説明

口腔用組成物

【課題】口腔用組成物を提供する
【解決手段】陽イオン界面活性剤、マクロゴール及びアラビアゴムを含む口腔用組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、口腔用組成物として歯磨剤、洗口剤、歯面塗布剤、バーニッシュ、研磨剤等が多岐にわたって登場している。また、これらの剤型についても、粉状、ペースト状、液状、ゲル状、フォーム状(泡沫状)等が挙げられる。
【0003】
これらの口腔用組成物の剤型の中で多く見られるペースト状は、分散しにくいので、口中で十分に分散させる必要のある歯面塗布剤等としては不向きである。
【0004】
分散性が高い剤型としては、口中に広がりやすい液状、ゲル状、フォーム状(泡沫状)等が挙げられる。歯面塗布剤としても、液状、ゲル状、フォーム状等が登場しており、その際どの剤型においてもロール綿やトレー等を用いて防湿を行う必要がある。
【0005】
例えば、液体の歯面塗布剤の場合には、一般に綿球に染みこませて歯面に塗布する。しかしながら、その際、塗布状況がわかりづらいという問題点がある。また、歯面の湿潤状態を保ちながら繰り返し塗布していくため、使用方法が困難といえる。さらに、液状の場合は、流動性が高い分、歯面への滞留性が悪く、誤飲等の欠点もある。
【0006】
また、ゲル状の歯面塗布剤は、使いやすく塗布もしやすい。しかしながら、現在出回っている製品は、リン酸酸性のため、腐食性が強く修復物等に影響を与えてしまい、塗布の使用が制限される。さらに、ゲル状の歯面塗布剤は、一般に使用される歯面塗布剤のフッ素濃度は9000ppm(フッ化ナトリウムとして2%)という、う蝕予防に使用するフッ化物の中でもっとも高い濃度を有する。そのため、ゲルをトレーにあらかじめ乗せて歯面に接触させる場合、製剤が過剰にならないよう十分に注意して作業を行う必要がある。
【0007】
一方、フォーム状の口腔用組成物は、塗布液を泡沫状にすることで、使用量を軽減でき、誤飲等の影響を防ぐこともできる。また、フォーム状の組成物をトレーに乗せて組成物と歯面とを接触させることによって、歯面全体に薬剤が拡がり、歯面への薬剤滞留性も良くなるという利点もある。
【0008】
フォーム状の口腔用組成物を開示した文献としては、例えば、特公昭58-40927号公報、特公昭62-15524号公報、特公昭62-15524号公報、特公平8-25859号公報、特開昭63-2011号公報、特開昭63-233908号公報等が挙げられる。
【0009】
しかしながら、これらの文献に開示されている口腔用組成物は、フォーム状とするために噴射剤を配合したエアゾール剤である。噴射剤は、口腔内における安全性だけでなく環境にも影響がある。よって、噴射剤を使用しないノンエアゾール剤が望まれる。
【0010】
一方、特開平10-87456号公報、特開平10-114636号公報、特開平10-114637号公報、特開2001-172144号公報等には、ノンエアゾール剤としての改良を行ったフォーム状口腔用組成物が提案されている。
【0011】
ノンエアゾール剤とした多くの文献において、口腔用組成物を起泡させる手段として、陰イオン界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムが用いられている。また、特許文献1(特開平10-87457号公報)、特許文献2(特開2007-137773号公報)には、泡沫化の向上として非イオン界面活性剤、粘稠剤等を添加することも提案されている。しかしながら、ラウリル硫酸ナトリウムには刺激作用があり、粘膜等への影響や接触アレルゲンに関与している等の報告もある(例えば、「口腔粘膜刺激性試験法に関する研究」 薬学雑誌 108(3) 232-238 (1988))。よって、口腔用組成物に配合することはあまり好ましくない。
【0012】
従来、抗菌作用に加え、う蝕予防、口臭の防止、歯肉炎の予防、防腐剤として利用される陽イオン界面活性剤(第4級アンモニウム塩等)を、口腔用組成物に添加することが行われている。これらの陽イオン界面活性剤は、口腔用組成物に配合する成分として大変有用と考えられている。
【0013】
特許文献3(特開平10-330799号公報)には、カチオン荷電を有する殺菌剤及び界面活性剤を含有する泡状殺菌洗浄剤組成物として塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩系とグリシン型両性界面活性剤とを含む洗浄剤組成物が提案されている。しかしながら、この文献は、手・指に対する洗浄殺菌作用と使用感を主に考慮しており、口腔内への適用については検討されていない。また、フォーム状とした場合に重要な、泡保持性、泡の液化等の検討も行われていない。さらに、一般的に両性界面活性剤には苦みがあると考えられており、口腔内に使用する場合には、これらの点についても考慮する必要がある。
