説明

受信装置、および、プログラム

【課題】妨害波が混入した場合でも適切なゲイン制御をおこなう。
【解決手段】RFアンプ11により増幅されたRF信号が、周波数変換部12でIF周波数に変換されIFアンプ15によって増幅される受信装置1において、ADC21によってデジタル変換されたIFアンプ15の出力信号が復調部200に入力する。ADC21の出力はまた、デジタルフィルタ22によって希望波に濾波され、復調部200に入力する。復調部200では、受信電力の算出と、妨害波の影響を示す受信品質の検出がおこなわれ、妨害波の影響がある場合、RFアンプ11とIFアンプ15のゲイン割合を制御する。この場合において、ゲイン割合を能動的に変更してから受信品質の検出をおこなう。また、アナログフィルタ14を一時的に広帯域特性に切り替えることで、妨害波の有無を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、および、プログラムに関し、特に、デジタル放送の受信に好適な受信装置、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送などのデジタル放送の受信装置においては、受信した高周波信号を復調周波数に周波数変換して復調をおこなうが、この場合の復調回路への入力信号を一定に保つためにゲイン制御(AGC:Automatic Gain Control)がおこなわれる。
【0003】
デジタル放送などの受信装置では、放送周波数帯を増幅させるRF(Radio Frequency:放送周波数)アンプと、RFアンプの出力を濾波するフィルタと、フィルタからの出力を復調回路への出力周波数で増幅するIF(Intermediate Frequency:中間周波数)アンプなどを主要構成としたアナログ回路(いわゆる、RF回路)を前段とし、このような前段回路からの出力がデジタル信号に変換され、デジタル処理をおこなう復調回路で復調することが一般的である。
【0004】
このような回路構成の場合、RF回路におけるRFアンプとIFアンプそれぞれのゲイン制御をおこなうことにより、復調回路への入力信号を一定にさせるゲイン制御が実現されている。この場合において、RFアンプのゲイン制御はRF回路がおこない、IFアンプのゲイン制御は復調回路がおこなうことがある。
【0005】
ゲイン制御をRFアンプとIFアンプで独立しておこなっている場合、IFアンプのゲイン制御の追従性に起因する性能劣化が生じることがある。例えば、携帯型の受信装置の場合に、弱電界でRFアンプとIFアンプが共に高ゲインで動作している状態で強電界のポイントへ移動した場合、RFアンプではゲインを下げるよう制御されるが、これとは独立に制御されるIFアンプは高ゲインで動作したままの状態となるため、IFアンプの出力信号が歪んでしまう。
【0006】
さらに、アナログ回路であるRF回路によってRFアンプのゲイン制御をおこなっているため、温度特性や妨害波などの影響を考慮したマージンを含んだ制御となるため、最大限の性能を活かしたゲイン制御をおこなえないという不都合もある。
【0007】
このような問題に対し、RFゲインとIFゲインの双方を一括して制御する方法がある(例えば、特許文献1)。このような一括制御によってRFゲインとIFゲインの分配を適宜変更することができる。ここで、RFゲインとIFゲインの分配は受信品質に影響する。例えば、IFゲインの分配を多くすると、歪み特性は向上するが受信感度が低下する。一方、RFゲインの分配を多くすると、受信感度は向上するが歪み特性は低下する。
【0008】
このような受信装置を、例えば、携帯電話などのような移動体に適用した場合、マルチパスフェージングや隣接チャンネルの妨害波の影響を受けやすく、受信品質が細かく変動する。したがって、このような受信品質の変動をゲイン制御に反映することができれば、より適切なゲイン制御をおこなうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−280852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、受信品質に応じた適切なゲイン制御を実現できる受信装置、および、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる受信装置は、
受信波を高周波数にて増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器の周波数帯から後段の周波数帯への周波数変換をおこなう周波数変換器と、前記周波数変換器で周波数変換された信号を増幅する第2の増幅器と、前記第2の増幅器で増幅された信号を復調する復調器と、を備える受信装置において、
前記復調器は、
前記第2の増幅器からの出力信号に基づいて、前記受信装置の受信信号の電力を算出する電力算出手段と、
妨害波の影響による前記受信信号の受信品質を検出する受信品質検出手段と、
前記電力算出手段が算出した電力と前記受信品質検出手段の検出結果とに基づいて、前記妨害波による影響を判別し、該妨害波による影響があると判別した場合に、前記第1の増幅器と前記第2の増幅器とのゲイン割合を制御するゲイン制御手段と、を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受信品質に応じた適切なゲイン制御をおこなえる受信装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1にかかる受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した復調部によって実現される機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態1にかかる「ゲイン制御処理(1)」を説明するためのフローチャートである。
【図4】図3に示す「ゲイン制御処理(1)」で用いられるデータを説明するための図であり、(a)はRFゲインとIFゲインの分配比率と特性の例を示し、(b)はRFゲインについてのゲインステートテーブルの例を示す。
【図5】本発明の実施形態2にかかる「ゲイン制御処理(2)」を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態3にかかる受信装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態3を説明するための図であり、(a)は実施形態3にかかる復調部によって実現される機能構成を示した機能ブロック図であり、(b)は通常フィルタの動作を模式的に示した図であり、(c)は広帯域フィルタの動作を模式的に示した図である。
【図8】本発明の実施形態3にかかる「ゲイン制御処理(3)」を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる実施形態を、図面を参照して以下に説明する。
【0015】
(実施形態1)
本発明の実施形態1にかかる受信装置1を、図1を参照して説明する。ここでは、本発明にかかる受信装置を、例えば、地上デジタル放送などのデジタル放送の受信に用いるための受信装置として構成した場合を例に以下説明する。図1は、実施形態1にかかる受信装置1の構成を示すブロック図である。
【0016】
図示するように、本実施形態にかかる受信装置1は、高周波(RF:Radio Frequency)である放送波の受信をおこなうRF回路部10と、受信した信号を復調して放送コンテンツの再生信号を得る復調回路部20とから構成される。
