説明

受動型無線識別タグ及びその受動電源回路

【課題】リップルの少ない給電をすることができ、省スペースで効率の良い出力を可能とする。
【解決手段】タグ20の高周波部22に2方向に電流を得るコイル300を備え、その出力をコッククロフトーウォルトン方式の第1および第2の昇圧回路402,404を平衡接続したAC-DC変換回路400に供給して、それぞれの誘起電圧のリップルを打ち消して、効率のよいDC出力を、識別コードを生成する論理回路26に供給する。これにより、小面積で精度の高い出力を得ることができる受動型無線識別タグおよびその受動電源回路を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線識別タグおよびその受動電源回路に係り、特に、たとえば、体温などを計測して送信する計測システムに用いて好適な無線識別タグおよびその受動電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種物件に貼付または添付あるいは内蔵されて、その物を無線信号により識別するRFID(無線識別)タグが実用に供されている。無線識別タグには、電池を内蔵する能動型のものと、電池を内蔵せずホスト側からの電磁界エネルギーにより駆動される受動型のものとが知られている。
【0003】
図12には、従来の受動型無線識別タグを用いた識別システムの要部の一例が示されている。なお、具体的なタグの適用例として例えば特許文献1にも示されている。この図において、リーダ10は、タグ20に電力を供給してその識別信号を読み取るホスト側の回路であり、交流電源12と、高周波部14と、復調回路16とを含む。交流電源12は、所定の周波数の交流電圧を発振する発振器を含み、たとえば、この例では、13.56MHz帯の周波数の発振器を有している。高周波部14は、交流電源12からの所定の周波数帯の信号を電磁エネルギーとしてタグ20に送信する共振回路であるとともに、タグ20からの識別信号を受ける同調回路であり、コンデンサ142と、コイル144と、抵抗146とを含む。復調回路16は、抵抗146を介して高周波部14に接続されており、高周波部14を介して受けた識別信号を所定のコードに復調する。識別コードとしては、たとえば、この例では、信号の反転時に符号が反転するマンチェスターコードが適用されている。
【0004】
一方、タグ20は、高周波部22と、AC-DC変換部24と、論理回路26とを含む。高周波部22は、ホスト側のコイル144に電磁誘導により結合されるコイル222と、該コイル222に並列に接続されて共振回路を形成するコンデンサ224と、識別信号を送る際にオン・オフされるFETスイッチ226とを含む。AC-DC変換部24は、ダイオード242と、コンデンサ244とを含む整流回路により形成されている。論理回路26は、識別信号を生成するロジックであり、AC-DC変換部24を介して供給されるDC入力により駆動される。識別コードは、リーダ10と同様にマンチェスターコードが適用されている。論理回路26の出力は、FETスイッチ226に接続されて、生成した識別コードに従ってスイッチ226がオン・オフ制御される。
【0005】
以上のような構成において、リーダ10の電源がオンとなると、所定の周波数の交流電圧が高周波部14のコンデンサ142に供給される。次に、交流電圧が供給された高周波部14では、その周波数に共振して、コイル144に所定の交流電流が流れ、その周囲に所定の磁界が生じる。次に、リーダ10のコイル144の周囲に磁界が生じると、その周辺にあるタグ20のコイル222に磁界に応動して誘導電流が流れる。次に、タグ20の高周波部22では、コイル222に流れる電流に応動してコンデンサ224に所定の交流電圧が生じる。次に、コンデンサ224に生じた交流電圧は、AC-DC変換部24により整流されて論理回路26に供給される。これにより、論理回路26が起動されて、そのタグ20に特有の識別コードが生成される。次に、論理回路26により生成された識別コードは、スイッチ226に供給される。これにより、識別コードに応じてスイッチ226がオン・オフされて、コンデンサ224に識別コードに応じた電圧が生じる。この結果、コイル222に識別コードに応じた電流が流れ、その周囲に磁界が生じて、これが上記と反対の動作により、リーダ10のコイル144に所定の電流として生じる。これにより、リーダ10の復調回路16では、コイル144により生じたタグ20からの識別コードを抵抗146を介して受ける。次に、復調回路16は、タグ20からの識別コードを復調して、ホスト装置に供給する。この結果、リーダ10において、タグ20からのそれぞれ特有の識別コードを受信して、タグ20が付された物を識別する。
