説明

受動ブレーキを備えている水力発電タービンと作動方法

本発明は、少なくとも1組の軸受上に固定子及び固定子の中の回転子を有する水力発電タービンに関し、タービンは、タービンの損傷を回避するために所定の水準の軸受摩耗の後作動し始めるブレーキを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に感潮場所で採用される水力発電タービンに関し、当該タービンは、タービンの損傷を回避するために、所定の水準の軸受摩耗の後作動し始める受動ブレーキであれば望ましい、ブレーキを含んでいる。
【背景技術】
【0002】
この惑星の工業化、特に、エネルギー需要を供給するための化石燃料の使用による環境影響は、もはや無視することができない局面にあり、その結果かなりの資源は、代替的な形態のエネルギー生成に向けられている。その様な新しい形態の代替エネルギーの最も有望なものは、太陽熱発電、風力発電、熱発電及び潮力発電である。潮力発電は、最も不断的で予測可能な形態の電力を提供するように思われるが、潮力を利用することは、電気を発生させるために水力発電タービンが設置されなければならない過酷な海底状態を与えられ、ほぼ間違いなく上記の電源のうち最も困難なものである。
【0003】
水力発電タービンは、通常極めて困難な作業状態を生じさせる高い潮汐流の区域の海底に設置される。海底に設置した後タービンへ接近することは、困難で、時間のかかる且つ危険なものであり、最小限に止めることが望ましい。その上、タービンの様々な運転部品の状態を監視すること、例えばタービンに損傷をもたらす可能性があり、費用のかかる修理及びタービンの発電能力の停止時間を必要とする過度の軸受摩耗を監視することなどは極めて困難である。
【0004】
このような次第から、過度の軸受摩耗が発生した場合にタービンの損傷を回避する水力タービン及び当該タービンを作動させる方法を提供することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様によると、固定子及び回転子と、固定子の中で回転子を支持する少なくとも1組の軸受と、少なくとも1組の軸受の所定の水準の摩耗に達すると制動力を回転子に印加するように作動するブレーキと、を備える水力発電タービンが提供されており、ブレーキは、軸受の摩耗の方向に対して少なくとも1組の軸受の軸受面の半径方向内向きに設置される制動面を有するブレーキパッドの1つ又はそれ以上の区分を備えている。
【0006】
ブレーキは、受動ブレーキであれば望ましい。
【0007】
ブレーキパッドの前述及び各区分は、少なくとも1組の軸受と一体化して形成されれば望ましい。
【0008】
少なくとも1組の軸受は、軸頸及び軸受ブロックを備えていれば望ましい。
【0009】
軸頸は、回転子に据え付けられ、軸受ブロックは、固定子に据え付けられれば望ましい。
【0010】
ブレーキパッドの各区分は、軸受ブロックの1つの中に位置付けられれば望ましい。
【0011】
ブレーキパッドの1つ又はそれ以上の区分の制動面は、軸受ブロックの軸受面から凹状になっていれば望ましい。
【0012】
ブレーキパッドの各区分は、軸受ブロックの区分が両側面に位置していれば望ましい。
【0013】
ブレーキは、少なくとも1組の軸受の所定の水準の摩耗が発生するタービン上の周縁位置に関係なく制動力を回転子に印加するように作動すれば望ましい。
【0014】
ブレーキパッドの区分は、タービンの実質的な全周縁の周囲に配置されれば望ましい。
【0015】
少なくとも1組の軸受は、少なくとも1つのラジアル軸受及び少なくとも1つのスラスト軸受を備えていれば望ましく、ブレーキは、ラジアル軸受又はスラスト軸受のどちらか一方の所定の水準の摩耗に達すると制動力を回転子に印加するように作動する。
【0016】
本発明の第2の態様によると、水力発電タービンの損傷を防止する方法が提供されており、タービンは、固定子と、回転子と、その間にある少なくとも1組の軸受と、を備えており、ブレーキは、軸受の摩耗の方向に対して少なくとも1組の軸受の軸受面の半径方向内向きに配置された制動面を有するブレーキパッドの1つ又はそれ以上の区分を備えており、方法は、制動面の水準まで軸受面が摩耗した後制動面が固定子又は回転子と接触することで少なくとも1組の軸受が所定の水準の摩耗に達することに応じて制動力を回転子に自動的に印加する段階を備えている。
