受光素子キャリアおよびそれを用いた受光モジュール
【課題】受光素子キャリアにおいて、3次元的に配置される素子等を接続可能であり、高周波特性に優れた高周波伝送路をもつ受光素子キャリアを実現することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる受光素子キャリアは、シート状の誘電体を積層しブロック状に形成した多層基板と、素子実装面4a上に備えられた受光素子1と、素子実装面4a上に形成され多層基板の層と平行に延在する部分を有し、受光素子1と接続された伝送路6aと、素子実装面4a上の伝送路6aを除く領域に形成されたGNDパターン7aと、多層基板の層間である境界面に形成され素子実装面4aにおいて伝送路6aと接続された伝送路6bと、伝送路6bが形成された境界面の上下の境界面に形成され素子実装面4aにおいてGNDパターン7aと接続された複数のGNDパターン7bと、伝送路6aに隣接して配置され各GNDパターン7bを互いに接続するスルーホール8とを備える。
【解決手段】本発明にかかる受光素子キャリアは、シート状の誘電体を積層しブロック状に形成した多層基板と、素子実装面4a上に備えられた受光素子1と、素子実装面4a上に形成され多層基板の層と平行に延在する部分を有し、受光素子1と接続された伝送路6aと、素子実装面4a上の伝送路6aを除く領域に形成されたGNDパターン7aと、多層基板の層間である境界面に形成され素子実装面4aにおいて伝送路6aと接続された伝送路6bと、伝送路6bが形成された境界面の上下の境界面に形成され素子実装面4aにおいてGNDパターン7aと接続された複数のGNDパターン7bと、伝送路6aに隣接して配置され各GNDパターン7bを互いに接続するスルーホール8とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受光素子キャリアおよびそれを用いた受光モジュールに関し、特に、光通信システムにおいて、受光素子、アンプ等を実装、保持する受光素子キャリアと、受光素子キャリアを備える受光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光強度信号を電気信号に変換する受光モジュールは、受光素子キャリアを備えている。この受光素子キャリアにより、受光素子、電気増幅素子(アンプ)などの素子が適切な位置および向きに保持される。これら素子は、受光素子キャリア上に形成された高周波伝送路に接続され、光学系と共にパッケージに収納されている。
【0003】
受光モジュールでは、入射された信号光が、光学系を介し受光素子上の受光部に集光される。受光素子において光強度信号は微弱な電気信号に変換され、さらにアンプにおいて電気的に増幅された後、高周波伝送路を通りパッケージの出力端子より出力される。
【0004】
しかし、光学系、受光素子、アンプ、パッケージなどの形状からの制約があり、受光素子、アンプを、高周波信号の伝送が容易な伝送路方向に対し2次元的に配置することができず、3次元的に配置する必要が生じることがある。
【0005】
特許文献1における、従来の受光モジュールの構成を図17に示す。多層基板の側面に受光素子とアンプとを実装し、アンプの設置高さの境界面から延在する伝送路から、スルーホールを介してパッケージ出力の設置高さの境界面の伝送路に接続することで、アンプから出力端子まで、信号を伝送する構成となっている。
【0006】
また、特許文献2では、受光素子キャリア表面上に形成されたコプレーナ線路により受光素子キャリア後方まで伝送する形態(図18)と、受光素子キャリア表面から受光素子キャリアを貫通するスルーホールにより裏面まで伝送する形態とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4001744号
【特許文献2】特開2002−299649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでの3次元的に配置された素子を接続する高周波伝送路を有する受光素子キャリアでは、反射特性の悪化や共振の原因となる、長いワイヤボンド、スルーホール、フレキシブル基板などが多用されているため、信号の周波数が高くなるとその伝送が困難であった。一方で、光通信の高速化に伴い、より高い帯域の信号へ対応が求められている。
【0009】
特許文献1では、伝送路に含まれるスルーホール付近において、インピーダンスの不整合が発生するため、反射特性が悪化する。また、カップリングした差動線路を用いているため、線路は出力高さに対し上下対称な構造を持ち、素子の実装高さが出力の実装高さと略一致するもの以外には適用が難しい。
【0010】
特許文献2では、受光素子キャリア側面に設置されたコプレーナ線路が示されているが、線路左右のGND(Ground)が近距離で接続されていない場合、左右GND間に電位差が発生する。この電位差が原因となり共振が発生し、信号を伝送できない周波数帯ができる。
【0011】
図16は、図15に示した従来の受光素子キャリアにおける、共振周波数のシミュレーション結果を示す図である。横軸は伝送する信号の周波数、縦軸はSパラメータである。20Gbps〜40Gbps程度の高周波信号を伝送するには、40GHz程度まで帯域が必要であるが、図15に示す受光素子キャリア側面における伝送路の線路長(350μm、650μm)を長くするほど共振周波数は低くなり、350μmを超えると40GHz以下で共振する(S11、S21参照)。従って、350μmを超えて伝送することが困難になる。
【0012】
多層基板をスルーホールで貫通する場合には、スルーホールを多用するために高周波特性は悪化する。また、素子位置をわずかに並行移動するなどの軽微な設計変更で線路位置を調整する場合、高周波特性を維持するにはスルーホール位置の変更が必要である。このため汎用的な使用には不適であった。
【0013】
本発明は上記のような問題を解決するためになされたものであり、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ設計許容度の高い受光素子キャリアおよびそれを備える受光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様にかかる受光素子キャリアは、シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、前記側面上に形成され、前記多層基板の層と平行に延在する部分を有し、前記受光素子と接続された第1伝送路と、前記側面上の前記第1伝送路を除く領域に形成された、第1GNDパターンと、前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記第1伝送路と接続された、第2伝送路と、前記第2伝送路が形成された境界面の上下の境界面に形成され、前記側面において前記第1GNDパターンと接続された、複数の第2GNDパターンと、前記第1伝送路に隣接して配置され、各前記第2GNDパターンを互いに接続する第1スルーホールとを備える。
【0015】
また、本発明の第2の態様にかかる受光素子キャリアは、シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、前記側面上に形成され、前記多層基板の層と交差する方向に延在する部分を有し、前記受光素子と接続された第1伝送路と、前記側面上の前記第1伝送路を除く領域に形成された、第1GNDパターンと、前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記第1伝送路と接続された、第2伝送路と、前記第1伝送路の設置高さにある前記境界面に形成され、前記側面において、前記第1伝送路を跨いで前記第1GNDパターンと接続された、第2GNDパターンとを備える。
【0016】
また、本発明の第3の態様にかかる受光素子キャリアは、シート状の誘電体を底面に対し傾斜して積層し、ブロック状に形成した多層基板と、前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記受光素子と接続された、第1斜面伝送路とを備える。
【0017】
また、本発明にかかる受光モジュールは、上記いずれかの受光素子キャリアを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の態様にかかる受光素子キャリアによれば、シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、前記側面上に形成され、前記多層基板の層と平行に延在する部分を有し、前記受光素子と接続された第1伝送路と、前記側面上の前記第1伝送路を除く領域に形成された、第1GNDパターンと、前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記第1伝送路と接続された、第2伝送路と、前記第2伝送路が形成された境界面の上下の境界面に形成され、前記側面において前記第1GNDパターンと接続された、複数の第2GNDパターンと、前記第1伝送路に隣接して配置され、各前記第2GNDパターンを互いに接続する第1スルーホールとを備えることにより、GND間に電位差を抑制し、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0019】
