説明

口腔内微生物濃度測定用の被検液の製造方法

【課題】 歯垢の採取方法に依存する被検液中の口腔内微生物数の変動を無くし、口腔機能が未熟または低下している被験者においても正確に再現性良く実施可能な口腔内微生物濃度の測定ができる被検液の製造方法を提供する。
【解決手段】 全歯面をブラッシングした歯ブラシを生理食塩水、リン酸バッファー等の液体と接触させて、該歯ブラシに付着している歯垢及び唾液を該液体中に分散及び/又は溶解させて被検液を調製する。刺激唾液を回収する方法と異なり、口腔機能が未熟または低下している被験者からも再現性よく定量の歯垢及び唾液が回収できる。得られた被検液から亜硝酸抽出法などにより抗原又は抗体を取り出し、該抗原又は抗体の量を免疫学的方法により測定すれば、迅速かつ正確に齲蝕関連菌などの口腔内微生物濃度が把握できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の微生物の測定のための被検液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医学検査や食品検査、または環境測定において微生物検査は重要な検査項目となっている。
【0003】
口腔内には多種多様な微生物が存在しており、これらの微生物の中に感染症を引き起こす微生物が存在する場合があることが知られている。例えば、齲蝕、歯周病の発生には齲蝕関連菌や歯周病関連菌が強く関与していることが知られている。近年、従来感染症とは関係ないと思われていた疾患、例えば、心臓病、胃潰瘍、癌等の発症にも口腔内に存在する微生物が関与している場合があることが明らかとなり、口腔内の微生物検査は歯科領域のみならず、医科領域においても重要になっている。
【0004】
口腔内に存在する細菌中、ミュータンスレンサ球菌(mutans streptococci)に属する細菌、ラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する細菌、アクチノミセス属(Actinomyces)に属する細菌が齲蝕発生と相関があることが知られており、これら齲蝕関連菌数と齲蝕発生の間に相関関係があることが知られている。特に、上記齲蝕関連菌中、ミュータンスレンサ球菌数は齲蝕発生と強い相関関係がある。齲蝕は前記齲蝕関連菌により歯垢中で産生、蓄積された酸によりエナメル表層下の脱灰が進む疾患であり、齲蝕関連菌の数を調べることでヒトの口腔内における齲蝕危険度を判定することができる。
【0005】
これまでに、歯垢及び/又は唾液を含む被検体を使用し、齲蝕関連菌濃度を測定する複数のキットが市販されている。齲蝕関連菌濃度を測定するためのキットに要求される性能として、簡便、迅速に齲蝕関連菌濃度を測定できることは勿論であるが、被検体の採取が容易であり且つ再現性が高いことも重要である。
【0006】
被検体として最も良く使用されるのは、刺激唾液である。これは被験者にパラフィンペレット等の咀嚼物を噛ませ、分泌した唾液を吐き出させることにより採取できる。刺激唾液が良く使用される理由は、採取が容易であることであるが、被検体の採取による測定誤差が小さいことも理由の1つと言われている。そして、刺激唾液を使用して齲蝕関連菌濃度を測定する場合、刺激唾液中の齲蝕関連菌濃度は歯垢中の齲蝕関連菌濃度を反映しているという考え方に基づいている。しかし、刺激唾液中の齲蝕関連菌、特にミュータンスレンサ球菌は歯面から剥がれ落ちたものであり、齲蝕原性が強いミュータンスレンサ球菌は歯面に強固に付着していて剥がれ難いという性質があるので、より正確に菌濃度を測定するには、歯垢を被検体として使用した方が良い。
【0007】
実際に、被検体として刺激唾液と歯垢を比較し、被検体中のミュータンスレンサ球菌数と齲蝕危険度との相関を調べた結果、歯垢を含む被検体においてより高い相関が得られ、齲蝕危険度の判定に歯垢を使用する重要性が指摘されている(非特許文献1)。
【0008】
歯垢を採取する方法として、綿棒を使用し、歯面を数回拭き取るというものが知られている。しかしながら、歯垢は歯間にたまりやすいが、綿棒では、歯間の歯垢を採取し難く、さらに、このような綿棒による歯垢の採取方法は、毎回同じように全ての歯面をまんべんなく拭き取ることは著しく困難であるため、歯垢の採取量にバラツキが生じ易いので、測定結果の再現性が悪いという問題を有していた。また、爪楊枝、綿棒、スパチュラ等を使用し歯面の歯垢を掻き取り、採取した歯垢を秤量した後に、その歯垢中の齲蝕関連菌を測定する方法がある。この方法の場合、測定結果を単位歯垢重量当たり値とすることで再現性が得られるが、採取した微量の歯垢を正確に且つ簡便に秤量することが困難であるという問題を有している。
【0009】
最近、福島によりブラッシング処理による歯垢懸濁液の採取法が報告された(非特許文献2、非特許文献3)。該方法は、歯ブラシで全歯面を約1分間ブラッシングし、緩衝液を含嗽し歯垢懸濁液を採取するというもので、歯間部を含む全歯面より再現性良く歯垢が採取できることが示され、さらに、刺激唾液と歯垢におけるミュータンスレンサ球菌に局在は口腔ごとに異なること、刺激唾液は個々人の齲蝕リスクを評価する試料としては不適切であること、ブラッシング処理で採取した歯垢懸濁液がリスク判定用として有用であること等が示唆された。
【0010】
上記歯垢の採取方法のうち、健康な少年や成人が被験者の場合、ブラッシング処理による歯垢懸濁液は採取が容易で、且つ再現性良く採取できる方法であるが、口腔機能が未熟、または、口腔機能が低下し、含嗽が困難な被験者(例えば、幼児、高齢者、要介護者等)を対象とした場合、ブラッシング処理による歯垢懸濁液を再現性よく採取することは著しく困難であるため、齲蝕関連菌数を再現性良く測定することはできない。上記のような口腔機能が未熟または低下している被験者においても再現性よく歯垢中の口腔内微生物を測定する方法が望まれていた。
【0011】
【非特許文献1】武井勉,阪大歯学誌,35巻,93−109頁,1990年
【非特許文献2】福島和雄,ミュータンスレンサ球菌の臨床生物学(クイセッテンス出版、花田信弘監修),第1版,62−82頁,2003年
【非特許文献3】飯嶌大典,口腔衛生学会雑誌,52巻,332−333頁,2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、歯垢を含む被検体を使用し口腔内微生物を測定する際に、歯垢の採取方法に依存する被検体中の口腔内微生物数の変動を無くし、口腔機能が未熟または低下している被験者においても正確に再現性良く実施可能な口腔内微生物濃度の測定が可能な被検液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は上記課題を解決するために、鋭意検討してきた。その結果、ブラッシングに使用した歯ブラシに付着した歯垢のみを使用しても口腔内微生物が正確かつ再現性良く測定できることを見出した。そして更に検討を進め、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、全歯面をブラッシングした歯ブラシを液体と接触させ、該歯ブラシに付着している歯垢及び唾液を該液体中に分散及び/又は溶解させることを特徴とする口腔内微生物濃度測定用の被検液の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の口腔内微生物の測定方法により、従来測定に使用する被検体の再現性の良い採取が著しく困難であった口腔機能が未熟または低下している被験者(例えば、幼児、高齢者、要介護者等)を対象とする場合においても、再現性良く正確に口腔内微生物を測定することが可能となった。健康な少年や成人を対象とした場合においても、ブラッシング後に含嗽する必要がないため、より簡便に口腔内微生物濃度を測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明では、被検液は、全歯面をブラッシングした歯ブラシを液体と接触させ、該歯ブラシに付着している歯垢及び唾液を該液体中に分散及び/又は溶解させることにより製造される。
