説明

口腔用ポリリン酸組成物

口腔用ポリリン酸組成物
本発明は、
a)微粒子の形態のポリリン酸塩であって、少なくとも10個のリン酸単位を含むポリリン酸アニオンを含む、ポリリン酸塩と、
b)経口的に許容し得るキャリアと、を含む、歯磨剤組成物であって、
ポリリン酸塩は、10体積%未満の塩が160μmを超える粒径を有し、20体積%未満の塩が20μm未満の粒径を有する粒径分布を有することを特徴とする、歯磨剤組成物に関する。歯磨剤組成物は、良好な安定性及び許容し得る舌触りを有する。
本発明は更に、このような組成物で用いるための経口的に許容可能なポリリン酸塩に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性、微粒子、長鎖ポリリン酸塩を含む口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性ポリリン酸(polyphosphates)は、有効な抗結石剤であるため、練り歯磨きのような口腔用組成物のための有用な成分である。それらは、一般に、塩の形態で、特にポリリン酸ナトリウムとして用いられる。
【0003】
国際公開第00/32159号及び同第01/34108号は、特定のポリリン酸、具体的には、約4以上の平均鎖長を有する直鎖ポリリン酸が、スズの有効性を低下させることなく、スズによる着色汚れを低減することを開示する。
【0004】
国際公開第01/34107号は、歯又は粘膜のような口腔表面に新規表面調整反応を提供する長鎖直鎖ポリリン酸を含む、高分子表面活性剤を更に開示する。これは、これらの剤を含有する口腔ケア製品又は歯磨剤により得られる、清浄な印象を改善する。
【0005】
研磨剤としても口腔用組成物に用いられる非水溶性ポリリン酸も存在することに留意すべきである(例えば、米国特許第4,272,513号及び同第4,780,293号を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第00/32159号
【特許文献2】国際公開第01/34108号
【特許文献3】国際公開第01/34107号
【特許文献4】米国特許第4,272,513号
【特許文献5】米国特許第4,780,293号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、歯磨剤の配合者に対して、水溶性、長鎖、直鎖ポリリン酸は、長鎖ポリリン酸の効果を有しないオルソリン酸塩に加水分解されやすいという点でいくつかの問題を提示する。この問題は、特にフッ化物イオンの存在下で顕著である。問題の解決法の1つは、フッ化物イオンが、ポリリン酸塩とは物理的に異なる相に保たれる2相製品を配合することである。別の解決法は、無水製品又は水を少量しか含まない製品にポリリン酸を配合することである。このような製品では、ポリリン酸は、典型的には微粒子の形態である。ポリリン酸の粒径が大きな場合、表面積は比較的小さく、加水分解に対する安定性は多少の水の存在下でさえ許容し得る場合がある。しかし大きな粒子は、製品の使用者にザラザラした感じを知覚させる場合があり、消費者受容を低下させる。逆に、非常に多くの小さな粒子が存在する場合、表面積の増加を通して加水分解が進行するだけでなく、特に既に大量の微粒子研磨剤が組成物中に存在する場合、相当量のポリリン酸を液体製品に配合することにより、許容し得ない程粘度が高まる可能性がある。
【0008】
特定の粒径範囲にポリリン酸塩を製造することにより、加水分解に対する微粒子ポリリン酸の安定性又は製品のレオロジーが許容し得なくなることなく、歯磨剤中に使用することによる、ザラザラした感じに関する不満を実質的に低減できる又は回避できることが、今では判明している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
a)微粒子の形態のポリリン酸塩であって、少なくとも10個のリン酸単位を含むポリリン酸アニオンを含む、ポリリン酸塩と、
b)経口的に許容し得るキャリアと、を含む、歯磨剤組成物であって、
ポリリン酸塩は、10体積%未満の塩が160μmを超える粒径を有し、20体積%未満の塩が5μm未満の粒径を有する粒径分布を有することを特徴とする、歯磨剤組成物に関する。歯磨剤組成物は、良好な安定性及び許容し得る舌触りを有する。
【0010】
本発明は更に、このような歯磨剤組成物で用いるための経口的に許容し得るなポリリン酸塩に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に指示がない限り、本明細書の全ての百分率及び比率は、組成物合計の重量基準であり、全ての測定は25℃で行われる。
