説明

可動式プラットホーム柵

【課題】車椅子利用者等の援助必要者に対して援助のための利便性を高め、援助必要者の安全性を高めることができる可動式プラットホーム柵を提供する。
【解決手段】この可動式プラットホーム柵は、駅ホームの線路側縁に沿って設置された複数台のホームドア装置10により構成される可動式プラットホーム柵であり、当該ホームドア装置は、そのドア筐体部11に、援助必要者を援助するための連絡用操作ボタン22と表示ランプ23を有する援助必要者サポート装置21を備えるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可動式プラットホーム柵に関し、特に、車椅子利用者等の援助必要者の安全サービスを高めるのに好適な可動式プラットホーム柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道駅のホーム(またはプラットホーム)では、列車(電車)に乗降する旅客の安全性を高めるため、可動式プラットホーム柵(以下では簡略して「ホーム柵」と記す)の設置が進められている。ホーム柵はホームの縁に沿って設置されている。ホーム柵は、柵構造部として機能するための所要台数の複数台のホームドア装置によって構成されている。複数台のホームドア装置は、各々、一列の防護壁を形成するように並べられている。各ホームドア装置は、ホームの床に固定されたドア筐体部(固定部)と、当該ドア筐体部内に収容され出し入れ自在に設けられた開閉自在なドア(可動部)とから構成されている。ホームドア装置は、電車が駅ホームに入ってくる時にはドアは閉じた状態にあり、柵の一部として、旅客と駅ホームに入ってくる電車とを隔離する機能を有している。ドアを駆動するための駆動機構はドア筐体部の内部に設けられている。駅ホームに入ってきた電車が停止した後、ホームドア装置ドア開、車両ドア開により旅客の乗り降りが行われる。
【0003】
本発明に関連する従来技術として下記の特許文献1,2を挙げることができる。
特許文献1が開示するプラットホームドアシステムは車椅子利用者が列車から降車するときにおいて、ホームドア付近の混雑を緩和し円滑な乗降を行えるようにするための構成を有する。具体的に、乗車駅側で、乗客が所持する記録媒体に基づき、個人情報から車椅子利用者であることを読み取ると共に、乗車券情報から降車予定駅を読み取る。さらにメモリ等に保存されるドア位置情報、時刻表データ、車両編成データ等から車椅子情報を生成する。読み取った上記の情報と生成した車椅子情報とを降車予定駅に送信する。降車予定駅では、表示部等により、ホームドア付近の旅客に対して車椅子利用者の存在を知らせる。
特許文献2が開示するプラットホーム柵は、安全にバリアフリーを実現する構成を有している。列車のレール方向に設けられる固定柵と可動柵とからなる構造において、固定柵に設けた戸袋に配置される可動柵の固有情報を通知する通知器を備える。この通知器により、視覚障害者は、可動柵の固有情報を取得することができる。視覚障害者は可動柵に触れる必要がなく、安全にその固有情報を入手することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−151053号公報
【特許文献2】特開2005−239013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の可動式プラットホーム柵によれば、車椅子利用者等を駅係員が円滑に援助し得るような駅係員に簡単に働きかけることができる装置的仕組みを備えていなかった。可動式プラットホーム柵において、車椅子利用者等の援助必要者に対して駅係員との親密性の関係において援助のための利便性を高め、これにより援助必要者の安全性を高めるための装置的仕組みが求められている。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、車椅子利用者等の援助必要者に対して援助のための利便性を高め、援助必要者の安全性を高めることができる可動式プラットホーム柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る可動式プラットホーム柵は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0008】
第1の可動式プラットホーム柵(請求項1に対応)は、駅ホームの線路側縁に沿って設置された複数台のホームドア装置により構成される可動式プラットホーム柵であり、ホームドア装置のドア筐体部に、援助必要者を援助するための連絡操作手段と表示手段を有する援助必要者サポート装置を備えることを特徴としている。
【0009】
上記の可動式プラットホーム柵では、援助必要者用のサポート装置が設けられているため、援助必要者が駅ホームから列車へ乗車するとき、簡単に駅係員を働きかけることができ、安全サービスの提供を受けることが可能となる。
【0010】
第2の可動式プラットホーム柵(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、連絡操作手段は援助を駅係員に連絡するための操作ボタンであることを特徴としている。
【0011】
