説明

可動デッキ及び該可動デッキを備えたシールド掘進機

【課題】エレクタ装置の旋回範囲と干渉し難い手摺を備えた可動デッキ、該可動デッキを有するシールド掘進機に係る技術を提供する。
【解決手段】本発明に係る可動デッキ19は、シールド掘進機1に設けられるものであって、該可動デッキ19はセグメント10を運搬するエレクタ装置11と干渉しないように変形可能に構成されると共に、シールド掘進機1の掘進方向と交差する面内において、回動動作をすることにより折畳み可能な折畳手摺23を備えることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機に設けられてエレクタ装置に干渉しないように変形可能な可動デッキ、および該可動デッキを備えるシールド掘進機に関する。
以下において、エレクタ装置が、セグメントを旋回させて運搬する運搬装置を備える場合、該運搬装置の旋回範囲又はその旋回範囲として画される空間を、エレクタ装置の旋回範囲又は旋回空間という場合がある。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機により掘り進められたトンネル掘削面に対してセグメントが組みつけられる。この組み付けはエレクタ装置によって行われるが、セグメント同士のボルトによる締結は作業員によって手作業によって行われる場合が多く、また位置の微調整に際して、作業員がセグメントに接近して目視確認する必要がある場合も多い。それ故、シールド掘進機には作業員の足場となる作業デッキが必要となる。
このような作業デッキは、シールド掘進機に対して固定されているもの(固定デッキ)と、可動なもの(可動デッキ)とに大別され、固定デッキと可動デッキの両方を備えるものもある。
【0003】
作業デッキは、その構成部材及び付属部材を含めて、エレクタ装置によるセグメント運搬作業時において運搬装置に干渉しないものでなければならない。固定デッキはそれ自体が固定であるため、エレクタ装置のいずれの状態においても干渉しないことが必要である。他方、可動デッキはそれ自体が可動であるため、エレクタ装置のセグメント運搬時には干渉しないように退避することが必要であるが、その運搬時の後、作業者によるセグメントへの必要なアクセスを可能にするために掘削壁面側に張り出すように構成される。
【0004】
このような可動デッキの例として、例えば、特許文献1にはシールド掘進機の作業デッキが記載されおり、この作業デッキは複数段のスライド足場装置を上下方向に備えており、各スライド足場装置は、エレクタ装置の旋回動作を阻害することのないタイミングで、エレクタ装置の旋回範囲内外に足場を設けることが可能になるように構成されている。
各足場装置は、作業デッキとして、固定手摺付きの固定足場(固定デッキ)とその固定足場にスライド可能に設けられた可動手摺付きの可動足場(可動デッキ)とを備えている。
(なお、以下の説明においては、従来技術との関係上区別して記載する場合を除き、可動足場は可動デッキとし、固定足場は固定デッキとして表記を統一して説明する。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−120198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術において、複数のスライド足場装置のうち一部は、可動デッキ及び可動手摺のスライド方向が、掘進方向であり、残りは掘進方向と垂直な方向である。このようなスライド動作を行う場合、可動手摺が例えば折り畳まれるような変形動作をしないままであると、エレクタの旋回範囲と干渉する可能性が高くなる。
したがって、シールド掘進機の径の大小に拘らず、可動手摺が変形動作をしてエレクタ装置の旋回範囲又は旋回空間と干渉しないものであることが望まれ、したがって可動足場(延いては作業デッキ)についてはこのような可動手摺を備えたものであることが望まれる。
【0007】
なお、特許文献1の図12に記載の固定手摺29は、エレクタ装置の旋回範囲の外側に旋回範囲を横切るように配置されているので、可動手摺30とともに抜き差し可能に構成されていると推察される。このように構成しない限り、エレクタ装置との干渉を回避できないからである。しかしながら、手摺がエレクタ装置と干渉しないようにするため、作業者が手摺を抜き差しするのは、作業者にとって煩瑣である。しかし、手摺の抜き差しが煩瑣であるからといって手摺を抜いたままで作業するのは危険である。
【0008】
また、可動デッキや可動手摺は、相対的に使用頻度が低い装置なので、不使用時においては作業者の作業の邪魔になるような構成は好ましくない。特に、可動デッキや可動手摺を動作させるための駆動装置やそれに動力を供給する付帯設備(油圧ホースや給電ケーブルを含む)が嵩張るようなものは好ましくない。さらに、コストアップを伴う高機能化も好ましいとはいえない。つまり、できるだけコンパクトで、コストを低く抑えられるものであることが望まれる。
【0009】
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであり、エレクタ装置の旋回範囲と干渉し難い手摺を備えた可動デッキ、該可動デッキを有するシールド掘進機に係る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための、本発明の第1の形態に係る可動デッキは、シールド掘進機に設けられる可動デッキであって、該可動デッキはその変形動作に連動して移動可能な手摺を備えることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第2の形態に係る可動デッキは、シールド掘進機に設けられる可動デッキであって、該可動デッキはセグメントを運搬するエレクタ装置と干渉しないように変形動作可能に構成されると共に、その変形動作に連動して移動可能な手摺を備えることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第3の形態に係る可動デッキは、シールド掘進機に設けられる可動デッキであって、該可動デッキはセグメントを運搬するエレクタ装置と干渉しないように変形動作可能に構成されると共に、折畳み可能な手摺を備え、その手摺の折畳み動作が、シールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間で水平移動する成分を有するものであることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第4の形態に係る可動デッキは、シールド掘進機に設けられる可動デッキであって、該可動デッキはセグメントを運搬するエレクタ装置と干渉しないように変形動作可能に構成されると共に、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内において、折畳み可能な手摺を備えることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第5の形態に係る可動デッキは、上記第1乃至4のいずれかの形態に係るものにおいて、前記エレクタ装置は、セグメントを旋回させて運搬する運搬装置を備え、前記可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、前記運搬装置の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に、前記手摺とともに配置可能であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第6の形態に係る可動デッキは、上記第1乃至第5のいずれかの形態に係るものにおいて、前記手摺は、前記可動デッキの変形動作との連動を可能にするリンク機構を備えることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第7の形態に係る可動デッキは、上記第1乃至第6のいずれかの形態に係るものにおいて、前記可動デッキの変形動作は、前記可動デッキのデッキ部がシールド掘進機の進行方向と交差する方向にスライド動作をすると共に手摺が折畳み動作するものであることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第8の形態に係る可動デッキは、上記第1乃至第7のいずれかの形態に係るものにおいて、前記可動デッキの変形動作は、作業台となるデッキ部の一端側を固定デッキ側に回動可能に連結され、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内で回動動作をすると共に手摺が折畳み動作するものであることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第9の形態に係るシールド掘進機は、上記第1乃至第8のいずれかの形態に係る可動デッキを備えたことを特徴とするものである。
【0019】
本発明の第10の形態に係るシールド掘進機は、微速旋回動作と該微速旋回動作よりも速い速度での旋回動作である通常速度旋回動作が可能なエレクタ装置と、作業者が作業を行う固定デッキと、該固定デッキに設置され、前記エレクタ装置と干渉しないように変形可能な可動デッキとを備えるシールド掘進機であって、
前記可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、折畳み可能な手摺を備え、
前記エレクタ装置が前記通常速度旋回動作しているときは、前記手摺がトンネル掘削壁面側から前記固定デッキ側に折り畳まれ、前記エレクタ装置が前記通常速度旋回動作していないときは、前記手摺が前記固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に向かって張出し可能であることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第11の形態に係るシールド掘進機は、上記第10の形態に係るものにおいて、前記手摺は、前記可動デッキの変形動作との連動を可能にするリンク機構を備えることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の第12の形態に係るシールド掘進機は、上記第10又は第11の形態に係るものにおいて、前記可動デッキの変形動作は、前記可動デッキのデッキ部がシールド掘進機の進行方向と交差する方向にスライド動作をすると共に手摺が折畳み動作するものであることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の第13の形態に係る可動デッキは、シールド掘進機に設けられる可動デッキであって、該可動デッキはセグメントを運搬するエレクタ装置と干渉しないように変形動作可能に構成されると共に、その変形動作に連動して移動可能な手摺を備え、該手摺は前記エレクタ装置と干渉しない位置においても手摺として機能することを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第14の形態に係る可動デッキは、前記第13の形態に係るものであって、前記手摺が、前記可動デッキのデッキ部の外方側と側面側の両方をガードするものであることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の第15の形態に係る可動デッキは、前記第13又は第14の形態に係るものにおいて、前記エレクタ装置は、セグメントを旋回させて運搬する運搬装置を備え、前記可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、前記運搬装置の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に、前記手摺とともに配置可能であることを特徴とするものである。
【0025】
本発明の第16の形態に係る可動デッキは、前記第13乃至第15の形態に係るものにおいて、前記手摺は、前記可動デッキの変形動作に連動して傾動することを特徴とするものである。
【0026】
本発明の第17の形態に係る可動デッキは、前記第13乃至第16の形態に係るものにおいて、前記可動デッキの変形動作は、前記可動デッキのデッキ部がシールド掘進機の進行方向と交差する方向にスライド動作をすると共に、前記手摺が前記デッキ部に設けられて傾動するものであることを特徴とするものである。
【0027】
本発明の第18の形態に係る可動デッキは、前記第17の形態に係るものにおいて、前記手摺と固定デッキ側とを連結するように設けられ、前記デッキ部のスライドに伴って変形可能な側方手摺を備えていることを特徴とするものである。
【0028】
本発明の第19の形態に係る可動デッキは、前記第13乃至第18の形態に係るものにおいて、前記可動デッキが固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に移動するときに前記手摺が前記固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に向かって起立し、前記可動デッキがトンネル掘削壁面側から前記固定デッキ側に移動するときに前記手摺がトンネル掘削壁面側から前記固定デッキ側に傾動することを特徴とするものである。
【0029】
本発明の第20の形態に係る可動デッキは、前記第13乃至第19の形態に係るものにおいて、前記手摺の起立状態を保持するロック機構を備えたことを特徴とするものである。
【0030】
本発明の第21の形態に係る可動デッキは、前記第13乃至第20の形態に係るものにおいて、前記ロック機構は、前記可動デッキの移動に連動してロック状態とロック解除状態を行なうことを特徴とするものである。
【0031】
本発明の第22の形態に係るシールド掘進機は、前記第13乃至第21の何れかに記載の可動デッキを備えたことを特徴とするものである。
【0032】
