説明

可動式防波堤及び可動式防波施設

【課題】可動式防波堤の可動部分の内部に搭載された機器に、水中での電力供給を可能にすること。
【解決手段】可動式防波堤10は、外筒管11と、この外筒管11の内部に移動可能に配置されて、内部に供給される気体により浮力を発生して浮上可能な浮上管12とを有する。浮上管12の機械室CRには、制御機器21及び蓄電池22が配置される。浮上管12の蓋17には、電力受信部30Bが設けられ、これと対向する外筒管11の部分に電力送信部30Aが設けられる。電力送信部30Aは、電気エネルギを磁気エネルギに変換する。また、電力受信部30Bは、電力送信部30Aから出力される磁気エネルギを電気エネルギに変換するとともに、変換後の電気エネルギを蓄電池22や制御装置21へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、必要に応じて水底から水面上に突出する可動式防波堤及び可動式防波施設に関する。
【背景技術】
【0002】
水底に昇降可能な防波装置を設置して、津波が発生した場合や荒天時等には防波装置を水面上まで突出させて、波の影響を低減する可動式防波堤が提案されている。例えば、特許文献1には、海底面に設けたコンクリートを貫通して水底地盤内に鉛直に挿入され、かつ密集状態で基礎コンクリートの表面に上端面を開口させて配列された複数の鞘鋼管と、鞘鋼管に昇降可能に挿入され、かつ下端面が開口し、上端面が閉塞された浮上用鋼管と、各浮上用鋼管内に空気を供給するための給気装置とを備えた可動式防波堤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−116131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、可動式防波堤は、万一可動部分が浮上しなかった場合のバックアップシステムを備えることがある。また、可動式防波堤では、可動部分が確実に浮上したか、また、浮上した可動部分が確実に沈降したか等を監視する要求がある。このためには、可動式防波堤の内部に監視や制御に用いる機器を搭載する必要があり、保守や点検を考慮すると、前記機器は可動式防波堤の可動部分に搭載されることになる。このような機器を動作させるためには電力が必要であるが、可動部分はほとんどの時間水中にあるため、水中で可動部分の内部に配置された機器に電力を供給する必要がある。特許文献1にはこの点について開示されておらず、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、可動式防波堤の可動部分の内部に搭載された機器に対して、水中での電力供給を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、水底側に開口部を有する第1筒状部材と、当該第1筒状部材の内部に、当該第1筒状部材の長手方向に対して移動可能に配置されるとともに、内部に供給される気体により浮力を発生して浮上可能な第2筒状部材と、当該第2筒状部材の内部に配置される蓄電池と、前記第1筒状部材に取り付けられて、電気エネルギを磁気エネルギに変換する給電側コイルと給電回路とからなる電力送信部と、前記第2筒状部材に取り付けられ、かつ前記電力送信部と対向して配置されて、前記電力送信部から出力される磁気エネルギを電気エネルギに変換する受電側コイルと受電回路とからなり、変換後の電気エネルギを前記蓄電池と前記第2筒状部材の内部に搭載される機器との少なくとも一方へ供給する電力受信部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
このように、電力送信部と電力受信部との間で電磁誘導を利用して非接触で電力を伝送するので、水中でも電力の伝送が可能となる。その結果、可動式防波堤の可動部分の内部に搭載された機器に対して、水中での電力供給が可能となる。ここで、30Hz以上100Hzの周波数で、電力送信部と電力受信部との間で電力を供給することが好ましい。
【0008】
本発明の望ましい態様としては、前記可動式防波堤において、前記第1筒状部材に取り付けられて、電気信号を磁気信号に変換する水中側送受信コイルと水中側送受信回路とからなる水中側信号送受信部と、前記水中側信号送受信部から出力される磁気信号を電気信号に変換する第2筒状部材側送受信コイルと第2筒状部材側送受信回路とからなり、前記第2筒状部材に取り付けられ、かつ前記水中側信号送受信部と対向して配置されて、変換後の電気エネルギを前記蓄電池と前記第2筒状部材の内部に搭載される機器との少なくとも一方へ供給する浮上管側信号送受信部とを備えることが好ましい。これによって、第2筒状部材が水中にある場合には、浮上管側信号送受信部と水中側信号送受信部とを用いて情報のやり取りができる。ここで、100MHz以上200MHzの周波数で、浮上管側信号送受信部と水中側信号送受信部との間で情報をやり取りすることが好ましい。
【0009】
本発明の望ましい態様としては、前記可動式防波堤において、前記電力受信部は、前記第2筒状部材の浮上方向側の端部から、前記第2筒状部材の長手方向と直交する方向における外側に向かって突出する支持部材に取り付けられ、前記電力送信部は、前記浮上方向側における前記第1筒状部材の端部に設けられるフランジ部に取り付けられることが好ましい。このようにすれば、比較的簡単な構成で電力伝送部と電力受信部とを可動式防波堤に取り付けることができる。
【0010】