また、本発明の第2の態様にかかる受光素子キャリアによれば、シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、前記側面上に形成され、前記多層基板の層と交差する方向に延在する部分を有し、前記受光素子と接続された第1伝送路と、前記側面上の前記第1伝送路を除く領域に形成された、第1GNDパターンと、前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記第1伝送路と接続された、第2伝送路と、前記第1伝送路の設置高さにある前記境界面に形成され、前記側面において、前記第1伝送路を跨いで前記第1GNDパターンと接続された、第2GNDパターンとを備えることにより、GND間に電位差を抑制し、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0020】
また、本発明の第3の態様にかかる受光素子キャリアによれば、シート状の誘電体を底面に対し傾斜して積層し、ブロック状に形成した多層基板と、前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記受光素子と接続された、第1斜面伝送路とを備えることにより、伝送路を短縮し、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0021】
また、本発明にかかる受光モジュールによれば、上記いずれかの受光素子キャリアを備えることにより、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1の受光素子キャリアの斜視図である。
【図2】実施の形態1の受光素子キャリアの正面図である。
【図3】実施の形態1の導体パターンの構成を示す斜視透視図である。
【図4】実施の形態1の導体パターンの構成を示す上面透視図である。
【図5】実施の形態1のGNDの接続経路を示す概観図である。
【図6】実施の形態1のGNDの接続経路を示す概観図である。
【図7】実施の形態1の電磁界シミュレーションの結果を示す図である。
【図8】実施の形態2の導体パターンの構成を示す斜視透視図である。
【図9】実施の形態2の導体パターンの構成を示す上面透視図である。
【図10】実施の形態2のGNDの接続経路を示す概観図である。
【図11】実施の形態2のGNDの接続経路を示す概観図である。
【図12】実施の形態3の導体パターンの構成を示す斜視透視図である。
【図13】実施の形態3の側面導体パターンを示す正面図である。
【図14】実施の形態4の構成を示す斜視透視図である。
【図15】従来の受光素子キャリアの斜視図である。
【図16】従来の受光素子キャリアの伝送路での高周波特性を示す図である。
【図17】従来の受光素子キャリアの斜視図である。
【図18】従来の受光素子キャリアの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<A.実施の形態1>
<A−1.構成>
図1〜7は、実施の形態1による受光素子キャリアの構成、特徴を示す図である。図1は、本発明の受光素子キャリア100の斜視図である。図2は、受光素子キャリア100を光学系側から見た正面図である。図3は、受光素子キャリア100の表面および内部に設けられた導体パターンの構成を示す斜視透視図である。図4は、導体パターンの構成を示す上面透視図である。図5は、図3のiに示す平面での受光素子キャリア100の断面図で、実施の形態1でのGNDの最短接続経路を示す概観図である。図6は、受光素子キャリア100の側面である素子実装面4aの拡大図で、実施の形態1でのGNDの最短接続経路を示す概観図である。図7は、本実施の形態1の電磁界シミュレーションの結果である。
【0024】
図1は受光素子キャリア100の構成を示しており、受光素子キャリア100の側面を素子実装面4aとする。素子実装面4aには、受光素子1と、受光素子1と接続されるアンプIC3と、さらにアンプIC3と接続される第1伝送路としての伝送路6aが配置される。また、素子実装面4aには、伝送路6aを囲むように第1GNDパターンとしてのGNDパターン7aが形成されている。なお図1において、伝送路を示す領域には格子模様を、GNDパターンを示す領域には斜線をそれぞれ記載している。以下の図面においても同様である。
【0025】
図示していないが、受光素子キャリア100の図1中右側には信号光を集光する光学系、一方図面中左側の側面4bにはパッケージ出力端子が配置されパッケージに収められている。信号光は図右方向より素子実装面4a上へ入射される。
【0026】
図2は素子実装面4aの正面図であり、素子実装面4a上には、受光素子1、アンプIC3、伝送路6aが形成されている。なお図示していないが、この他にコンデンサなどが実装される。受光素子1の設置位置は、信号光の集光位置と素子の受光部とが一致するよう設定される。また、アンプIC3の設置位置は、内部回路と受光素子1の寄生容量とに対し、受光素子1とアンプIC3とを接続する金ワイヤ2aのインダクタンス、リアクタンスが適切となるよう配置される。20GHz以上の帯域を用いる場合、おおよそ受光素子1からサブミリメートル程度の位置にアンプIC3が配置される。
【0027】
光学系により集光された信号光は、受光素子1で電気信号に変換され、金ワイヤ2aで接続されたアンプIC3へ送られる。アンプIC3で増幅された出力は、金ワイヤ2bで接続された伝送路6aへ送られる。伝送路6aは、受光素子キャリア100内に形成された伝送路に接続されている。信号は伝送路を介して、受光素子キャリア100後方の側面4bから、パッケージ出力端子へ出力される。
【0028】
ここで、受光素子キャリア100は、シート状の誘電体を積み重ね、ブロック状に焼結したもので、層状の構造を持つ多層基板である。各誘電体層の層厚は、シート厚の調整により数十μmピッチで任意に決定できる。また各層の境界面には、積層時に導体をプリントすることにより、伝送路およびGNDパターンを設けることができる。各層間の導体は、シートにスルーホールを空けることで接続される。さらに、焼結後、例えばGNDパターン7aのように、受光素子キャリア100の表面に導体パターンをプリントすることもできる。
【0029】
図3に示すように、本実施の形態1の受光素子キャリア100は、底面側から層100A〜層100Dの4層からなる多層基板である。層100A−層100Bおよび層100C−層100Dの境界面に第2GNDパターンとしてのGNDパターン7bを、層100B−層100Cの境界面に第2伝送路としての伝送路6bを形成し、ストリップ線路を構成する。層厚は、層100B−層100Cの境界面高さと、パッケージ出力端子高さとを一致させるとともに、ストリップ線路のインピーダンスが整合するよう適切に設定されている。
【0030】
受光素子キャリア100の素子実装面4a上に、アンプIC3の出力位置付近から、伝送路6bの素子実装面4aへの露出部まで、多層基板の層と平行に延在する部分を有した伝送路6aを設け、またその周囲には、GNDパターン7aが、インピーダンスが整合するよう設けられ、コプレーナ線路が構成されている。
【0031】
アンプIC3(図2参照)の出力は、可能な限り短い金ワイヤ2b(図2参照)でコプレーナ線路である伝送路6aに接続される。さらに伝送路6aは、受光素子キャリア100内部に形成されたストリップ線路である伝送路6bに接続される。
【0032】
伝送路6aの周囲でGNDパターン7aとGNDパターン7bとを接続するとともに、伝送路6a直下に設けられた、すなわち、伝送路6aに隣接して配置されたスルーホール8(図4参照)により、境界面の上下のGNDパターン7bを接続する。
【0033】
これにより、図5、図6に示すように、伝送路6aを囲むように設けられたGNDパターン7aの長方形の抜けパターン(伝送路6aが形成される部分)の両側に位置する点aと点bとを接続する最短経路は、伝送路6aを回りこむ経路(一点鎖線)ではなく、受光素子キャリア100内部のGNDパターン7b、スルーホール8を介して接続される経路(点線)に短縮される。このとき、経路を可能な限り短縮するために、伝送路6bを挟む上下のGNDパターン7bは、伝送路6bに隣接している方がよく、すなわち、GNDパターン7aとGNDパターン7bとの接続点が、伝送路6aに隣接している方が望ましい。また、スルーホール8も、伝送路6aに可能な限り隣接する位置に形成されることが望ましい。なお図示はしないが、スルーホールは、隣接する位置以外の位置にも配置することで、他の境界面におけるGNDパターンも、伝送路6bのGNDとして機能させ、よりGND効果を向上させることも可能である。
