説明

口腔衛生に使用するための複合体粒子

【課題】革新的な複合体粒子が有する活性成分の改善された長期間の効果を可能にする革新的な複合体粒子を提供する。
【解決手段】複合体粒子が3〜50μmの平均粒径および50〜550m2/gの比表面積を有する、無定形のSiO2の多孔質キャリヤー、および少なくとも1つの外被材料を含有し、この場合この外被材料は、口腔内での活性化に続き、活性物質を放出し、および/またはさらに複合体粒子は、少なくとも1つの活性物質を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーラルケア分野、詳述すれば練り歯磨きおよび口内洗浄剤のための機能的な複合体粒子に関し、この複合体粒子は、長期間の抗微生物効果または抗菌効果を口腔内で保証し、それ故にプラークおよび口臭の形成を減少させる活性成分で充填されている。更に、本発明は、前記複合体粒子の製造法ならびに口腔衛生製品を製造するための前記複合体粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌性/抗微生物性の性質を有する物質を練り歯磨きおよび口内洗浄剤に添加すること、ならびにこの添加の効果は、よく知られている。しかし、活性物質の効果は、短期間にすぎない。それというのも、当該物質の濃度は、急速に低下し、口腔衛生の問題に続いて、微生物の発生および細菌の成長が再びすぐさま開始するからである。この状況において、商業的なオーラルケア製品は、極めて限定された長期間効果だけを口腔内で示し、例えば大量の活性成分は、歯牙のクリーニング後の水でのすすぎ洗いによって、例えば飲んだり、食物を食べることによって口内から除去されることが見い出された。この結果として、例えば口臭は、長期間に亘って予防することができない。
【0003】
持続した抗菌効果または抗微生物効果を達成させるために、前記の活性成分は、口腔内に局在化されていなければならず、その後に均一に長期間に亘って直接口腔内で定義された濃度で放出されなければならない。
【0004】
現在まで活性物質は、一般にミクロ粒子上に支持しかつカプセル封入することによって導入され、さらに、練り歯磨きまたは口内洗浄剤を介して口腔領域内に導入される。従って、例えば米国特許第2007/0036843号明細書には、活性成分の遅延された放出を伴なう口腔内使用のための組成物が開示されている。WO 2007/024265およびWO 2008/013757には、ポリマー支持材を基礎とする口腔衛生のための組成物が開示されている。WO 01/58416には、異なる複合体粒子を有する練り歯磨き組成物が開示されており、この複合体粒子の幾つかは、活性成分を有する。WO 2006/111761には、同様に活性成分の遅延された放出を保証することを意図する、活性成分で充填された粒子状キャリヤー物質を有する口腔衛生製品が開示されている。上記に引用した刊行物に記載されたアプローチは、口腔衛生製品の十分に長期間の効果を保証するためには不適当である。実際に、このアプローチにおいて、支持材料からの活性成分の遅延された放出という目的は、改善することができる。しかし、これは、粒子が短時間の直後に口腔から洗い流されるならば、役に立たない。
【0005】
更に、従来技術で使用された粒子は、しばしば、口内で「砂のような」感覚を生じさせる程に大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第2007/0036843号明細書
【特許文献2】WO 2007/024265
【特許文献3】WO 2008/013757
【特許文献4】WO 01/58416
【特許文献5】WO 2006/111761
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、革新的な複合体粒子が有する活性成分の改善された長期間の効果を可能にする革新的な複合体粒子を提供することであった。もう1つの目的は、前記の活性成分を製造するための方法を提供することである。
【0008】
1つの特殊な目的は、口腔内で活性成分の長期間の抗微生物効果または抗菌効果を改善することであった。
【0009】
明確に述べられていない更なる目的は、以下の発明の詳細な説明、実施例および特許請求の範囲の全体の文脈から明らかになるものと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、意外なことに、十分に長期間の効果、即ち口腔内での活性成分の十分の長期間の残留のための基本的な前提条件は、一面で前記複合体粒子と口内の粘液の膜中で生じる粘膜との相互作用の高いレベルによって達成されることができることを見出した。しかし、他面、本発明者らは、複合体粒子が1つの粒径を有する場合に複合体粒子が口腔内の歯牙と小さな窪みとの間に留まることができ、それ故に、比較的長時間に亘って口腔内に残留することができることも見出した。勿論、これら2つの効果は、組み合わせることができ、特殊な利点を導き出すことができる。最後に、前記効果は、複合体粒子が口腔内に十分に長期間残留するだけでなく、複合体粒子それ自体が活性成分の遅延された放出も保証する場合にさらになお増大させることができる。従って、調製された複合体粒子の使用によって、口腔衛生製品の長期間の効果の顕著な改善を保証することが可能である。
【0011】
従って、本発明は、複合体粒子が
3〜50μm、有利に4〜40μm、よりいっそう有利に5〜30μm、極めて有利に6〜25μmの平均粒径および50〜550m2/g、有利に100〜500m2/g、よりいっそう有利に150〜500m2/gの比表面積を有する、無定形のSiO2の多孔質キャリヤー、および
少なくとも1つの外被材料を含有し、
この場合この外被材料は、口腔内での活性化に続き、活性物質を放出し、および/またはさらに複合体粒子は、少なくとも1つの活性物質を含有することを特徴とする、練り歯磨きおよび口内洗浄剤のための添加剤としての複合体粒子を提供する。
【0012】
更に、本発明は、少なくとも1つの多孔質の無定形二酸化珪素が少なくとも1つの外被物質および/または少なくとも1つの活性成分と接触することを特徴とする、本発明による複合体粒子を製造する方法を提供する。
【0013】
更に、本発明は、口腔衛生用製品を製造するための本発明の複合体粒子の使用を提供する。
【0014】
最終的に、本発明は、本発明による少なくとも1つの複合体粒子を有利に5質量%〜15質量%の率で含有する、口腔衛生製品、有利に練り歯磨き、口内洗浄剤、口内ジェルまたは口内スプレーを提供する。
【0015】
更に、本発明の対象は、本明細書、実施例および以下の特許請求の範囲の全ての記載内容から明らかになる。
【0016】
本発明による複合体粒子の1つの利点は、小さい粒径のために、前記複合体粒子が口内で「砂のような」感覚を生じないことにある。更に、この小さな粒径は、粒子が口腔内の「ポケット」の留まることができ、したがって粒子が口腔内に十分に長時間残留することを保証する。
【0017】
粘膜接着性外被物質が使用される場所では、口腔内での接着力は、なおさらに改善されている。
【0018】
適当な二酸化珪素または異なる二酸化珪素の混合物をキャリヤー材料として選択することによって、例えばキャリヤーの細孔からの活性成分の拡散を変化させることが可能である。更に、外被材料を選択することによって、放出機構を変化させることも可能であり、こうして本発明による複合体粒子は、粒子状活性成分の要件に極めて柔軟に適合させることができる。
【0019】
二酸化珪素をキャリヤー材料として選択することによって、前記の柔軟性を達成することができるだけでなく、複合体粒子の部分での高い機械的安定性を達成することもでき、その結果、例えば練り歯磨きまたは口内洗浄剤中に配合した場合、または歯ブラシで歯牙を清潔にした場合には、前記の性質は、活性成分の遅延された放出の能力を失うことなく維持される。
【0020】
本発明による複合体粒子は、多様な異なる活性成分で充填されていてよく、こうして普遍的に使用されることができる。
【0021】
また、本発明による複合体粒子は、該複合体粒子が口腔内で数時間に亘って活性成分の連続的な放出を可能にするという利点を有する。
【0022】
本発明の対象は、下記に詳細に記載されている。本発明の記載内容において、「外被物質」、「外被材料」および「保護物質」の用語は、同義で使用されている。
【0023】
「活性成分」および「活性物質」の用語は、同様に同義で使用されており、口腔内での抗菌効果および/または抗微生物効果を生じさせることができる本質に帰因するか、または口腔内での特殊な臭いおよび/または特殊な香気を伝播する本質に帰因する。
【0024】
本発明による複合体粒子は、多孔質のSiO2、有利に無定形SiO2、よりいっそう有利には沈降シリカ、ヒュームドシリカ、ヒュームドシリカを基礎として製造されたシリカ、またはシリカゲル、またはこれらのハイブリッド形から構成されたキャリヤー材料を有する。殊に、欧州特許出願公開第1398301号明細書A2または欧州特許出願公開第1241135号明細書A1または欧州特許出願公開第1648824号明細書A1または欧州特許出願公開第0798348号明細書A1または欧州特許出願公開第0341383号明細書A1または欧州特許出願公開第0922671号明細書A1に記載の沈降シリカを使用することは、好ましい。それによって、前記刊行物の対象は、本明細書中に明らかに含まれる。
