説明

口腔用組成物

【解決手段】 (A)硝酸カリウムを0.1〜10質量%、(B)一般式Mn+2n3n+1(式中、MはNa又はK、nは2以上の整数である。)で表される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩を0.1〜2.0質量%含有し、かつ、上記(A)硝酸カリウム/(B)水溶性ポリリン酸塩の質量比が1.5〜50であり、(C)多価アルコールを40〜70質量%含有してなることを特徴とする口腔用組成物。
【効果】 本発明の口腔用組成物は、象牙質知覚過敏症の予防及び治療に優れ、かつタバコヤニ等の歯面汚れの清掃効果が高く、歯磨時の使用感が良好であり、象牙質知覚過敏症予防用として有効に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝酸カリウムと直鎖状の水溶性ポリリン酸塩の併用配合により、象牙質知覚過敏症の予防及び治療効果に優れ、かつ、タバコヤニ等の歯面汚れの清掃効果と歯磨時の使用感にも優れた口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
象牙質知覚過敏症とは、歯のエナメル質又はセメント質が消失して象牙質が露出し、この象牙質に熱的、化学的、機械的などの外来刺激が与えられることにより生じる、一過性の非常に不快な痛みであると定義されている。この痛みの原因は、露出した象牙細管を通じて歯髄神経が刺激されるためと考えられている。
【0003】
象牙質過敏症の予防策としては、象牙細管を封鎖させたり、神経を鈍麻させるといった方法がなされている。象牙細管を封鎖させるものとしては特許文献1(特開昭61−36212号公報)、特許文献2(特開平7−165550号公報)等があり、神経を鈍麻させるものとしては、神経鈍麻作用を持ち、知覚過敏予防の有効成分として公知である硝酸カリウムを口腔用組成物に配合することが知られている(特許文献3:特開平8−175943号公報)。例えば、特許文献4(米国特許第3863006号)は、硝酸カリウム等のカリウム塩を含有する歯磨剤が、数週間にわたるブラッシング後に歯の過敏性を減少させることを開示している。
【0004】
しかしながら、それらの方法を用いても、痛みの低減、除去には通常一ヵ月以上の期間を要し、発症者の苦痛を伴っているのが現状である。特に、知覚過敏症状を有している状態では歯磨時にも痛みを感じるため、通常のブラッシングが困難であり、歯面に付着・沈着したステイン、プラーク、食べかす、タバコのヤニなどの歯面汚れを十分に除去できず、口腔衛生の維持に悪影響を与えるという問題があった。そのため、知覚過敏症状を有している状態での使用において、知覚過敏症状の予防及び治療効果に優れているとともに、十分な歯面の清掃効果を有し、使用性も良好な口腔用組成物の開発が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−36212号公報
【特許文献2】特開平7−165550号公報
【特許文献3】特開平8−175943号公報
【特許文献4】米国特許第3863006号
【特許文献5】特開平9−175966号公報
【特許文献6】特開平11−343220号公報
【特許文献7】特開2000−281549号公報
【特許文献8】特表平11−510161号公報
【特許文献9】特開2004−10576号公報
【特許文献10】特開2004−26724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、象牙質知覚過敏症の予防及び治療効果に優れ、かつタバコヤニ等の歯面汚れの清掃効果にも優れ、歯磨時の使用感も良い口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、硝酸カリウム0.1〜10質量%と下記一般式で示される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩0.1〜2.0質量%とを、前記硝酸カリウムと水溶性ポリリン酸塩とを硝酸カリウム/水溶性ポリリン酸塩(質量比)が1.5〜50となるように組み合わせて配合し、かつ40〜70質量%の多価アルコールを併用した口腔用組成物が、象牙質知覚過敏抑制効果に優れている上、タバコヤニ等の歯面汚れの清掃効果が非常に高く、歯磨時の使用感も良好で、知覚過敏予防用として有用であることを見出した。
【0008】
即ち、硝酸カリウムが神経鈍麻作用を持ち、知覚過敏予防の有効成分として口腔用組成物に配合されることは上記したように公知であり、直鎖状の水溶性ポリリン酸塩は、従来から、歯石予防や歯の汚れを除去する成分として口腔用組成物に配合されている(特許文献5:特開平9−175966号公報、特許文献6:特開平11−343220号公報、特許文献7:特開2000−281549号公報)。