【特許文献1】特開平11−301843号公報
【非特許文献1】ESSCIRC 2004,pp.383-386, September 2004 “A small ripple regulated charge pumpwith automatic pumping control schemes,”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術では、タグ20のAC-DC変換部24として、半波整流回路が用いられているので、AC-DC変換の効率が悪く、論理回路26の入力にリップルが多く、たとえば、体温あるいは心電計測などのセンサの結果を送る用途にタグ20を用いた場合に正確な計測結果を送ることが難しくなるという問題があった。そこで、AC-DC変換部24に全波整流回路を適用することが考えられるが、半波整流回路と比較してタグの面積が広くなり、それほど効率が向上しないという問題があった。また、周波数を高くすることにより、リップルを減少させることが考えられるが、電波法等の規則により、周波数が制限され、効率を改善することが困難であった。さらに、非特許文献1に記載のように、タグ20に整流回路を制御してリップルを改善するアプリケーションを導入することが考えられるが、EEPROM等のメモリが必要になり、やはりチップ面積が大となる問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、小面積で精度の高い出力を得ることができる受動型無線識別タグおよびその受動電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、主装置から高周波信号による電磁エネルギーが給電されて駆動され、所望の識別信号を含む応答信号を主装置に無線伝送する受動型無線識別タグにおいて、主装置(10)から供給される電磁エネルギーを受けて交流電力を得る高周波手段であって、逆位相の2方向の電流を得る電磁誘導手段(300)を有する高周波手段(22)と、高周波手段の一方の位相の電圧が供給されて昇圧する第1の昇圧手段(402)と、高周波手段の他方の位相の電圧が供給されて昇圧する第2の昇圧手段(404)であって、前記第1の昇圧手段に平衡接続された第2の昇圧手段(404)と、第1の昇圧手段(402)と前記第2の昇圧手段(404)の平衡出力を受けて少なくとも識別信号を生成する信号生成手段(26)とを含む受動型無線識別タグ20Aから構成される。
【0009】
また、本発明に係る受動型無線識別タグ20Aは、第1の昇圧手段(402)及び第2の昇圧手段(404)が、それぞれコンデンサ(410,420)を介して複数の整流手段((412,414)、(422,424))が並列に接続されたコッククロフト−ウォルトン型の多段型整流回路であって、それぞれ並列接続された第1の昇圧手段のダイオード412,414の一端と第2の昇圧手段のダイオード422,424の他端がコンデンサ416を介して共通接続されているとよい。
【0010】
さらに、本発明に係る受動型無線識別タグの高周波手段(22)の電磁誘導手段(300)が、2組のコイル302,304が反対向きに巻回されて接続されているとよい。
【0011】
また、本発明に係る受動型無線識別タグの高周波手段22の電磁誘導手段300が、2組のコイルの中間点Sが第1の昇圧手段(402)と前記第2の昇圧手段(404)の平衡接続点に接続されてもよい。
【0012】
また、本発明に係る受動型無線識別タグ20Aは、所定の計測対象を計測するセンサを含み、そのセンサの結果を識別信号とともに主装置(10)に送信することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、無線給電される小型装置における受動電源回路において、電磁エネルギーを受けて交流電力を得る高周波手段(22)であって、逆位相の2方向の電流を得る電磁誘導手段(300)を有する高周波手段(22)と、高周波手段の一方の位相の電圧が供給されて昇圧する第1の昇圧手段(402)と、高周波手段の他方の位相の電圧が供給されて昇圧する第2の昇圧手段(404)であって、第1の昇圧手段に平衡接続された第2の昇圧手段(404)とを含む受動電源回路から構成される。
【0014】
また、本発明に係る受動電源回路は、第1の昇圧手段(402)および第2の昇圧手段(404)が、それぞれコンデンサ410,420を介して複数の整流手段((412,414)、(422,424))が並列に接続されたコッククロフト−ウォルトン型の多段型整流回路であって、それぞれ並列接続された第1の昇圧手段(402)のダイオード412,414の一端と第2の昇圧手段のダイオード422,424の他端がコンデンサ416を介して共通接続されているとよい。
