説明

受信装置、アンテナ切替方法、アンテナ切替プログラム及びその記録媒体

【課題】
選局された希望局が発信した放送コンテンツの再生品質の向上及び維持を図る。
【解決手段】
検出部144が、選局すべき希望局に対応する受信信号の電界強度の信号レベルSLD、希望波の周波数帯におけるマルチパスレベルMPL、隣接局に対応する受信信号の電界強度の信号レベルNLM,NLPを検出し、処理制御部192へ送る。また、処理制御部192が、信号レベルSLD,NLM,NLPに基づいて、隣接妨害の混入度を評価する。そして、処理制御部192は、信号レベルSLDに基づき電界強度が弱電界境界の場合、又は、信号レベルSLDに基づき電界強度が中電界境界であり、かつ、隣接妨害の混入度が所定混入度以上である場合に、より利得の高いメインアンテナを再生用アンテナとして選択するアンテナ切替指令SLSをアンテナ切替部120へ送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、アンテナ切替方法、アンテナ切替プログラム、及び、当該アンテナ切替プログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、FM(Frequency Modulation)放送波を受信して処理し、放送コンテンツを再生する受信装置が広く普及している。こうした受信装置では、特に、車両等の移動体に搭載される場合には、指向性の異なる複数のアンテナで放送波を受信したうえで、高い受信品質で希望放送波を受信しているアンテナを選択し、当該選択されたアンテナによる受信結果に基づいて、放送コンテンツを再生するアンテナダイバーシティ方式が、一般的に採用されている。
【0003】
かかるアンテナダイバーシティ方式を採用した受信装置において、受信放送波の電界強度に基づいて、コンテンツ再生用に利用するアンテナを固定するか、ノイズ量に対応した切替を可能とするかを決定する技術が提案されている(特許文献1参照:以下、「従来例」という)。この従来例の技術では、受信放送波の電界強度が、所定電界強度未満である弱電界環境の場合には、コンテンツ再生用に利用するアンテナを固定する。一方、受信放送波の電界強度が、所定電界強度以上である中電界環境又は強電界環境の場合には、ノイズ量に対応した切替を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−85578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来例の技術では、受信放送波の電界強度のみに基づいて、アンテナ切替の制御を決定している。しかしながら、発明者が研究開発の結果として、互いに受信利得が異なる2つのアンテナを備える受信装置においては、中電界環境下では、周波数軸上で希望局に隣接する隣接局から発信された隣接放送波による隣接妨害量が多い場合、コンテンツ再生用のアンテナを利得の高い方のアンテナに固定する方が、コンテンツ再生品質を維持できる、との知見を得た。
【0006】
このため、互いに受信利得が異なる2つのアンテナを備える受信装置において、希望放送波の電界強度及び隣接妨害量の双方を合理的に考慮して、コンテンツ再生用に利用するアンテナを、一方のアンテナに固定するか、ノイズ量に対応したアンテナ切替を行うようするかを決定することができる技術が望まれている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0007】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、互いに利得が異なる複数のアンテナのいずれかで受信した放送波に基づいて、選局された希望局が発信した放送コンテンツを再生する場合に、再生品質を向上及び維持させることができる新たな受信装置及びアンテナ切替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、第1のアンテナと;前記第1のアンテナより利得が低い第2のアンテナと:アンテナ切替指令に応じて、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナのうちから1つのアンテナを選択するアンテナ切替部と;希望波の周波数帯の信号を、所定の中間周波数帯の信号に変換する高周波処理部と;前記希望波の電界強度を検出する第1検出部と;前記希望波の周波数帯域におけるマルチパスノイズのレベルを検出する第2検出部と;前記希望波を発信した放送局に、周波数に関して隣接する隣接放送局から発信された隣接波の電界強度を検出する第3検出部と;前記第1検出部により検出された電界強度及び前記第3検出部により検出された電界強度に基づいて、前記希望波の信号における前記隣接波の信号の混入度を評価する評価部と;前記第1〜3検出部による検出結果に基づいて、前記アンテナ切替指令を発行して前記アンテナ切替部を制御する制御部と;を備え、前記制御部は、前記第1検出部により検出された電界強度が第1所定電界強度より高い場合に、前記第1検出部により検出された電界強度が、前記第1所定電界強度よりも高い第2所定電界強度以上である第1条件を満たす場合、又は、前記第1検出部により検出された電界強度が前記第2所定電界強度未満であり、かつ、前記評価された混入度が所定混入度未満である第2条件を満たす場合に、前記マルチパスノイズのレベルが第1所定マルチパスノイズレベル以上のときに、前記アンテナ切替指令として、アンテナ切替を行うべき旨の指令を、前記アンテナ切替部へ送り、前記第1検出部により検出された電界強度が前記第2所定電界強度未満であり、かつ、前記評価された混入度が前記所定混入度以上である第3条件を満たす場合に、前記アンテナ切替指令として、前記第1のアンテナに固定すべき旨の指令を、前記アンテナ切替部へ送る、ことを特徴とする受信装置である。
【0009】
請求項5に記載の発明は、第1のアンテナと;前記第1のアンテナより利得が低い第2のアンテナと:アンテナ切替指令に応じて、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナのうちから1つのアンテナを選択するアンテナ切替部と;希望波の周波数帯の信号を、所定の中間周波数帯の信号に変換する高周波処理部と;を備える受信装置において使用されるアンテナ切替方法であって、前記希望波の電界強度を検出する第1検出工程と;前記希望波の周波数帯域におけるマルチパスノイズのレベルを検出する第2検出工程と;前記希望波を発信した放送局に、周波数に関して隣接する隣接放送局から発信された隣接波の電界強度を検出する第3検出工程と;前記第1検出工程において検出された電界強度及び前記第3検出工程において検出された電界強度に基づいて、前記希望波の信号における前記隣接波の信号の混入度を評価する評価工程と;前記第1〜3検出工程における検出結果に基づいて、前記アンテナ切替指令を発行して前記アンテナ切替部を制御する制御工程と;を備え、前記制御工程では、前記第1検出工程において検出された電界強度が第1所定電界強度より高い場合に、前記第1検出工程において検出された電界強度が、前記第1所定電界強度よりも高い第2所定電界強度以上である第1条件を満たす場合、又は、前記第1検出工程において検出された電界強度が前記第2所定電界強度未満であり、かつ、前記評価された混入度が所定混入度未満である第2条件を満たす場合に、前記マルチパスノイズのレベルが所定マルチパスノイズレベル以上のときに、前記アンテナ切替指令として、アンテナ切替を行うべき旨の指令を、前記アンテナ切替部へ送り、前記第1検出工程において検出された電界強度が前記第2所定電界強度未満であり、かつ、前記評価された混入度が前記所定混入度以上である第3条件を満たす場合に、前記アンテナ切替指令として、前記第1のアンテナに固定すべき旨の指令を、前記アンテナ切替部へ送る、ことを特徴とするアンテナ切替方法である。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のアンテナ切替方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とするアンテナ切替プログラムである。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のアンテナ切替プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1のフィルタユニットの構成を示すブロック図である。
【図3】図2のBPF部の特性を示す図である。
【図4】図2の可変BPF部の特性を示す図である。
【図5】図2の適応フィルタ部の構成を示すブロック図である。
【図6】図2の検出部の構成を示すブロック図である。
【図7】図6のBPF部224の特性を示す図である。