【0034】
ここで、高周波信号伝送時に点a、b間に発生する電位差は、電位の変動の伝播時間が原因となるが、その経路が高周波信号の波長に対して短ければ、発生する電位差は小さくなる。受光素子キャリア100内部のGNDパターン7bが素子実装面4aにおけるGNDパターン7aと接続され、スルーホール8も含めた経路をとれる場合のシミュレーションでは、図7に示すように、共振周波数が40GHz以上となった。
【0035】
以上の構成により、実施の形態1では、素子実装面4aに形成された伝送路6aと、受光素子キャリア100内部に2次元的に形成された伝送路6bとを用いて信号を伝送することで、高周波特性が悪化しうる箇所を伝送路6aと伝送路6bとの接続点のみとし、また、素子実装面4aに形成されたGNDパターン7aと受光素子キャリア100内部に形成されたGNDパターン7bとを接続し、スルーホール8を介した経路を形成することで、高周波特性が良好で、設計許容度の高い受光素子キャリアおよびそれを用いた受光モジュールを提供することができる。
【0036】
<A−2.効果>
本発明にかかる実施の形態1によれば、受光素子キャリアにおいて、シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、多層基板の側面である素子実装面4a上に備えられた受光素子1と、素子実装面4a上に形成され、多層基板の層と平行に延在する部分を有し、受光素子1と接続された第1伝送路である伝送路6aと、素子実装面4a上の伝送路6aを除く領域に形成された、第1GNDパターンであるGNDパターン7aと、多層基板の層間である境界面に形成され、素子実装面4aにおいて伝送路6aと接続された、第2伝送路である伝送路6bと、伝送路6bが形成された境界面の上下の境界面に形成され、素子実装面4aにおいてGNDパターン7aと接続された、複数の第2GNDパターンであるGNDパターン7bと、伝送路6aに隣接して配置され、各GNDパターン7bを互いに接続する第1スルーホールであるスルーホール8とを備えることで、GND間に電位差を抑制し、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0037】
また、高周波特性悪化の小さい平面内の2次元的曲げのみ伝送路6bを形成しているので、反射や共振を抑制することができる。
【0038】
また、本発明にかかる実施の形態1によれば、受光素子キャリアにおいて、第1伝送路である伝送路6aに隣接する位置だけではなく、各GNDパターン7bを互いに接続する第2スルーホールであるスルーホールをさらに備えることで、他の境界面におけるGNDパターン7bも伝送路6bのGNDとして機能させ、よりGND効果を向上させることができる。
【0039】
また、本発明にかかる実施の形態1によれば、受光モジュールにおいて、上記の受光素子キャリアを備えることで、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0040】
また、本発明にかかる実施の形態1によれば、受光モジュールにおいて、素子実装面4aは、入射光学系に対して固定され、第2伝送路である伝送路6bは、素子実装面4aと反対側の側面4bにおいて出力端子に接続されることで、高周波数でも反射や共振を起こさず、信号を伝送することができる。
【0041】
<B.実施の形態2>
<B−1.構成>
図8〜11は、実施の形態2の受光素子キャリア101の構成、特徴を示す図である。図8は受光素子キャリア101の表面および内部に設けられた導体パターンの構成を示す斜視透視図である。また、図9は、導体パターンの構成を示す上面透視図である。図10は、図8のjに示す平面での受光素子キャリア101の断面図で、実施の形態2でのGNDの最短接続経路を示す概観図である。図11は、受光素子キャリア101の側面である素子実装面4aの拡大図で、実施の形態2でのGNDの最短接続経路を示す概観図である。
【0042】
実施の形態1と同様に受光素子1が実装されるが、素子配置高さを光学系に最適化すると、アンプIC3の出力端子の高さと、パッケージ出力端子の高さには差が生じる。
【0043】
図8に示すように、実施の形態2の受光素子キャリア101には、底面側から形成された層100A〜層100Dの4層に加え、層100Dのさらに上層に層100E、層100Fが形成される。層100A−層100Bの境界面、層100C−層100Dの境界面、層100D−層100Eの境界面および層100E−層100Fの境界面に第2GNDパターンとしてのGNDパターン7dを形成し、層100B−層100Cの境界面に第2伝送路としての伝送路6bを形成する。層100A−層100Bの境界面、層100B−層100Cの境界面、層100C−層100Dの境界面上の導体パターンでストリップ線路を構成する。なお図示はしていないが、実施の形態1において示した受光素子1は同様に備えられているものとする。
【0044】
層厚は、層100B−層100Cの境界面の高さと、パッケージ出力端子高さとを一致させるとともに、ストリップ線路のインピーダンスが整合するよう適切に設定されている。また、層100D−層100Eの境界面および層100E−層100Fの境界面が、素子実装面4aにおける第1伝送路としての伝送路6cの設置位置高さとなるよう層厚を調整する。なお伝送路6cは、多層基板の層と交差する方向に延在する部分を有する。
【0045】
ここで受光素子キャリア101内部のGNDパターン7dは、図8、図9に示すように、伝送路6cとの短絡を避けるためのクリアランスをもち、それ以外の部分で素子実装面4aに露出し、伝送路6cを除く領域に形成された、第1GNDパターンとしてのGNDパターン7cと接続される。すなわちGNDパターン7d、伝送路6cの設置高さにある境界面に形成され、素子実装面4aにおいて、伝送路6cを跨いでGNDパターン7cと接続される。これにより、図10、図11に示すように、伝送路6cを囲むように設けられたGNDパターン7cの長方形の抜けパターン(伝送路6cが形成される部分)の両側に位置する点aと点bと接続する最短経路は、伝送路6cを回りこむ経路(一点鎖線)ではなく、受光素子キャリア101内部のGNDパターン7dを介して接続される経路(点線)に短縮される。
【0046】
ここで、高周波信号伝送時に点a、b間に発生する電位差は、電位の変動の伝播時間が原因となるが、その経路が高周波信号の波長に対して短ければ、発生する電位差は小さくなる。受光素子キャリア101内部のGNDパターン7dが素子実装面4aにおけるGNDパターン7cと接続された経路をとれることで、電位差が生じる問題を解決できる。
【0047】
以上の構成により、実施の形態2では、光学系を最適な高さに設定しつつ、素子実装面4aに形成された伝送路6cと、受光素子キャリア101内部に2次元的に形成された伝送路6bとを用いて信号を伝送することで、高周波特性が悪化しうる箇所を伝送路6cと伝送路6bとの接続点のみとし、また、素子実装面4aに形成されたGNDパターン7cと受光素子キャリア101内部に形成されたGNDパターン7dとを接続した経路を形成することで、高周波特性が良好で、設計許容度の高い受光素子キャリアおよびそれを用いた受光モジュールを提供することができる。
【0048】
実施の形態1に示す受光素子キャリア100が、実施の形態2における特徴を同時に備えても良い。これにより、光学系に対する素子の位置と角度を自由に設定できる。光学系に合わせて、最適に設定することで、光学系の製造が容易で、コンパクトな受光モジュールを構成することができる。
【0049】
なお、多層基板の製造時に、積層前の誘電体シートの形状を台形にする、あるいは表面導体プリント前に削ることで、素子実装面4aを傾斜させても良い。これにより、受光素子1の設置角度を光学系に対して最適に保持することができる。
【0050】
<B−2.効果>
本発明にかかる実施の形態2によれば、受光素子キャリアにおいて、シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、多層基板の側面である素子実装面4a上に備えられた受光素子1と、素子実装面4a上に形成され、多層基板の層と交差する方向に延在する部分を有し、受光素子1と接続された第1伝送路である伝送路6cと、素子実装面4a上の伝送路6cを除く領域に形成された、第1GNDパターンであるGNDパターン7cと、多層基板の層間である境界面に形成され、素子実装面4aにおいて伝送路6cと接続された、第2伝送路である伝送路6bと、伝送路6cの設置高さにある境界面に形成され、素子実装面4aにおいて、伝送路6cを跨いでGNDパターン7cと接続された、第2GNDパターンであるGNDパターン7dとを備えることで、GND間に電位差を抑制し、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0051】
また、スルーホールやワイヤボンドが無く、インピーダンスを所定の値に設定可能である。