【0017】
この方法により得られた被検液には上記歯垢及び唾液中に含まれる口腔内微生物が存在することになる。歯ブラシの大きさや形状(以下、形状等)を一定のものとすることにより、該歯ブラシに付着する歯垢及び唾液はほぼ一定のものとなり、被検液中に存在する歯垢及び唾液由来の口腔内微生物の量は、実際に口腔内に存在する濃度と相関のあるものとすることができる。従って、該被検液中の口腔内微生物の量を測定することにより、口腔内における齲蝕原因菌等の微生物濃度が判別できる。
【0018】
なお、本発明において口腔内微生物とは、口腔内に存在する細菌、リケッチア属(Rickettsiae)、クラミジア属(Chlamydia)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)および単細胞真核生物を指す。
【0019】
本発明において、測定の対象となる口腔内に存在する感染症を引き起こす微生物を例示すると、齲蝕関連菌、歯周病関連菌、上気道感染起因菌、日和見感染菌等が挙げられる。それぞれについて具体例を表示すると、齲蝕関連菌としては、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)等のミュータンスレンサ球菌に属する細菌、ラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する細菌、アクチノミセス属(Actinomyces)に属する細菌が、歯周病関連菌としては、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobatillus actinomycetemcomitans)、バクテロイデス・フォルシザス(Bacteroides forsythus)、トレポネマ・デンチコラ(Treponema denticola)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、プレボテラ・ニグレッセンス(Prevotella nigrescens)等が、上気道感染起因菌としては、A群レンサ球菌(Group A Streptococcus)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Micoplasma pneumoniae)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamidia pneumoniae)等が、日和見感染菌としては、カンジダ菌(Candida sp.)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)等が挙げられる。
【0020】
本発明の製造方法において用いられる歯ブラシは、口腔内の全歯面をブラッシングでき、また口腔内微生物濃度測定の妨害物質となるような成分の溶出のないものであればその形状、材質等は特に限定されるものではなく公知の歯ブラシでよい。通常は、一般に市販されている合成樹脂製の歯ブラシで充分であるが、なかでも、口腔内の全歯面を容易にブラッシングできるよう、その形状が小さめのものが好ましい。また該歯ブラシは洗浄して再使用しても良いが、使い捨てにする方が好ましい。さらに手動のもののみならず、電動歯ブラシの使用も可能である。
【0021】
本発明の製造方法においては、上記歯ブラシは、全歯面をブラッシングした後の歯垢や唾液が付着しているものを用いる。なおここで全歯面とは、口腔内に露出している全ての歯の咬哈面(又は切端)、頬側面(又は唇面)及び舌面を指し、通常の歯ブラシの毛の届かないような歯間部分の面は含まない。むろん、より正確に測定するためには、該歯間部分の歯垢なども含めた被検液を調製することが好ましい。このような歯間部分の歯垢を得るためには、歯間ブラシやデンタルフロスを用いればよい。
【0022】
上記歯ブラシを用いて全歯面をブラッシングする方法は特に限定されるものではなく、従来公知のブラッシング法が何ら制限なく使用可能である。このようなブラッシング方法としては水平法、垂直法、フォーズン法、バス法、スクラッピング法、スティルマン法、チャータース法及びローリング法等が挙げられる。上記ブラッシング法の中で、フォーズン法、バス法及びスクラッピング法は、特に歯垢を落とす効果が高く好適に使用できる。ブラッシングは、被検者自身が実施しても良いし、歯科衛生士等第三者が実施しても良い。被験者が自分自身でブラッシングを行うことが困難な場合(例えば幼児等)は、第三者により実施されることが好ましい。また、全歯面の歯垢を落とせたか否かを確認する目的でヨードや色素を成分とする従来公知のプラーク染色剤を使用する方法は、該プラーク染色剤に含まれる成分が本発明の口腔内微生物測定法に影響を与えない限りにおいては採用できる。歯磨剤の使用も、本発明の口腔内微生物測定法に影響を与えない限りにおいては採用できる。ブラッシングの強さや回数は、歯垢を十分に落とすことが可能な限りにおいては特に限定されないが、全歯面をまんべんなくブラッシングするために、30秒〜10分間のブラッシングを行うことが好適である。
【0023】
上記のような方法で全歯面をブラッシングした歯ブラシには、その形状等に応じて、ほぼ一定量の歯垢及び唾液が付着している。また全歯面をブラッシングした歯ブラシを用いることにより、該歯ブラシに付着している歯垢及び唾液は、口腔内における平均的な歯垢及び唾液の混合物となり、部分的な濃度の違いに左右されることがなくなり、再現性よく口腔内微生物濃度が測定可能な被検液を調製できる
本発明の製造方法は、上記のような全歯面をブラッシングした歯ブラシを液体と接触させて、該歯ブラシに付着した歯垢を、該液体に分散及び/又は溶解させる。該液体としては、本発明の方法で製造した被検液中に含まれる口腔内微生物濃度を測定する際に、該測定を妨害するような物質を含まない液体であれば特に限定されるものではない。口腔内微生物濃度を測定する方法にもよるが、一般的には、精製水、生理食塩水、又はリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液等の従来公知の各緩衝液等の水系の液体が好適に使用可能である。このような水系の液体に対しては、唾液は溶解し、歯垢は分散されることになる。
