説明

口金キャップ

【課題】閉栓および開栓が容易で、密封性、リシール性にも優れた口金キャップとその製造方法を提供する。
【解決手段】弾性金属材で形成され、円形の天板部3の外周部から垂下するスカート部7に切り欠き部を介して複数の爪部9が設けられ、天板部3の外周部近傍を押圧して爪部9を口金に嵌合させ閉栓し、天板部3の中央部を押圧して爪部9を外方に拡げて口金との嵌合を解除し開栓するキャップ本体2を備える口金キャップ1において、天板部3の内面部に、平面視が円形で口金閉栓時に口金の開口部周縁の上端部に接触する環状の厚肉部14とその内側の薄肉部15とを有する熱可塑性樹脂のライナー材12が接着して一体化され、ライナー材12とスカート部7とは固着せずにこれらの間に離間部20が設けられていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口金キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の5ガロン缶(18L缶)や容量の異なる小型角缶(0.5L缶、1L缶、2L缶等)には、口金が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
この口金は、開閉のための蓋として口金キャップを備え、この口金キャップは、円形の天板部の外周部から垂下するスカート部に切り欠き部を介して複数の爪部が設けられたキャップ本体と、シーリング材とを備えている。
【0004】
キャップ本体は、スプリングバック作用によって、天板部の外周部近傍を押圧して爪部を口金に嵌合させ、これにより口金を閉栓する。また天板部の中央部を押圧して爪部を外方に拡げ、これにより口金との嵌合を解除し口金を開栓する。このタイプのキャップはJIS Z1607にB形として規定されている。
【0005】
現在用いられている口金キャップは、キャップ本体とシーリング材とが互いに独立した2ピースタイプのものである。このような2ピースタイプの口金キャップは大別して2種類ある。その1つは図6に示すようなものであり、この口金キャップ101は、円形の天板部3の外周部から垂下するスカート部7に切り欠き部8を介して複数の爪部9が設けられたキャップ本体2と、シーリング材とから構成され、シーリング材は、厚み2mm程度の厚紙50と、厚み0.35mm程度の厚紙に厚み10μm程度のアルミ箔をラミネートしたラミネートアルミ箔51とから構成される。これらの厚紙50とラミネートアルミ箔51は、所定の面子にそれぞれ切断した後、キャップ本体2に挿入され、これを口金に打栓して密封する。
【0006】
もう一方は図7に示すようなものであり、この口金キャップ102は、キャップ本体2と、シーリング材であるプラスチック製の中栓52とを備えている。そして閉栓する際には、まず中栓52を缶25の口金30の開口部31に嵌め込んでシールし、その上からキャップ本体2を打栓する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−128061号公報
【特許文献2】特許第4493149号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図6に示す口金キャップ101は、キャップ本体2、厚紙50、ラミネートアルミ箔51の3体であるため、製造加工や口金への挿入等の工程が増える。
【0009】
また、キャップ本体2からシーリング材が独立しているため開栓時にはシーリング材が口金の開口部に残り、キャップ本体2のみ外れる場合がある。特に接着性や粘着性のある内容物の場合はシーリング材が口金の開口部に残る場合が多く、開栓が2段階の工程となり煩雑である。
【0010】
図7に示す口金キャップ102の場合も、比較的硬いポリオレフィン樹脂等で作製された中栓52をまず缶25の口金30に嵌め込み、次にキャップ本体2を打栓する別工程の作業となる。開栓も、まずキャップ本体2のみを取り外し、その後中栓52を抜き取る2段階の工程となり煩雑である。
【0011】