【0015】
さらに、本発明に係る受動電源回路は、高周波手段22の電磁誘導手段300が、2組のコイル302,304が反対向きに巻回されて接続されているとよい。
【0016】
また、本発明に係る受動電源回路は、高周波手段(22)の電磁誘導手段(300)が、2組のコイルの中間点Sが第1の昇圧手段402と前記第2の昇圧手段404の平衡接続点に接続されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の受動型無線識別タグによれば、主装置から高周波信号による電磁エネルギーが給電されて駆動され、所望の識別信号を含む応答信号を主装置に無線伝送する受動型無線識別タグにおいて、該タグは、主装置から供給される電磁エネルギーを受けて交流電力を得る高周波手段であって、逆位相の2方向の電流を得る電磁誘導手段を有する高周波手段と、高周波手段の一方の位相の電圧が供給されて昇圧する第1の昇圧手段と、高周波手段の他方の位相の電圧が供給されて昇圧する第2の昇圧手段であって、第1の昇圧手段に平衡接続された第2の昇圧手段と、第1の昇圧手段と第2の昇圧手段の平衡出力を受けて少なくとも識別信号を生成する信号生成手段と、を含む構成であるから、リップルの少ないAC出力を信号生成手段に得ることができ、小スペースで精度の高い出力を得ることができる。
【0018】
また、第1の昇圧手段および第2の昇圧手段は、それぞれコンデンサを介して複数の整流手段が並列に接続されたコッククロフト−ウォルトン型の多段型整流回路であって、それぞれ並列接続された第1の昇圧手段のダイオードの一端と第2の昇圧手段のダイオードの他端がコンデンサを介して共通接続されている構成であるから、リップルの少ない高電圧を信号生成手段に供給することができる。
【0019】
また、高周波手段の電磁誘導手段は、2組のコイルが反対向きに巻回されて接続されている構成であるから、有効に電磁誘導された逆位相の電流を得ることができる。
【0020】
さらに、高周波手段の電磁誘導手段が、2組のコイルの中間点が第1の昇圧手段と第2の昇圧手段の平衡接続点に接続されているので、省スペースで有効に電磁誘導された逆位相の電流を得ることができる。
【0021】
また、受動型無線識別タグは、所定の計測対象を計測するセンサを含み、該センサの結果を識別信号とともに主装置に送信する構成であるから、そのセンサの結果を識別信号とともに主装置に送信することができる。
【0022】
また、本発明の受動電源回路によれば、無線給電される小型装置における受動電源回路において、該回路は、電磁エネルギーを受けて交流電力を得る高周波手段であって、逆位相の2方向の電流を得る電磁誘導手段を有する高周波手段と、高周波手段の一方の位相の電圧が供給されて昇圧する第1の昇圧手段と、高周波手段の他方の位相の電圧が供給されて昇圧する第2の昇圧手段であって、第1の昇圧手段に平衡接続された第2の昇圧手段と、を含む構成であるから、省スペースで効率の高い電力を得ることができる。
【0023】
また、本発明の受動電源回路は、第1の昇圧手段および第2の昇圧手段が、それぞれコンデンサを介して複数の整流手段が並列に接続されたコッククロフト−ウォルトン型の多段型整流回路であって、それぞれ並列接続された第1の昇圧手段のダイオードの一端と第2の昇圧手段のダイオードの他端がコンデンサを介して共通接続されている構成であるから、省スペースで高い電圧を有効に得ることができる。
【0024】
また、高周波手段の電磁誘導手段が、2組のコイルが反対向きに巻回されて接続されているので、有効に電磁誘導された逆位相の電流を得ることができる。
【0025】
さらに、高周波手段の電磁誘導手段が、2組のコイルの中間点が第1の昇圧手段と前記第2の昇圧手段の平衡接続点に接続されている構成であるから、省スペースで有効に電磁誘導された逆位相の電流を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、添付図面を参照して本発明に係る受動型無線識別タグの実施の形態を詳細に説明する。図1には、本発明による受動型無線識別タグが適用された無線識別システムの要部の一例が示されている。本発明の受動型無線識別タグは、タグのリーダとしての機能を含む主装置から高周波信号による電磁エネルギーが給電されて駆動され、所望の識別信号を含む応答信号を主装置に無線伝送する受動型無線識別タグである。この図において、図12に示す従来の無線識別タグシステムと同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態において、図12に示す無線識別システムと異なる点は、リーダ10のコイル144からの電磁界を2方向に電流が逆位相に流れるように受ける電磁誘導手段としてのコイル300を設けた点と、コイル300の中間点に平衡接続された本願特有の低リプルのAC-DC変換回路400を設けた点である。