【0012】
本明細書で使用するとき、用語「経口的に許容し得るキャリア」とは、本発明の組成物中で用いられる、あらゆる安全かつ有効な物質を包含する。このような物質としては、フッ化物イオン源、抗結石又は抗歯石剤、減感剤、過酸化物源のような歯白色化剤、シリカのような研磨剤、薬草剤、キレート剤、緩衝剤、抗着色汚れ剤、アルカリ金属重炭酸塩、増粘物質、保湿剤、水、界面活性剤、フレーバ系、甘味剤、着色剤、及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない、口腔ケア組成物中の従来の添加剤が挙げられる。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「歯磨剤」は、歯ブラシと一緒に利用するのに好適であり、使用後すすぎ落とされる、歯を洗浄する物質を意味する。特に指示がない限り、それは、粉末、ペースト、ゲル又は液体の処方であることができる。本明細書の歯磨剤組成物は、単相、二相又は多相製剤であってよい。単相は、その中に均質に又は均等に分散した、歯科用研磨剤のような、1個又はそれ以上の不溶性粒子を有する液体キャリアを含んでもよい。本明細書で歯磨剤組成物は、好ましくは練り歯磨き及びゲルの形態をとる。
【0014】
ポリリン酸塩
本発明の歯磨剤組成物は、微粒子の形態である水溶性、直鎖ポリリン酸塩を含み、ポリリン酸塩は、少なくとも10個のリン酸単位を含む、ポリリン酸アニオンを含む。ポリリン酸塩の有用な濃度は、一般に、ポリリン酸塩の1重量%を超え、好ましくは1.5重量%〜50重量%、より好ましくは2重量%〜20重量%、最も好ましくは5重量%〜15重量%である。
【0015】
ポリリン酸は、ポリリン酸アニオンを含む塩として市販されている。ポリリン酸は、アルカリ金属塩又はその混合物であり、好ましくはナトリウム若しくはカリウム塩又はそれらの混合物であり、より好ましくはナトリウム塩であることが好ましい。ポリリン酸は、脱水により重合してリン酸アニオンのポリマーを形成しているリン酸アニオンを指す、広く用いられる用語である。ポリリン酸は、直鎖若しくは環状物質又はそれらの混合物として存在することができる。本明細書で好ましいポリリン酸は、低濃度の環状物質しか含まない直鎖物質である。ポリリン酸はまた、ポリマーアニオンの平均アニオン鎖長によっても特徴付けることができる。本発明の目的のために、ポリリン酸と呼ばれるのは、10個以上の平均アニオン鎖長を有する水溶性直鎖ポリリン酸である。ポリリン酸は、10〜40、好ましくは15〜30、より好ましくは18〜30の平均アニオン鎖長及びその混合を有することが好ましい。
【0016】
4を超える平均アニオン鎖長を有するポリリン酸は、通常ガラス状物質として生じる。本明細書で定義するとき、「ガラス状」物質は非晶質であるものである。本発明で好ましいのは、式
XO(XPO
(式中、Xはナトリウム、カリウム又は水素であり、nは平均10以上又はその混合である)を有する直鎖「ガラス状」ポリリン酸である。このようなポリリン酸は、例えば商品名ヘキサホス(Hexaphos)(n≒13)及びガラスH(Glass H)(n≒21)を使用するFMC社(FMC Corporation)により製造されている、並びに、商品名ブジット(Budit)(登録商標)としてブーデンハイムKG(Budenheim KG)(ドイツ、ブーデンハイム、ラインストラッセ(Rheinstrasse)27)により製造されている。これらのポリリン酸は単独で又は組み合わせて用いてよい。広範囲のリン酸(phosphate)及びその原料が、カーク−オスマー(Kirk-Othmer)の「工業化学百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」(第4版、第18巻、ワイリー−インターサイエンス・パブリッシャーズ(Wiley-Interscience Publishers)、1996年)に記載されている。
【0017】