【0017】
RF回路部10は、図1に示すように、RFアンプ11、周波数変換部12、ローカル発振器13、アナログフィルタ14、IFアンプ15、などから構成されている。
【0018】
RFアンプ11は、アンテナ(不図示)などで受信された放送電波の受信信号(RF:Radio Frequency)を増幅する増幅器(第1の増幅器)であり、本実施形態では、ゲイン(利得)制御可能な可変利得増幅器(VGA:Variable Gain Amplifier)であるものとする。
【0019】
周波数変換部12は、例えば、アナログ乗算器などのミキサ回路から構成され、RFアンプ11で増幅された信号の周波数と、ローカル発振器13からのローカル周波数とを混合することで、RFアンプ11の出力周波数を、RF帯域から後段の周波数帯域に変換する。本実施形態では、RF帯域からIF(Intermediate Frequency:中間周波数)帯域への周波数変換をおこなうものとする。
【0020】
アナログフィルタ14は、例えば、ローパスフィルタ(LPF:Low-Pass Filter)などのアナログフィルタであり、周波数変換部12のIF出力信号を濾波することで不要波を減衰させる。
【0021】
IFアンプ15は、例えば、RFアンプ11と同様のVGA(可変利得増幅器)などから構成される増幅器(第2の増幅器)であり、アナログフィルタ14で濾波された信号を、復調部200へ出力する周波数で増幅する。本実施形態では、周波数変換部12によってIF周波数帯に周波数変換されているので、IF帯域の周波数で増幅する。
【0022】
また、復調回路部20は、図1に示すように、ADC21、デジタルフィルタ22、記憶部23、AGC部24、復調部200、などから構成されている。
【0023】
ADC21は、アナログ−デジタル変換器(Analog-Digital Converter:ADC)であり、IFアンプ15によって増幅されたIF帯域のアナログ信号をデジタル信号に変換し、復調にかかるデジタル信号処理に供する。
【0024】
デジタルフィルタ22は、ADC21によって変換されたデジタル信号を希望周波数帯にフィルタリング(濾波)するデジタルフィルタであり、例えば、DLPF(Digital Low-Pass Filter)などから構成される。
【0025】
記憶部23は、例えば、レジスタやROM(Read Only Memory)、あるいは、その他の書換可能な記憶装置などから構成され、復調部200によって実行される動作プログラムや復調部200が使用するデータなどを格納する。
【0026】
AGC部24は、受信装置1のAGC(自動ゲイン制御)にかかる動作をおこなうために、復調部200からの制御信号に基づいて、RF回路部10の各部を制御する。AGC部24には、例えば、デジタル−アナログ変換器(Digital-Analog Converter:DAC)が含まれており、復調回路部20の前段であるアナログのRF回路部10を、デジタルの復調部200(詳細後述)が制御する際に、アナログ信号を必要とする構成に対しては、復調部200によって生成された制御信号(デジタル信号)をアナログ信号に変換する。このようなアナログ制御信号の生成においては、必要に応じて、例えば、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)やPCM(Pulse Code Modulation:パルス符号変調)などの変調がおこなわれるものとする。
【0027】
復調部200は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)やCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)などのデジタルプロセッサ(デジタル演算回路)などから構成され、ADC21によって変換されたデジタル信号を用いた処理をおこなう。
【0028】
本実施形態では、図1に示すように、ADC21からの出力と、デジタルフィルタ22からの出力が復調部200に入力されるよう構成されているものとする。復調部200は、記憶部23に記録されている動作プログラムを実行することで各種機能を実現する。
【0029】
本実施形態では、RFアンプ11およびIFアンプ15のゲイン制御を復調部200によっておこなう。復調部200によって実現される機能のうち、ゲイン制御に必要となる機能を、図2を参照して以下に説明する。図2は、復調部200によって実現される機能を示す機能ブロック図である。
【0030】
図示するように、復調部200により、受信電力算出機能210、復調機能220、受信品質検出機能230、ゲイン制御機能240、などが実現される。なお、本実施形態では、DSPやCPUなどのようなプロセッサ内でこれらの機能が統合的に実現されるものとするが、上記各機能にかかる動作に特化した専用のハードウェアによってこれらの機能が実現されていてもよい。
【0031】
受信電力算出機能210は、ADC21によって変換されたデジタル信号の信号電力を測定し、受信装置1における受信電力を算出する。ここで、受信電力算出機能210による電力測定の方法は任意であり、例えば、信号を電力に変換して区間内平均にて求める方法や、振幅の確率密度分布から閾値を超える割合を求めて変換する方法などといった既知の技術を用いることができる。
【0032】
受信電力算出機能210は、このようにして測定した信号電力(以下、「測定電力」(PWR_IF)とする)と、RF回路部10の各部におけるゲインとを加算することで、受信電力を算出する。ここで、RF回路部10の各部におけるゲインとして、RFアンプ11のゲイン(以下、「RFゲイン」(G_RF)とする)、IFアンプ15でのゲイン(以下、「IFゲイン」(G_IF)とする)の他に、周波数変換部12でのゲイン(以下、「ミキサゲイン」とする)と、アナログフィルタ14でのゲイン(以下、「フィルタゲイン」とする)などがある。
【0033】
RFゲインとIFゲインについては、ゲイン制御機能240によっておこなわれるゲイン制御(詳細後述)によって規定されるので、その設定値を用いることができる。ミキサゲインとフィルタゲインについては、それぞれ、RFアンプ11の後段回路である周波数変換部12とアナログフィルタ14でのゲインであるため、ゲイン制御によって設定されたRFゲインとの対応関係から、ミキサゲインとフィルタゲインおよびその他ブロックのゲインなど(以下、これらを合わせて「EXTゲイン」(G_EXT)とする)が求められる。
【0034】
したがって、本実施形態では、RFゲインとEXTゲインとの対応関係を示したテーブルなどのデータが記憶部23に予め格納されているものとし、受信電力算出機能210は、このようなデータを参照することで、EXTゲインを求めるものとする。このデータが示す対応関係は、例えば、周波数変換部12やアナログフィルタ14の性能や特性などに基づいて規定されるものとする。なお、このような対応関係からEXTゲインを求める方法に限られるものではなく、EXTゲインを実測する構成であってもよい。
【0035】
受信電力算出機能210は、例えば、このようにして得られる各ゲインなどを用いて以下の数1を演算することで、受信装置1における受信電力(PWR_RF)を算出する。
【0036】
(数1)
PWR_RF(dBm)= PWR_IF(dBm)+ G_RF(dB)+ G_IF(dB)+ G_EXT(dB)