【0027】
本実施形態において、受動型無線識別タグ20Aは、例えばタグ側との信号の送受を行うリーダとしての主装置から供給される電磁エネルギーを受けて交流電力を得る高周波手段としての高周波部22を含む。高周波部22は、逆位相の2方向の電流を得る電磁誘導手段としてのコイル300を有する。すなわち、本実施形態によるタグ20Aに適用されたコイル300は、たとえば、図2に示すように、外側から内側に時計方向に巻回された第1の部位302と、外側から内側に反時計方向に巻回された第2の部位304とを有し、それぞれの内側端部が共通に接続されている。これらは、図5に示すように、基板上に、たとえば1mm角程度のプリント配線として形成される。第1の部位302の一方側端部および第2の部位304の他方側の端部は、それぞれAC-DC変換回路400の両側端部に接続され、コイル300の共通接続の中間点SはAC-DC変換回路400の平衡接続点に接続されている。
【0028】
ちなみに、図3には、リーダ10のコイル144の一例が示されている。本実施形態では、タグ20Aのコイル300と同様に、時計方向に巻回された第1の部位144aと、反時計方向に巻回された第2の部位144bとを有し、その内側端部どうしが接続されている。図2に示すコイル300に印加する垂直交番磁界は、図3のコイル144を用いずに別途に用意した図1のコイル144により発生したものでもよい。その場合、図3のコイル144は図2のコイル300に電磁誘導で誘起される電圧のモニター用コイルとして使うことができる。
【0029】
一方、本実施形態のタグ20に適用されるAC-DC変換回路400は、図4に示すように、コッククロフト‐ウォルトン方式の2組の昇圧回路402,404を平衡接続して形成されている。
第1の昇圧回路(第1の昇圧手段)402は、コイル300の第1の部位302に接続されたコンデンサ410と、コンデンサ410に接続した複数の整流手段と、からなる。本実施形態において、第1の昇圧回路402は、コンデンサ410と、コンデンサ410に対して逆方向向きに接続された第1のダイオード412と、正方向向きに接続された第2のダイオード414と、これらダイオード412,414をコイル300の中間点に平衡接続するコンデンサ416とを含む。第2の昇圧回路(第2の昇圧手段)404は、コイル300の第2の部位304に接続されたコンデンサ420と、コンデンサ420に接続した複数の整流手段と、からなる。本実施形態において、第2の昇圧回路404はコンデンサ420に対して逆方向向きに接続された第3のダイオード422と、正方向向きに接続された第4のダイオード424とを含み、第3および第4のダイオードは、第1の昇圧回路402と平衡接続されるコンデンサ416に共通接続されている。第1〜第4ダイオード412,414,422,424が整流手段とされる。これらは、図5に示すように、それぞれチップ素子が配置されて形成することができる。なお、第1〜第4のダイオード412〜424は、ショットキーダイオードが有利に適用されており、第1および第3のダイオード412,422が同一チップに封入され、同様に、第2および第4のダイオード414,424が同一チップに封入されている。また、整流手段として、例えばMOSトランジスタのダイオード接続とされるMOSトランジスタ構成やアクティブダイオードと呼ばれるMOSトランジスタ構成としてもよい。出力Voutは、信号生成手段としての論理回路26に接続される。
【0030】
以上のような構成において、リーダ10の電源がオンとなると、所定の周波数の交流電圧が高周波部14のコンデンサ142とコイル144と抵抗146の直列回路に供給される。次に、交流電圧が供給された高周波部14では、その周波数に共振して、コイル144に所定の交流電流が流れ、その周囲に所定の磁界が生じる。次に、リーダ10のコイル144の周囲に磁界が生じると、その周辺にあるタグ20のコイル300に磁界に応動して誘導電流が流れる。この場合の高周波部14およびAC-DC変換回路400の等価回路が図6に示されている。図6において、Ls1、Ls2はコイルの直列インダクタンス、Rhf1、Rhf2はコイルの高周波直列抵抗、Cp1、Cp2はコイルの寄生並列キャパシタ、Rleak1、Rleak2は漏れ抵抗である。Vmは、誘起電圧である。
【0031】
