には円形の回路基板24が配置されている。図示はしないが、この回路基板24の表面に受信回路、CPUやそれらの動作に必要な周辺部品等が実装されている。
【0038】
アンテナ21は、GPSの信号を効率良く受信するため、右旋回円偏波特性を有するパッチアンテナとなっている。パッチアンテナの構造を図3に示す。パッチアンテナは高さの低い直方体の誘電体31を二つの電極で挟む形で構成されている。電波を受信する側の電極を受信電極32、反対側の電極をグランド電極33と呼ぶ。受信電極32上には信号を取り出し次段へ出力するための給電点34が設けられている。本実施形態においては、アンテナ21は文字板11のすぐ裏に、受信電極32を文字板側に向けるように配置されている。この時、文字板は電波を透過させるため、プラスチックで形成されている。
【0039】
電池22は、コイン型の二次電池となっている。電池22の電気的特性としては、受信時には10mA以上の大電流が必要となるため、電流容量の大きな二次電池を使用している。
前述の太陽電池で電池22を充電することで、電池交換の必要がない、所謂太陽電池腕時計を構成している。
【0040】
時計ケース13は、ステンレスで構成されている。これは時計としての美観、質感のためである。またリューズ14およびプッシュボタン15についても同様に、ステンレスで構成されている。
GPS腕時計は以上のような主要部材から構成されている。

(ブロック構成)
【0041】
図4は、本実施例におけるGPS腕時計の機能ブロック図を示している。
GPS腕時計は受信部41と、受信部を制御するCPU42と、受信部に電源を供給する電源部43と、プッシュボタン15と、電池22と、太陽電池46とで構成されている。またその他に、各部の動作に必要なコンデンサ等の周辺部品も多数存在するが、ここでは省略する。
【0042】
受信部41は、アンテナ21と、SAWフィルタ44と、受信回路45とTCXO47とで構成されている。SAWフィルタ44は不要な周波数帯のノイズを除去するためのものであり、その中心周波数はGPS信号のL1帯である1575.42MHzに設定されている。TCXO47は受信回路45のリファレンスクロックとして用いられている。
受信回路45は大きく分けてRF部451とベースバンド部(以降BB部と呼ぶ)452とで構成されている。RF部451は受信したGPS衛星からのRF信号を増幅し、RF信号の周波数帯より低い周波数帯の信号(以降IF信号と呼ぶ)へと変換し、A/D変換器でデジタル信号へと変換した状態で出力する。またRF部451は狭帯域(数MHz)のフィルタを備えており、不要な周波数帯のノイズを除去する機能を備えている。BB部452はRF部451より入力された信号に対して、逆拡散およびフィルタリングを施すことで航法データを復元し、その後得られた航法データを処理することで時刻データを得る。
【0043】
CPU42は、受信部41および電源部43を制御する受信制御部421と、時刻を計時するリアルタイムクロック422と、CPU42の電源を管理するCPU電源部423と、通常の時計動作を制御する時計制御駆動部424とで構成されている。
CPU42は受信動作の制御の他に通常の時計動作の制御も行っているため、時計制御駆動部424で、内部時刻を計時するとともに、前述の指針12を駆動したり、リューズ14やプッシュボタン15からの入力信号を受けて、内部時刻を修正するなどの動作を行っている。
また、電池22および太陽電池46がCPU電源部423に接続されており、CPU42に電源を供給すると共に、電池22の電池残量や太陽電池46の発電量をモニタしている。
【0044】
受信制御部421は受信部41の動作および停止を制御するものであり、過去の受信履歴に関する情報を記憶している記憶部4211と、記憶部4211に記憶されている情報に基づいて受信の可否を判断する受信可否判断部4212とで構成されている。プッシュボタン15より受信指示信号が入力されると、受信可否判断部4212が受信可と判断した場合のみ、受信部41に受信指示信号を出力し、受信部41は動作状態となる。プッシュボタン15から受信指示信号が入力されない場合、あるいはプッシュボタン15から受信指示信号が入力されたが、受信可否判断部4212が受信否と判断した場合には受信部41に受信指示信号は出力されず、受信部41は動作状態とはならない。
このように、受信部41および電源部43は受信時のみ動作することで、全体としての平均電力を低減する構成となっている。
GPS腕時計の受信動作に関連した機能ブロックの構成は以上のようになっている。