【図8】図6のBPF部225の特性を示す図である。
【図9】図1の再生処理ユニットの構成を示すブロック図である。
【図10】図1の受信制御ユニットの構成を示すブロック図である。
【図11】図10の処理制御部によるアンテナ切替の制御を説明するためのフローチャートである。
【図12】図11のアンテナ切替処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図12を参照して説明する。なお、本実施形態においては、車両に搭載されたFMラジオ受信装置を例示して説明する。また、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
[構成]
図1には、一実施形態に係る受信装置100の概略的な構成がブロック図にて示されている。
【0015】
図1に示されるように、受信装置100は、第1のアンテナとしてのメインアンテナ1101と、第2のアンテナとしてのサブアンテナ1102と、アンテナ切替部120と、RF処理ユニット130とを備えている。また、受信装置100は、フィルタユニット140と、再生処理ユニット150と、アナログ処理ユニット160とを備えている。さらに、受信装置100は、スピーカユニット170と、操作入力ユニット180と、受信制御ユニット190とを備えている。
【0016】
上記のメインアンテナ1101は、放送波を受信する。メインアンテナ1101による受信結果は、受信信号RFS1(以下、「信号RFS1」と呼ぶ)として、アンテナ切替部120へ送られる。このメインアンテナ1101は、サブアンテナ1102より利得が高いアンテナとなっている。
【0017】
上記のサブアンテナ1102は、放送波を受信する。サブアンテナ1102による受信結果は、受信信号RFS2(以下、「信号RFS2」と呼ぶ)として、アンテナ切替部120へ送られる。
【0018】
上記のアンテナ切替部120は、端子A、端子B及び端子Cを有しており、受信制御ユニット190から送られたアンテナ切替指令SLSに応じて、端子Aと端子Cとを接続したり、端子Bと端子Cとを接続したりする。ここで、端子Aはメインアンテナ1101と接続され、端子Bはサブアンテナ1102と接続されている。また、端子Cは、RF処理ユニット130の入力端子と接続されている。
【0019】
アンテナ切替部120では、アンテナ切替指令SLSにより「A選択」指定がなされると、端子Aと端子Cとが接続される。この結果、アンテナ切替部120からは、信号RFS1が、信号RFSとして、RF処理ユニット130へ送られる。
【0020】
また、アンテナ切替部120では、アンテナ切替指令SLSにより「B選択」指定がなされると、端子Bと端子Cとが接続される。この結果、アンテナ切替部120からは、信号RFS2が、信号RFSとして、RF処理ユニット130へ送られる。
【0021】
上記のRF処理ユニット130は、受信制御ユニット190から送られた選局指令CSLに従って、選局すべき希望局の信号を信号RFSから抽出する選局処理を行い、所定の中間周波数帯の成分を有する信号IFDとして、フィルタユニット140へ送る。このRF処理ユニット130は、入力フィルタと、高周波増幅器(RF−AMP:Radio Frequency-Amplifier)と、バンドパスフィルタ(以下、「RFフィルタ」とも呼ぶ)とを備えている。また、RF処理ユニット130は、ミキサ(混合器)と、AD(Analogue to Digital)変換器と、局部発振回路(OSC)とを備えている。
【0022】
ここで、入力フィルタは、アンテナ切替部120から送られた信号RFSの低周波成分を遮断するハイパスフィルタである。高周波増幅器は、入力フィルタを通過した信号を増幅する。RFフィルタは、高周波増幅器から出力された信号のうち、高周波帯の信号を選択的に通過させる。ミキサは、RFフィルタを通過した信号と、局部発振回路から供給された局部発振信号とを混合する。AD変換器は、ミキサによる混合結果をAD変換して信号IFDを生成し、生成された信号IFDをフィルタユニット140へ送る。
【0023】
なお、局部発振回路は、電圧制御等により発振周波数の制御が可能な発振器等を備えて構成される。この局部発振回路は、受信制御ユニット190から送られた選局指令CSLに従って、選局すべき希望局に対応する周波数の局部発振信号を生成し、ミキサへ供給する。
【0024】
上記のフィルタユニット140は、RF処理ユニット130から送られた信号IFDを受ける。そして、フィルタユニット140は、いわゆるマルチパスの発生による受信信号の歪みを除去、及び、隣接妨害を除去するためのフィルタリング処理を行う。フィルタユニット140は、フィルタリング処理結果を、信号FLDとして、再生処理ユニット150へ送る。また、フィルタユニット140は、選局すべき希望局に対応する受信信号の電界強度の検出結果を、信号レベルSLDとして、再生処理ユニット150へ送る。また、フィルタユニット140は、信号レベルSLD、及び、希望波の周波数帯におけるマルチパスレベルMPL、並びに、隣接局に対応する受信信号の電界強度の検出結果である下方隣接局レベルNLM、上方隣接局レベルNLPを受信制御ユニット190へ送る。フィルタユニット140の詳細な構成については、後述する。
【0025】
上記の再生処理ユニット150は、フィルタユニット140から送られた信号FLD及び信号レベルSLDを受ける。そして、再生処理ユニット150は、信号FLDに対して検波処理を施した後に、検波結果に対して信号加工処理を施す。そして、信号加工処理結果にステレオ復調処理を施して信号DMDを生成し、生成された信号DMDをアナログ処理ユニット160へ送る。ここで、信号DMDは、レフトチャンネル(以下、「Lチャンネル」)信号及びライトチャンネル(以下、「Rチャンネル」)信号の2つの信号から構成されている。また、信号加工処理には、信号レベルSLDを参照して行われるLチャンネル信号及びRチャンネル信号へのセパレーション処理等が含まれている。
【0026】
なお、再生処理ユニット150の詳細な構成については、後述する。
【0027】
上記のアナログ処理ユニット160は、再生処理ユニット150からの信号DMDを受ける。そして、アナログ処理ユニット160は、受信制御ユニット190による制御のもとで、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット170へ送る。
【0028】
アナログ処理ユニット160は、DA(Digital to Analogue)変換部と、音量調整部と、パワー増幅部とを備えて構成されている。ここで、DA変換部は、再生処理ユニット150から送られた信号DMDを受ける。そして、DA変換部は、信号DMDをアナログ信号に変換する。なお、DA変換部は、信号DMDに含まれるLチャンネル信号及びRチャンネル信号に対応して、互いに同様に構成された2個のDA(Digital to Analogue)変換器を備えている。DA変換部によるアナログ変換結果は音量調整部へ送られる。
【0029】
また、音量調整部は、DA変換部から送られたLチャンネル及びRチャンネルのアナログ変換結果信号を受ける。そして、音量調整部は、受信制御ユニット190からの音量調整指令VLCに従って、Lチャンネル及びRチャンネルのそれぞれに対応するアナログ変換結果信号に対して音量調整処理を施す。なお、音量調整部は、本実施形態では、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個の電子ボリューム素子等を備えて構成されている。音量調整部による調整結果の信号は、パワー増幅部へ送られる。
【0030】
パワー増幅部は、音量調整部から送られたLチャンネル及びRチャンネルの音量調整結果の信号を受ける。そして、パワー増幅部は、音量調整結果の信号をパワー増幅する。なお、パワー増幅部は、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個のパワー増幅器を備えている。パワー増幅部による増幅結果である出力音声信号AOSは、スピーカユニット170へ送られる。
【0031】
上記のスピーカユニット170は、Lチャンネルスピーカ及びRチャンネルスピーカを備えている。このスピーカユニット170は、アナログ処理ユニット160から送られた出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
【0032】
上記の操作入力ユニット180は、受信装置100の本体部に設けられたキー部、あるいはキー部を備えるリモート入力装置等により構成される。ここで、本体部に設けられたキー部としては、不図示の表示ユニットに設けられたタッチパネルを用いることができる。また、キー部を有する構成に代えて、音声入力する構成を採用することもできる。操作入力ユニット180への操作入力結果は、操作入力データIPDとして受信制御ユニット190へ送られる。