【0024】
該液体の使用液量は、歯ブラシから確実に歯垢を回収するために、2〜10mlを使用することが好ましい。歯ブラシに付着した歯垢を液体中に分散及び/又は溶解させる方法は、特に限定されないが、通常、歯ブラシの植毛部分を完全に液体に漬け、3〜20回程度歯ブラシを揺動させることにより実施できる。作製した歯垢及び唾液を含む液体はそのままでも使用可能であるが、超音波処理を施す、又はガラスビーズ等と混合し撹拌する等、従来公知の分散処理を施し、分析に供することもできる。
【0025】
このようにして得られた歯垢及び唾液を含む被検液中の口腔内微生物濃度を測定することにより、口腔内における微生物濃度を算出することが可能である。
【0026】
口腔内微生物濃度の測定方法は特に限定されず、生化学的方法、遺伝子検出法、培養法、又は免疫学的方法などが例示される。
【0027】
上記生化学的方法としては、その生化学的活性が口腔内微生物数に依存する従来公知の生化学的検査法が何ら制限なく使用可能であり、このような生化学的検査法としてはATPテスト等が例示される。遺伝子検出法としては、DNAプローブ法やPCR法等の従来公知の遺伝子検査法が何ら制限なく使用できる。
【0028】
培養法は、被検体中の口腔内微生物の生菌数を調べる方法であり、従来公知の培養法が何ら制限なく使用可能である。固体培地プレートを使用し生じたコロニー数を測定することにより生菌数を正確に定量する方法と、液体培地を使用し増菌後に半定量的に測定する方法がある。培養法として非選択培地を使用する場合は口腔内微生物の同定が困難であるから、グラム染色等の塗抹検査、コロニーの形態観察、抗生物質感受性試験及び上記の各種生化学的検査法、GC含量試験及び上記遺伝子検査法、又はコロニーブロット法及び上記の免疫学的検査法を適宜組み合わせ、目的の口腔内微生物を識別・同定し測定する。各種選択培地や各種培養法を適宜組み合わせて培養する方法は、口腔内微生物の同定が容易となり好適である。例えば、齲蝕関連菌のミュータンスレンサ球菌数を選択培地を使用し測定する方法として、被検体を適宜希釈しミチスサリバリウス培地プレート(「MS培地プレート」とも言う)及び/又はミチスサリバリウスバシトラシン培地プレート(「MSB培地プレート」とも言う)に添加し、37℃にて24〜48時間嫌気培養した後、生じたコロニー数を数えるという方法が挙げられる。MSB培地プレートに生じたコロニー数は概ねミュータンスレンサ球菌数と一致するので、該コロニー数に希釈倍率を乗じることで測定することができる。また、上記の各種識別・同定方法を併用し、上記MS及び/又はMSB各培地プレートよりミュータンスレンサ球菌のコロニーを分離、同定し生菌数を正確に測定することも出来る。
【0029】
免疫学的方法としては、従来公知の免疫学的方法が何ら制限なく使用でき、このような免疫学的方法としては、ラテックス法等の凝集法、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、標識抗体法、ウエスタンブロット法等の各種イムノブロット法、イムノクロマトグラフィー法等が例示できる。(中島暉躬等編(1988年):抽出・精製・分析I.新基礎生化学実験法2.丸善株式会社、中島暉躬等編(1988年):抽出・精製・分析II.新基礎生化学実験法2.丸善株式会社、大沢利昭等編(1992年):分子免疫学III.新生化学実験講座12.株式会社東京化学同人)。
【0030】
口腔内微生物濃度の測定方法として特に好適な方法は、前記製造方法で得た被検液を、被濾過液供給室と濾過液排出口とが濾過膜を介して連通しており、被濾過液供給室の上流に陰圧手段を備えた濾過装置により濾過して、被検液中に存在する微生物を濾過膜上に捕捉し、次いで、上記陰圧手段により濾過装置内を陰圧にして、濾過液排出口より抽出用溶液を吸液して該濾過装置内を逆流させ、被濾過液供給室に微生物抗原の抽出液を貯留して抗原抽出液を製造し、ついで、該抽出液中の抗原濃度を免疫学的測定法により測定する方法である。以下、本発明の製造方法で製造される被検液を用いて測定する口腔内微生物の代表例である齲蝕関連菌を対象とし、上記方法(以下、陰圧濾過法と略す)により該齲蝕関連菌由来の抗原抽出液を製造する方法を詳しく述べる。
【0031】
なお、齲蝕関連菌の多くは、糖鎖抗原(血清型多糖抗原)を有する微生物であるが、唾液や歯垢中に10〜10個/ml程度に微量にしか含まれておらず、さらに通常は、不溶性グルカンに覆われた凝集状態で存在しているため、該齲蝕関連菌を直接分析する方法は限定される。このような状況にあって、陰圧濾過法は、かかる唾液や歯垢中に存在する齲蝕関連菌を高精度で分析するに際して、糖鎖抗原を抽出する方法として適用できる。
【0032】
上記陰圧濾過法は、被濾過液供給室と濾過液排出口とが濾過膜を介して連通しており、被濾過液供給室の上流に陰圧手段を備えた濾過装置を用いて実施する。該濾過装置に関して、以下で図面を使用し説明する。図1は、印圧濾過法で使用する濾過装置の代表的態様を示した斜視図及び濾過液排出口先端の拡大図である。
【0033】
この濾過装置は、被濾過液供給主室1と濾過液排出口2とを備えている。また、濾過膜3は、濾過膜収納部4内に収納されており、前記被濾過液供給主室1は、接続部5により該濾過膜収納部4に接続されている。したがって、被濾過液供給主室1と濾過液排出口2とは、該濾過膜3を介して互いに連通した構造をしている。この装置は、上記濾過液排出口2と後述する被濾過液供給主室1の上流に設けられる陰圧手段への接続口以外には他に開口部はなく密閉系である。
【0034】
陰圧濾過法で用いる濾過装置において、被濾過液供給室は、濾過膜より上流に設けられた、被濾過液の一定量が貯留される空隙の全てをいう。したがって、濾過膜収納部4内において、濾過膜3の上部には、該濾過膜収納部に流入した被検体液を一時的に貯留する小空間6が設けられているが、この小空間6も、本発明における被濾過液供給室の一部をなす。
【0035】
一方、陰圧濾過法で用いる濾過装置において濾過液排出口2は、濾過液等の排出及び後述する抽出溶液等の吸液の操作性から、管状等の凸部として形成されているのが好ましい。
【0036】
被濾過液供給主室1の上流には、シリンジ外筒7とプランジャー8で構成されたシリンジ9からなる陰圧手段が設けられている。陰圧手段は、装置内を陰圧にする機能を有するものであれば良いが、このシリンジ9のように加圧機能を備えたものであるのが、加圧濾過により効率的な濾過を可能にできるためより好ましい。
【0037】
陰圧濾過法による抗原抽出液の製造方法では、上記構造の濾過装置を用い、まず、その被濾過液供給主室1に、前記した本発明の製造方法により得た被検液を供給する。この供給操作は、シリンジ9との接続部を濾過液供給主室1から外した後、ピペット等の器具を使用して、濾過液供給主室1に供給すること等により適宜に行えばよい。
【0038】