本発明の第23の形態に係るシールド掘進機は、微速旋回動作と該微速旋回動作よりも速い速度での旋回動作である通常速度旋回動作が可能なエレクタ装置と、作業者が作業を行う固定デッキと、該固定デッキに設置され、前記エレクタ装置と干渉しないように変形動作可能な可動デッキとを備えるシールド掘進機であって、
前記可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、傾動可能な手摺を備え、
前記エレクタ装置が前記通常速度旋回動作しているときは、前記可動デッキ及び前記手摺が前記エレクタ装置の旋回動作と干渉しない位置に配置され前記エレクタ装置が前記通常速度旋回動作していないときは、前記可動デッキが前記固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に移動可能で、且つ、前記手摺が前記固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に向かって起立可能であることを特徴とするものである。
【0033】
上記の各形態の説明における「変形動作可能に構成される」とは、種々の態様を含むものであり、その一例又は一態様としては、可動デッキのデッキ部(作業台部)がシールド掘進機の進行方向に交差する方向(直角の方向を含む)にスライドすると共に手摺が傾動をしてエレクタ装置の旋回範囲に対して出入りするものが挙げられる。
【0034】
また、「変形可能に構成される」の他の例又は他の態様としては、可動デッキのデッキ部(作業台部)がシールド掘進機の進行方向に交差する面内において回動すると共に手摺が折畳み動作をしてエレクタ装置の旋回範囲に対してから出入りするものが挙げられる。
【0035】
手摺の折畳み動作の一例又は一態様は、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内における回動動作によるものであり、他の例又は他の態様は、シールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間で水平移動する成分を有するような動作である。後者の動作、即ち、シールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間で水平移動する成分を有するような動作の典型例は、シールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間の水平方向に沿った伸縮動作であるが、前者の動作、即ち、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内における回動動作による折畳み動作においても、シールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間で水平移動する成分を有する限り、当該後者の動作に該当する。
【0036】
また、上記の各形態の説明において、エレクタ装置の旋回範囲に対して出入りするとは、それぞれ、エレクタ装置の旋回範囲から出ること及びエレクタ装置の旋回範囲に入ることを意味している。エレクタ装置の旋回範囲から出ると、エレクタ装置の旋回範囲外に配置されることになるので、エレクタ装置と干渉しないような位置関係になる。また、エレクタ装置の旋回範囲に入ると、エレクタ装置の旋回範囲内に配置されることになるので、エレクタ装置と干渉するような位置関係になる。
【0037】
また、「掘進方向と交差する面内」とは、作業台となるデッキ部の回動動作における回動方向が掘進方向と平行なものを排除する趣旨である。もっとも、回動動作によってデッキ部がエレクタ装置との干渉をよりよく避けることができるようにすることを考慮すると、この「掘進方向と交差する面内」は、掘進方向と垂直に近くなる方向であることがより望ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明の第1の形態によれば、可動デッキがその変形動作に連動して移動可能な手摺を備えているので、変形に要する空間が小さく、コンパクトでありながら、作業者にとって安全なものとなる。
本発明の第1の形態によれば、可動デッキがセグメントを運搬するエレクタ装置と干渉しないように変形動作可能に構成されると共に、その変形動作に連動して移動可能な手摺を備えるように構成されているので、変形に要する空間が小さくて済み、エレクタ装置の動作を阻害することもない。
それ故、本発明の第1及び第2の形態によれば、シールド掘進機が大口径である場合は勿論、小口径である場合であっても設置可能な可動デッキを実現できる。
【0039】
本発明の第3の形態によれば、可動デッキの手摺が、シールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間で水平移動する成分を有するような折畳み動作が可能なように構成されているので、第1及び第2の各形態の場合と同様、変形に要する空間が小さくて済む。それ故、シールド掘進機が大口径である場合は勿論、小口径である場合であっても設置可能な可動デッキを実現できる
【0040】
本発明の第4の形態によれば、可動デッキの手摺が、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内において、折畳み可能に構成されているので、可動デッキ全体として見たときに、水平移動する成分を有するような移動(例えば、シールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間の水平方向に成分を有するような移動)又は上下方向の変形が可能になっており、また、変形に要する空間も小さくて済む。それ故、シールド掘進機が大口径である場合は勿論、小口径である場合であっても設置可能な可動デッキを実現できる。
【0041】
本発明の第5の形態に係る可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、エレクタ装置が備える運搬装置の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に、手摺とともに配置可能であるので、シールド掘進機の径の大小に拘らず望ましい可動デッキ、延いては作業デッキを実現することができる。
【0042】
本発明の第6の形態に係る可動デッキは、可動デッキの変形動作との連動を可能にするリンク機構を備えるため、手摺の折畳み動作をさせるために別途駆動源を必要としない。また、可動デッキの変形動作に連動するように構成すれば、可動デッキが必要とされるときに手摺を使用可能な状態に設置することができ、作業者が手摺を別途設置するというような負担がなく合理的な構造にすることができる。
【0043】
本発明の第7の形態に係る可動デッキは、その変形動作を、前記可動デッキのデッキ部がシールド掘進機の進行方向と交差する方向にスライド動作をすると共に手摺が折畳み動作するように構成したので、デッキ部のスライドの如何なる位置においても、すなわちデッキ部が最も外方に移動していない状態であっても作業台としての機能を果すことができる。このことから、折畳み動作をする手摺がその手摺としての機能を果すようにするため、例えばデッキ部の外方へのスライドが所定量進行した時点で手摺の組立が完成できるように構成してもよい。
【0044】
本発明の第8の形態に係る可動デッキは、その変形動作が、作業台となるデッキ部の一端側を固定デッキ側に回動可能に連結され、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内で回動動作をすると共に手摺が折畳み動作するように構成したので、固定デッキの内側には可動デッキを構成する部材を配置する必要がなく、それ故に固定デッキ側に可動デッキに関係する部材を設置するためのスペースを確保する必要がなく、また固定デッキ側に設置される部材との干渉を考慮する必要もない。したがって、固定デッキ上で活動する作業員の作業領域を確保することができ、作業の邪魔になることもなく、安全性を確保することができる。例えば泥土式のシールド掘進機のようにシールド掘進機の中央部にスクリューコンベアが設置されるような場合であっても、可動デッキはスクリューコンベアとの干渉を考慮する必要がなく、シールド掘進機の組立作業を迅速に行うことができる。また、シールド掘進機が大口径である場合は勿論、小口径である場合であっても設置可能な可動デッキを実現できる。
【0045】
本発明の第9の形態に係るシールド掘進機は、上記第1乃至第8のいずれかの形態に係る可動デッキを備えているので、上記第1乃至第5の形態の奏する効果を奏することができる可動デッキを備えたシールド掘進機を実現できる。
【0046】
本発明の第10の形態に係るシールド掘進機は、可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、折畳み可能な手摺を備え、エレクタ装置が通常速度旋回動作しているときは、前記手摺がトンネル掘削壁面側から前記固定デッキ側に折り畳まれ、前記エレクタ装置が前記通常速度旋回動作していないときは、前記手摺が前記固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に向かって張出し可能であるように構成したので、エレクタ装置の動作との的確な連動が可能となる。つまり、エレクタ装置との干渉が問題となるエレクタ装置が通常速度旋回動作を行っているときには手摺が折り畳まれてエレクタ装置との干渉の危険がなく、またエレクタ装置が通常速度旋回動作していないときは、手摺を張出し可能であり、状況に応じて手摺を張出して作業をすることもできる。これにより、可動デッキに占有される空間が小さなシールド掘進機を実現することができる。この第10の形態は、小さい口径のシールド掘進機を実現する場合に、特に有益である。
【0047】
本発明の第11の形態に係るシールド掘進機は、前記手摺は、前記可動デッキの変形動作との連動を可能にするリンク機構を備えているので、第6の形態で説明したのと同様に、可動デッキの変形動作との連動を可能にするリンク機構を備えるため、手摺の折畳み動作をさせるために別途駆動源やアクチュエーターを必要としない。このような手摺の折畳み動作に別途駆動源やアクチュエーターを使わないため、それらの故障発生リスクも低く、従来同様のコンパクトなスペースに装備できる。また、可動デッキの変形動作に連動すれば、可動デッキが必要とされるときに手摺を使用可能な状態に組み立てることができ、合理的な構造にすることができる。
【0048】
本発明の第12の形態に係るシールド掘進機は、可動デッキの変形動作は、可動デッキのデッキ部がシールド掘進機の進行方向と交差する方向にスライド動作をすると共に手摺が折畳み動作するように構成したので、デッキ部のスライドの如何なる位置においても、すなわちデッキ部が最も外方に移動していない状態であっても作業台としての機能を果すことができる可動デッキを備えたシールド掘進機を実現できる。なお、折畳み動作をする手摺がその手摺としての機能を果すようにするため、例えばデッキ部の外方へのスライドが所定量進行した時点で手摺の組立が完成できるように構成してもよい。
【0049】
本発明の第13の形態によれば、可動デッキがその変形動作に連動して移動可能な手摺を備えているので、変形に要する空間が小さく、コンパクトでありながら、作業者にとって安全なものとなる。
本発明の第13の形態によれば、可動デッキがセグメントを運搬するエレクタ装置と干渉しないように変形動作可能に構成されると共に、その変形動作に連動して移動可能な手摺を備えるように構成されているので、変形に要する空間が小さくて済み、エレクタ装置の動作を阻害することもない。
さらに、本発明の第13の形態によれば、手摺は、エレクタ装置と干渉しない位置においても手摺として機能するので、可動デッキが退避状態にあるときでも作業者の落下を防止でき、安全性に優れている。
【0050】
本発明の第14の形態によれば、手摺が、可動デッキのデッキ部の外方側と側面側の両方をガードするものであるので、作業者の落下を効果的に防止でき、安全性に優れている。
【0051】
本発明の第15の形態によれば、エレクタ装置は、セグメントを旋回させて運搬する運搬装置を備え、可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、前記運搬装置の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に、前記手摺とともに配置可能であるので、シールド掘進機の径の大小に拘らず望ましい可動デッキ、延いては作業デッキを実現することができる。
【0052】
本発明の第16の形態によれば、手摺は、前記可動デッキの変形動作に連動して傾動するので、手摺を傾動させるために別途駆動源を必要としない。また、可動デッキの変形動作に連動するように構成しているので、可動デッキが必要とされるときに手摺を使用可能な状態に設置することができ、作業者が手摺を別途設置するというような負担がなく合理的な構造にすることができる。
【0053】
本発明の第17の形態によれば、可動デッキの変形動作は、前記可動デッキのデッキ部がシールド掘進機の進行方向と交差する方向にスライド動作をすると共に、前記手摺が前記デッキ部に設けられて傾動するものであるので、デッキ部のスライドの如何なる位置においても、すなわちデッキ部が最も外方に移動していない状態であっても作業台としての機能を果すことができる。なお、傾動をする手摺がその手摺としての機能を果すようにするため、例えばデッキ部の外方へのスライドが所定量進行した時点で手摺の起立が完了できるように構成してもよい。
また、手摺がスライドするデッキ部に設けられているので、手摺はデッキ部の移動に伴って例えば内外方向に移動する。したがって、手摺自体に内外方向に移動する移動機構を設ける必要がなく、構造が簡単になる。
【0054】
本発明の第18の形態によれば、手摺と固定デッキ側とを連結するように設けられ、前記デッキ部のスライドに伴って変形する側方手摺を備えているので、デッキ部が外方にスライドしたときに側方手摺が手摺として機能し、デッキ部の安全性をより高めている。