また、これらの口金キャップ101、102を用いる缶は、有機溶剤、油脂製品、塗料等の化学製品を内容物とするものに多く用いられるが、ジュース等の食品を内容物とするものに用いられることもある。そして食品の場合は熱水殺菌処理される場合が多い。熱水殺菌処理を行う場合、シーリング材に紙材を用いた図6の口金キャップ101は耐水性が十分ではなく、シーリング材に中栓52を用いた図7の口金キャップ102は中栓52がキャップ本体2と一体化していないため熱殺菌により変形する可能性がある。そのため密封性が低下する。
【0012】
さらに、これらの缶製品は1回で使い切らずに数回に渡って口金キャップを開閉することが多い。この場合口金キャップでリシールするが、そのときに取り出した内容物が缶の口金に残り、塗料等の場合は接着剤となって開栓が困難になったり、シーリング材が破断して再度の閉栓ができなくなったりする。また口金からシーリング材を取り除く際に、手を汚すこともしばしばある。
【0013】
このように従来の口金キャップは、キャップ本体とシーリング材とが独立した別途のものであるため、閉栓性、開栓性、密封性、リシール性等に改善が望まれていた。
【0014】
なお、特許文献2には、キャップ殻体とその内面側に施されたライナー材とからなるキャップとして、キャップ殻体とライナー材とをライナー材の外周側に非接着部を有するように部分接着することが記載されている。しかしながら、この技術はネジ付きキャップ等において耐衝撃密封性を考慮して非接着部を設けたものであり、上記のようなスプリングバック機能によりスカート部を開閉して開栓と閉栓を行う口金キャップへの適用は開示されておらず、そのような口金キャップの開栓性等との関連も示唆されていない。
【0015】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、閉栓および開栓が容易で、密封性、リシール性にも優れた口金キャップを提供することを課題としている。
【0016】
また本発明は、閉栓および開栓が容易で、密封性、リシール性にも優れた口金キャップを簡易な工程で製造することができる口金キャップの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の口金キャップは、弾性金属材で形成され、円形の天板部の外周部から垂下するスカート部に切り欠き部を介して複数の爪部が設けられ、天板部の外周部近傍を押圧して爪部を口金に嵌合させて閉栓し、天板部の中央部を押圧して爪部を外方に拡げて口金との嵌合を解除し開栓するキャップ本体を備える口金キャップにおいて、天板部の内面部に、平面視が円形で口金閉栓時に口金の開口部周縁の上端部に接触する環状の厚肉部とその内側の薄肉部とを有する熱可塑性樹脂のライナー材が接着して一体化され、ライナー材とスカート部とは固着せずにこれらの間に離間部が設けられていることを特徴としている。
【0018】
この口金キャップにおいて、ライナー材は、厚肉部の内側から下方に環状に突出し口金閉栓時に口金の開口部の内周部に接触する環状突出部を有することが好ましい。
【0019】
この口金キャップにおいて、ライナー材の上面部は、キャップ本体の天板部に接着された接着部と、この接着部の周囲全体に設けられた非接着部とを有することが好ましい。
【0020】
この口金キャップにおいて、ライナー材は、接着塗料によりキャップ本体の天板部に接着されていることが好ましい。
【0021】
また、本発明の口金キャップの製造方法は、弾性金属材で形成され、円形の天板部の外周部から垂下するスカート部に切り欠き部を介して複数の爪部が設けられ、天板部の外周部近傍を押圧して爪部を口金に嵌合させて閉栓し、天板部の中央部を押圧して爪部を外方に拡げて口金との嵌合を解除し開栓するキャップ本体を備える口金キャップの製造方法において、平面視が円形で口金閉栓時に口金の開口部周縁の上端部に接触する環状の厚肉部とその内側の薄肉部とを有するライナー材の形状に対応する形状を有する成型面と、成型面の外周部に環状に突出した離間部形成壁とを有する金型を用いて、熱可塑性樹脂を、金型の成型面にキャップ本体の下面部を対向させるとともに離間部形成壁に突き当てて配置することにより成型面とキャップ本体と離間部形成壁との間に形成されたキャビティに収容し加熱溶融状態で成型することにより、キャップ本体にライナー材を一体に成型するとともに離間部形成壁によりライナー材とキャップ本体のスカート部との間に離間部を設ける工程とを含むことを特徴としている。