【0052】
<C.実施の形態3>
<C−1.構成>
図12は、実施の形態3の受光素子キャリアの、受光素子キャリア102の表面および内部に設けられた導体パターンの斜視透視図である。図12、図13に示すように、一定間隔でそれぞれのGNDパターン7fが、素子実装面4aにおけるGNDパターン7eと接続される。なおGNDパターン7fは、伝送路6bが形成された境界面の上下の境界面にも形成される。
【0053】
素子実装面4aから見た場合、図13に示すように、一定間隔おきにGNDパターン7fが素子実装面4aに露出し、GNDパターン7eとの接続面(図13における黒領域)が形成される。各GNDパターン7fの素子実装面4aへの露出部を、例えば0.5mmほどの間隔をあけて点在させることで、露出部をグリッド状に配列させることができる。第1スルーホールとしてのスルーホール8は各露出部の直下、すなわち伝送路6dに隣接して配置される(図12参照)。なお図示はしないが、スルーホールは、各露出部の直下以外の位置にも配置することで、他の境界面におけるGNDパターンも、伝送路6bのGNDとして機能させ、よりGND効果を向上させることも可能である。
【0054】
実装する素子の位置に合わせて、素子実装面4a上におけるGNDパターン7fの露出部でない部分を使い、素子の出力端子(図13ではアンプIC3)近傍から、伝送路6bの露出部まで、伝送路6dを形成することができる。よって伝送路6dは、多層基板の層と平行に延在する部分と、多層基板の層と交差する方向に延在する部分とを有することができる。
【0055】
このような構成によれば、各GNDパターン7fの形状、導体パターンは同一であるので、金型コストが小さく、安価にできる。また、素子設置位置の変更も、光軸に対して垂直な面内での変更については伝送路6dの変更のみで可能であり、素子の選定などの試作用途に低コストで亜種を作製可能である。
【0056】
<C−2.効果>
本発明にかかる実施の形態3によれば、受光素子キャリアにおいて、第1伝送路である伝送路6dは、多層基板の層と平行に延在する部分をさらに有し、第2GNDパターンであるGNDパターン7fは複数備えられ、第2伝送路である伝送路6bが形成された境界面の上下の境界面に形成され、伝送路6dに隣接して配置され、各GNDパターン7fを互いに接続する第1スルーホールであるスルーホール8をさらに備えることで、GND間に電位差を抑制し、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0057】
また、素子実装面4aの導体パターンのみの変更で、素子実装位置の変更が可能となり、試作用途などで金型コストを低減できる。さらに、各層の形状が同じであるため、金型コストを低減できる。
【0058】
また、本発明にかかる実施の形態3によれば、受光素子キャリアにおいて、第1伝送路である伝送路6dに隣接する位置だけではなく、各GNDパターン7fを互いに接続するスルーホールをさらに備えることで、他の境界面におけるGNDパターンも伝送路6bのGNDとして機能させ、よりGND効果を向上させることができる。
【0059】
<D.実施の形態4>
<D−1.構成>
シート状の誘電体を積層した受光素子キャリアにおいて、底面を削る、あるいは楔形の保持部を設けることで、設置時に、各層の境界面を底面に対し傾斜させた受光素子キャリア103を図14に示す。なお、図14においては、受光素子1の図示を省略しているが、実施の形態1と同様に、アンプIC3に接続されて備えられている。
【0060】
まず、パッケージ出力端子位置から最も近い境界面まで側面4bにおける伝送路(図示せず)を設け、境界面内に延在する第1斜面伝送路としての伝送路6eへ接続する。境界面内では、2次元的に延在する伝送路6eを介して、パッケージ出力端子高さと同じ高さとなる側面4bに伝送路6eが露出される。これにより、側面配線を短くし、波特性の改善を図ることができる。
【0061】
また、複数の高周波伝送路を配置するとき、2面以上の境界面に別々に伝送路6e(第2斜面伝送路)を形成することで、配線長の調整、曲げ、インピーダンス調整のためのスタブなどの分布定数回路など、高周波伝送特性を改善することができる伝送路を形成すべき面積が、単一層中に多数の線路を配置しなければならない場合に比べ、広くとることができる。
【0062】
<D−2.効果>
本発明にかかる実施の形態4によれば、受光素子キャリアにおいて、シート状の誘電体を底面に対し傾斜して積層し、ブロック状に形成するとともに、底面に対し積層方向を傾斜させて設置された多層基板と、多層基板の側面である素子実装面4a上に備えられた受光素子1と、多層基板の層間である境界面に形成され、素子実装面4aにおいて受光素子1と接続され、素子実装面4aと反対側の側面4bにおいて出力端子に接続された第1斜面伝送路である伝送路6eとを備えることで、異なる高さにある光学素子と出力端子を接続する場合でも、側面上の伝送路を短くし、高周波特性を向上させることができる。さらに、設置向きについても光学系に最適化できる。
【0063】
また、本発明にかかる実施の形態4によれば、受光素子キャリアにおいて、第1斜面伝送路である伝送路6eとは異なる境界面に形成され、素子実装面4aにおいて受光素子1と接続され、素子実装面4aと反対側の側面4bにおいて出力端子に接続された第2斜面伝送路である伝送路6eをさらに備えることで、配線長の調整や、曲げ管理、スタブなどの分布定数回路設置等の高周波特性改善ためのパターンを配置する面積を広くとることができ、より高周波特性を改善できる。
【符号の説明】
【0064】
1 受光素子、2a,2b 金ワイヤ、3 アンプIC、4a 素子実装面、4b 側面、6a,6b,6c,6d,6e 伝送路、7a,7b,7c,7d,7e,7f GNDパターン、8 スルーホール、100,101,102,103 受光素子キャリア、100A,100B,100C,100D,100E,100F 層。
【技術分野】
【0001】
本発明は受光素子キャリアおよびそれを用いた受光モジュールに関し、特に、光通信システムにおいて、受光素子、アンプ等を実装、保持する受光素子キャリアと、受光素子キャリアを備える受光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光強度信号を電気信号に変換する受光モジュールは、受光素子キャリアを備えている。この受光素子キャリアにより、受光素子、電気増幅素子(アンプ)などの素子が適切な位置および向きに保持される。これら素子は、受光素子キャリア上に形成された高周波伝送路に接続され、光学系と共にパッケージに収納されている。
【0003】
受光モジュールでは、入射された信号光が、光学系を介し受光素子上の受光部に集光される。受光素子において光強度信号は微弱な電気信号に変換され、さらにアンプにおいて電気的に増幅された後、高周波伝送路を通りパッケージの出力端子より出力される。
【0004】
しかし、光学系、受光素子、アンプ、パッケージなどの形状からの制約があり、受光素子、アンプを、高周波信号の伝送が容易な伝送路方向に対し2次元的に配置することができず、3次元的に配置する必要が生じることがある。
【0005】
特許文献1における、従来の受光モジュールの構成を図17に示す。多層基板の側面に受光素子とアンプとを実装し、アンプの設置高さの境界面から延在する伝送路から、スルーホールを介してパッケージ出力の設置高さの境界面の伝送路に接続することで、アンプから出力端子まで、信号を伝送する構成となっている。
【0006】
また、特許文献2では、受光素子キャリア表面上に形成されたコプレーナ線路により受光素子キャリア後方まで伝送する形態(図18)と、受光素子キャリア表面から受光素子キャリアを貫通するスルーホールにより裏面まで伝送する形態とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4001744号
【特許文献2】特開2002−299649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでの3次元的に配置された素子を接続する高周波伝送路を有する受光素子キャリアでは、反射特性の悪化や共振の原因となる、長いワイヤボンド、スルーホール、フレキシブル基板などが多用されているため、信号の周波数が高くなるとその伝送が困難であった。一方で、光通信の高速化に伴い、より高い帯域の信号へ対応が求められている。
【0009】
特許文献1では、伝送路に含まれるスルーホール付近において、インピーダンスの不整合が発生するため、反射特性が悪化する。また、カップリングした差動線路を用いているため、線路は出力高さに対し上下対称な構造を持ち、素子の実装高さが出力の実装高さと略一致するもの以外には適用が難しい。
【0010】
特許文献2では、受光素子キャリア側面に設置されたコプレーナ線路が示されているが、線路左右のGND(Ground)が近距離で接続されていない場合、左右GND間に電位差が発生する。この電位差が原因となり共振が発生し、信号を伝送できない周波数帯ができる。