【0009】
更に、硝酸カリウムと水溶性ポリリン酸塩を口腔用組成物や歯磨組成物に配合することはすでに報告されている(特許文献8:特表平11−510161号公報、特許文献9:特開2004−10576号公報、特許文献10:特開2004−26724号公報)。また、特許文献8では、硝酸カリウムとピロリン酸テトラナトリウムを配合した組成物が開示されているが(実施例1、2、4)、ピロリン酸テトラナトリウムの配合量は3.8〜5.05%であり、硝酸カリウムに対する水溶性ポリリン酸塩の配合量が多く、歯磨時の使用感が悪いため、知覚過敏症を有している状態での使用においては十分な清掃効果が期待できない。なお、いずれの提案においても、硝酸カリウムが水溶性ポリリン酸塩の清掃効果を顕著に増強させることについては言及されていない。
【0010】
これに対して、本発明者は、硝酸カリウムと下記一般式で示される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩を上記したような特定の比率で配合し、かつ、特定量の多価アルコールを併用して配合することにより、意外にも水溶性ポリリン酸塩由来の歯面汚れの清掃効果が顕著に増大し、高濃度の水溶性ポリリン酸塩を配合しなくても、高い歯面汚れの清掃効果が発揮され、使用感も良好となること、よって、象牙質知覚過敏症の抑制効果に優れている上、知覚過敏症による痛みを有する使用者が、その痛みが低減、除去される期間に継続して使用した場合においても、歯面に付着・沈着したステイン、プラーク、食べかす、タバコのヤニなどの歯面汚れを十分に除去でき、口腔衛生を良好に維持することもでき、象牙質知覚過敏症の予防、治療効果及び歯面汚れの清掃効果を兼ね備えた口腔用組成物が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、(A)硝酸カリウムを0.1〜10質量%、(B)一般式Mn+2n3n+1(式中、MはNa又はK、nは2以上の整数である。)で表される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩を0.1〜2.0質量%含有し、かつ、上記(A)硝酸カリウム/(B)水溶性ポリリン酸塩の質量比が1.5〜50であり、(C)多価アルコールを40〜70質量%含有してなることを特徴とする口腔用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の口腔用組成物は、象牙質知覚過敏症の予防及び治療効果に優れ、かつタバコヤニ等の歯面汚れの清掃効果が高く、歯磨時の使用感が良好であり、象牙質知覚過敏症予防及び治療用として有効に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳細に説明すると、本発明の口腔用組成物は、練歯磨、液体歯磨等の歯磨類、マウスウオッシュ、洗口剤などとして調製できるもので、硝酸カリウム、水溶性ポリリン酸塩、多価アルコールを特定割合で含有するものである。
【0014】
本発明において、硝酸カリウムとしては、口腔用組成物に通常使用されている硝酸カリウムを使用でき、例えば松本交商(株)製等を使用できる。硝酸カリウムの配合量は、組成物全体の0.1〜10質量%、好ましくは3〜7質量%であり、配合量が0.1質量%未満では配合効果が満足に発揮されず、十分な知覚過敏抑制効果が発揮されなかったり、歯面汚れの清掃効果の向上が認められず、10質量%を超えると苦味が強すぎて使用するに耐えない。
【0015】
また、直鎖状の水溶性ポリリン酸塩は、一般式Mn+2n3n+1(但し、式中、MはNa又はKを示し、nは2以上、好ましくは2〜4である。)で示されるもの、即ち、重合度n=2のピロリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製等)やピロリン酸カリウム(太平化学産業(株)製等)、n=3のトリポリリン酸ナトリウム(セントラル硝子(株)製等)やトリポリリン酸カリウム(太平化学産業(株)製等)、n=4のテトラポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製等)、高重合度のメタリン酸ナトリウム(ユニオン(株)製等)やメタリン酸カリウム(太平化学産業(株)製等)などが挙げられる。その中でも特にピロリン酸ナトリウムがタバコヤニ除去効果の点から好ましい。これらの水溶性ポリリン酸塩は、その1種を単独で又は2種以上を混合して使用される。
【0016】
水溶性ポリリン酸塩の配合量は、組成物全体の0.1〜2.0質量%、好ましくは0.5〜1.5質量%である。水溶性ポリリン酸塩の配合量が0.1質量%より少ないと、十分な清掃効果が得られず、配合量が2.0質量%を超えると、使用時の感触が不快となり、知覚過敏症状を有している状態においては十分なブラッシングができないため、満足な歯面汚れの清掃効果や知覚過敏抑制効果が得られない。