【0022】
この口金キャップの製造方法において、金型の成型面にキャップ本体を配置する前に、キャップ本体の下面部に接着塗料を塗布する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の口金キャップによれば、閉栓および開栓が容易で、密封性、リシール性にも優れている。
【0024】
本発明の口金キャップの製造方法によれば、閉栓および開栓が容易で、密封性、リシール性にも優れた口金キャップを簡易な工程で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の口金キャップの実施形態を示す下面図である。
【図2】図1の口金キャップのA−A線断面図である。
【図3】図1の口金キャップ側面図を示し、(a)は口金から取り外した状態、(b)は口金閉栓時の状態を示す。
【図4】(a)は、図1の口金キャップを口金に閉栓した状態を示す断面図、(b)は、図1の口金キャップを口金から取り外した状態を示す側面図である。
【図5】型押成型により図1の口金キャップのキャップ本体にライナー材を一体化する金型の断面図である。
【図6】従来の口金キャップを示す側面図である。
【図7】従来の口金キャップを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明の口金キャップの実施形態を示す下面図、図2はA−A線断面図、図3は側面図を示し、図3(a)は口金から取り外した状態、図3(b)は口金閉栓時の状態を示す。図4(a)は、口金キャップを口金に閉栓した状態を示す断面図、図4(b)は、口金キャップを口金から取り外した状態を示す側面図である。
【0028】
この口金キャップ1は、図4に示すように、5ガロン缶(18L缶)や容量の異なる小型角缶(0.5L缶、1L缶、2L缶等)等の缶25に設けた口金30の開口部31を開閉するものであり、図1および図2に示すように、キャップ本体2とライナー材12が接着して一体化されている。
【0029】
キャップ本体2は、ブリキ等の弾性金属材で形成され、円形の天板部3と、天板部3の外周部3aから垂下するスカート部7とを有している。
【0030】
スカート部7は、切り欠き部8を介して複数の爪部9が設けられている。
【0031】
この天板部3の下面部4に、シーリング材として熱可塑性樹脂のライナー材12が接着して一体化されている。ライナー材12は、平面視が円形で、環状の厚肉部14とその内側の薄肉部15とを有している。
【0032】
厚肉部14は、図4(a)に示すような口金30の閉栓時に、口金30の開口部31の周縁の上端部33に接触する。すなわち厚肉部14は、口金30の開口部31の外縁に沿った形状となっている。
【0033】
薄肉部15は、口金30の開口部31の中心部付近に対応する位置に設けられている。口金30を開栓する際には天板部3の中央部を押圧して口金30とライナー材12を押し込む力が開栓力となるが、薄肉部15を設けて押圧位置のライナー材12を薄くすることにより開栓力を低減することができる。
【0034】
このように薄肉部15は開栓力を低減する点からできるだけ薄いことが好ましく、開栓性を考慮すると薄肉部15の膜厚はライナー材12の中心部から半径8mmの範囲内においては、500μm以下が好ましく、成型性等も併せて考慮すると50〜300μmがより好ましい。
【0035】
図1および図2に示すように、ライナー材12は、スカート部7には固着せずに、これらの間には離間部20が設けられている。口金30の開栓時には、図4(a)の状態からキャップ本体2の天板部3の中央部を押圧して爪部9を外方に拡げてスカート部7を開き、これにより口金30との係合が外れて嵌合を解除し、図4(b)に示すように口金30の開口部31が開放される。
【0036】
このとき、できるだけ弱い押圧力でスカート部7が開くようにするためには、ライナー材12がスカート部7と固着せずに互いに拘束されないことが必要である。これに対してライナー材12がスカート部7と固着していると、口金30の開栓時にキャップ本体2の天板部3を押圧する力が増大し開栓に大きな力が必要になる。