次いで、この被検体液を、濾過膜3まで下方に流し、自然濾過又はシリンジ9において、プランジャー8を押して装置内を加圧することにより加圧濾過する。この濾過により、液体中に含まれる齲蝕関連菌は、濾過膜3の上面や内部の細孔に捕捉される。他方、濾過膜3を通過し、齲蝕関連菌から分離された濾過液は、濾過液排出口2から装置外へ排出される。なお、濾過膜3上に捕捉された齲蝕関連菌は、必要に応じて適当な洗浄用溶液(例えば純水、緩衝液、酸溶液、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等を例示できる)で洗浄することもできる。洗浄は、洗浄用溶液を、自然濾過又は加圧濾過することにより行っても良いし、濾過液排出口2より吸液して、濾過装置内を逆流させた後に排出することにより行っても良い。
【0039】
上記濾過膜3は、測定対象である齲蝕関連菌などの口腔内微生物を保持できるものでれば、その材質、孔径、形状等は特に限定されず、従来公知の濾過膜を使用することができる。被検液中の齲蝕関連菌に対し実用上十分な捕捉能が得られるように、孔径や材質の異なる複数の膜を組み合わせて使用することも可能である。齲蝕関連菌を捕捉するためには、孔径は0.1μm〜5μmであるのが好ましい。尚、該孔径とは、濾過膜3が多孔質膜である場合は、バブルポイント法(JIS K 3832に記載の方法)により測定される孔径を、また、濾過膜3が濾紙等である場合は、硫酸バリウム等を自然濾過した際の漏洩粒子経を求める方法(JIS P 3801に記載の方法)により測定される保留粒子径を指す。
【0040】
濾過膜3の材質としては、抽出用溶液等に対する耐薬品性等を考慮し、ガラス繊維;ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリサルフォン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等のプラスチック類;セルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース等のセルロース類等を使用することができる。また、ガラス繊維濾紙の細片や活性炭等の集合体も使用することができる。
【0041】
濾過膜収納部4の形状も特に限定されず、濾過膜3の形状に応じて適宜選択すればよい。濾過膜収納部4の材質は特に限定されず、量産の容易さや耐薬品性等を考慮し、ポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチック材料を使用することができる。吸液や濾過時の濾過膜3の変形や破損を防止する目的で、濾過膜3の上面又は下面には、放射状、格子状、点状等の各種パターン構造を有す板状構造体;ナイロンネット等の網目状材料;多孔性材料;ガラス繊維やポリプロピレン不織布等の繊維材料等を介在させても良い。また、濾過膜3の上面には、濾過を容易にする目的で活性炭や濾紙粉末等の濾過助剤を添加することもできるし、或いはガラスフィルター、ポリプロピレン不織布等のプレフィルターを設置することもできる。
【0042】
そして、陰圧濾過法では、シリンジ9において、プランジャー8を引いて濾過装置内を陰圧にして、濾過液排出口2より、齲蝕関連菌から抗原を抽出する作用を有する抽出用溶液を吸液して、該濾過装置内を逆流させる。それにより、濾過膜3に捕捉される齲蝕関連菌に、該抽出用溶液が接触し抗原が抽出される他、この抽出用溶液の濾過装置内を逆流する流れに随伴して、該濾過膜3に捕捉されていた齲蝕関連菌の多くが、再度、小空間6を経て被濾過液供給主室1に吸い上げられる。この逆流する流れの過程や、被濾過液供給主室1内に貯留された状態で一定時間、好適には1時間以内、より好適には10秒〜20分放置することにより、齲蝕関連菌に対して抽出用溶液を十分に作用させることができる。したがって、陰圧濾過法によれば、抗原の抽出効率を大きく向上させることができる。
【0043】
抽出効率をより高めるためには、被濾過液供給主室1内に抽出用溶液を貯留した後、被濾過液供給主室1を一定時間振動等して、抽出用溶液に液流を生じさせても良い。
【0044】
陰圧手段としては、濾過装置内部を装置外部に対して陰圧状態とすることができる手段であれば、従来公知の陰圧手段を使用することができる。このような陰圧手段としては、シリンジ、スポイト、ゴム球等の各種手動器具や、真空ポンプ、アスピレーター等の各種装置を使用することができる。このうちシリンジ、スポイト等は、前記した図2の濾過装置のように、被濾過液供給室の機能を兼ねることができるため特に有用である。濾過を加圧下に行う場合において、加圧を陰圧手段とは別の独立した手段で行うことも適宜に可能である。こうした加圧手段としては、ボンベ、加圧用ポンプ等が挙げられる。
【0045】
また、濾過膜3の有効濾過面の全面に適当な体積の小空間6を設けることにより、濾過膜3の全面を有効に利用することができるので被濾過液等の濾過効率が向上する、或いは、洗浄用溶液及び/又は抽出用溶液を濾過膜3の全面に有効に作用させることができるので洗浄効率や抽出効率が向上する場合があり好ましい。
【0046】
齲蝕関連菌の糖鎖抗原を抽出する場合においては、いわゆる亜硝酸抽出法で使用される抽出用溶液を使用することが好ましい。亜硝酸抽出法は、短時間に且つ高い効率で、微生物から血清型多糖抗原等の特異性の高い糖鎖抗原を抽出できる(武井勉.阪大医学雑誌.35:93−109,1990.)。しかしながら、微生物を捕捉した濾過膜上に亜硝酸溶液を添加し流下させる方法では、亜硝酸溶液を濾過膜の細部に浸透させることが困難であるため、十分な抽出効率が達成されない場合があり、陰圧濾過法を適用するのに特に適している。
【0047】
上記亜硝酸抽出法を実施する場合において抽出用溶液となる亜硝酸溶液は、一般的には亜硝酸塩溶液と酸溶液とを適宜混合することで調製できる。亜硝酸塩溶液としては、亜硝酸ナトリウムや亜硝酸カリウム等の水溶液が使用でき、酸溶液としては酢酸、プロピオン酸、クエン酸等の有機酸水溶液や硝酸、塩酸等の無機酸水溶液が使用できる。亜硝酸塩溶液と酸溶液との混合時において、亜硝酸塩の濃度は、0.1〜8Mになる濃度であり、酸の濃度は0.1〜16Mになる量であるのが好ましい。
【0048】
上記亜硝酸溶液の液温は、通常、10〜60℃が好ましい。また、抽出操作全体を通じて、かかる亜硝酸溶液と齲蝕関連菌が接触している時間は、少なくとも0.5分以上、好適には0.5〜10分であるのが好ましい。
【0049】
陰圧濾過法では、この被濾過液供給主室1内に貯留され、抗原の十分な抽出が終了した抗原抽出液を、該被濾過液供給主室1より採取して分析試料として用いても良い。この採取操作は、接続部5を濾過膜収納部4から外して抽出液を排出させたり、シリンジ9との接続部を濾過液供給主室1から外した後、ピペット等の器具を使用して採取すること等により適宜に行えばよい。
【0050】
一方向のみから、1回の吸引操作により抽出用溶液を濾過膜に通過させる方法では、これら液体中に齲蝕関連菌の他に粘着質等の共雑物が含有されている場合等に、これらが濾過膜3内部の細孔を閉塞し、その奥に詰まった齲蝕関連菌にまで上記抽出用溶液が十分に作用しないことがある。したがって、このような場合には、被濾過液供給主室1及び小空間6に貯留された抗原の抽出液を、貯留後すぐに、または一定時間保持後、自然濾過又は加圧濾過し、反対方向からの液流を作用させ、濾過液排出口2から排出される抽出液を分析試料として用いるのが好ましい。なお、このように濾過液排出口2から排出される抽出液を分析試料として用いれば、抗原が抽出された後のこれらの保持物の残渣や共雑物が濾過により取り除かれるため、これらが分析時の抗原抗体反応に悪影響を及ぼすおそれがある場合には有意義である。