【0011】
図16は、図15に示した従来の受光素子キャリアにおける、共振周波数のシミュレーション結果を示す図である。横軸は伝送する信号の周波数、縦軸はSパラメータである。20Gbps〜40Gbps程度の高周波信号を伝送するには、40GHz程度まで帯域が必要であるが、図15に示す受光素子キャリア側面における伝送路の線路長(350μm、650μm)を長くするほど共振周波数は低くなり、350μmを超えると40GHz以下で共振する(S11、S21参照)。従って、350μmを超えて伝送することが困難になる。
【0012】
多層基板をスルーホールで貫通する場合には、スルーホールを多用するために高周波特性は悪化する。また、素子位置をわずかに並行移動するなどの軽微な設計変更で線路位置を調整する場合、高周波特性を維持するにはスルーホール位置の変更が必要である。このため汎用的な使用には不適であった。
【0013】
本発明は上記のような問題を解決するためになされたものであり、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ設計許容度の高い受光素子キャリアおよびそれを備える受光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様にかかる受光素子キャリアは、シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、前記側面上に形成され、前記多層基板の層と平行に延在する部分を有し、前記受光素子と接続された第1伝送路と、前記側面上の前記第1伝送路を除く領域に形成された、第1GNDパターンと、前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記第1伝送路と接続された、第2伝送路と、前記第2伝送路が形成された境界面の上下の境界面に形成され、前記側面において前記第1GNDパターンと接続された、複数の第2GNDパターンと、前記第1伝送路に隣接して配置され、各前記第2GNDパターンを互いに接続する第1スルーホールとを備える。
【0015】
また、本発明の第2の態様にかかる受光素子キャリアは、シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、前記側面上に形成され、前記多層基板の層と交差する方向に延在する部分を有し、前記受光素子と接続された第1伝送路と、前記側面上の前記第1伝送路を除く領域に形成された、第1GNDパターンと、前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記第1伝送路と接続された、第2伝送路と、前記第1伝送路の設置高さにある前記境界面に形成され、前記側面において、前記第1伝送路を跨いで前記第1GNDパターンと接続された、第2GNDパターンとを備える。
【0016】
また、本発明の第3の態様にかかる受光素子キャリアは、シート状の誘電体を底面に対し傾斜して積層し、ブロック状に形成した多層基板と、前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記受光素子と接続された、第1斜面伝送路とを備える。
【0017】
また、本発明にかかる受光モジュールは、上記いずれかの受光素子キャリアを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の態様にかかる受光素子キャリアによれば、シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、前記側面上に形成され、前記多層基板の層と平行に延在する部分を有し、前記受光素子と接続された第1伝送路と、前記側面上の前記第1伝送路を除く領域に形成された、第1GNDパターンと、前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記第1伝送路と接続された、第2伝送路と、前記第2伝送路が形成された境界面の上下の境界面に形成され、前記側面において前記第1GNDパターンと接続された、複数の第2GNDパターンと、前記第1伝送路に隣接して配置され、各前記第2GNDパターンを互いに接続する第1スルーホールとを備えることにより、GND間に電位差を抑制し、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0019】
また、本発明の第2の態様にかかる受光素子キャリアによれば、シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、前記側面上に形成され、前記多層基板の層と交差する方向に延在する部分を有し、前記受光素子と接続された第1伝送路と、前記側面上の前記第1伝送路を除く領域に形成された、第1GNDパターンと、前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記第1伝送路と接続された、第2伝送路と、前記第1伝送路の設置高さにある前記境界面に形成され、前記側面において、前記第1伝送路を跨いで前記第1GNDパターンと接続された、第2GNDパターンとを備えることにより、GND間に電位差を抑制し、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0020】
また、本発明の第3の態様にかかる受光素子キャリアによれば、シート状の誘電体を底面に対し傾斜して積層し、ブロック状に形成した多層基板と、前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記受光素子と接続された、第1斜面伝送路とを備えることにより、伝送路を短縮し、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0021】
また、本発明にかかる受光モジュールによれば、上記いずれかの受光素子キャリアを備えることにより、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1の受光素子キャリアの斜視図である。
【図2】実施の形態1の受光素子キャリアの正面図である。
【図3】実施の形態1の導体パターンの構成を示す斜視透視図である。
【図4】実施の形態1の導体パターンの構成を示す上面透視図である。
【図5】実施の形態1のGNDの接続経路を示す概観図である。
【図6】実施の形態1のGNDの接続経路を示す概観図である。
【図7】実施の形態1の電磁界シミュレーションの結果を示す図である。
【図8】実施の形態2の導体パターンの構成を示す斜視透視図である。
【図9】実施の形態2の導体パターンの構成を示す上面透視図である。
【図10】実施の形態2のGNDの接続経路を示す概観図である。
【図11】実施の形態2のGNDの接続経路を示す概観図である。
【図12】実施の形態3の導体パターンの構成を示す斜視透視図である。
【図13】実施の形態3の側面導体パターンを示す正面図である。
【図14】実施の形態4の構成を示す斜視透視図である。
【図15】従来の受光素子キャリアの斜視図である。
【図16】従来の受光素子キャリアの伝送路での高周波特性を示す図である。
【図17】従来の受光素子キャリアの斜視図である。
【図18】従来の受光素子キャリアの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<A.実施の形態1>
<A−1.構成>
図1〜7は、実施の形態1による受光素子キャリアの構成、特徴を示す図である。図1は、本発明の受光素子キャリア100の斜視図である。図2は、受光素子キャリア100を光学系側から見た正面図である。図3は、受光素子キャリア100の表面および内部に設けられた導体パターンの構成を示す斜視透視図である。図4は、導体パターンの構成を示す上面透視図である。図5は、図3のiに示す平面での受光素子キャリア100の断面図で、実施の形態1でのGNDの最短接続経路を示す概観図である。図6は、受光素子キャリア100の側面である素子実装面4aの拡大図で、実施の形態1でのGNDの最短接続経路を示す概観図である。図7は、本実施の形態1の電磁界シミュレーションの結果である。
【0024】
図1は受光素子キャリア100の構成を示しており、受光素子キャリア100の側面を素子実装面4aとする。素子実装面4aには、受光素子1と、受光素子1と接続されるアンプIC3と、さらにアンプIC3と接続される第1伝送路としての伝送路6aが配置される。また、素子実装面4aには、伝送路6aを囲むように第1GNDパターンとしてのGNDパターン7aが形成されている。なお図1において、伝送路を示す領域には格子模様を、GNDパターンを示す領域には斜線をそれぞれ記載している。以下の図面においても同様である。
【0025】