本発明のポリリン酸塩の粒径は、粒径の径分布(volume distribution)を得ることができる任意の適当な方法により測定することができる。代表的な方法は、マルバーン・インスツルメンツ(Malvern Instruments Ltd.)(英国、WR14 1XZ、ウースターシャー(Worcestershire))から市販されている、マルバーン・マスターサイザー(Malvern Mastersizer)(登録商標)S粒径分析器を用いることである。少なくとも0.5〜900μmの粒径範囲の粒子を測定することができる他の同等な機器を用いることもできる。代表的な方法では、マルバーン・マスターサイザー(Malvern Mastersizer)(登録商標)Sには、乾燥粉末供給ユニットMS64及び300Fレンズ(範囲0.5〜900μm)が装備されている。機器は、装置のマニュアルに規定されている、以下のマルバーン標準手順及びガイドラインに従って操作すべきである。マスターサイザーは、使用前に、1時間スイッチを入れたままにすべきであり、かつフルレーザーアラインメント(full laser alignment)及びバックグラウンドの読み取りを行うべきである。用いた、実験設定パラメータは以下の通りである。
【表1】

【0018】
十分な供給速度で十分なサンプルが機械に入り、確実に15〜20%の不明瞭な読み取り、3500〜4000の粒子数及び<1.0%の残留物である場合、測定データが利用可能であると考えられる。バックグラウンドデータは、分析への干渉を避けるために最小限に抑えるべきである。
【0019】
本発明の1つの実施形態によるポリリン酸塩は、10体積%未満、好ましくは5体積%未満の塩が160μmを超える粒径を有するような、粒径分布を有する。本発明によるポリリン酸塩は、好ましくは、20体積%未満、好ましくは10体積%未満、より好ましくは5体積%未満の塩が140μmを超える粒径を有するような、粒径分布を有する。他の実施形態では、20体積%未満、好ましくは10体積%未満が100μmを超える粒径を有する。また、40体積%未満、好ましくは35体積%未満の塩が20μm未満の粒径を有し、20体積%未満、好ましくは10体積%未満の塩が5μm未満の粒径を有する。ある好ましい実施形態では、20体積%未満、好ましくは15体積%未満の塩が20μm未満の粒径を有し、好ましくは20体積%未満の塩が30μm未満の粒径を有する。
【0020】
あるいは、60〜100体積%、好ましくは75〜100体積%のポリリン酸塩が5〜140μmの範囲の粒径を有する。好ましい実施形態では、60〜100体積%、好ましくは70〜100体積%のポリリン酸塩が10〜100μmの範囲の粒径を有する。
【0021】
口腔内での使用に好適な市販の、微粒子、食品等級ポリリン酸は、典型的には、それに見合うように本発明に好適なものより大きな粒子を含む。本明細書で望ましい粒径分布は、微粒子ポリリン酸の市販原料を粉砕する又は篩い分けして、より大きな粒子、場合によってはより小さな粒子を取り除くことにより、得ることができる。必要に応じて、異なる等級のポリリン酸をブレンドし、所望の粒径分布を達成することができる。
【0022】
微粒子ポリリン酸の溶解度は、好ましくは、25℃で少なくとも1g/100mL、より好ましくは、25℃で少なくとも5g、更により好ましくは少なくとも8g、更により好ましくは少なくとも10g、最も好ましくは少なくとも15g/100mLである。好ましいポリリン酸塩は、1%水溶液のpHが、5.8〜6.7である。
【0023】
他の成分
本発明の歯磨剤組成物は、1種又はそれ以上の適合性のある固体若しくは液体賦形剤又は局所経口投与に好適である希釈剤を含む、経口的に許容し得るキャリアを含む。本明細書で使用するとき、「適合性のある」とは、組成物の成分が、実質的に組成物の安定性及び/又は効果を低下させるような方法で相互作用することなく混合し得ることを意味する。
【0024】
本発明のキャリア又は賦形剤としては、以下により完全に記載するように、練り歯磨き並びにゲルの通常の及び従来の成分を挙げることができる。
【0025】
本明細書の組成物のpHは、一般に5〜9.5、より好ましくは5〜8.5の範囲である。歯磨組成物のpHは、3:1の歯磨剤の水性スラリー、即ち3部の水対1部の歯磨剤で測定される。
【0026】
水は歯磨剤組成物でキャリア物質として一般に使用される。それは加工助剤として有用であり、口に対して害が無く、練り歯磨きの迅速な発泡を助ける。水はそれ自体で成分として添加してもよく、又はソルビトール及びラウリル硫酸ナトリウムのような他の一般的な原材料中のキャリアとして存在してもよい。本明細書で使用するとき用語「水の合計」とは、別個に添加された、又は、他の原材料のための溶媒若しくはキャリアとして、組成物中に存在する水の合計量を意味するが、特定の無機塩類の結晶水として存在し得るものを除く。その利点にもかかわらず、本発明の歯磨剤組成物中の水の合計量は、一般に、ポリリン酸塩の加水分解を避けるために十分低く維持されるべきである。組成物は無水であってよい。本明細書で好ましい歯磨剤組成物は、合計で1%〜20%、好ましくは2%〜10%、より好ましくは2%〜5%の水を含む、水性組成物である。