本発明の望ましい態様としては、前記可動式防波堤において、前記電力受信部は、前記浮上方向へ向かうにしたがって前記第2筒状部材の長手方向と直交する方向の外側に向かう傾斜部を有する支持部材の前記傾斜部に取り付けられ、前記電力送信部は、前記浮上方向側における前記第1筒状部材の端部に設けられるフランジ部に取り付けられることが好ましい。電力送信部と電力受信部とは互いに対向して設けられるので、電力受信部を上述した傾斜部に取り付けることにより、第2筒状部材と第1筒状部材との隙間にごみ等が侵入することを抑制できる。その結果、ごみ等によって第2筒状部材の動きが阻害されるおそれが低減されるので、第2筒状部材をより確実に浮上させることができる。
【0011】
本発明の望ましい態様としては、前記可動式防波堤において、前記電力受信部は、少なくとも、前記第2筒状部材の長手方向と直交する方向の内側へ移動可能な移動部材に取り付けられ、前記電力送信部は、前記浮上方向側における前記第1筒状部材の端部に設けられるフランジ部に取り付けられることが好ましい。これによって、第2筒状部材が第1筒状部材の内部に沈降する際に、電力受信部と電力送信部との間に異物が噛み込んだ場合でも、移動部材が第2筒状部材の内側に向かって動くことにより、電力受信部及び電力送信部に過度の力が作用することを回避できる。これによって、電力受信部及び電力送信部の耐久性低下を抑制できる。
【0012】
本発明の望ましい態様としては、前記可動式防波堤において、前記第2筒状部材は、前記移動部材に、前記第2筒状部材の長手方向と直交する方向の外側に向かう力を付与する弾性部材を備えることが好ましい。これによって、電力受信部と電力送信部との間に噛み込んだ異物が除去された後は、弾性部材によって電力受信部が正しい位置に戻される。
【0013】
本発明の望ましい態様としては、前記可動式防波堤において、前記電力受信部は、前記第2筒状部材の側部に設けられた開口部に配置され、前記電力送信部は、前記第1筒状部材の内側の側部に設けられた開口部に配置されることが好ましい。これによって、電力送信部及び電力受信部は水中に露出しないので、水中の異物が電力送信部及び電力受信部に衝突すること等による電力送信部及び電力受信部の耐久性低下を抑制できる。
【0014】
本発明の望ましい態様としては、前記可動式防波堤において、前記第2筒状部材の外部に配置されて、低周波を送受信できる外側信号送受信部を備え、前記第2筒状部材の内部に設けられる通信機器が前記外側信号送受信部を介して前記第2筒状部材の外部との間で通信することが好ましい。これによって、可動式防波堤の内部に搭載された機器と外部との間で、水中及び空気中で無線通信が可能になる。
【0015】
本発明の望ましい態様としては、前記可動式防波堤において、前記低周波の周波数は、1kHz以上20kHz以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の望ましい態様としては、前記可動式防波堤において、前記第1筒状部材の底部に接続された送気管と、当該送気管を通じて前記第2筒状部材の内部に空気を供給する空気供給装置と、前記送気管に設けられて、当該送気管の内部の圧力を検出する送気管内圧力検出手段と、を備えることが好ましい。送気管内圧力検出手段によって送気管の内部の圧力を検出し、その変化を監視することによって、送気管の異常、例えば、空気の漏洩等を検知することができる。
【0017】
本発明の望ましい態様としては、前記可動式防波堤において、前記送気管内圧力検出手段は、前記送気管の陸上に配置される部分に設けられることが好ましい。
【0018】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る可動式防波施設は、前記可動式防波堤を水底に複数配列したことを特徴とする。この可動式防波施設は、上述した可動式防波堤を備えるので、可動式防波堤の可動部分の内部に搭載された機器に対して、水中での電力供給が可能となる。
【0019】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る可動式防波施設は、前記可動式防波堤を水底に複数配列し、前記送気管内圧力検出手段が検出した前記送気管の内部の圧力に基づき、前記送気管の気体漏洩箇所を推定する気体漏洩箇所推定手段を備えることを特徴とする。この可動式防波施設は、上述した可動式防波堤を備えるので、水中での電力供給が可能となる。さらに、この可動式防波施設は、気体漏洩箇所推定手段によって送気管の内部の圧力に基づいて送気管の気体漏洩箇所を推定できるので、保守・点検の利便性が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、可動式防波堤の可動部分の内部に搭載された機器に対して、水中での電力供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本実施形態に係る可動式防波施設の平面図である。
【図2】図2は、図1のA−A矢視図である。
【図3】図3は、図1のB−B断面図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る可動式防波堤を備える可動式防波施設の全体構成図である。
【図5−1】図5−1は、本実施形態に係る可動式防波堤の浮上管が浮上する様子を示す模式図である。
【図5−2】図5−2は、本実施形態に係る可動式防波堤の浮上管が浮上する様子を示す模式図である。
【図5−3】図5−3は、本実施形態に係る可動式防波堤の浮上管が浮上する様子を示す模式図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る可動式防波堤が備える機器の構成を示す概略図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る可動式防波堤が備える機器への電力供給を実現する構成を示す模式図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る可動式防波堤における通信を実現するための構成を示す模式図である。