【0055】
本発明の第19の形態によれば、可動デッキが固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に移動するときに手摺が前記固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に向かって起立し、前記可動デッキがトンネル掘削壁面側から前記固定デッキ側に移動するときに前記手摺がトンネル掘削壁面側から前記固定デッキ側に傾動するようにしたので、変形に要する空間が小さくて済み、それ故、シールド掘進機が大口径である場合は勿論、小口径である場合であっても設置可能な可動デッキを実現できる。
【0056】
本発明の第20の形態によれば、手摺の起立状態を保持するロック機構を備えたので、手摺の起立状態を確実に保持でき、それ故に安全性がより向上する。
【0057】
本発明の第21の形態によれば、ロック機構は、可動デッキの移動に連動してロック状態とロック解除状態を行なうようにしたので、必要なときに自動的にロックとロック解除がなされるので作業者は手摺のロックを意識する必要がなく便利である。
【0058】
本発明の第22の形態に係るシールド掘進機は、前記第13乃至第21の何れかに記載の可動デッキを備えているので、上記第13乃至第21の形態の奏する効果を奏することができる可動デッキを備えたシールド掘進機を実現できる。
【0059】
本発明の第23の形態に係るシールド掘進機は、前記可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、傾動可能な手摺を備え、前記エレクタ装置が前記通常速度旋回動作しているときは、前記可動デッキ及び前記手摺が前記エレクタ装置の旋回動作と干渉しない位置に配置され、前記エレクタ装置が前記通常速度旋回動作していないときは、前記可動デッキが前記固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に移動可能で、且つ、前記手摺が前記固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に向かって起立可能であるように構成したので、いかなるときにおいても、可動デッキ及び手摺がエレクタ装置と干渉する危険がなく、従って可動デッキと手摺がエレクタ装置の旋回動作を妨げることなくエレクタ装置の動作との的確な連動が可能となる。
【0060】
なお、エレクタ装置が通常速度旋回動作しているときに、可動デッキと手摺がエレクタ装置の旋回動作と干渉しない位置に配置されることは、エレクタ装置が通常速度旋回動作しているときに、可動デッキと手摺がエレクタ装置(特にセグメントを旋回させて運搬する運搬装置)の旋回範囲よりも内側に配置されることと実質的に同義である。エレクタ装置が通常速度旋回動作しているときに、可動デッキと手摺がエレクタ装置の旋回動作と干渉しない位置に配置されるためには、可動デッキが固定デッキ側に完全に移動している状態及び/又は手摺が固定デッキ側に完全に傾いている状態であることまで必要とされず、可動デッキが固定デッキ側に完全に移動していなくても、或いは手摺が固定デッキ側に完全に傾いていなくても、可動デッキと手摺がエレクタ装置の旋回動作と干渉しない位置に配置されていれば足り、本発明の第23の形態の射程内となる。
【0061】
また、エレクタ装置が前記通常速度旋回動作していないときに、可動デッキが固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に移動可能で、且つ、手摺が固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に向かって起立可能であることは、実際に、可動デッキが固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に移動しており、且つ、手摺が固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に向かって起立していることまで必要とされず、可動デッキが固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に移動することができる状態にあり、且つ、手摺が固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に向かって起立することができる状態にあれば足り、本発明の第23の形態の射程内となる。
【0062】
本発明の各形態が奏するその他の効果及び本発明のその他の形態が奏する効果については、本発明の実施形態において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施の形態に係る可動デッキの説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係るシールド掘進機の内部の平面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係るシールド掘進機の内部の側面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係るシールド掘進機の内部の斜視図である。
【図10】エレクタ装置の説明図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る可動デッキの説明図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図14】本発明の他の実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図15】本発明の他の実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図16】本発明の他の実施の形態に係るシールド掘進機の内部の平面図である。
【図17】本発明の他の実施の形態に係るシールド掘進機の内部の側面図である。
【図18】本発明の他の実施の形態に係るシールド掘進機の内部の斜視図である。
【図19】本発明の他の実施の形態に係るシールド掘進機の他の態様の内部の平面図である。
【図20】本発明の他の実施の形態に係るシールド掘進機の他の態様の内部の側面図である。
【図21】本発明の他の実施の形態に係る可動デッキを備えたシールド掘進機の構築工程の説明図である。
【図22】本発明の他の実施の形態に係る可動デッキを備えたシールド掘進機の構築工程の説明図である。
【図23】本発明の他の実施の形態に係る可動デッキの説明図である。
【図24】図23(a)に示した可動デッキの一部であるA部を拡大して示す説明図である。
【図25】図24に示した可動デッキの一部を、角度を変えて示した説明図であり、図25(a)は図24(a)の矢印A方向から見た状態を示し、図25(b)は図24(b)の矢印B方向から見た状態を示している。
【図26】図23(b)に示した可動デッキの一部であるB部を拡大して示す説明図である。
【図27】図26(b)の矢視A−A断面図である。
【図28】本発明の他の実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図29】図28(b)(c)に示した可動デッキの一部を、側面側から見た状態を示した説明図である。
【図30】本発明の他の実施の形態に係るシールド掘進機の内部の平面図である。
【図31】本発明の他の実施の形態に係るシールド掘進機の内部の側面図である。
【図32】本発明の他の実施の形態に係るシールド掘進機の内部の斜視図である。
【図33】エレクタ装置の説明図である。
【図34】本発明の他の実施の形態に係る可動デッキの作用を説明する説明図であり、可動デッキとエレクタ装置の旋回範囲との関係を示す説明図である。
【図35】本発明の他の実施の形態に係る可動デッキの他の態様の説明図である。
【図36】本発明の他の実施の形態に係る可動デッキの他の態様の説明図である。
【図37】本発明の他の実施の形態に係る可動デッキの他の態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下の説明において、必要に応じて図面を参照しつつ説明するが、各図面において同じ部分又は相当する若しくは共通する部分には共通の符号を付し、一部の説明を省略する場合がある。
なお、言うまでもなく、本発明は、図面に記載された実施の形態や実施例に限定されない。また、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。更に本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものであり、本発明に関する用語の定義はその均等の適用を妨げるものではない。
【0065】
[実施の形態1]
本実施の形態においては、本発明における可動デッキの「変形動作可能に構成される」の一つの態様として、可動デッキのデッキ部(作業台部)がシールド掘進機の進行方向に対して直角の方向にスライドすると共に手摺が折畳み動作をしてエレクタ装置の旋回範囲に対してから出入りするものを示す。
【0066】
図1〜図5は本発明の実施の形態に係る可動デッキの説明図、図7は本実施の形態の可動デッキを備えたシールド掘進機の内部構造を説明する説明図でありシールド掘進機を平面視した図、図8は同じく本実施の形態の可動デッキを備えたシールド掘進機の側面図、図9は同じく本実施の形態の可動デッキを備えたシールド掘進機の内部構造を示す斜視図である。
以下においては、可動デッキの説明に先立って図7〜図9に基づいてシールド掘進機の内部構造を説明し、その後で可動デッキについて説明する。
なお、以下の説明において、方向を示す「前」「前方」とはシールド掘進機の進行方向を言い、「後」「後方」とはその逆を言う。
また、可動デッキの移動方向を示すときに用いる「外」「外方」とはシールド掘進機側から掘削壁面側に向かう方向を言い、「内」「内方」とはその逆を言う。
【0067】
シールド掘進機1は、前胴部3と後胴部5を備えてなる。前胴部3の前端にはカッタヘッド7を有している。前胴部3の後部から後胴部5にかけてシールド掘進機1を推進させるためのシールドジャッキ9が設置されている。そして、このシールドジャッキ9のすぐ後方には、セグメント10を把持して所望の位置まで運搬して設置するエレクタ装置11が設けられている(図10参照)。エレクタ装置11はセグメントを把持する把持部13と、把持部13を所望の位置まで移動するアーム部15とを備えている。
エレクタ装置11の後方には固定デッキ17が設置されている。そして、この固定デッキ17の上部でかつ前方寄りの部分の両側に可動デッキ19が設置されている。
可動デッキ19は、図9の配置から容易に推察できるように、エレクタ装置11のアーム部15の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に設置されている。
【0068】
可動デッキ19は、シールド掘進機1の進行方向に対して直交する方向にスライド可能に構成されており、図7においては、片側の可動デッキ19が外方に移動しており、他方が内方に移動した状態が示されている。図7においては、シールド掘進機1の後方から前方に向かって左側の可動デッキ19が外方に移動した状態にあり、右側の可動デッキ19が内方に移動した状態にある。なお、図7においては、可動デッキ19の構造は簡略化して示している。
【0069】
以上の説明から理解されるように、可動デッキ19は、シールド掘進機1の後胴部5における固定デッキ17に設置され、エレクタ装置11の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に配置されることから、エレクタ装置11の稼動状況に応じてエレクタ装置11の旋回範囲に入ったり、出たりするようになっている。
【0070】
次に、図1に基づいて本実施の形態の可動デッキ19の構造を説明する。図1は可動デッキ19を外方に移動した状態を示しており、図1(a)が斜視図、図1(b)が側面図である。なお、説明を明確にするのに必要なときには図2〜図4を適宜参照する。
可動デッキ19は、内外方向にスライド可能なデッキ部21と、デッキ部21のスライドに連動して折畳み動作を行う折畳式手摺23とを備えている。
デッキ部21は、固定デッキ17に設置されたガイドレール25と、このガイドレール25に両側をガイドされて内外方向にスライド可能に設置された矩形状のデッキ枠27と、デッキ枠27の枠内に設置されて作業台となるデッキプレート29を備えている。
デッキ枠27における両側部には、その外方寄りの位置に第1ローラ31が設置され(図1(b)参照)、中程の位置に第2ローラ33が設置されている(図1(a)参照)。
また、デッキ枠27の両側外端部には、外方に向かって開口する鉤状部35が形成され、この鉤状部35の外端側には下方に向かって傾斜する傾斜部37が形成されている(図4参照)。
さらに、デッキ枠27を内外方向に駆動するためのジャッキ(図示なし)が、固定デッキ17側に設けられている。
【0071】
折畳式手摺23は、デッキ部21を挟むようにして固定デッキ17に立設された一対の柱部材39と、この一対の柱部材39の上端部に内端側が回動可能に連結された一対の側部上段アーム41と、内端側が固定デッキ17に回動可能に連結された側部下段アーム43と、これら一対の側部上段アーム41と側部下段アーム43の外端側に回動軸を介して連結された前部枠45を備えており、これら一対の側部上段アーム41及び側部下段アーム43と、前部枠45がリンク機構を構成している。
一対の柱部材39にはデッキ部21を横断するように両者を繋ぐ横棒47が設けられている。この横棒47は、デッキ部21の剛性確保の機能やデッキ部21が浮き上がるのを防止する機能を有しているものであるが、これらの機能に加えてデッキ部21が内方に移動しきったときに、作業者がデッキ部21から不用意に出るのを防止する安全柵としても機能する(図2(a)参照)。