【0025】
更に、練り歯磨き配合物のための研磨剤成分または増粘成分として殊に開発された二酸化珪素を使用することは、特に好ましい。前記の二酸化珪素は、当該二酸化珪素が練り歯磨き配合物中に特に十分に配合されることができるという利点を有する。前記の二酸化珪素の例は、Evonik Degussa社からの販売名Sident(登録商標)またはRhodia Chimie社からの販売名Tixosil(登録商標)またはHuber社からの販売名Zeodent(登録商標)で公知のものである。練り歯磨き用の充填剤として使用するためのシリカゲルは、同様に長時間市場で入手可能であった。前記の二酸化珪素と同様に、キャリヤー材料として開発されたもの、例えばEvonik Degussa社からの種々のSipernats(登録商標)を使用することも可能である。特に有利には、Evonik Degussa社からのSident(登録商標)22Sおよび/またはSipernats(登録商標)50Sを使用することが記載される。
【0026】
同様に好ましくは、特にヒュームド二酸化珪素の噴霧乾燥された顆粒を使用することが可能である。特に好ましいのは、Evonik Degussa社によってAEROPERL(登録商標)の販売名で販売されたものであり;AEROPERL(登録商標) 300/30は、特に好ましい。ヒュームド二酸化珪素からのかかるAEROPERL(登録商標)製品の製造は、欧州特許第0725037号明細書中に記載されており、それによってこの欧州特許明細書の記載内容は、本発明の明細書中に明らかに採用されている。
【0027】
しかし、本発明により使用される二酸化珪素が3〜50μm、有利に4〜40μm、よりいっそう有利に5〜30μm、極めて有利に5〜25μm、殊に有利に6〜20μm、特に有利に6〜14μmの平均粒径d50を有することは、重要である。これは、適用の際に口内で生じた「砂のような」感覚が存在しないことを保証する。更に、前記の粒径は、粒子の内部中の細孔が長すぎず、こうして活性成分および外被物質の十分に急速な吸収を可能にすることを保証する。
【0028】
十分なキャリヤー能力を所有するために、本発明による二酸化珪素は、50〜550m2/g、有利に100〜500m2/g、よりいっそう有利に150〜500m2/gのBET表面積を有する。
【0029】
1つの好ましい実施態様において、本発明によるシリカは、200〜400g/100g、有利に250〜350g/100gのDBP数を有する。このDBP数は、二酸化珪素の分散度の基準である。更に、高すぎるDBP数は、練り歯磨きの過剰の増粘をまねく。
【0030】
同様に、練り歯磨き配合物中に使用される場合、本発明により使用される二酸化珪素は、1.43〜1.47、有利に1.44〜1.46、極めて有利に1.45〜1.46の屈折率を有する。屈折率は、練り歯磨き中の望ましくない混濁度を避けるために練り歯磨きの屈折率にできるだけ近くあるべきである。
【0031】
特に有利には、キャリヤー物質は、1つ以上の前記の物理化学的性質を組み合わせて有し、極めて有利には、全ての前記の物理化学的性質を組み合わせて有する。
【0032】
キャリヤー物質の最も重要な機能は、活性物質および外被物質を収容し、および運搬することである。この記載内容の目的は、最終配合物中でのミクロ粒子の高い機械的安定性および相応する分散度を達成させることである。
【0033】
使用されうる活性成分は、抗菌性および/または抗微生物性の性質を有するものである。この活性成分の例は、次の通りである:
ビスグアニド、ビスピリミジン、ピリミジン、ドミフェン、ベンズアルコニウムおよびベンズエトニウム、アルカロイド、重金属イオン、例えば亜鉛および銅、界面活性剤、例えばラウリルスルフェートおよびラウリルサルコシネートおよびデオキシコレート;トリクロサン、フェノール系化合物、例えばオイカリプトール、ヘキシルレソルシノール、メントール、メチルサリチレート、フェノール、2−フェニルフェノールおよびチモール;抗生物質、例えばエリスロマイシン、カナマイシン、メトロニダゾール、ニッダマイシン、スピラマイシンおよびテトラシクリン、酵素、例えばアミログリコシダーゼ、グルコースオキシダーゼおよびムタナーゼ、クロルヘキシジンの塩。
【0034】
更に、活性成分として、臭い物質、例えばメンソール、ペパーミント油、ゼラニウム油およびリモネン、または香気物質、例えばメンソール、ペパーミント油、ゲラニオールおよびリモネンを使用することが可能である。
【0035】
活性成分は、化学的に結合された形で存在することができ、かつ口内での活性化後にのみ発生および/または放出させることができるけれども、活性成分は、既に本発明による複合体粒子中に存在していてよい。この1つの例は、アルギン酸亜鉛を外被物質として使用することである。口内でのイオン交換によって、即ち唾液との接触によって、亜鉛イオンは、唾液中に存在する陽イオン、例えばナトリウムイオンまたはカリウムイオンまたはカルシウムイオンによって置換される。これは、アルギン酸亜鉛のゲル化を取り消し、こうして保護外被を溶解する効果を有するだけでなく、抗微生物性物質として作用する亜鉛イオンを放出する効果も有する。更に、例は、本明細書中の下記に記載されている。
【0036】
特に好ましいのは、有機溶剤または水中での20〜300g/lの溶解度、または200℃未満の融点を有する活性成分である。
【0037】
従って、本発明は、少なくとも1つの活性成分が吸収されているような複合体粒子を含むが、しかし、単数または複数の活性成分が化学的に結合した形で存在するも含み、および活性成分および化学的に結合した活性成分の双方が存在するものも含む。
【0038】
本発明による複合体粒子は、少なくとも1つの外被材料を有する。この外被材料の1つの効果は、活性成分の放出機構を制御することである。
【0039】
それ故に、崩壊され、したがって酵素反応によって溶解される外被材料を使用することが可能である。この外被材料の例は、口腔内に存在するα−アミラーゼによって分解される多糖類である。
【0040】
他の外被材料、例えばポリ電解質は、pH変化によって変化され、こうしてこのポリ電解質は、活性成分を放出するか、または溶解するかまたは活性成分に対して透過性になる。
【0041】
可能な外被材料の別の群は、溶解せず、その代わりに外被層を通じて活性成分を拡散させることができ、その結果、活性成分は、時間遅れを伴って口腔内に放出される。この外被材料の別の群の例は、ゲル化アルギン酸塩、ペクチン、アミロペクチン、グリコーゲン、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、ステアリン酸および他の脂肪酸、脂肪アルコール、ゼラチンおよびオイドラギッドである。
【0042】
第4の群を用いた場合には、イオン交換は、口腔内で、例えば唾液との接触後と同様に行なわれる。この1つの例は、アルギン酸亜鉛である。陽イオン、例えばナトリウムイオンまたはカルシウムイオンに対して亜鉛イオンの交換によって、アルギン酸塩のゲル化は、消滅され、亜鉛イオンは、放出される。前記の亜鉛イオン自体は、活性成分を構成する。
【0043】
他の選択可能な方法によれば、複合体粒子中に存在する他の活性成分は、ゲル被覆の溶解に引き続いて複合体粒子から逃出することもできる。更に、この場合には、例えば2つの活性成分またはそれ以上の活性成分は、同時に複合体粒子から放出させることができる。イオン交換によって活性化される外被物質の他の例は、ポリスチレンスルホネート、ゼオライトまたは合成樹脂である。この場合、例えば前記陽イオンおよび/または配合されたイオンを適当に選択することにより、活性物質を変化させることが可能である。
【0044】
最終的に、温度変化の結果として活性成分を放出し、および/または活性成分に対して透過性になる外被材料も含まれている。前記外被材料の例は、承認の限りでは、溶融可能な飽和脂肪酸、例えばカプリン酸またはラウリン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール;不飽和脂肪酸、例えばエライジン酸、低分子量のポリエチレングリコール、またはワックスである。
【0045】
特に好ましい外被材料は、水溶液からキャリヤー粒子に適用されることができるが、しかし、適用後に水中で低い溶解度を示す。これは、高い貯蔵安定性を可能にし、活性成分の望ましくない放出を極めて効果的に回避させる。更に、前記複合体の製造が簡単になる。前記外被材料の例は、ゲル化された多糖類である。
【0046】
特に好ましい外被材料は、アルギン酸亜鉛、アミラーゼまたはヒドロキシメチルプロピルセルロースである。
【0047】
既に上記に指摘したように、本発明は、キャリヤー材料および少なくとも1つの外被材料を有する複合体粒子を含み、この場合活性成分は、口腔内での活性化によって外被材料から放出される。しかし、複合体粒子がキャリヤー材料と、少なくとも1つの活性成分と、活性によって付加的な活性成分を放出する少なくとも1つの外被材料とを有する実施態様も含まれる。前記の場合には、活性成分は、同一でも異なっていてもよい。なお、別の実施態様の特徴は、複合体粒子がキャリヤー材料と、少なくとも1つの活性成分と、付加的な活性成分を放出しない少なくとも1つの外被材料とを有することである。上記の実施態様のハイブリッド形も同様に含まれる。従って、例えば、本発明による複合体粒子は、キャリヤー材料と、少なくとも1つの活性成分と、付加的な活性成分を活性化によって放出する少なくとも1つの外被材料と、付加的な活性成分を放出しない少なくとも1つの外被材料とを有することもできる。