【0037】
復調機能220は、デジタルフィルタ22によって希望周波数帯にフィルタリングされたデジタル信号を復調し、音声や映像などを示す再生信号を、再生動作などにかかる後段(不図示)に出力するとともに、受信品質検出のために、復調した信号を受信品質検出機能230に送出する。
【0038】
受信品質検出機能230は、受信電力算出機能210によって算出された受信電力、ADC21によってデジタル信号に変換された受信信号、復調機能220によって復調された信号などに基づいて、受信装置1における受信品質を示す要素の検出(算出)をおこなう。
【0039】
本実施形態における受信品質検出機能230は、例えば、受信電力算出機能210によって算出された受信電力の変動に基づいてマルチパスフェージングなどのフェージングの発生有無を検出する他、復調前の信号におけるC/N比(Carrier to Noise Ratio)の検出、復調信号におけるBER(Bit Error Rate:ビット誤り率)の算出やEVM(Error Vector Magnitude:エラー・ベクトル振幅)の検出などをおこなう。これらの各要素の検出・算出は、デジタル回路を用いる既知の方法によってなされるものとする。
【0040】
ゲイン制御機能240は、受信電力算出機能210によって算出された受信電力、および、受信品質検出機能230によって検出された受信品質に基づいて、ゲイン制御をおこなう。本実施形態では、RFアンプ11およびIFアンプ15をゲイン制御機能240によって一括に制御することで、RFゲインとIFゲインのそれぞれをほぼ同時に変更し、受信品質に応じた好適なゲイン配分とする例で説明する。この場合、ゲイン制御機能240は、RFアンプ11を制御する制御信号(AGC_RF)、IFアンプ15を制御する制御信号(AGC_IF)を生成し、AGC部24を介してRFアンプ11とIFアンプ15に送出することで、ゲイン制御がおこなわれる。
【0041】
本実施形態では、このようなゲイン制御をおこなう際に、ゲイン制御機能240が記憶部23にアクセスし、記憶部23に予め格納されているデータを参照することで、RFゲインとIFゲインのゲイン配分が決定されるものとする。
【0042】
以上が本実施形態にかかる受信装置1の構成であるが、上記の各構成は本発明を実現するために必要な構成を示したものであり、受信装置として必要となるその他の構成などについては必要に応じて適宜備えられているものとする。
【0043】
以上のような構成の受信装置1の動作例を以下に説明する。実施形態1にかかる受信装置1によって実行される「ゲイン制御処理(1)」を、図3に示すフローチャートを参照して説明する。この「ゲイン制御処理(1)」は、例えば、受信装置1が起動したことを契機に開始されるものとする。
【0044】
処理が開始されると、ゲイン制御機能240により、受信動作開始時に設定するゲイン初期値が設定される(ステップS101)。ここでは、例えば、RFゲインとIFゲインの分配比率についての初期値を設定する。本実施形態においては、例えば、図4(a)に示すような分配比率A〜Eが予め規定されているものとする。すなわち、全体のゲインに対するRFゲインとIFゲインの割合を規定したものであり、分配比率を異ならせることにより、図4(a)に示すように受信特性が変化する。本実施形態では、このような分配比率を規定したデータが記憶部23に格納されているものとする。
【0045】
分配比率によって変化する受信特性としては、例えば、歪み特性と感度がある。RFゲインの比率が低いほど歪みにくくなるが(歪み特性が良)、受信感度は低下し、RFゲインの比率が高いほど受信感度は高くなるが、歪みやすくなる(歪み特性が悪)。このように、RFゲインとIFゲインの比率により、歪み特性と感度が二律背反の関係で変化する。よって、受信品質に応じて分配比率を適正化することで、受信品質を高めるゲイン制御をおこなうことができる。
【0046】
ここで、ステップS101においては、受信開始前の設定であるため、現在の環境下における受信品質は不明である。よって、RFゲインとIFゲインに分配比率は、例えば、歪み特性と感度がともに中庸となる1:1の割合(分配比率C)が初期値として設定されるものとする。また、RFゲイン(G_RF)とIFゲイン(G_IF)それぞれの値は、例えば、良好な受信状態のときに想定される受信電力に基づいて決定されるものとする。
【0047】
ゲイン制御機能240が、このような初期値をRFアンプ11およびIFアンプ15に設定すると、受信装置1での受信動作が開始される(ステップS102)。受信動作が開始されると、設定された初期値でRF回路部10の各部が動作し、受信信号がADC21でデジタル信号に変換される。
【0048】
受信電力算出機能210は、ADC21で変換された信号の信号電力(PWR_IF)を測定し、初期値として設定されたG_RFとG_IFおよびこれらに応じて決定されるEXTゲイン(G_EXT)を用いて数1を演算することで、実際の受信電力(PWR_RF)を算出する(ステップS103)。
【0049】
受信電力が算出されると、ゲイン制御機能240は、実際の受信電力に応じたゲイン制御をおこなう。ここでは、復調回路部20への入力信号の電力レベルを一定にするため、受信電力がこのような所望入力レベルとなるよう、RFゲインとIFゲインを調整する。例えば、復調回路部20への入力レベルを「-5dBm」で一定にしたい場合において、ステップS103で算出された受信電力が「-65dBm」である場合、RFゲインとIFゲインを合わせた「+60dB」のゲインが、必要な「トータルゲイン」ということになる。
【0050】
この例の場合、ステップS101で設定したゲイン分配比率(ゲイン割合)が「1:1」であるため、RFゲインが「30dB」、IFゲインが「30dB」となる。ゲイン制御機能240は、このようなゲインとなるようRF回路部10とIFアンプ15を制御する。すなわち、受信開始後に算出された受信電力に応じたRFゲインとなるようRF回路部10を制御し(ステップS104)、決定したゲイン分配比率に基づき、RFゲインに応じたIFゲインとなるようIFアンプ15を制御する(ステップS105)。
【0051】
以上のような動作は受信電力に同期するようゲイン制御をおこなうものであり、受信開始時におこなうステップS101〜ステップS105の動作を、以下、「初期ゲイン同期」とする。
【0052】
本実施形態では、受信装置1が移動体であるものとする。この場合、移動に伴い受信環境が刻々と変化し、受信品質も変動する。よって、本実施形態では、例えば、一定時間毎に周期的なゲイン制御(AGC)をおこなうことで、受信品質の変動に応じたゲイン制御をおこなう。このようなゲイン制御(AGC)の実行タイミングになると(ステップS106:Yes)、上述したステップS103〜ステップS105と同様の動作により、そのときの受信電力に応じたゲイン制御がおこなわれる(ステップS107、ステップS108)。なお、ステップS108の実行が初回となる場合、ゲイン分配比率は「1:1」(分配比率C)が適用されるものとする。
【0053】
受信電力に応じたゲイン制御をおこなうと、ゲイン制御機能240は、受信品質の検出を受信品質検出機能230に指示する。ゲイン制御機能240からの指示に応じて、受信品質検出機能230は、受信品質の検出をおこなう(ステップS109)。
【0054】
