説明

古色塗膜剥離工法

【課題】 本発明は古色塗膜剥離工法に関し、特に文化財保護法に基づく有形文化財のうち旧式木造建造物等の修復のために表面の古色塗膜や落書きを下地の木質に損傷を与えることなく剥離する工法を提供する。
【解決手段】
文化財保護法に基づく有形文化財のうち旧式木造建造物等の修復のために表面の古色塗膜や落書きを下地の木質に損傷を与えることなく剥離する工法に於いて、下地の状況に応じて研掃材の材質、粒子径等を選定し、噴出圧力や風量、研掃材供給量等を調節可能としたブラストユニットによって古色塗膜を剥離することを特徴とし、硬度が1〜6モース硬度、粒子径が50〜2000μに調整され、材質が天然結晶質石灰岩等から選ばれた研掃材をブラストユニットによって噴射し、古色塗膜を剥離することを特徴とし、且つ、ブラストユニットのブラストガンにおける空気圧を0.69Mpa〜0.1Mpa、空気量を5m〜1m/分に調整可能に構成したことを特徴とする古色塗膜剥離工法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は古色塗膜剥離工法に関し、特に文化財保護法に基づく有形文化財のうち旧式木造建造物等の修復のために表面の古色塗膜や落書きを下地の木質に損傷を与えることなく剥離する工法であって、下地の状況に応じて研掃材の材質、粒子径等を選定し、噴出圧力や風量、研掃材供給量等を調節可能としたブラストユニットによって古色塗膜を剥離することを特徴とする古色塗膜剥離工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物等の表面に付着した塗膜や落書きを除去するには、特開平9−165536号公報に開示されているような塗料除去剤組成物のような化学薬品を使用して除去する湿式方法や、特開平8−318468号公報に開示されているような研掃材を高圧で吹き付けて除去する乾式方法等がある。また、研掃材を液体と共に噴出する湿式のブラスト工法も公知である。
【0003】
前記せるような方法では、下地が重要文化財のような古い木造の表面に対して処理作業を行えば下地の表面を損傷してしまうので、旧木造建築のような文化財の修復作業に適応させることはできなかった。
【0004】
【特許文献1】 特開平9−165536号公報
【特許文献2】 特開平8−318468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記せる特開平9−165536号公報では、建造物の壁の落書きなどの付着した塗料を除去し、塗料が剥がされる基材を均一化し、状態調整する働きを有する塗料除去剤の提案がなされている。しかしながら、神社仏閣などの旧木造建造物の修復のために古色塗膜を剥離する場合、塗料除去中に木質に含浸してしまった化学薬品を完全に除去することは難しく、木質に再塗装するには問題があった。
【0006】
また、前記せる特開平8−318468号公報では、合成樹脂ビーズ製の研掃材を高圧で噴出させるものであって、下地が神社仏閣などの旧木造建造物の場合は、下地を損傷してしまう問題があった。このため、特に文化財保護法に基づく有形文化財のうち旧式木造建造物等の修復のために表面の古色塗膜や落書きを下地の木質に損傷を与えることなく剥離する工法の提供が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的に応えるために創案された本発明は、文化財保護法に基づく有形文化財のうち旧式木造建造物等の修復のために表面の古色塗膜や落書きを下地の木質に損傷を与えることなく剥離する工法に於いて、下地の状況に応じて研掃材の材質、粒子径等を選定し、噴出圧力や風量、研掃材供給量等を調節可能としたブラストユニットによって古色塗膜を剥離することを特徴とし、硬度が1〜6モース硬度、粒子径が50〜2000μに調整され、材質が天然結晶質石灰岩等から選ばれた研掃材をブラストユニットによって噴射し、古色塗膜を剥離することを特徴とし、且つ、ブラストユニットのブラストガンにおける空気圧を0.69Mpa〜0.1Mpa、空気量を5m〜1m/分に調整可能に構成したことを特徴とする古色塗膜剥離工法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
【0009】
本発明に係る古色塗膜剥離工法によれば、文化財保護法に基づく有形文化財のうち旧式木造建造物等の修復のために表面の古色塗膜や落書きを下地の木質に損傷を与えることなく剥離することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体的に説明する。図面に於いて、図1は本発明に係る古色塗膜剥離工法を実施するための装置全体略示図である。図2は本発明に係る古色塗膜剥離工法を実施するためのブラストガンの断面図である。
【0011】
