説明

口腔用組成物

【課題】歯ぐきの色調を健康的に改善、維持するのに有用な口腔用組成物を提供する。
【解決手段】ブドウ抽出物及びアスコルビン酸を含有することを特徴とする、口腔用組成物;ブドウ抽出物が、ブドウ果実を水及び/又は親水性有機溶媒で抽出して得られた抽出物、又は、ブドウ果実の水抽出液を酵母によって発酵処理した後に得られた抽出物である、上記口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口腔用組成物に関し、さらに詳しくは、経時安定性に優れ、及び歯ぐきを健康的な色調へと改善する作用を有し、且つ安全性の高い口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口腔内を健康に保つために、口腔用組成物への種々の成分の配合が提案されている。例えば歯周病予防や歯ぐきの健康維持などに向けて、アスコルビン酸(ビタミンC)やアスコルビン酸誘導体の配合が知られている(例えば特許文献1、2及び3参照)。
純粋なアスコルビン酸を口腔用組成物に安定に配合することが望まれる一方で、歯ぐきの健康維持、とくに歯ぐきの色調を健康に維持するのに一層有用な口腔用組成物が求められる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−320321号公報
【特許文献2】特開2003−212741号公報
【特許文献3】特開2003−055178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、歯ぐきの色調を健康的に改善し、維持するのに有用な口腔用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、口腔用組成物にアスコルビン酸とブドウ抽出物を配合することで、アスコルビン酸を安定に配合し、かつ歯ぐきの色調の改善に有用な口腔用組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、ブドウ抽出物及びアスコルビン酸を含有することを特徴とする、口腔用組成物である。本発明で使用するブドウ抽出物として、ブドウ抽出物が、ブドウ果実を水及び/又は親水性有機溶媒で抽出して得られた抽出物、又は、ブドウ果実の水抽出液を酵母によって発酵処理した後に得られた抽出物が挙げられる。
本発明の口腔用組成物の実施態様として、さらに乳酸菌を含有する上記口腔用組成物がある。
【発明の効果】
【0006】
本発明の口腔用組成物は、歯ぐきを自然で健康的に美しい色調に改善し及び維持するのに有用である。また、ブドウ抽出物を口腔用組成物に配合することにより、渋味が加わり、アスコルビン酸に起因するすっぱい味が改善され、製剤として味が向上する。
本発明の口腔用組成物は極めて安全性の高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明でいう口腔用組成物は、歯磨剤、洗口剤、歯ぐきをマッサージする形態など種々の剤形とすることができる。該口腔用組成物の具体的な形態として、例えば粉歯磨剤、練歯磨剤、液状歯磨剤、潤製歯磨剤、液体歯磨剤などの歯磨剤、洗口液、マウスウォッシュ、口中清涼剤、うがい用錠剤、軟膏状製剤、クリーム状製剤、チューインガムなどがある。
【0008】
本発明の口腔用組成物に使用するアスコルビン酸(別名:ビタミンC)は、具体的にL−アスコルビン酸であって、アスコルビン酸誘導体を意味するものではない。
本発明で使用するアスコルビン酸は、市販品を使用することができ、例えば商品名L(+)−アスコルビン酸(株式会社関東化学製)がある。
本発明の口腔用組成物におけるアスコルビン酸の配合量は、一般に0.001〜20質量%が適当であり、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは8〜10質量%である。
【0009】
本発明の口腔用組成物にはブドウ抽出物を配合する。
本発明で使用するブドウ抽出物は、ブドウ果実を原料として用い、その部位は特に制限されるものでなく果皮、果肉及び種子を包含してよい。ブドウの種類も特に制限されるものではなく、例えばコンコルド赤ブドウ(Vitis vinifera)などが挙げられる。
本発明で使用するブドウ抽出物の一態様として、ブドウ果実を水及び/又は親水性有機溶媒で抽出して得られた抽出物が挙げられる。このような抽出物を得る方法として以下のような具体例がある。ブドウ果実を破砕し該破砕物に、又はブドウ果実の絞り汁に抽出溶媒として水及び/又は親水性有機溶媒を加え、これを室温又は加温下で、具体的には20〜60℃の範囲の温度で、1時間〜5日間程度放置し、次いでろ過し、ろ液を適当な濃縮操作により、例えば減圧濃縮により濃縮し、得られた濃縮液の上澄液を適当な操作により、例えばデカンテーションにより取り出し、該上澄液からさらに抽出溶媒を十分に除去するように、該上澄液を例えば冷却遠心分離器にかけて、さらなる濃縮液とする。
抽出溶媒として使用する親水性有機溶媒の例には、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、及びそれらの混合物などがある。抽出原料となるブドウ果実又は絞り汁と抽出溶媒の質量比は、抽出原料:抽出溶媒=1:9〜9:1程度が適当である。
本発明で使用するブドウ抽出物は、上述の濃縮液の形態でもよく、あるいは、噴霧乾燥、凍結乾燥といった適当な乾燥方法により粉末化したものであってもよい。
【0010】