【0017】
更に、本発明においては、硝酸カリウムと上記水溶性ポリリン酸塩とを硝酸カリウム/水溶性ポリリン酸塩の質量比が1.5〜50、好ましくは3〜20、より好ましくは5〜10の範囲となるように配合する。硝酸カリウム/水溶性ポリリン酸塩の質量比が1.5未満であると、十分な清掃効果が得られなかったり、硝酸カリウム由来の知覚過敏抑制効果が阻害され、満足な知覚過敏抑制効果が得られず、硝酸カリウム/水溶性ポリリン酸塩の質量比が50を超えると、使用時の感触が不快になり、本発明の満足な効果が得られない。
【0018】
また、多価アルコールとしては、例えばソルビトール(東和化成(株)製等)、キシリトール(東和化成(株)製等)、グリセリン(ダイセル化学(株)製等)、プロピレングリコール(ダウケミカル(株)製等)、ポリエチレングリコール(三菱化学(株)製等)などが挙げられる。本発明では、多価アルコールとしてこれらから選ばれる1種又は2種以上を配合できるが、特にソルビトール、キシリトール、プロピレングリコールが好ましく、とりわけソルビトール及びキシリトールとプロピレングリコールを組み合わせて配合すると、高い知覚過敏抑制効果、歯面汚れの清掃効果及び良好な使用感が得られることから、より好ましい。
【0019】
多価アルコールの配合量は、組成物全体の40〜70質量%であり、特に歯面の清掃効果や歯磨時の使用感の点から40〜60質量%が好ましい。配合量が40質量%未満であると、相乗的に向上した清掃効果及び知覚過敏抑制効果、使用感が得られず、本発明の目的を達成することができなくなってしまい、70質量%を超えると、製剤の安定性上好ましくない。
【0020】
本発明の口腔用組成物には、上記必須成分以外に剤型に応じたその他の任意成分を配合することができる。具体的には、各種研磨剤、粘結剤、粘稠剤、発泡剤、香料、甘味剤、防腐剤、着色剤、安定化剤、pH調整剤、薬効成分等が挙げられる。
【0021】
研磨剤としては、無水ケイ酸、水酸化アルミニウム、第2リン酸カルシウム2水和物及び無水物、第1リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、水和アルミナ、沈降性シリカ、その他のシリカ系研磨剤、ケイ酸アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、合成樹脂等が例示され、これらの1種又は2種以上を使用することができる。その配合量は本発明の口腔用組成物の形態、使用目的等に応じ適宜選択され、例えば、練歯磨には10〜50質量%、液状歯磨には0〜30質量%配合することができる。
【0022】
粘結剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギネート、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、トラガカントガム、カラヤガム、アラビアガムなどのガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンなどの合成粘結剤、ゲル化性シリカ、ゲル化性アルミニウムシリカ、ビーガム、ラポナイトなどの無機粘結剤等が例示され、これらの1種又は2種以上を使用することができる。その配合量は本発明の口腔用組成物の形態、使用目的等に応じ適宜選択される。例えば、練歯磨には0.1〜5質量%、液体歯磨及び洗口剤には0〜5質量%配合することができる。
【0023】
粘稠剤としては、上記多価アルコール以外のもの、例えばマルチトール、ラクチトール等から選ばれる、少なくとも1種以上に加えて、適宜、1,3−ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エタノール、変性エタノール、糖アルコール還元でんぷん糖化物等を使用することができる。その配合量は本発明の口腔用組成物の形態、使用目的等に応じ適宜選択される。
【0024】
発泡剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合し得る。アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウムなどが挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などのエーテル型の活性剤、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド類が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。両性の界面活性剤としては、酢酸ベタイン、イミダゾリニウムベタイン、レシチンなどが挙げられる。これら界面活性剤は1種又は2種以上を使用することができ、その配合量は、本発明の口腔用組成物の形態、使用目的等に応じ適宜選択される。例えば、練歯磨には0〜10質量%、液体歯磨及び洗口剤には0〜5質量%配合することができる。