上述したように、本実施形態にかかる受信品質検出機能230は、例えば、フェージングの発生有無、C/N比の検出、BERの算出、EVMの検出などをおこなう。受信品質検出機能230による検出結果はゲイン制御機能240に通知され、ゲイン制御機能240によって受信品質が判別される。
【0055】
本実施形態では、例えば、各項目に設定されている基準値との比較により受信品質が判別されるものとする。この場合の判別方法は、受信装置1の仕様等に基づいて任意に定められるものとする。例えば、基準値よりも低い項目が1つでもあれば、受信品質が低いと判別するようにできる他、すべての項目もしくは一定数以上の項目が基準値より低い場合に受信品質が低いと判別することもできる。
【0056】
また、受信品質検出機能230によって検出・算出される項目も、受信品質に関わるものであれば任意とすることができるが、少なくとも、妨害波による影響が現れる項目が含まれていることが望ましい。上記の例では、C/N比やBERなどが該当するものであり、本実施形態では、このような項目を含んだ検出によって受信品質が測られるものとする。すなわち、本実施形態にかかる受信品質検出機能230は、妨害波の影響による受信品質の変化を検出する。
【0057】
ゲイン制御機能240は、受信品質検出機能230の検出結果に基づき、妨害波の影響による受信品質の低下があるか否かを判別する(ステップS110)。妨害波の影響による受信品質の低下がある場合(ステップS110:Yes)、ゲイン制御機能240は、RFゲインを下げるゲイン制御をおこなう(ステップS111)。
【0058】
ここでのゲイン制御には、例えば、図4(b)に示すような「ゲインステートテーブル」を用いるものとする。このゲインステートテーブルは、RFゲインを既定値で複数段設定したものであり、本実施形態では、例えば、3ビットで規定できる8段のステート(G0〜G7)が設定されているものとする。そして、ステートG0には、RFゲインとして設定しうる最低値(例えば、-30dB)が割り当てられ、ステートが1段上がる毎に、例えば、+10dBずつゲインが高まるように割り当てられる(ステートG7で40dB)。本実施形態では、このようなゲインステートテーブルが記憶部23に格納されているものとする。
【0059】
このようなゲインが割り当てられているゲインステートテーブルには、各ゲイン値に対応するNF(Noise Figure)とIIP3(Input Intercept Point 3:入力3次インターセプトポイント)が併せて割り当てられているものとする。これらの項目には、例えば、RF回路部10の性能などに基づいて、ゲイン値に対応して予め規定される数値が示されている。
【0060】
ここで、NFは、感度を示す指標となるものであり、数値が低いほど感度が良いことを示す。また、IIP3は、入力電力に対する3次歪み成分であり、数値が高いほど歪み特性が良いことを示している。
【0061】
上述したように、受信品質検出機能230が検出する項目には、妨害波の影響が現れるものを含んでいるため、ステップS110で受信品質が低いと判別された場合、妨害波の影響によって受信品質が低下したことになる。このような妨害波による影響は、ゲインを上げるとさらに増幅されることになるため、受信品質が低いと判別された場合には、RFゲインを下げるゲイン制御をおこなうことになる。
【0062】
ここで、上述した例では、必要となるゲインが「60dB」であり、ゲイン分配比率が「1:1」であるため、RFゲインが「30dB」、IFゲインが「30dB」となっている。この状況でRFゲインを下げることになるが、本実施形態では、図4(b)に示したゲインステートテーブルを用いておこなう。すなわち、RFゲインが「30dB」となっているステートは「G6」であるから、1段低い「G5」にすることで、RFゲインが下げられることになる。この場合、RFゲインは「30dB」から「20dB」に下げられる。
【0063】
この場合でも、必要となるトータルゲインは「60dB」で変わらないので、RFゲインを「20dB」にした場合のIFゲインは「40dB」となる。すなわち、RFゲインとIFゲインの分配比率は、図4(a)に示す「1:1」(分配比率C)から「1:2」(分配比率B)に変化することになる(ステップS112)。
【0064】
つまり、ゲイン制御機能240は、このように決定したRFゲインと必要となるトータルゲインに基づいて、RFアンプ11およびIFアンプ15を制御することで、結果的に適切な分配比率で、受信品質に応じたゲイン制御をおこなう(ステップS111、ステップS112)。
【0065】
ここで、RFゲインに対応するIIP3は、図4(b)に示すように、RFゲインを下げると数値が上がる対応関係となっている。よって、受信品質検出機能230の検出値と所定の基準値との比較により、妨害波の影響による受信品質の低下がみられると判別した場合のゲイン制御は、換言すると、歪み特性を向上させるより高いIIP3となるようにRFゲインを決定していることになる。
【0066】
一方、受信品質検出機能230の検出値と所定の基準値との比較により、妨害波の影響による受信品質の低下がないと判別した場合(ステップS110:No)は、ステップS112の処理、すなわち、RFゲインを下げてIIP3を高めるゲイン制御はおこなわない。この場合、ステップS108で設定したRFゲインとIFゲインが維持される。
【0067】
以上のような動作をAGCの実行タイミング毎におこなうことで(ステップS113:No、ステップS106:Yes)、受信品質の変化に応じたゲイン制御がおこなわれる。すなわち、連続的に受信品質が低下し続ける傾向にある場合には、ゲインステートを順次下げていくゲイン制御がおこなわれることになる。
【0068】
なお、ステップS111およびステップS112でゲイン制御をおこなった後に実行されるステップS108においては、ステップS112で決定されたゲイン分配比率となるようにRFゲインとIFゲインが設定されることになる。すなわち、ステップS107で算出された受信電力が前回算出時から変化している場合、新たに算出した受信電力から求められるゲインを、ステップS112で決定した分配比率となるようRFアンプ11とIFアンプ15が制御される。
【0069】
そして、所定の終了タイミング(例えば、受信装置1の電源オフなど)の発生により(ステップS113:Yes)、本処理は終了し、次回起動時にはステップS101からの処理が開始される。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、受信装置でゲイン制御をおこなう際に、受信電力に応じた好適なゲイン分配をおこなった上で、そのときの受信品質に基づいたゲイン分配の調整をおこなうので、受信品質の変動に応じて好適なゲイン制御をおこなうことができる。
【0071】
この場合において、特に、妨害波の影響が現れる受信品質を検出してゲイン制御に反映させているので、妨害波混入時においても適切なゲイン制御をおこなうことができる。
【0072】
このような受信品質に応じたゲイン制御をおこなう際に、ゲインステートテーブルを用いてRFゲインを変更することで、効率的なゲイン制御を容易に実現することができる。
【0073】