【0033】
上記の受信制御ユニット190は、様々な処理を行うとともに、受信装置100の全体の動作を制御する。受信制御ユニット190の詳細な構成については、後述する。
【0034】
次に、上記のフィルタユニット140の構成について説明する。フィルタユニット140は、図2に示されるように、バンドパスフィルタ(BPF)部141と、可変バンドパスフィルタ(可変BPF)部142と、適応フィルタ部143と、検出部144とを備えている。
【0035】
上記のBPF部141は、RF処理ユニット130から送られた信号IFDを受ける。そして、BPF部141は、信号IFDに含まれる周波数成分の内で、所定の中心周波数IF0を中心として、下限周波数FLから上限周波数FUまでの範囲の周波数帯の成分を選択的に通過させる。BPF部141を通過した信号WBDは、可変BPF部142及びフ検出部144へ送られる。
【0036】
なお、BPF部141の通過帯域の下限周波数FLから上限周波数FUまでの範囲は、希望局の放送の再生に際して理想的な再生が可能な帯域となるように予め設定される。BPF部141の通過率の周波数変化特性の例が、図3に示されている。
【0037】
図3においては、中心周波数IF0より周波数の低い下方隣接局の中心周波数が「IF-」として示され、中心周波数IF0より周波数の高い上方隣接局の中心周波数が「IF+」として示されている。また、図3においては、希望局の信号の周波数分布の例が曲線SP0(F)として示され、隣接局の信号の下方隣接局及び上方隣接局の信号の周波数分布の例が曲線SP-(F),SP+(F)として示されている。こうした図3における表記は、後述する図4,7,8においても同様となっている。
【0038】
上記の可変BPF部142は、BPF部141から送られた信号WBDを受ける。そして、可変BPF部142は、受信制御ユニット190から送られた通過帯域幅指令BWCに従って、中心周波数IF0を中心とし、通過帯域幅指令BWCにより指定された通過帯域幅内の成分を選択的に通過させる。可変BPF部142を通過した信号CBDは、適応フィルタ部143へ送られる。
【0039】
なお、可変BPF部142の通過帯域幅が最大となる場合には、可変BPF部142を通過する信号の下限周波数VFLMは、上述したBPF部141を通過する信号の下限周波数FLに一致している。また、可変BPF部142を通過する信号の上限周波数VFUMは、上述したBPF部141を通過する信号の上限周波数FUに一致している。そして、可変BPF部142の通過帯域幅は、通過帯域幅指令BWCの指定により、最大通過帯域幅よりも狭い帯域幅となるようになっている。可変BPF部142の通過率の周波数変化特性の例が、図4に示されている。
【0040】
上記の適応フィルタ部143は、可変BPF部142から送られた信号CBDを受ける。そして、適応フィルタ部143は、受信制御ユニット190による制御に従って、信号CBDに対して、適応的にフィルタリング処理を施す。適応フィルタ部143によりフィルタリング処理された信号FLDは、再生処理ユニット150へ送られる。適応フィルタ部143の構成については、後述する。
【0041】
上記の検出部144は、RF処理ユニット130から送られた信号IFD、及び、BPF部141から送られた信号WBDを受ける。そして、検出部144は、信号WBDに基づいて、希望局に対応する受信信号の電界強度を反映した信号レベルSLDを検出して、受信制御ユニット190及び再生処理ユニット150へ送る。また、検出部144は、信号WBD,IFDに基づいて、希望波の周波数帯におけるマルチパスレベルMPL、並びに、隣接局に対応する受信信号の電界強度を反映した下方隣接局レベルNLM、上方隣接局レベルNLPを検出して、受信制御ユニット190へ送る。検出部144の構成については、後述する。
【0042】
次に、上記の適応フィルタ部143の構成について説明する。適応フィルタ部143は、図5に示されるように、増幅部211と、加算器212と、2N個の遅延器2131〜2312Nと、(2N+1)個の係数倍器2140〜2142Nと、加算器215とを備えている。また、適応フィルタ部143は、係数更新部216と、スイッチ部217と、スイッチ部218とを備えている。
【0043】
上記の増幅部211は、可変BPF部142からの信号CBDを受ける。そして、増幅部211は、受信制御ユニット190から送られた増幅率指令AMCによって指定された増幅率で増幅し、信号SAを生成する。こうして生成された信号SAは、加算器212へ送られる。
【0044】
上記の加算器212は、増幅部211から送られた信号SA、及び、スイッチ部217から送られた信号SBを受ける。そして、加算器212は、信号SAと信号SBとを加算し、信号X0(T)を生成する。こうして生成された信号X0(T)は、遅延器2131及び係数倍器2140へ送られる。
【0045】
上記の遅延器213j(j=1〜2N)のそれぞれは、入力した信号Xj-1(T)を単位遅延時間τだけ遅延させ、信号Xj(T)として出力する。この結果、信号Xj(T)と信号X0(T)と関係は、次の(1)式で表される。
j(T)=X0(T−j・τ) …(1)
【0046】
なお、本実施形態では、遅延器213jのそれぞれは、周期τの不図示の基準クロックに同期して信号Xj-1(T)をサンプリングして出力する。このため、単位遅延時間τの間、サンプリング結果が遅延器213jに保持されて、出力されるようになっている。ここで、遅延時間τは、信号X0(T)の信号周期の1/4となっている。
【0047】
遅延器213jにより生成された信号Xj(T)は、係数倍器214jへ向けて送られる。ここで、遅延器213Nにより生成された信号XN(T)(=YI(T))は、スイッチ部218へも送られる。なお、係数倍器2140へは、上述したように、信号X0(T)が送られるようになっている。
【0048】
上記の係数倍器214m(m=0〜2N)のそれぞれは、信号Xm(T)、及び、係数更新部216からのタップ係数Km(T)を受ける。そして、係数倍器214mは、信号Xm(T)とタップ係数Km(T)とを乗算する。この乗算の結果は、加算器215へ送られる。
【0049】
上記の加算器215は、係数倍器2140〜2142Nによる乗算結果[X0(T)・K0(T)]〜[X2N(T)・K2N(T)]を受ける。そして、加算器215は、次の(2)式により、信号YF(T)を算出する。
YF(T)=X0(T)・K0(T)+…+X2N(T)・K2N(T) …(2)
こうして算出された信号YF(T)は、スイッチ部217及びスイッチ部218へ送られる。
【0050】
上記の係数更新部216は、加算器212から送られた信号X0(T)、遅延器2131〜2132Nから送られた信号X1(T)〜X2N(T)、及びスイッチ部218から送られた信号Y(=FLD)を受ける。そして、係数更新部216は、受信制御ユニット190から送られたフィルタ選択指令FLSにより指定されフィルタリング処理指定に従い、CMA(Constant Modulus Algorithm)アルゴリズムを使用してタップ係数K0(T)〜K2N(T)を算出する。こうして算出されたタップ係数Km(T)(m=0〜2N)は、係数倍器214mへ送られる。
【0051】
ところで、受信制御ユニット190は、後述するように、フィルタ選択指令FLSにより、フィルタリング処理として、「IIR」指定、「FIR」指定及び「OFF」指定のいずれかを指定する。そして、フィルタ選択指令FLSにより「IIR」指定がなされた場合には、係数更新部216は、タップ係数K0(T)〜K2N(T)の初期値の全てを「0」とした上で、次の(3)〜(5)式により、逐次、タップ係数K0(T)〜K2N(T)を算出する。
ERR(T)=([Y(T)]2+[Y(T−τ)]2)1/2−VTH …(3)
m(T−τ)=Km(T)−α・ERR(T)・Pm(T) …(4)
m(T)=Xm(T)・Y(T)+Xm(T−τ)・Y(T―τ) …(5)
ここで、値VTHは所定の収束値であり、実験、シミュレーション、経験等により、予め定められる。また、値αは、収束速度を調整する値であり、実験、シミュレーション、経験等により予め定められる。
【0052】
また、フィルタ選択指令FLSにより「FIR」指定がなされた場合には、係数更新部216は、タップ係数K0(T)〜K2N(T)の初期値を所定値とした上で、上述の(3)〜(5)式により、逐次、タップ係数K0(T)〜K2N(T)を算出する。さらに、フィルタ選択指令FLSにより「OFF」指定がなされた場合には、係数更新部216は、タップ係数K0(T)〜K2N(T)の全てを、常時「0」とする。