本発明で使用するブドウ抽出物の別の一態様として、ブドウ果実の水抽出液を酵母によって発酵処理した後に得られた抽出物が挙げられる。このような抽出物を得る方法として以下のような具体例がある。ブドウ果実を破砕し該破砕物に、又はブドウ果実の絞り汁に抽出溶媒として水を加え、これを室温又は加温下で、具体的には20〜60℃の範囲の温度で、1時間〜5日間程度放置する。抽出原料となるブドウ果実又はブドウ果実の絞り汁と抽出溶媒の質量比は、抽出原料:抽出溶媒=1:9〜9:1程度が適当である。
その後、ろ過し、得られたろ液に酵母を加え、1週間から2週間発酵させる。使用する酵母として、サッカロミセス属、チゴサッカロミセス属などに属する酵母があり、例えば市販のワイン酵母、清酒酵母、パン酵母などが使用できる。発酵条件は使用する酵母の作用至適温度、pHを採用すればよく、一般に温度は20〜40℃の範囲で、pHは4〜7の範囲である。酵母の添加量は一般に103〜108個/抽出物1mLが適当である。
上記の発酵液を常法により固液分離し、液を得て、該液からアルコール分を例えば減圧濃縮といった手段により除去し濃縮し、得られた濃縮液からさらに水分を十分に除去するように、該濃縮液を例えば冷却遠心分離器にかけて、さらなる濃縮液とする。
本発明で使用するブドウ抽出物は、上述の濃縮液の形態でもよく、あるいは、さらに噴霧乾燥、凍結乾燥といった適当な乾燥方法により粉末化したものであってもよい。
【0011】
口腔用組成物におけるブドウ抽出物の配合量は、ブドウ抽出物の乾燥固形分として、一般的に0.001〜10質量%が適当であり、好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。
【0012】
本発明の口腔用組成物には、さらに乳酸菌(乳糖やブドウ糖を分解して大量の乳酸をつくる細菌を総称していう)を含めることができる。乳酸菌を含ませることにより、清掃効果や歯周病菌の予防効果を高めることができる。
本発明で使用する乳酸菌としては、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属などの乳酸菌が挙げられ、具体例としてラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ブランタラム、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ファーメンツム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブッフネル、ラクトバチルス・セロビオズス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトコッカス・フェカリス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、バチルス・コアグランス等がある。
乳酸菌は何れの形態のものも使用でき、例えば粉末状の凍結乾燥品などがある。
本発明の口腔用組成物における乳酸菌の配合量は、一般的に0.001〜10質量%が適当であり、好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。
【0013】
本発明の口腔用組成物は、口腔用組成物の各種形態に応じて、従来から用いられている適当な基剤や添加剤を配合し、常法に従って調製することができる。
例えば練歯磨剤といった歯磨剤には、例えば以下の基剤や添加剤を配合することができる。
研磨剤:結晶質シリカ、非晶質シリカ、その他の無水ケイ酸、含水ケイ酸といったシリカ系研磨剤、アルミノシリケート、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、酸化チタン、第2リン酸カルシウム・2水和物、第2リン酸カルシウム・無水和物、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム等。研磨剤は一般的に配合量3〜99質量%で使用される。
【0014】
粘結剤:カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギネート、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガムなどのガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンなどの合成粘結剤、ゲル化性シリカ、ゲル化性アルミニウムシリカ、ビーガント、ラポナイト等の無機粘結剤。粘結剤は一般的に配合量0.5〜10質量%で使用される。
【0015】
湿潤剤:ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、トレハロース、ネオトレハロース、イソトレハロース、α−マルトシルα,α−トレハロースなどのα,αトレハロースの糖質誘導体を含有する糖質など。湿潤剤は一般的に配合量1〜90質量%で使用される。
【0016】
界面活性剤:ラウリル硫酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸塩、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アルキルグリコシド類、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルジメチルアミンオキシドなど。界面活性剤は一般的に配合量0〜5質量%で使用される。
【0017】