なお、上記実施形態においては、主に、妨害波の影響を考慮した動作例を示したが、妨害波の影響への対応に偏重してしまうと感度低下を招く可能性がある。よって、上述した処理において、例えば、閾値との比較により受信電力が著しく低下したことが判別された場合には、感度を向上させるゲイン制御、すなわち、RFゲインを上げるゲイン制御を併せておこなうようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態においては、理解を容易にするために、RFゲインとIFゲインのそれぞれをほぼ同時に変更する例で説明したが、RFゲインが変更され、その後の一定の時間内でIFゲインが決定されるようにしてもよい。
【0075】
(実施形態2)
上記実施形態1で例示した動作は、受信品質の低下が検出されたことを契機にゲイン制御をおこなう、いわば受動的な動作であったが、能動的にゲイン変更を試行し、これによる受信品質の変化を検出してゲイン制御をおこなうこともできる。本実施形態では、このような動作の例を以下に説明する。
【0076】
本実施形態にかかる「ゲイン制御処理(2)」を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。上述した実施形態1での「ゲイン制御処理(1)」と同様、受信装置1が起動したことを契機に処理が開始されるものとする。なお、受信装置1の構成は、実施形態1で示したものと同じである。
【0077】
処理が開始されると、「ゲイン制御処理(1)」と同様に初期ゲイン同期がおこなわれる(ステップS201)。ここでは、「ゲイン制御処理(1)」のステップS101〜ステップS105と同様の動作(初期ゲイン同期)が実行される。
【0078】
このようにして、受信開始時の受信電力に応じたゲイン同期がおこなわれ、周期的なゲイン制御(AGC)の実行タイミングが到来すると(ステップS202:Yes)、「ゲイン制御処理(1)」のステップS107〜ステップS108と同様の動作により、そのときの受信電力に応じたゲイン制御がおこなわれる(ステップS203)。
【0079】
この段階で、ゲイン制御機能240は、受信品質の検出をおこなうよう受信品質検出機能230に指示し、この指示に応じて、受信品質検出機能230は、受信品質の検出をおこなう(ステップS204)。本実施形態では、ここで検出した各項目の検出値が、例えば、復調部200が用いるRAMやレジスタなどの記憶装置に保持されるものとする。
【0080】
受信品質の検出がおこなわれると、ゲイン制御機能240は、記憶部23に格納されているゲインステートテーブル(図4(b))を参照し、現在のゲイン制御にて設定されているRFゲインに対応するゲインステートを確認する(ステップS205)。例えば、受信電力から求められた必要ゲイン(トータルゲイン)が「60dB」であり、ゲイン分配比率が「1:1」である場合には、RFゲインが「30dB」となるので、ゲインステートは「G6」となる。(実際には、設定されているRFゲインと、トータルゲインからIFゲインが決定され、結果的にゲイン分配比率が決まる。)
【0081】
ここで、本実施形態にかかるゲインステートテーブルでは、図4(b)に示すように、G0〜G7の8段のステートが規定されているので、G0〜G3の4段を下位ステート、G4〜G7の4段を上位ステートと分け、ステップS205で確認されたゲインステートが上位ステートであるか下位ステートであるかを判別する(ステップS206)。
【0082】
上述した例では、現在のゲインステートが「G6」であるため、上位ステートであると判別される(ステップS206:Yes)。この場合、ゲイン制御機能240は、RFゲインのゲインステートを1段下げるゲイン制御を試行する(ステップS207)。つまり、上位ステートでは比較的高いゲインが設定されているので、RFゲインが高ゲインの場合の特性とは逆の特性となる方向にゲインステートを1段変更する。
【0083】
ここで、現在のゲインステートが「G6」である場合、1段下の「G5」とする。この場合のRFゲインは「20dB」となるので、ゲイン制御機能240は、必要ゲイン(トータルゲイン)とRFゲインからIFゲインが決定され、結果的にゲイン分配比率が決まる。そして、対応する制御信号をRF回路部10およびIFアンプ15に送出することで、能動的にゲインを変更する。
【0084】
このようなゲイン変更をおこなうと、ゲイン制御機能240は、受信品質の検出を受信品質検出機能230に指示する。この指示に応じて、受信品質検出機能230は、受信品質の検出動作をおこなってゲイン制御機能240に通知する(ステップS209)。
【0085】
ゲイン制御機能240は、通知された受信品質の検出値と、ステップS204でおこなった受信品質検出の結果とを比較することで、ステップS207でおこなったゲイン変更により受信品質が低下したか否かを判別する(ステップS210)。
【0086】
ここで、ステップS204での検出結果よりステップS209での検出結果の方が悪く、受信品質が低下したと判別すると(ステップS210:Yes)、ゲイン制御機能240は、ステップS207でおこなったゲイン変更を元に戻す(ステップS211)。つまり、RFゲインのゲインステートを「G6」から「G5」にした場合、再度「G6」となるようにRFゲインとIFゲインを変更する。
【0087】
一方、受信品質が低下していない場合には(ステップS210:No)、このような元に戻す動作はおこなわず、ステップS207でおこなったゲイン変更を維持する。
【0088】
なお、ステップS205で確認されたゲインステートが下位ステートである場合には(ステップS206:No)、上位ステートである場合とは逆に、ゲインステートを1段上げるゲイン変更がおこなわれる(ステップS206)。すなわち、比較的低いゲインが設定されているので、この場合の特性とは逆の特性となる方向にRFゲインを1段変更し、これに対応するIFゲインとなるようゲイン変更する。
【0089】
この場合も、ゲイン変更の前後で受信品質を比較し(ステップS209)、受信品質が低下していれば(ステップS210:Yes)、ゲインステートを元に戻し(ステップS211)、低下していなければ(ステップS210:No)、変更したゲインを維持する。
【0090】
このような動作をAGCの実行タイミング毎におこなうことで(ステップS212:No、ステップS202:Yes)、能動的なゲイン変更によるゲイン制御がおこなわれる。
【0091】
そして、所定の終了タイミングの発生により(ステップS212:Yes)、処理を終了する。
【0092】
以上説明したように、本実施形態によれば、能動的にゲイン変更を試行し、ゲイン変更によって受信品質が低下する場合のみ元に戻す動作をおこなうので、ゲイン変更の試行により受信品質が低下しない場合には、受信品質をより向上させるゲイン制御を能動的におこなうことができる。すなわち、実施形態1で例示したような、受信品質が低いことが検出されたことに応じてゲイン制御をおこなう場合に比べ、受信品質を向上させる可能性を高めることができる。
【0093】
なお、上記実施形態では、ゲイン変更の試行によって受信品質が低下した場合、ゲインステートを元に戻すものとしたが、例えば、ゲインステートを1段変更する試行をおこなって受信品質が低下した場合には2段戻すようにしてもよい。これにより、受信品質を低下させる結果となったゲインステート変更とは逆方向にゲインステートを変更して試行することができるので、受信品質を向上させる可能性をより高めることができる。
【0094】
(実施形態3)
上記各実施形態では、受信品質検出機能230がフェージング、C/N比、BER、EVMなどを検出することで受信品質を判別する動作例を示した。この場合、上述したように、妨害波の混入による影響を検出できるような項目を採用した。本実施形態では、このような妨害波の混入による影響を、アナログフィルタ14の帯域特性を変更することで検出する。この場合の構成と動作例を以下に説明する。