【0048】
外被材料およびキャリヤー材料を選択することによって、放出機構を制御することができる。従って、例えばキャリヤー材料の選択は、活性成分を細孔から溶解することができる速度に影響を及ぼす。外被材料の選択は、同様に放出速度に影響を及ぼす。従って、例えば、活性化によって活性成分を放出する外被材料の最も外側の層、およびキャリヤーの細孔からのさらなる活性成分の拡散制御された放出を可能にする下側の層の2つの外被材料を選択した場合には、最上層の外被層から迅速に活性成分を放出し、その後に徐々に拡散によって細孔から活性成分を放出することができる。
【0049】
本発明による複合体粒子は、好ましくは、粘膜接着性の性質を有する少なくとも1つの外被材料を有するか、口内の粘液の膜中に存在する粘膜への粒子の取付けを増強するか、または可能にする少なくとも1つの外被材料を有する。これは、本発明による粒子が十分に長時間十分な量で口腔内に残留することを保証する。
【0050】
1つの他の選択可能な実施態様においては、粘膜接着性の性質を有する外被材料は、存在しない。しかし、低い粒径の結果として、この場合には、同様に本発明による複合体粒子自体は、当該複合体粒子が十分に長時間十分な量で口腔内に残留するように、歯牙と口腔内での小さな窪地および凹所との間に設けることができる。
【0051】
特に有利には、二酸化珪素キャリヤー材料を使用するだけでなく、化粧品分野、有利に食品分野および化粧品分野に対して許される外被材料も使用することが記載される。
【0052】
上記で識別された可能な組合せから、多数の可能な構造は、本発明による複合体粒子のために現れる。
【0053】
1つの好ましい実施態様において、当該の構造は、コアシェル構造と呼ばれ、場合によっては細孔内に引き抜かれた外被材料および/または活性成分がコアを形成し、このコアは、できるだけ完全に、少なくとも1つの外被材料(シェル)によって覆われる。
【0054】
第2の特に好ましい実施態様は、活性成分または活性成分および外被材料、または外被材料が、製品系の最も外側の原子層のXPS分析によって証明されたように、製品系の外側表面の少なくとも数%、有利に少なくとも10%、よりいっそう有利に少なくとも15%、極めて有利に少なくとも20%がキャリヤー材料によって形成されているように広範囲に多孔質のSiO2キャリヤーの細孔内に配置されるという事実に注目することができる。
【0055】
この実施態様において、本発明による複合体粒子は、機械的に極めて安定であるという利点を有する。更に、キャリヤーの細孔構造の制御ならびに活性成分の選択によって、活性成分の拡散により制御された放出を比較的に長時間調整することが可能である。
【0056】
更に、この第2の実施態様において、本発明による複合体粒子は、当該複合体粒子が例えば練り歯磨きのような経口衛生製品中に顕著に配合されてよいという利点を有する。本発明者らは、実際に練り歯磨きのための添加剤として開発され、その目的のために最適化されたキャリヤー材料を選択する場合に、本発明による複合体粒子を経口衛生製品中に特に有利に効果的に配合することができることを見出した。任意の特殊な理論に拘束されることなしに、本発明者らは、活性成分および外被物質が専らキャリヤーの細孔中に大部分存在し、および添加剤の外側表面の大部分がキャリヤー材料によって連続的に形成されることは、配合特性が例えば活性成分が全く存在していないか、または外被物質がキャリヤー中に全く存在しないかを意味するという視点を有している。これは、練り歯磨き配向物の他の成分とキャリヤー材料との間だけで本質的に起こる相互作用によって説明されることができる。
【0057】
外被物質は、大部分、換言すれば、そのつど使用される活性成分の量に基づいて、有利に少なくとも30質量%、よりいっそう有利に50質量%、極めて有利に70質量%の程度で、前記の活性成分で含浸されたキャリヤー材料のf)細孔中に留まる。特に有利には、この実施態様において、粒子の表面上には、活性成分は存在しない。それ故に、本発明による添加剤は、キャリヤー材料の細孔によりいっそう近接して位置した活性成分層の細孔内での形成とキャリヤー材料の外側表面に向かって位置した保護層の細孔内での形成とによって有利に区別される。それ故に、活性成分は、周囲からの影響から遮蔽される。それ故に、最も外側の原子層のXPS測定により、本発明による製品系の外側表面上に活性成分が存在しないか、または外側表面の最大10%、有利に最大5%、よりいっそう有利に最大1%が活性成分で被覆されることは、好ましい。これは、殊に特殊な用途にとって有利であり、この場合活性成分の分画は、何らの早期の望ましくない反応を開始させず、何らの望ましくない有害な効果をヒト、動物または植物に作用させない。
【0058】
これは、この第2の実施態様において特に良好な効果を保証することができる。
【0059】
保護系の作用モードに関連して、外被物質の上記記載のように、外被物質は、部分的に活性成分を備えた多孔質キャリヤーの細孔を封止するものと仮定することができる。前記細孔の封止の部分的な溶解または部分的な破壊に引き続いて、活性成分は、放出されることができる。単数の活性成分/複数の活性成分の保護系は、有利にこの保護系が上記に定義された機構の1つにより溶解し、それによって活性成分を放出することができるように形成される。しかし、また、本発明による添加剤は、保護系をマトリックスの形で有するのが有利であり、このマトリックスによって、活性成分は、拡散することができ、および/または水は、活性成分へのアクセスを達成することができる。
【0060】
保護系が大部分または全部キャリヤー材料の細孔中に留まるという事実の結果として、本発明による抗微生物性複合体は、外見的には乾燥粉末、有利に易流動性の粉末である。これは、DIN 53492の漏斗を用いて測定されたような製品の易流動性(下記の測定法の記載も参照)が1〜4、有利に1〜3、よりいっそう有利に1〜2の値、極めて有利に1の値を有することを意味する。結果として、本発明による添加剤は、特に良好な加工特性および輸送特性を有する。
【0061】
本発明による複合体粒子がコアシェル構造を有するかまたは第2の実施態様により構成されるかの如何を問わず、保護系と活性成分との質量比が10:1〜1:10の範囲内にあるならば有利であることが証明された。この理想的な比は、活性成分およびキャリヤー材料、ならびに外被物質の化学的性質および物理化学的性質に依存し、簡単な一連の試験によりそれぞれの材料の組合せのために定めることができる。キャリヤー材料のよりいっそう高い充填量は、十分な保護物質をもはや細孔中に導入することができないことを意味する。低すぎる充填量は、経済的に合理的ではない。特に有利には、保護系と活性成分との質量比は、10:1〜1:10の範囲内、極めて有利に5:1〜1:5の範囲内、特に有利に2:1〜1:3の範囲内にある。
【0062】
質量比と同様に、材料の組合せに依存して、DBP吸収量と吸収された活性成分の量との定義された割合を観察することは、有利である。任意の特殊な理論に拘束されることなしに、本発明者らは、DBP、吸収すべき活性成分、および保護物質がしばしばキャリヤー材料の細孔中に同じ空間占有率を有し、ならびに同じ寸法の細孔に強い影響を及ぼすという視点を有している。従って、この割合は、どの位の数の空間が外被材料にアクセス可能である細孔中になお存在し、それ故に、十分な量の活性成分、ならびに保護物質が細孔中に導入されうることを保証することができるのかという情報を提供する。それ故に、多孔質キャリヤーの活性成分の充填量が多孔質キャリヤーのDBP吸収量に対して少なくとも10質量%〜90質量%、有利に10質量%〜80質量%、よりいっそう有利に20質量%〜70質量%、極めて有利に30質量%〜60質量%であることは、有利であることが証明された。1つの特殊な実施態様において、多孔質キャリヤーの活性成分の充填量は、多孔質キャリヤーのDBP吸収量に対して1質量%〜9質量%である。
【0063】
既に説明したように、第2の実施態様において、保護物質の最大量がキャリヤー材料の細孔内に存在し、およびキャリヤー材料の表面上で吸収されないことは、本発明による複合体粒子の1つの本質的な特徴である。こうして、例えば研磨によって損傷を受ける保護系を予防し、比活性化させることが可能である。同じ理由から、キャリヤー材料のDBP吸収量に関連して保護物質の吸収された量を規定することは、有利であることが証明された。多孔質キャリヤーの外被物質の充填量が多孔質キャリヤーのDBP吸収量に対して少なくとも10質量%〜90質量%、有利に10質量%〜80質量%、よりいっそう有利に20質量%〜70質量%、極めて有利に20質量%〜50質量%であることは、特に有利であることが証明された。更に、前記充填量が低すぎる場合には、キャリヤー材料の細孔構造に依存して、保護系の効果が劣化する可能性がある。前記目的は、活性成分の最大量および保護物質の最小量を含むことができるので、高すぎる量の保護系は、目標とされた不活性化のために不利な結果を生じる可能性があり、および/または経済的に効果的ではない。