【0014】
以上の従来技術の問題点を踏まえると、起泡手段として用いられる陰イオン界面活性剤や非イオン界面活性剤、口腔内での抗菌作用を持つ陽イオン界面活性剤を併用することが考えられる。
【0015】
例えば、特許文献1には、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤を併用した、殺菌活性のある泡状口腔用組成物が提案されている。しかしながら、非イオン界面活性剤は粉体化が困難なため、常温で液状やペースト状、固形状であるものが多い。これらは扱いにくい上、一般に起泡性に乏しく泡保持性が悪い。また、両性界面活性剤には起泡性、泡保持性の良好なものが多いが、一般的に苦みがある。陰イオン界面活性剤以外の界面活性剤は、基本的にコストが高く、多量に使用することは製品としてなかなか実現しづらいといった欠点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平10−87457号公報
【特許文献2】特開2007−137773号公報
【特許文献3】特開平10−330799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本出願は、抗菌作用、起泡性、泡保持性等に優れた口腔用組成物を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、従来技術に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、口腔用組成物に陽イオン界面活性剤、マクロゴール及びアラビアゴムを含むことにより、陽イオン界面活性剤の抗菌作用を失活させることなく、起泡性、泡保持性にも優れた口腔用組成物が得られることを見出した。本発明は、このような知見に基づき、さらに鋭意検討を重ねて完成された。すなわち、本発明は、下記項1〜7に記載の口腔用組成物に関する。
項1. 陽イオン界面活性剤、マクロゴール及びアラビアゴムを含む口腔用組成物。
項2. 口腔用組成物中に陽イオン界面活性剤を0.01〜0.2重量%、マクロゴールを1〜30重量%及びアラビアゴムを0.01〜0.5重量%含む項1に記載の口腔用組成物。
項3. 陽イオン界面活性剤が、第4級アンモニウム塩である項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4. 陽イオン界面活性剤が、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム及び塩化ベンザルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。
項5. マクロゴールがマクロゴール4000である項1〜4のいずれかに記載の口腔用組成物。
項6. さらにフッ化ナトリウムを含む項1〜5のいずれかに記載の口腔用組成物。
項7. 項1〜6のいずれかに記載の口腔用組成物を歯面に接触させることを特徴とする殺菌方法。
【0019】
本発明の口腔用組成物は、陽イオン界面活性剤、マクロゴール及びアラビアゴムを含むことを特徴とする。
【0020】
陽イオン界面活性剤としては、抗菌作用を有する陽イオン界面活性剤が好ましい。このような陽イオン界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩が挙げられる。また、第4級アンモニウム塩としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。陽イオン界面活性剤は、市販のものを使用することができる。これらの中でも、塩化セチルピリジニウムが特に好ましい。
【0021】
陽イオン界面活性剤の配合量は、本発明の口腔用組成物全体量に対して0.01〜0.2重量%程度、好ましくは0.05〜0.1重量%程度である。
【0022】
マクロゴールとは、日本薬局方の規定を満たすポリエチレングリコールである。マクロゴールは、その平均分子量によって、マクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000、マクロゴール35000等が挙げられる。口腔用組成物の泡保持性の観点からは、これらの中でもマクロゴール4000が特に好ましい。マクロゴールは市販のものを使用することができる。
【0023】
マクロゴールの配合量は、本発明の口腔用組成物全体量に対して1〜30重量%程度、好ましくは1〜10重量%程度である。
【0024】
本発明において、アラビアゴム(アラビアゴム末)は、日本薬局方の規定を満たすものを使用する。アラビアゴムを粘稠剤として配合することにより、抗菌剤成分(有効成分)として陽イオン界面活性剤を含む本発明の口腔用組成物の起泡性、泡保持性が著しく改善される。アラビアゴムは市販のものを使用することができる。