【図9】図9は、電力送信部と電力受信部との配置例を示す模式図である。
【図10】図10は、電力送信部と電力受信部との配置例を示す模式図である。
【図11】図11は、電力送信部と電力受信部との配置例を示す模式図である。
【図12】図12は、電力送信部と電力受信部との配置例を示す模式図である。
【図13】図13は、本実施形態に係る可動式防波堤へ気体を供給する送気管の漏気を推定する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。本実施形態に係る可動式防波堤は、海底、川底等の水底に設置されて、例えば、津波や高潮等が発生した場合には、水底から水面上に浮上して、津波や高潮の通過を阻害し、港湾設備等を保護する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る可動式防波施設の平面図である。図2は、図1のA−A矢視図である。図2は、本実施形態に係る可動式防波堤が浮上した状態を示している。図3は、図1のB−B断面図である。図3は、本実施形態に係る可動式防波堤が水底にある状態、すなわち浮上前の状態を示している。図4は、本実施形態に係る可動式防波堤を備える可動式防波施設の全体構成図である。図5−1〜図5−3は、本実施形態に係る可動式防波堤の浮上管が浮上する様子を示す模式図である。
【0024】
図1〜図3に示すように、可動式防波施設1は、複数の可動式防波堤10と、監視施設100とを含んで構成される。本実施形態において、複数の可動式防波堤10は、岸壁K1、K2の間に一列に配置されて、港の内側(港内BI)と港の外側(港外BO)とを仕切っている。可動式防波堤10は、第1筒状部材の内側に第2筒状部材が配置されるとともに、第2筒状部材の内部に気体(本実施形態では空気)を供給することによって第2筒状部材を浮上させる構造である。
【0025】
それぞれの可動式防波堤10には、送気管3から空気が送られる。複数の送気管3は、水底に配置される送気管ダクト2にまとめられて、一方の岸壁K2上の監視施設100内に備えられる気体供給装置に接続される。そして、有事の際(例えば、津波や高潮等の発生時)には、前記気体供給装置から送気管3を介して、それぞれの可動式防波堤10の第2筒状部材内へ気体が供給されて、前記第2筒状部材が水底から浮上し、一部が水面から突出する。
【0026】
図2、図3に示すように、水底地盤E内には、可動式防波堤10が打ち込まれ、上層部の周囲には捨て石5が敷設されている。図3に示すように、可動式防波堤10は、第1筒状部材である外筒管11と、第2筒状部材(可動式防波堤10の可動部分)である浮上管12とを有する。外筒管11及び浮上管12は筒状(本実施形態では円筒)の部材であり、鋼管で構成される。外筒管11及び浮上管12は、いずれも防錆処理が施されている。なお、外筒管11及び浮上管12は円筒形状に限られるものではない。
【0027】
図3に示すように、外筒管11は水底側に開口部11oを有する。浮上管12は、外筒管11の内部に、外筒管11の長手方向(管軸方向)に対して移動可能に差し込まれ、配置される。そして、浮上管12は、その内部に供給される気体によって浮力を発生して、外筒管11から浮上可能に構成される。本実施形態において、浮上管12は、内部に複数の仕切り部材(本実施形態では板状の部材)15、16が設けられている(以下、仕切り部材15を第1仕切り部材といい、仕切り部材16を第2仕切り部材という)。また、本実施形態において、浮上管12は一方の端部(浮上管12の浮上方向側、すなわち水面WL側の端部)が蓋17によって閉塞されている。そして、第1仕切り部材15、第2仕切り部材16、蓋17によって、浮上管12の内部が複数の部屋に仕切られる。なお、必ずしも蓋17を設ける必要はない。
【0028】
第1仕切り部材15と第2仕切り部材16と浮上管12の側部とで仕切られる空間13は、送気管3から浮上管12の内部に供給された気体を溜めて、浮上管12に浮力を発生させるための空間である。以下、空間13を気室13という。蓋17と第1仕切り部材15と浮上管12の側部とで仕切られる空間CRは、可動式防波堤10の状態を監視したり、送気管3から気体が供給されなかった場合に浮上管12を浮上させたり、浮上した浮上管12を外筒管11の内部に戻す動作をさせたりするための機器(制御機器)20が配置されている。以下、空間CRを機械室CRという。第2仕切り部材16は、孔16Hを備える。孔16Hは、送気管3から浮上管12の内部に供給される気体を気室13へ導く。
【0029】
浮上管12の側部内面には、浮力発生手段14が取り付けられる。浮力発生手段14は、例えば、気泡を有する樹脂、例えば、発泡スチロール等である。また、浮力発生手段14は、単なる空間に空気や窒素等の気体を充填した構造としてもよい。可動式防波堤10は、有事の際には浮上管12の気室13に気体を供給し、この気体によって浮上管12に浮力を発生させ、浮上管12を外筒管11から浮上させる。浮力発生手段14を浮上管12に取り付けることにより、浮上管12を浮上させる際には、浮上管12を浮上させるために必要な浮力のうち、浮力発生手段14が発生する浮力で不足する分を気体によってまかなえばよい。これによって、浮上管12の内部に供給する気体の量を低減できるので、浮上管12を迅速に浮上させることができる。
【0030】
