説明

可動係止ユニットを有する伸縮クレーンジブ用係止システム

【課題】クレーンジブの伸縮距離を増加し、伸縮用シリンダの長さを節約し、更に全ジブ重量を減少させる。
【解決手段】特に移動式クレーン用の伸縮クレーンジブのための係止システムであって、係止ユニット21による伸縮部分1〜4の引き出し及び収縮のために伸縮用シリンダ10と伸縮部分1〜4との間にロック5を設置し、前記係止ユニット21を伸縮用シリンダ10上に配置して長さ方向に移動可能にする。これにより、前記係止ユニット21が移動できる距離又は到達できる地点が伸縮用シリンダ10の移動量や選択された配置に制限されなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に移動式クレーンの、伸縮クレーンジブ用係止(locking)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかの伸縮部分(telescopic parts)を動かす手段として、このようなクレーンや伸縮腕(jib)は、係止ユニットを有する伸縮用シリンダ(telescoping cylinder)を備えている。この係止ユニットは、伸縮用シリンダと伸張又は収縮される伸縮部分の一つとの係止を確立するために用いられる。
【0003】
本発明は、伸縮用シリンダがジブ部分を引き出し係止する型の伸縮ジブに関する。現代の移動式クレーンは、より一層重い荷重をより一層高い所まで持ち上げるために使われている。また、利用者は、物流費低減のために固有重量ができるだけ小さく効率的な移動式クレーンを要求している。努力はできるだけ大きな荷重を軸荷重許容範囲内でできるだけ少数の軸で扱える移動式クレーンの開発にも向けられており、これは、一方ではより大きな融通性を得るためであり、他方ではクレーンの全費用を削減するためである。伸縮ジブは、移動式クレーンの中心要素であり、最大揚程及び荷重負担能力を決定する。ジブの長さは、個々の伸縮部分の数及び長さで決定される。静力学的な理由で、個々の伸縮部分は、ジブ方向に垂直で良好な相互牽引力(traction)を確保するため引き出した状態で重なり部分を持たねばならない。ジブ方向の牽引力は、伸縮部(telescope)の係止により得られる。設計によっては、伸縮部分は、収縮状態で1つの内側にもう1つというように完全に収縮されることがない。環状部分が外方に延びる伸縮部分を支持するために前端に備えられている。また、伸縮部を係止する点も、長さ方向で1つの前にもう1つというように配置されている。したがって、伸縮用シリンダを伸縮部分に係止可能にするために、係止する伸縮部と同水準の位置まで係止ユニットを動かすよう、ジブの長さ方向へ所定距離進む必要がある。従来技術のシステムでは、伸縮用シリンダは、係止ユニットと共に各伸縮部分に対して所定距離引き出さねばならず、こうして全延長距離の一部を失う。結果的に、伸縮用シリンダの全進行を考慮して、前方の伸縮部分は後方のもの程伸張することができない。これにより、引き出した状態において前方伸縮部分が不必要に大きな重なりを持つという結果を生じ、全ジブ長の損失となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、特に伸張可能な長さに関して内方及び外方への伸縮用動作(運動)を最適化した伸縮クレーンジブ用係止システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に規定された係止システムに基づく本発明により達成される。従属請求項は、本発明の好適な実施形態について規定している。
【0006】
本発明で提案しているように、係止ユニットは、長さ方向に移動できるよう伸縮用シリンダ上に配置する。換言すれば、伸縮用シリンダ位置と係止ユニット位置は、従来技術のように互いによって決定されるのではない。このため、係止ユニットは、伸縮用シリンダが移動していない状態で、又は伸縮用シリンダが異なる方向に移動している状態でさえ、係止点へ移動することができ、これによって機能性を大きく向上し、作業又は操作モードに影響する制約を減少又は除去する。特に、係止ユニットが移動できる距離又は係止ユニットが到達できる地点は、もはや伸縮用シリンダの移動量や選択された配置に制限されない。これにより伸縮距離が増加し、伸縮用シリンダの長さを節約し、更に全ジブ重量を減少し、結果としてクレーン全体を最適化する。
【0007】
本発明は、係止ユニットを伸縮用シリンダ上で固定できるように、特に全ての位置で固定できるように搭載するという選択肢を提供する。また、伸縮用シリンダ上の第2ステージとして設計してもよく、伸縮用シリンダの第2ステージ上に搭載してもよい。少なくとも1つの測長装置又は長さ送信機を備えることも好ましく、係止ユニット及び伸縮用シリンダの位置、特に両者の相対位置又は絶対位置を検知することができる。本発明で提案しているように、特にこの設計では、一旦係止ユニットが正しい位置を取り、協働する伸縮部に係止されると、例えば座弁(seat valve)が閉じ、係止ユニットのシリンダステージに固定される。隣接伸縮部分への構造用鋼(structural-steel)係止は、その後解放され、係止ユニットに係止されていた伸縮部分が引き出され、その結果、伸縮用シリンダで利用可能な完全伸張に達する。
【0008】