【0064】
本発明による複合体粒子がコアシェル構造を有するかまたは第2の実施態様に応じて構成されているかどうかとは無関係に、前記複合体粒子は、1つ以上の活性成分を有することができ、活性成分は、均一な混合物として、または層の形で多孔質キャリヤー内に存在することができる。層の形の変法の場合には、活性成分の性質および組成の点で異なることができる、2つ、3つまたはそれ以上の層が存在していてよい。
【0065】
本発明による複合体粒子は、少なくとも1つの多孔質の無定形二酸化珪素を少なくとも1つの外被物質、または少なくとも1つの活性成分および少なくとも1つの外被物質と接触させることによって製造されることができる。
【0066】
本発明による複合体粒子が活性成分を有する場合には、その適用は、次のように行なうことができる:
液状の活性成分の場合には、活性成分は、直接にキャリヤー材料中に取り込むことができる。この目的のために、キャリヤー材料は、適当な混合装置中に置くことができ、活性成分は、計量供給、滴下、噴霧等によって添加されることができる。相応する技術は、当業者に公知である。
【0067】
非液状の活性成分の場合には、この活性成分は、分散媒体中に分散させることができるか、または溶剤中に溶解させることができる。更に、キャリヤー材料は、例えば浸漬によって溶液または分散液と接触されるか、または溶液または分散液は、噴霧され、それ故に、活性成分は、溶剤または分散媒体と一緒にキャリヤーの細孔内に取り込まれる。その後に、溶剤または分散媒体は、例えば蒸発によって除去される。
【0068】
本発明による方法の1つの変法において、活性成分それ自体は、実際にキャリヤー材料内で製造される。これは、活性成分の1つ以上の前駆体をキャリヤー材料中に取り込ませ、次に活性成分を化学反応または物理的暴露によって発生させることによって行われうる。物理的暴露は、例えば高い温度での熱処理であることができる(か焼)。
【0069】
キャリヤー内での活性成分の化学的合成の1つの例は、キャリヤーにアルギン酸ナトリウムを充填し、その後にZnCl溶液を充填し、こうしてキャリヤーの細孔中に活性物質としてのアルギン酸亜鉛を形成させることである。
【0070】
非液状の活性成分をキャリヤー材料中へ吸収させる別の方法は、活性成分を溶融させることであり、したがって、キャリヤー材料は、溶融された活性成分を取り込む。しかし、この方法は、分解なしに溶融させることができる活性成分に対してのみ作業することができる。
【0071】
既に述べたように、本発明による複合体粒子は、外側表面上に何らの活性成分も有しないのが特に好ましい。外側表面とは、キャリヤー粒子の内部に細孔または他の空隙によって形成されていない表面を意味する。これは、活性成分が溶解する溶剤で充填された粒子を洗浄することによって達成されうる。洗浄操作は、実質的に粒子の表面に付着する活性成分だけが迅速に十分に洗浄除去され、細孔中に取り込まれた活性成分は洗浄除去されないように制御されなければならない。細孔からの活性成分の放出は、拡散制御され、即ち遅い処理によって制御され、僅かな活性成分だけが急速洗浄で細孔から浸出される。他の選択可能な方法によれば、キャリヤー粒子の表面に付着する活性成分は、抑制されてもよい。これは、例えば適当な薬剤との化学反応によって行われることができる。
【0072】
上記に定義された活性成分は、本発明による方法に使用されることができる。本発明による複合体粒子は、少なくとも1つの外被材料を有し、この場合単数の外被材料/複数の外被材料は、
I)場合によっては活性成分の充填量を有するキャリヤー上のシェルまたは多重層シェルとして適用されるか、または
II)部分的に細孔中に適用され、および場合によっては活性成分の充填量を有するキャリヤー上のシェルまたは多重層シェルとして部分的に適用されるか、または
III)実質的にキャリヤーの細孔中に含まれ、この細孔は、場合によっては製品系の最も外側の原子層のXPS分析によって証明されたように、少なくとも幾つかの、有利に10%、よりいっそう有利に少なくとも15%、極めて有利に少なくとも20%の、複合体粒子の外側表面がキャリヤー材料によって形成される方法で活性成分の充填量を有する。
【0073】
I)およびII)の場合、単数または複数の活性成分の充填量は、何れにせよ上記の記載と同様に製造される。方法I)の場合、細孔は、単数または複数の活性成分で完全に充填されることができ;方法II)の場合には、細孔の少なくとも幾つかの容積は、外被材料のために空いたままである。
【0074】
化学的に結合された活性成分を有する外被材料、即ち口腔内での活性化に引き続いて活性成分を放出することができる外被材料が使用される場合には、さらなる活性成分での先行する充填は、不要である。この場合、細孔は、完全に外被材料で充填され、こうして充填されたキャリヤー粒子は、同じ外被材料のシェルまたは異なる外被材料で覆われる。
【0075】
変法I)およびII)において、単数の外被材料/複数の外被材料は、有利に粒子が大部分完全に、有利には完全に外被材料でカプセル化されるように適用される。これは、例えば次のようにして達成されることができる:
a)少なくとも1つのキャリヤー材料を固体混合ユニット中に装入し、
b)場合によってはこの固体混合ユニットを排気し、
c)場合によってはキャリヤー材料を少なくとも1つの外被材料で吸収値(DBP数に相応する)の最大50質量%まで予め含浸し、
d)場合によっては少なくとも1つの活性成分を固体混合ユニット中に添加し、
e)場合によってはキャリヤーを活性成分で含浸し、
f)場合によってはキャリヤー材料の外側粒子面に付着する活性成分を抑制し、および/または洗浄しおよび/または乾燥し、
g)少なくとも1つの外被材料を添加し、
h)キャリヤーを少なくとも1つの外被材料で、この材料がもはや粒子によって吸収されえず、および粉末の流動性に変化が生じるまで含浸し、
i)場合によっては洗浄しおよび/または乾燥し、
j)場合によってはキャリヤー材料の外側粒子面に付着する活性成分を反応により抑制し、および/または洗浄しおよび/または乾燥する。
【0076】
方法III)の場合、本発明による方法は、有利に次の工程を有する:
a)少なくとも1つのキャリヤー材料を固体混合ユニット中に装入し、
b)場合によってはこの固体混合ユニットを排気し、
c)場合によってはキャリヤー材料を少なくとも1つの外被材料で吸収値(DBP数に相応する)の最大50質量%まで予め含浸し、
d)場合によっては少なくとも1つの活性成分を固体混合ユニット中に添加し、
e)場合によってはキャリヤーを活性成分で含浸し、
f)場合によってはキャリヤー材料の外側粒子面に付着する活性成分を抑制し、および/または洗浄しおよび/または乾燥し、
g)少なくとも1つの外被材料を添加し、
h)キャリヤーを少なくとも1つの外被材料で含浸し、
i)場合によっては洗浄しおよび/または乾燥し、
j)場合によってはキャリヤー材料の外側粒子面に付着する活性成分を反応により抑制し、および/または洗浄しおよび/または乾燥する。
【0077】
工程a)で使用することができる固体混合ユニットの例は、次のものを含む:混練機、パドル乾燥機、タンブルミキサー、垂直型ミキサー、パドルミキサー、シュギ(Schugi)ミキサー、セメントミキサー、ゲリケ(Gericke)連続型ミキサー、アイリッヒ(Eirich)ミキサーおよび/またはシロミキサー(Silomixers)を含む。混合ユニット中の温度は、保護系および活性成分に依存して、有利に5℃〜250℃である。
【0078】
工程b)は、場合によるものであり、即ち必ずしも実施することは不要である。しかし、キャリヤー材料の添加に引き続いて固体混合ユニットを排気した場合には、キャリヤー材料の細孔を排気し、細孔内に含まれているガスまたは空気を抽出し、それによって単数の活性成分または複数の活性成分および単数の外被材料または複数の外被材料のよりいっそう完全な充填を達成させることができる。
【0079】
工程c)は、場合によるものであり、キャリヤー材料の存在する細孔構造に依存して実施される。本発明による保護系の効率のためには、細孔は、できるだけ完全に外被材料で外見的に封止されることが必要であり、したがって活性成分は、溶剤との接触から保護される。多孔質キャリヤー材料の大部分において、細孔は、多少とも完全な系中で互いに通じ合っている。結果として、キャリヤー材料の内部の狭い細孔は、活性成分も保護物質も例えば粘度のために浸透させることができないが、活性成分が浸透した細孔と通じ合うことが可能である。こうして、活性成分は、この活性成分が取り込まれた有効な細孔から溶解除去することはできないけれども、それにも拘わらずよりいっそう小さな「二次細孔」によってキャリヤーの内部で溶剤との接触を生じ、それ故にそれにも拘わらず或る程度溶解除去されることができる。キャリヤー材料を外被材料で予め含浸させた場合には、活性成分が吸収される前にこの手段によって「側方通路」が密封されうるので、このような望ましくない効果を回避させることができる。特に好ましい実施態様において、保護物質は、溶液の形で導入されるかまたは融液として導入される。