【0053】
上記のスイッチ部217は、端子a及び端子bを有しており、受信制御ユニット190から送られたスイッチ制御指令SC1に従って、端子a及び端子bとを接続したり、開放したりする。ここで、端子aは、加算器212の入力端子の一方と接続されている。また、端子bは、加算器215の出力端子と接続されている。
【0054】
スイッチ部217では、スイッチ制御指令SC1により「閉」指定がなされると、端子aと端子bとが接続される。この結果、加算器215から出力された信号YFが、加算器212に送られることになる。
【0055】
また、スイッチ部217では、スイッチ制御指令SC1により「開」指定がなされると、端子aと端子bとが非接続とされる。そして、端子bからは「0」値信号が、加算器212に送られることになる。
【0056】
上記のスイッチ部218は、端子c、端子d及び端子eを有しており、受信制御ユニット190から送られたスイッチ制御指令SC2に従って、端子cと端子dとを接続したり、端子cと端子eとを接続したりする。ここで、端子cは、再生処理ユニット150の入力端子と接続されている。また、端子dは、加算器215の出力端子と接続されている。また、端子eは、遅延器213Nの出力端子と接続されている。
【0057】
スイッチ部218では、スイッチ制御指令SC2により「d選択」指定がなされると、端子cと端子dとが接続される。この結果、適応フィルタ部143からは、信号YFが、信号FLDとして、再生処理ユニット150へ送られる。
【0058】
また、スイッチ部218では、スイッチ制御指令SC2により「e選択」指定がなされると、端子cと端子eとが接続される。この結果、適応フィルタ部143からは、信号YIが、信号FLDとして、再生処理ユニット150へ送られる。
【0059】
次に、上記の検出部144の構成について説明する。検出部144は、図6に示されるように、第1検出部としてのレベル検出部221と、第2検出部の一部としての振幅変調(AM)成分抽出部222と、第2検出部の一部としてのレベル検出部223とを備えている。また、検出部144は、第3検出部の一部としてのBPF部224,225と、第3検出部の一部としてのレベル検出部226,227とを備えている。
【0060】
上記のレベル検出部221は、BPF部141から送られた信号WBDを受ける。そして、レベル検出部221は、信号WBDのレベルを検出する。このレベル検出部221による検出結果は、選局されている希望局の放送波の電界強度を反映したものとなっている。レベル検出部221による検出結果は、信号レベルSLDとして、受信制御ユニット190及び再生処理ユニット150へ送られる。
【0061】
上記のAM成分抽出部222は、BPF部141から送られた信号WBDを受ける。そして、AM成分抽出部222は、信号WBDのAM変調成分を抽出する。かかるAM変調成分は、マルチパスフェーディングの影響により発生するものである。AM成分抽出部222による抽出結果は、信号MPDとして、レベル検出部223へ送られる。
【0062】
上記のレベル検出部223は、AM成分抽出部222から送られた信号MPDを受ける。そして、レベル検出部223は、信号MPDのレベルを検出する。このレベル検出部223による検出結果は、マルチパスフェーディングの影響度を反映したものとなっている。レベル検出部223による検出結果は、マルチパスレベルMPLとして、受信制御ユニット190へ送られる。
【0063】
上記のBPF部224は、RF処理ユニット130から送られた信号IFDを受ける。そして、BPF部224は、上述した周波数IF-(図3参照)を中心とする狭帯域の成分を通過させる。BPF部224を通過した信号NMDは、レベル検出部226へ送られる。なお、BPF部224の通過率の周波数変化特性の例が、図7に示されている。
【0064】
上記のBPF部225は、RF処理ユニット130から送られた信号IFDを受ける。そして、BPF部225は、上述した周波数IF+(図3参照)を中心とする狭帯域の成分を通過させる。BPF部225を通過した信号NPDは、レベル検出部227へ送られる。なお、BPF部225の通過率の周波数変化特性の例が、図8に示されている。
【0065】
上記のレベル検出部226は、BPF部224から送られた信号NMDを受ける。そして、レベル検出部226は、信号NMDのレベルを検出する。このレベル検出部226による検出結果は、周波数IF-を中心周波数とする下方隣接局の電界強度、ひいては信号WBDにおける下方隣接局の信号の混入度を反映している。レベル検出部226による検出結果は、下方隣接局レベルNLMとして、受信制御ユニット190へ送られる。
【0066】
上記のレベル検出部227は、BPF部225から送られた信号NPDを受ける。そして、レベル検出部227は、信号NPDのレベルを検出する。このレベル検出部227による検出結果は、周波数IF+を中心周波数とする上方隣接局の電界強度、ひいては信号WBDにおける上方隣接局の信号の混入度を反映している。レベル検出部227による検出結果は、上方隣接局レベルNLPとして、受信制御ユニット190へ送られる。
【0067】
次に、上記の再生処理ユニット150の構成について説明する。再生処理ユニット150は、図9に示されるように、検波部151と、信号加工部152と、ステレオ復調部153とを備えている。
【0068】
上記の検波部151は、フィルタユニット140から送られた信号FLDを受ける。そして、検波部151は、信号FLDに対して、所定方式でデジタル検波処理を施してコンポジット信号である検波信号DADを生成する。こうして生成された検波信号DADは、信号加工部152へ送られる。
【0069】
上記の信号加工部152は、検波部151から送られた検波信号DAD、及び、フィルタユニット140から送られた信号レベルSLDを受ける。そして、信号加工部152は、信号レベルSLDに対応した制御量で、検波信号DADに対して、ミュート制御処理、ハイカット制御処理及びセパレーション制御処理を施す。信号加工部152による処理によって加工された信号は、加工信号MDDとして、ステレオ復調部153へ送られる。
【0070】
ここで、ミュート制御に際して、信号加工部152は、信号レベルSLDが所定値SLDTM以下の場合に、ミュート制御を実行する。こうしたミュート制御では、信号レベルSLDが小さくなるほど、信号加工部152は、ミュート度を増加させるようになっている。
【0071】
また、ハイカット制御に際して、信号加工部152は、信号レベルSLDが所定値SLDTH以下の場合に、ハイカット制御を実行する。こうしたハイカット制御では、信号レベルSLDが小さくなるほど、信号加工部152は、ハイカットされる周波数範囲を広げるようになっている。
【0072】
また、セパレーション制御に際して、信号加工部152は、信号レベルSLDが所定値SLDTS以下の場合に、セパレーション制御を実行する。こうしたセパレーション制御では、信号レベルSLDが小さくなるほど、信号加工部152は、セパレーション度を低減させる制御を行うようになっている。
【0073】
なお、所定値SLDTM、所定値SLDTH、所定値SLDTSは一例として、所定値SLDTM<所定値SLDTH<所定値SLDTSとすることができる。
【0074】
上記のステレオ復調部153は、信号加工部152から送られた加工信号MDDを受ける。そして、ステレオ復調部153は、加工信号MDDに対してステレオ復調処理を施す。このステレオ復調結果が、信号DMDとして、アナログ処理ユニット160へ送られる。
【0075】
次に、上記の受信制御ユニット190の構成について説明する。受信制御ユニット190は、図10に示されるように、指令入力処理部191と、制御部、評価部としての処理制御部192とを備えている。
【0076】
上記の指令入力処理部191は、操作入力ユニット180から送られた操作入力データIPDを受ける。この操作入力データIPDの内容が選局指定であった場合には、指令入力処理部191は、指定された希望局に対応する選局指令CSLを生成して、RF処理ユニット130へ送る。また、操作入力データIPDの内容が音量調整指定であった場合には、指令入力処理部191は、指定された音量調整指定に対応する音量調整指令VLCを生成して、アナログ処理ユニット160へ送る。
【0077】