第2の可動式プラットホーム柵(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、連絡を受けて援助必要者を援助する駅係員が使用する、援助必要者が降車する降車駅で必要とする援助者を用意するための通信システムを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可動式プラットホーム柵において援助必要者用のサポート装置を設けたため、援助必要者が駅ホームから列車へ乗車するとき等で簡単に駅係員を働きかけることができ、安全サービスの提供を受けることでき、車椅子利用者等の援助必要者に対して援助のための利便性を高め、援助必要者の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る可動式プラットホーム柵を構成する1台のホームドア装置を示し、駅ホーム側から見たホームドア装置の外観を示す斜視図である。
【図2】ホームドア装置の外観正面図である。
【図3】ホームドア装置の平面図である。
【図4】ホームドア装置に設けられた援助必要者のためのサポート装置の構成と通信系を含むシステム構成とを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図3を参照して本発明に係る可動式プラットホーム柵の実施形態を説明する。
この可動式プラットホーム柵は、駅ホーム(プラットホーム)の各番線に対応する線路側縁の大部分の領域に沿って設置される。可動式プラットホーム柵は全体として柵形態を有するものであるが、当該可動式プラットホーム柵は線路側縁の長さに応じた所要台数の複数台のホームドア装置を一列に並べて設置することにより形成されている。従って、可動式プラットホーム柵は複数台のホームドア装置によって構成されている。
図1は基本単位になる1台のホームドア装置の外観斜視図(駅ホーム側から見た)を示し、図2は同装置の外観正面図(駅ホーム側から見た)を示し、図3は同装置の平面図を示している。
【0016】
図1等では、列車(電車)が駅ホームの例えば1番線に到着する前の段階のホームドアが閉じた状態の1台のホームドア装置10のみを示している。1台のホームドア装置10は、可動式プラットホーム柵を構成する基本単位なる装置構成である。図1等において、1台のホームドア装置10の両側には、同じ構成を有する他のホームドア装置が設置されている。これらのホームドア装置10が一例に並べられ、連続してつながって全体としての可動式プラットホーム柵が形成される。図1等において他のホームドア装置の図示は省略されている。
【0017】
1台のホームドア装置10の全体は、駅ホームの線路側の縁100に沿って配置され固定されている。通常、ホームドア装置10は、駅ホームに入線し停車した電車の各車両ドアの位置に対応して所要台数のホームドア装置が配置され、固定されている。ホームドア装置10は、駅ホームの床面に固定される一対のドア筐体部11と、一対のドア筐体部11の各内部の戸袋構造部分に収納されかつ内蔵された制御装置および駆動装置に基づき進退動作により開閉自在に動作するホームドア(扉)12とから構成される。一対のドア筐体部11は、それぞれ基本的に同一の外観形状および構造を有し、かつ所要の間隔をあけて配置されている。当該間隔のスペースが乗降通路を形成する。一対のドア筐体部11における各々の対向する面(ドア開閉端面)11aには、ホームドア12が出入りするスリット状開口部11bが形成され、当該スリット状開口部11bを通してホームドア12が出入りする。ホームドア装置10が閉動作状態のときには、両側に位置するホームドア12が一対のドア筐体部11の各々から出て、乗降通路を閉じる。ホームドア装置10が開動作状態のときには、両側のホームドア12が各ドア筐体部11の中に入り、乗降通路が形成される。
【0018】
上記のホームドア12は所要の強度を有するほぼ矩形の金属製等の板状部材によって形成される。なおホームドア12は透明部を設けることによりシースルー構造に形成することもできる。
【0019】
駅ホームの線路側の縁100に沿って設けられた複数台のホームドア装置10の各々において、ドア筐体部11の内部に収容されかつ進退動作に基づき開閉動作を行うホームドア12を動作させる駆動機構はドア筐体部11の内部に設けられている。
【0020】
ホームドア装置10において、左右両側に配置される一対のドア筐体部11の少なくともいずれか一方には援助必要者を援助するためのサポート装置21が設けられている。当該サポート装置21は、連絡用操作ボタン22と、表示ランプ23と、インターホン24と、処理制御部25を備えている。援助必要者は、例えば、車椅子利用者、視覚障害者、聴覚障害者、その他の障害者、体調不良者等である。連絡用操作ボタン22は、例えば車椅子利用者が援助を駅係員に連絡するときに使用される操作ボタンである。車椅子利用者は、例えば、駅ホームに停車した列車に乗ろうとするときであって駅係員の援助を必要とするときに、操作ボタン22をプッシュ操作する。そうすると、表示ランプ23が点灯表示されると共に、駅係員が待機する室内の連絡警報装置に対して音、音声メッセージ等によって通知がなされる。
【0021】
次に、図4を参照して、本実施形態に係るホームドア装置10における上記のサポート装置21に関係するシステム構成とその動作を説明する。
【0022】