【0095】
本実施形態にかかる受信装置1の構成を図6に示す。図示するように、本実施形態では、復調部200からの制御信号(CTRL_FL)が、AGC部24を介してアナログフィルタ14にも送出される構成となっている。本実施形態では、アナログフィルタ14として、帯域特性を変更可能なフィルタが用いられるものとする。この場合、濾波させる周波数帯域を変更可能なフィルタであるものとする。
【0096】
ここで、受信装置1がデジタル放送の受信に用いられる場合、受信を所望するチャネル(希望チャネル)の隣接チャネルに相当する周波数が妨害波となることがあり、このような妨害波が混入することで受信品質が低下する場合がある。
【0097】
このような妨害波をアナログフィルタ14で除去することもできるが、この場合、希望チャネルの帯域と隣接チャネルの帯域をカバーする帯域のフィルタに、それぞれある程度急峻な特性を持たせることが必要となる。
【0098】
本実施形態では、上述したような、周波数帯域を変更できるアナログフィルタ14を用いることで、妨害波の混入を検出するときのみ広帯域フィルタを用いるように切り替えることで、通常時は本来のフィルタの特性を確保するとともに、確実に妨害波を検出するようにする。
【0099】
本実施形態では、このような切替動作を復調回路部20によっておこなう。この場合に復調回路部20によって実現される機能を図7(a)に示す。図7(a)に示すように、本実施形態にかかる復調部200によって実現される機能構成の一部が、上記各実施形態で示したものと異なる。本実施形態では、受信品質検出機能230に代えて、フィルタ切替機能250が復調部200によって実現される。
【0100】
フィルタ切替機能250は、制御信号を、AGC部24を介してアナログフィルタ14に送出することで、アナログフィルタ14の帯域特性を切り替える。本実施形態では、例えば、図7(b)に示すような、希望チャネルの1チャネル分の帯域をカバーする特性のフィルタ(以下、「通常フィルタ」とする)と、図7(c)に示すような、希望チャネルの1チャネル分と隣接チャネルの一部を含む帯域をカバーする広帯域特性のフィルタ(以下、「広帯域フィルタ」とする)とを切り替える。ここで、通常フィルタの帯域は、デジタルフィルタ22の帯域とほぼ同じものとすることができる。よって、アナログフィルタ14の広帯域フィルタは、デジタルフィルタ22の帯域よりも広い帯域特性をもっているということになる。
【0101】
アナログフィルタ14におけるフィルタ特性の切替方法は任意であり、例えば、アナログフィルタ14が1チップで構成されており、帯域特性を論理的に変更できる場合には、切替にかかる制御信号をアナログフィルタ14に送出してフィルタ特性を切り替える。また、特性の異なるフィルタ回路を2つ用意する場合には、フィルタ回路への入力を切り替えるスイッチに対し、切替のための制御信号が送出される。
【0102】
ここで、通常の動作時には、図7(b)に示したような通常フィルタを用いるが、妨害波の混入があるか検出する際には、フィルタ切替機能250がアナログフィルタ14を制御することで、図7(c)に示すような広帯域フィルタに切り替えられる。この広帯域フィルタは、隣接チャネルの一部の帯域をカバーしている。よって、隣接チャネルが妨害波となっている場合、隣接チャネル帯域の電力も通過させるので、図7(c)に示すように、隣接チャネルの成分が、デジタルフィルタ22での濾波前後の電力差によって検出することができる。
【0103】
例えば、本実施形態にかかる受信装置1の受信対象が、いわゆるフルセグメント(フルセグ)放送とした場合、受信装置1は、1つのチャネルに割り当てられた周波数帯域のすべて(全帯域)を受信する。このような全帯域受信の場合、希望チャネルの電力はすべて希望周波数帯に存在するので、希望周波数帯以外の電力はすべて不要な周波数成分となる。
【0104】
アナログフィルタ14が広帯域フィルタである場合、隣接チャネルの一部を含む帯域で濾波された信号が復調回路部20に入力されており、このような信号をデジタルフィルタ22が希望周波数帯に濾波しているので、デジタルフィルタ22による濾波をおこなう前の信号には、妨害波の周波数成分が混入している。よって、このような濾波前信号と、デジタルフィルタ22によって希望周波数帯に濾波された濾波後信号とを比較することで、妨害波の電力割合を推定することができる。
【0105】
すなわち、妨害波検出機能240によって算出される電力差は、このような妨害波の電力割合を示す。すなわち、妨害波電力の割合が高い場合、妨害波もしくは妨害波による歪みが多く含まれているということになる。このような場合、妨害波検出機能240によって算出される電力差は大きくなる。一方、妨害波電力の割合が低い場合は、妨害波検出機能240によって算出される電力差は小さくなる。したがって、妨害波検出機能240は、算出した電力差の値と閾値とを比較し、閾値よりも電力差の値が大きい場合に、妨害波が存在すると判別する。
【0106】
このため、本実施形態では、図7(a)に示すように、受信電力算出機能210には、デジタルフィルタ22による濾波前後の信号が入力されるよう構成する。
【0107】
ゲイン制御機能240には、受信電力算出機能210が算出した濾波前後の電力が通知される。ゲイン制御機能240は、デジタルフィルタ22での濾波前後の電力差を算出することで、妨害波の混入があるか否かを判別することができる。すなわち、デジタルフィルタ22の帯域より広い帯域としたアナログフィルタ14を通過した信号について、デジタルフィルタ22の濾波前後の電力差を求めることで、妨害波の検出をおこなう。ここで、妨害波の混入により受信品質が低下するので、ゲイン制御機能240による妨害波の検出は、換言すると、受信品質の検出をおこなっていることになる。
【0108】
以上のような構成を有する本実施形態にかかる受信装置1によって実行される「ゲイン制御処理(3)」を、図8に示すフローチャートを参照して説明する。この「ゲイン制御処理(3)」は、上記各実施形態で例示した処理と同様、受信装置1が起動したことを契機に開始されるものとする。
【0109】
処理が開始されると、上記各実施形態と同様、初期ゲイン同期がおこなわれ(ステップS301)、ゲイン制御(AGC)の実行タイミングとなると(ステップS302:Yes)、受信電力に応じたゲイン制御がおこなわれる(ステップS303)。
【0110】
ここでゲイン制御機能240は、隣接チャネルが妨害波として混入しているか検出するため、アナログフィルタ14の特性を広帯域フィルタに切り替えるよう、フィルタ切替機能250に指示する。フィルタ切替機能250は、ゲイン制御機能240からの指示に応じて制御信号(CTRL_FL)を送出することで、アナログフィルタ14のフィルタ特性を広帯域フィルタに切り替える(ステップS304)。
【0111】
アナログフィルタ14のフィルタ特性を切り替えると、フィルタ切替機能250は、その旨をゲイン制御機能240に通知する。この通知に応じて、ゲイン制御機能240は、受信電力算出機能210に対し、デジタルフィルタ22での濾波前後の信号電力の算出をおこなうよう指示する。
【0112】
ゲイン制御機能240からの指示に応じて、受信電力算出機能210は、デジタルフィルタ22での濾波前後の信号電力を算出して、ゲイン制御機能240に通知する。