【0051】
さらに、上記操作でも、満足できるだけの抽出が行えない場合には、上記により濾過液排出口2から排出された抽出液を再度、濾過液排出口より吸液して濾過装置内を逆流させ、被濾過液供給室1に貯留すればよく、陰圧濾過法では、所望の抽出効率が達成されるまで、該抽出液の濾過、吸液操作を必要回数、通常は濾過を1〜10回、吸液を0〜10回繰り返して行えばよい。
【0052】
さらに、他の方法としては、前記被濾過液供給主室1及び小空間6に貯留された抗原の抽出液を、自然濾過又は加圧濾過して、齲蝕関連菌を再度、濾過膜3上に捕捉した後、一定時間放置し、膜に残存する抽出液により十分な抽出を遂行することもできる。この場合、齲蝕関連菌は、抽出液と混ざり合った状態で、濾過膜3上の内部細孔に捕捉されていくので、微細部分に捕捉されたものまで齲蝕関連菌は抽出液に良く浸っており、抗原の抽出は、効果的に進行する。濾過膜3に含まれる抗原の抽出液は、(1)使用した抽出用溶液と同じ組成液等の回収用液を、被濾過液供給主室1に供給して自然濾過、加圧濾過したり、濾過液排出口2から吸液して逆流させることにより回収するか、(2)濾過膜収納部4を解体して濾過膜3を取り出し、抽出液を回収する等の方法により採取すればよい。このような方法によれば、抽出液量を必要最小限にできる、または、回収溶液を適宜選択することで抽出液の組成を適宜に調整することができる。上記方法では、好適には1時間以内、より好適には10秒〜20分放置することにより、齲蝕関連菌に対して抽出用溶液を十分に作用させることができる。
【0053】
亜硝酸抽出法により得られた抽出液は、残留する酸により酸性を呈しているため、該抽出液を免疫学的測定方法等に適用する場合は、塩基性溶液により中和して分析試料として使用することが好ましい。該塩基性溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液やトリス水溶液等の各種塩基を含む水溶液、或いはトリス−塩酸緩衝液等の各種緩衝液を使用することができる。これら中和用溶液は、被濾過液供給室に直接的に供給して抽出液に混合したり、濾過装置外に取り出した抽出液に加えて混合しても良いが、濾過液排出口2より吸液して混合するのが好ましい。なお、前記したように、齲蝕関連菌を濾過膜3上に捕捉した後、膜に残存する抽出液により十分な抽出を遂行する場合は、この中和用溶液を、該抽出液の回収用溶液として利用すればよい。
【0054】
このようにして得られた抽出液に含まれる抗原濃度は、抽出用溶液(及び必要に応じて用いられる回収用溶液など)の使用量を一定のものとすることにより、歯垢及び唾液に含まれていた口腔内微生物の濃度と相関を有するものとなる。
【0055】
図2は、陰圧濾過法で使用する濾過装置の別の態様を示す模式図である。この濾過装置は、濾過膜収納部4内において、濾過膜3の上下に空間がほとんど形成されておらず、この濾過膜収納部4の上面に直接、陰圧手段であるシリンジ9の先端部が脱着可能に接続されたものであり、被濾過液供給室はシリンジ外筒7の内空部に形成される。このような装置は、構造が簡単である他、吸液された抗原の抽出液のほぼ全てが、該シリンジ外筒7の内空部に貯留されるため、これを分析試料として用いる場合には、操作上効率的である。
【0056】
なお、図1、図2において先端拡大図として示したように濾過装置における濾液排出口が該濾過液排出口に内面と外面を連通する孔及び/又は切れ込み11a又は11b(以下、併せて11)を有するものを使用することもできる。例えば、抽出用溶液等の全量を正確に吸液する場合には、濾過液排出口2の吸排液部12を、この抽出用溶液等を入れた容器の底面に近接させて吸液する。このような場合に、濾過液排出口2にこのような孔及び/又は切り込み11が無い場合は、抽出用溶液等を吸液する際に、濾過液排出口2の吸排液部12が抽出用溶液等を入れた容器の底等に吸い付く、或いは濾過液排出口2の吸排液部12と抽出用溶液等を入れた容器の底との隙間が小さくなりすぎることがある。このような場合は、抽出用溶液等の全量を吸液できなくなる、吸液量を確認しながら吸液する必要が生じ操作が煩雑となる、または、吸液速度が低くなり吸液操作に時間を要す等の問題を生じることがある。また、所定の量の抽出用溶液等を吸液できない場合は、抽出が不完全になる等により得られた抽出液中の抗原の量や濃度が測定者毎にばらつくといった問題を生じる場合がある。濾過液排出口2に、濾過液排出口2の内面側と外面側を連通する孔および/または切り込み11を設けた場合は、濾過液排出口2の吸排液部12が抽出用溶液等を入れた容器の底等に近接した場合も、吸液時の液や空気の流路を確保できるので、液量が少量の場合も、抽出用溶液等の全量を迅速、簡便、且つ確実に吸液することができる。このため、迅速、簡便、且つ再現性良く抗原の抽出液を製造することができる。そのため、抗原の抽出液を製造後に、例えば抗原の量や濃度を測定した場合に、再現性の高い測定結果を得ることができるようになる。
【0057】
濾過液排出口2の内面側と外面側を連通する孔および/または切り込み11の形状、数、大きさ、位置等は、抽出用溶液等を入れた容器の底と吸排液部12が近接した場合も液や空気の流路を確保でき、所望の量の抽出用溶液等が吸液できるように、抽出用溶液等を入れた容器の底の形状に応じて適宜設定すればよい。この孔及び/又は切り込み11の形状としては、円形、楕円形、半円形等の曲面形状や、三角形、四角形等の多角形状、またはスリット等の形状を例示できる。勿論、陰圧濾過法において用いる濾過装置の形状は図1、図2に示すものに限定されない。
【0058】
図3は、容器13と図2の濾過装置を使用し、容器13に予め添加しておいた抽出用溶液等を吸排液する操作を図示したものである。容器13には、図2の濾過装置の濾過膜収納部4等を収納・設置する為の設置部14と、濾過液排出口2の長さと同等の深さを有す曲面状の抽出用溶液等の器部15a、15b、15cが設けられている。図3に示すような、本発明の濾過装置と容器13を併用する方法は、特に少量の抽出用溶液等を迅速、簡便、且つ確実に吸液することができるので好適である。図3では、器部15aに洗浄用溶液、15bに抽出用溶液、15cに回収用溶液を添加する方法を想定し、3個の器部を有す容器13を例示したが、器部15は、使用する溶液の種類や数に応じて必要数を設置すればよい。また、器部15の容積、深さ、形状は吸液する溶液の量や濾過液排出口2の長さに応じて適宜に選択すれば良い。本発明の濾過装置を使用した場合は、器部15に吸排液部12が近接した場合も、孔および/または切り込み11が液または空気の流路となるので、溶液の確実な吸液が可能となる。
【0059】
上記陰圧濾過法の説明では、齲蝕関連菌を測定対象とし、亜硝酸抽出法による抗原の抽出を例として説明したが、むろん必要に応じて他の口腔内微生物を対象としたり、異なる抽出液を用いたり、あるいは抗体を抽出対象としたりしてもよい。