側部上段アーム41の中央よりも内端部寄りの位置には、側部上段アーム41の軸線に直交する方向かつ下方に延出する腕部49が設けられている。
また、前部枠45は、一対の側部上段アーム41及び側部下段アーム43の外端と連結されている矩形状枠部45aと、この矩形状部の上辺部に連結されて逆U字状に形成された逆U字枠部45bを備えている。そして、矩形状枠部45aの下辺の両側部には第3ローラ51が設置されている(図1(a)参照)。
【0072】
図2〜図5は上記のように構成された可動デッキ19の動作を説明する動作説明図であり、図2はデッキ部21が内方に移動して、折畳式手摺23が折り畳まれた状態を示している。また、図3以降は図2の状態からデッキ部21が外方にスライドして行く様子を示しており、図5の状態が図1と同様にデッキ部21が外方に移動しきって折畳式手摺23が組み立てられた状態(設置された状態)を示している。
以下、図2〜図5に基づいて可動デッキ19の動作を説明する。
【0073】
図2に示すように、デッキ部21が内方に移動した状態にあるときは、側部上段アーム41、側部下段アーム43共に外端側が下方斜めに向いており、全体が折り畳まれた状態にある。この状態では、図2(b)に示されるように、デッキ枠27に設けられている第1ローラ31が側部上段アーム41の内端寄りの部分に当接している。
図2に示す状態では、可動デッキ19全体がエレクタ装置11の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置にあり、エレクタ装置11と干渉することはない。
【0074】
図2に示す状態から、図示しないジャッキによってデッキ部21が外方に移動すると、図3に示されるように、側部上段アーム41が第1ローラ31に押されて内端側を回動の支点として回動する。側部上段アーム41が回動すると、これに連結された前部枠45が持ち上げられ、さらに前部枠45に連結された側部下部アームが内端側を回動の支点として回動する。このような動作によって、折畳式手摺23は、図3に示されるように、全体が矩形枠状になるように折り広げられていく。
【0075】
デッキ部21がある程度外方に移動すると、図4に示すように、側部上段アーム41に設置された腕部49における固定デッキ側の面に第2ローラ33が当接し、第2ローラ33が腕部49を押すことで、側部上段アーム41がさらに回動する。腕部49の下端部は図4(b)に示されるように円弧状に形成されており、デッキ部21が外方に移動するに従って、第2ローラ33が腕部49の下端部へ回り込み、腕部49を押し上げるようになるので、側部上段アーム41がさらに回動する。
そして、デッキ部21がさらに外方に移動すると、デッキ枠27の外端部に形成された傾斜部37と前部枠45の下部に設置された第3ローラ51が当接する。そして、さらにデッキ部21が外方に移動すると、第3ローラ51がデッキ枠27の外端の傾斜部37を上り、鉤状部35に挿入されて動作が完了する(図5参照)。
【0076】
この状態では、図5に示されるように、折畳式手摺23が完全に折り広げられ、すなわち組み立てられ、デッキ部21を囲むようにデッキ部21の両側部には側部上段アーム41が配置され、デッキ部21の前端部には前部枠45が設置された状態となる。つまり、側部上段アーム41が側部手摺を構成し、前部枠45が前部手摺を構成している。前部枠45は、矩形状枠部45aと逆U字枠部45bの2段構造になっており、高さがあるので作業者の落下を確実に防止できる。
【0077】
図5に示す状態において作業者はデッキ部21において作業をすることになるが、このときデッキ枠27の先端部の鉤状部35に前部枠45の第3ローラ51が挿入されているので、作業者が前部枠45に寄りかかったりしても前部枠45が不安定になることがない。逆に、デッキ枠27が完全に外方に移動しきっていない状態、すなわち第3ローラ51がデッキ枠27の先端部の鉤状部35に挿入されていない状態であるときには作業者にそれを知らせる警報手段を設けるようにするのが望ましい。
【0078】
次に、上記のように構成された可動デッキ19を、図5に示す状態から内方に移動して図2に示す状態に戻す動作について説明する。この場合の動作は、上述した図2〜図5の動作の逆の動作になる。すなわち、図5に示される状態から、デッキ部21を内方に移動させると、デッキ枠27の先端の鉤状部35から第3ローラ51が抜け出し、第3ローラ51が鉤状部35から抜け出すと図4に示すように腕部49の下部が第2ローラ33に当接して側部上段アーム41を支持する。そして、さらにデッキ部21が内方に移動すると、第2ローラ33が腕部49の下端部に沿って移動する。このような動作に従って折畳式手摺23は、その外端側が下方に向かって回動して徐々に折り畳まれていく。
そして、デッキ部21がさらに内方に移動すると、次に、第1ローラ31が側部上段アーム41に当接してこれを支持する。そして、第1ローラ31が側部上段アーム41を支持しながら内方に移動して、最終的には図2の状態になる。
【0079】
図2の状態では、横棒47が安全柵として機能するが、さらに安全柵としての機能を付加するためには、例えば柱部材39に保持部を設けておき、その保持部に手動で手摺を差し込むようにすればよい。
図2の状態では、折畳式手摺23はエレクタ装置11の旋回範囲の内側に収まっており、エレクタ装置11と干渉することはない。
【0080】
図6は図2〜図6の各図の(b)図を上から順に(A)〜(D)として並べたものであり、折畳式手摺23が回動動作を行い、かつ可動デッキ19が変形動作を行っていることを説明する説明図である。以下、折畳式手摺23が回動動作と可動デッキ19の変形動作について説明する。
【0081】
<折畳式手摺の動作について>
1.回動動作としての側面
折畳式手摺23を構成する側部上段アーム41は固定デッキ17側に立設された柱部材39に回動可能に連結された内端側を回動の支点とし、外端側が円弧軌道を描くように回動動作を行う。また、側部下段アーム43は固定デッキ17側に回動可能に連結された内端側を回動の支点とし、外端側が円弧軌道を描くように回動動作を行う。そして、前部枠45はこれら側部上段アーム41及び側部下段アーム43の外端側に回転可能に連結されているので、柱部材39を含む固定デッキ17側を固定リンクと見れば前部枠45、側部上段アーム41及び側部下段アーム43の各リンクから構成される折畳式手摺23全体が固定リンク側を回動の支点として図6(A)の矢印Pで示すような回動動作を行っていると見ることができる。
折畳式手摺23は、上記のような回動動作を、図6(A)の矢印Qで示す外内方向にデッキ部21が移動するスライド動作に応じて行う。
【0082】
2.並進移動動作としての側面
上記1において説明した折畳式手摺23の折畳み動作は、シールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間で水平移動する成分を有するような動作でもある。即ち、図6(A)の矢印Qで示すようなデッキ部21のスライド動作に伴う手摺23の動作を水平方向に投影すると、その動作は、同図の矢印Rで示す範囲を水平方向に移動するという水平方向(特にシールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間の水平方向)の移動を伴うものになる。要するに、折畳式手摺23は、図6(D)の矢印Rで示すような、水平移動成分を伴う動作を、同図(A)の矢印Qで示す外内方向にデッキ部21が移動するスライド動作に応じて行う。
【0083】
<可動デッキの変形動作について>
可動デッキ19は、前述のように、デッキ部21と折畳式手摺23から構成される。そして、折畳式手摺23は上述のように全体として回動動作を行い、この回動動作に伴って折畳まれたたり、折広げられたりするという変形動作を行う。また、デッキ部21はスライド動作により図6(A)の矢印Qで示す外内方向に移動する。したがって、可動デッキ19全体として見ると、デッキ部21の移動動作に伴って折畳式手摺23の変形動作を行っており、全体としてエレクタ装置と干渉しないように変形可能になっている。
【0084】
<デッキ部のスライド動作との連動について>
上記のとおり、図6(A)の矢印Pで示すような折畳式手摺23の回動動作、及びその回動動作に伴って折畳まれたたり、折広げられたりする可動デッキの変形動作は、図6(A)の矢印Qで示すようなデッキ部21のスライド動作に連動して起こる。
図6(D)の矢印Rで示すような折畳式手摺23の水平移動成分を伴う移動動作も、図6(A)の矢印Qで示すようなデッキ部21のスライド動作に連動して起こる。
【0085】
以上のように、本実施の形態の可動デッキ19によれば、可動デッキ19が外方に移動するときには、その動作に連動して折畳式手摺23が組み立てられ、また可動デッキ19が内方に移動するときにはその動作に連動して折畳式手摺23が移動する又は折り畳まれるので、変形に要する空間が小さくて済む。それ故、シールド掘進機が大口径である場合は勿論、小口径である場合であっても設置可能な可動デッキを実現できる。
また、本実施の形態の可動デッキ19によれば、手摺の設置や除去動作が不要になる。つまり、特別なアクチュエーター等を使用せずに、可動デッキ19の動作に連動して自動的に設置される折畳式手摺23を装備しているので、作業者が意識することなく、常に可動デッキ19の利用時には手摺がセッティングされることになり、可動デッキ19使用時の安全性が向上する。また、手摺の動作にアクチュエーターを使わないため、それらの故障発生リスクも低く、従来同様のコンパクトなスペースに装備できる。
さらに、本実施の形態の折畳式手摺23は、シールド掘進機1の進行方向に垂直な面内において、内端側を支点として回動する動作をするため、折り畳まれた状態においてエレクタ装置11のアームの旋回範囲の内側に確実に入れることができ、それ故にエレクタ装置11との干渉を確実に回避することができる。
【0086】
なお、エレクタ装置11の動作としては、セグメント組み立て動作を行う場合のように通常の作業時の速度で旋回動作を行う場合(通常速度旋回動作)と、通常速度旋回動作よりもゆっくりした動作を行う微速旋回動作を行うことができる。そのため、このようなエレクタ装置の動作と可動デッキ19の動作とを関連付けしておくことが安全上望ましい。
そのための具体的手段としては、可動デッキ19の退避状態(最も内方に移動した状態)をリミットスイッチで監視しており、可動デッキ19が退避している時に限り、エレクタ装置11に通常速度旋回を許可するようにインターロックをプログラミングし、このプログラムに基づいて制御するようにすればよい。このようにすれば、可動デッキ19が外方に移動を始め、リミットスイッチが切れた時点でエレクタ装置11側にインターロックが働き、エレクタ装置11が停止する。
また、さらに安全性を増すには、上記の制御に加えて可動デッキ19側にもインターロックをプログラミングし、エレクタ装置11が通常速度旋回動作を行っているときには可動デッキ19が動作しないように制御すればよい。
【0087】
実施の形態1の可動デッキ19を備えることにより、以上述べてきた可動デッキ19に係る効果を奏するシールド掘進機(例えば、可動デッキに占有される空間が小さく、それでいて安全なシールド掘進機)を実現することができる。
【0088】
[実施の形態2]
本実施の形態においては、本発明における可動デッキの「変形動作可能に構成される」の一つの態様として、可動デッキのデッキ部(作業台部)シールド掘進機の進行方向に交差する面内において回動すると共に手摺が折畳み動作をしてエレクタ装置の旋回範囲に対して出入りするものを示す。
図11〜図15は本発明の実施の形態に係る可動デッキの説明図、図16は本実施の形態の可動デッキを備えたシールド掘進機の内部構造を説明する説明図でありシールド掘進機を平面視した図、図17は同じく本実施の形態の可動デッキを備えたシールド掘進機の側面図、図18は同じく本実施の形態の可動デッキを備えたシールド掘進機(後胴部)の内部構造を示す斜視図である。
以下においては、可動デッキがシールド掘進機の内部においてどのような位置に配置されるかを説明するため、可動デッキの説明に先立って図16〜図18に基づいてシールド掘進機の内部構造を説明し、その後で可動デッキについて説明する。
【0089】
シールド掘進機61は、前胴部63と後胴部65を備えてなる。前胴部63の前端にはカッタヘッド67を有している。前胴部63の後部から後胴部65にかけてシールド掘進機61を推進させるためのシールドジャッキ69が設置されている。そして、このシールドジャッキ69のすぐ後方には、セグメント70を把持して所望の位置まで運搬して設置するエレクタ装置71が設けられている(図10参照)。エレクタ装置71はセグメント70を把持する把持部73と、把持部73を所望の位置まで移動するアーム部75とを備えている。
エレクタ装置71の後方には固定デッキ77が設置されている。そして、この固定デッキ77の上部でかつ前方寄りの部分の両側に可動デッキ79が設置されている。
可動デッキ79は、図18の配置から容易に推察できるように、エレクタ装置71のアーム部75の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に設置されている。
【0090】
可動デッキ79は、シールド掘進機61の進行方向に対して直交する面内で回動可能に構成されている。図16においては、シールド掘進機61の後方から前方に向かって左側に設定されている可動デッキ79は、水平になって使用可能な状態になっており、右側の可動デッキ79は、先端側が下方に向くように回動して使用できない状態になっている。
なお、図16においては、可動デッキ79の構造は簡略化して示している。
【0091】
以上の説明から理解されるように、可動デッキ79は、シールド掘進機61の後胴部65における固定デッキ77に設置され、エレクタ装置71の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に配置されることから、エレクタ装置71の稼動状況に応じてエレクタ装置71の旋回範囲に入ったり、あるいは出たりするようになっている。