浮上管12の浮上方向とは反対側の端部には、開口部12oが設けられる。送気管3は、外筒管11の底部から外筒管11の内部に差し込まれ、気体出口3eが外筒管11の内部に配置される。送気管3の気体出口3eは、開口部12oの下側(鉛直方向側)に配置される。また、送気管3の気体入口は、上述した気体供給装置に接続されている。次に、気体供給装置を説明する。
【0031】
気体供給装置は、図4に示す気体ボトル104と、気体ボトル104と送気管3との間に設けられる開閉弁110と、電動機103で駆動される圧縮機102とを含んで構成される。これらは、監視施設100に備えられる。送気管3の気体入口は、気体供給装置を構成する開閉弁110に接続されている。気体ボトル104には、圧縮機102によって高圧(20MPa程度)の気体が充填されている。そして、浮上管12を浮上させる際には、開閉弁110が開かれて、気体ボトル104内の気体が送気管3を通って浮上管12の内部に供給される。気体ボトル104は、それぞれの可動式防波堤10に対して設けられており、本実施形態では、1台の可動式防波堤10に対して2台の気体ボトル104が用意される。なお、それぞれの気体ボトル104に対して個別に送気管3を設け、2本の送気管3を浮上管12の開口部12oの下方に配置してもよい。
【0032】
1台の気体ボトル104によって、1台の可動式防波堤10の浮上管12を浮上させることができるが、1台の可動式防波堤10に対して2台の気体ボトル104を用意することで、一方の気体供給系統に何らかの不具合が発生した場合には、もう一方をバックアップとして用いることにより、より確実に浮上管12を浮上させることができる。また、2台の気体ボトル104から1台の可動式防波堤10へ気体を供給することにより、気体ボトル104を単独で用いるよりも迅速に浮上管12を浮上させることができる。
【0033】
電動機103及び圧縮機102は、監視・制御装置101によって制御される。監視・制御装置101は、例えば、気体ボトル104内に充填されている気体の圧力を気体圧力センサ111によって取得し、規定の圧力よりも低い場合には電動機103を駆動して圧縮機102を作動させ、規定の圧力になるまで圧縮機102から気体ボトル104内へ気体を充填する。また、監視・制御装置101は、送気管3に設けられた送気管3内の圧力を検出する送気管圧力検出センサ(送気管内圧力検出手段)105から送気管3内の圧力を取得して、送気管3に漏洩箇所があるか否かを監視する。この方法は後述する。
【0034】
さらに、監視・制御装置101は、可動式防波堤10の機械室CR内の制御機器20と通信して、可動式防波堤10の状態を監視したり、浮上管12の動きを制御したりする。例えば、浮上した浮上管12を外筒管11内に戻す場合、監視・制御装置101は、制御機器20を介して、気室13と気室13の外部とを接続する配管の途中に設けられた排気弁18を開く。これによって、気室13内の気体が気室13の外部に放出されるとともに、気室13内の気体が水に置換されて浮上管12の浮力が低下するので、浮上管12は沈降して外筒管11内に収まる。
【0035】
有事の際、例えば、監視・制御装置101が津波や高潮等の警報を受信した場合、監視・制御装置101は、開閉弁110を開き、図5−1に示すように、送気管3を介して気体ボトル104内の気体を浮上管12の内部に供給する。送気管3から浮上管12内へ供給された気体は、図5−1に示すように、第2仕切り部材16の孔16Hを通って気室13へ入る。気室13の内部の気体によって発生する浮力と、浮力発生手段14によって発生する浮力との和が水中における浮上管12全体の重量を超えると、図5−2に示すように、浮上管12は水面WLに向かって外筒管11から浮上を開始する。そして、図5−3に示すように、浮上管12の一部が水面WL上に突出する。このとき、気室13内の余分な気体は、気室13に設けられた孔D1から排出される。また、機械室CR内の水は機械室CRに設けられた孔D2から排水される。このようにして、有事の際には、図2に示すように複数の浮上管12が一列に水面WLから突出して防波堤の機能を発揮し、津波や高潮等から港湾設備等を保護する。
【0036】
図6は、本実施形態に係る可動式防波堤が備える機器の構成を示す概略図である。図7は、本実施形態に係る可動式防波堤が備える機器への電力供給を実現する構成を示す模式図である。図8は、本実施形態に係る可動式防波堤における通信を実現するための構成を示す模式図である。図9〜図12は、電力送信部と電力受信部との配置例を示す模式図である。本実施形態では、上述したように、可動式防波堤10の機械室CRに制御機器20を設けて、可動式防波堤10の状況を監視したり浮上管12を外筒管11内に戻したりする。図6に示すように、制御機器20は、例えばコンピュータで構成される制御装置21と、気体が充填されたバックアップボトル63と、浮上管12の浮上時に制御装置21へ電力を供給する蓄電池22とを有する。
【0037】
バックアップボトル63と気室13とは給気通路61で接続されている。また、給気通路61には、気体供給用開閉弁19が設けられている。気室13と蓋17の外部とは、排気管60で接続されており、排気管60の途中に排気弁18が設けられる。排気弁18及び気体供給用開閉弁19の動作は、制御装置21によって制御される。蓄電池22には充電装置25が接続されており、充電装置25は非接触電力電送装置30の電力受信部30Bと接続される。制御装置21は、充電装置25から電力が供給されるように構成されるとともに、制御装置21が充電装置25を制御するように構成される。
【0038】