【0060】
抗原または抗体の保持物に対して使用する抽出用溶液は、中島暉躬等編(1988年):抽出・精製・分析I:14−38.新基礎生化学実験法2.丸善株式会社、小川智也等編(1992):糖鎖工学:282−321.株式会社産業調査会等に記載されている従来公知の可溶化法や溶媒抽出法において使用される抽出用溶液や、その他、化学的或いは生物学的切断・分解方法において使用される抽出用溶液が制限なく使用できる。具体的には、可溶化法や溶媒抽出法に使用する、塩化マグネシウム水溶液、チオシアン酸ナトリウム水溶液、グアニジン塩酸水溶液等の塩溶液;塩酸等の酸溶液;水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液;デオキシコール酸ナトリウム水溶液、オクチルグルコシド水溶液、セチルトリメチルアンモニウムブロミド水溶液、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸水溶液等の界面活性剤溶液;n−ブタノール等の有機溶媒;グリシン塩酸緩衝液等の緩衝溶液等が、また、化学的或いは生物学的切断・分解方法に使用する、亜硝酸水溶液;塩酸等の酸溶液;水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液、プロテアーゼ、ホスホリパーゼ等の酵素を含む溶液等が例示できる。
【0061】
上記陰圧濾過法により得られた抗原又は抗体の抽出液は、共雑物が少なく、また抗原又は抗体の濃度も一定のものとできる。従って、免疫学的方法によって抗原濃度を測定するための試料として好適である。
【0062】
該免疫学的方法としては前記した通り、ラテックス法等の凝集法、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、標識抗体法、ウエスタンブロット法等の各種イムノブロット法、イムノクロマトグラフィー法等が例示でき、そのいずれの方法でもよい。
【0063】
免疫学的方法により得られる抽出液中の抗原又は抗体の濃度は、該抗原又は抗体を有していた口腔内微生物の量と比例関係にあるため、該抗原又は抗体の濃度から前記歯ブラシに付着していた歯垢及び唾液に含まれていた口腔内微生物の量も判別でき、さらに該濃度から口腔内における実際の濃度も判別することが可能である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0065】
製造例1[ストレプトコッカス・ミュータンスに対する精製ポリクローナル抗体の作製]
(1)[菌体試料懸濁液の調製]
ブレインハートインフュージョン(以下「BHI」と略すこともある)(DIFCO社)3.7gを100mlの純水に溶解後、オートクレーブ処理し、BHI液体培地を調製した。BHI液体培地2ml中でIngbritt(ストレプトコッカス・ミュータンス、血清型c)を37℃、5時間、嫌気条件下(N:H:CO=80:10:10)で培養した後、培養液を4000g、5分遠心処理し、上清の培地成分を除去し菌体沈殿を回収した。
【0066】
次いで、沈殿物を5mlのリン酸生理食塩緩衝液(pH7.4)(以下PBSと略すこともある)に懸濁し、同様の遠心分離をする操作を3回行い、沈殿物を洗浄した。その後得られた菌体沈殿をPBSに懸濁し、A600=1.0に調整しIngbritt菌体試料懸濁液とした。なお、該菌体試料懸濁液を超音波処理後、適宜希釈した後にBHI培地プレート上に添加し、生じたコロニー数を計数し菌体試料懸濁液の希釈倍率を乗じることで該菌体試料懸濁液の菌体濃度を求めたところ、約1×10個/mlであった。
【0067】
(2)〔ストレプトコッカス・ミュータンスに対する抗血清の作製〕
免疫は以下のように実施した。即ち、第1週は0.5mlのIngbritt菌体試料懸濁液を、5日連続で5回ウサギに対し耳介静脈注射した。第2週は1.0mlの該菌体試料懸濁液を、5日連続で5回ウサギに対し耳介静脈注射した。第3週は2.0mlの該菌体試料懸濁液を、5日連続で5回ウサギに対し耳介静脈注射した。第4週は第3週と同様に免疫した。力価の上昇をスライドグラスを利用した菌体の凝集反応の程度により確認後、最終免疫より1週間後に、定法に従い採血しストレプトコッカス・ミュータンスに対する抗血清を得た。
【0068】
(3)〔ストレプトコッカス・ミュータンスに対するポリクローナル抗体の精製〕
オートクレーブ処理したBHI液体培地1L中でIngbrittを37℃、12時間、嫌気条件下で培養した。培養液を4000g、5分遠心処理し、上清の培地成分を除去し菌体沈殿を回収した。次いで、沈殿物を100mlのPBSに懸濁させて、同様の遠心分離をする操作を3回行い、沈殿物を洗浄した。
【0069】
Ingbritt菌体を洗浄した後、0.1M トリス塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁しA600=15に調整した。ここにプロナーゼ(和光純薬社)を5mg/mlとなるように添加し、37℃で1時間保温した。反応終了後、遠心分離し菌体沈殿を回収した。次いで、沈殿物を20mlのPBSに懸濁して、同様の遠心分離をする操作を3回行い、沈殿物を洗浄した。次いで20mlの0.1M グリシン塩酸緩衝液(pH2.0)で3回洗浄し、更に20mlのPBSで3回洗浄し、プロテアーゼ処理菌体懸濁液(A600=12.5)を調製した。
【0070】
次いで、該プロテアーゼ処理菌体懸濁液と(2)で調製した抗血清0.5mlとを混合し、4℃、60分反応させた。混合液を4000g、5分遠心分離し、菌体を回収した。この菌体を10mlのPBSに懸濁し、同様の遠心分離をする操作を3回行い洗浄した。
【0071】
次いで、0.5mlの0.1M グリシン塩酸緩衝液(pH2.0)に菌体を懸濁し、吸着した抗体を溶出し、遠心分離により上清を回収し、1Mトリス−塩酸(pH9.0)を添加しpH7.4に調整した。同様の溶出操作を4回行い、各画分のタンパク質量を280nmの吸光度により測定した。
【0072】
次いで、あらかじめPBSで平衡化した1mlのプロテインA−セファロース(アマシャムファルマシアバイオテク社)を充填したカラムに上記溶出液を添加し、5ml洗浄後、5mlの0.1Mグリシン−塩酸緩衝液(pH3.0)にて溶出し、直ちに1Mトリス−塩酸(pH9.0)を添加しpH7.4に調整した。IgGの溶出画分は、A280を測定することで確認した。
【0073】
以上により、抗血清(0.5ml)をプロテアーゼ処理菌体により精製したポリクローナル抗体を1mg得た。
【0074】
製造例2〔ストレプトコッカス・ミュータンス測定用免疫クロマトグラフィー法テストストリップの作製〕
(1)〔金コロイド標識されたストレプトコッカス・ミュータンスに対する精製ポリクローナル抗体の調製〕
コロイド粒径が40nmの市販金コロイド溶液(British BioCell International社)10mlに100mMKCOを2μl添加し、pHを9.0に調製後、0.22μmフィルター処理した。金コロイド溶液の520nmの吸光度を測定したところ、A520=1.0であった。
【0075】