【0080】
場合によっては、工程d)において、即ち複合体粒子が外被材料から放出されたものではない少なくとも1つの活性成分を含有する場合には、活性成分、または2つ以上の活性成分は、固体混合ユニットに添加される。2つ以上の活性成分が添加されるべき場合には、前記活性成分は、同時にかまたは連続的に添加されることができる。
【0081】
前記活性成分が液状である場合には、該活性成分は、直接にかまたは融液として添加されることができるか、さもなければ溶液として、または分散液または懸濁液の形で添加されることができる。使用されることができる活性成分は、上記に詳細に記載された、全ての活性成分である。
【0082】
場合によっては、工程e)において、即ち複合体粒子が外被材料から放出されたものではない少なくとも1つの活性成分を含有する場合には、単数の活性成分/複数の活性成分は、キャリヤー材料中/キャリヤー材料上および/または予め含浸されたキャリヤー材料中/予め含浸されたキャリヤー材料上に導入される。この場合、混合時間/配合時間は、例えば、細孔中への活性成分の最大の浸透、または完全な付着を保証するために形成される。活性成分での含浸は、DIN 53492により漏斗で測定されたような製品の易流動性(下記の測定法の記載も参照)が1〜4、有利に1〜3、よりいっそう有利に1〜2の値、極めて有利に1の値を有する場合の1つの目的である。1つの特に好ましい実施態様において、活性成分は、溶剤中に溶解され、この溶液は、支持体中/支持体上にもたらされ、生じる生成物は、溶剤を除去するために乾燥される。
【0083】
変法Iにおいて、粒子は、大部分が完全に、有利に完全に外被材料で覆われるので、細孔は、活性成分で完全に充填されることができる。
【0084】
本発明の1つの特殊な変法III)において、活性成分ならびに保護系は、大部分が、または全体がキャリヤー材料の細孔中に埋封され、こうしてキャリヤー材料の外側表面の部分は、露出される。この場合、細孔は、完全には活性成分で充填されることができない。
【0085】
工程e)での含浸中、即ち細孔中への活性成分の取り込み中に、一般にキャリヤーの外側表面への少なくとも幾つかの活性成分分子の付着を阻止することは不可能であるので、活性成分が実際に細孔中にだけ存在することを保証するために、前記活性成分分子f)を場合による工程f)で阻止するか、または前記活性成分分子f)をキャリヤーの外側表面から洗浄によって賢明なことである。前記表面上に存在する活性成分は、前記阻止の場合に、相応する反応体により反応され、非反応性の物質を形成する。活性成分は、洗浄の場合に、適当な溶剤により洗浄除去される。
【0086】
活性成分に依存して、2回以上の洗浄操作は、必要である。単数の活性成分/複数の活性成分が溶液または懸濁液の形で添加された場合、溶剤は、有利に保護物質が添加される前に、有利に排気または焼付けにより除去される。
【0087】
工程g)において、外被材料、または2つ以上の外被材料は、固体混合ユニットに添加される。2つ以上の外被材料が添加されるべき場合には、前記外被材料は、同時にかまたは連続的に添加されることができる。前記外被材料が液状である場合には、該外被材料は、直接にかまたは融液として添加されることができるか、さもなければ溶液として、または分散液または懸濁液の形で添加されることができる。特に好ましい実施態様において、外被材料は、溶液の形で導入されるかまたは融液として導入される。
【0088】
変法I)およびII)において、添加された外被材料の量および混合時間は、粒子が大部分完全に、有利に完全に外被材料で覆われること、即ちコアシェル構造が形成されることを保証するのに十分である。
【0089】
外被材料が大部分細孔中に位置している変法III)において、工程h)では、キャリヤー粒子の表面からキャリヤー粒子のコアに導かれている細孔が細孔間の通路によって互いに通じているので、細孔は、できるだけ完全に充填されることが保証されなければならず、この場合この通路は、溶剤を転送し、したがって活性成分の放出を生じることができる。単数の外被材料/複数の外被材料は、溶液または懸濁液の形で添加されたので、溶剤を排気または焼付けによって除去することは、好ましい。
【0090】
過剰の外被材料を除去するために、殊に変法c)では、必要に応じて、洗浄工程およびその後の乾燥は、工程i)で行なうことができる。
【0091】
活性成分および保護系に依存して、キャリヤーの外側表面への活性成分の付着の阻止および/または洗浄除去の代わりに、工程f)において、前記阻止を実施しおよび/または保護層の適用に引き続いて、即ち工程j)で洗浄操作を実施することは、賢明である。一般に、工程g)では細孔が外被材料によって封止され、したがって工程j)でのみ外側表面に付着する活性成分分子が除去されるので、工程f)よりも工程j)で洗浄および/または阻止を実施することは、よりいっそう効果的であろう。また、洗浄および/または阻止を工程f)および工程j)の双方で実施することができる。また、洗浄および/または阻止を工程f)および工程j)で実施することができる。
【0092】
特殊な場合には、工程b)〜e)および/またはg)〜h)は、繰り返し実施され、工程d)およびe)および/またはg)およびh)の場合には、同一かまたは異なる活性材料および/または外被材料をそれぞれの場合に使用することができる。更に、外被材料および/または活性成分を工程c)、d)、e)、g)およびh)で選択し、ならびに活性成分および/または外被材料が常に液状のままであり、粒子の表面上で乾燥しないかまたは晶出しないような混合条件を選択することは、有利である。
【0093】
本発明による方法の1つの特殊な実施態様において、工程d)は、工程a)の後に実施されるのではなく、むしろ工程a)の前に実施され、即ちキャリヤー材料と単数の活性成分/複数の活性成分とは、固体混合ユニット中への導入前に混合される。この場合の特殊な利点は、キャリヤー粒子中での活性成分の分布の均一性である。これは、その後に全ての粒子を保護系と一緒に均一に充填することができるようにするために、高い活性成分充填量の場合には極めて重要である。
【0094】
原理的には、工程c)と工程d)とを同時に実施し、少なくとも1つの活性成分と少なくとも1つの保護物質との混合物を添加することも可能である。これは、保護物質が活性成分よりも小さな細孔中に浸透することができ、それ故に保護物質と活性成分の導入が同時であっても、上記の効果、即ち側方の細孔の「封止」を行なうことができる場合に特に賢明であることができる。
【0095】
本発明による複合体粒子の予想される最高の機能性の最適な保証を備えさせるために、特に機械的な安定性は、一面でキャリヤー表面上に活性成分が存在せず、他面、キャリヤーの外側表面上に存在する保護的物質ができるだけ存在しないことの保証を考慮すべきである。双方の成分は、理想的にはキャリヤー材料の細孔中に完全に取り込まれるべきである。これが達成されるためには、工程g)で添加された単数の外被物質/複数の外被物質の量は、変法III)において、製品系の製造中に添加された、単数の活性成分/複数の活性成分および単数の外被物質/複数の外被物質の全体量がキャリヤー材料のDBP吸収値(DIN 53601による)の50%〜100%に相当するように調整されるべきである。
【0096】
しかし、他の選択可能な方法によれば、生産の操作は、細孔容積によって制御されてもよく;この場合、好ましくは、工程g)で添加される単数の保護物質/複数の保護物質の量は、単数の活性成分/複数の活性成分および単数の外被物質/複数の外被物質の全体量がキャリヤー材料の全細孔容積よりも大きく、過剰量の単数の外被物質/複数の外被物質がキャリヤー材料および/または単数の活性成分/複数の活性成分で充填されたキャリヤー材料の添加によって吸収されるように調整される。
【0097】
本発明における混合強度および計量供給は、変法III)において適用法の目的での易流動性が保証され、即ち全て時点でミキサー中に易流動性の粉末が存在するように互いに調和されるべきである。これは、保護物質および/または活性成分が細孔中に十分に取り込まれ、キャリヤーの外側表面に付着しないことの保証を可能にする。計量供給が極度に急速に行なわれるか、または混合が極度に遅速に行なわれるならば、粒子の充填は、均一性を欠く可能性があり、最終的にこれは、活性成分で完全に充填された幾つかの粒子の細孔を生じ、もはや保護物質が浸透する可能性はない。この方法の詳細は、ドイツ連邦共和国特許第102008000290号明細書中に見出すことができる。これによって、このドイツ連邦共和国特許明細書の記載内容は、明らかに本明細書の記載内容に採用されている。変法IおよびIIにおいて、よりいっそう大量の外被物質を添加することができ、および/または外被物質をさらに長時間添加することができ、したがって、コアシェル構造が形成されることが保証され、この場合このような構造の形成は、恐らく、例えば混合物の流動挙動の変化から明らかである。
【0098】
大量の活性物質が急速にキャリヤー材料に添加される常用の方法は、細孔中にガス介在物が存在する可能性があり、即ち細孔が所望のようには活性成分で充填されずに、むしろガスで充填されるという欠点を有する。
【0099】