【0025】
アラビアゴムの配合量は、本発明の口腔用組成物全体量に対して、通常0.01〜0.5重量%程度、好ましくは0.05〜0.3重量%程度である。
【0026】
本発明は、抗菌剤成分として陽イオン界面活性剤を含む口腔用組成物に、マクロゴール及びアラビアゴムを配合することにより、陽イオン界面活性剤の抗菌作用を失活させることなく、起泡性、泡保持性にも優れる組成物が得られる。
【0027】
本発明の口腔用組成物には、陽イオン界面活性剤に加えて、他の有効成分を配合することもできる。他の有効成分としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、口腔用組成物に付与する薬効によって適宜選択すればよい。例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化第1スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸dl−トコフェロール、α−ビサボロール、イソプロピルメチルフェノール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、エピジヒドロコレステリン、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物、二酸化チタン、二酸化塩素、過酸化水素水、過ホウ酸ナトリウム、過酸化尿素、CPP-ACP、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム水和物、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が使用できる。これらの中でも、フッ化ナトリウム、フッ化第1スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム等が好ましい。
【0028】
これらの他の有効成分を使用する場合、その配合量は、本発明の口腔用組成物全体量に対して、通常0.0001〜10.0重量%程度、好ましくは0.0005〜5.0重量%程度である。また、う蝕予防を目的として、フッ化ナトリウムを配合する場合、その配合量は、通常0.02〜10.0重量%程度、好ましくは0.1〜8.0重量%程度である。
【0029】
本発明の口腔用組成物には、上記第4級アンモニウム塩以外の陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、粘稠剤、増粘剤、甘味剤、防腐剤、着色剤、香料等を配合してもよい。これらの他の成分は、口腔用組成物に一般的に配合される成分が使用でき、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。
【0030】
上記第4級アンモニウム塩以外の陽イオン界面活性剤としては、例えば、ポリエチレンイミン、Nメチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸等が挙げられる。また、非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルジエチレントリアミノ酢酸、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0031】
これらの界面活性剤を使用する場合、その配合量は、本発明の口腔用組成物全体量に対して、通常1.0〜30.0重量%程度、好ましくは1.0〜15.0重量%程度である。
【0032】
粘稠剤、増粘剤としては、例えば、トラガントゴム、シクロデキストリン、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、プルラン、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0033】
これらの粘稠剤、増粘剤を使用する場合、その配合量は、本発明の口腔用組成物全体量に対して、通常0.0001〜10.0重量%程度、好ましくは0.001〜5.0重量%程度である。
【0034】
また、甘味剤としては、果糖、カンゾウエキス、グリセリン、グリチルリチン酸二カリウム、D-ソルビトール、D-ソルビトール液、ブドウ糖、D-マンニトール、ステビオサイド、トレハロース、エリスリトール、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、濃グリセリン、キシリトール等が挙げられる。これらの中でもアスパルテームが特に好ましい。
【0035】
これらの甘味剤を使用する場合、その配合量は、本発明の口腔用組成物全体量に対して、通常0.0001〜10.0重量%程度、好ましくは0.001〜5.0重量%程度である。
【0036】