【0017】
方法は、実質的に回転子の回転を停止するのに十分な制動力を回転子に印加することを備えていれば望ましい。
【0018】
方法は、所定の水準の軸受摩耗が発生するタービン上の位置に関係なく制動力を回転子に印加することを備えていれば望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の望ましい実施形態による水力発電タービンの概略断面図を図示している。
【図2】図1に示される水力発電タービンの部品を形成する軸受ブロックの斜視図を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
これより参照してゆく添付図面には、その全体を(10)と表示される水力発電タービンが図示されており、タービン(10)を通る潮汐又は他の水流に応じて電気を発生させるために海底などに設置されることを目的とするものである。タービン(10)は、使用時に適切な基部(図示せず)などに固定され、その内部で回転子(14)が回転するために据え付けられているリング形状固定子を備えている。固定子(12)は、環状に配列されたコイル(図示せず)を備えており、一方で回転子は、その外周縁の周囲に取り付けられる対応する環状に配列された磁石を備えている。固定子(12)内部の回転子(14)の回転は、コイル及び磁石の間の相対運動を引き起こし、タービン(10)から電力出力を提供するためにEMFを発生させる。図示される望ましい実施形態では、タービン(10)は、開放中央タービンを備えているが、以下の説明から明らかとなるように、本発明を水力発電タービンの他の形態に適用することができる。
【0021】
タービン(10)は、一対のラジアル軸受(16)及び一対のスラスト軸受の形態の軸受を更に備えている。ラジアル軸受(16)は、回転子(14)の重量に耐え、固定子(12)の中で回転子(14)の不要な半径方向運動を阻止している。スラスト軸受(18)は、回転子(14)にぶつかる水の潮汐流によって回転子(14)に印加される軸方向荷重に耐えている。それ故に、この荷重は、逆潮汐流として逆方向に向けられる。図示される望ましい実施形態では、ラジアル軸受及びスラスト軸受の両方(16、18)は、各々、回転子(14)を囲み、何らかの適切な手段でそこに固定される環状軸頸(20)を備えている。軸頸(20)は、例えばステンレス鋼などの任意の適切な材料から形成されればよい。軸受(16、18)は、対応する軸頸(20)に接触して動く環状に配列された軸受ブロック(22)を更に備えている。軸受ブロックは、何らかの適切な手段によって固定子(12)に据え付けられている。軸受ブロック(22)は、例えば十分に低い摩擦係数を有しているが、許容摩耗率を提供するのに十分硬質である材料のような任意の適切な材料で形成されればよい。軸受(16、18)の位置及び数を必要に応じて変更してもよいことは理解されるであろう。
【0022】
図2では、具体的に、タービン(10)から分離した軸受ブロック(22)の1つが図示されている。軸受ブロック(22)は、中央区分(24)より突出して立っている一対の肩区分(26)が側面に位置する凹状中央部分(24)を有していて、実質的にU字形をしている。中央区分(24)の中には、ブレーキパッド(28)が据え付けられている。ブレーキパッド(28)の制動面(30)は、軸受ブロック(22)が使用中に摩耗するであろう方向に対して、軸受ブロック(22)の軸受面(32)の半径方向内向きに位置付けられている。先に詳細に述べたように、ラジアル及びスラスト軸受(16、18)は、各々、終端間で互いに整列している円形に配列された軸受ブロック(22)を備えている。しかしながら、全ての軸受ブロック(22)の中にブレーキパッド(28)が備えられている必要はないことを理解されたい。例えば、ラジアル及びスラスト軸受(16、18)の1つおきの軸受ブロック(22)の中にブレーキパッド(28)が備えられていてもよい。ブレーキパッド(28)のない軸受ブロック(図示せず)では、中央区分(24)は設けられていないので、当該軸受ブロックは、連続的な軸受面を有していれば望ましい。更なる代替案として、ブレーキパッド(28)は、タービン(10)の周縁の周囲の複数の軸受ブロック(22)の中にだけ設けられてもよい。