【0045】
(受信可否判断)
ここから、本実施例におけるGPS腕時計の動作について説明する。
通常時、GPS腕時計は普通の腕時計と同様に、時刻を計時している。すなわち、時計制御駆動部424が1秒に1回、指針12を駆動することでユーザーに時間を報知している。
【0046】
まず始めに、ユーザーによってプッシュボタン15が押されると、受信可否判断手段4212に受信指示信号が入力される。このプッシュボタン15からの受信指示信号をトリガとして、受信可否判断手段4212は記憶部4211に記憶されている受信履歴情報を参照する。
【0047】
ここで記憶部4211に記憶されている受信履歴とは、前回受信動作を行った時からの経過時間である。すなわち記憶部4211は受信動作カウンタ4213を有しており、1時間に1回カウントアップされる。そして受信動作を行った時にカウンタをクリアしてまた0からカウントをスタートする。このように受信動作カウンタ4213を制御することで、受信動作カウンタ4213の値は前回受信動作時からの経過時間を表わすことになる。例えば受信動作カウンタ4213の値が5を保持している場合には、前回受信動作を行ってから5時間後〜6時間経過しているといった具合である。
【0048】
受信可否判断手段は、記憶部4211の受信動作カウンタ4213の値を参照し、例えば3以上であるかどうかを判断する。もし3以上であった場合には、受信可否判断手段4212は受信可と判断して、受信指示信号を受信部41および電源部43へ出力する。すなわち、プッシュボタン15から受信指示信号が入力された時点で、前回の受信動作からの経過時間が3時間以上であった場合には、受信可として、受信部に受信動作を行わせる。前回の受信動作からの経過時間が3時間未満の場合には、受信否として、受信部41および電源部43に受信動作を行わせない。
【0049】
受信可否判断の結果は、以下に説明するように表示される。
プッシュボタン15から受信指示信号が入力された後、受信可否判断手段4212によって受信可と判断された場合、時計制御駆動部424は指針12を駆動し、秒針が5秒の位置に来るように駆動する。見返しリングの5秒位置には、「RX」の文字が印刷されており、これによって、ユーザーに対して受信が許可されたことを報知することができる。その後秒針は5秒位置に静止した状態で、受信部41は受信動作を行う。
【0050】
プッシュボタン15から受信指示信号が入力された後、受信可否判断手段4212によって受信否と判断された場合、時計制御駆動部424は指針12を駆動し、秒針が55秒の位置に来るように駆動する。見返しリングの55秒位置には、「NO」の文字が印刷されていて、これにより、ユーザーに対して受信が禁止されたことを報知することができる。その後針は55秒位置に2秒間静止したのち、内部時計の計時している時刻位置へと駆動される。この時、
受信動作カウンタ4213の値はクリアされることなく、引き続きカウントアップを継続する。
【0051】
このように、前回受信動作時からの経過時間を参照して、経過時間が所定値以上の場合のみ受信を許可することで、過度に頻繁な受信動作を回避することができ、結果的に低消費電力化を実現できる。

【実施例2】
【0052】
実施例2のGPS腕時計は、その多くの構成が実施例1と共通するので、共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
本実施例のGPS腕時計の概観は実施例1と共通であり、図1〜3に示した通りである。
また、本実施例の受信動作に関連した機能ブロックは実施例1と共通であり、受信制御部421以外は、図4に示した通りである。
図5に本実施例におけるGPS腕時計の機能ブロック図示す。
【0053】
受信制御部421を構成している記憶部4211に記憶されている情報は、本実施形態では前回受信に成功した時からの経過時間である。
すなわち、1時間ごとにカウントアップしていく受信成功カウンタ4214を有しており、受信に成功した場合にのみ受信成功カウンタ4214をクリアする構成となっている。
【0054】
受信可否判断手段4212は、プッシュボタン15から受信指示信号が入力された時点で、受信成功カウンタ4214の値、すなわち前回受信成功時からの経過時間を参照する。そしてその値が3以上であった場合には受信可として、受信部41および電源部43に受信指示信号を出力する。
カウンタの値が3未満であった場合には受信否として、受信部41および電源部43に受信動作を行わせない。
【0055】
受信可否判断の結果の表示については、実施例1と同様になっている。
【0056】
前回受信成功時からの経過時間が短い場合は、内部時計のズレが小さいと推測できるため、GPS信号を受信して時刻修正する必要性は低い。
このように前回受信成功時からの経過時間に応じて受信動作の可否を判断することで、内部時計のズレが少なく時刻修正が必要ない場合の無駄な受信回数を削減することができ、結果としてGPS腕時計の低消費電力化が可能となる。