防腐剤としては、エタノール、エデト酸ナトリウム、塩化セチルピリジニウム、クエン酸水和物、クレゾール、サリチル酸フェニル、ジブチルヒドロキシトルエン、ソルビン酸、チモール、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、パラホルムアルデヒド、フェノール、ベンゼトニウム塩化物、ベンジルアルコール、d-ボルネオール、l-メントール、ユーカリ油等が挙げられる。これらの防腐剤を使用する場合、その配合量は、本発明の口腔用組成物全体量に対して、通常0.0001〜20.0重量%程度、好ましくは0.0001〜10.0重量%程度である。
【0037】
着色剤としては、青色1号、黄色4号、黄色5号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、二酸化チタン、β-カロテン、酸化亜鉛、銅クロロフィル、マラカイトグリーン、リボフラビン、緑茶末、ローズ油、ラッカイン酸等が挙げられる。
これらの着色剤を使用する場合、その配合量は、本発明の口腔用組成物全体量に対して、通常0.00001〜1.0重量%程度、好ましくは0.00001〜0.5重量%程度である。
【0038】
香料としては、l−メントール、カルボン、アネトール、リモネン等のテルペン類又はその誘導体、オイゲノール、スペアミントオイル、アップルオイル、オレンジオイル、キンカンオイル、クールミントフレーバー、グレープフルーツオイル、ジャスミンフレーバー、シャンペンサイダーオイル、ストロベリーミント、ハーブエッセンス、ハーブオイル、ブルーミントフレーバー、ペパーミントオイル、マスカットフレーバー等が挙げられる。
これらの香料を使用する場合、その配合量は、本発明の口腔用組成物全体量に対して、通常0.0001〜3.0重量%程度、好ましくは0.0001〜1.0重量%程度である。
【0039】
本願発明の口腔用組成物は、上記有効成分である陽イオン界面活性剤、マクロゴール、アラビアゴム、水、さらに必要に応じて上記の他の有効成分、他の成分を混合して得られる。これらの各成分の混合順序、混合方法は特に限定されず、各成分が均一になるように混合すればよい。また、水は、例えば精製水を使用すればよい。
【0040】
本発明の口腔用組成物は、市販のフォーマー容器に充填し、吐出することでフォーム状(泡沫状)となる。本発明の口腔用組成物は、口腔用組成物自体の起泡性が優れているため、組成物にエアゾール剤に使用されるような噴射剤を配合する必要はない。
【0041】
歯面塗布剤として使用する場合は、例えば、本発明の口腔用組成物をフォーマー容器に充填し、フォーマー容器等から吐出させることにより泡沫状とし、これをトレーに乗せて歯面と接触させることができる。
【0042】
本発明の口腔用組成物を充填するフォーマー容器は市販品を使用することができる。そのようなフォーマー容器としては、口腔用組成物と空気を混合し、多孔質膜を通過させることにより、泡沫状として吐出するものが挙げられる。市販品としては、例えば、加圧する方法が軟質容器の胴部を手指で押圧するタイプのスクイーズフォーマーや、ポンプ機構を備えたキャップの頭部を手指で押圧するタイプのポンプフォーマー等が挙げられる。
【0043】
本発明の口腔用組成物は、特に泡保持性に優れているため、例えば、歯面塗布剤として使用すれば、泡沫が歯面全体に接触し、長時間にわたって有効成分を効果的に歯面、口腔内に分散させることができる。よって、本発明の口腔用組成物は、上記陽イオン界面活性剤による抗菌効果により、口内の雑菌を効果的に殺菌でき、口腔用抗菌剤として有用である。また、他の有効成分として、フッ化ナトリウム等を含むことにより、う蝕予防等にも効果的に使用できる。さらに、泡保持性が高いことにより、泡沫状組成物の液化による誤飲等を防ぐこともできる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の口腔用組成物は、陽イオン界面活性剤、マクロゴール及びアラビアゴムを含むことにより、陽イオン界面活性剤の抗菌作用を失活させることなく、起泡性、泡保持性にも優れる。また、フッ化ナトリウム等の他の有効成分を含む場合にも、これらの特性を維持することができる。特に、本発明の口腔用組成物は、起泡性、泡保持性に優れるため、例えば、口腔用組成物をトレーに充填して歯面と接触させることによって、歯面全体に薬剤が拡がり、歯面への薬剤滞留性も良くなるという優れた効果を奏する。また、起泡性、泡保持性が高いことによって、使用量の軽減や泡の液化による誤飲等の影響を防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】フォーム性状の比較試験における液化量の経時変化を示すグラフである。