【0023】
使用中、回転子(14)は、固定子(12)の中で高速回転し、ラジアル及びスラスト軸受(16、18)の軸頸(20)は、対応する軸受ブロック(22)に接触して動いており、軸受ブロックは、軸頸(20)より軟質な材料から形成されているので、軸受ブロック(22)に緩慢に摩耗を生じさせる。軸受ブロック(22)が摩耗する際、軸受面(32)は、ブレーキパッド(28)の制動面(30)に向かって緩慢に後退する。このようにして、最終的には軸受ブロック(22)は、ブレーキパッド(28)が中心区分(24)の内部から露出し、従って個別の軸頸(20)と接触するほど、摩耗することになることを理解されるであろう。摩耗線(L)は、個別のブレーキパッド(28)の露出をもたらす制動ブロック(22)の摩耗水準を示している。ブレーキパッド(28)は、軸受ブロック(22)よりかなり高い摩擦係数を有している材料を備えているので、ブレーキパッド(28)と個別の軸頸(20)との間の接触は、回転子(14)の減速及び最終的な完全停止をもたらすであろう。これは、ラジアル及びスラスト軸受(16、18)は、例えば回転子(14)が固定子(12)を詰まらせた場合、タービン(10)のコイル/磁石に損傷を引き起こす可能性のあるタービン(10)の損傷をもたらす可能性のある水準まで摩耗しないことを確実にするであろう。
【0024】
ブレーキパッド(28)は、ラジアル及びスラスト軸受(16、18)の両方に設けられれば望ましいが、必ずしも設けられる必要はないことを理解されるであろう。同様に、ブレーキパッド(28)は、両方のラジアル軸受(16)又は両方のスラスト軸受(18)に、この場合も設けられれば望ましいが、必ずしも設けられる必要はないことを理解されるであろう。同様に、軸頸(20)及び軸受ブロック(22)の位置は、軸受ブロック(22)が回転子(14)の上に位置付けられ、軸頸(20)が固定子(12)の上に位置付けられるように、入れ替えることができることを理解されたい。或いは、軸頸(20)は、特に軸受ブロック(22)より高い摩耗率を備えた材料から形成される場合、その中に凹状のブレーキパッド(28)を備えることができる。軸頸(20)及び軸受ブロック(22)の両方が、その中にブレーキパッド(28)を備えていることも可能である。
【0025】
先に述べたように、ブレーキパッド(28)は、ラジアル及びスラスト軸受(16、18)の全周縁の周囲に設置される必要はない。しかしながら、ブレーキパッド(28)は、前述の軸受(16、18)の実質的な全周縁の周囲に設けられれば望ましい。軸受摩耗が起こるにつれて、特に固定子(12)の周縁の周囲の1つの点では、回転子(14)が、摩耗の進んだ当該点で固定子(12)により接近することがその後起こり得るであろう。これは、タービン(10)の磁石及びコイルが、互いにより近接近させられ、最終的には互いに接触して、そこに損傷をもたらすことになる可能性があることを意味するであろう。回転子(14)及び固定子(12)の実質的な全周縁の周囲にブレーキパッド(28)を備えることによって、回転子(14)及び固定子(12)がタービン(10)の周縁の周囲の如何なる位置においても互いに接近しすぎる可能性は、回避される。ブレーキパッド(28)の位置決めは、特に制動面(30)の位置は、回転子(14)の固定子(12)に対する近接性がタービン(10)に損傷をもたらす可能性がある点に達する前に回転子(14)の回転が停止されるように選択される。
【0026】