【0037】
図1および図2に示すように、ライナー材12は、厚肉部14の内側に環状突出部16を有している。環状突出部16は、厚肉部14の内側から下方に環状に突出し、口金30の閉塞時には図4(a)に示すように口金30の開口部31のカール状の内周部32に接触して密封性を高めることができる。
【0038】
すなわち、口金キャップ1は、キャップ本体2が強い力で密封性を確保できる構造になっていないため、ライナー材12を用いて密封性を高める必要がある。ライナー材12により密封性を高める方法の1つはライナー材12の材料である熱可塑性樹脂の選定であるが、もう1つの方法はライナー材12のシーリング部のモールド形状である。
【0039】
このシーリング部のモールド形状に着目すると、ライナー材12の厚肉部14のみでは口金30の開口部31の内周部32への食い込みが必ずしも十分ではない。この点を補うためには、ライナー材12のシーリング部のモールド形状を、口金30の上端部33から開口部31の内周部32まで接触するようにして、ライナー材12と口金30との接触面積(シーリング面積)を拡大する必要がある。
【0040】
この接触面積を増やすためには、ライナー材12のモールド形状を可能な限り口金30の開口部31の周縁のカール状壁面に沿った形状にすることが望ましい。この点から、この実施形態では口金30の開口部31のカール状の内周部32と接触して垂下する足として、細長い環状突出部16を設けている。
【0041】
ライナー材12は、接着塗料によりキャップ本体2の天板部3の下面部5に接着されている。接着塗料は、ライナー材12と同一系統の樹脂を主成分とするものや、ライナー材12と同一系統の樹脂微粉末を配合したものを用いることができ、このような接着塗料として市販されているものを用いることができる。例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂のライナー材12ではポリ塩化ビニル系樹脂塗料を用いることができ、ポリオレフィン系樹脂のライナー材12ではエポキシフェノール系樹脂塗料に酸変性ポリオレフィン系樹脂微粉末を配合した塗料を用いることができる。
【0042】
接着塗料は、この実施形態では、キャップ本体2の天板部3の一部に接着塗料をスポット塗装し、図1および図2に示すように、ライナー材12の上面部13に、キャップ本体2の天板部3に接着された接着部17と、この接着部17の周囲全体に設けられた非接着部18とを設けて、ライナー材12の中心部を含む同心円の範囲に部分的にスポット接着を施している。
【0043】
このようにライナー材12の上面部13に非接着部18を設けることで、非接着部18におけるキャップ本体2とライナー材12との間は固着せずに互いに移動、すなわちズレが自由にできるエリアが形成される。これにより、図4(a)の状態からキャップ本体2の天板部3の中央部を押圧して爪部9を外方に拡げてスカート部7を開くときに、非接着部18ではライナー材12に拘束されずに弱い力で天板部3を陥没変形させることができ、開栓性が向上する。
【0044】
接着部17の面積は、非接着部18を設けることによる開栓性の向上と、開栓時を含めた取り扱い使用時に接着部17における接着が外れない接着強度を併せて考慮する必要がある。このような点から、接着部17の直径dは、ライナー材12の直径Dに対する比d/Dとして1/3〜2/3の範囲が好ましい。接着部17は対称性を考慮すると円形が好ましいが、接着塗料の塗布領域を適宜に設定して円形以外の形状としてもよい。この場合はその形状の最大長さのライナー材12の直径Dに対する比を上記のような範囲とすることが好ましい。これらのいずれの場合も接着部17は主に薄肉部15の範囲内とすることが好ましい。
【0045】
ライナー材12の形成材料としては、例えば、従来より各種のキャップに用いられているガスケット類の材料、例えば塩化ビニルゾル、各種のエラストマー等を用いることができるが、缶25の多くが有機溶剤を含有する内容物に用いられることから、このような点を考慮すると溶剤や油脂等に溶出しやすい可塑剤や柔軟剤を含有しないものが好ましい。ただし、水性食品で高温殺菌処理を必要とする場合等には、柔軟剤を含有するエラストマー系のライナー材12が有効になる場合がある。