【0025】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、キシリトール、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル、p−メトキシシンナミックアルデヒド、ショ糖、乳糖、果糖、サイクラミン酸ナトリウムなどの等の1種又は2種以上を配合することができる。その配合量は本発明の口腔用組成物の形態、使用目的等に応じ適宜選択される。
【0026】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、安息香酸ナトリウム、低級脂肪酸モノグリセライド等が例示され、これらの1種又は2種以上を使用することができる。その配合量は本発明の口腔用組成物の形態、使用目的等に応じ適宜選択される。
【0027】
安定化剤やpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、酢酸、リン酸、グリセロリン酸、炭酸やこれらの各種塩、並びに水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。その配合量は本発明の口腔用組成物の形態、使用目的等に応じ適宜選択される。
【0029】
各種有効成分としては、モノフルオロリン酸ナトリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1スズ、フッ化ストロンチウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸dl−トコフェノール、α−ビサボロール、イソプロピルメチルフェノール、クロロヘキシジン塩類、トリクロサン、ビオゾール、塩化セチルピリジニウム、アズレン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、ゼオライト、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等のグルカナーゼ、アミラーゼ、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物などが挙げられる。なお上記有効成分は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合することができる。
【0030】
着色剤としては、青色1号、黄色4号、緑色3号、二酸化チタン等を通常量で配合することができる。
【0031】
本発明の口腔用組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、口腔用組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器等が使用できる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0033】
〔実施例、比較例〕
下記表1,2に示す組成の歯磨剤組成物を下記製造法により調製した。
製造法:
(i)精製水中に水溶成分(粘結剤、プロピレングリコール等を除く)を常温で混合溶解させたA相を調製した。
(ii)プロピレングリコール中に粘結剤を常温で分散させたB相を調製した。
(iii)攪拌中のA相の中にB相を添加混合し、C相を調製した。
(iv)C相中に、香料、研磨剤、界面活性剤等の水溶性成分以外の成分を1.5Lニーダー(石山工作所製)を用い常温で混合し、減圧による脱泡を行い、歯磨剤組成物1.2kgを得た。なお、組成中にプロピレングリコールのない歯磨剤組成物に関しては、攪拌中のA相に粘結剤を添加混合し、C相を調製することができる。
【0034】
タバコヤニ除去効果、歯磨時の使用感、知覚過敏抑制効果を以下の方法により評価した。結果を表1,2に示す。
【0035】
(1)タバコヤニ除去効果試験方法
タバコヤニ付着ハイドロキシアパタイトペレット作製法:
ハイドロキシアパタイトペレット表面(ペンタックス社製、直径7mm×厚さ3.5mm)をサンドブラストにて処理後、中性洗剤水溶液中、超音波洗浄機で洗浄した。30%リン酸水溶液にて表面をエッチング(10分間)、水洗し、自然乾燥させた。タバコヤニ付着前のペレットのLab値(L0)を測定した後、タバコヤニを付着させた(タバコ(ピース JT(日本たばこ(株))製)が燃え尽きた後、吸引を止め、3分間放置した。この操作を3回繰り返した)。100℃で1時間乾燥して放冷後、37℃水浴中に3時間浸漬した。水洗後、150℃で3時間乾燥させた。放冷後、歯ブラシ(平切り)で軽く20回ブラッシングし、表面の水分を取り、タバコヤニ付着後のペレットのLab値(L1)を測定した。