また、ミキシングアセンブリの選択に関連して、攪拌要素、例えばH60リコーディングエクストルーダー中のIKA Duplex混合要素またはSomakon MPは、剪断応力が極めて僅か生じるかまたは摩耗が全く生じないように選択されることが保証されることに注意を払うべきである。粒子状の摩耗試験は、粒径分布を測定することによって実施される。この目的のために、その後に使用される混合ユニットにおいて、キャリヤー材料は、導入され、混合操作は、その後の方法に応じて開始される。定義された混合時間後、試料は、取り出され、試料の粒径分布が確認される。粒径分布において、初期試料のd50値からの偏差は、5%以下であるべきである。例えば、混合前の粒径分布の結果は、次の通りである:
平均粒径d50=23.72μm、
および混合後の粒径分布の結果は、次の通りである:
平均粒径d50=22.74μm、さらにこの条件は、適合される。
【0100】
それぞれ変法I〜III)において、幾つかの外被材料にとって、外被材料の硬化のためにゲル化工程を実施することは、必要である。従って、例えば外被材料は、多糖類であることができ、この多糖類は、適用後にZn2+またはCa2+の添加によってゲル化される。
【0101】
この技術は、原理的に公知であり、それ故に、当業者であれば、上記方法を適当に変更するかまたは補足することが可能である。
【0102】
本発明による複合体粒子は、口腔衛生製品、例えば練り歯磨き、口内洗浄剤および口内スプレーの製造に使用されることができる。前記の口腔衛生製品は、一般に本発明による複合体粒子を5質量%〜15質量%含有する。
【0103】
測定法
表面組成物のXPS分析
記載された複合体粒子の重要な特性は、シリカ粒子表面の保守にある。活性成分および外被物質は、細孔系中にだけに位置し、こうして粒子表面は、連続的にSiO2基から構成されている。この特徴は、前記複合体粒子の使用によって、元来の処理特性および種々の被覆配合物との適合性が影響を受けないままであるために重要である。純粋で清潔な粒子表面は、X線によって誘発される光電子分光法(XPS)により検出される。これは、元素状組成物の表面感知による検出を可能にし、ならびに結合条件の分析を可能にする。
【0104】
測定原理
前記材料の1つの表面は、超高真空条件下で軟X線照射により衝撃を受ける(例えば、MgKα、AlKα)。これは、光電子と呼ばれるものを除外し、前記材料の表面を離れた後の前記光電子の動的エネルギーは、電子分光計を用いて分析される(図1)。
【0105】
測定される試料が前記分光計と導電的に接触している金属試料である場合には、除去される光電子の動的エネルギーは、次のように:
kin=hν − EB − Φsp'
【0106】
即ち、照射されたX線のエネルギー(hν)引く結合エネルギー(Ee)引く分光計の仕事関数(Φsp')です。非導電性の材料の場合には、貢献も考慮に入れられる。従って、励起エネルギーと測定された動的エネルギーとの前記関係から、試料原子に対する電子の結合エネルギーを測定することができる。このエネルギーは、前記元素の化学的結合状態に直接に依存する。従って、例えばキャリヤー上の金属白金に関連して、測定された値は、2価白金または4価白金から区別される。硫酸塩の硫黄は、硫化物の硫黄またはサルファン(sulphane)の硫黄とは異なる値を生じ、PMMAは、ポリカーボネート、ポリオキシメチレンまたはテフロンとは異なる酸素および炭素の信号を生じる。
【0107】
XPS結果の古典的な例は、図2に記載されている。エチルトリフルオロアセテート中の炭素の異なる結合状態がC信号の化学シフトを基礎にして同定されうることは、明らかである。従って、XPS信号の「化学シフト」から、互いに異なるように結合された原子を微分することは、可能であり、その結果として、本発明による口腔衛生添加剤の表面上でキャリヤーおよび/または活性成分および/または保護物質原子の分画の大きさを測定することができる。互いに異なるように結合された原子を微分することができる可能性に関連して、K. Siegbahnは、化学的情報が供給されるので、前記測定技術(化学分析のための電子分光分析法)のために「ESCA」という名称を作った。
【0108】
XPSスペクトルは、材料の原子の最上層の領域内での濃度で存在する元素の測定を可能にし、XPS信号の「化学シフト」は、XPS信号が存在する化学結合状態の測定を可能にする。
【0109】
EDPにより補助された評価法により、この化学結合状態を高い再現可能性をもって定量化することができる。この記載内容で測定された値は、典型的には面積百分率での数値に相当する。
【0110】
分析の浸透深さは、原子の最上層に限定されているけれども、面積分析の概要を用いて、例えば0.5cm2の面積を一体で捕捉することができる。こうして、存在する任意のミクロの不均等性は、平均にされる。
【0111】
前記電子の平均自由行程の長さは、まさに二、三の原子層であるので、試料から放出された光電子の測定は、XPS/ESCA技術の場合と同様に、専ら原子の最上層の領域を検出する。イオン化法によって深部層中で放出される電子は、もはや表面に到達することができず、それ故に試料を留めることが不可能である。その結果、軟X線照射を用いて、結果として除去される低エネルギーの光電子を測定するXPS技術は、自動的に表面特異的であり、材料の表面特性に対してピント調節される。
【0112】
更に、XPSの利点は、水素およびヘリウムから離れて、軽い元素、例えばB、C、NおよびOであっても量的に検出させることができ、前記元素の化学結合状態を直接に観察させることができることにある。
【0113】
図3は、XPS法の機能を一般的に証明するように、請求項15の記載により本発明による方法によって2−Miの20質量%で充填されたSipernat(登録商標)のXPS総括スペクトルを示す。表面の部分がSiO2によって形成され、および2−Mi(これは、本発明による活性成分ではないが、その代わりにXPS法を説明する目的のための唯一の証拠物質である)によって形成されることは、明らかに判断することができる。背景の減法および元素の相対感度ファクターの使用によって、標準法は、前記データから表面組成に関連する量的情報を測定するために使用することができる。
【0114】
XPS測定のための方法
XPS測定は、それぞれ0.5cm2の積分検出を用いて粉末床上で実施される。試料の汚染および人為産物の測定を回避させるために、試料は、金で被覆された、超純粋なタンタル試料容器(α、99,98%、厚さ約0.25mm、寸法約1.5〜2cm)中に、試料のケーキング、べたつきまたは締め固めが存在しないように置かれる。試料の量は、ホルダーの大部分が充填され、少なくとも0.5cm2の面積を測定することができるように選択される。更に、それぞれの試料は、XPS分光計(Leybold LHS 12またはLeybold MAX 100 XPSシステム)の予備チャンバに輸送され、このチャンバは、室温で約2時間、10-8ミリバールに排気される。その後、分析中の試料は、XPS分光計の主要チャンバ中に輸送され、排気は、予想される炭化水素汚染または相互汚染によって引き起こされる汚染物および人為産物の測定を回避させるために4×10-10に増大される。XPS分光計の測定チャンバ中での排気および残留ガスの純度は、残留ガス質量分光計(Quadrex 200, Inficon)により連続的に監視される。
【0115】
XPS測定は、ESCA法によってMgKα照射を用いて150Wのエネルギーで実施される。電子エネルギー検光子は(Leybold EA200)、「固定アナライザートランスミッション」(FAT)モードで72eVの通過エネルギーで操作される。分光計の結合エネルギースケールに使用される基準は、84eVでNational Physical Laboratory(NPL、Teddington、UK)からのSCAA83標準のAu47/2であり、これは、分析中に試料の測定前および測定後に測定される。分析中での試料の静電荷は、試料ホルダーの付近に取り付けられた、制御されたインカンデッセンスの電子源の低いエネルギー電子によって補償される。更に、この放出源は、分析中の試料への直接の熱伝達を回避させるために遮蔽され、および熱絶縁されている。
【0116】
評価は、DIN技術報告書39の一般的な推奨規格およびNational Physical Laboratory Report DMAA(A)97, Teddington, UK, 1987年1月、および「表面およびミクロ領域の分析」NMP816(DIN)に対する労働委員会の現行の認識により実施される。1組のDS 100データは、標準法によりXPSデータを評価するために利用される(X線サテライトおよび背景の減算、ならびにそれぞれ指摘された電子レベルに対して使用される(および分光計のデータシステムに記憶された)分光計のための相対感度ファクターを考慮して)。全ての数値は、面積百分率で記載される。
【0117】
キャリヤー材料の物理化学的性質の分析
DBP数の測定
多孔質キャリヤー材料の吸収度のための尺度であるDBP吸収(DBP数)は、規格DIN53601に基づき、以下のようにして測定される:
0%〜10%の含水量を有する粉末状または球状のキャリヤー材料12.50g(湿分含量は、必要に応じて、乾燥キャビネット中で105℃での乾燥によって調節される)は、ブラベンダー社製の吸収測定器"E"の混練チャンバ(商品番号279061)に導入される(トルクセンサの出力フィルタの減衰なし)。顆粒の場合に、3.15〜1mmの篩分画(Retsch社のステンレス鋼篩)が使用される(顆粒を、3.15mmの細孔幅を有する篩を通じてプラスチックへらで適度に加圧することによる)。絶え間なく混合しつつ(混練羽根の回転速度125回転/分)、室温で、Brabender社製のT 90/50 Dosiomatを用いてジブチルフタレートは、4ml/分の速度で混合物に滴加される。DBPの混和は、少ない所要力のみで行われ、デジタル表示器により監視される。測定の終わりに向かって、混合物はペースト状となり、これは所要力の急激な上昇によって表示される。前記表示器が600ディジット(0.6Nmのトルク)を示す場合に、電気接点によって混練機もDBP供給装置もスイッチを切る。DBP供給装置のための同期モータは、デジタル計数器と接続されているので、DBPの消費量をmlで読み取ることができる。
【0118】
DBP吸収量は、少数位をもたない単位[g/(100g)]で示され、以下の式を用いて計算される:
【数1】

【0119】
上記式中、DBPは、g/(100g)でのDBP吸収量であり、
Vは、mlでのDBPの消費量であり、
Dは、g/mlでのDBPの密度であり(20℃で1.047g/ml)、
Eは、gでのシリカの初期質量であり、
Cは、g/(100g)での湿分補正表からの補正値である。
【0120】
DBP吸収量は、無水の乾燥されたキャリヤー材料のために定義されている。湿潤キャリヤー材料、殊に沈降シリカまたはシリカゲルが使用される場合には、DBP吸収量の計算のために補正値Cを計算に入れることが必要である。この値は、以下の補正表から確認することができ、例えば5.8%のキャリヤー材料中の含水量は、DBP吸収のために33g/(100g)の上乗せを意味する。キャリヤー材料の湿分含量は、「湿分含量または乾燥時の損失の測定」のための下記した方法により測定される。
【0121】
【表1】

【0122】
湿分含量または乾燥時の損失の測定
キャリヤー材料の湿分含量または乾燥時の損失(LoD)は、105℃で2時間の乾燥後にISO 787−2に基づく方法で測定される。この乾燥時の損失は、大部分が水分から構成されている。
【0123】
方法
粉末、ビーズまたは顆粒の形のキャリヤー材料10gを0,1mgの精度(初期質量E)ですりガラス蓋を有する乾燥ガラス秤量皿(dry glass weighing boat)(直径8cm、高さ3cm)中に計量供給する。蓋を開き、試料を乾燥炉中で105±2℃で2時間乾燥させる。その後に、前記秤量皿を閉じ、乾燥剤としてのシリカゲルを有する乾燥器中で室温に冷却する。
【0124】
前記秤量皿/ガラスビーカーを最終質量Aを測定するために精密てんびん上で0.1mgの精度になるように計量する。百分率での湿分含量(LoD)は、
LoD=(1−A/E)*100
により測定され、この場合、Aは、gでの最終質量であり、Eは、gでの初期質量である。
【0125】
平均粒径d50
本発明による製品系の粒子分布は、レーザ回折計(Horiba, LA-920)でのレーザ回折の原理により測定される。粉末の粒径は、粉末を水中で攪拌することにより、SiO21質量%の質量分画を有する分散液を製造することによって測定される。
【0126】
分散操作の直後に、分散液の試料の粒径分布は、レーザ回折計(Horiba LA-920)を用いて測定される。測定のために選択すべき相対屈折率は、1.09である。
【0127】
全ての測定は、室温で行なわれる。粒径分布ならびに関連変数、例えば平均粒径d50は、機器によって自動的に計算され、グラフとして表示される。操作命令における指示には、注意すべきである。
【0128】
BET表面積の測定
ほぼ球状の粒子を含有する、粉末の形、または顆粒のシリカの窒素比表面積(以下にBET表面積と呼称する)は、ISO5794−1/アネックスDに基づき、TRISTAR3000測定器(Micromeritics社)を用いてDIN ISO9277による多点測定による方法で測定される。
【0129】
全細孔容積の測定
全細孔容積は、水銀多孔度測定法により測定される。この方法は、Micromeritics社のAutopore IV 9500測定器を用いてDIN 66133のHg貫入(480mN/mの表面張力および140゜の接触角度)に基づくものである。
【0130】
測定前に、シリカは、圧力処理に掛けられる。これは、手動による液圧プレス(Specac Lyd.社, River House, 97 Cray Avenue, Orpington, Kent BR5 4HE, UK、からの注文No.15011)を用いて実施される。シリカ250mgをSpecac Ltd.社の13mmの内径を有するペレットダイ中に計量供給し、表示に従って1tが負荷される。この負荷は、5秒間維持され、必要に応じて再調整される。その後に、この試料は、圧縮され、強制空気乾燥キャビネット中で105±2℃で4時間乾燥される。
【0131】
シリカは、0.001gの精度でタイプ10の硬度計中に計量供給され、測定の効果的な再現のために、初期質量は、「使用されるステム容積(stem volume used)」、換言すれば硬度計を充填するために消費されるHgの百分率での容積が20%〜40%であるように選択される。その後に、硬度計は、徐々に50μm Hgに排気され、その圧力で5分間、放置される。
【0132】
この自動細孔測定器は、ソフトウェア バージョンIV1.05での操作命令により操作される。それぞれの測定値は、硬度計の空試験測定によって補正される。測定範囲は、0.0042〜414MPaである。
【0133】
易流動性の測定
易流動性は、異なる流出量の直径を有するガラス製の流動容器を用いて評価される。評価は、1〜7の範囲(第2表参照)を用いて行なわれる。報告された数値は、測定容器から粉末が停止なしに依然としてまさに流れる数値である。
【0134】
【表2】

【0135】
次の実施例は、本発明を詳説するために役立つが、しかし、何れにせよ、これに制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】X線光電子分光測定法XPS/ESCAの原子を示す略図。
【図2】トリフルオロ酢酸についてのXPS/ESCAスペクトルを示す略図。
【図3】本発明による方法によって製造された、2−Mi 20質量%で充填されたSipernat(登録商標)のXPS総括スペクトルを示す略図。
【図4】CaCl2溶液またはNaCl溶液中のアルギン酸亜鉛からの亜鉛のイオン交換により開始された放出の時間プロフィールを示す略図であり、この場合24時間後あっても、活性成分は、なお放出され、それ故に、長時間の効果が保証されていることを確認することができる。
【図5】6時間後の本発明による複合体粒子のアルギン酸亜鉛からの亜鉛のイオン交換により開始された放出における対イオン濃度の効果を示す略図。
【図6】スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus)に対する本発明による複合体粒子の活性試験を示す略図。
【実施例】
【0137】
実施例1:
濃度1.5%のアルギン酸ナトリウム溶液40mlを絶えず攪拌しながらSomakon社の実験室用ミキサー中でSIPERNAT(登録商標)50S 20gに添加する。生じる易流動性粉末を濃度1%のZnCl2 500ml中に導入し、電磁攪拌機を用いて1時間攪拌する。粒子を濾過し、2日間60℃で乾燥する。その際、亜鉛イオン濃度は、粒子の全質量に対して1質量%である。亜鉛イオン濃度を増加させるべき場合には、さらに記載された充填法は、繰り返すことができる。
【0138】
実施例2
この実施例において、キャリヤー材料に活性成分を負荷し、さらにもう1つの活性成分を放出する外被材料を負荷する。SIPERNAT(登録商標)50S 20gをSomakon社の実験室用ミキサーに充填する。二重壁の混合ユニットを50℃に加熱し、結晶メントール10質量%をSiO2粉末に添加する。このメントールが溶融し、細孔を貫通する間に、攪拌を約200rpmで連続的に行なう。その後に、この混合装置を徐々に冷却し、メントールを細孔中で凝固させる。
【0139】
その後に、この活性成分は、実施例1に記載された方法によってカプセル封入され、この場合には、粉末が常に易流動性のままであるように、粒子の最大の適応能力が過剰にならないことが保証されなければならない。ZnCl2中のゲル化された粒子を真空乾燥キャビネット中で35℃で3日間乾燥する。
【0140】
実施例3:
実施例1に記載された、充填されたSipernats(登録商標)から1.5gを取出し、0.06g/l CaCl2溶液100mlまたは0.15g/l NaCl溶液100ml中に分散させる。遅延された放出の結果は、図4に図示されている。24時間後であっても、活性成分は、なお放出され、それ故に長時間の効果が保証されていることが判明する。
【0141】
実施例4:
実施例1に記載された、充填されたSipernats(登録商標)から1.5gを取出し、0.15g/l、2.5g/lまたは5g/l NaCl溶液100ml中に分散させる。対イオン濃度の効果の結果は、図5に図示されている。これは、放出時間および放出速度が、例えばオーラルケア製品へのさらなる添加によって示されているように、対イオン濃度の変化によって影響を及ぼされてもよいことを示す。