【0046】
口金キャップ1は、スプリングバック機能を持たせたスカート部7を口金30の外周部に押し込み嵌め込んで密封するものであり、シーリング材12を缶25の口金30に強く押して密封性を強化するには限界がある。従ってライナー材12は、弱い力でも缶25の口金30の開口部31のシーリング部に食い込む柔らかいものが密封性の点からは望ましい。
【0047】
このような点を考慮すると、ライナー材12は、その硬度がJIS D硬度で10〜50が好ましく、30〜40がより好ましい。ライナー材12の硬度が高過ぎると、特に閉栓時の押し込み力が増大する場合があり、開栓性も低下する場合がある。ライナー材12の硬度が低過ぎると、可塑剤や柔軟剤を配合することが必要になり、有機溶剤等による抽出や膨潤が起こり密封剤としての性能が低下する場合がある。また、可塑剤や柔軟剤を含有しない柔らかい樹脂も市販されているが、耐溶剤性等に構造的限界がある場合が多い。さらに口金30の開口部31に嵌め込む時等の取り扱い作業性や密封性も強度不足で低下する場合がある。
【0048】
単体材料で適切な硬度を持つ市販の樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂等を挙げることができる。また、耐熱性等の特殊な用途の場合には、エラストマー、ポリプロピレン、および柔軟剤のブレンド品で適切な硬度のライナー材12を得ることができる。
【0049】
本明細書の定義においては上記に例示したような材料やそれらの2種以上を組み合わせた材料を「熱可塑性樹脂」に含めるものとする。
【0050】
以上に説明したような口金キャップ1を口金30に閉栓する際には、例えば、図3(b)のように天板部3の中央部が膨らんだ状態で口金30の上に配置し、天板部3の外周部3a近傍を押して口金30に嵌め込む。この際、口金キャップ1の内径は口金30の外径よりも小さく設計されているので、嵌め込みの際に爪部9は開くと共に元に戻ろうとするスプリングバック作用が働く。また図4(a)に示すように爪部9の先端側は口金キャップ1の内側方向に屈曲(カール)して口金30の顎部34と係合する設計になっており、口金30への口金キャップ1の嵌め込みに際しては、爪部9の先端側のカール部は押し広げられるが、このカール部も元に戻ろうとするスプリングバック作用が働く。この2方向からのスプリングバック作用により口金30に口金キャップ1をしっかりと嵌合させ図4(a)に示すように口金30の開口部31を閉塞する。
【0051】
そして口金キャップ1を開栓する際には、天板部3の中央部を押して反り上がった状態に反転させ、これにより爪部9を拡げて口金30との嵌合を解除し、図3(a)の状態として口金30の開口部31を開栓する。
【0052】
このような口金キャップ1を製造する際にキャップ本体2とライナー材12とを一体化する好適な方法としては、図5に示すような型押部材としての金型41を用いてキャップ本体2にライナー材12を型押成型する方法を挙げることができる。
【0053】
図5に示すように、金型41は、下端部に成型面43が設けられ、成型面43の中心部には上方に貫通し成型時にエア抜きとして作用する孔部42が設けられている。
【0054】
成型面43は、ライナー材12の厚肉部14、薄肉部15、および環状突出部16の形状に対応する形状を有している。具体的には、成型面43には、ライナー材12の厚肉部14を形成するための厚肉部形成部44、薄肉部15を形成するための薄肉部形成部45、および環状突出部16を形成するための環状突出部形成部46が設けられている。
【0055】
成型面43の外周部には、キャップ本体2のスカート部7とライナー材12との固着を防止するための環状に突出した離間部形成壁47が設けられている。
【0056】
この金型41を用いてライナー材12をキャップ本体2と一体に成型する際には、ライナー材12の成型材料である所定量の熱可塑性樹脂を、金型41の成型面43とキャップ本体2と離間部形成壁47との間に形成されたキャビティ48にて熱可塑性樹脂を加圧し型押する。これにより、キャップ本体2にライナー材12を一体に成型するとともに離間部形成壁47によりライナー材12とキャップ本体2のスカート部7との間に離間部20を設ける。