まず、コイル300の第1の部位302に正または負の電圧Vxが生じたとすると、さらに、図7または図8に示すような等価回路が図6の上部側の回路に形成される。この場合、第1の昇圧回路402の出力Voutは、次式(1)により与えられる。
【数1】

ここで、Vxmは、誘起電圧Vxの振幅、Vdはダイオード412,414のオン電圧である。すなわち、図9に示すように、キャパシタC3の初期電圧が零と仮定すると、Vout(=Vc3)は、Vxが最初の負電圧の間は零であり、その間Vc1はVxm-Vdに到達する。そしてVxが正電圧になると、増倍されて2(Vxm-Vd)がVc3に出力され、リップルのない昇圧された電圧となって、出力される。
【0032】
同様に、下部側の回路404では、上部側回路402の場合と位相が反対方向の誘起電圧Vxが供給されて、上部側回路402で負電圧の場合に、正電圧Vxが供給されて、増倍されたリップルのない出力2(Vxm-Vd)がVc3に得られる。上部側回路402で正電圧の場合には、負電圧が供給されて、その間Vc2はVxm-Vdに到達する。したがって、図10に示すように、それぞれコイル300の第1の部位302に供給される誘起電圧Vin1、第2の部位304に誘起される電圧Vin2は、その位相が逆位相となって現われ、それぞれがAC-DC変換回路400の第1の昇圧回路402と第2の昇圧回路404に供給されて、そのそれぞれの昇圧回路のリップルはキャパシタC3に逆位相で加算されるため、それらの平衡出力Voutはリップルのない一定出力として論理回路26に供給される。
【0033】
これにより、論理回路26が起動されて、そのタグ20に特有の識別コードが生成される。次に、論理回路26により生成された識別コードは、スイッチ226に供給される。これにより、識別コードに応じてスイッチ226がオン・オフされて、コンデンサ224に識別コードに応じた電圧が生じる。この結果、コイル300に識別コードに応じた電流が流れ、その周囲に磁界が生じて、これが上記と反対の動作により、リーダ10のコイル144に所定の電流として生じる。これにより、リーダ10の復調回路16では、コイル144により生じたタグ20からの識別コードを抵抗146を介して受ける。次に、復調回路16は、タグ20からの識別コードを復調して、ホスト装置に供給する。この結果、リーダ10において、タグ20からのそれぞれ特有の識別コードを受信して、タグ20が付された物を識別する。
【0034】
以上詳細に説明したように本実施形態に係る受動型無線識別タグによれば、リーダ10から供給される電磁エネルギーを受けて交流電力を得る高周波部に、巻回方向の異なる部位302,304を有するコイル300を設け、逆位相の2方向の電流をAC-DC変換回路400に有効に送ることができる。AC-DC変換回路400では、コイル300の一方の部位302からの電圧が供給されて昇圧する第1の昇圧手段と、コイル300の他方の位相の電圧が供給されて昇圧する第2の昇圧手段とが平衡接続されているので、リップルの少ないAC出力を信号生成手段に得ることができ、小スペースで精度の高い出力を得ることができる。
【0035】
また、第1の昇圧回路402および第2の昇圧回路が、それぞれコンデンサを介して複数の整流手段が並列に接続されたコッククロフト−ウォルトン型の多段型整流回路であって、それぞれ並列接続された第1の昇圧回路402のダイオードの一端と第2の昇圧回路のダイオードの他端がコンデンサを介して共通接続されているので、リップルの少ない高電圧を論理回路26に有効に供給することができる。
【0036】
なお、上記実施形態では、論理回路26により識別コードのみを生成してリーダ10に送る場合を例に挙げて説明したが、本発明では、効率のよい高電圧の給電をすることができるので、たとえば、体温測定や心音測定などの図示しない生体センサをタグ20に設けて給電するようにしてもよい。
【0037】
以上説明した本発明の受動型無線識別タグ及びその受動電源回路は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。例えば、MOSトランジスタにより示したスイッチ226の具体的構成についても発明の本質を変更しない範囲で任意の設計変更を行える。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る受動型無線識別タグが適用された無線識別システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1の実施形態に適用されるコイルの形態を示すプリント図である。
【図3】図1の実施形態に適用されるコイルの形態を示すプリント図である。
【図4】図1の実施形態に適用されるAC-DC変換回路を示す回路図である。