【0092】
次に、図20に基づいて本実施の形態の可動デッキ79の構造を説明する。図11は可動デッキ79が外方に張り出して使用可能な状態を示しており、図11(a)が斜視図、図11(b)が側面図である。なお、説明に必要なときには図12〜図14を適宜参照する。
【0093】
可動デッキ79は、固定デッキ77に設置されたブラケット80を介して固定デッキ77に取り付けられている。可動デッキ79を固定デッキ77に取り付けるためのブラケット80は、略矩形の枠状に形成されており、その上辺側が固定デッキ77の上面に固定され、下辺側を固定デッキ77の外側部に張り付くように設置されている。
なお、可動デッキ79は本例に示したようなブラケット80を介して取り付けなくても、固定デッキ77側に可動デッキ79を取り付けるための部材等があればそれで代用してもよい。
【0094】
可動デッキ79は、シールド掘進機61の進行方向に略直交する面内で回動可能なデッキ部81と、デッキ部81の回動に連動して折畳み動作を行う折畳式手摺83と、デッキ部81の回動を駆動する駆動機構部85とを備えている。
デッキ部81は、矩形状のデッキ枠87と、デッキ枠87の枠内に設置されて作業台となるデッキプレート89を備えている。そして、デッキ部81は、デッキ枠87の両端部をブラケット80の縦辺中程よりも少し上の位置に回動可能に設置することによって、ブラケット80に取り付けられている。
【0095】
折畳式手摺83は、デッキ部81の両側部に配置された側方手摺91と、デッキ部81の前部に設けられた前手摺93から構成されている。側方手摺91は、一端側がブラケット80の上端部に回動可能に連結され、他端側が前手摺93にピン結合された一対の管部材によって構成されている。前手摺93は側方手摺91と同様に管部材からなり、下端側がデッキ枠87の先端側に回動可能に取り付けられた矩形枠部95と、この矩形枠部95の上辺に逆U字状に形成された逆U字部97を連結して構成されている。
上記のように構成された折畳式手摺83によってデッキ部81の両側部と前部が囲まれ、デッキ部81上の作業者がデッキ部81から落下するのを防止できるようになっている。
【0096】
駆動機構部85は、基端側がブラケット80の下部に回動可能に取り付けられた矩形枠状の第1駆動枠部材99と、第1駆動枠部材99の先端側に一端側が回動可能に連結され、他端側がデッキ枠87の先端側に回動可能に連結された矩形枠状の第2駆動枠部材101と、本体部103がブラケット80に回動可能に取り付けられ、ロッド105の先端が第1駆動枠部材99に回動軸を介して連結された一対の駆動ジャッキ107を備えて構成されている。
このように構成された駆動機構部85は、駆動ジャッキ107のロッド105を伸縮することによって、第1駆動枠部材99を回動させ、これに連動して第2駆動枠部材101が連動し、さらに第2駆動枠部材101の回動に連動してデッキ部81が回動すると共に折畳式手摺83の折畳み及び折拡げ動作が行われる。
【0097】
図12〜図15は上記のように構成された可動デッキ79の動作を説明する動作説明図であり、図12はデッキ部81の先端側が斜め下方に向き、折畳式手摺83が折り畳まれた状態を示している。また、図13以降は図12の状態からデッキ部81が回動して行く様子を示しており、図14の状態が図11と同様にデッキ部81がほぼ水平になってデッキ部81が使用可能になると共に折畳式手摺83が組み立てられた状態(設置された状態)を示している。図15は図12〜図14に示した側面図を連続して示すものである。
以下、図12〜図15に基づいて可動デッキ79の動作を説明する。
【0098】
図12に示すように、デッキ部81の先端側が斜め下方に向いた状態にあるときは、折畳式手摺83は折り畳まれた状態にある。この状態では、デッキ部81は、全体が固定デッキ77の側部に近接して配置される。また、折畳式手摺83における前手摺93及び側方手摺91はデッキ部81のデッキプレート89に倒れこむように近接して配置されている。したがって、図12に示す状態では、可動手摺全体が固定デッキ77の側面に張り付くように配置され、エレクタ装置71の旋回範囲の内側にあり、エレクタ装置71と干渉することはない。
【0099】
図12に示す状態から、駆動ジャッキ107のロッド105を伸張させると、第1駆動枠部材99が一端側を基点にして図13(b)の矢印Aに示す方向に回動して外方に押し出されるように動作する。また、第1駆動枠部材99の動作に連動して第2駆動枠部材101は、全体が外方に押し出されると共に、基端側を回動の支点として図13(b)の矢印Bに示す方向に回動する。さらに、第2駆動枠部材101の動作に連動して、デッキ部81が基端側を回動の支点として図13(b)の矢印Cで示す方向に回動する。またさらに、デッキ部81が回動することにより、これに連結された前手摺93が下端側を回動の支点として図13(b)の矢印Dに示す方向に回動し、これに連れて側方手摺91が基端側を回動の支点として図13(b)の矢印Eに示す方向に回動する。
すなわち、駆動ジャッキ107のロッド105が伸張を開始すると、デッキ部81が張り出しを開始すると共に折畳式手摺83は、図13(a)に示されるように、デッキ部81を囲むような矩形枠状に組み立てられていく。
【0100】
さらに、駆動ジャッキ107のロッド105が伸張されると、可動デッキ79を構成する各部材が図13に示した状態からさらに回動する。そして、図14に示すように、デッキ部81が略水平状態になると共に前手摺93が垂直に立ち上がり、側方手摺91がほぼ水平な状態となる。この状態では、折畳式手摺83が完全に折り広げられ、すなわち組み立てられ、デッキ部81の両側部には側方手摺91が設置され、デッキ部81の前端部には前手摺93が設置されてデッキ部81を囲む状態となる。前手摺93は、矩形状枠部と逆U字枠部の2段構造になっており、高さがあるので作業者の落下を確実に防止できる。
【0101】
この状態においてデッキ部81上に作業者が乗ると、デッキ部81に作用する力が第2駆動枠部材101及び第1駆動枠部材99を回動させるように作用する。そのため、これらの部材が回動しないようにするためのストッパを設ける必要がある。
本実施の形態においては、図14(b)に示すように、第1駆動枠部材99と第2駆動枠部材101で形成される外角αが180°を超えるように設定されている。デッキ部81に作業者が乗ると、第2駆動枠部材101を介して第1駆動枠部材99に荷重が作用するが、この作用する力の方向が第1駆動枠部材99を、図14(b)の矢印Aで示す方向となり、これは駆動ジャッキ107のロッド105を伸張させる方向となる。したがって、図14に示す状態で駆動ジャッキ107のロッド105が最大伸張されているように設定すれば、ロッド105はそれ以上伸張せず、ロッド105が第1駆動枠部材99の回動を規制するストッパとして機能する。したがって、万が一の不具合、例えば油圧ホースからの油漏れなどが発生しても、可動デッキ79が回動することはなく安全である。
なお、本実施の形態では可動デッキ79のデッキ部81が図14に示すように水平になった状態で、駆動ジャッキ107のロッド105が最大伸張されるように設定されているので、別途ストッパを設ける必要がない。もっとも、デッキ部81が水平にセットされた状態で駆動機構部85を構成する各部材間の回動を規制するための機械的ストッパを設けるようにしてよく、そのようにすれば、より安全性が増す。
【0102】
なお、可動デッキ79を張り出し操作の途中で停止させた場合、折畳式手摺83の設置が不十分であったり、デッキ部81が傾斜した状態となっていたりして危険であるため、以下に示すような安全機構を設けるのが望ましい。
<安全機構>
駆動ジャッキ107又は可動デッキ79本体に「デッキの張り出し完了状態」を検知できるリミットスイッチ(以下「LS」という。)を設けておき、使用時の手順を以下のように行う。
(i) 操作者が、例えば操作スイッチ等を押して可動デッキ79の張り出し動作を指示する。
(ii) 駆動ジャッキ107が所定動作(一般的にはロッド伸張動作)を開始する。
(iii) 上記LSが検知されると、駆動ジャッキ107は所定動作を自動的に停止し、同時に、別途設置されている操作完了報知装置(または灯)にて、周囲に「可動デッキ張り出し完了」を知らしめる合図を発する。なお、操作完了報知の態様としては「音声(ブザー音等含む)」または「音声と回転灯の回転(視覚的表示)との併用」などが考えられる。
(iv) 作業者(可動デッキ79に乗り込む人)は、上記3の合図を確認した上で、作業デッキに乗り込むようにする。
なお、可動デッキ79の乗り込み口付近に別の安全柵(手摺)を設けておき、「張り出し完了」後にこの安全柵を自動的に開けるようにしたり、あるいは安全柵のロックを自動的に解除したりして、手動操作にて安全柵を開けられるようにしてもよい。
【0103】
次に、上記のように構成された可動デッキ79を、図14に示す状態から固定デッキ77側に回動させて図12に示す状態に戻す動作について説明する。この場合の動作は、上述した図12〜図14の動作の逆の動作になる。すなわち、図14に示される状態から、駆動ジャッキ107のロッド105を縮退させると、第1駆動枠部材99、第2駆動枠部材101、デッキ部81、前手摺93、側方手摺91の各部材が、それぞれ図13に示した矢印A〜Eと反対の方向に回動する。このような回動動作に従って、デッキ部81は固定デッキ77側に近接してゆき、また折畳式手摺83もデッキ部81側に折畳まれると共にデッキ部81と共に固定デッキ77側に近接してゆき、最終的には図12の状態になる。
図12の状態では、可動デッキ79はエレクタ装置71の旋回範囲の内側に収まっており、エレクタ装置71と干渉することはない。
【0104】
図15は図12〜図14の各図の(b)図を上から順に(A)〜(C)として並べたものであり、デッキ部81が回動動作を行い、かつ折畳式手摺83がデッキ部81の回動動作に連動して折り拡げられて設置される状況を説明する説明図である。
【0105】
<デッキ部の動作について>
1.回動動作としての側面
デッキ部81は、前述のように、基端側がブラケット80に回動可能に連結されており、この連結部を回動の支点として、図15の矢印Cで示す方向に回動する。
なお、図15(B)において矢印Cの両端に矢印を付けたのは、図15(B)の状態では両方向に回動できることを示すためである。このことは、後述する矢印D、Eにおいても同様である。
2.並進移動動作としての側面
上記1において説明したデッキ部81の回動動作を水平方向に投影すると、その動作は、概ね、図15(C)の矢印Sで示す範囲における水平方向(特にシールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間の水平方向又は固定デッキ17に対して離隔若しくは接近する水平方向)の移動動作になる。
要するに、デッキ部81は、その回動動作に応じて水平移動成分を伴う動作を行う。
【0106】
<折畳式手摺の動作について>
1.回動動作としての側面
折畳式手摺83を構成する前手摺93は、下端側を駆動機構部85の第2駆動枠部材101に回動可能に連結されており、デッキ部81の回動動作に従って図15の矢印Dで示す方向に回動する。
また、側方手摺91はデッキ部81の回動動作に従って図15の矢印Eで示す方向に回動する。折畳式手摺83は前手摺93と側方手摺91で構成されるものであるため、折畳式手摺83全体として回動動作を行っていると見ることができる。
上記の前手摺93や側方手摺91の回動動作は、固定デッキ17のデッキ面と交差する面内又はシールド掘進機の掘進方向と交差する面内での動作である。
【0107】
2.並進移動動作としての側面
上記1において説明した側方手摺91の動作は、シールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間で又は固定デッキ17に対して離隔若しくは接近するように水平移動する成分を有するような動作でもある。即ち、側方手摺91は、図15の矢印C示すようなデッキ部81の回動動作に伴い同図の矢印Eで示すように回動する。この手摺91の回動動作を、水平方向に投影すると、概ね、図15(C)の矢印Sで示す範囲における水平方向(特にシールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間の水平方向又は固定デッキ17に対して離隔若しくは接近する水平方向)の移動動作になる。前手摺93は、図15の矢印C示すようなデッキ部81の回動動作に伴い同図の矢印Dに示すように回動するので、これを水平方向に投影すると、やはり、水平方向(特にシールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間の水平方向又は固定デッキ17に対して離隔若しくは接近する水平方向)の移動を伴うものになる。また、前手摺93は、図15の矢印C示すようなデッキ部81の回動動作に伴い図15(C)の矢印Sに示す水平距離に近い距離を水平移動することになる。要するに、折畳式手摺83を構成する手摺91、93はいずれも、水平移動成分を伴う動作を、デッキ部81の回動動作に応じて行う。
【0108】
<折畳式手摺のデッキ部81の動作との連動について>
上記のとおり、折畳式手摺83の移動動作又は回動動作は、直接的にはデッキ部81に連結された前手摺93がデッキ部81の移動動作又は回動動作に連動して行われるものである。そして、折畳式手摺83は移動動作又は回動動作に連動して折り畳み動作と折り拡げ動作を行うものである。したがって、折畳式手摺83はデッキ部81の移動動作又は回動動作に連動して移動又は回動すると共に折畳動作を行うものである。
また、上記のとおり、折畳式手摺83を構成する手摺91、93はいずれも、水平移動成分を伴う移動動作を、デッキ部81の移動又は回動に連動して行うものである。