【図2】フォーム性状の比較試験における泡の嵩高さの経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、実施例、比較例、試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
実施例1〜3及び比較例1〜7
表1に記載の各成分を表1に記載の配合量となるようにして混合し、口腔用組成物を調製した。全ての実施例及び比較例において、有効成分として陽イオン界面活性剤(塩化セチルピリジニウム)を0.1重量%、フッ化ナトリウムを2.0重量%(約9000ppm)配合した。さらに、安定化剤、溶解補助剤として、マクロゴール4000を5.0重量%配合した。また、実施例1〜3においては、アラビアゴム末を配合した。その他の成分の種類、配合量については、「医薬品添加物事典2007」の歯科外用及び口中用の項目を参考にした。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1中の単位は重量%である。また、残部は水である。
【0050】
市販のフォーマー容器に表1の配合割合とした口腔用組成物を添加した。フォーマー容器から組成物を吐出し、20mLのメートルグラスに体積20mL分の泡状組成物を空間ができないようまんべんなく充填した。評価は、充填の際の泡の出方を「起泡性」、充填した時点から5分後の泡の状態、泡の量を目盛りから読み取り、「泡保持性」とした。起泡性、泡保持性の評価基準は、以下の基準の通りである。
-・・・溶液にならないもの、また沈殿等が多く見られるもの。
【0051】
〈起泡性〉
A・・・吐出した瞬間に全体が細かい泡の状態。
B・・・吐出した時に泡と液体が混合された状態。
C・・・ほとんどが液体で泡がみられない状態。
【0052】
〈泡保持性〉
A・・・ほとんどが泡の状態で吐出され5分経過しても70%以上の泡を保持しているもの。
B・・・泡として吐出されたものの大きな泡がやや混じりあっているか、あるいは5分経過しても50%以上の泡を保持しているもの。
C・・・吐出の時点から大きな泡の混じったほとんどが液体の状態のもの、あるいは5分経過すると50%以下に泡の量が低下するもの。
【0053】
〈苦み〉
A・・・不快な苦みはない。
B・・・苦みがある。
C・・・強い苦みがある。
【0054】
この結果から、陽イオン界面活性剤(塩化セチルピリジニウム)及びマクロゴール4000に加えて、アラビアゴム末を配合した実施例1〜3の組成物においては、起泡性、泡保持性の点で優れていることが確認された。
【0055】
一方、アラビアゴム末を含まない比較例1〜7の組成物は、他の粘稠剤、増粘剤を使用しても、溶液にならず、又は沈殿等が多く見られるか、泡になったとしても泡保持性が非常に低かった。なお、苦みについては実施例1〜3及び比較例1〜7の何れにおいても、不快な苦みは感じられなかった。
【0056】
比較例8〜14
表2に記載の各成分を表2に記載の配合量となるようにし、口腔用組成物を調製した。上記実施例1〜3及び比較例1〜7と同様にして、有効成分として陽イオン界面活性剤(塩化セチルピリジニウム)を0.1重量%、フッ化ナトリウムを2.0重量%(約9000ppm)、マクロゴール4000を5.0重量%配合した。さらに、比較例8〜14においては、粘稠剤、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、プルランをそれぞれ配合した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表2中の単位は重量%である。また、残部は水である。
【0059】
その結果、塩化セチルピリジニウム、カルボキシメチルセルロースそれぞれ単独では水に溶けたが、両者を混合すると、反応等が起こって沈殿が生じてしまった。ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおいても同様に沈殿が生じた。
【0060】
また、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルは、非イオン界面活性剤で性状がロウ状の固形製剤であり、使い勝手が悪く溶液にも溶けにくかった。また、泡の性状は比較的良いが泡保持性が低く、味がとても苦かった。
【0061】
プルランを配合した場合は、泡の流動性が大きく泡保持性がよくなかった。また、液化はしにくかったが、泡がつぶれて巣がはったようになってしまった。
【0062】
フォーム性状の比較試験
下記の処方例1、比較処方例1〜3及び参考例として市販の泡状歯面塗布剤(サンスター社製 バトラーフローデンフォームN)のフォーム性状を比較した。
【0063】
<処方例1>
フッ化ナトリウム 2.0g
塩化セチルピリジニウム 0.1g
マクロゴール4000 5.0g
アラビアゴム 0.3g
アスパルテーム 0.2g
精製水 残部
合計 100g

<比較処方例1>