文化財保護法に基づく有形文化財のうち旧式木造建造物等の木質の状態によって、コンプレッサー3より空気流供給ホース31を介してブラストガン本体4内に圧送される空気圧は0.69Mpa〜0.1Mpa、空気量を5m〜1m/分に調整バルブ(図示せず)にて調整可能に構成され、ブラストガン本体4内の後部に取付けられたノズル48より仕切り筒47内に噴射されると仕切り筒47の後部とノズル48との空隙部は減圧となるので、研掃材貯留部2から研掃材供給ホース21を経て、矢印a方向に研掃材が供給され圧送空気流と共に外方拡開中筒46から矢印b方向に拡散噴射される。
【0012】
旧式木造建造物等の木質の状態に応じて、材質が天然結晶質石灰岩等から選ばれた研掃材は硬度が1〜6モース硬度、粒子径が50〜2000μに調整されたものを使用する。空気圧が0.69Mpa〜0.1Mpa、空気量が5m〜1m/分、研掃材は硬度が1〜6モース硬度、粒子径が50〜2000μに調整されて噴射される範囲は、旧式木造建造物等の木質の状態を予め考慮して決定される。
【0013】
圧送空気流と共に外方拡開中筒46から矢印b方向に拡散噴射される研掃材は、処理対象面に吹き付けられた後、外方拡開中筒46の外側とブラストガン4の先方開口部の内側の空隙部を通って矢印c方向へ吸引され、バキュームホース11を介して吸引清掃機1内へ吸引される。
【0014】
ブラストガン本体4の先端部にはブラシ接続部45によって円筒状に並べられたブラシ451が固定されているので、圧送空気流と共に外方拡開中筒46から矢印b方向に拡散噴射される研掃材は、処理対象面に吹き付けられた後、該ブラシ451の内側で乱流となって直ちに外方拡開中筒46の外側とブラストガン4の先方開口部の内側の空隙部を通って矢印c方向へ吸引され、バキュームホース11を介して吸引清掃機1内へ吸引されるので、周囲環境に悪影響をおよぼすことはない。
【0015】
本発明の古色塗膜剥離工法によれば、特に古い木造建築の装飾用彫刻などの狭くて細かいところに応用していっそうの効果をあげることができる。すなわち、従来のようにサンダーで表面を平滑にするのではなく、古い木造建造物の表面の年輪部分の盛り上がった木目などをそのまま立体的に残して表面の処理ができるものである。
【実施例】
【0016】
本発明の古色塗膜剥離工法によって、室町時代や江戸時代に建造された重要文化財である春日神社本殿や、昭和初期に建造された重要文化財である俳聖殿等の木造建造物の表面修復等を行った実績がある。
【0017】
また、この工法では周囲の環境に悪影響がないので、重要文化財を保護する上で極めて重要な工法であり、先前述の噴射条件や研掃材の選択を適切に行えば、表面が劣化した石像や古い橋の石柱などの修復に広い範囲の応用と効果を奏するののである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る古色塗膜剥離工法を実施するためのブラストユニットの全体略示図である。
【図2】本発明に係る古色塗膜剥離工法を実施するためのブラストガンの断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1.吸引清掃機
11.バキュームホース
2.研掃材貯留器
21.研掃材供給ホース
3.コンプレッサー
31.空気流供給ホース
4.ブラストガン本体
41.バキュームホース接続部
42.研掃材供給ホース接続部
421.研掃材供給ホース取付部材
43.エルボ接続部
44.エルボ
45.ブラシ接続部
451.ブラシ
46.外方拡開中筒
47.仕切り筒
48.ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文化財保護法に基づく有形文化財のうち旧式木造建造物等の修復のために表面の古色塗膜や落書きを下地の木質に損傷を与えることなく剥離する工法に於いて、下地の状況に応じて研掃材の材質、粒子径等を選定し、噴出圧力や風量、研掃材供給量等を調節可能としたブラストユニットによって古色塗膜を剥離することを特徴とする古色塗膜剥離工法。
【請求項2】
硬度が1〜6モース硬度、粒子径が50〜2000μに調整され、材質が天然結晶質石灰岩等から選ばれた研掃材をブラストユニットによって噴射し、古色塗膜を剥離することを特徴とする請求項1記載の古色塗膜剥離工法。
【請求項3】
ブラストユニットのブラストガンにおける空気圧を0.69Mpa〜0.1Mpa、空気量を5m〜1m/分に調整可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の古色塗膜剥離工法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−326821(P2006−326821A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184065(P2005−184065)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(591152791)株式会社JPハイテック (5)
【出願人】(505238728)
【Fターム(参考)】