【0036】
タバコヤニ除去効果評価法:
上記の方法で作製したタバコヤニ付着ハイドロキシアパタイトペレットを表1,2に示す実施例及び比較例の各組成の歯磨中に15分間浸漬後、表面を軽く20回歯ブラシ(平切り)でブラッシングし、ペレットのLab値(L2)を測定した。タバコヤニ除去率を次の式より得た。
タバコヤニ除去率(%)=〔(L2−L1)/(L0−L1)〕×100
【0037】
タバコヤニ除去効果評価基準:
タバコヤニ除去率から以下の基準に従い評価した。
◎:タバコヤニ除去率15%以上
○:タバコヤニ除去率10%以上15%未満
△:タバコヤニ除去率5%以上10%未満
×:タバコヤニ除去率5%未満
【0038】
(2)歯磨時の使用感評価方法
試験方法:
被験者10名を用い、表1,2に示す実施例及び比較例の各組成の歯磨約1gを歯ブラシにとり、3分間歯磨を行った際の苦味・渋み等の不快な味、収斂性等の違和感を下記の基準により評価した。
【0039】
評価基準:
(評点)
1点:苦味・渋み等の不快な味、収斂性等の違和感が強い
2点:苦味・渋み等の不快な味、収斂性等の違和感を感じる
3点:苦味・渋み等の不快な味、収斂性等の違和感を感じない
(評価基準)
◎:平均点2.5点以上3点以下
○:平均点2点以上2.5点未満
△:平均点1.5点以上2点未満
×:平均点1点以上1.5点未満
【0040】
(3)知覚過敏抑制効果試験方法
試験方法:
予め下記組成の対照品を使用して、歯磨後の水すすぎ時(10℃)に一過性の非常に強い痛みを有し、水すすぎができない知覚過敏症の有症者をパネルとして、下記の基準、方法により知覚過敏症の改善効果を評価した。なお、試験開始前の痛みは、全パネルで下記の痛み評価基準において1点であった。
前述の条件に合致する知覚過敏有症者70名を各5名ずつ14グループに群分けし、表1,2に示す実施例及び比較例の各組成の歯磨を1日2回(起床時、就寝時)、1週間使用してもらい、1週間後の水すすぎ時(10℃)の痛みを下記の基準で評価した。
【0041】
対照品組成:
A 硝酸カリウム −
B ピロリン酸ナトリウム −
C ソルビトール(70%)(東和化成(株)製) 45
キシリトール(東和化成(株)製) 10
プロピレングリコール(ダウケミカル(株)製) 3
増粘性シリカ 5
キサンタンガム 1
塩化セチルピリジニウム 0.02
非晶質シリカ 10
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
フッ化ナトリウム 0.21
香料 0.6
青色1号 0.01
精製水 残
合計 100%
【0042】
痛み評価基準:
(評点) 1点:非常に痛みが強い
2点:かなり痛みが強い
3点:やや痛みがある
4点:わずかに痛みがある
5点:全く痛みがない
(評価基準) ◎:平均点4点以上5点以下
○:平均点3点以上4点未満
△:平均点2点以上3点未満
×:平均点1点以上2点未満
【0043】
【表1】

(*);配合量は純分で計算
【0044】
A:硝酸カリウム(松本交商(株)製)
B:ピロリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製)
トリポリリン酸ナトリウム(セントラル硝子(株)製)
C:ソルビトール(70%)(東和化成(株)製)
キシリトール(東和化成(株)製)
グリセリン(ダイセル化学(株)製)
プロピレングリコール(ダウケミカル(株)製)
ポリエチレングリコール400(三菱化学(株)製)
【0045】
【表2】

(*);配合量は純分で計算
【0046】
表1,2から、硝酸カリウムと直鎖状の水溶性ポリリン酸塩を特定の割合で特定量配合し、かつ、多価アルコールを特定量配合した歯磨剤組成物(実施例1〜10)は、タバコヤニ除去効果、歯磨時の使用感、知覚過敏抑制効果のいずれも良好であった。一方、比較例1〜4においては、タバコヤニ除去効果、歯磨時の使用感、知覚過敏抑制効果のいずれかの点で十分な効果が発揮されなかった。
【0047】
更に、表1の結果において、B成分としてピロリン酸ナトリウムを配合した実施例1は、トリポリリン酸ナトリウムを配合した実施例2に比較して、タバコヤニ除去効果の点で優れており、B成分としてピロリン酸ナトリウムがより好ましいことが確認された。