フッ化ナトリウム 2.0g
塩化セチルピリジニウム 0.1g
アスパルテーム 0.2g
精製水 残部
合計 100g

<比較処方例2>
フッ化ナトリウム 2.0g
塩化セチルピリジニウム 0.1g
アラビアゴム 0.3g
アスパルテーム 0.2g
精製水 残部
合計 100g

<比較処方例3>
フッ化ナトリウム 2.0g
塩化セチルピリジニウム 0.1g
マクロゴール4000 5.0g
アスパルテーム 0.2g
精製水 残部
合計 100g
処方例1は、フォーマー容器から吐出した直後は気泡性がよく泡に弾力性がありキメも粗くなりにくかった。また、比較処方例1は、気泡性が悪く、泡を出す時点から泡に液体が混ざっており泡の保持性もよくなかった。比較処方例2は、比較処方例1に比して気泡性が少しは改善されたが、まだ泡を出すときに少し液っぽさが残った。泡に軽さはなく、液が混じり合った重たい泡になっていた。比較処方例3は、気泡性はかなりよく、泡を出したときに弾力性があるように感じられた。しかし、泡のキメはすぐ粗くなってしまった。
【0064】
<比較試験の方法>
各処方例の被験試料150mlをフォーマー容器に添加して吐出した泡、参考例の製品から吐出した泡の状態をそれぞれ下記の方法で確認した。なお、各処方例の被験試料は濾過してからフォーマー容器に充填した。
各処方例、参考例のフォームを 20mlのメートルグラスに体積20ml分まんべんなく詰め、2分、5分、10分後に泡の量がどのように変化するか(泡の嵩高さ)、また泡が液体に変化する時の液化量を、それぞれメートルグラスの目盛りから読み取った。結果を表3及び4に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
また、表3及び表4の結果をそれぞれ図1及び図2に示す。
【0068】
参考例として使用した、サンスター社製バトラーフローデンフォームNは、陰イオン界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を使用している歯面塗布剤である。実施例、処方例1では、陰イオン界面活性剤ではなく陽イオン界面活性剤である塩化セチルピリジニウムを使用した。その結果、陽イオン界面活性剤を使用した場合にも、マクロゴール及びアラビアゴムを配合することにより、陰イオン界面活性剤を使用した既存製品(参考例)と同程度の起泡性、泡保持性が得られることが確認できた。特に、アラビアゴムを添加することによって時間の経過による泡の保持量がかなり改善されることが分かった。
【0069】
上記の通り、ラウリル硫酸ナトリウムには刺激作用がある。一方、本発明の口腔内用組成物は、口腔用の抗菌剤として有用とされている陽イオン界面活性剤の塩化セチルピリジニウムを使用しており、起泡性の確保だけでなく、口腔用組成物に抗菌作用を与えることはもちろん、う蝕予防、口臭の防止、歯肉炎の予防効果といった種々の効果を奏することが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン界面活性剤、マクロゴール及びアラビアゴムを含む口腔用組成物。
【請求項2】
口腔用組成物中に陽イオン界面活性剤を0.01〜0.2重量%、マクロゴールを1〜30重量%及びアラビアゴムを0.01〜0.5重量%含む請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
陽イオン界面活性剤が、第4級アンモニウム塩である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
陽イオン界面活性剤が、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム及び塩化ベンザルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項5】
マクロゴールがマクロゴール4000である請求項1〜4のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項6】
さらにフッ化ナトリウムを含む請求項1〜5のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の口腔用組成物を歯面に接触させることを特徴とする殺菌方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−20980(P2011−20980A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169915(P2009−169915)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(398011594)株式会社ビーブランド・メディコーデンタル (4)
【Fターム(参考)】