図3、図4に示す送気管3に気体漏洩箇所があった場合、図4に示す気体ボトル104から送られる気体が気体漏洩箇所から放出され、浮上管12内へ供給される量が減少するおそれがある。すると、浮上管12を浮上させるために必要な浮力が確保できないおそれがある。このような場合、陸上の監視・制御装置101からの指令で、あるいは制御装置21による浮上管12の浮上異常の検出により、制御装置21は気体供給用開閉弁19を開く。これによって、バックアップボトル63内の気体を気室13へ供給して、浮上管12の浮上に必要な浮力を確保する。このように、本実施形態では、バックアップボトル63を用いて確実に浮上管12を浮上させる。
【0039】
図6、図7に示すように、非接触電力電送装置30は、対向して配置される電力受信部30Bと電力送信部30Aとで構成されており、電磁誘導を利用して電力や信号を非接触で伝送する。電力送信部30Aは、陸上の監視施設100が備える電源106と電気的に接続されている。電源106は、交流をそのまま、あるいは直流電源をインバータによって交流に変換して、電力送信部30Aへ送る。図7に示すように、電力送信部30Aは、給電側コイル51と給電回路50とからなり、電力受信部30Bは、受電側コイル53と受電回路52とからなる。非接触電力電送装置30は、電力送信部30Aの給電側コイル51へ交流が流れることにより発生する磁界の変化によって電力受信部30Bの受電側コイル53へ誘導起電力を発生させ、非接触で電源106から送られる電力を制御機器20の充電装置25へ伝送する。すなわち、非接触電力電送装置30は、電力送信部30Aで電気エネルギを磁気エネルギに変換して伝送し、電力受信部30Bでその磁気エネルギを電気エネルギに変換して、非接触で電力を伝送する。
【0040】
充電装置25は、電力受信部30Bから交流で伝送されてきた電力を直流に変換して制御装置21へ供給したり、蓄電池22へ充電したりする。蓄電池22を充電するにあたって、蓄電池22の充電量が不足している場合、制御装置21は、蓄電池22の充電量や端子電圧や温度等を監視して、適切に蓄電池22へ充電されるように充電装置25を制御する。本実施形態において、制御装置21は、浮上管12が沈降して外筒管11の内部に収まっているか否かを判定し、浮上管12が沈降して外筒管11の内部に収まっている場合、制御装置21は充電装置25を制御して、充電装置25から制御装置21へ電力が供給されるようにする。
【0041】
一方、浮上管12が浮上している場合、電力受信部30Bと電力送信部30Aとが離れるため、非接触電力電送装置30を介して陸上の電源106から制御装置21へ電力を供給することはできない。この場合、制御装置21は、蓄電池22から制御装置21へ電力が供給されるようにする。これによって、浮上管12の浮上時においても、制御装置21は、可動式防波堤10の監視や制御を継続できる。なお、浮上管12が沈降して外筒管11の内部に収まっている場合、電力受信部30Bが受信し、充電装置25から供給される電力を、蓄電池22を介して制御装置21へ供給してもよい。このように、本実施形態では、電力受信部30Bが受信した電力は、蓄電池22と制御装置21との少なくとも一方へ供給されるように構成されていればよい。
【0042】
制御装置21は、陸上に配置される監視施設100の監視・制御装置101からの指令により、浮上した浮上管12を沈降させたり、緊急時に浮上管12を浮上させたりする。また、制御装置21は、可動式防波堤10の状態、例えば、浮上管12が確実に外筒管11の内部に収納されたか否か、浮上管12が確実に浮上したか否か、蓄電池22に異常がないか否か等を監視する。このため、制御装置21と監視・制御装置101とは相互に通信して情報をやり取りできるように構成される。このため、制御装置21には、図6に示すように通信機器24が接続されている。そして、通信機器24は、外側信号送受信部40と接続されて、浮上管12の外部の通信機器との間で、低周波数の電磁波(低周波電磁波)を用いて情報をやり取りする。本実施形態において、外側信号送受信部40は、浮上管12の浮上方向側における端部(この例では蓋17)に取り付けられる。
【0043】
低周波電磁波は、周波数が1kHz以上20kHz以下の磁界の領域における電磁波である。低周波電磁波は、反射、吸収による減衰が少なく、伝搬媒質への依存度が低いことから、低周波電磁波を用いた通信では、土中、水中、コンクリート中、空気中での一貫した無線通信が可能になるという利点がある。本実施形態では、このような電磁波を通信に用いることにより、水中、空気中において無線通信が可能になる。本実施形態においては、図6、図8に示すように、可動式防波堤10の近傍に水中における信号送受信部(水中信号送受信部)108を設け、陸上には陸上信号送受信部107を設け、監視施設100の監視・制御装置101と接続する。そして、可動式防波堤10の外側信号送受信部40と水中信号送受信部108又は陸上信号送受信部107との間で低周波電磁波を搬送波として通信して、情報をやり取りする。より具体的には、可動式防波堤10の浮上管12が水中にあるときには外側信号送受信部40と水中信号送受信部108との間で通信し、浮上管12の外側信号送受信部40が水面WL上にあるときには外側信号送受信部40と陸上信号送受信部107との間で通信する。このように、低周波数電磁波を用いる外側信号送受信部40を用いることで、水中及び空気中の両方で無線通信が実現できる。なお、図8に示すように、水中信号送受信部108は、複数の可動式防波堤10に対して1台設けられる。
【0044】