pH調整剤:乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸やそれらの塩類、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−プロパンジオール、アルギニン、リジン等、又はそれらの混合物など。pH調整剤は一般的に配合量0〜10質量%で使用される。
【0018】
更に任意成分として、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル、p−メトキシシンアミックアルデヒド、ショ糖、果糖、サイクラミン酸ナトリウムなどの甘味料;スペアミント油、ペパーミント油、ウインターグリーン油、サッサフラス油、チョウジ油、ユーカリ油、セージ油、マヨナラ油、タイム油、レモン油、オレンジ油、l-メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、チモール、サリチル酸メチルなどの香料;安息香酸、安息香酸ナトリウム、p−ヒドロキシプロピルベンゾイックアシッド、p−ヒドロキシブチルベンゾイックアシッド、低級脂肪酸モノグリセライド、パラベンなどの防腐剤;第4級アンモニウム塩、トリクロサン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウムなどの殺菌剤;ε−アミノカプロン酸、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、溶菌酵素、リゾチームなどの酵素類;モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化第一スズなどのフッ化物;クロルヘキシジン塩類、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン塩類、グリチルレチン酸、クロロフィル、カロペプタイド、酢酸トコフェロール、アズレン、塩化リゾチーム、ゼオライトやポリリン酸などの歯石防止剤、歯垢防止剤、硝酸カリウム、乳酸アルミニウムなどを添加することができる。
なお、これらの任意成分の添加量は、本発明の効果を防げない範囲で通常量とすることができる。
【実施例】
【0019】
以下、試験例および実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
参考例1<ブドウ抽出物の調製>
コンコルド赤ブドウ(Vitis vinifera)の果実粉砕物10質量部に対して精製水を90質量部加え、50〜60℃で24時間抽出した後、ろ過した。これを減圧濃縮し、得られた濃縮液を冷却遠心分離にてされに濃縮液とした。この液を凍結乾燥し、粉末化したブドウ抽出物を得た。
参考例2<ブドウ抽出物の調製>
コンコルド赤ブドウ(Vitis vinifera)の果実粉砕物10質量部に対して、精製水を90質量部加え、50〜60℃で24時間抽出した後、ろ過した。この抽出液にワイン酵母を加え、ブドウ糖分との反応により、1週間発酵させた。この発酵液をろ過して液を得て、これを加熱処理により濃縮しアルコールを除去し、さらに減圧濃縮し、得られた濃縮液を冷却遠心分離器にかけて更なる濃縮液を得た。この液を凍結乾燥し、粉末化したブドウ抽出物を得た。
【0020】
実施例
以下の組成(単位:質量%)にて、潤製歯磨剤を調製した。
潤製歯磨剤
1.グリセリン 88.4%
2.アスコルビン酸 9.0%
3.キサンタンガム 2.0%
4.カラギーナン 0.5%
5.参考例2で得たブドウ抽出物 0.1%
【0021】
試験例
上記潤製歯磨剤を用いて、歯ぐきの色調改善効果を調べた。試験方法は、被験者8名とし、毎日、朝と夜の2回、歯ブラシにつけて歯ぐきをマッサージするように、15日間、使用した。より本来の歯ぐきの色(ピンク色)へもどることを歯ぐきの色調の改善とし、使用前後の歯ぐきの色をカラーチップ(大日本インキ化学製)にて照らし合わせた。その結果を表1に示す。
表中、カラーチップ番号の欄において、DIC:29が鮮やかなピンク色で、下へいくほど、黒味が強まり、DIC:196が黒っぽい赤色である。
【0022】
【表1】

○:試験前、◎:試験後
【0023】
上記結果に示されるように、本発明の口腔用組成物を使用することにより、歯ぐきの色調に改善が見られた。
また、アスコルビン酸の安定性については、色調確認のため上記潤製歯磨剤においてブドウ抽出物を配合していない組成で確認している。該組成物を調製後、密閉性の高いエアレス容器にて保存したところ3年経過しても、褐変はみられなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ抽出物及びアスコルビン酸を含有することを特徴とする、口腔用組成物。
【請求項2】
ブドウ抽出物が、ブドウ果実を水及び/又は親水性有機溶媒で抽出して得られた抽出物、又は、ブドウ果実の水抽出液を酵母によって発酵処理した後に得られた抽出物である、請求項1記載の口腔用組成物。
【請求項3】
さらに乳酸菌を含有する請求項1又は2記載の口腔用組成物。
【請求項4】
歯ぐきの色調を改善する作用を有する請求項1〜3のいずれか1項記載の口腔用組成物。

【公開番号】特開2009−19010(P2009−19010A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183087(P2007−183087)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(503249119)株式会社 ソーシン (6)
【Fターム(参考)】