【0109】
本実施の形態の可動デッキ79には、次に掲げる長所がある。
(1) 可動デッキ79においては、それがデッキ部81が張り出す方向に回動するとき又は張り出す方向に移動をするときにはその動作に連動して折畳式手摺83が組み立てられ、またデッキ部81が固定デッキ77側に向けて回動するとき又は張り出す方向とは逆向きに移動するときにはその回動動作又は移動動作に連動して折畳式手摺83が移動する又は折り畳まれる。それ故、可動デッキ79では、変形に要する空間が小さくて済み、故に、シールド掘進機が大口径である場合は勿論、小口径である場合であっても設置可能なものとなる。
【0110】
(2) 可動デッキ79では、個別の手摺の設置や除去動作が不要になる。つまり、可動デッキ79は、その動作に連動して自動的に設置される折畳式手摺83を装備しているので、作業者が意識することなく、常に可動デッキ79の利用時には手摺がセッティングされることになり、可動デッキ79使用時の安全性が向上する。また、特別なアクチュエーター等を使用することなく手摺が動作するので、当該アクチュエーター等の故障発生リスクも低く、従来同様のコンパクトなスペースに装備できる。
【0111】
(3) 可動デッキ79は、そのデッキ部81がシールド掘進機61の進行方向に垂直な面内において、固定デッキ77側を支点として回動動作をするため、先端が下方に向いて固定デッキ77側に近接した状態においてエレクタ装置71のアームの旋回範囲の内側に確実に入れることができ、それ故にエレクタ装置71との干渉を確実に回避することができる。
【0112】
(4) 可動デッキ79は、基端側を回動の支点とし、固定デッキ77の側面側から外方に張り出すように動作するので、固定デッキ77の内側(即ち、シールド掘進機の機体軸側)には可動デッキ79を構成する部材が配置されず、それ故に固定デッキ77側に可動デッキ79に関係する部材を設置するためのスペースを確保する必要がなく、また固定デッキ77側に設置される部材との干渉を考慮する必要もない。
【0113】
例えば、シールド掘進機61が泥土式の場合には、シールド掘進機61の前胴から後胴に向けて斜めにスクリューコンベアが設置されることになるが、本実施の形態の可動デッキ79ではこのスクリューコンベアとの干渉を考慮する必要がない。
図19はスクリューコンベア109が設置された泥土式のシールド掘進機61に本実施の形態の可動デッキ79を設置した状態を平面視した図、図11は同じく泥土式のシールド掘進機61に本実施の形態の可動デッキ79を設置した状態の側面図である。
図19、図11に示されるように、スクリューコンベア109がシールド掘進機61の中央部に配置されるので、従来例で示されたようなスライド式の可動デッキの場合にはデッキ部が固定デッキ77側にスライドした場合に可動手摺とスクリューコンベア109との干渉の問題が生ずるが、本実施の形態の可動デッキ79ではこのような問題が生じない。
【0114】
(5) 可動デッキ79であれば、スクリューコンベア109が設置されるシールド掘進機61の組立過程においても、シールド掘進機61の組立過程に悪影響を与えることはない。
図21、図22はスクリューコンベア109を備えるシールド掘進機61の組立過程を説明する説明図であり、図中の(a)〜(f)の順に組み立てが進行する様子を示している。
以下、図21、図22に基づいてスクリューコンベア109を備えるシールド掘進機61の組立過程を概説する。
【0115】
(i) 発進立抗下の発進架台(図示なし)上に、上下分割された前胴部63(下前胴部63a)(上前胴部63b)、カッター駆動部(図示なし)、カッタヘッド67等前胴側機器の大半を投入して仮組立を行う。仮組立が完了した状態が図21(a)に示されている。
(ii) 半割分割構造の後胴部65の下半分である下後胴部65aを投入する(図21(b))。なお、後工程での溶接作業や作業員の出入りを考慮して後胴部65は前胴部63から少し後方に離した位置、具体的には後胴部65に設置されている中折れ部66と前胴部63との間に隙間が形成され、その隙間が溶接作業や作業員の出入りを可能にする程度になるように仮置きする。
(iii) スクリューコンベア109を後胴の上方から投入し、前胴側に連結して設置する(図21(c))。
(iv) 可動デッキ79が設置された固定デッキ77を投入し、下後胴部65a内の支柱に仮固定する(図22(d))。可動デッキ79は固定デッキ77に設置されるものであるため、固定デッキ77との相対位置は変わらないが、この時点では後胴部65の前胴部63に対する相対位置が正規の位置よりも後方にずれている。このとき、仮に可動デッキ79がスライド式のように固定デッキ77側に延出するものであったとすると、当該可動デッキ79はスクリューコンベア109と干渉してしまうはずであり、この時点では設置することができない。
しかし、実際には、可動デッキ79は、固定デッキ77側に延出することがないので、スクリューコンベア109と干渉することがなく、それ故、予め設置しておくことが可能である。
【0116】
(v) 次に、後胴部65の上半分である上後胴部65bを投入して下後胴部65aと仮固定する(図22(e))
(vi) 図22(e)工程の後、分割各部の本組立(溶接作業を含む)を行って、前後胴部63、65それぞれの部分組立を完了した後、発進架台上で後胴を前進させて中折れ部66を差し込む。この時点で初めて前後胴部63、65が正規の相対位置関係となる(図22(f))。可動デッキ79が仮にスライド式のものである場合には、前後胴部63、65が正規の相対位置関係になった時点で、スクリューコンベア109と干渉しない位置において設置が可能となる。
【0117】
図21、図22に基づく説明から分かるように、可動デッキ79が固定デッキ77側に延出する場合には、たとえ完成状態において可動デッキ79がスクリューコンベア109と干渉しない場合であってもシールド掘進機61の組立工程との関係で、その設置時期が制限され、現地組立工程の終盤(前後胴が正規の相対位置関係になった後)にて設置する必要がある。そのため、可動デッキ79は、当初は固定デッキ77上から取り外しておく必要があり、さらにこのような組立工程を考慮し、現地組立作業の簡略化を図るために、可動デッキ全体を、ユニット化するなどの配慮も必要となる。
これに対して、本実施の形態の可動デッキ79は、固定デッキ77側に延出するものがないので、シールド掘進機61の組立工程のいずれの工程でもスクリューコンベア109と干渉することがなく、いつの時点で設置してもよく、工場出荷前に固定デッキ77側に本固定(溶接固定)することが可能となり、現地組立工程の簡素化(工期短縮)が図れる。
【0118】
(6) シールド掘進機61の各ブロック(前胴部、後(中)胴、エレクタ装置、後方台車、カッタドラム、カッタディスク、カッタモータ、旋回ベアリング、シールドジャッキなど)の組立完成以降の工程は、概ね、(i)工場内全体仮組立→(ii)工場内試運転・立会検査→(iii)解体→(iv)分割輸送→(v)現地組立→(vi)現地検査・試運転、というものである(より詳しくは、各工程の呼称・名称の多少の相違はあるが、地盤工学・実務シリーズ3「シールド工法の調査・設計から施工まで」(訂正第2刷、発行:社団法人地盤工学会、発売:丸善株式会社)149〜155頁、など参照)。
【0119】
このとき、スクリューコンベア109と干渉するような可動デッキであると、その干渉に起因する組立や解体の際の問題を回避しようとする一方で、シールド掘進機61の組立や解体を煩雑化させてしまうことがある。即ち、スクリューコンベア109と干渉するような可動デッキであると、(i)の工場内全体仮組立工程においては、前胴部63と後胴部65とを連結して(固定デッキ77を装備する)後胴部65とスクリューコンベア109との相対位置関係が確定してからでないと可動デッキ79を設置することができない、(iii)の解体工程においては、先に可動デッキ79を解体撤去してやらないと前胴部63と後胴部65の解体(例えば相対的な引き離し)ができない、また、(iv)の現地組立工程においては、(i)の工場内全体仮組立工程と同様の手順を取ることが多いため、(i)の工場内全体仮組立工程の場合と同様、可動デッキ79の組立タイミングに制約を受ける、という問題が生じる。
また、(iv)の現地組立工程において可動デッキ79の組立タイミングに制約を受けるということは、その前の(iii)の解体工程において、可動デッキ79を一旦、固定デッキ77側から解体撤去しなければならない、という別の制約を受けることでもある。
スクリューコンベア109とスライド式の可動デッキを備えるシールド掘進機を構築する際には、往々にして上記のような問題が生じ易い。
【0120】
これに対して、本実施の形態の可動デッキ79は、スクリューコンベア109と干渉することがないので、上記のような種々の問題は生じない。このため、例えば、(iii)の解体工程において、可動デッキ79を解体することなく現地搬入が可能となるので、作業工程を簡略化(延いては工期を短縮)できる。
【0121】
また、上記の説明では、現地組立途中でのスクリューコンベア109との干渉を問題にしていたが、スクリューコンベア109の設置位置によっては、組立完成後においても可動デッキ79の(適切な)設置位置とスクリューコンベア109が干渉するケースもある。(小口径のシールド機や、スクリューコンベア109の配置角度、作業デッキ形状、セグメント組立位置等の諸条件によってそのようなケースが生じ得る。)
【0122】
この場合、次のような対処策を施すことが考えられる。
(i) 可動デッキ位置を例えば前方にずらしてスクリューコンベア109との干渉を回避する。
しかしながら、このようにすると、本来可動デッキ79を張り出したい位置(即ち、セグメント組立作業に効率的な位置)からずれることになり、またエレクタ装置71とも近くなるので、使い勝手が悪化する。
(ii) スライド型の可動デッキ79のスライドストロークを短縮して、可動デッキ79も小さくすることで、収納時でもシールド掘進機中心側のスクリューコンベア109と干渉しないようにする。
しかしながら、このようにすれば可動デッキ79の張り出し量不足となり使い勝手が悪化する。
(iii) 可動デッキ設置位置を上方に移動して、スクリューコンベア109と干渉しない位置に可動デッキ79を配置する。
しかしながら、デッキ上部空間が圧迫されるので、可動デッキ79のみならず、固定デッキ77としても使い勝手が悪化する。
【0123】
以上のようにスライド式の可動デッキ79の場合であっても対策を講じることによりスクリューコンベア109との干渉を回避することは可能であるものの、いずれの対策であっても十分であるとは言えない。
この点、可動デッキ79であれば、可動デッキ79が固定デッキ77側に延出することがなく上記のような対策と取る必要もなく、可動デッキの本来有するべき又は望ましい機能を犠牲にすることがないので、好適である。
【0124】
本実施の形態の可動デッキ19を備えることにより、以上述べてきた可動デッキ19に係る効果を奏するシールド掘進機(例えば、可動デッキに占有される空間が小さく、それでいて安全なシールド掘進機)を実現することができる。
【0125】
なお、本実施の形態2においてスクリューコンベア109との干渉の問題が生ずる例として実施の形態2に示したスライド式のものを挙げ、実施の形態2の可動デッキ79ではこのような問題が生じず好適であることを述べた。
この説明は実施の形態2の特有の効果を説明するためのものであり、実施の形態1の発明としての効果を否定するものではなく、即ち実施の形態1においてデッキ部21のスライドに連動して折畳式手摺23が折畳まれたり、折拡げられたり(組み立てられたり)するという実施の形態1の作用に起因する実施の形態1で述べた種々の効果は何ら否定されるものではない。
【0126】
[実施の形態3]
本実施の形態においては、本発明における可動デッキの「変形動作可能に構成される」の一つの態様として、可動デッキのデッキ部(作業台部)がシールド掘進機の進行方向に対して直角の方向にスライドすると共に手摺が傾動してエレクタ装置の旋回範囲に対して出入りするものを示す。
【0127】
図23乃至図29は本発明の実施の形態に係る可動デッキの説明図、図30は本実施の形態の可動デッキを備えたシールド掘進機の内部構造を説明する説明図でありシールド掘進機を平面視した図、図31は同じく本実施の形態の可動デッキを備えたシールド掘進機の側面図、図32は同じく本実施の形態の可動デッキを備えたシールド掘進機の内部構造を示す斜視図、図33はシールド掘進機に搭載されているエレクタ装置の説明図、図34は可動デッキとエレクタ装置の旋回範囲との関係を示す説明図である。
以下においては、可動デッキの説明に先立って図30乃至図33に基づいてシールド掘進機の内部構造を説明し、その後で可動デッキについて説明する。
【0128】
シールド掘進機111は、前胴部113と後胴部115を備えてなる。前胴部113の前端にはカッタヘッド117を有している。前胴部113の後部から後胴部115にかけてシールド掘進機111を推進させるためのシールドジャッキ119が設置されている。そして、このシールドジャッキ119のすぐ後方には、セグメント120を把持して所望の位置まで運搬して設置するエレクタ装置121が設けられている(図32、図33参照)。エレクタ装置121は、図33に示すように、セグメントを把持する把持部123と、把持部123を所望の位置まで移動するアーム部125とを備えている。
エレクタ装置121の後方には固定デッキ127が設置されている。そして、この固定デッキ127の上部でかつ前方寄りの部分の両側に可動デッキ129が設置されている。
【0129】
可動デッキ129は、シールド掘進機111の進行方向に対して直交する方向にスライド可能に構成されている。可動デッキ129の移動状態に関し、図30においては、シールド掘進機111の後方から前方に向かって左側の可動デッキ129が外方に移動した状態にあり、右側の可動デッキ129が内方に移動した状態にある。また、図32においては、シールド掘進機111の後方から前方に向かって左側の可動デッキ129が内方に移動した状態にあり、右側の可動デッキ129が外方に移動した状態にある。