本実施形態では、図7に示すように、浮上管側信号送受信部31Bと水中側信号送受信部31Aとで構成される非接触信号電送装置31を備える。浮上管側信号送受信部31Bと水中側信号送受信部31Aとは、浮上管12が沈降して外筒管11の内部に収まっているとき、対向して配置される。水中側信号送受信部31Aは、水中側送受信コイル55と水中側送受信回路54とからなり、浮上管側信号送受信部(第2筒状部材側送受信部)31Bは、浮上管側送受信コイル(第2筒状部材側送受信コイル)57と浮上管側送受信回路(第2筒状部材側送受信回路)56とからなる。非接触信号電送装置31は、浮上管側信号送受信部31Bと水中側信号送受信部31Aとの間で信号を送受信する。水中側送受信コイル55及び水中側送受信回路54は、電気信号を磁気信号に変換する。また、浮上管側送受信コイル57及び浮上管側送受信回路56は、水中側信号送受信部31A、より具体的には水中側送受信コイル55から出力される磁気信号を電気信号に変換する。
【0045】
外側信号送受信部40に加え、非接触信号電送装置31を用いることで、浮上管12が沈降して外筒管11の内部に収まっているときには、非接触信号電送装置31によっても可動式防波堤10の制御機器20と監視施設100の監視・制御装置101との間で通信して、情報をやり取りできる。これによって、外側信号送受信部40のバックアップとして非接触信号電送装置31を用いることができる。なお、非接触信号電送装置31を主として用い、外側信号送受信部40を非接触信号電送装置31のバックアップとして用いてもよい。ここで、浮上管12が浮上すると、非接触信号電送装置31を用いた情報のやり取りはできなくなるので、無線LAN(Local Area Network)や外側信号送受信部40を用いて、可動式防波堤10の制御機器20と監視施設100の監視・制御装置101との間で通信して、情報をやり取りすることになる。
【0046】
次に、図9〜図12を用いて、非接触電力電送装置30、非接触信号電送装置31の配置例を説明する。次の説明においては、非接触電力電送装置30を構成する電力送信部30A及び電力受信部30Bの配置を説明するが、非接触信号電送装置31を構成する水中側信号送受信部31A及び浮上管側信号送受信部31Bについても同様である。図9に示す例では、電力送信部30Aと電力受信部30Bとは対向して配置されるとともに、電力受信部30Bは、浮上管12の浮上方向側の端部(本実施形態では蓋17)から、浮上管12の長手方向(管軸方向)と直交する方向における外側に向かって突出する支持部材32に取り付けられる。また、電力送信部30Aは、浮上管12の浮上方向側における外筒管11の端部に設けられるフランジ部11Fに取り付けられる。このようにすることで、簡単な構成で電力送信部30Aと電力受信部30Bとを可動式防波堤10に取り付けることができる。
【0047】
ここで、フランジ部11Fは、一対の環状部材11F1、11F2と、リブ11F3と、環状の側板11F4と、補強部材11Sとで構成される。一対の環状部材11F1、11F2は、外筒管11の側部外側に取り付けられる。リブ11F3は、一対の環状部材11F1、11F2の間に設けられる。環状の側板11F4は、一対の環状部材11F1、11F2の径方向外側に設けられる。補強部材11Sは、断面略L字形状の環状の部材であり、外筒管11の側部内側から外筒管11の開口部側に配置される環状部材11F1にわたって設けられる。電力送信部30Aは、フランジ部11Fを構成する補強部材11Sの外筒管11の開口部側に配置される。本実施形態においては、フランジ部11Fを一対の環状部材11F1、11F2を備える二重フランジとして構成する。フランジ部11Fは、浮上管12が受けた外力を支持するが、フランジ部11Fを二重フランジとすることで、より強固に浮上管12を支持できる。なお、フランジ部11Fは二重フランジに限定されるものではない。
【0048】
図10に示す例は、図9に示す例と同様に、支持部材33を介して電力受信部30Bを浮上管12に取り付けるが、支持部材33は、浮上管12の浮上方向へ向かうにしたがって浮上管12の長手方向と直交する方向における外側に向かう傾斜部33Sを有する。そして、電力受信部30Bは、傾斜部33Sに取り付けられる。電力送信部30Aと電力受信部30Bとは対向して配置されるので、電力送信部30Aは、傾斜部33Sと同じ角度の傾斜部34Sを有する支持部材34を介して、補強部材11Sの外筒管11の開口部側に取り付けられる。すなわち、支持部材34は、浮上管12の浮上方向へ向かうにしたがって外筒管11の長手方向と直交する方向における外側に向かう傾斜部34Sを有し、この傾斜部34Sに電力送信部30Aが取り付けられる。
【0049】
このように、電力送信部30A及び電力受信部30Bを傾斜部33S、34Sに取り付けて、浮上管12及び外筒管11の管軸方向に対して傾斜させることにより、浮上管12と外筒管11との隙間にごみ等が侵入することを抑制できる。その結果、ごみ等によって浮上管12の動きが阻害されるおそれが低減されるので、浮上管12をより確実に浮上させることができる。また、傾斜部33S、34Sを、浮上管12の浮上方向へ向かうにしたがって浮上管12、外筒管11の長手方向と直交する方向における外側に向かって傾斜させることで、電力送信部30Aと電力受信部30Bとの干渉を回避できる。
【0050】
図11に示す例は、移動部材35を介して電力受信部30Bを浮上管12に取り付けるが、移動部材35は、浮上管12の長手方向と直交する方向へ移動可能である。そして、移動部材35には、浮上管12の長手方向と直交する方向における外側に向かう力が弾性部材36(本実施形態ではつる巻きばね)によって付与される。図11に示すように、浮上管12の浮上方向側における端部には、蓋17に対して板面が直交して取り付けられる環状の第1部材37Aと、第1部材37A及び浮上管12の側部12Sに対して板面が直交して取り付けられる環状の第2部材37Bとで構成される移動部材格納部37を有する。移動部材35は、移動部材格納部37の内部に配置される。そして、第1部材37Aと移動部材35との間には、弾性部材36が設けられており、この弾性部材36によって、移動部材35には、浮上管12の長手方向と直交する方向における外側に向かう力が付与される。また、移動部材35と浮上管12の側部とは、一部が係り合っている。これによって、浮上管12の長手方向と直交する方向における外側に向かう移動部材35の動きが規制される。電力送信部30Aは、支持部材34を介して補強部材11Sの外筒管11の開口部側に取り付けられる。