【実施例3】
【0057】
実施例3のGPS腕時計は、その多くの構成が第1および実施例2と共通するので、共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
本実施例のGPS腕時計の概観は実施例1と共通であり、図1〜3に示した通りである。
図6に本実施例におけるGPS腕時計の機能ブロック図示す。
【0058】
受信制御部421を構成している記憶部4211に記憶されている情報は、本実施形態では前回受信動作を行った時からの経過時間と、前回受信に成功した時からの経過時間とである。
すなわち、1時間ごとにカウントアップしていくカウンタを2つ有しており、一方(受信動作カウンタ4213)は受信動作を行った場合にカウンタをクリアし、もう一方(受信成功カウンタ4214)は受信に成功した場合にのみカウンタをクリアする構成となっている。
【0059】
また受信制御部421を構成している記憶部4211には、テーブル4215が形成されており、受信可否を判断するための各種条件や基準値が設定されている。
図7はテーブル4215の内容に基づく受信可否の判断条件の一例を表わす表である。
ここでC1は受信動作カウンタ4213の値、C2は受信成功カウンタ4214の値である。
まず、受信可否判断手段4212は、プッシュボタン15から受信指示信号が入力された時点で、記憶部4211に記憶された前回受信動作時からの経過時間、すなわちC1を参照する。そして図7において、参照したC1の当てはまる範囲を探す。そしてその際の下にあるC2の条件を参照する。
その後、記憶部421に記憶された前回受信成功時からの経過時間、すなわちC2を参照する。そして先ほど参照したC2の条件に当てはまるかどうか判定する。
そしてC2が条件を満たした場合は受信可として、受信部41に受信指示信号を入力する。
一方、C2が条件を満たさなかった場合は受信否として、受信部41には受信動作を行わせない。
【0060】
例えば、プッシュボタン15から受信指示信号が入力されてC1を参照したところ、15であったとする。これは、前回受信動作を行ってからの経過時間が15時間〜16時間の間であることを示している。そして図7の表より、その時のC2の条件を参照すると24≦C2<36となっている。そして記憶部4211からC2の値を参照したところ20であったとする。これは前回受信に成功した時からの経過時間が20時間〜21時間の間であることを示している。C2が20という値は、24≦C2<36の条件を満たしていない。そのため受信部41および電源部43には受信動作を行わせないことになる。
【0061】
すなわち、前回受信動作時からの経過時間と、前回受信成功時からの経過時間とから受信動作可否の判断を行うことによって、受信が必要な場合には比較的頻繁な受信を許可し、受信が不要な場合には頻繁な受信を禁止することができる。このような構成にすることで、GPS腕時計の使い勝手を損なうことなく、低消費電力化を図ることが可能となる。

【実施例4】
【0062】
実施例4のGPS腕時計は、その多くの構成が実施例1および実施例2と共通するので、共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態のGPS腕時計の概観は実施例1と共通であり、図1〜3に示した通りである。
また、本実施例のGPS腕時計の機能ブロック図を図8に示す。
【0063】
CPU電源部423は電源電圧を監視するBattery Detect回路4231(以降BD回路と呼ぶ)を有しており、プッシュボタン15から受信制御部421へ受信指示信号が入力された場合、受信制御部421からBD回路4231へBD指示信号が出力される。そしてBD回路は電源の電圧を検出し、その値をデジタル化する。検出した電圧値(アナログ値)と電圧検出レベル(デジタル値)の関係を図9に示す。これから判るように、BD回路4231は、3ビットのA/D変換器であるといえる。
BD回路4231で検出した電圧値(BD値)は、受信可否判断部4212へと出力される。
【0064】
受信制御部421を構成している記憶部4211に記憶されている情報は、本実施形態では前回受信動作を行った時からの経過時間と、前回受信に成功した時からの経過時間とである。
すなわち、1時間ごとにカウントアップしていくカウンタを2つ有しており、一方(受信動作カウンタ4213)は受信動作を行った場合にカウンタをクリアし、もう一方(受信成功カウンタ4214)は受信に成功した場合にのみカウンタをクリアする構成となってい
る。
【0065】
また、記憶部4211は図10の表に示した各種条件や基準値をテーブル4216として記憶している。
ここでC1は受信時にクリアされるカウンタのカウント値、C2は受信成功時にクリアされるカウンタのカウント値、BDはBD回路4231で検出された電圧レベルを表わしている。
そしてこの表は、C1とC2がそれぞれある値を持つ場合、その時BD値に必要な条件を表わしている。例えばC1が30、C2が20であった場合、BD値の条件はBD4以上ということになる。すなわち、BD値がBD4〜BD7の場合には条件を満たしており、BD値がBD0〜BD3の場合は条件を満たしていないことになる。