なお、図30においては、可動デッキ129の構造は簡略化して示している。
【0130】
以上の説明から理解されるように、可動デッキ129は、シールド掘進機111の後胴部115における固定デッキ127に設置され、エレクタ装置121の稼動状況に応じてエレクタ装置121の旋回範囲から出たり、入ったりするようになっている。つまり、図34に示されるように、図中左側の可動デッキ129のように、可動デッキ129が内方に移動した状態では、二点鎖線で示すエレクタ装置121の旋回軌道の内側に配置されており、エレクタ装置121の旋回範囲から出た状態にある。この状態では可動デッキ129はエレクタ装置121とは干渉しない。
他方、図中右側の可動デッキ129は外方に張り出した状態では、エレクタ装置121の旋回軌道の外側に配置されており、エレクタ装置121の旋回範囲に入った状態にある。この状態では、仮にエレクタ装置121が稼働すれば、干渉の危険がある。
【0131】
次に、図23乃至図29に基づいて本実施の形態の可動デッキ129の構造を説明する。図23は可動デッキ129の全体を示す図であり、図23(a)は可動デッキ129を外方に移動した状態を示しており、図23(b)は可動デッキ129を内方に移動した状態を示している。
可動デッキ129は、内外方向にスライド可能なデッキ部131と、デッキ部131を内外方向に移動させる駆動力を与えるジャッキ(図示なし)と、デッキ部131のスライドに伴って水平方向に移動すると共に傾動を行う傾動式手摺133とを備えている。
また、固定デッキ127には、固定デッキ127側から外方に出っ張るように棒状の跳ね上げ片部135(図23(b)参照)と、同じく棒状の操作片部137(図26参照)が設けられている。跳ね上げ片部135は、後述のロック機構153と協働して傾動式手摺133を起立状態でロックしたり、ロックを解除したりする機能を有するものであるが、動作の詳細は後述する。また、操作片部137は、デッキ部131の移動に伴って傾動式手摺133を傾動させる機能を有するものであるが、動作の詳細は後述する。
【0132】
傾動式手摺133は、図23に示すように、管材を屈曲及び溶接して全体形状が略矩形状に形成されており、両側下端部がデッキ部131の外端部に軸着されて回動可能に取り付けられている。傾動式手摺133の両側下端部における軸着部より下方に延出している部分があり、この部分は後述するように、傾動式手摺133を梃子の原理により傾動をさせる作用点として機能する部分であり、以下の説明ではレバー部139と称する。
傾動式手摺133の中程には両側に亘る横杆141が設置され、また両側の中程から下部にかけて内方に出っ張る支持杆143が取り付けられている。この支持杆143は、その出っ張り(図23(b)に示す例では逆三角形状の部分)により傾動式手摺133が内方に倒れたときに傾動角度を規制して支持する機能を有している。また、支持杆143は、図23(a)に示すように、傾動式手摺133が起立状態にあるときには、デッキ部131の両側において固定デッキ127側に出っ張っており、作業者がデッキ部131の側方に落下するのを防止する機能も有している。
傾動式手摺133は、図示しない付勢手段、例えばバネなどによって常時起立方向に回動するように付勢されている。
【0133】
デッキ部131は、固定デッキ127に設置されたガイドレール145と、このガイドレール145に両側をガイドされて内外方向にスライド可能に設置された矩形状のデッキ枠147と、デッキ枠147の枠内に設置されて作業台となるデッキプレート148を備えている。なお、デッキプレート148の上方には、図23(b)に示すように、デッキ部131が内方に移動したときに収納され、かつデッキ部131が外方に移動したときには作業台となるデッキカバー149が設けられている。図23(a)においては、デッキカバー149は図示が省略されている。
【0134】
デッキ枠147の外端部には、傾動式手摺133の下端部を回動可能に支持する支持部151と、傾動式手摺133が起立状態でロックされるようにその回動を規制するロック機構153が設けられている。
ロック機構153は、傾動式手摺133における支持部151の下方に延出する部分(後述のレバー部139)に当接する第一ロック片155と、第一ロック片155の回動を規制する第二ロック片157を備えて構成される(図24乃至図29参照)。
第一ロック片155は、図24(a)に示すように、略矩形状をしており、上下辺にブラケット部159が対向するように設けられている。図24(b)では、ロック機構153の内部構造の説明に供するために第一ロック片155を外した状態を示しており、この図24(b)に示されるように、デッキ枠147には軸穴を有する水平片部161が設けられており、この水平片部161が第一ロック片155を回動可能に支持している。つまり、第一ロック片155は、ブラケット部159を、水平片部161に鉛直軸回りに回動可能に支持されて設置されている。第一ロック片155における傾動式手摺133のレバー部139に対向する面には、傾動式手摺133に当接して傾動式手摺133の回動を規制する当接部163(図24(a)、図27参照)が設けられている。
第一ロック片155は、図示しない付勢手段(例えばバネ)によって当接部163が傾動式手摺133のレバー部139に当接する方向に回動するように常時付勢されている。
【0135】
第二ロック片157は略L字形の部材からなり、L字の一片の基端側を、デッキ枠147に水平軸回りに回動可能に取り付けられている。L字の他片の先端側(下端)(図24(b)参照)には、ローラ165が設けられている。このローラ165の機能については後述する。
第二ロック片157は、図示しない付勢手段(例えばバネ)によって、先端側が下方に向かう方向に回動するように常時付勢されている。
第二ロック片157の他片の両側を囲むように鉤状の鉤状部材167が設けられているが、これは第二ロック片157の先端側のガタツキを防止するための部材であり、第二ロック片157の先端部を両側から覆うことによって第二ロック片157が所定の範囲以上動かないようにしている。
【0136】
傾動式手摺133は、図23(a)に示す起立した状態においてロック機構153によってその回動が規制されるが、ロック機構153が、傾動式手摺133の回動を規制(ロック)している状態について、どのようにしてロック状態が成立しているかについて以下に説明する。
図24(a)に示す状態が、傾動手摺133の回動が規制されている状態の詳細を示している。この状態では、傾動手摺133のレバー部139に第一ロック片155の当接部163が当接している。ことのとき、第一ロック片155はその側端面が第二ロック片157の側面に当接しており、これによって第一ロック片155の回動が規制され、第一ロック片155は回動できない状態にある。このように、傾動式手摺133のレバー部139に第一ロック片155の当接部163が当接し、第一ロック片155が回動不能の状態にあることから、傾動手摺133が回動できない状態になってロック状態が成立している。
【0137】
次に、ロック機構153のロックが解除されて、図23(b)に示すように、傾動式手摺133が傾斜状態になったときのロック機構153と傾動式手摺133の関係について図26、図27に基づいて説明する。
傾動式手摺133が傾斜した状態では、図26(a)、図27に示すように、第一ロック片155が図中時計回りに回動して、傾動式手摺133のレバー部139の側方に位置している。このとき、第一ロック片155の側端面は第二ロック片157の各片間に入り込んでおり(図27参照)、それ故に第一ロック片155が時計回りに回動できている。第一ロック片155の側端面が第二ロック片157の各片間に入り込むことができたのは、第二ロック片157の先端のローラ165が跳ね上げ片部135に乗り上げて、第二ロック片157が上方に回動してL字の片が真直ぐな状態になり、これによって第一ロック片155の側端面への係止が外れたからである。
【0138】
傾動式手摺133は、傾斜状態では支持杆143がデッキカバー149に当接しており、それ以上傾斜できないようになっている。また、逆に傾斜状態になっている傾動式手摺133を起立させようとしても、レバー部139が操作片部137に当接しており、起立方向への移動も規制されている。このように、傾動式手摺133は、傾斜状態でも安定してその状態を保持できるようになっている。
【0139】
次に、可動デッキ129が掘削壁面側に張り出して傾動式手摺133が起立した状態(図23(a)参照)から、可動デッキ129が固定デッキ127側に移動して傾動式手摺133が傾斜した状態(図23(b)参照)に至る動作の流れについて、特にロック機構153の動作を中心に、図28及び図29に基づいて説明する。
張り出し状態においては、図28(a)に示すように、傾動式手摺133のレバー部139が第一ロック片155とデッキ枠147の先端部との間に挟まれた状態で固定されている。第一ロック片155は、上述したように、デッキ枠147にピン接合されており、当接部163がレバー部139から遠ざかる方向に回転可能であるが、図28(a)の状況下では、第一ロック片155の側端面が第二ロック片157の側面に当接しており、第二ロック片157によって回動が規制されて回転不能な状態にあり、結果として第一ロック片155及び傾動式手摺133共に固定された状態となっている。
【0140】
次に、可動デッキ129を固定デッキ127側にスライドして、退避完了位置に至る手前の位置、つまり退避完了位置よりも多少張り出した位置(例えば退避完了位置から100mm程度張り出した位置)までスライドさせた状態が、図28(b)及び図29(a)に示す状態である。
張り出し側から可動デッキ129を退避させていくと、デッキ部131の先端部が固定デッキ127側に設置された跳ね上げ片部135に接近し、図28(b)及び図29(a)に示すように、第二ロック片157の先端に設けたローラ165が跳ね上げ片部135に乗り上がる。第二ロック片157が跳ね上げ片部135に乗り上がることで、第一ロック片155の側端面と第二ロック片157との当接が外れ、つまり第一ロック片155は“つっかえ”が外れた状態となる。したがって、この時点で第一ロック片155は回転可能となるが、バネの復元力によって、傾動式手摺133のレバー部139を押した状態を維持している。また、この時点では、操作片部137に設けられたローラ169と傾動式手摺133の下部レバー部139は、接触直前の状態となっている(図29(a)参照)。
【0141】
可動デッキ129をさらにスライドさせて退避完了位置まで移動させると、レバー部139が操作片部137のローラ169によって押し上げられる。その結果、図28(c)及び図29(b)に示すように、傾動式手摺133の上端側が固定デッキ127側に倒れるように傾動する。傾動式手摺133が傾斜した状態では、傾動式手摺133の両側に設けられた支持杆143がデッキカバー149上に当接して、傾動式手摺133がそれ以上倒れるのを防止している。この状態では、図34の図中左側の可動デッキ129のように、可動デッキ129は傾動式手摺133を含む装置全体がエレクタの旋回範囲の内側に配置され、即ちエレクタの旋回範囲から出た状態にあり、エレクタ装置と干渉しないようになっている
なお、このとき、第一ロック片155は傾動式手摺133の下部レバー部139に押しのけられて、図27に示すように、図中時計回りに回転しているが、バネの復元力が働いているため、下部レバー部139側を押しつけた状態を維持している。
【0142】
可動デッキ129が退避完了状態になったとき、傾動式手摺133は、図23(b)に示すよう、傾斜した状態でデッキ部131に設置されているので、作業者がデッキから外方に落下する心配はない。
【0143】
次に、可動デッキ129の上記と逆の動作、すなわち可動デッキ129を退避状態から張り出し状態にする動作の流れを説明する。なお、この動作は基本的には上記の動作と逆の動作となる。
可動デッキ129を外方向にスライドさせる過程で(例えば、退避完了位置から100mm程度外方向にスライドさせる過程で)、レバー部139と操作片部137のローラ169との接触状態が変化し、つまりローラ169のレバー部139に対する接触位置が上方に移動し、これによって徐々に傾動式手摺133が起き上がる。傾動式手摺133が起き上がるのは、前述したように、傾動式手摺133を起立方向に付勢するバネの復元力によるものである。
【0144】
傾動式手摺133が起き上がる際、第一ロック片155もバネの復元力によって、レバー部139を押しつけながら、最終的には、レバー部139をデッキ枠147との間に挟み込む状態まで戻る。
可動デッキ129を、さらに外方向にスライドさせると(例えば、さらに50mm程度外方向にスライドさせると)、跳ね上げ片部135に乗り上がっていた第二ロック片157が跳ね上げ片部135から降り、バネ力によって押し下げられ、第一ロック片155の側端面に当接して第一ロック片155の回転防止用スペーサーとして機能する位置まで戻る(図28(a)参照)。この時点で、傾動式手摺133は完全にロックされて固定された状態に戻る。この状態で可動デッキ129がさらにスライドして図23(a)の状態になる。
【0145】
図23(a)に示す状態において作業者はデッキ部131において作業をすることになるが、このとき傾動式手摺133はロック機構153によって完全にロックされているので、作業者が傾動式手摺133に寄りかかったりしても傾動式手摺133が傾動することはない。
また、傾動式手摺133は支持杆143を有しており、これがデッキ部131の側方の安全柵として機能するので、作業者にとって安全である。
【0146】
以上のように、本実施の形態の可動デッキ129は、デッキ部131が内外方向にスライドすると共にこれに連動して傾動式手摺133が起立状態から傾斜状態へ、あるいは傾斜状態から起立状態へとその姿勢を変える動作を行うものである。