【0113】
ゲイン制御機能240は、受信電力算出機能210から通知された、デジタルフィルタ22での濾波前後の信号電力の差分を算出することで、隣接チャネルによる妨害波の検出をおこなう(ステップS305)。このような妨害波の検出動作をおこなうと、ゲイン制御機能240は、アナログフィルタ14のフィルタ特性を通常フィルタに戻すようフィルタ切替機能250に指示する。フィルタ切替機能250は、ゲイン制御機能240からの指示に応じて、アナログフィルタ14のフィルタ特性を切り替える制御信号(CTRL_FL)を送出し、広帯域フィルタから通常フィルタに戻す(ステップS306)。
【0114】
ゲイン制御機能240は、ステップS305での妨害波検出動作により、隣接チャネルによる妨害波の混入があるか否かを判別し(ステップS307)、妨害波の混入があると判別した場合には(ステップS307:Yes)、RFゲインを下げるゲイン制御をおこなう(ステップS308)。この場合、例えば、ゲインステートテーブル(図4(b))に基づいて、RFゲインについてのゲインステートを1段下げる、すなわち、より高IIP3となるようRFゲインを設定し、設定したRFゲインに応じた分配比率となるようIFゲインを設定する。
【0115】
以上のような動作を、AGCの実行タイミング毎におこなうことで(ステップS309:No、ステップS302:Yes)、妨害波の検出動作をおこなう場合にのみデジタルフィルタ22を広帯域フィルタにし、妨害波が検出された場合には、RFゲインを下げるゲイン制御がおこなわれる。
【0116】
そして、所定の終了イベントの発生により(ステップS309:Yes)、本処理を終了する。
【0117】
以上説明したように、本実施形態によれば、妨害波の検出動作をおこなう場合にのみ広帯域フィルタを用いるように制御するので、通常時の本来のフィルタ特性を確保しつつ、妨害波の検出を確実におこなうことができる。
【0118】
この場合において、妨害波が検出された際には、妨害波による受信品質の低下に応じたゲイン制御をおこなうので、適切に受信品質の向上を図ることができる。
【0119】
すなわち、本発明を上記各実施形態の如く適用することで、携帯型の受信装置に好適となる適切なゲイン制御を容易に実現することができる。
【0120】
上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0121】
例えば、上記実施形態では、周波数変換部12でRF周波数からIF周波数に変換するものとしたが、変換後の周波数帯域がベースバンド(Base Band:BB)帯域であってもよい。この場合、LPFに代え、バンドパスフィルタ(Band-Pass Filter:BPF)によってアナログフィルタ14を構成し、IFVGAに代え、BBVGA(Base Band VGA)によってIFアンプ15を構成し、DLPFに代え、DBPF(デジタルBPF)によってデジタルフィルタ22を構成すればよい。
【0122】
また、上記実施形態では、復調部200によってゲイン制御にかかる各機能が実現されるものとしたが、復調機能を担う回路とは独立したデジタル回路(プロセッサ)によって実現されるように構成してもよい。
【0123】
また、上記の各実施形態で例示した構成や動作を組み合わせてもよい。例えば、実施形態1で例示した受信品質の検出と、実施形態3で例示した妨害波の検出を併せておこなうようにしてもよい。あるいは、実施形態2で例示した能動的なゲイン変更をおこなってから、実施形態3で例示した妨害波の検出動作をおこなうようにしてもよい。
【0124】
なお、上記各実施形態では、周期的なゲイン制御タイミングで動作する場合を例示したが、ゲイン制御の実行タイミングは任意であり、上述した例に限られるものではない。例えば、受信品質の検出動作や妨害波の検出動作を随時おこない、受信品質の低下や妨害波が検出されたことを契機にゲイン制御動作をおこなうようにしてもよい。
【0125】
なお、上記実施形態の受信装置1と同様の機能や構成を予め備えた受信装置によって本発明を実現できることはもとより、既存の受信装置のデジタル回路にプログラムを適用することで、本発明にかかる受信装置として機能させることもできる。この場合、上記実施形態で例示した復調部200と同様のコンピュータ(CPUなど)に、上述した機能と同様の機能を実現させるためのプログラムを実行させることで、本発明にかかる受信装置として機能させることができる。
【0126】
このようなプログラムの適用方法は任意であり、例えば、CD−ROMやメモリカードなどの記憶媒体に格納して適用できる他、例えば、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。
【0127】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明を適用し得る実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0128】
(付記1)
受信波を高周波数にて増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器の周波数帯から後段の周波数帯への周波数変換をおこなう周波数変換器と、前記周波数変換器で周波数変換された信号を増幅する第2の増幅器と、前記第2の増幅器で増幅された信号を復調する復調器と、を備える受信装置において、
前記復調器は、
前記第2の増幅器からの出力信号に基づいて、前記受信装置の受信信号の電力を算出する電力算出手段と、
妨害波の影響による前記受信信号の受信品質を検出する受信品質検出手段と、
前記電力算出手段が算出した電力と前記受信品質検出手段の検出結果とに基づいて、前記妨害波による影響を判別し、該妨害波による影響があると判別した場合に、前記第1の増幅器と前記第2の増幅器とのゲイン割合を制御するゲイン制御手段と、を備える、
ことを特徴とする受信装置。
【0129】
(付記2)
前記ゲイン制御手段は、
前記受信品質検出手段による検出結果に基づいて、前記受信信号に妨害波の影響があると判別した場合には、前記第1の増幅器での歪み特性が向上するように前記ゲイン割合を制御する、
ことを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0130】
(付記3)
前記受信品質検出手段は、前記復調器の入出力信号から、妨害波によって低下する事項の検出をおこない、
前記ゲイン制御手段は、前記受信品質検出手段が検出した事項によって受信品質が所定の閾値よりも低い場合に、前記ゲイン割合の制御をおこなう、
ことを特徴とする付記1または2に記載の受信装置。
【0131】
(付記4)
前記周波数変換器で周波数変換された信号を濾波する第1のフィルタと、
前記第2の増幅器で増幅された信号が希望周波数帯となるよう濾波する第2のフィルタと、
前記第1のフィルタの帯域特性として、希望チャネルの周波数帯域分をカバーする第1の帯域特性と、該希望チャネルと隣接チャネルの一部を含む周波数帯域分をカバーする第2の帯域特性とを切り替える帯域切替手段と、
をさらに備え、
前記電力算出手段は、前記第1のフィルタの帯域特性が前記第2の帯域特性に切り替えられた後に、前記第2のフィルタによる濾波前の信号電力と、該第2のフィルタによる濾波後の信号電力とを算出し、
前記ゲイン制御手段は、前記第2のフィルタによる濾波前の信号電力と、前記第2のフィルタによる濾波後の信号電力との差分から、妨害波が混入していると判別した場合に前記ゲイン割合の制御をおこない、