【0051】
この構造では、浮上管12の内側に向かう移動部材35の動きが許容されるので、浮上管12が外筒管11の内部に沈降する際に、電力送信部30Aと電力受信部30Bとの間に異物が噛み込んだ場合でも、移動部材35が浮上管12の内側に向かって動くことにより、電力送信部30A及び電力受信部30Bに過度の力が作用することを回避できる。これによって、電力送信部30A及び電力受信部30Bの耐久性低下を抑制できる。なお、電力送信部30Aと電力受信部30Bとの間に異物が噛み込んだ場合、図6に示す陸上の電源106から電力を送った場合でも、充電装置25への電力の供給が停止する。この場合、制御装置21は、陸上の監視・制御装置101から取得した電源106の送電が実行されている情報と、充電装置25への電力の供給が停止している情報とから、電力送信部30Aと電力受信部30Bとの間の異常を判定できる。
【0052】
図12に示す例は、電力受信部30Bは、浮上管12の側部12Sに設けられた開口部12SHに配置され、また、電力送信部30Aは、外筒管11の内側の側部に設けられた開口部11SHに配置される。この構造では、電力送信部30A及び電力受信部30Bが水中に露出しないので、水中の異物が電力送信部30A及び電力受信部30Bに衝突することによる電力送信部30A及び電力受信部30Bの耐久性低下を抑制できる。
【0053】
図13は、本実施形態に係る可動式防波堤へ気体を供給する送気管の漏気を推定する方法を説明するための図である。水面WLから水底面GLまでの距離(水深)をL1、水底面GLから送気管3が可動式防波堤10に差し込まれる部分までの距離をL2とする。可動式防波堤10へ気体を送気する送気管3は、B1からB2までの区間が水底立ち下がり部、B2からB3までの区間が水底水平部、B3からB4までの区間が水中立ち下がり部、B4から開閉弁110までの区間が水上水平部となる。本実施形態では、送気管3の水上水平部に送気管圧力検出センサ105を設けており、陸上の監視・制御装置101で送気管3内の圧力を監視している。
【0054】
可動式防波堤10は、待機時においては、送気管3の内部の気体が所定の圧力(基準圧力Pb)になるようにしてある。これによって、送気管3の水底立ちさがり部では、B1から高さL3までの間に水が入っている。すなわち、送気管圧力検出センサ105によって検出される送気管3内の圧力が基準圧力Pbである場合、送気管3は、水面WLからL1+L2−L3まで気体が満たされている。ここで、送気管3内の圧力は、送気管3内における水面の高さに比例して低下するので、送気管3内の圧力が基準圧力Pbから低下した程度によって、送気管3内における水面の高さを知ることができる。
【0055】
送気管3に孔等が空いて気体漏洩箇所が発生した場合、送気管3内の水面は、気体漏洩箇所まで上昇する。例えば、送気管3内の圧力が、送気管3内の水面の高さがL3以上L1未満に相当する圧力であった場合、送気管3の気体漏洩箇所は水底立ちさがり部であると推定できる。また、送気管3内の圧力が、送気管3内の水面の高さがL1に相当する圧力であった場合、送気管3の気体漏洩箇所は水底水平部であると推定できる。また、送気管3内の圧力が、送気管3内の水面の高さがL1よりも大きく0未満に相当する圧力であった場合、送気管3の気体漏洩箇所は、水面WLよりも水底面GL側における水中立ちさがり部であると推定できる。また、送気管3内の圧力が、送気管3内の水面の高さが0に相当する圧力であった場合、送気管3の気体漏洩箇所は水面WLよりも水上水平部側であると推定できる。このように、本実施形態では、送気管3内の圧力に基づいて、送気管3の気体漏洩箇所を推定できる。
【0056】
監視・制御装置101を気体漏洩箇所推定手段として用いて送気管3の気体漏洩箇所を推定する場合、現時点における送気管3内の圧力Pnの大きさと気体漏洩箇所との関係を予め対応付けたテーブルを用意しておき、監視・制御装置101の記憶部に保存しておく。そして、監視・制御装置101が送気管圧力検出センサ105から現時点における送気管3内の圧力Pnを取得し、基準圧力Pbと比較して、Pn<Pbであれば、前記テーブルからPnに対応する気体漏洩箇所を読み出し、表示手段や音声等を用いてその旨を報知する。また、この手法に限らず、可動式防波施設1の作業者が送気管圧力検出センサ105から現時点における送気管3内の圧力Pnを測定し、Pn<Pbであれば、Pnに相当する送気管3内の水面の位置を求め、送気管3の気体漏洩箇所を推定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明に係る可動式防波堤及び可動式防波施設は、水底に設置される可動式防波堤の監視や制御に有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 可動式防波施設
3 送気管
3e 気体出口
10 可動式防波堤
11 外筒管
11F フランジ部
12 浮上管
12S 側部
13 気室(空間)
14 浮力発生手段
15 第1仕切り部材(仕切り部材)
16 第2仕切り部材(仕切り部材)
17 蓋
18 排気弁