【0027】
練り歯磨き及びゲルの他の非水性成分は、一般に、1種又はそれ以上の歯科用研磨剤(6%〜50%)、界面活性剤(0.1%〜2.5%)、増粘剤(0.1%〜5%)、保湿剤(15%〜45%)、着香剤(0.04%〜2%)、甘味剤(0.1%〜3%)、着色剤(0.01%〜0.5%)、及び水(2%〜45%)を含む。このような練り歯磨き又は歯用ゲルはまた、1種又はそれ以上の抗カリエス剤(典型的には、フッ化物イオンとして0.05%〜0.25%)及び抗微生物剤(0.1%〜3%)を含んでもよい。
【0028】
本発明の組成物に含まれてよい経口的に許容し得るキャリア又は賦形剤の種類については、具体的な非限定的な例とともに、次の項で論じる。
【0029】
保湿剤は本明細書の組成物の任意であるが好ましい成分である。保湿剤は、歯磨剤が空気に曝されて硬化するのを防ぐ、口に潤い感を与える、また、特定の保湿剤についてはフレーバの所望の甘さを付与するよう機能する。保湿剤は、純粋な保湿剤を基準として、一般に組成物の5重量%〜70重量%、好ましくは15重量%〜45重量%含まれる。好適な保湿剤としては、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールのような食用多価アルコール、特にソルビトール及びグリセリンが挙げられる。
【0030】
本発明の歯磨組成物はまた、一般に界面活性剤を含む。有用な界面活性剤の種類としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性及びベタイン界面活性剤類が挙げられる。アニオン性界面活性剤は、洗浄性及び発泡性を提供するために含むことができ、典型的には0.1重量%〜2.5重量%、好ましくは0.3重量%〜2.5重量%、最も好ましくは0.5重量%〜2.0重量%の量で使用される。カチオン性界面活性剤を使用してもよいが、他の成分とそれらの適合性について注意をする必要がある。カチオン性界面活性剤は、典型的には、追加のアニオン性界面活性剤と同様の濃度で使用され、ベタイン界面活性剤も同じように使用される。いくつかの非イオン性界面活性剤は、それらを用いてリンギングゲル(ringing gel)を形成することが望ましい場合、20%以下のような、実質的により高い濃度で有用である場合がある。
【0031】
本明細書で有用なアニオン性界面活性剤としては、アルキルラジカル中に10〜18個の炭素原子を有するアルキル硫酸の水溶性塩及び10〜18個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム及びココナツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムは、この種のアニオン性界面活性剤の例である。また本明細書で有用なのは、ラウロイルサルコシネート、ミリストイルサルコシネート、パルミトイルサルコシネート、ステアロイルサルコシネート、及びオレオイルサルコシネートのような、サルコシネート界面活性剤、アルキルスルホアセテート、イセチオネート界面活性剤、及びタウレート界面活性剤である。上記の全ては、一般にそれらのアルカリ金属又はアンモニウム塩として使用される。
【0032】
好適な非イオン性界面活性剤の例としては、ポロキサマー、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合体、長鎖三級アミンオキシド、長鎖三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシド、及びこのような物質の混合物が挙げられる。好ましいベタイン界面活性剤としては、ココアミドエチルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン等が挙げられる。
【0033】
本発明で有用な好ましいカチオン性界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ジ−イソブチルフェノキシエチル−ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、フッ化セチルピリジニウム等のような、8〜18個の炭素原子を含有する1つのアルキル長鎖を有する脂肪族四級アンモニウム化合物の誘導体が挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤の幾つかはまた、抗微生物剤としても有用である。
【0034】