【0057】
なお、金型41の金型面43にキャップ本体2を配置する前に、キャップ本体2の天板部3の下面部5には接着塗料を塗布しておく。この実施形態では、キャップ本体2の天板部3の下面部5の中心部を含む一部に接着塗料を円形にスポット塗装し、図1および図2に示すように、ライナー材12の上面部13に、キャップ本体2の天板部3に接着された接着部17と、この接着部17の周囲全体に設けられた非接着部18とを設けるようにしている。
【0058】
このようにして、閉栓および開栓が容易で、密封性、リシール性にも優れた口金キャップ1を簡易な工程で製造することができる。
【0059】
なお、図5では型押成型の例について説明したが、キャップ本体2と離間部形成壁47と成型面43とから構成されるモールドにより熱可塑性樹脂を成型しキャップ本体2にライナー材12を一体化する方法、すなわち金型41の成型面43にキャップ本体2の下面部5を対向させるとともに離間部形成壁47に突き当てて配置することにより成型面43とキャップ本体2と離間部形成壁47との間に形成されたキャビティ48に熱可塑性樹脂を収容し加熱溶融状態で成型する方法であれば、他の成型方法も用いることができ、例えば射出成型を適用することもできる。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
図5に示す金型を用いて口金キャップを製造した。この金型は、図5に示すように、金型下端部には成型面が設けられ、成型面は、ライナー材の厚肉部を形成するための厚肉部形成部、薄肉部を形成するための薄肉部形成部、および環状突出部を形成するための環状突出部形成部が設けられている。成型面の外周部には、キャップ本体のスカート部とライナー材との固着を防止するための環状に突出した離間部形成壁が設けられている。
【0061】
具体的には、ライナー材の厚肉部の膜厚2.37mm(市販の図6の口金キャップにおける厚紙とラミネートアルミ箔の合計厚みを参考)、環状突出部の外径33.5mm、幅1mm、高さ2.3mmとなるように構成されている。
【0062】
まず、キャップ本体の天板部の下面部に接着塗料(桜宮化学(株)製 SK−6760)を塗布した。キャップ本体の天板部の下面部における天板部と同心の直径16mm程度の範囲に接着塗料を円形にスポット塗装した。これにより図1および図2に示すように、ライナー材の上面部に、キャップ本体の天板部に接着された接着部と、この接着部の周囲全体に設けられた非接着部とを設けるようにした。
【0063】
JIS D硬度20のインフューズ社製 D9100を熱可塑性樹脂として用い、200℃のホットプレートで加熱溶融後、金型の成型面とキャップ本体と離間部形成壁との間に形成されたキャビティにて熱可塑性樹脂を加圧し型押成型した。
【0064】
これにより、キャップ本体にライナー材を一体に成型するとともに離間部形成壁によりライナー材とキャップ本体のスカート部との間に離間部を設けた口金キャップを得た。
<実施例2>
実施例1において、ライナー材の熱可塑性樹脂をD硬度43のプライムポリマー社製 20100Jに変更した。それ以外は実施例1と同様にしてキャップ本体にライナー材を一体に成型し口金キャップを得た。
<実施例3>
実施例1において、ライナー材の熱可塑性樹脂をD硬度12のインフューズ社製 D9107に変更した。それ以外は実施例1と同様にしてキャップ本体にライナー材を一体に成型し口金キャップを得た。
<実施例4>
実施例1において、ライナー材の熱可塑性樹脂をD硬度62の三井化学社製 ハイゼックス2200Jに変更した。それ以外は実施例1と同様にしてキャップ本体にライナー材を一体に成型し口金キャップを得た。
<実施例5>
実施例1の金型を、シーリング部が厚肉部のみで環状突出部を設けない金型に変更した。それ以外は実施例1と同様にしてキャップ本体にライナー材を一体に成型し口金キャップを得た。
<実施例6>