上記の処理制御部192は、カウンタ機能を内蔵しており、検出部144から送られた信号レベルSLD、マルチパスレベルMPL、下方隣接局レベルNLM及び上方隣接局レベルNLPを受ける。そして、処理制御部192は、これらのレベルSLD,MPL,NLM,NLPに基づいて、メインアンテナ1101及びサブアンテナ1102のいずれを再生用アンテナとして選択すべきかを指定したアンテナ切替指令SLSを生成して、アンテナ切替部120へ送る。ここで、処理制御部192は、メインアンテナ1101を再生用アンテナとして選択する場合には、「A選択」を指定するアンテナ切替指令SLSをアンテナ切替部120へ送る。また、処理制御部192は、サブアンテナ1102を再生用アンテナとして選択する場合には、「B選択」を指定するアンテナ切替指令SLSをアンテナ切替部120へ送る。かかるアンテナ切替制御処理については、後述する。
【0078】
また、処理制御部192は、上述したレベルSLD,MPL,NLM,NLPに基づいて、適応フィルタ部143のフィルタリング処理のモードを決定する。かかるモード決定処理については、後述する。
【0079】
ここで、処理制御部192が決定するフィルタリング処理のモードとしては、IIRモード、FIRモード及びOFFモードがある。処理制御部192は、フィルタリング処理のモードをIIRモードに決定すると、増幅率AIを指定する増幅率指令AMCを適応フィルタ部143へ送るとともに、「閉」を指定するスイッチ制御指令SC1を適応フィルタ部143へ送る。また、処理制御部192は、フィルタリング処理のモードをIIRモードに決定すると、「e選択」を指定するスイッチ制御指令SC2を適応フィルタ部143へ送るとともに、「IIR」を指定するフィルタ選択指令FLSを適応フィルタ部143へ送る。この結果、適応フィルタ部143は、信号YFを帰還させつつタップ係数を更新するとともに、信号YIを信号FLDとして再生処理ユニット150へ送るIIR型適応フィルタリングとして動作する(図5参照)。
【0080】
なお、増幅率AIは、IIR型適応フィルタリング動作の安定性の観点から、実験、シミュレーション、実験等に基づいて、予め定められる。
【0081】
処理制御部192は、フィルタリング処理のモードをFIRモードに決定すると、増幅率AF(>AI)を指定する増幅率指令AMCを適応フィルタ部143へ送るとともに、「開」を指定するスイッチ制御指令SC1を適応フィルタ部143へ送る。また、処理制御部192は、フィルタリング処理のモードをFIRモードに決定すると、「d選択」を指定するスイッチ制御指令SC2を適応フィルタ部143へ送るとともに、「FIR」を指定するフィルタ選択指令FLSを適応フィルタ部143へ送る。この結果、適応フィルタ部143は、信号YFを帰還させずにタップ係数を更新するとともに、信号YFを信号FLDとして再生処理ユニット150へ送るFIR型適応フィルタリングとして動作する(図5参照)。
【0082】
なお、増幅率AFは、FIR型適応フィルタリング動作の安定性の観点から、実験、シミュレーション、実験等に基づいて、予め定められる。
【0083】
処理制御部192は、フィルタリング処理のモードをOFFモードに決定すると、「開」を指定するスイッチ制御指令SC1を適応フィルタ部143へ送る。また、処理制御部192は、フィルタリング処理のモードをOFFモードに決定すると、「e選択」を指定するスイッチ制御指令SC2を適応フィルタ部143へ送るとともに、「OFF」を指定するフィルタ選択指令FLSを適応フィルタ部143へ送る。この結果、適応フィルタ部143は、フィルタリング処理を行わずに、信号YIを信号FLDとして再生処理ユニット150へ送る(図5参照)。
【0084】
また、処理制御部192は、信号レベルSLD、下方隣接局レベルNLM及び上方隣接局レベルNLPに基づいて、可変BPF部142の通過帯域幅を決定する。そして、処理制御部192は、決定された通過帯域幅を指定した通過帯域幅指令BWCを可変BPF部142へ送る。通過帯域幅決定処理については、後述する。
【0085】
[動作]
以上のようにして構成された受信装置100の動作について、処理制御部192によるアンテナ切替部120に対するアンテナ切替処理、及び、適応フィルタ部143のフィルタリング処理のモード決定処理に主に着目して説明する。
【0086】
前提として、操作入力ユニット180には既に利用者により選局指定が入力されており、指定された希望局に対応する選局指令CSLが、RF処理ユニット130へ送られているものとする。また、操作入力ユニット180には既に利用者により音量調整指定が入力されており、指定された音量調整態様に対応する音量調整指令VLCが、アナログ処理ユニット160へ送られているものとする(図1参照)。
【0087】
こうした状態で、アンテナ切替部120のC端子と導通しているアンテナで放送波を受信すると、受信信号RFSが、アンテナ切替部120からRF処理ユニット130へ送られる。そして、RF処理ユニット130において、選局すべき希望局の信号の中心周波数を、上述した中心周波数IF0とする態様の周波数変換が行われた後、AD変換が行われる。このAD変換の結果が、信号IFDとして、フィルタユニット140へ送られる(図1参照)。
【0088】
フィルタユニット140では、BPF部141及び検出部144が、信号IFDを受ける。信号IFDを受けたBPF部141は、信号IFDに含まれる周波数成分の内で、所定の中心周波数IF0を中心として、下限周波数FLから上限周波数FUまでの範囲の周波数帯の成分を選択的に通過させ、信号WBDとして、可変BPF部142及び検出部144へ送る(図2参照)。
【0089】
検出部144では、BPF部224,225が、信号IFDを受ける。信号IFDを受けたBPF部224は、周波数IF-を中心とする狭帯域の成分を通過させ、信号NMDとして、レベル検出部226へ送る。そして、レベル検出部226が、信号NMDのレベルを検出し、検出結果を、下方隣接局レベルNLMとして、処理制御部192へ送る(図6参照)。
【0090】
また、信号IFDを受けたBPF部225は、周波数IF+を中心とする狭帯域の成分を通過させ、信号NPDとして、レベル検出部227へ送る。そして、レベル検出部227が、信号NPDのレベルを検出し、検出結果を、上方隣接局レベルNLPとして、処理制御部192へ送る(図6参照)。
【0091】
一方、検出部144では、レベル検出部221及びAM成分抽出部222が、BPF部141から送られた信号WBDを受ける。信号WBDを受けたレベル検出部221は、信号WBDのレベルを検出し、検出結果を、信号レベルSLDとして、処理制御部192及び再生処理ユニット150へ送る(図6参照)。
【0092】
また、信号WBDを受けたAM成分抽出部222は、信号WBDのAM変調成分を抽出し、抽出結果を、信号MPDとして、レベル検出部223へ送る。そして、レベル検出部223が、信号MPDのレベルを検出し、検出結果を、マルチパスレベルMPLとして、処理制御部192へ送る(図6参照)。
【0093】
上述のようにして検出された信号レベルSLD、マルチパスレベルMPL、下方隣接局レベルNLM及び上方隣接局レベルNLPに基づいて、処理制御部192が、可変BPF部142の通過帯域幅の決定処理、アンテナ切替部120に対するアンテナ切替制御処理、及び、適応フィルタ部143のフィルタリング処理のモードの決定処理を行う。
【0094】
<可変BPF部142の通過帯域幅の決定処理>
可変BPF部142の通過帯域幅の決定に際して、処理制御部192は、まず、下方隣接局レベルNLM及び上方隣接局レベルNLPのうちから、レベルの高いものを選択する。こうして選択されたレベルを、以下において「隣接局レベルNLV」と呼ぶ。
【0095】
次に、処理制御部192は、隣接局レベルNLVと信号レベルSLDとのレベル比NLR(=NLV/SLD)とを算出する。引き続き、処理制御部192は、レベル比NLRに基づいて、BPF部141を通過した出力される信号WBDにおける隣接妨害成分の混入度を評価する。
【0096】
次いで、処理制御部192は、評価された混入度に基づいて、可変BPF部142の通過帯域幅を決定する。そして、処理制御部192は、決定された通過帯域幅を指定した通過帯域幅指令BWCを可変BPF部142へ送る。
【0097】
なお、処理制御部192は、評価された混入度が低いほど、通過帯域幅を広く決定するようになっている。
【0098】
通過帯域幅指令BWCを受けた可変BPF部142は、通過帯域幅指令BWCにより指定された通過帯域幅を有し、中心周波数IF0を中心とする帯域内の信号WBD内の成分を通過させる。可変BPF部142を通過した信号CBDは、適応フィルタ部143へ送られる。
【0099】
<アンテナ切替制御処理、及び、フィルタリング処理のモードの決定処理>
アンテナ切替部120に対するアンテナ切替制御処理、及び、適応フィルタ部143のフィルタリング処理のモードの決定処理に際して、図11に示されるように、まず、ステップS11において、処理制御部192が、信号レベルSLD、マルチパスレベルMPL、下方隣接局レベルNLM及び上方隣接局レベルNLPを収集する。なお、「開始」時においては、カウンタの値は「0」となっている。