図示していないが、受光素子キャリア100の図1中右側には信号光を集光する光学系、一方図面中左側の側面4bにはパッケージ出力端子が配置されパッケージに収められている。信号光は図右方向より素子実装面4a上へ入射される。
【0026】
図2は素子実装面4aの正面図であり、素子実装面4a上には、受光素子1、アンプIC3、伝送路6aが形成されている。なお図示していないが、この他にコンデンサなどが実装される。受光素子1の設置位置は、信号光の集光位置と素子の受光部とが一致するよう設定される。また、アンプIC3の設置位置は、内部回路と受光素子1の寄生容量とに対し、受光素子1とアンプIC3とを接続する金ワイヤ2aのインダクタンス、リアクタンスが適切となるよう配置される。20GHz以上の帯域を用いる場合、おおよそ受光素子1からサブミリメートル程度の位置にアンプIC3が配置される。
【0027】
光学系により集光された信号光は、受光素子1で電気信号に変換され、金ワイヤ2aで接続されたアンプIC3へ送られる。アンプIC3で増幅された出力は、金ワイヤ2bで接続された伝送路6aへ送られる。伝送路6aは、受光素子キャリア100内に形成された伝送路に接続されている。信号は伝送路を介して、受光素子キャリア100後方の側面4bから、パッケージ出力端子へ出力される。
【0028】
ここで、受光素子キャリア100は、シート状の誘電体を積み重ね、ブロック状に焼結したもので、層状の構造を持つ多層基板である。各誘電体層の層厚は、シート厚の調整により数十μmピッチで任意に決定できる。また各層の境界面には、積層時に導体をプリントすることにより、伝送路およびGNDパターンを設けることができる。各層間の導体は、シートにスルーホールを空けることで接続される。さらに、焼結後、例えばGNDパターン7aのように、受光素子キャリア100の表面に導体パターンをプリントすることもできる。
【0029】
図3に示すように、本実施の形態1の受光素子キャリア100は、底面側から層100A〜層100Dの4層からなる多層基板である。層100A−層100Bおよび層100C−層100Dの境界面に第2GNDパターンとしてのGNDパターン7bを、層100B−層100Cの境界面に第2伝送路としての伝送路6bを形成し、ストリップ線路を構成する。層厚は、層100B−層100Cの境界面高さと、パッケージ出力端子高さとを一致させるとともに、ストリップ線路のインピーダンスが整合するよう適切に設定されている。
【0030】
受光素子キャリア100の素子実装面4a上に、アンプIC3の出力位置付近から、伝送路6bの素子実装面4aへの露出部まで、多層基板の層と平行に延在する部分を有した伝送路6aを設け、またその周囲には、GNDパターン7aが、インピーダンスが整合するよう設けられ、コプレーナ線路が構成されている。
【0031】
アンプIC3(図2参照)の出力は、可能な限り短い金ワイヤ2b(図2参照)でコプレーナ線路である伝送路6aに接続される。さらに伝送路6aは、受光素子キャリア100内部に形成されたストリップ線路である伝送路6bに接続される。
【0032】
伝送路6aの周囲でGNDパターン7aとGNDパターン7bとを接続するとともに、伝送路6a直下に設けられた、すなわち、伝送路6aに隣接して配置されたスルーホール8(図4参照)により、境界面の上下のGNDパターン7bを接続する。
【0033】
これにより、図5、図6に示すように、伝送路6aを囲むように設けられたGNDパターン7aの長方形の抜けパターン(伝送路6aが形成される部分)の両側に位置する点aと点bとを接続する最短経路は、伝送路6aを回りこむ経路(一点鎖線)ではなく、受光素子キャリア100内部のGNDパターン7b、スルーホール8を介して接続される経路(点線)に短縮される。このとき、経路を可能な限り短縮するために、伝送路6bを挟む上下のGNDパターン7bは、伝送路6bに隣接している方がよく、すなわち、GNDパターン7aとGNDパターン7bとの接続点が、伝送路6aに隣接している方が望ましい。また、スルーホール8も、伝送路6aに可能な限り隣接する位置に形成されることが望ましい。なお図示はしないが、スルーホールは、隣接する位置以外の位置にも配置することで、他の境界面におけるGNDパターンも、伝送路6bのGNDとして機能させ、よりGND効果を向上させることも可能である。
【0034】
ここで、高周波信号伝送時に点a、b間に発生する電位差は、電位の変動の伝播時間が原因となるが、その経路が高周波信号の波長に対して短ければ、発生する電位差は小さくなる。受光素子キャリア100内部のGNDパターン7bが素子実装面4aにおけるGNDパターン7aと接続され、スルーホール8も含めた経路をとれる場合のシミュレーションでは、図7に示すように、共振周波数が40GHz以上となった。
【0035】
以上の構成により、実施の形態1では、素子実装面4aに形成された伝送路6aと、受光素子キャリア100内部に2次元的に形成された伝送路6bとを用いて信号を伝送することで、高周波特性が悪化しうる箇所を伝送路6aと伝送路6bとの接続点のみとし、また、素子実装面4aに形成されたGNDパターン7aと受光素子キャリア100内部に形成されたGNDパターン7bとを接続し、スルーホール8を介した経路を形成することで、高周波特性が良好で、設計許容度の高い受光素子キャリアおよびそれを用いた受光モジュールを提供することができる。
【0036】
<A−2.効果>
本発明にかかる実施の形態1によれば、受光素子キャリアにおいて、シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、多層基板の側面である素子実装面4a上に備えられた受光素子1と、素子実装面4a上に形成され、多層基板の層と平行に延在する部分を有し、受光素子1と接続された第1伝送路である伝送路6aと、素子実装面4a上の伝送路6aを除く領域に形成された、第1GNDパターンであるGNDパターン7aと、多層基板の層間である境界面に形成され、素子実装面4aにおいて伝送路6aと接続された、第2伝送路である伝送路6bと、伝送路6bが形成された境界面の上下の境界面に形成され、素子実装面4aにおいてGNDパターン7aと接続された、複数の第2GNDパターンであるGNDパターン7bと、伝送路6aに隣接して配置され、各GNDパターン7bを互いに接続する第1スルーホールであるスルーホール8とを備えることで、GND間に電位差を抑制し、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0037】
また、高周波特性悪化の小さい平面内の2次元的曲げのみ伝送路6bを形成しているので、反射や共振を抑制することができる。
【0038】
また、本発明にかかる実施の形態1によれば、受光素子キャリアにおいて、第1伝送路である伝送路6aに隣接する位置だけではなく、各GNDパターン7bを互いに接続する第2スルーホールであるスルーホールをさらに備えることで、他の境界面におけるGNDパターン7bも伝送路6bのGNDとして機能させ、よりGND効果を向上させることができる。
【0039】
また、本発明にかかる実施の形態1によれば、受光モジュールにおいて、上記の受光素子キャリアを備えることで、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0040】
また、本発明にかかる実施の形態1によれば、受光モジュールにおいて、素子実装面4aは、入射光学系に対して固定され、第2伝送路である伝送路6bは、素子実装面4aと反対側の側面4bにおいて出力端子に接続されることで、高周波数でも反射や共振を起こさず、信号を伝送することができる。
【0041】
<B.実施の形態2>
<B−1.構成>
図8〜11は、実施の形態2の受光素子キャリア101の構成、特徴を示す図である。図8は受光素子キャリア101の表面および内部に設けられた導体パターンの構成を示す斜視透視図である。また、図9は、導体パターンの構成を示す上面透視図である。図10は、図8のjに示す平面での受光素子キャリア101の断面図で、実施の形態2でのGNDの最短接続経路を示す概観図である。図11は、受光素子キャリア101の側面である素子実装面4aの拡大図で、実施の形態2でのGNDの最短接続経路を示す概観図である。
【0042】
実施の形態1と同様に受光素子1が実装されるが、素子配置高さを光学系に最適化すると、アンプIC3の出力端子の高さと、パッケージ出力端子の高さには差が生じる。
【0043】
図8に示すように、実施の形態2の受光素子キャリア101には、底面側から形成された層100A〜層100Dの4層に加え、層100Dのさらに上層に層100E、層100Fが形成される。層100A−層100Bの境界面、層100C−層100Dの境界面、層100D−層100Eの境界面および層100E−層100Fの境界面に第2GNDパターンとしてのGNDパターン7dを形成し、層100B−層100Cの境界面に第2伝送路としての伝送路6bを形成する。層100A−層100Bの境界面、層100B−層100Cの境界面、層100C−層100Dの境界面上の導体パターンでストリップ線路を構成する。なお図示はしていないが、実施の形態1において示した受光素子1は同様に備えられているものとする。
