説明

可動絞り装置

【目的】本発明は、電子顕微鏡等の荷電粒子光学系の可動絞り装置に関し、鏡筒に1つの孔でよく、かつ部品点数を少なくして安価で鏡筒からの突出を極めて小さくして操作時に邪魔にならないようにできると共に、絞りの位置合わせを容易かつ絞りが汚染した場合に鏡筒を分解することなく簡易に交換することを目的とする。
【構成】荷電粒子光学系を構成する鏡筒の側面に設けたフランジと、フランジに真空シールして軸方向に移動あるいは軸方向に回転あるいは両者の回転・移動を可能にして装着した2つのX駆動シャフトおよびY駆動シャフトと、X駆動シャフトおよびY駆動シャフトの移動あるいは回転あるいは回転・移動に連動して絞りをある一定方向および一定方向にほぼ直角方向にそれぞれ移動させる移動機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡等の荷電粒子光学系の可動絞り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走査型電子顕微鏡(SEM)として、小型の図7に示す走査型電子顕微鏡がある。以下、図7について簡単に説明する。
【0003】
図7は、一般的なSEM鏡筒の簡単な例の模式図とこれに対応する電気制御部を示す。
【0004】
図7に示すSEM鏡筒は、一般的なものであるのでその詳細な説明は省き、ここでは、本願発明に係わる対物レンズ36の絞り34について以下詳細に説明する。他に、他のレンズ33の絞り、ブランカ31の電子線遮断絞り32、電子銃30のアノード30−1の絞りも本願発明の対象となるが、同様であるので説明を省略する。
【0005】
図7の対物レンズ36の絞り34では、2つの一般要件として、
(1)絞り34の場合は対物レンズ36の光軸Zに位置すべく、その微小位置合わせを要する。またレンズ間の絞りの場合は、両者の光軸に絞りを合わせ込む必要がある。
【0006】
(2)絞り34はその汚染劣化の為に容易に(鏡筒を分解する事無く)交換出来なければならない。
【0007】
図8は、従来の絞り装置例(その1)を示す。
【0008】
図8の(a)は、鏡筒外筒51の内部のX−Yステージ44上に、絞り43を備えたX動ステージ48,Y動ステージ41を搭載した例の模式図であり、電子線の光軸方向(Z方向)に見た図である。
【0009】
図8の(b)は、Y方向(断面A−A)に見た図である。これは鏡筒内に設置するX動ステージ48,Y動ステージ41のX動、Y動を2本のネジ・シャフトの構造を持つX駆動ネジシャフト45とY駆動ネジシャフト46で行うものである。
【0010】
X駆動ネジシャフト45を時計方向に回すと、Xスプリング47に対抗しながらX動ステージ48を−X方向に移動し、逆に反時計方向に回すと、+X方向に移動する。X駆動ネジシャフト45のつまみの脱落防止のため、ストッパ49が設けられている。X駆動ネジシャフト45と鏡筒外筒41との間にはOリング50を設けて鏡筒内の真空を保全している。
【0011】
Y方向についても同様にして、Y駆動ステージ 41のY動を行う。この場合、X−Yステージ44がある程度大きくなることと、絞り43の交換は鏡筒を分解しないとできないという問題がある。
【0012】
図9は、従来の絞り装置例(その2)を示し、鏡筒外筒41の側面外部よりフランジ62で取り付ける、絞り43の交換が可能な可動絞り機構の模式図であり、電子線の光軸方向(Z方向)に見た図である。これは、X駆動ネジシャフト64の回転によるX動を、X動の節aをシャフトの回転中心として、絞りをX方向に移動する図である。
【0013】
X駆動ネジシャフト64を時計方向に回すと、駆動受け65はXスプリング66に対抗しながら+X方向に移動し、これに接続するシャフト67は節aを回転中心として絞り43を−X方向に移動する。同様にX駆動ネジシャフト64を反時計方向に回すと絞り43は+X方向に移動する。X駆動ネジシャフト64の脱落防止のため、ストッパ68が設けられている。フランジ62に付随のOリングA及びシャフト67のOリングBは、鏡筒外筒41の真空を保全している。
【0014】
Y駆動ネジシャフト69を時計方向に回すと、Yスプリング70に対抗しながらシャフト67に付随する絞り43はY方向に移動する。
【0015】
図9でフランジ62のネジ71を外して、鏡筒外筒41よりこれを分離すると、絞り43を取り出せるので絞り43の交換をすることができる。
【0016】
この図9の機構の場合、鏡筒外の部分72を小さく出来ない。また、図9は模式図であるが、更にここに記載されていない、シャフト67のY軸を中心とする回転止め等の防止機構等を含めると、相当部品点数が多く複雑な機構となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来の上述した図8の絞り装置では、絞り43を交換できないという問題があった。
【0018】