【0066】
(受信可否判断)
受信可否判断部4212はプッシュボタン15から受信指示信号が入力された場合、記憶部4211に記憶されているC1、C2および図10に示したテーブル4216を参照する。またBD回路4231より入力されるBD値を参照する。
そして参照したC1およびC2を図10に示した表に当てはめ、対象となるBD値の条件を読み取る。そしてBD回路4231より入力されたBD値が条件を満たしていれば、受信可として受信部41および電源部43に受信指示信号を出力する。
BD回路4231より入力されたBD値が条件を満たしていなければ、受信不可として受信部41および電源部43には受信動作を行わせない。
【0067】
受信可否判断部4212によって受信否と判断された場合、指針12の秒針を55秒位置へ運針させる。55秒位置の見切りリングには「NG」と書かれており、これによってユーザーに受信が禁止されたことを報知することができる。そして55秒位置に2秒間停止した後、秒針は内部時計の示す位置へと運針され、通常の時刻表示を継続する。
【0068】
このように、本実施形態におけるGPS腕時計では、前回受信時からの経過時間と、前回受信成功時からの経過時間と、電池残容量とに基づいて受信動作の可否を判断する。それによって、現時点での電池残容量の余裕と、受信動作の必要性に応じて受信の可否を決定することができる。その結果、ユーザーの使い勝手を損なうことなく、全体での低消費電力化が可能となる。

【符号の説明】
【0069】
11 文字板
12 指針
13 時計ケース
14 リューズ
15 プッシュボタン
21 アンテナ
22 電池
23 輪列
24 回路基板
31 アンテナを構成する誘電体
32 受信電極
33 グランド電極
34 給電点
41 受信部
42 CPU
421 受信制御部
4211 記憶部
4212 受信可否判断部
4213 受信動作カウンタ
4214 受信成功カウンタ
4215 実施例3で示したテーブル
4216 実施例4で示したテーブル
422 リアルタイムクロック
423 CPU電源部
4231 Battery Detect回路
424 時計制御駆動部
43 電源部
44 SAWフィルタ
45 受信回路
451 RF部
452 ベースバンド部
46 太陽電池
47 TCXO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を受信する受信部と、
前記受信部の動作および停止制御を行う受信制御部と、
前記制御部へ受信開始信号を出力する外部入力手段と、
を有する受信機であって、
前記受信制御部は
受信動作の可否を判断する受信可否判断手段と、
過去の受信動作に関する受信履歴情報を記憶している受信履歴記憶部と、
を有しており、
前記受信可否判断手段は、外部入力手段より受信指示信号が入力された場合、前記受信履歴記憶部に記憶されている受信履歴情報に基づいて受信動作の可否を判断して、前記受信部を動作または停止させることを特徴とする受信機。

【請求項2】
前記受信履歴情報は、前回受信動作を行った時からの経過時間(動作後経過時間)であり、
前記受信可否判断手段は、前記外部入力手段より前記受信指示信号が入力された場合、前記動作後経過時間に基づいて受信可否の判断を行うことを特徴とする請求項1に記載の受信機。

【請求項3】
前記受信履歴情報は、前回受信に成功した時からの経過時間(成功後経過時間)であり、
前記受信可否判断手段は、前記外部入力手段より前記受信指示信号が入力された場合、前記成功後経過時間に基づいて受信可否の判断を行うことを特徴とする請求項1に記載の受信機。

【請求項4】
前記受信履歴情報は、前記動作後経過時間と前記成功後経過時間であり、
前記受信可否判断手段は、前記外部入力手段より前記受信指示信号が入力された場合、前記動作後経過時間と前記成功後経過時間とに基づいて受信可否の判断を行うことを特徴とする請求項1に記載の受信機。

【請求項5】
前記受信部を駆動するための電池と、
電池の残量を計測する電池残量計測手段と、
をさらに有し、
前記受信可否判断手段は前記受信履歴情報と前記電池残量計測手段からの情報とに基づいて受信可否の判断を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の受信機。

【請求項6】
受信可否の判断を表示する受信可否表示手段と、
をさらに有し、
前記受信可否表示手段は前記受信指示信号が入力された場合に前記受信可否判断手段の判断結果を表示することを特徴とする請求項1からに5のいずれか1項に記載の受信機。

【請求項7】
前記受信可否表示手段は前記受信指示信号が入力された場合に、前記受信可否判断手段の判断結果が否であった場合のみ、前記受信可否判断手段の判断結果を表示することを特
徴とする請求項6に記載の受信機。

【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の受信機と、
時刻を計時する時刻計時手段と、計時した時刻を表示する時刻表示手段と、を有し、
前記時刻計時手段は、内部で計時した時刻を、前記受信機で受信したGPS信号に含まれる時刻情報で修正することを特徴とするGPS腕時計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−127902(P2011−127902A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283687(P2009−283687)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】