【0100】
引き続き、ステップS12において、処理制御部192は、信号レベルSLDが閾値TSL1より高いか否かを判定する。ここで、閾値TSL1は、ノイズが頻繁に発生するいわゆる弱電界と、中電界との境界であり、実験、シミュレーション、経験等に基づいて予め定められる。
【0101】
ステップS12における判定の結果が否定的であった場合(ステップS12:N)には、処理はステップS13へ進む。このステップS13では、処理制御部192が、適応フィルタ部143のフィルタリング処理のモードをOFFモードに決定する。そして、処理制御部192は、「開」を指定するスイッチ制御指令SC1を適応フィルタ部143へ送る。また、処理制御部192は、フィルタリング処理のモードをOFFモードに決定すると、「e選択」を指定するスイッチ制御指令SC2を適応フィルタ部143へ送るとともに、「OFF」を指定するフィルタ選択指令FLSを適応フィルタ部143へ送る(図10参照)。この結果、適応フィルタ部143は、フィルタリング処理を行わずに、信号YIを信号FLDとして再生処理ユニット150へ送る(図5参照)。この後、処理はステップS14へ進む。
【0102】
ステップS14では、処理制御部192は、カウンタをリセットする。引き続き、ステップS15において、処理制御部192は、再生用アンテナをメインアンテナ1101とすべき「A選択」を指定したアンテナ切替指令SLSを生成して、アンテナ切替部120へ送る。この結果、アンテナ切替部120では、端子Aと端子Cとが接続され、メインアンテナ1101で受信した信号RFS1が、信号RFSとして、RF処理ユニット130へ送られる。この後、処理はステップS11へ戻る。
【0103】
上述のステップS12における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS12:Y)には、処理はステップ16へ進む。このステップS16では、処理制御部192は、信号レベルSLDが閾値TSL2以上か否かを判定する。ここで、閾値TSL2は、いわゆる中電界と、強電界との境界であり、実験、シミュレーション、経験等に基づいて予め定められる。
【0104】
ステップS16における判定の結果が否定的であった場合(ステップS16:N)、すなわち、現在の受信環境が中電界環境である場合には、処理はステップS17へ進む。このステップS17では、処理制御部192は、上述のようにして算出されるレベル比NLRが閾値TL未満であるかを判定する。ここで、閾値TLは、隣接妨害環境下で安定した音質を確保する観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて予め定められる。
【0105】
ステップS17における判定の結果が否定的であった場合(ステップS17:N)、すなわち、隣接妨害が大きい場合には、処理はステップ18へ進む。このステップS18では、処理制御部192が、適応フィルタ部143のフィルタリング処理のモードをFIRモードに決定する。そして、処理制御部192は、増幅率AFを指定する増幅率指令AMCを適応フィルタ部143へ送るとともに、「開」を指定するスイッチ制御指令SC1を適応フィルタ部143へ送る。また、処理制御部192は、フィルタリング処理のモードをFIRモードに決定すると、「d選択」を指定するスイッチ制御指令SC2を適応フィルタ部143へ送るとともに、「FIR」を指定するフィルタ選択指令FLSを適応フィルタ部143へ送る。この結果、適応フィルタ部143は、信号YFを帰還させずにタップ係数を更新するとともに、信号YFを信号FLDとして再生処理ユニット150へ送るFIR型適応フィルタリングとして動作する(図5参照)。この後、処理はステップS14へ進む。
【0106】
ステップS17における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS17:Y)、すなわち、隣接妨害が小さい場合には、処理はステップ19へ進む。また、上述したステップS16における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS16:Y)、すなわち、
現在の受信環境が強電界環境である場合にも、処理はステップS19へ進む。このステップS19では、マルチパスレベルMPLを考慮したアンテナ切替処理が実行される。
【0107】
ここで、ステップS19におけるマルチパスレベルMPLを考慮したアンテナ切替処理について説明する。当該アンテナ切替処理は、図12に示されるように、まず、ステップS21において、処理制御部192は、マルチパスレベルMPLが閾値TM1以上であるか否かを判定する。ここで、閾値TM1は、マルチパスフェーディングの影響の抑制のためには、アンテナ固定及びアンテナ切替可能のいずれが有効であるかという観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて予め定められる。
【0108】
ステップS21における判定の結果が否定的であった場合(ステップS21:N)、すなわち、マルチパスフェーディングの影響の抑制のためには、再生用アンテナとして、メインアンテナ1101を固定的に選択することが好ましいと判断される場合には、処理はステップS22へ進む。このステップS22では、処理制御部192が、適応フィルタ部143のフィルタリング処理のモードをFIRモードに決定する。そして、処理制御部192は、増幅率AFを指定する増幅率指令AMCを適応フィルタ部143へ送るとともに、「開」を指定するスイッチ制御指令SC1を適応フィルタ部143へ送る。また、処理制御部192は、フィルタリング処理のモードをFIRモードに決定すると、「d選択」を指定するスイッチ制御指令SC2を適応フィルタ部143へ送るとともに、「FIR」を指定するフィルタ選択指令FLSを適応フィルタ部143へ送る。この結果、適応フィルタ部143は、信号YFを帰還させずにタップ係数を更新するとともに、信号YFを信号FLDとして再生処理ユニット150へ送るFIR型適応フィルタリングとして動作する(図5参照)。この後、処理はステップS23へ進む。
【0109】
ステップS23では、処理制御部192は、再生用アンテナをメインアンテナ1101とすべき「A選択」を指定したアンテナ切替指令SLSを生成して、アンテナ切替部120へ送る。この結果、アンテナ切替部120では、端子Aと端子Cとが接続され、メインアンテナ1101で受信した信号RFS1が、信号RFSとして、RF処理ユニット130へ送られる。こうして再生用アンテナがメインアンテナ1101に固定されると、ステップS19の処理が終了する。そして、処理は、上述した図11におけるステップS11へ戻る。
【0110】
一方、ステップS21における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS21:Y)、マルチパスフェーディングの影響の抑制のためには、再生用アンテナを切り替えることが好ましいと判断される場合には、処理はステップS24へ進む。このステップS24では、処理制御部192は、カウンタをインクリメントする。
【0111】
引き続き、ステップS25において、処理制御部192は、カウンタによるカウント値が所定カウント値以上か否かを判定する。この所定カウント値は、頻繁なアンテナ切替を抑制する観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて予め定められる。
【0112】
ステップS25における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS25:Y)には、処理はステップS26へ進む。このステップS26では、処理制御部192は、再生用アンテナを切り替えるためのアンテナ切替指令SLSを生成して、アンテナ切替部120へ送る。
【0113】
すなわち、メインアンテナ1101が再生用アンテナとして利用されていた場合には、「B選択」を指定したアンテナ切替指令SLSを生成して、アンテナ切替部120へ送る。また、サブアンテナ1102が再生用アンテナとして利用されていた場合には、「A選択」を指定したアンテナ切替指令SLSを生成して、アンテナ切替部120へ送る。
【0114】
この結果、メインアンテナ1101が再生用アンテナとして利用されていた場合には、再生用アンテナはサブアンテナ1102に切り替わる。また、サブアンテナ1102が再生用アンテナとして利用されていた場合には、再生用アンテナはメインアンテナ1101に切り替わる。この後、処理はステップS27へ進む。
【0115】
ステップS27では、処理制御部192は、カウンタをリセットする。この後、処理はステップS28へ進む。また、上述したステップS25における判定の結果が否定的であった場合(ステップS25:N)にも、処理はステップS28へ進む。