練り歯磨き又はジェルの調製においては、増粘剤又は結合剤を添加して組成物の所望の粘稠度を提供する、使用の際の所望の活性物質放出特性を提供する、貯蔵安定性を提供する及び組成物の安定性を提供する等が多くの場合必要である。増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロースのような非イオン性セルロース誘導体、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体の水溶性塩を挙げることができる。カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、及びトラガカントガムのような天然ゴムを本明細書で使用することもできる。キサンタンガムが好ましい。好適な増粘剤の濃度は、0.1〜5%の範囲であり、必要に応じてそれより高くすることができる。
【0035】
歯磨剤、より詳細には練り歯磨きのために本明細書で好ましい成分は、歯科用研磨剤である。研磨剤は、歯を磨く及び/又は表面の付着物を除去するように作用する。本明細書での使用が考慮される研磨剤物質は、歯の象牙質を過度に研磨しない任意の物質であることができる。好適な研磨剤としては、例えばリン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸カルシウム、β相ピロリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、無水リン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウムのような、種々のリン酸カルシウムを含む、不溶性ホスフェート研磨剤が挙げられる。また好適なのは、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムのようなチョーク型(chalk-type)研磨剤、キセロゲル、ヒドロゲル、エアロゲル、及び沈殿物を含むシリカ、αアルミナ三水和物のようなアルミナ及びその水和物、焼成ケイ酸アルミニウム及びケイ酸アルミニウムのようなアルミノケイ酸塩、三ケイ酸マグネシウムのようなケイ酸マグネシウム及びケイ酸ジルコニウム、並びに、尿素とホルムアルデヒドとの微粒子縮合生成物のような熱硬化性重合樹脂、ポリメチルメタクリレート、粉末化ポリエチレン、並びに、米国特許第3,070,510A号(1962年12月25日)に開示されているようなその他のものである。また、研磨剤の混合物を使用することもできる。様々な種類のシリカ歯科用研磨剤は、歯のエナメル質又は象牙質を過度に削らない、優れた歯の洗浄及び研磨性能という独特の効果があるため好ましい。砥粒研磨物質は、一般に0.1〜30マイクロメートル、好ましくは5〜15マイクロメートルの平均粒径を有する。
【0036】
本発明の歯磨剤組成物中の研磨剤の合計量は、典型的には組成物の6重量%〜70重量%であり、練り歯磨きは、好ましくは10重量%〜50重量%、より好ましくは10重量%〜30重量%の研磨剤を含有する。15%以上のような比較的高濃度の研磨剤を有すると、小さな粒径のポリリン酸の製品のレオロジーに対する影響がより顕著になる可能性がある。
【0037】
抗カリエス効果を提供するために、別の好ましい成分は、組成物の約0.01重量%〜0.35重量%、好ましくは0.05重量%〜0.2重量%のフッ化物イオン濃度を与えるのに十分な量の水溶性フッ化物化合物である。広範なフッ化物イオン生成物質を、本組成物中の可溶性フッ化物の供給源として使用することができる。代表的なフッ化物イオン供給源としては、フッ化スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、及びその他多くが挙げられる。フッ化スズ及びフッ化ナトリウムが特に好ましく、これらの混合物も同様である。ポリリン酸の加水分解を最小限に抑えるために、フッ化物イオン源を、ポリリン酸塩を含有する相とは別の相に保ってよい。
【0038】
本組成物の別の任意成分は、硝酸、塩化物、フッ化物、リン酸、ピロリン酸(pyrophosphate)、ポリリン酸、クエン酸、シュウ酸、及び硫酸の塩を含む、カリウム、カルシウム、ストロンチウム及びスズの塩のような、過敏性を制御する象牙質減感剤である。
【0039】