また、C成分として、ソルビトール、キシリトール、プロピレングリコールを配合した実施例1は、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコールを配合した実施例3、ソルビトール、キシリトール、ポリエチレングリコール400を配合した実施例4に比べて、タバコヤニ除去効果、歯磨時の使用感により優れており、C成分としては、ソルビトール、キシリトール、プロピレングリコールの組み合わせがより好ましいことが確認された。
A成分とB成分の配合量及び配合比については、A成分の硝酸カリウムの配合量が5%で、A成分の硝酸カリウムとB成分のピロリン酸ナトリウムの配合比が5である実施例1は、知覚過敏抑制効果、タバコヤニ除去効果、歯磨時の使用感がいずれも◎であるのに対し、硝酸カリウムの配合量が2%で、硝酸カリウムとピロリン酸ナトリウムの配合比が2である実施例5は、硝酸カリウムによるピロリン酸ナトリウム由来のタバコヤニ除去効果を増強する作用は実施例1ほどには認められず、タバコヤニ除去効果は○であり、更に組成全体に対する硝酸カリウム配合量も少なめであるため、知覚過敏抑制効果も○であった。実施例6は、B成分のピロリン酸ナトリウム配合量が1%、A成分の硝酸カリウムの配合量が10%で、(A)/(B)比が10であり、ピロリン酸ナトリウムに対する硝酸カリウムの配合量が適度であるため、硝酸カリウムによるピロリン酸ナトリウム由来のタバコヤニ除去効果を増強する作用が満足に発揮され、タバコヤニ除去効果は◎であったが、組成全体に対する硝酸カリウムの割合が多めであるため、歯磨時の使用感、知覚過敏抑制効果とも○であった。これらのことから、硝酸カリウムによる知覚過敏抑制効果が満足に発揮されるにはその配合量が大きく影響し、必要以上に多く配合しても十分な効果が発揮されづらいこと、更に、硝酸カリウムによるピロリン酸ナトリウム由来のタバコヤニ除去効果の増強作用には、硝酸カリウムとピロリン酸ナトリウムの配合量及び配合比が影響することが確認された。
【0048】
実施例7は、B成分のピロリン酸ナトリウム配合量が0.1%、A成分の硝酸カリウムの配合量が5%で、(A)/(B)比が50であり、A成分の硝酸カリウムに対し、B成分のピロリン酸ナトリウム配合量が少ないため、タバコヤニ除去効果が○であった。実施例8は、B成分のピロリン酸ナトリウム配合量が2%、A成分の硝酸カリウムの配合量が5%で、(A)/(B)比が2.5であるが、ピロリン酸ナトリウムによるタバコヤニ除去効果は満足に発揮されるものの、組成全体に対するピロリン酸ナトリウム配合量が多いため、歯磨時の使用感は○であった。
【0049】
実施例9、10においては、C成分の多価アルコールの配合量が65.0%と多い組成であるため、多価アルコールの配合量が44.5%である以外は実施例9と同組成である実施例1は、知覚過敏抑制効果、タバコヤニ除去効果及び歯磨時の使用感のいずれも◎であるのに対し、実施例9、更には実施例10は、タバコヤニ除去効果及び使用感が○であり、C成分の多価アルコールを必要以上に多く配合すると、硝酸カリウムによるピロリン酸ナトリウム由来のタバコヤニ除去効果の増強作用が十分満足に発揮されづらくなる傾向があることが確認された。
【0050】
これらに対して、A成分が配合されていない比較例1、B成分が配合されていない比較例2は、知覚過敏抑制効果、タバコヤニ除去効果のいずれかが×であった。比較例3は、A成分の硝酸カリウム配合量が5%、B成分のピロリン酸ナトリウム配合量が5%、(A)/(B)比が1であるが、このようにB成分を多くするとタバコヤニ除去効果は高いものの、歯磨時の使用感が非常に悪くなり、硝酸カリウム由来の知覚過敏抑制効果も満足に発揮されないことが確認された。また、C成分の配合量が37.5%と少ない比較例4では、(A)及び(B)成分の配合割合が同じであって、C成分の配合量のみが異なる組成である実施例1と比べて、知覚過敏抑制効果、タバコヤニ除去効果、使用感がいずれも劣ることが確認された。
これらの結果から、本発明の構成とすることによる相乗効果、顕著な作用効果を確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硝酸カリウムを0.1〜10質量%、(B)一般式Mn+2n3n+1(式中、MはNa又はK、nは2以上の整数である。)で表される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩を0.1〜2.0質量%含有し、かつ、上記(A)硝酸カリウム/(B)水溶性ポリリン酸塩の質量比が1.5〜50であり、(C)多価アルコールを40〜70質量%含有してなることを特徴とする口腔用組成物。

【公開番号】特開2006−96696(P2006−96696A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283825(P2004−283825)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】