【0116】
ステップS28では、処理制御部192は、マルチパスレベルMPLが閾値TM2以上あるか否かを判定する。ここで、閾値TM2は、マルチパスフェーディングの影響の抑制のためには、IIR型適応フィルタ及びFIR型適応フィルタのいずれが有効であるかという観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて予め定められる。
【0117】
ステップS28における判定の結果が否定的であった場合(ステップS28:N)、すなわち、マルチパスフェーディングの影響の抑制のためには、FIR型適応フィルタが有効であると判断される場合には、処理はステップS29へ進む。このステップS29では、処理制御部192が、上述したステップS22における処理と同様に、適応フィルタ部143のフィルタリング処理のモードをFIRモードに決定するとともに、FIRモード設定に対応した指令を適応フィルタ部143へ送る。こうして適応フィルタ部143のフィルタリング処理がFIRモードに設定されると、ステップS19の処理が終了する。そして、処理は、上述した図11におけるステップS11へ戻る。
【0118】
一方、ステップS28における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS28:Y)、すなわち、マルチパスフェーディングの影響の抑制のためには、IIR型適応フィルタが有効であると判断される場合には、処理はステップS30へ進む。このステップS30では、処理制御部192が、適応フィルタ部143のフィルタリング処理のモードをIIRモードに決定する。そして、処理制御部192は、増幅率AIを指定する増幅率指令AMCを適応フィルタ部143へ送るとともに、「閉」を指定するスイッチ制御指令SC1を適応フィルタ部143へ送る。また、処理制御部192は、フィルタリング処理のモードをIIRモードに決定すると、「e選択」を指定するスイッチ制御指令SC2を適応フィルタ部143へ送るとともに、「IIR」を指定するフィルタ選択指令FLSを適応フィルタ部143へ送る(図10参照)。この結果、適応フィルタ部143は、信号YFを帰還させつつタップ係数を更新するとともに、信号YIを信号FLDとして再生処理ユニット150へ送るIIR型適応フィルタリングとして動作する。こうして適応フィルタ部143のフィルタリング処理がIIRモードに設定されると、ステップS19の処理が終了する。そして、処理は、上述した図11におけるステップS11へ戻る。
【0119】
以上のようにしてステップS11〜S19の処理を繰り返すことにより、処理制御部192は、アンテナ切替部120に対するアンテナ切替制御処理を実行するとともに、適応フィルタ部143のフィルタリング処理のモードの決定処理を実行する。かかるアンテナ切替制御処理により選択されたアンテナが、再生用アンテナとしてRF処理ユニット130と接続され、再生用アンテナで受信した信号が、信号RFSとしてRF処理ユニット130へ送られる。そして、RF処理ユニット130では、受信制御ユニット190から送られた選局指令CSLに従って、選局すべき希望局の信号を信号RFSから抽出する選局処理を行い、所定の中間周波数帯の成分を有する信号IFDとして、フィルタユニット140へ送る。
【0120】
引き続き、決定されたモードによるフィルタリング処理の設定が行われた適応フィルタ部143が、設定されたモードに対応するフィルタリング処理を、可変BPF部142から送られた信号CBDに対して施す。そして、適応フィルタ部143は、フィルタリング処理結果を、信号FLDとして再生処理ユニット150へ送る。
【0121】
フィルタユニット140から信号FLDを受けた再生処理ユニット150では、検波部151が信号FLDに対して検波処理を施した後に、信号加工部152が検波信号DADに対して、ミュート制御処理、ハイカット制御処理及びセパレーション制御処理を施す。引き続き、ステレオ復調部153が、ステレオ復調処理を、信号加工部152から送られた加工信号MDDに対して施す。この結果が、信号DMDとして、アナログ処理ユニット160へ送られる(図9参照)。
【0122】
再生処理ユニット150からの信号DMDを受けたアナログ処理ユニット160では、DA変換部、音量調整部及びパワー増幅部が、順次、処理を行い、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット170へ送る(図1参照)。そして、スピーカユニット170が、アナログ処理ユニット160からの出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
【0123】
以上説明したように、本実施形態では、レベル検出部221が、希望局の放送波の電界強度を反映した信号レベルSLDを検出するとともに、AM成分抽出部222及びレベル検出部223が協働してマルチパスノイズのレベルであるマルチパスレベルMPLを検出する。また、BPF部224及びレベル検出部226が協働して下方隣接局の放送波の電界強度を反映した下方隣接局レベルNLMを検出するとともに、BPF部225及びレベル検出部227が協働して上方隣接局の放送波の電界強度を反映した上方隣接局レベルNLPを検出する。引き続き、処理制御部192は、下方隣接局レベルNLM及び上方隣接局レベルNLPのうちから、レベルの高いものを、隣接局レベルNLVとして選択し、隣接局レベルNLVと信号レベルSLDとのレベル比NLR(=NLV/SLD)を算出して隣接妨害の程度を評価する。
【0124】
そして、処理制御部192は、信号レベルSLDが第1所定電界強度である閾値TSL1より高い場合に、信号レベルSLDが閾値TSL1よりも高い第2所定電界強度である閾値TSL2以上である第1条件を満たす場合、又は、信号レベルSLDが閾値TSL2未満であり、かつ、レベル比NLRが閾値TLである第2条件を満たす場合に、マルチパスレベルMPLが第1所定マルチパスノイズレベルである閾値TM1以上のときに、アンテナ切替指令SLSを生成して、アンテナ切替を行うべき旨の指令を、アンテナ切替部120へ送る。
【0125】
また、処理制御部192は、信号レベルSLDが閾値TSL2未満であり、かつ、レベル比が閾値TL以上である第3条件を満たす場合に、アンテナ切替指令SLSを生成して、メインアンテナ1101に固定すべき旨の指令を、アンテナ切替部120へ送る。
【0126】
このため、本実施形態によれば、隣接妨害環境でない状態では、中電界領域における弱電界の境界までアンテナ切替制御を行うため、フラットフェーディングの影響を抑制することが可能になるとともに、隣接妨害環境状態では、音質の安定を重視したアンテナ設定を行うことができる。すなわち、本実施形態によれば、互いに利得が異なる複数のアンテナのいずれかで受信した放送波に基づいて、選局された希望局が発信した放送コンテンツを再生する場合に、再生品質の向上及び維持を図ることができる。
【0127】
また、本実施形態では、上述した第1条件又は第2条件を満たされた場合に、マルチパスレベルMPLが第2所定マルチパスノイズレベルである閾値TM2以上のときは、無限インパルス応答型フィルタを選択すべき旨の指令を、適応フィルタ部143へ送り、マルチパスレベルMPLが閾値TM2未満のときは、有限インパルス応答型フィルタを選択すべき旨の指令を、適応フィルタ部143へ送る。また、処理制御部192は、上述した第3条件が満たされた場合に、有限インパルス応答型フィルタを選択すべき旨の指令を、適応フィルタ部143へ送る。
【0128】
このため、本実施形態によれば、マルチパスフェーディング、フラットフェーディング及び隣接妨害の影響を総合的に考慮したフィルタリング処理を、適応フィルタ部143に行わせることができる。
【0129】
また、本実施形態では、希望局の放送波の電界強度に基づいて、自動受信制御(ARC)を行って、ミュート制御処理、ハイカット制御処理及びセパレーション制御処理の検波信号DADに対して加工処理を施す。このため、適切な自動受信制御を行って、検波信号DADに対して加工処理を施すことができる。
【0130】
したがって、本実施形態によれば、選局された希望局から発信された放送コンテンツの再生品質を向上及び維持させることができる。
【0131】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0132】
例えば、上記の実施形態では、AM成分抽出部222及びレベル検出部223が協働してマルチパスレベルの検出を行うようにしたが、上述した(3)式により算出されるERR(T)を、マルチパスレベルとして採用してもよい。この場合には、AM成分抽出部222及びレベル検出部223を省略することができる。