抗微生物剤を使用することもできる。このような剤の中に含まれるのは、ハロゲン化ジフェニルエーテル、特にトリクロサンのような非水溶性非カチオン性抗微生物剤及びチモールのような精油である。水溶性抗微生物剤としては、塩化セチルピリジニウムのような第四級アンモニウム塩が挙げられる。酵素は、本発明の組成物に使用することができる、別の種類の活性物質である。有用な酵素としては、プロテアーゼ、溶菌酵素、歯垢マトリクス阻害物質及びオキシダーゼの分類に属するものが挙げられる。オキシダーゼはまた、抗微生物特性に加えて、白色化活性/洗浄活性も有する。このような剤は、米国特許第2,946,725号(ノリス(Norris)ら、1960年7月26日)及び同第4,051,234号(ギースキー(Gieske)ら、1977年9月27日)に開示されている。好ましい抗微生物剤はまた、スズ及び亜鉛イオンのような金属イオンを含んでよい。フッ化スズは、抗微生物剤として機能し、加えてフッ化物イオン源でもある。
【0040】
着香剤及び甘味剤も好ましくは本組成物に含まれる。好適な着香剤、並びに甘味剤は、当該技術分野において周知である。本明細書では本口腔用組成物中の好適な着香剤濃度は、0.1重量%〜5.0重量%、より好ましくは0.5重量%〜1.5重量%である。広範囲の人々に許容し得るバランスのとれたフレーバを提供するため、典型的には、香味油は、別々の工程で製造され、天然及び/又は合成由来の多数の成分を含む。フレーバ成分は、ミント、香辛料、果物、柑橘類、薬草、薬用、及び日常的な食品のフレーバの種類(例えば、チョコレート)から選択することができる。このような成分の、例証であるが、非限定な例としては、リモネン、カリオフィレン、ミルセン、及びフムレンのような炭化水素;メントール、リナロール、3−デカノール、及びピノカルベオールのようなアルコール;ピペリトン、メントン、スピカトン(spicatone)、及びl−カルボンのようなケトン;アセトアルデヒド、3−ヘキサナール又はn−オクタナールのようなアルデヒド;メントフラン、ピペリトンオキシド又はカルビルアセテート−7,7オキシドのようなオキシド;酢酸及びオセノン酸(ocenoic)のような酸並びにジメチルスルフィドのようなスルフィドが挙げられる。また、成分としては、酢酸メンチル、イソブチル酸ベンジル、及び3−酢酸オクチルのようなエステルが挙げられる。フレーバ成分としてまた、例えば、メンタピペリタ(piperita)及びメンタアベンシス(arvensis)由来のペパーミント油のような精油;メンタカルディアカ(cardiaca)及びメンタスピカタ(spicata)由来のもののようなスペアミント油;セージオイル、パセリ油、マジョラム油、カッシア油、クローブ芽油、桂皮油、オレンジ油、ライム油、ユーカリ油及びアニス油を挙げることもできる。他の好適な成分は、ケイ皮アルデヒド、オイゲノール、イオノン、アネトール、ユーカリプトール、チモール、サリチル酸メチル、バニリン、エチルバニリン及びバニラ抽出物である。フレーバ成分は、「フェナロリのフレーバ成分ハンドブック(Fenaroli’s Handbook of Flavor Ingredients)」(第3版、第1巻及び第2巻、CRCプレス社(CRC Press,Inc.)、1995年)並びに「ステフェン・アルクタンダーの香料及びフレーバ化学物質(Steffen Arctander’s Perfume and Flavour Chemicals)」(第1巻及び第2巻、1969年)に更に詳細に記載されている。生理学的冷却剤もまた、フレーバ油に組み入れることができる。冷却剤は、広範な物質のいずれかであってよい。このような物質に含まれるのは、カルボキサミド、メントール、アセタール、ケタール、ジオール、及びこれらの混合物である。本明細書で好ましい冷却剤としては、(「WS−3」として商業的に既知である)N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド及びこれらの混合物のようなp−メンタンカルボキサミド剤及び(「MGA」として商業的に既知である)メントングリセリンアセタールが挙げられる。本発明に好適な更なる冷却剤が、国際公開第97/06695号に開示されている。
【0041】
本明細書の組成物は、カモミール、オーク樹皮、メリッサ、ローズマリー、及びサルビアの抽出物のような薬草成分を更に含むことができる。これらの並びに上述の薬草由来のフレーバ成分の幾つか(チモールなど)は、フレーバに寄与するのに丁度十分な濃度を含んでもよく、あるいは、より高い治療効果を提供するために1%以上のようなより高濃度で添加してもよい。
【0042】
使用できる甘味剤としては、スクロース、グルコース、サッカリン、スクラロース、ブドウ糖、果糖、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、マルトース、キシリトール、サッカリン塩、タウマチン、アスパルテーム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム及びシクラメート塩、特にシクラミン酸ナトリウム、スクラロース及びサッカリンナトリウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。組成物は、好ましくは0.1%〜3%、より好ましくは0.1%〜1%のこれらの剤を含有する。