本発明の一つの実施形態では、係止ユニット、特にその上に係止ユニットが配置されている伸縮用シリンダの第2ステージは、力が加わっていない非係止状態では伸縮用シリンダと共に移動し、その結果これを移動させるのに極く僅かな力しか必要とせず、本発明の一つの実施形態のように係止ユニットが流体力(hydraulic force)印加によって伸縮用シリンダ上で移動できる場合には、引き出しに用いるシリンダ注入口からの流体供給により印加することができる。
【0009】
流体回路を備え、伸縮用シリンダ引き出し用流体システムと協働して可動係止ユニットの操作と固定の少なくとも一方を制御してもよい。そして、収縮操作は、好ましくは伸縮用シリンダの環状端部への解放可能な結合により行われる。本発明提案の係止システムを用いると、伸張した伸縮用システムの全行程(stroke)は、係止ユニットの移動と伸縮用シリンダの伸縮用距離とに分れており、換言すれば、原理的に伸縮用シリンダは短くてもよく、又は伸縮用シリンダを長くせずに全行程を長くすることができる。
【0010】
一つの実施形態では、係止ユニットは、ジブの収縮状態で少なくとも全ての伸縮ジブ係止不活性化手段の距離に対応する距離だけ伸縮用シリンダ上で移動可能である。この代わりに、他の選択肢ではこの距離を超えて移動可能なように係止ユニットを形成するが、この場合上記目的のための移動が伸縮用シリンダの行程に加えて行われるか、又は少なくとも部分的に置換される。
【0011】
本発明の他の態様は、添付図面に示された実施例を参照して更に詳しく説明する。これはここに記載される全ての特徴を単独で又は有意な組合わせで包含するが、原則として、このために示された装置の使用法と共に伸縮クレーンジブの収縮及び引き出しの方法としても理解され記載されている。図面については、次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明で提案する伸縮用シリンダと係止システムを持つ伸縮ジブの長さ方向断面の概略図を示す。
【図2】本発明で提案する係止システムの動作態様を流体供給システムと共に示す概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、図1を参照し、本発明の実施例について更に詳細に説明する。長さ方向断面における概略図は、伸縮ジブを示しており、本体11及び4個の引き出し可能な伸縮部分1ないし4を含んでいる。伸縮用シリンダ10は本体11内に配置されている。係止ユニット21は、第2シリンダステージ6及びシリンダロック5を含み、伸縮用シリンダ10の外部円筒状ケーシングまで延びている。第2シリンダステージ6は、伸縮用シリンダ10の外部円筒8のまわりにあり、分離して描かれている。同様に伸縮用シリンダ10上に配置されているのは、操作モードに入ったときに個々の伸縮部分を相互に係止する構造用鋼ロック9に用いる操作手段7である。
【0014】
この型の実施形態の場合、伸縮システムが、特に自動的に、伸張する方法は、以下の順序に基づいている。
【0015】
全ての伸縮部分1ないし4は、当初は収縮され相互に係止されている(構造用鋼ロック9)。そして第2ステージ6が伸縮部4の基部片へ移動し、特にこのために備えられた係止(凹部)に係止される。伸縮部3上の構造用鋼ロック9が解放され、伸縮用シリンダ10が伸縮部4と共に最大限に引き出され、そこで伸縮部3に係止される。そしてシリンダロック5が解放され、伸縮用シリンダ10が完全に収縮される。そこで第2シリンダステージ6は、伸縮部3が基部片に到達して係止されるまで収縮される。このようにして、全ての伸縮部1ないし4を次々と引き出すことができる。
【0016】
本発明で提案されているように、伸縮システムは、同じく特に自動的に、以下の順序で収縮される。
【0017】
全ての伸縮部分1ないし4は、引き出され、係止されている。伸縮用シリンダ10は完全に引き出され、シリンダロック5は伸縮部分1の基部片に係止されている。伸縮部分1の本体11に対する構造用鋼ロックは解放される。伸縮部分1は、伸縮用シリンダ10と共に完全に収縮され、本体11に係止される。伸縮部分10は解放され、完全に引き出される。そこで、第2シリンダステージ6は、伸縮部分2が基部片に到達して係止されるまで引き出される。このようにして、全ての伸縮部分を次々と縮めることができる。
【0018】
ここで、伸縮部分4を例にとり、従来技術と比較して本発明により長さに関する効果がどのように得られるかを説明する。伸縮部分4の引き出し可能長さは、可動係止ユニットのため、長さTgesに等しい。従来技術では長さがΔT4だけ短いが、本発明の場合では、引き出し状態の全ジブの長さを図示された全てのΔTの和だけ増加させることができる。したがって、従来技術の設計に比較して、伸縮部分の数が多いほど長さの効果も大きくなる。標準的な実施形態では、係止ユニット21は、伸縮用シリンダ10の行程が伸縮部分の進行可能距離に対応する必要がない程度まで移動できるように設計できる。このため、伸縮部分1ないし4の全行程は、伸縮用シリンダ10と係止ユニット21の間で分割され、したがって、伸縮用シリンダ10の全長をかなり短くすることができる。
【0019】
