説明

可動ステップ幅端部構造

【課題】車両前面の美的外観を確保できる可動ステップ幅端部構造を提供する。
【解決手段】起伏可能な一対のアーム1と、その間に配設したステップ本体2とを備え、アーム1が略水平な姿勢となった際に踏面9が上方を向くようにステップ本体2をアーム1に取り付ける。ステップ本体2の踏面9とは反対に位置する底面部位13や、ステップ本体2の左右の部位に覆い被さるロアカバー3をステップ本体2に装着する。アーム1のステップ本体2に対応する個所に、踏面9よりも突き出して靴底に干渉し得る靴摺り19を形作り、ロアカバー3の損傷を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に大型自動車を対象とした可動ステップ幅端部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラックやバスなどの大型自動車のフロントウィンド外側面の汚れを拭き取るときに、運転者がフロントバンパ上面を足場の代わりに使うと、当該フロントバンパ上面に靴底のつま先部分が載ることになり、不安定な姿勢を採らざるを得なくなる。
【0003】
そこで、フロントバンパに穿設した走行風取入口に整流用ルーバを兼ねたステップを、バンパ前方へ向けて略水平に展開可能に組み付けた事例が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この事例にあっては、停車時にステップを展開させて、運転者が靴底のつま先と踵の間の部分をステップに載せさえすれば、安定した姿勢でフロントウィンド外側面の清掃作業を行える。
【特許文献1】特開平10−147194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボディ形状やラジエータの放熱条件によっては、ステップに通風機能を具備させる必要がない車型もあり、特許文献1のものを単に流用しただけだと、製作工程の合理化が図れず、ルーバを単に通気機能を果たさない形状の部材に置き換えれば、車両前面の美的外観が損なわれてしまう。
【0006】
更に、無骨なステップを装飾するために、合成樹脂などを素材とするカバーを装着するとしても、当該カバーが靴底により損傷を受けてしまう懸念がある。
【0007】
本発明は、車両前面の美的外観を確保できる可動ステップ幅端部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、上方へ向けて起立した姿勢、または前方へ向けて略水平に倒した姿勢となり得るようにシャシフレームに付帯する一対のアームと、当該アームの間に配設した作業用のステップ本体とを備え、アームが略水平な姿勢となった際に踏面が上方を向くようにステップ本体をアームに取り付け、ステップ本体の踏面とは反対に位置する部位、並びにステップ本体の左右の部位に覆い被さるロアカバーをステップ本体に装着し、アームのステップ本体に対応する個所に、踏面よりも突き出して靴底に干渉し得る靴摺りを形作る。
【0009】
請求項2に記載の発明では、それぞれのアームに靴摺りから車両側方に向けて延びるリップを設ける。
【発明の効果】
【0010】
本発明の可動ステップ幅端部構造によれば、下記のような優れた効果を奏し得る。
【0011】
(1)アームが起立した姿勢となってステップ本体が格納されたときは、当該ステップ本体がロアカバーで隠されるので、車両前面の美的外観が損なわれない。
【0012】
(2)アームのステップ本体に対応する個所に踏面よりも突き出して靴底に干渉し得るように形作った靴摺りが、踏面から靴底が滑落しないようにする役割と、ステップ本体に載って作業を行っている人間に踏面の端を認識させる役割を担うので、日常的な清掃作業を行う際のロアカバーの損傷を防げる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0014】
図1〜図4は本発明の可動ステップ幅端部構造の一例であって、上方へ向けて起立した姿勢、または前方へ向けて略水平に倒した姿勢となり得るようにシャシフレーム前端部分に組み付けた一対のアーム1と、当該アーム1の間に配設したステップ本体2、及びロアカバー3とを備えている。
【0015】
アーム1の基端部分はバンパ4の真上に位置し、且つ車両幅方向へ延びるピン5によりNo.1クロスメンバ6に設けたブラケット(図示せず)に枢支されている。
【0016】
アーム1の回動中心の近傍にはストッパ用のピン7が取り付けてあり、このピン7は、上記ブラケットに穿設した円弧状の長孔aに移動可能に差し込まれ、アーム1の回動範囲を規制する。
【0017】
アーム1の先端部分には車両幅方向へ延びるボルト8が挿通してあり、これにステップ本体2が締結され、アーム1が略水平な姿勢となった際にステップ本体2の踏面9が上方を向く。
【0018】
ステップ本体2は、アルミニウム合金の押出し加工によって、閉断面をなす中空箱状に形作られ、しかも踏面9の裏面側には、前記ボルト8が螺合可能な嵌着部10が一体的に連なっている。
【0019】