【0133】
また、上記の実施形態では、適応フィルタ部143のフィルタリング処理のモードを3種類としたが、OFFモードを除いた2種類としてもよい。この場合には、処理制御部192におけるOFFモード関連の処理を省略することができる。
【0134】
また、上記の実施形態では、サブアンテナを1個としたが、サブアンテナの個数は2個以上であってもよい。
【0135】
また、上記の実施形態においては、車両に搭載される受信装置に本発明を適用したが、車両以外の移動体に搭載される受信装置にも本発明を適用してもよい。
【0136】
なお、上記の実施形態におけるフィルタユニット140、再生処理ユニット150及び受信制御ユニット190を、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等を備えた演算手段としてのコンピュータとして構成し、予め用意されたプログラムを当該コンピュータで実行することにより、上記の実施形態における処理の一部又は全部を実行するようにしてもよい。このプログラムはハードディスク、CD−ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、当該コンピュータによって記録媒体から読み出されて実行される。また、このプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配信の形態で取得されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0137】
100 … 受信装置
1101 … メインアンテナ(第1のアンテナ)
1102 … サブアンテナ(第2のアンテナ)
120 … アンテナ切替部
130 … RF処理ユニット(高周波処理部)
143 … 適応フィルタ部
192 … 処理制御部(制御部、評価部)
221 … レベル検出部(第1検出部)
222 … AM成分抽出部(第2検出部の一部)
223 … レベル検出部(第2検出部の一部)
224 … BPF部(第3検出部の一部)
225 … BPF部(第3検出部の一部)
226 … レベル検出部(第3検出部の一部)
227 … レベル検出部(第3検出部の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアンテナと;
前記第1のアンテナより利得が低い第2のアンテナと:
アンテナ切替指令に応じて、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナのうちから1つのアンテナを選択するアンテナ切替部と;
希望波の周波数帯の信号を、所定の中間周波数帯の信号に変換する高周波処理部と;
前記希望波の電界強度を検出する第1検出部と;
前記希望波の周波数帯域におけるマルチパスノイズのレベルを検出する第2検出部と;
前記希望波を発信した放送局に、周波数に関して隣接する隣接放送局から発信された隣接波の電界強度を検出する第3検出部と;
前記第1検出部により検出された電界強度及び前記第3検出部により検出された電界強度に基づいて、前記希望波の信号における前記隣接波の信号の混入度を評価する評価部と;
前記第1〜3検出部による検出結果に基づいて、前記アンテナ切替指令を発行して前記アンテナ切替部を制御する制御部と;を備え、
前記制御部は、前記第1検出部により検出された電界強度が第1所定電界強度より高い場合に、
前記第1検出部により検出された電界強度が、前記第1所定電界強度よりも高い第2所定電界強度以上である第1条件を満たす場合、又は、前記第1検出部により検出された電界強度が前記第2所定電界強度未満であり、かつ、前記評価された混入度が所定混入度未満である第2条件を満たす場合に、前記マルチパスノイズのレベルが第1所定マルチパスノイズレベル以上のときに、前記アンテナ切替指令として、アンテナ切替を行うべき旨の指令を、前記アンテナ切替部へ送り、
前記第1検出部により検出された電界強度が前記第2所定電界強度未満であり、かつ、前記評価された混入度が前記所定混入度以上である第3条件を満たす場合に、前記アンテナ切替指令として、前記第1のアンテナに固定すべき旨の指令を、前記アンテナ切替部へ送る、
ことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1検出部により検出された電界強度が前記第1所定電界強度以下の場合には、前記アンテナ切替指令として、前記第1のアンテナに固定すべき旨の指令を、前記アンテナ切替部へ送る、ことを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
フィルタ選択指令により、有限インパルス応答型フィルタ及び無限インパルス応答型フィルタのいずれか一方のフィルタが選択された場合に、前記選択されたフィルタにより、前記希望波の中間周波信号に対して適応的にフィルタリング処理を施す適応フィルタ部を更に備え、
前記制御部は、
前記第1条件又は前記第2条件が満たされた場合に、前記マルチパスノイズのレベルが第2所定マルチパスノイズレベル以上のときは、前記フィルタ選択指令として、前記無限インパルス応答型フィルタを選択すべき旨の指令を、前記適応フィルタ部へ送り、
前記マルチパスノイズのレベルが前記第2所定マルチパスノイズレベル未満のときは、前記フィルタ選択指令として、前記有限インパルス応答型フィルタを選択すべき旨の指令を、前記適応フィルタ部へ送り、
前記第3条件が満たされた場合に、前記フィルタ選択指令として、前記有限インパルス応答型フィルタを選択すべき旨の指令を、前記適応フィルタ部へ送る、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1検出部により検出された電界強度が前記第1所定電界強度以下の場合には、前記フィルタ選択指令として、前記フィルタリング処理を行わない旨の指令を、前記適応フィルタ部へ送る、ことを特徴とする請求項3に記載の受信装置。
【請求項5】
第1のアンテナと;前記第1のアンテナより利得が低い第2のアンテナと:アンテナ切替指令に応じて、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナのうちから1つのアンテナを選択するアンテナ切替部と;希望波の周波数帯の信号を、所定の中間周波数帯の信号に変換する高周波処理部と;を備える受信装置において使用されるアンテナ切替方法であって、
前記希望波の電界強度を検出する第1検出工程と;
前記希望波の周波数帯域におけるマルチパスノイズのレベルを検出する第2検出工程と;
前記希望波を発信した放送局に、周波数に関して隣接する隣接放送局から発信された隣接波の電界強度を検出する第3検出工程と;
前記第1検出工程において検出された電界強度及び前記第3検出工程において検出された電界強度に基づいて、前記希望波の信号における前記隣接波の信号の混入度を評価する評価工程と;
前記第1〜3検出工程における検出結果に基づいて、前記アンテナ切替指令を発行して前記アンテナ切替部を制御する制御工程と;を備え、
前記制御工程では、前記第1検出工程において検出された電界強度が第1所定電界強度より高い場合に、
前記第1検出工程において検出された電界強度が、前記第1所定電界強度よりも高い第2所定電界強度以上である第1条件を満たす場合、又は、前記第1検出工程において検出された電界強度が前記第2所定電界強度未満であり、かつ、前記評価された混入度が所定混入度未満である第2条件を満たす場合に、前記マルチパスノイズのレベルが所定マルチパスノイズレベル以上のときに、前記アンテナ切替指令として、アンテナ切替を行うべき旨の指令を、前記アンテナ切替部へ送り、
前記第1検出工程において検出された電界強度が前記第2所定電界強度未満であり、かつ、前記評価された混入度が前記所定混入度以上である第3条件を満たす場合に、前記アンテナ切替指令として、前記第1のアンテナに固定すべき旨の指令を、前記アンテナ切替部へ送る、
ことを特徴とするアンテナ切替方法。
【請求項6】
請求項5に記載のアンテナ切替方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とするアンテナ切替プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のアンテナ切替プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−209680(P2012−209680A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72544(P2011−72544)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】