19 気体供給用開閉弁
20 制御機器
21 制御装置
22 蓄電池
24 通信機器
25 充電装置
30 非接触電力電送装置
30A 電力送信部
30B 電力受信部
31 非接触信号電送装置
31A 水中側信号送受信部
31B 浮上管側信号送受信部
32、33、34 支持部材
33S 傾斜部
34S 傾斜部
35 移動部材
36 弾性部材
37 移動部材格納部
40 外側信号送受信部
100 監視施設
101 監視・制御装置
102 圧縮機
104 気体ボトル
105 送気管圧力検出センサ
106 電源
107 陸上信号送受信部
108 水中信号送受信部
110 開閉弁
111 気体圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底側に開口部を有する第1筒状部材と、
当該第1筒状部材の内部に、当該第1筒状部材の長手方向に対して移動可能に配置されるとともに、内部に供給される気体により浮力を発生して浮上可能な第2筒状部材と、
当該第2筒状部材の内部に配置される蓄電池と、
前記第1筒状部材に取り付けられて、電気エネルギを磁気エネルギに変換する給電側コイルと給電回路とからなる電力送信部と、
前記第2筒状部材に取り付けられ、かつ前記電力送信部と対向して配置されて、前記電力送信部から出力される磁気エネルギを電気エネルギに変換する受電側コイルと受電回路とからなり、変換後の電気エネルギを前記蓄電池と前記第2筒状部材の内部に搭載される機器との少なくとも一方へ供給する電力受信部と、
を含むことを特徴とする可動式防波堤。
【請求項2】
前記第1筒状部材に取り付けられて、電気信号を磁気信号に変換する水中側送受信コイルと水中側送受信回路とからなる水中側信号送受信部と、
前記水中側信号送受信部から出力される磁気信号を電気信号に変換する第2筒状部材側送受信コイルと第2筒状部材側送受信回路とからなり、前記第2筒状部材に取り付けられ、かつ前記水中側信号送受信部と対向して配置されて、変換後の電気エネルギを前記蓄電池と前記第2筒状部材の内部に搭載される機器との少なくとも一方へ供給する浮上管側信号送受信部とを備える請求項1に記載の可動式防波堤。
【請求項3】
前記電力受信部は、前記第2筒状部材の浮上方向側の端部から、前記第2筒状部材の長手方向と直交する方向における外側に向かって突出する支持部材に取り付けられ、
前記電力送信部は、前記浮上方向側における前記第1筒状部材の端部に設けられるフランジ部に取り付けられる請求項1又は2に記載の可動式防波堤。
【請求項4】
前記電力受信部は、前記浮上方向へ向かうにしたがって前記第2筒状部材の長手方向と直交する方向の外側に向かう傾斜部を有する支持部材の前記傾斜部に取り付けられ、
前記電力送信部は、前記浮上方向側における前記第1筒状部材の端部に設けられるフランジ部に取り付けられる請求項1又は2に記載の可動式防波堤。
【請求項5】
前記電力受信部は、少なくとも、前記第2筒状部材の長手方向と直交する方向の内側へ移動可能な移動部材に取り付けられ、
前記電力送信部は、前記浮上方向側における前記第1筒状部材の端部に設けられるフランジ部に取り付けられる請求項1又は2に記載の可動式防波堤。
【請求項6】
前記第2筒状部材は、前記移動部材に、前記第2筒状部材の長手方向と直交する方向の外側に向かう力を付与する弾性部材を備える請求項5に記載の可動式防波堤。
【請求項7】
前記電力受信部は、前記第2筒状部材の側部に設けられた開口部に配置され、
前記電力送信部は、前記第1筒状部材の内側の側部に設けられた開口部に配置される請求項1又は2に記載の可動式防波堤。
【請求項8】
前記第2筒状部材の外部に配置されて、低周波電磁波を送受信できる外側信号送受信部を備え、
前記第2筒状部材の内部に設けられる通信機器が前記外側信号送受信部を介して前記第2筒状部材の外部との間で通信する請求項1から7のいずれか1項に記載の可動式防波堤。
【請求項9】
前記低周波電磁波の周波数は、1kHz以上20kHz以下である請求項8に記載の可動式防波堤。
【請求項10】
前記第1筒状部材の底部に接続された送気管と、
当該送気管を通じて前記第2筒状部材の内部に空気を供給する空気供給装置と、
前記送気管に設けられて、当該送気管の内部の圧力を検出する送気管内圧力検出手段と、
を備える請求項1から9のいずれか1項に記載の可動式防波堤。
【請求項11】
前記送気管内圧力検出手段は、前記送気管の陸上に配置される部分に設けられる請求項10に記載の可動式防波堤。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の可動式防波堤を水底に複数配列したことを特徴とする可動式防波施設。
【請求項13】
請求項10又は11に記載の可動式防波堤を水底に複数配列し、
前記送気管内圧力検出手段が検出した前記送気管の内部の圧力に基づき、前記送気管の気体漏洩箇所を推定する気体漏洩箇所推定手段を備えることを特徴とする可動式防波施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−203077(P2010−203077A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47242(P2009−47242)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(506122246)三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社 (111)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】