つまり、ステップ本体2の踏面9の裏側に設けた嵌着部10に、アーム1の先端部分に挿通したボルト8を螺合させるので、足11が掛けられたときの荷重は、ボルト8自体が剪断力として支えるため、嵌着部10を他の部位に設けた場合のように、ステップ本体2と嵌着部10との間に作用せず、充分な強度を確保することができ、また、ステップ本体2を中空状にしたので、ステップ本体2そのものの剛性の向上も図れる。
【0020】
更に、押出し加工により、ステップ本体2と嵌着部10を一体成形させたので、これらを互いに組み付ける工程を省ける。
【0021】
ボルト8軸線方向に見た嵌着部10は、円の一部が途切れたような略C字状に形作ってあり、当該嵌着部10に雌ねじ加工を施さずとも、ボルト8をセルフタッピングによって容易に螺合させることができる。
【0022】
また、踏面9には、足11が掛けられたときの安全対策として、滑り止めシート12が貼付してある。
【0023】
ロアカバー3は、ステップ本体2の踏面9とは反対に位置する底面部位13、ステップ本体2において、アーム1が略水平な姿勢となった際に前方を向く前面部位14、同じく後方を向く後面部位15、並びにステップ本体2の左右の側端部位16に覆い被さる深皿形状としてある。
【0024】
ロアカバー3の内方には、ステップ本体2に向けて延び、しかも弾性圧縮変形が可能な複数の係合部材17が取り付けてあり、ステップ本体2の底面部位13に穿設した孔18に前記係合部材17を圧入すると、ステップ本体2へのロアカバー3の装着が完了する。
【0025】
つまり、アーム1が起立した姿勢となってステップ本体2が格納されたときには、当該ステップ本体2がロアカバー3で隠され、車両前面の美的外観が損なわれない。
【0026】
係合部材17はテーパ状としてあり、孔18への入れ易さと密着性を確保している。
【0027】
外形が曲面で構成されるロアカバー3の素材には合成樹脂を用いるが、ステップ本体2の使用時に靴底が擦れることに起因してロアカバー3縁部の損傷を回避するために、次のような構成を採っている。
【0028】
アーム1のステップ本体2の側端部位16に沿う個所に、踏面9よりも突き出して靴底に干渉し得る靴摺り19を形作り、更に、靴摺り19から車両側方に向けて延びるリップ20を設ける。
【0029】
靴摺り19及びリップ20は、ステップ本体2の側端部位16を覆っているロアカバー3の側面縁部を靴底から避ける役割と、踏面9から靴底が滑落しないようにする役割と、ステップ本体2に載って作業を行っている人間に踏面9の端を認識させる役割とを担い、特に、ロアカバー3に対するリップ20のオーバハングbを増やせば、ロアカバー3の靴などによる破損を防げる。
【0030】
更に、ロアカバー3の前面がステップ本体2の前面部位14に近接するようにして双方の間隔を狭め、ロアカバー3の前面縁部がステップ本体2の踏面9よりも突き出ないように形作り、靴底によってロアカバー3の前面縁部が損傷することを防いでいる。
【0031】
また、ステップ本体2の前面部位14側の踏面9をもう少し突出させて、ロアカバー3の前面縁部に被さるようにしてもよい。
【0032】
なお、本発明の可動ステップ幅端部構造は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の可動ステップ幅端部構造は、様々な車型に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の可動ステップ幅端部構造の一例において使用状態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の可動ステップ幅端部構造の一例において格納状態を示す縦断面図である。
【図3】図1のIII−III矢視図である
【図4】図3のIV−IV矢視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 アーム
2 ステップ本体
3 ロアカバー
6 No.1クロスメンバ(シャシフレーム)
9 踏面
13 底面部位
16 側端部位
19 靴摺り
20 リップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方へ向けて起立した姿勢、または前方へ向けて略水平に倒した姿勢となり得るようにシャシフレームに付帯する一対のアームと、当該アームの間に配設した作業用のステップ本体とを備え、アームが略水平な姿勢となった際に踏面が上方を向くようにステップ本体をアームに取り付け、ステップ本体の踏面とは反対に位置する部位、並びにステップ本体の左右の部位に覆い被さるロアカバーをステップ本体に装着し、アームのステップ本体に対応する個所に、踏面よりも突き出して靴底に干渉し得る靴摺りを形作ったことを特徴とする可動ステップ幅端部構造。
【請求項2】
それぞれのアームに靴摺りから車両側方に向けて延びるリップを設けた請求項1に記載の可動ステップ幅端部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−260480(P2008−260480A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106242(P2007−106242)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】