そこで、このような一連の動作を、「傾動式手摺133の動作」、「可動デッキ129全体の動作」、「可動デッキ129のスライド動作と傾動式手摺133の傾動の連動」に項目分けして説明する。
【0147】
<傾動式手摺の動作について>
1.傾動
傾動式手摺133は、その両側下端部がデッキ部131の外端部に軸着されて回動可能に取り付けられている。そして、起立状態になったとき(図23(a))には、ロック機構153によってその状態でロックされ、傾斜状態になったときには支持杆143がデッキカバー149に当接することでそれ以上の傾斜しないようになっている。つまり、傾動式手摺133は回動可能に軸着されて、かつその回動の範囲が起立状態と傾斜状態に規制されることから、全体として傾動可能になっている。
【0148】
2.水平移動動作
傾動式手摺133は内外方向にスライドするデッキ部131に取り付けられている。したがって、デッキ部131が内外方向にスライドするのに伴って傾動式手摺133も必然的に内外方向に移動する。つまり、傾動式手摺133は傾動すると共に内外方向への水平移動という動作も併せて行うものである。
【0149】
<可動デッキ129の変形動作について>
可動デッキ129は、前述のように、デッキ部131と傾動式手摺133から構成される。そして、傾動式手摺133は上述のように傾動と水平移動を行う。また、デッキ部131はスライド動作により外内方向に移動する。したがって、可動デッキ129全体として見ると、デッキ部131の移動動作に伴って傾動式手摺133の傾動を行っており、全体としてエレクタ装置と干渉しないように変形動作を行っている。
また、可動デッキ129全体の変形動作の中に傾動式手摺133の水平移動も含まれているが、このことは可動デッキ129全体が変形動作を行い、これに連動して傾動式手摺133が水平移動すると捉えることもできる。
【0150】
<デッキ部のスライド動作との連動について>
上記のとおり、傾動式手摺133の傾動は、デッキ部131のスライド動作に連動して行われるものである。そして、デッキ部131のスライド動作は可動デッキ129の変形動作の一部であることから、傾動式手摺133は可動デッキ129の変形動作に連動して傾動するものであると捉えることができる。
【0151】
本実施の形態の可動デッキ129によれば、可動デッキ129が外方に移動するときには、その動作に連動して傾動式手摺133が起立し、また可動デッキ129が内方に移動するときにはその動作に連動して傾動式手摺133が内方に移動すると共に傾動するので、変形に要する空間が小さくて済む。それ故、シールド掘進機が大口径である場合は勿論、小口径である場合であっても設置可能な可動デッキ129を実現できる。
また、本実施の形態の可動デッキ129によれば、手摺の設置や除去動作が不要になる。つまり、特別なアクチュエーター等を使用せずに、可動デッキ129の動作に連動して自動的に設置される傾動式手摺133を装備しているので、作業者が意識することなく、常に可動デッキ129の利用時には手摺がセッティングされることになり、可動デッキ129使用時の安全性が向上する。また、手摺の動作にアクチュエーターを使わないため、それらの故障発生リスクも低く、従来同様のコンパクトなスペースに装備できる。
さらに、本実施の形態の可動デッキ129においては、デッキ部131を完全に張り出さなくても少し(例えば150〜200mm程度)張り出せば、傾動式手摺133が起立してロックされるので、安全性に優れている。
【0152】
エレクタ装置121の動作が例えば、少なくとも、セグメント組み立て動作を行う場合のように通常の作業時の速度で旋回動作を行う場合(通常速度旋回動作)と、通常速度旋回動作よりもゆっくりした動作を行う微速旋回動作に分けられる場合、そのようなエレクタ装置の動作と可動デッキ129の動作とを関連付けしておくことが安全上望ましい。例えば、可動デッキ129の退避状態(最も内方に移動した状態)をリミットスイッチで監視するとともに、可動デッキ129が退避している時に限り、エレクタ装置121に通常速度旋回を許可するようにインターロックをプログラミングしておき、このプログラムに基づいて制御する。このようにすれば、可動デッキ129が外方に移動を始め、リミットスイッチが切れた時点でエレクタ装置121側にインターロックが働き、エレクタ装置121が停止するので安全である。
安全性をより高めるためには、上記の制御に加えて可動デッキ129側にもインターロックをプログラミングしておき、エレクタ装置121が通常速度旋回動作を行っているときには可動デッキ129が動作しないように制御すればよい。
【0153】
本実施の形態の可動デッキ129を備えることにより、以上述べてきた可動デッキ129に係る効果を奏するシールド掘進機(例えば、可動デッキに占有される空間が小さく、それでいて安全なシールド掘進機)を実現することができる。
【0154】
なお、傾動式手摺133は、図23(b)に示すように、可動デッキ129が退避状態にあるときにも手摺として機能するが、この場合には、傾動式手摺133が傾斜しているが故に先端が内方に大きく延出することになり、作業空間を小さくしてしまう。そこで、傾動式手摺133を伸縮可能にすることにより、図35の左側の可動デッキ129のように可動デッキ129が退避状態にあるときには傾動式手摺133を図中の矢印で示す方向に縮めて作業空間を広げ、図35の右側の可動デッキ129のように可動デッキ129が張り出し状態にあるときには傾動式手摺133を延ばして安全性を高めることができるようにしてもよい。この場合、傾動式手摺133を伸縮させるための構造の例としては、矩形状の傾動式手摺133を上下でニ分割して先端側を基端側に挿入するものが挙げられる。
【0155】
また、支持杆143は、傾動式手摺133の傾斜角度を規制するための部材であると同時に、傾動式手摺133が起立したときの側方の安全柵として機能する部材でもある。ここで、傾動式手摺133が起立したときの側方の安全性をさらに高めるために、図36に示すように、固定デッキ127側に支柱171を立設し、支柱171の上端と傾動式手摺133の端部をチェーン173で連結し、該チェーン173を傾動式手摺133とともにデッキ部131の側方安全柵として機能させてもよい。この場合、図36の左側の可動デッキ129のように可動デッキ129が退避状態にあるときは、チェーン173はU字状になっており、図36の右側の可動デッキ129のように可動デッキ129が張り出し状態にあるときには、支柱171と傾動式手摺133の間で張設された状態となる。
【0156】
また、図37に示すように、チェーン173に代えて支柱171と傾動式手摺133をリンク部材175で連結するようにしてもよい。この場合、図37の左側の可動デッキ129のように可動デッキ129が退避状態にあるときは、リンク部材175は折り畳まれており、図37の右側の可動デッキ129のように可動デッキ129が張り出し状態にあるときには、支柱171と傾動式手摺133の間で張設された状態となる。
【0157】
更に、上記の実施の形態における付勢手段としてバネ以外の公知の付勢手段を採用してもよい。例えば、傾動式手摺133を起立方向に付勢する手段としては、バネに代えて、レバー部139のさらに下部側に「おもり」をぶら下げておき、「おもり」に作用する重力の作用を利用して傾動式手摺133を「振り子」のように起き上がらせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0158】
1 シールド掘進機 3 前胴部 5 後胴部
5a 下後胴部 5b 上前胴部 7 カッタヘッド
9 シールドジャッキ 10 セグメント 11 エレクタ装置
13 把持部 15 アーム部 17 固定デッキ
19 可動デッキ 21 デッキ部 23 折畳式手摺
25 ガイドレール 27 デッキ枠 29 デッキプレート
31 第1ローラ 33 第2ローラ 35 鉤状部
37 傾斜部 39 柱部材 41 側部上段アーム
43 側部下段アーム 45 前部枠 45a 矩形状枠部
45b 逆U字枠部 47 横棒 49 腕部
51 第3ローラ 61 シールド掘進機 63a 下前胴部
63b 上前胴部 65 後胴部 65a 下後胴部
65b 上前胴部 67 カッタヘッド 69 シールドジャッキ
70 セグメント 71 エレクタ装置 73 把持部
75 アーム部 77 固定デッキ 79 可動デッキ
80 ブラケット 81 デッキ部 83 折畳式手摺
85 駆動機構部 87 デッキ枠 89 デッキプレート
91 側方手摺 93 前手摺 95 矩形枠部材
97 逆U字部 99 第1駆動枠部材 101 第2駆動枠部材
103 本体部 105 ロッド 107 駆動ジャッキ
109 スクリューコンベア 111 シールド掘進機 113 前胴部
115 後胴部 117 カッタヘッド 119 シールドジャッキ
120 セグメント 121 エレクタ装置 123 把持部
125 アーム部 127 固定デッキ 129 可動デッキ
131 デッキ部 133 傾動式手摺 135 跳ね上げ片部
137 操作片部 139 レバー部 141 横杆
143 支持杆 145 ガイドレール 147 デッキ枠
148 デッキプレート 149 デッキカバー 151 支持部
153 ロック機構 155 第一ロック片 157 第二ロック片
159 ブラケット部 161 水平片部 163 当接部
165 ローラ 167 鉤状部材 169 ローラ
171 支柱 173 チェーン 175 リンク部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機に設けられる可動デッキであって、該可動デッキはその変形動作に連動して移動可能な手摺を備えることを特徴とする可動デッキ。
【請求項2】
シールド掘進機に設けられる可動デッキであって、該可動デッキはセグメントを運搬するエレクタ装置と干渉しないように変形動作可能に構成されると共に、その変形動作に連動して移動可能な手摺を備えることを特徴とする可動デッキ。
【請求項3】
シールド掘進機に設けられる可動デッキであって、該可動デッキはセグメントを運搬するエレクタ装置と干渉しないように変形動作可能に構成されると共に、折畳み可能な手摺を備え、その手摺の折畳み動作が、シールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間で水平移動する成分を有するものであることを特徴とする可動デッキ。
【請求項4】
シールド掘進機に設けられる可動デッキであって、該可動デッキはセグメントを運搬するエレクタ装置と干渉しないように変形動作可能に構成されると共に、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内において、回動動作をすることにより折畳み可能な手摺を備えることを特徴とする可動デッキ。
【請求項5】
前記エレクタ装置は、セグメントを旋回させて運搬する運搬装置を備え、
前記可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、前記運搬装置の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に、前記手摺とともに配置可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の可動デッキ。
【請求項6】
前記手摺は、前記可動デッキの変形動作との連動を可能にするリンク機構を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の可動デッキ。
【請求項7】
前記可動デッキの変形動作は、前記可動デッキのデッキ部がシールド掘進機の進行方向と交差する方向にスライド動作をすると共に手摺が折畳み動作するものであることを特徴とする請求項請求項1乃至6のいずれか一項に記載の可動デッキ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の可動デッキを備えたことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項9】
微速旋回動作と該微速旋回動作よりも速い速度での旋回動作である通常速度旋回動作が可能なエレクタ装置と、作業者が作業を行う固定デッキと、該固定デッキに設置され、前記エレクタ装置と干渉しないように変形動作可能な可動デッキとを備えるシールド掘進機であって、
前記可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、折畳み可能な手摺を備え、
前記エレクタ装置が前記通常速度旋回動作しているときは、前記手摺がトンネル掘削壁面側から前記固定デッキ側に折り畳まれ、前記エレクタ装置が前記通常速度旋回動作していないときは、前記手摺が前記固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に向かって張出し可能であることを特徴とするシールド掘進機。
【請求項10】
前記手摺は、前記可動デッキの変形動作との連動を可能にするリンク機構を備えることを特徴とする請求項9に記載のシールド掘進機。
【請求項11】
前記可動デッキの変形動作は、前記可動デッキのデッキ部がシールド掘進機の進行方向と交差する方向にスライド動作をすると共に手摺が折畳み動作するものであることを特徴とする請求項9又は10に記載のシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2010−229805(P2010−229805A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255599(P2009−255599)
【出願日】平成21年11月7日(2009.11.7)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】