実施例1において、スポット塗装を施さずに、ライナー材の上面部の全体が接着されるようにキャップ本体の下面部の全体に接着塗料を塗布した。それ以外は実施例1と同様にしてキャップ本体にライナー材を一体に成型し口金キャップを得た。
<比較例1>
実施例1において、金型を環状突出壁を設けないものに変更した。それ以外は実施例1と同様にしてキャップ本体にライナー材を一体に成型し口金キャップを得た。
【0065】
以上の実施例および比較例の口金キャップについて次の評価を行った。
1.開栓性評価
[開栓力]
市販の2L缶(角缶)に打栓した口金キャップの天板部の中央部を押圧して爪部を外方に拡げてスカート部を開き、口金との嵌合を解除し開栓するときにスカート部を開く力、すなわち嵌合が外れる力を次の基準に基づいて評価した。
○:18kg未満 比較的容易に開栓
△:18〜23kg 幾分硬い
×:23kg超 硬い
[開栓性]
市販の2L缶(角缶)に打栓した口金キャップの天板部の中央部を押圧して爪部を外方に拡げてスカート部を開き、口金との嵌合を解除し開栓するときにスカート部が開いた口金キャップの口金からの取り外しやすさを次の基準に基づいて評価した。
○:スカート部が開いた口金キャップが容易に抵抗なく外れる
△:スカート部が開いた口金キャップを口金から外すのに幾分抵抗がある
×:天板部の中央部を押圧してスカート部が開きづらく、あるいは開いても口金に密着して外し難い
2.密封性評価
[内容物充填試験]
次の内容物を2L缶(角缶)に充填し、その口金に口金キャップを打栓し、倒置1W貯蔵後、漏洩の有無を確認した。
1 水パック
2 溶剤パック MEK、エタノール
3 油パック サラダ油
評価は次の基準に基づいて行った。
○:漏れを認めない
△:漏れを若干認める
×:漏れを認める
[耐圧試験]
内容物として水を市販の2L缶(角缶)に充填した後、その口金に口金キャップを打栓し、0.5kg/cm2の圧力を加え漏洩の有無を確認し、次の基準に基づいて評価した。なお、口金が用いられる通常の2L缶は耐圧容器ではなく、0.1kg/cm2前後で缶が膨出変形する。
○:0.5kg/cm2の内部加圧で漏れない
△:0.1〜0.5kg/cm2の内部加圧で漏れる
×:0.1kg/cm2以下の内部加圧で漏れる
以上の評価の結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例1〜6では、天板部の内面部に、平面視が円形で口金閉塞時に口金の開口部周縁の上端部に接触する環状の厚肉部とその内側の薄肉部とを有する熱可塑性樹脂のライナー材を接着して一体化した。そして成型面の外周部に環状に突出した離間部形成壁を設けて、ライナー材とスカート部とが固着せずにこれらの間に離間部が設けられるようにした。これらの実施例1〜6では、開栓性と密封性は概ね良好であった。また従来のように口金キャップを口金に閉栓するときにシーリング材とキャップ本体の2ピースを順に取り付けることを要せず、1度の嵌め込み操作で打栓し容易に閉栓することができた。そして缶を1回で使い切らずに数回に渡って口金キャップを開閉する場合であっても、天板部とライナー材とを接着して一体化しているため、取り出した内容物が缶の口金に残り開栓が困難になったり、シーリング材が破断して再度の閉栓ができなくなったり、また口金からシーリング材を取り除く際に、手を汚したりすることを抑制し、リシール性も良好である。
【0068】
実施例1〜4、6では、厚肉部の内側から下方に環状に突出し口金閉塞時に口金の開口部の内周部に接触する環状突出部をライナー材に設けた。これらの口金キャップは、密封性が特に優れていた。
【0069】
実施例1〜5では、接着塗料のスポット塗装により、ライナー材の上面部に、キャップ本体の天板部に接着された接着部と、この接着部の周囲全体に設けられた非接着部とを設けた。これらの口金キャップは、非接着部を設けたことにより開栓性を向上させることができた。これは例えば実施例1と実施例6との対比にも現れている。
【0070】
ライナー材の硬度については、D硬度62の実施例4で開栓性はやや低下したが、D硬度10〜50の実施例1〜3、5、6では良好であった。耐内容物性は、水、MEK、エタノール、サラダ油について全て良好であった。また表1には示していないが実施例2等においてはトルエンについても漏れを抑制した。