次いで、1mg/mlに調整した製造例1の(3)で調製したポリクローナル抗体の2mMホウ酸緩衝溶液(pH9.0)64μlを、上記金コロイド溶液に撹拌しながら添加し、室温下5分放置した。次いで、10%スキムミルク−2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)を1.1ml撹拌しながら添加し(スキムミルク終濃度1%)、室温下30分放置した。次いで、反応溶液を10℃、10000g、30分遠心処理し、上清を除去後、2mlの2mMPBS(pH7.4)を添加し、下層の金コロイド画分を再懸濁した。該再懸濁した画分の520nmの吸光度を測定したところ、A520=4.9であった。得られた金コロイド画分(以下、「金コロイド標識抗体」と表記することもある)は、4℃にて保存した。
【0076】
(2)〔免疫クロマトグラフィー法テストストリップの作製〕
以下の方法に従い、図4、図5に示す免疫クロマトグラフィー法テストストリップを作製した。
【0077】
ニトロセルロースメンブレン16(MILLIPORE社、Hi−Flow Plus Membrane、HF180、25mm×6mm)上の検出部位20及びコントロール判定部位21上に、それぞれ1mg/mlの製造例1の(3)で調製した精製ポリクローナル抗体及び抗ウサギIgG(H+L)ポリクローナル抗体(ICNファーマシューティカルズ社)1μlをスポットし、インキュベーター内で37℃、60分乾燥し抗体を固定化した。該抗体固定化メンブレン16を1%スキムミルク−0.01%TritonX100水溶液中で室温下、5分振とうした。次いで、該メンブレン16を10mMリン酸緩衝液(pH7.4)中で室温下、10分振とう後取り出し、真空ポンプで吸引しながら60分間デシケーター中で乾燥した。
【0078】
また、コンジュゲートパッド17(MILLIPORE社、7.5mm×6mm)を0.5%PVA−0.5%ショ糖水溶液中で1分間振とう後取り出し、真空ポンプで吸引しながら60分間デシケーター中で乾燥した。該コンジュゲートパッド17にA520=1.0に調整した製造例2の(1)で調製した金コロイド標識抗体を25μl添加し、真空ポンプで吸引しながら60分間デシケーター中で乾燥した。更に、サンプルパッド18(MILLIPORE社、17mm×6mm)を1%Tween20−PBS水溶液中で1分間振とう後取り出し、真空ポンプで吸引しながら60分間デシケーター中で乾燥した。尚、展開終了後の被検液を保持するための吸収パッド19(MILLIPORE社、20mm×6mm)は未処理のまま用いた。
【0079】
このように調製した、図4に示すような免疫クロマトグラフィーテストストリップの各構成部分をプラスチックの支持台上に配置し、図5に示すような免疫クロマトグラフィーテストストリップを組み立てた。
【0080】
実施例1〔ブラッシング後に歯ブラシに付着した歯垢の懸濁液からの陰圧濾過法による抗原抽出液の調製と免疫クロマトグラフィー法テストストリップを使用したストレプトコッカス・ミュータンスの検出(1)〕
(1)〔被検体の調製〕
異なる4人の幼児(2〜3歳)の全歯面を歯ブラシにより60秒間ブラッシングした。ブラッシングは朝食前に成人の術者により実施した。歯ブラシを2mlの滅菌処理した生理食塩水で漱ぐことにより、歯ブラシに付着した歯垢と唾液を懸濁し、歯垢懸濁液を調製した。歯垢懸濁液を20秒間、60Wで超音波処理し歯垢を含む被検体1を得た。該被検体は氷冷後直ちに使用した。同様にして、被検体1の採取日の翌日、翌々日に同一の被験者より被検体2(翌日)、被検体3(翌々日)をそれぞれ採取した。
【0081】
(2)〔培養法による被検体中のミュータンスレンサ球菌の生菌数測定〕
上記(1)の方法に従い作製した被検体1、2及び3を各々滅菌処理した生理食塩水にて10〜10倍希釈し、50μlの該希釈液をMSB培地プレートにプレーティングし、2日間ローソク培養した。生じたコロニー数を数え、希釈倍率を乗じることで被検体中のストレプトコッカス・ミュータンス濃度(cfu/ml)を算出した。MSB固体培地上には主としてストレプトコッカス・ミュータンスとストレプトコッカス・ソブリヌスが、また、一部の口腔内細菌が生育する。コロニーの形態学的分類、及び形態学的に識別不可能なコロニーに関しては、該コロニーを純粋培養後、ミュータンスレンサ球菌の血清型特異的な抗体を利用した免疫学的測定方法及び、糖発酵試験等の生化学的方法により、ストレプトコッカス・ミュータンスをストレプトコッカス・ソブリヌス及び他の口腔内細菌と識別し、ストレプトコッカス・ミュータンス濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
口腔内のストレプトコッカス・ミュータンス濃度は、日内変動しているが、抗菌剤(例えばクロロヘキシジン)による除菌を行わない限り、変動のしかたは一定である。従って、歯垢を採取する時間等の条件が同一であれば、ストレプトコッカス・ミュータンス濃度も一定である。
【0083】
表1に結果を示したように、本発明の製造方法によって得られた被検液から把握されたストレプトコッカス・ミュータンス濃度は、その採取日にかかわらず一定であり、再現性良く測定できている。
【0084】
(3)〔濾過装置を使用した抗原抽出液の調製〕
13mmシリンジフィルタ(ワットマン社、ガラス繊維濾紙GF/C、粒子保持能1.2μm)の濾過液排出口2の先端部に、図6に示すような濾過液排出口の内面側と外面側を連通する0.5mm×0.5mmの正方形の切り込み11bを2箇所設け、シリンジフィルター10を作製した。このシリンジフィルター10にシリンジ9(テルモ社、2.5ml)をセットし、図2の構造の濾過装置を作製した。
【0085】
図3に示した容器13を作成した。この容器13は、下記に示す液の全量を吸液するために、器部15の底に吸排液部12が接するように器部15の深さを設定した。
【0086】
プランジャー8を濾過装置より引き抜き、実施例1の(1)で採取した被検体の1.95mlをシリンジ外筒7内に添加し、プランジャー8を装着後、該プランジャー8を押し下げ加圧することで唾液を濾過した。濾過液排出口2から排出された濾過液は廃棄した。
【0087】
0.5mlの0.1M NaOH水溶液を容器13の器部15aに添加した。同様に0.12mlの1M亜硝酸ナトリウム−0.5M酢酸水溶液を器部15bに、0.38mlの0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を器部15cに添加した。
【0088】
器部15aの上方の設置部14にシリンジフィルター10を、器部15aの底に吸排液部12が接するように設置し、プランジャー8を引き上げ陰圧とすることで、シリンジフィルター10の濾過液排出口2より、器部15a内の溶液を吸液した。そのままシリンジ外筒7内まで溶液を流入させ、直ちにプランジャー8を押し下げ加圧することで濾過させ、濾過液を廃棄した。次いで、同様に器部15b内の溶液を吸液し、シリンジ外筒7内まで流入した溶液をそのまま室温下、2分間保持した。次いで、0.38mlの0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を、同様に濾過液排出口2より吸液し、シリンジ外筒7内に抽出液(約0.5ml)を回収した。