図4において、サポート装置21は、前述した通り、連絡用操作ボタン22と、表示ランプ23と、インターホン24と、処理制御部25を備える。処理制御部25は、本来的にホームドア装置10に設けられているものであり、その一部の機能が援助必要者用サポート機能として組み込まれる。処理制御部25の内部には、CPUで構成された制御部31が備えられる。制御部31は、ホームドア装置10におけるホームドア12の開閉動作等の制御を行う機能を元々有している。制御部31に対してメモリ32が設けられ、当該メモリ32内にドア開閉制御プログラム33、援助必要者サポートプログラム34等が実装されている。処理制御部25内の制御部31は、通信部35を経由してネットワーク(通信回線または通信ライン)36に接続され、中央に位置する管理サーバ37と接続可能になっている。またネットワーク36は、他の箇所に設置されたPC端末38、および上記の連絡警報装置39に接続されている。PC端末38と連絡警報装置39は、例えば、駅構内における駅係員が待機する室40内に設置されている。
【0023】
上記の構成を有するホームドア装置10によれば、例えば車椅子利用者が、駅ホームから列車へ乗り込む場合において駅係員の援助を必要とするとき、サポート装置21の連絡用操作ボタン22をオン操作すると、当該オン操作による信号S1に従って処理制御部25の制御部31は呼出し信号S2を生成し、通信部35およびネットワーク36を経由して室40内の連絡警報装置39に対して呼出し信号S2を送り、駅係員の呼出しを行う。同時に、例えば、呼出し信号S2はPC端末38に送られる。制御部31は、連絡用操作ボタン22の操作によって生じた信号S1に基づいて呼出し信号S2を生成するとき、当該呼出し信号S2に使用された連絡用操作ボタン22の設置場所情報が含まれている。従って、PC端末38の表示部には、呼出し場所が示される。駅係員は呼出し情報に基づいて車椅子利用者が居る場所に移動し、列車への乗車のため当該車椅子利用者を援助する。以上において、連絡用操作ボタン22を操作すると、これによって表示ランプ23が点灯表示されるので、駅係員が車椅子利用者の所在場所に駆けつけるときに、その場所を容易に見つけることができることになる。
【0024】
駅係員は、列車への乗車のため車椅子利用者を援助するとき、併せて当該車椅子利用者の降車する駅を確認する。その後、降車駅の確認に基づいて駅係員は、インターホン24を利用して降車駅側の担当部署と連絡を取り、降車駅側で当該車椅子利用者が降車を行うときに降車を援助する援助者を確保する。インターホン24を利用した降車駅側の担当部署との連絡については、インターホン24等による駅係員の入力情報に基づいて処理制御部25の制御部31は降車駅を指定する情報を含む連絡信号S3を生成し、当該連絡信号S3を通信部35、ネットワーク36、管理サーバ37等を経由して、降車駅側のPC端末等に送信する。これにより、降車駅において、降車する車椅子利用者を援助する駅係員を確保する。
【0025】
上記実施形態の説明では、図1等に示されたホームドア装置10のドア筐体部11の適宜な箇所にサポート装置21を設けるようにしたが、予め列車の車両を特定し、例えば第3両目の車両に対応するホームドア装置にサポート装置21を設置することもできる。また他の変形例としては、可動式プラットホーム柵またはその近傍において段差等の部分があるときに援助必要者のためのサポート装置を設けるようにすることもできる。
【0026】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る可動式プラットホーム柵は、車椅子利用者等の援助必要者を容易にかつ確実に援助することができるサポート装置を装備しており、援助必要者等の顧客への安全サービス提供手段として利用される。
【符号の説明】
【0028】
10 ホームドア装置
11 ドア筐体部
11a ドア開閉端面
11b スリット状開口部
12 ホームドア
21 サポート装置
22 連絡用操作ボタン
23 表示ランプ
24 インターホン
25 処理制御部
31 制御部
32 メモリ
33 ドア開閉制御プログラム
34 援助必要者サポートプログラム
35 通信部
36 ネットワーク
37 管理サーバ
38 PC端末
39 連絡警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅ホームの線路側縁に沿って設置された複数台のホームドア装置により構成される可動式プラットホーム柵において、前記ホームドア装置のドア筐体部に、援助必要者を援助するための連絡操作手段と表示手段を有する援助必要者サポート装置を備えることを特徴とする可動式プラットホーム柵。
【請求項2】
前記連絡操作手段は援助を駅係員に連絡するための操作ボタンであることを特徴とする請求項1記載の可動式プラットホーム柵。
【請求項3】
前記連絡を受けて前記援助必要者を援助する前記駅係員が使用する、前記援助必要者が降車する降車駅で必要とする援助者を用意するための通信システムを備えることを特徴とする請求項2記載の可動式プラットホーム柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−218860(P2011−218860A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86970(P2010−86970)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】