前記帯域切替手段は、前記ゲイン制御手段による妨害波の検出動作後に、前記第1のフィルタの帯域特性を、前記第2の帯域特性から前記第1の帯域特性に切り替える、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1つに記載の受信装置。
【0132】
(付記5)
前記復調器は、前記ゲイン割合を能動的に変更するゲイン変更手段をさらに備え、
前記ゲイン制御手段は、前記ゲイン変更手段が前記ゲイン割合を変更した後に、前記妨害波による影響を判別する、
ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1つに記載の受信装置。
【0133】
(付記6)
前記第1の増幅器のゲインを複数段設定したゲインステートテーブルを格納する記憶手段をさらに備え、
前記ゲイン制御手段、及び/又は、前記ゲイン変更手段は、前記記憶手段に格納された前記ゲインステートテーブルに基づいて、前記第1の増幅器のゲインを決定する、
ことを特徴とする付記5に記載の受信装置。
【0134】
(付記7)
受信波を高周波数にて増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器の周波数帯から後段の周波数帯への周波数変換をおこなう周波数変換器と、前記周波数変換器で周波数変換された信号を増幅する第2の増幅器と、前記第2の増幅器で増幅された信号を復調する復調器と、を備える受信装置を制御するコンピュータに、
前記第2の増幅器からの出力信号に基づいて、前記受信装置の受信信号の電力を算出する機能と、
妨害波の影響による前記受信信号の受信品質を検出する機能と、
前記算出された電力と前記検出の結果とに基づいて、前記妨害波による影響を判別し、該妨害波による影響があると判別した場合に、前記第1の増幅器と前記第2の増幅器とのゲイン割合を制御する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0135】
1…受信装置、10…RF回路部、11…RFアンプ、12…周波数変換部、13…ローカル発振器、14…アナログフィルタ、15…IFアンプ、20…復調回路部、21…ADC、22…デジタルフィルタ、23…記憶部、24…AGC部、200…復調部、210…受信電力算出機能、220…復調機能、230…受信品質検出機能、240…ゲイン制御機能、250…フィルタ切替機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信波を高周波数にて増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器の周波数帯から後段の周波数帯への周波数変換をおこなう周波数変換器と、前記周波数変換器で周波数変換された信号を増幅する第2の増幅器と、前記第2の増幅器で増幅された信号を復調する復調器と、を備える受信装置において、
前記復調器は、
前記第2の増幅器からの出力信号に基づいて、前記受信装置の受信信号の電力を算出する電力算出手段と、
妨害波の影響による前記受信信号の受信品質を検出する受信品質検出手段と、
前記電力算出手段が算出した電力と前記受信品質検出手段の検出結果とに基づいて、前記妨害波による影響を判別し、該妨害波による影響があると判別した場合に、前記第1の増幅器と前記第2の増幅器とのゲイン割合を制御するゲイン制御手段と、を備える、
ことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記ゲイン制御手段は、
前記受信品質検出手段による検出結果に基づいて、前記受信信号に妨害波の影響があると判別した場合には、前記第1の増幅器での歪み特性が向上するように前記ゲイン割合を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記受信品質検出手段は、前記復調器の入出力信号から、妨害波によって低下する事項の検出をおこない、
前記ゲイン制御手段は、前記受信品質検出手段が検出した事項によって受信品質が所定の閾値よりも低い場合に、前記ゲイン割合の制御をおこなう、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記周波数変換器で周波数変換された信号を濾波する第1のフィルタと、
前記第2の増幅器で増幅された信号が希望周波数帯となるよう濾波する第2のフィルタと、
前記第1のフィルタの帯域特性として、希望チャネルの周波数帯域分をカバーする第1の帯域特性と、該希望チャネルと隣接チャネルの一部を含む周波数帯域分をカバーする第2の帯域特性とを切り替える帯域切替手段と、
をさらに備え、
前記電力算出手段は、前記第1のフィルタの帯域特性が前記第2の帯域特性に切り替えられた後に、前記第2のフィルタによる濾波前の信号電力と、該第2のフィルタによる濾波後の信号電力とを算出し、
前記ゲイン制御手段は、前記第2のフィルタによる濾波前の信号電力と、前記第2のフィルタによる濾波後の信号電力との差分から、妨害波が混入していると判別した場合に前記ゲイン割合の制御をおこない、
前記帯域切替手段は、前記ゲイン制御手段による妨害波の検出動作後に、前記第1のフィルタの帯域特性を、前記第2の帯域特性から前記第1の帯域特性に切り替える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記復調器は、前記ゲイン割合を能動的に変更するゲイン変更手段をさらに備え、
前記ゲイン制御手段は、前記ゲイン変更手段が前記ゲイン割合を変更した後に、前記妨害波による影響を判別する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記第1の増幅器のゲインを複数段設定したゲインステートテーブルを格納する記憶手段をさらに備え、
前記ゲイン制御手段、及び/又は、前記ゲイン変更手段は、前記記憶手段に格納された前記ゲインステートテーブルに基づいて、前記第1の増幅器のゲインを決定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の受信装置。
【請求項7】
受信波を高周波数にて増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器の周波数帯から後段の周波数帯への周波数変換をおこなう周波数変換器と、前記周波数変換器で周波数変換された信号を増幅する第2の増幅器と、前記第2の増幅器で増幅された信号を復調する復調器と、を備える受信装置を制御するコンピュータに、
前記第2の増幅器からの出力信号に基づいて、前記受信装置の受信信号の電力を算出する機能と、
妨害波の影響による前記受信信号の受信品質を検出する機能と、
前記算出された電力と前記検出の結果とに基づいて、前記妨害波による影響を判別し、該妨害波による影響があると判別した場合に、前記第1の増幅器と前記第2の増幅器とのゲイン割合を制御する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−191428(P2012−191428A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53049(P2011−53049)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】