【0044】
層厚は、層100B−層100Cの境界面の高さと、パッケージ出力端子高さとを一致させるとともに、ストリップ線路のインピーダンスが整合するよう適切に設定されている。また、層100D−層100Eの境界面および層100E−層100Fの境界面が、素子実装面4aにおける第1伝送路としての伝送路6cの設置位置高さとなるよう層厚を調整する。なお伝送路6cは、多層基板の層と交差する方向に延在する部分を有する。
【0045】
ここで受光素子キャリア101内部のGNDパターン7dは、図8、図9に示すように、伝送路6cとの短絡を避けるためのクリアランスをもち、それ以外の部分で素子実装面4aに露出し、伝送路6cを除く領域に形成された、第1GNDパターンとしてのGNDパターン7cと接続される。すなわちGNDパターン7d、伝送路6cの設置高さにある境界面に形成され、素子実装面4aにおいて、伝送路6cを跨いでGNDパターン7cと接続される。これにより、図10、図11に示すように、伝送路6cを囲むように設けられたGNDパターン7cの長方形の抜けパターン(伝送路6cが形成される部分)の両側に位置する点aと点bと接続する最短経路は、伝送路6cを回りこむ経路(一点鎖線)ではなく、受光素子キャリア101内部のGNDパターン7dを介して接続される経路(点線)に短縮される。
【0046】
ここで、高周波信号伝送時に点a、b間に発生する電位差は、電位の変動の伝播時間が原因となるが、その経路が高周波信号の波長に対して短ければ、発生する電位差は小さくなる。受光素子キャリア101内部のGNDパターン7dが素子実装面4aにおけるGNDパターン7cと接続された経路をとれることで、電位差が生じる問題を解決できる。
【0047】
以上の構成により、実施の形態2では、光学系を最適な高さに設定しつつ、素子実装面4aに形成された伝送路6cと、受光素子キャリア101内部に2次元的に形成された伝送路6bとを用いて信号を伝送することで、高周波特性が悪化しうる箇所を伝送路6cと伝送路6bとの接続点のみとし、また、素子実装面4aに形成されたGNDパターン7cと受光素子キャリア101内部に形成されたGNDパターン7dとを接続した経路を形成することで、高周波特性が良好で、設計許容度の高い受光素子キャリアおよびそれを用いた受光モジュールを提供することができる。
【0048】
実施の形態1に示す受光素子キャリア100が、実施の形態2における特徴を同時に備えても良い。これにより、光学系に対する素子の位置と角度を自由に設定できる。光学系に合わせて、最適に設定することで、光学系の製造が容易で、コンパクトな受光モジュールを構成することができる。
【0049】
なお、多層基板の製造時に、積層前の誘電体シートの形状を台形にする、あるいは表面導体プリント前に削ることで、素子実装面4aを傾斜させても良い。これにより、受光素子1の設置角度を光学系に対して最適に保持することができる。
【0050】
<B−2.効果>
本発明にかかる実施の形態2によれば、受光素子キャリアにおいて、シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、多層基板の側面である素子実装面4a上に備えられた受光素子1と、素子実装面4a上に形成され、多層基板の層と交差する方向に延在する部分を有し、受光素子1と接続された第1伝送路である伝送路6cと、素子実装面4a上の伝送路6cを除く領域に形成された、第1GNDパターンであるGNDパターン7cと、多層基板の層間である境界面に形成され、素子実装面4aにおいて伝送路6cと接続された、第2伝送路である伝送路6bと、伝送路6cの設置高さにある境界面に形成され、素子実装面4aにおいて、伝送路6cを跨いでGNDパターン7cと接続された、第2GNDパターンであるGNDパターン7dとを備えることで、GND間に電位差を抑制し、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0051】
また、スルーホールやワイヤボンドが無く、インピーダンスを所定の値に設定可能である。
【0052】
<C.実施の形態3>
<C−1.構成>
図12は、実施の形態3の受光素子キャリアの、受光素子キャリア102の表面および内部に設けられた導体パターンの斜視透視図である。図12、図13に示すように、一定間隔でそれぞれのGNDパターン7fが、素子実装面4aにおけるGNDパターン7eと接続される。なおGNDパターン7fは、伝送路6bが形成された境界面の上下の境界面にも形成される。
【0053】
素子実装面4aから見た場合、図13に示すように、一定間隔おきにGNDパターン7fが素子実装面4aに露出し、GNDパターン7eとの接続面(図13における黒領域)が形成される。各GNDパターン7fの素子実装面4aへの露出部を、例えば0.5mmほどの間隔をあけて点在させることで、露出部をグリッド状に配列させることができる。第1スルーホールとしてのスルーホール8は各露出部の直下、すなわち伝送路6dに隣接して配置される(図12参照)。なお図示はしないが、スルーホールは、各露出部の直下以外の位置にも配置することで、他の境界面におけるGNDパターンも、伝送路6bのGNDとして機能させ、よりGND効果を向上させることも可能である。
【0054】
実装する素子の位置に合わせて、素子実装面4a上におけるGNDパターン7fの露出部でない部分を使い、素子の出力端子(図13ではアンプIC3)近傍から、伝送路6bの露出部まで、伝送路6dを形成することができる。よって伝送路6dは、多層基板の層と平行に延在する部分と、多層基板の層と交差する方向に延在する部分とを有することができる。
【0055】
このような構成によれば、各GNDパターン7fの形状、導体パターンは同一であるので、金型コストが小さく、安価にできる。また、素子設置位置の変更も、光軸に対して垂直な面内での変更については伝送路6dの変更のみで可能であり、素子の選定などの試作用途に低コストで亜種を作製可能である。
【0056】
<C−2.効果>
本発明にかかる実施の形態3によれば、受光素子キャリアにおいて、第1伝送路である伝送路6dは、多層基板の層と平行に延在する部分をさらに有し、第2GNDパターンであるGNDパターン7fは複数備えられ、第2伝送路である伝送路6bが形成された境界面の上下の境界面に形成され、伝送路6dに隣接して配置され、各GNDパターン7fを互いに接続する第1スルーホールであるスルーホール8をさらに備えることで、GND間に電位差を抑制し、高周波数でも反射や共振を起こさず、かつ高い設計許容度を実現することができる。
【0057】
また、素子実装面4aの導体パターンのみの変更で、素子実装位置の変更が可能となり、試作用途などで金型コストを低減できる。さらに、各層の形状が同じであるため、金型コストを低減できる。
【0058】
また、本発明にかかる実施の形態3によれば、受光素子キャリアにおいて、第1伝送路である伝送路6dに隣接する位置だけではなく、各GNDパターン7fを互いに接続するスルーホールをさらに備えることで、他の境界面におけるGNDパターンも伝送路6bのGNDとして機能させ、よりGND効果を向上させることができる。
【0059】
<D.実施の形態4>
<D−1.構成>
シート状の誘電体を積層した受光素子キャリアにおいて、底面を削る、あるいは楔形の保持部を設けることで、設置時に、各層の境界面を底面に対し傾斜させた受光素子キャリア103を図14に示す。なお、図14においては、受光素子1の図示を省略しているが、実施の形態1と同様に、アンプIC3に接続されて備えられている。
【0060】
まず、パッケージ出力端子位置から最も近い境界面まで側面4bにおける伝送路(図示せず)を設け、境界面内に延在する第1斜面伝送路としての伝送路6eへ接続する。境界面内では、2次元的に延在する伝送路6eを介して、パッケージ出力端子高さと同じ高さとなる側面4bに伝送路6eが露出される。これにより、側面配線を短くし、波特性の改善を図ることができる。
【0061】
また、複数の高周波伝送路を配置するとき、2面以上の境界面に別々に伝送路6e(第2斜面伝送路)を形成することで、配線長の調整、曲げ、インピーダンス調整のためのスタブなどの分布定数回路など、高周波伝送特性を改善することができる伝送路を形成すべき面積が、単一層中に多数の線路を配置しなければならない場合に比べ、広くとることができる。
【0062】
<D−2.効果>
本発明にかかる実施の形態4によれば、受光素子キャリアにおいて、シート状の誘電体を底面に対し傾斜して積層し、ブロック状に形成するとともに、底面に対し積層方向を傾斜させて設置された多層基板と、多層基板の側面である素子実装面4a上に備えられた受光素子1と、多層基板の層間である境界面に形成され、素子実装面4aにおいて受光素子1と接続され、素子実装面4aと反対側の側面4bにおいて出力端子に接続された第1斜面伝送路である伝送路6eとを備えることで、異なる高さにある光学素子と出力端子を接続する場合でも、側面上の伝送路を短くし、高周波特性を向上させることができる。さらに、設置向きについても光学系に最適化できる。