【0043】
組成物は、通常の顔料、染料、及び二酸化チタンのような不透明化剤を更に含んでもよい。組成物のために選択された成分は、互いに、化学的かつ物理的に適合性でなければならないことが理解されよう。
【0044】
本発明の性質は、実施例1〜4が本発明による練り歯磨きであり、実施例Cがポリリン酸がより大きな粒径分布を有することを除き実施例1と同じ配合である比較例である、以下の非限定的な実施例を参照することにより理解されよう。
【表2】

10体積%未満が140μmを超える、3体積%未満が160μmを超える、20体積%未満が30μm未満の粒径分布を得るために篩い分けした、市販の食品等級の微粒子塩。
15体積%未満が100μmを超える、10体積%未満が120μmを超える、30体積%が20μm未満、10体積%未満が5μm未満の粒径分布を得るために粉砕した、市販の食品等級の微粒子塩。
約40体積%が140μmを超える、約30体積%が160μmを超える、10体積%未満が30μm未満の粒径分布を有する、市販の食品等級の微粒子塩。
【0045】
実施例1及び3は、比較例Cと同程度の加水分解安定性を有していたが、ザラザラした感じが大幅に低減されたことに由来して消費者受容が改善されていた。
【0046】
本明細書で開示した寸法及び値は、列挙した厳密な数値に狭義に限定されるものとして理解されるべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することを意図している。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)微粒子の形態の水溶性ポリリン酸塩であって、少なくとも10個のリン酸単位を含むポリリン酸アニオンを含む、水溶性ポリリン酸塩と、
b)経口的に許容し得るキャリアと、
を含む、歯磨剤組成物であって、
前記ポリリン酸塩は、10体積%未満の塩が160μmを超える粒径を有し、20体積%未満の塩が5μm未満の粒径を有する粒径分布を有することを特徴とする、歯磨剤組成物。
【請求項2】
pH5〜9.5の、水性練り歯磨き又はゲルの形態である、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
前記ポリリン酸アニオンが、18〜30個のリン酸単位を含む、請求項1又は2に記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
合計で1%〜20%、好ましくは2%〜10%の水を含む、請求項2に記載の歯磨剤組成物。
【請求項5】
歯磨剤組成物の0.01重量%〜0.35重量%のフッ化物イオンを提供するのに十分な量のフッ化物イオン源を含む、請求項4に記載の歯磨剤組成物。
【請求項6】
前記フッ化物イオン源が、フッ化ナトリウム、フッ化スズ、及びこれらの混合物から選択される、請求項5に記載の歯磨剤組成物。
【請求項7】
20体積%未満の塩が120μmを超える粒径を有し、20体積%未満の塩が20μm未満の粒径を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項8】
経口的に許容し得る、微粒子の形態の水溶性ポリリン酸塩であって、
前記ポリリン酸塩が、少なくとも10個のリン酸単位を含むポリリン酸アニオンを含み、
前記ポリリン酸塩は、10体積%未満の塩が160μmを超える粒径を有し、20体積%未満の塩が5μm未満の粒径を有する粒径分布を有することを特徴とする、ポリリン酸塩。
【請求項9】
1%水溶液のpHが、5.8〜6.7である、請求項9に記載のポリリン酸塩。
【請求項10】
前記ポリリン酸アニオンが、18〜30個のリン酸単位を含む、請求項9又は10に記載の歯磨剤組成物。

【公表番号】特表2010−517994(P2010−517994A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547806(P2009−547806)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050638
【国際公開番号】WO2008/102321
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】