【0142】
実施例5:
実施例2で製造された試料から、300mgを取出し、50mlの振盪フラスコ中で抗菌試験のために使用する。選択された微生物は、標準試験の病原菌のスタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus)であり、細菌に対する前記複合体の抗菌効果を記録した。この試験の結果は、図6に図示されている。本発明による複合体粒子への暴露により、99%を上廻る細菌が死亡することが明らかになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
練り歯磨きおよび口内洗浄剤のための添加剤としての複合体粒子において、この複合体粒子が
3〜50μm、有利に4〜40μm、よりいっそう有利に5〜30μm、極めて有利に6〜25μmの平均粒径および50〜550m2/g、有利に100〜500m2/g、よりいっそう有利に150〜500m2/gの比表面積を有する、無定形のSiO2の多孔質キャリヤー、および
少なくとも1つの外被材料を含有し、
この場合この外被材料は、口腔内での活性化に続き、活性物質を放出し、および/またはさらに複合体粒子は、少なくとも1つの活性物質を含有することを特徴とする、練り歯磨きおよび口内洗浄剤のための添加剤としての複合体粒子。
【請求項2】
少なくとも1つの外被材料が粘膜接着性外被材料および/または抗菌効果および/または抗微生物効果を有する外被材料である、請求項1記載の複合体粒子。
【請求項3】
少なくとも1つの外被材料が口腔内での活性化に引き続いて、有利にイオン交換、pH変化または酵素的崩壊によって活性成分を放出する1つの材料、有利に多糖類、よりいっそう有利にアルギン酸亜鉛、アミラーゼまたはヒドロキシメチルプロピルセルロースである、請求項1または2記載の複合体粒子。
【請求項4】
前記複合体粒子は、SiO2粒子が少なくとも1つの外被材料で完全に覆われているコアシェル構造を有するか、或いは単数の外被物質または複数の外被物質は、製品系の最も外側の原子層のXPS分析によって証明されたように、複合体粒子の外側表面の少なくとも数%、有利に少なくとも10%、よりいっそう有利に少なくとも15%、極めて有利に少なくとも20%がキャリヤー材料によって形成されているように広範囲に多孔質のSiO2キャリヤーの細孔内に組み込まれている、請求項3記載の複合体粒子。
【請求項5】
前記複合体粒子は、1つの活性成分および少なくとも1つの外被材料を含有し、この場合、この複合体粒子は、単数の活性成分または複数の活性成分が多孔質SiO2粒子の細孔内に留まり、およびSiO2粒子が少なくとも1つの外被材料で完全に覆われているコアシェル構造を有するか、或いは単数の活性成分または複数の活性成分および単数の外被物質または複数の外被物質は、製品系の最も外側の原子層のXPS分析によって証明されたように、製品系の外側表面の少なくとも数%、有利に少なくとも10%、よりいっそう有利に少なくとも15%、極めて有利に少なくとも20%がキャリヤー材料によって形成されているように広範囲に多孔質のSiO2キャリヤーの細孔内に組み込まれている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の複合体粒子。
【請求項6】
前記複合体粒子が少なくとも1つの粘膜接着性外被材料および少なくとも1つの非粘膜接着性外被材料を含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の複合体粒子。
【請求項7】
外被材料が多糖類、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ電解質または脂肪酸の群からの1つの外被材料である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の複合体粒子。
【請求項8】
外被物質または外被物質の総和と活性成分または活性成分の総和との質量比は、10:1〜1:10の範囲内にある、請求項5から7までのいずれか1項に記載の複合体粒子。
【請求項9】
活性成分が抗菌性/抗微生物性の性質、または臭い特性/香気特性を有する、請求項5から8までのいずれか1項に記載の複合体粒子。
【請求項10】
外被材料は、活性成分が口腔内で拡散、pH変化、外被材料の酵素的崩壊、温度変化、イオン交換または外被材料の溶解によって放出されるように選択されている、請求項5から9までのいずれか1項に記載の複合体粒子。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の複合体粒子を製造する方法において、
少なくとも1つの多孔質の無定形二酸化珪素を少なくとも1つの外被物質または少なくとも1つの活性成分および少なくとも1つの外被物質と接触させることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の複合体粒子を製造する方法。
【請求項12】
少なくとも1つの活性成分を、有利に活性成分の溶液または溶融液の形で、活性成分が二酸化珪素の細孔中に取り込まれるように無定形の二酸化珪素と接触させる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
次の工程:
a)無定形SiO2の少なくとも1つのキャリヤー材料を固体混合ユニット中に装入し、
g)少なくとも1つの外被物質を添加し、
h)キャリヤーを少なくとも1つの外被物質で含浸することを有する、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
さらに、次の工程:
b)固体混合ユニットを排気し、
c)キャリヤー材料を少なくとも1つの外被物質でDBP吸収値の最大50質量%まで予め含浸し、
d)少なくとも1つの活性成分を固体混合ユニット中に添加し、
e)キャリヤーを活性成分で含浸し、
i)洗浄しおよび/または乾燥し、
f)キャリヤー材料の外側粒子面に付着する活性成分を抑制し、および/または洗浄しおよび/または乾燥し、
j)キャリヤー材料の外側粒子面に付着する活性成分を反応により抑制し、および/または洗浄しおよび/または乾燥することの少なくとも1つを有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
工程b)〜e)および/またはg)〜h)を繰り返し実施し、工程d)およびe)および/またはg)およびh)を繰り返す場合には、同一かまたは異なる活性材料および/または外被材料をそれぞれの場合に使用することができる、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
キャリヤー材料および単数の活性成分/複数の活性成分を固体混合ユニットへの導入前に混合する、請求項13から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
工程g)で添加される単数の外被物質/複数の外被物質の量を、製品系の製造中に添加される単数の活性成分/複数の活性成分および単数の外被物質/複数の外被物質の全体量がキャリヤー材料のDBP吸収値の50質量%〜100質量%であるように調整する、請求項13から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
工程g)で添加される単数の保護物質/複数の保護物質の量を、製品系の製造中に添加される単数の活性成分/複数の活性成分および単数の外被物質/複数の外被物質の全体量がキャリヤー材料の全細孔容積よりも大きく、過剰量の単数の外被物質/複数の外被物質がキャリヤー材料および/または単数の活性成分/複数の活性成分で充填されたキャリヤー材料の添加によって吸収されるように調整する、請求項13から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
外被材料は、多糖類であり、この多糖類は、キャリヤーへの適用後にゲル化され、この場合このゲル化は、有利に2価イオン、よりいっそう有利にZn2+またはCa2+によって実施される、請求項11から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
有利に5質量%〜15質量%の分画で、請求項1から10までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの複合体粒子を含有するオーラルケア製品、有利に練り歯磨きまたは口内洗浄剤。
【請求項21】
口腔衛生製品を製造するための請求項1から10までのいずれか1項に記載の複合体粒子の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−37852(P2011−37852A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178933(P2010−178933)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】