【0063】
また、本発明にかかる実施の形態4によれば、受光素子キャリアにおいて、第1斜面伝送路である伝送路6eとは異なる境界面に形成され、素子実装面4aにおいて受光素子1と接続され、素子実装面4aと反対側の側面4bにおいて出力端子に接続された第2斜面伝送路である伝送路6eをさらに備えることで、配線長の調整や、曲げ管理、スタブなどの分布定数回路設置等の高周波特性改善ためのパターンを配置する面積を広くとることができ、より高周波特性を改善できる。
【符号の説明】
【0064】
1 受光素子、2a,2b 金ワイヤ、3 アンプIC、4a 素子実装面、4b 側面、6a,6b,6c,6d,6e 伝送路、7a,7b,7c,7d,7e,7f GNDパターン、8 スルーホール、100,101,102,103 受光素子キャリア、100A,100B,100C,100D,100E,100F 層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、
前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、
前記側面上に形成され、前記多層基板の層と平行に延在する部分を有し、前記受光素子と接続された第1伝送路と、
前記側面上の前記第1伝送路を除く領域に形成された、第1GNDパターンと、
前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記第1伝送路と接続された、第2伝送路と、
前記第2伝送路が形成された境界面の上下の境界面に形成され、前記側面において前記第1GNDパターンと接続された、複数の第2GNDパターンと、
前記第1伝送路に隣接して配置され、各前記第2GNDパターンを互いに接続する第1スルーホールとを備える、
受光素子キャリア。
【請求項2】
前記第1伝送路に隣接する位置だけではなく、各前記第2GNDパターンを互いに接続する第2スルーホールをさらに備える、
請求項1に記載の受光素子キャリア。
【請求項3】
シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、
前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、
前記側面上に形成され、前記多層基板の層と交差する方向に延在する部分を有し、前記受光素子と接続された第1伝送路と、
前記側面上の前記第1伝送路を除く領域に形成された、第1GNDパターンと、
前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記第1伝送路と接続された、第2伝送路と、
前記第1伝送路の設置高さにある前記境界面に形成され、前記側面において、前記第1伝送路を跨いで前記第1GNDパターンと接続された、第2GNDパターンとを備える、
受光素子キャリア。
【請求項4】
前記第1伝送路は、前記多層基板の層と平行に延在する部分をさらに有し、
前記第2GNDパターンは複数備えられ、前記第2伝送路が形成された境界面の上下の境界面に形成され、
前記第1伝送路に隣接して配置され、各前記第2GNDパターンを互いに接続する第1スルーホールをさらに備える、
請求項3に記載の受光素子キャリア。
【請求項5】
前記第1伝送路に隣接する位置だけではなく、各前記第2GNDパターンを互いに接続する第2スルーホールをさらに備える、
請求項4に記載の受光素子キャリア。
【請求項6】
シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成するとともに、底面に対し積層方向を傾斜させて設置された多層基板と、
前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、
前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記受光素子と接続され、前記側面と反対側の側面において出力端子に接続された第1斜面伝送路とを備える、
受光素子キャリア。
【請求項7】
前記第1斜面伝送路とは異なる前記境界面に形成され、前記側面において前記受光素子と接続され、前記側面と反対側の側面において出力端子に接続された第2斜面伝送路をさらに備える、
請求項6に記載の受光素子キャリア。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の受光素子キャリアを備える、受光モジュール。
【請求項9】
前記側面は、入射光学系に対して固定され、
前記第2伝送路は、前記側面と反対側の側面において出力端子に接続される、
請求項8に記載の受光モジュール。
【請求項1】
シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、
前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、
前記側面上に形成され、前記多層基板の層と平行に延在する部分を有し、前記受光素子と接続された第1伝送路と、
前記側面上の前記第1伝送路を除く領域に形成された、第1GNDパターンと、
前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記第1伝送路と接続された、第2伝送路と、
前記第2伝送路が形成された境界面の上下の境界面に形成され、前記側面において前記第1GNDパターンと接続された、複数の第2GNDパターンと、
前記第1伝送路に隣接して配置され、各前記第2GNDパターンを互いに接続する第1スルーホールとを備える、
受光素子キャリア。
【請求項2】
前記第1伝送路に隣接する位置だけではなく、各前記第2GNDパターンを互いに接続する第2スルーホールをさらに備える、
請求項1に記載の受光素子キャリア。
【請求項3】
シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成した多層基板と、
前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、
前記側面上に形成され、前記多層基板の層と交差する方向に延在する部分を有し、前記受光素子と接続された第1伝送路と、
前記側面上の前記第1伝送路を除く領域に形成された、第1GNDパターンと、
前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記第1伝送路と接続された、第2伝送路と、
前記第1伝送路の設置高さにある前記境界面に形成され、前記側面において、前記第1伝送路を跨いで前記第1GNDパターンと接続された、第2GNDパターンとを備える、
受光素子キャリア。
【請求項4】
前記第1伝送路は、前記多層基板の層と平行に延在する部分をさらに有し、
前記第2GNDパターンは複数備えられ、前記第2伝送路が形成された境界面の上下の境界面に形成され、
前記第1伝送路に隣接して配置され、各前記第2GNDパターンを互いに接続する第1スルーホールをさらに備える、
請求項3に記載の受光素子キャリア。
【請求項5】
前記第1伝送路に隣接する位置だけではなく、各前記第2GNDパターンを互いに接続する第2スルーホールをさらに備える、
請求項4に記載の受光素子キャリア。
【請求項6】
シート状の誘電体を積層し、ブロック状に形成するとともに、底面に対し積層方向を傾斜させて設置された多層基板と、
前記多層基板の側面上に備えられた受光素子と、
前記多層基板の層間である境界面に形成され、前記側面において前記受光素子と接続され、前記側面と反対側の側面において出力端子に接続された第1斜面伝送路とを備える、
受光素子キャリア。
【請求項7】
前記第1斜面伝送路とは異なる前記境界面に形成され、前記側面において前記受光素子と接続され、前記側面と反対側の側面において出力端子に接続された第2斜面伝送路をさらに備える、
請求項6に記載の受光素子キャリア。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の受光素子キャリアを備える、受光モジュール。
【請求項9】
前記側面は、入射光学系に対して固定され、
前記第2伝送路は、前記側面と反対側の側面において出力端子に接続される、
請求項8に記載の受光モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−181792(P2011−181792A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46129(P2010−46129)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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