図2に示された概略回路図を参照し、本発明に基いて設計された操作手段及び流体供給システムについて説明する。図示した実施形態の場合、伸縮用シリンダ20の第2ステージは、実際の伸縮用シリンダ20の外側シリンダチューブを包囲するシリンダチューブ26を含んでいる。油室30及び31は、伸縮用シリンダ20に固定して結合された(又はその一部を構成する)環32で支持されている。
【0020】
シリンダの注入口35は、弁ユニット28に流体供給を行うために用いられる。ここからシリンダロック25、構造用鋼係止システム29又は第2シリンダステージ26へ要求に応じて供給が切り換えられ、係止ユニット21全体を移動させる。進行方向への伸張を行うために、荷重から遠い環側31が圧力解放された伸縮用シリンダ20の環側27に接続される。また、荷重側30が加圧されたシリンダ注入口35に接続される。解放可能な逆止め弁22は、係止ユニット21の好ましからざる逆動作を防止する。
【0021】
収縮のためには、係止ユニット21の荷重側環状室30は、圧力解放されたシリンダ注入口35に接続される。荷重から遠い環状室31は、伸縮用シリンダ20の加圧側27に接続され、その結果、解放可能逆止め弁22を開く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮クレーンジブ用の、特に移動式クレーン用の、係止システムであって、
係止ユニット(21)による伸縮部分の引き出し及び収縮のために伸縮用シリンダ(10、20)と伸縮部分(1〜4)との間にロックが設置されており、
係止ユニット(21)が長さ方向に移動可能なように伸縮用シリンダ(10、20)上に配置されていることを特徴とする、係止システム。
【請求項2】
係止ユニット(21)が、伸縮用シリンダ(10、20)上に固定可能で、特に全ての位置で固定可能であることを特徴とする、請求項1記載の係止システム。
【請求項3】
係止ユニット(21)が伸縮用シリンダ(10、20)の第2ステージ(6)として設計されているか、又は伸縮用シリンダ(10、20)の第2ステージ(6)上に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の係止システム。
【請求項4】
伸張した伸縮システムの全行程が係止ユニット(21)の移動と伸縮用シリンダ(10、20)の伸縮距離とに分れていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の係止システム。
【請求項5】
係止ユニット(21)が、ジブの収縮状態で少なくとも全ての伸縮ジブロック間の距離(h4)に対応する距離だけ伸縮用シリンダ(10、20)上で移動可能であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の係止システム。
【請求項6】
係止ユニット(21)は、移動が伸縮用シリンダ(10、20)の行程に加えて行われるか、又は少なくとも部分的に置換されるものであり、ジブの収縮状態で全ての伸縮ジブロック間の距離(h4)を超えて伸縮用シリンダ(10、20)上で移動可能であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の係止システム。
【請求項7】
係止ユニット(21)及び伸縮用シリンダ(10、20)の位置を検知する少なくとも1つの測長装置又は長さ送信機を備えることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の係止システム。
【請求項8】
係止ユニット(21)が流体圧システム(30、31)により伸縮用シリンダ(10、20)上で移動可能であることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の係止システム。
【請求項9】
係止ユニット(21)が、座弁制御の流体補助固定システムにより伸縮用シリンダ(10、20)上で固定可能であることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかに記載の係止システム。
【請求項10】
流体回路が備えられ、伸縮用シリンダ(10、20)引き出し用流体システムと協働して可動係止ユニット(21)の操作手段と固定手段の少なくとも一方を制御することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の係止システム。
【請求項11】
流体回路及び流体供給システムが伸縮用シリンダ(10、20)の油注入口(35)、特にまた電気的遮断可能な伸縮ジブロッド端部への接続、を使用することを特徴とする、請求項10記載の係止システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−173855(P2010−173855A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−278285(P2009−278285)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(507186322)マニトワック・クレーン・グループ・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ (12)
【氏名又は名称原語表記】Manitowoc Crane Group France SAS
【Fターム(参考)】