【0089】
(4)〔免疫クロマトグラフィー法テストストリップによるストレプトコッカス・ミュータンスの測定〕
上記(3)で使用したシリンジ9からシリンジフィルター10を外した。製造例2の(2)で作製した免疫クロマトグラフィー法テストストリップのサンプルパッド18に、該シリンジ9内の抽出液を0.1ml添加し、10分後の検出部位20及びコントロール判定部位21の発色の有無と強度を判定した。判定は、検出部位20の発色強度を4段階(+++:発色強度が強い、++:発色強度が中程度、+:発色強度が弱い、−:発色しない)に目視で識別した。尚、コントロール判定部位21が発色しない場合は、金コロイド標識抗体の展開が不良であることを示すので、再度分析した。結果を表2に示す。
【0090】
表2に示したように、免疫クロマトグラフィー法により測定されたストレプトコッカス・ミュータンス濃度も、採取日によらず一定であった。また該方法の結果は、培養法の結果と比例していた。さらに、免疫クロマト法では測定開始から15分で結果が得られ、培養法に比べ迅速に結果が得られた。
【0091】
比較例1〔歯ブラシにより全歯面をブラッシングして落ちた歯垢を回収して作製した被検体中のミュータンスレンサ球菌数の測定〕
(1)〔被検体の調製と培養法による測定〕
実施例1と同一の被験者A及びCの歯を、歯ブラシを用いて全歯面を1分間ブラッシングした。ブラッシングは朝食前に成人の術者により実施した。被験者の口腔内に5mlの滅菌した生理食塩水を含ませ、この歯垢を含む生理食塩水を滅菌処理した容器に吐き出させ回収した。この回収した生理食塩水にてブラッシングに使用した歯ブラシを漱ぎ、容器壁に歯ブラシを押し付け歯ブラシに付いた溶液も回収した。回収した歯垢を含む生理食塩水を20秒間、60Wで超音波処理し歯垢を含む被検体を得た。該被検体は氷冷後直ちに実施例1(2)と同様の方法により培養した。被検体4の採取日の翌日、翌々日に同一の被験者より上記の方法に従い被検体5、被検体6をそれぞれ採取し、これらの被検体中のミュータンスレンサ球菌数を上記と同様に算出した。結果を表3に示す。
(2)〔免疫クロマトグラフィー法テストストリップによるストレプトコッカス・ミュータンスの測定〕
実施例1(3)と同様の方法により上記(1)で採取した被検体(0.2mlより抗原抽出液を調製し、実施例1(4)と同様の方法により免疫クロマト法にて分析した。結果を表4に示す。
【0092】
比較例2〔綿棒により歯垢を採取して作製した被検体中のミュータンスレンサ球菌数の測定〕
(1)〔被検体の調製〕
実施例1と同一の被験者B及びDより、全歯面を滅菌処理した綿棒で3回擦る操作により歯垢を採取した。この、歯垢の付着した綿棒を2mlの滅菌処理した生理食塩水中で3分間振動し、綿棒に付着した歯垢を懸濁させた。この歯垢を含む生理食塩水を20秒間、60Wで超音波処理し歯垢を含む被検体4を得た。該被検体は氷冷後直ちに使用した。該被検体は氷冷後直ちに実施例1(2)と同様の方法により培養した。被検体4の採取日の翌日、翌々日に同一の被験者より上記の方法に従い被検体5、被検体6をそれぞれ採取し、これらの被検体中のミュータンスレンサ球菌数を上記と同様に算出した。結果を表3に示す。
(2)〔免疫クロマトグラフィー法テストストリップによるストレプトコッカス・ミュータンスの測定〕
実施例1(3)と同様の方法により上記(1)で採取した被検体(1.95mlより抗原抽出液を調製し、実施例1(4)と同様の方法により免疫クロマト法にて分析した。結果を表4に示す。
【0093】
表3、4に示したように、歯ブラシにより全歯面をブラッシングして落ちた歯垢を回収して作製した被検体、あるいは綿棒を使用し作製した被検体から把握されるストレプトコッカス・ミュータンス菌濃度は、免疫クロマト法、培養法のいずれにおいても採取日による変動が大きく、再現性が悪い。これは、(1)幼児は口腔機能が未熟であり、生理食塩水を飲み込まずに口腔内をまんべんなく漱ぐことが困難なため、歯垢の回収量がぶれた、(2)前述したように綿棒では毎回同じように全ての歯面をまんべんなく拭き取ることは著しく困難であるため、歯垢の回収量がぶれたためだと思われる。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の製造方法で得られた被検液から、抗原又は抗体を抽出する際に使用する濾過装置の代表的態様を示す斜視図である。
【図2】本発明の製造方法で得られた被検液から、抗原又は抗体を抽出する際に使用する濾過装置の別の態様を示す側面図である。
【図3】本発明の製造方法で得られた被検液から、抗原又は抗体を抽出する際に使用する濾過装置を、抽出用溶液等を保持しておく容器と組み合わせて使用する方法の一態様を示す側面図である。
【図4】実施例で使用した免疫クロマトグラフィー法テストリップの各部材の概略図である。
【図5】実施例で使用した免疫クロマトグラフィー法テストリップの側面図である。
【図6】実施例で使用した濾過装置の濾過液排出口の切れ込み部の拡大図である。
【符号の説明】
【0099】
1・・・被濾過液供給主室
2・・・濾過液排出口
3・・・濾過膜
4・・・濾過膜収納部
5・・・接続部
6・・・小空間
7・・・シリンジ外筒
8・・・プランジャー
9・・・シリンジ
10・・・シリンジフィルター
11a・・・孔
11b・・・切り込み
12・・・吸排液部
13・・・容器
14・・・設置部
15a・・・器部
15b・・・器部
15c・・・器部
16・・・ニトロセルロースメンブレン
17・・・コンジュゲートパッド
18・・・サンプルパッド
19・・・吸収パッド
20・・・検出部位
21・・・コントロール判定部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全歯面をブラッシングした歯ブラシを液体と接触させ、該歯ブラシに付着している歯垢及び唾液を該液体中に分散及び/又は溶解させることを特徴とする口腔内微生物濃度測定用の被検液の製造方法。
【請求項2】
(1)全歯面をブラッシングした歯ブラシを液体と接触させ、該歯ブラシに付着している歯垢及び唾液を該液体中に分散及び/又は溶解させて被検液を得、(2)該被検液を、被濾過液供給室と濾過液排出口とが濾過膜を介して連通しており、被濾過液供給室の上流に陰圧手段を備えた濾過装置により濾過して、被検液中に存在する微生物を濾過膜上に捕捉し、次いで、(3)上記陰圧手段により濾過装置内を陰圧にして、濾過液排出口より抽出用溶液を吸液して該濾過装置内を逆流させ、被濾過液供給室に微生物抗原の抽出液を貯留することを特徴とする口腔内微生物濃度測定用の抗原抽出液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−71478(P2006−71478A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255755(P2004−255755)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】