【0071】
比較例1では、金型を環状突出壁を設けないものに変更したが、成型性が不良であり、またライナー材がスカート部に流れ込んで固着した。この口金キャップは、開栓に大きな力を要し、密封性も低いものであった。
【符号の説明】
【0072】
1 口金キャップ
2 キャップ本体
3 天板部
3a 外周部
4 上面部
5 下面部
7 スカート部
8 切り欠き部
9 爪部
12 ライナー材
13 上面部
14 厚肉部
15 薄肉部
16 環状突出部
17 接着部
18 非接着部
20 離間部
25 缶
30 口金
31 開口部
32 内周部
33 上端部
34 顎部
41 金型
42 孔部
43 成型面
44 厚肉部形成部
45 薄肉部形成部
46 環状突出部形成部
47 離間部形成壁
48 キャビティ
50 厚紙
51 ラミネートアルミ箔
52 中栓
101 口金キャップ
102 口金キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性金属材で形成され、円形の天板部の外周部から垂下するスカート部に切り欠き部を介して複数の爪部が設けられ、天板部の外周部近傍を押圧して爪部を口金に嵌合させて閉栓し、天板部の中央部を押圧して爪部を外方に拡げて口金との嵌合を解除し開栓するキャップ本体を備える口金キャップにおいて、天板部の内面部に、平面視が円形で口金閉栓時に口金の開口部周縁の上端部に接触する環状の厚肉部とその内側の薄肉部とを有する熱可塑性樹脂のライナー材が接着して一体化され、ライナー材とスカート部とは固着せずにこれらの間に離間部が設けられていることを特徴とする口金キャップ。
【請求項2】
ライナー材は、厚肉部の内側から下方に環状に突出し口金閉栓時に口金の開口部の内周部に接触する環状突出部を有することを特徴とする請求項1に記載の口金キャップ。
【請求項3】
ライナー材の上面部は、キャップ本体の天板部に接着された接着部と、この接着部の周囲全体に設けられた非接着部とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の口金キャップ。
【請求項4】
ライナー材は、接着塗料によりキャップ本体の天板部に接着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の口金キャップ。
【請求項5】
弾性金属材で形成され、円形の天板部の外周部から垂下するスカート部に切り欠き部を介して複数の爪部が設けられ、天板部の外周部近傍を押圧して爪部を口金に嵌合させて閉栓し、天板部の中央部を押圧して爪部を外方に拡げて口金との嵌合を解除し開栓するキャップ本体を備える口金キャップの製造方法において、平面視が円形で口金閉栓時に口金の開口部周縁の上端部に接触する環状の厚肉部とその内側の薄肉部とを有するライナー材の形状に対応する形状を有する成型面と、成型面の外周部に環状に突出した離間部形成壁とを有する金型を用いて、熱可塑性樹脂を、金型の成型面にキャップ本体の下面部を対向させるとともに離間部形成壁に突き当てて配置することにより成型面とキャップ本体と離間部形成壁との間に形成されたキャビティに収容し加熱溶融状態で成型することにより、キャップ本体にライナー材を一体に成型するとともに離間部形成壁によりライナー材とキャップ本体のスカート部との間に離間部を設ける工程とを含むことを特徴とする口金キャップの製造方法。
【請求項6】
金型の成型面にキャップ本体を配置する前に、キャップ本体の内面部に接着塗料を塗布する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の口金キャップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218801(P2012−218801A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89598(P2011−89598)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(595044661)株式会社日本化学研究所 (14)
【Fターム(参考)】