ブレーキパッド(28)の設置は、上に述べたように作動中にタービン(10)を損傷する可能性を回避し、結果的にタービン(10)の保守要件を減らすことになるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水力発電タービンにおいて、固定子及び回転子と、前記固定子の中で前記回転子を支持する少なくとも1組の軸受と、前記少なくとも1組の軸受の所定の水準の摩耗に達すると制動力を前記回転子に印加するように作動するブレーキと、を備えており、前記ブレーキは、前記軸受の摩耗の前記方向に対して前記少なくとも1組の軸受の軸受面の半径方向内向きに設置される制動面を有するブレーキパッドの1つ又はそれ以上の区分を備えている、水力発電タービン。
【請求項2】
前記ブレーキは、受動ブレーキである、請求項1に記載の水力発電タービン。
【請求項3】
前記ブレーキパッドの前記及び各区分は、前記少なくとも1組の軸受と一体化して形成される、請求項1又は2に記載の水力発電タービン。
【請求項4】
前記少なくとも1組の軸受は、軸頸及び軸受ブロックを備えている、何れかの前述の請求項に記載の水力発電タービン。
【請求項5】
前記軸頸は、前記回転子に据え付けられ、前記軸受ブロックは、前記固定子に据え付けられる、請求項4に記載の水力発電タービン。
【請求項6】
ブレーキパッドの各区分は、前記軸受ブロックの1つの中に位置付けられる、請求項3又は4に記載の水力発電タービン。
【請求項7】
ブレーキパッドの前記1つ又はそれ以上の区分の制動面は、前記軸受ブロックの軸受面から凹状になっている、請求項4から6の何れかに記載の水力発電タービン。
【請求項8】
ブレーキパッドの各区分は、軸受ブロックの区分が両側面に位置している、請求項6から8の何れかに記載の水力発電タービン。
【請求項9】
前記ブレーキは、前記少なくとも1組の軸受の前記所定の水準の摩耗が発生する前記タービン上の前記周縁位置に関係なく前記制動力を前記回転子に印加するように作動する、何れかの前述の請求項に記載の水力発電タービン。
【請求項10】
ブレーキパッドの区分は、前記タービンの実質的な前記全周縁の周囲に配置される、何れかの前述の請求項に記載の水力発電タービン。
【請求項11】
前記少なくとも1組の軸受は、少なくとも1つのラジアル軸受及び少なくとも1つのスラスト軸受を備えており、前記ブレーキは、前記ラジアル軸受又は前記スラスト軸受のどちらか一方の所定の水準の摩耗に達すると前記制動力を前記回転子に印加するように作動する、何れかの前述の請求項に記載の水力発電タービン。
【請求項12】
水力発電タービンの損傷を防止する方法において、前記タービンは、固定子と、回転子と、その間にある少なくとも1組の軸受と、を備えており、ブレーキは、前記軸受の摩耗の前記方向に対して前記少なくとも1組の軸受の軸受面の半径方向内向きに配置された制動面を有するブレーキパッドの1つ又はそれ以上の区分を備えており、前記方法は、
前記制動面の前記水準まで前記軸受面が摩耗した後前記制動面が前記固定子又は回転子と接触することで前記少なくとも1組の軸受が所定の水準の摩耗に達することに応じて制動力を前記回転子に自動的に印加する段階を備えている、方法。
【請求項13】
実質的に前記回転子の回転を停止するのに十分な制動力を前記回転子に印加することを備えている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の水準の軸受摩耗が発生する前記タービン上の前記位置に関係なく前記制動力を前記回転子に印加することを備えている、請求項12又は13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−512354(P2012−512354A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541186(P2011−541186)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008942
【国際公開番号】WO2010/069538
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(511144343)オープンハイドロ アイピー リミテッド (9)
【Fターム(参考)】