【図5】図1の実施形態に適用される受動型電源回路を示す実装図である。
【図6】図1の実施形態の要部の等価回路を示す回路図である。
【図7】図1の実施形態の要部の動作を説明するための等価回路を示す回路図である。
【図8】図1の実施形態の要部の動作を説明するための等価回路を示す回路図である。
【図9】図1の実施形態の動作を説明するためのグラフである。
【図10】図1の実施形態の動作を説明するためのグラフである。
【図11】図1の実施形態の動作を説明するためのグラフである。
【図12】従来の受動型無線識別タグが適用された無線識別システムを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
22 高周波部
26 論理回路
224 コンデンサ
226 FETスイッチ
300 コイル
302 第1の部位
304 第2の部位
402 第1の昇圧回路
404 第2の昇圧回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主装置から高周波信号による電磁エネルギーが給電されて駆動され、所望の識別信号を含む応答信号を主装置に無線伝送する受動型無線識別タグにおいて、該タグは、
主装置から供給される電磁エネルギーを受けて交流電力を得る高周波手段であって、逆位相の2方向の電流を得る電磁誘導手段を有する高周波手段と、
高周波手段の一方の位相の電圧が供給されて昇圧する第1の昇圧手段と、
高周波手段の他方の位相の電圧が供給されて昇圧する第2の昇圧手段であって、第1の昇圧手段に平衡接続された第2の昇圧手段と、
第1の昇圧手段と第2の昇圧手段の平衡出力を受けて少なくとも識別信号を生成する信号生成手段と、を含むことを特徴とする受動型無線識別タグ。
【請求項2】
第1の昇圧手段および第2の昇圧手段は、それぞれコンデンサを介して複数の整流手段が並列に接続されたコッククロフト−ウォルトン型の多段型整流回路であって、それぞれ並列接続された第1の昇圧手段のダイオードの一端と第2の昇圧手段のダイオードの他端がコンデンサを介して共通接続されていることを特徴とする請求項1記載の受動型無線識別タグ。
【請求項3】
高周波手段の電磁誘導手段は、2組のコイルが反対向きに巻回されて接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の受動型無線識別タグ。
【請求項4】
高周波手段の電磁誘導手段は、2組のコイルの中間点が第1の昇圧手段と第2の昇圧手段の平衡接続点に接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の受動型無線識別タグ。
【請求項5】
受動型無線識別タグは、所定の計測対象を計測するセンサを含み、該センサの結果を識別信号とともに主装置に送信することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の受動型無線識別タグ。
【請求項6】
無線給電される小型装置における受動電源回路において、該回路は、
電磁エネルギーを受けて交流電力を得る高周波手段であって、逆位相の2方向の電流を得る電磁誘導手段を有する高周波手段と、
高周波手段の一方の位相の電圧が供給されて昇圧する第1の昇圧手段と、
高周波手段の他方の位相の電圧が供給されて昇圧する第2の昇圧手段であって、第1の昇圧手段に平衡接続された第2の昇圧手段と、を含むことを特徴とする受動電源回路。
【請求項7】
第1の昇圧手段及び第2の昇圧手段は、それぞれコンデンサを介して複数の整流手段が並列に接続されたコッククロフト−ウォルトン型の多段型整流回路であって、それぞれ並列接続された第1の昇圧手段のダイオードの一端と第2の昇圧手段のダイオードの他端がコンデンサを介して共通接続されていることを特徴とする請求項6記載の受動電源回路。
【請求項8】
高周波手段の電磁誘導手段は、2組のコイルが反対向きに巻回されて接続されていることを特徴とする請求項6又は7記載の受動電源回路。
【請求項9】
高周波手段の電磁誘導手段は、2組のコイルの中間点が第1の昇圧手段と第2の昇圧手段の平衡接続点に接続されていることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の受動電源回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−182852(P2009−182852A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21501(P2008−21501)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】