また、上述した図9の絞り装置では、鏡筒外筒41に1つの孔でよいが、しかし、鏡筒外筒41から外側にX動およびY動のためのX−Y移動機構が大幅に飛び出してしまうと共に、部品点数が多く複雑な機構となってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、これらの問題を解決するために、荷電粒子光学系に用い、所定範囲内の荷電粒子線を通過させ、それ以外を遮断、あるいは所定範囲内の荷電粒子線を遮断、それ以外を通過させる絞りを、荷電粒子の通路の任意位置に移動させる機構を有する絞り装置において、荷電粒子光学系を構成する鏡筒の側面に設けたフランジと、フランジに真空シールして軸方向に移動あるいは軸中心に回転あるいは両者の回転・移動を可能にして装着した2つのX駆動シャフトおよびY駆動シャフトの移動あるいは回転あるいは回転・移動に連動して前記絞りをある一定方向および当該一定方向にほぼ直角方向にそれぞれ移動させる移動機構とを備えるように構成する。
【0020】
この際、移動機構として、X駆動シャフトあるいはY駆動シャフトのいずれか1つの駆動シャフトの移動あるいは回転あるいは回転・移動に対応して、X−Y面内で一定方向に絞りを直進移動させる直進機構と、いずれか1つの他の駆動シャフトの移動あるいは回転あるいは回転・移動に対応して、駆動シャフトの移動あるいは回転あるいは回転・移動を、同一面内で一定方向にほぼ直角方向の直進移動に変換する移動変換機構とを備えるようにしている。
【0021】
また、直進機構は、駆動シャフトが回転あるいは回転・移動したときにネジにより直進移動に変換する機構とするようにしている。
【0022】
また、移動変換機構は、駆動シャフトが移動あるいは回転・移動したときに駆動シャフトに連結した傾斜部を設けて傾斜部によりほぼ直角方向の直進移動に変換、あるいは駆動シャフトが回転あるいは回転・移動したときに駆動シャフトに連結した偏心カムを設けて偏心カムによりぼほ直角方向の直進移動に変換するようにしている。
【0023】
また、絞りを面内で一定方向および一定方向とほぼ直角方向に移動させる機構を固定するハウジングをフランジに連結するようにしている。
【0024】
また、鏡筒からフランジに固定したアセンブリを全部取り外して交換可能、あるいは取り外して絞りを交換可能に構成するようにしている。
【0025】
また、鏡筒に固定したフランジの真空外側にX駆動シャフトおよびY駆動シャフトに連結した2つの小さなつまみを設け、2つのつまみを軸方向に移動あるいは回転あるいは回転・移動させて絞りを面内で一定方向および一定方向とほぼ直角方向の任意位置に真空外から調整可能にするようにしている。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、鏡筒に固定するフランジに2つの駆動シャフトを設けてこれを移動、回転、回転・移動して絞りを一定方向および一定方向とほぼ直角方向に移動させる構造を採用したことにより、鏡筒に1つの孔でよく、かつ部品点数を少なくして安価で鏡筒からの突出を極めて小さくして操作時に邪魔にならないようにできると共に、絞りの位置合わせを容易かつ絞りが汚染した場合に鏡筒を分解することなく簡易に交換することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、鏡筒に固定するフランジに2つの駆動シャフトを設けてこれを移動、回転、回転・移動して絞りを一定方向および一定方向とほぼ直角方向に移動させ、鏡筒に1つの孔でよく、かつ部品点数を少なくして安価で鏡筒からの突出を極めて小さくして操作時に邪魔にならないようにできると共に、絞りの位置合わせを容易かつ絞りが汚染した場合に鏡筒を分解することなく簡易に交換可能にすることを実現した。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の絞り装置(X駆動に円柱状カムを用いた場合)の模式図であり、鏡筒1の側面外部より取り付ける、絞り2の交換が可能な可動絞り機構の模式図であり、電子線の光軸方向(Z方向)に見た図である。又は図2は図1のA−A断面の図である。
【0029】
図1において、図示の絞り装置は、鏡筒1との間で真空遮断するOリングAを持つフランジ3とこれに固着するベース4より成り、フランジ3にはOリングBで真空遮断されている、X駆動シャフト5と送りネジ付きのY駆動ネジシャフト6を備え、ベース4には、これに固着せるハウジング7及びこの中でX,Y移動する絞りホルダ8、プッシュロッド9及びT型プッシュロッド10及びべース4に固着するそれぞれの軸受11,12を構成する。
【0030】
X駆動シャフト5の回転は、同シャフト先端のカム13で絞りホルダ8をX移動し、X動駆動シャフト5と並ぶY駆動ネジシャフト6を回転させて、ネジ送りによって絞りホルダ8をY移動する。
【0031】
以下、X動,Y動、および絞りの交換について図1から図6をもとに詳細に説明する。
【0032】
(1)X動をカム方式で駆動する図1の構成の動作を詳細に説明する。
【0033】
X動駆動シャフト5を時計方向に回すと、これに接続するシャフト14の先端に、シャフト軸中心より偏心して付随するカム13が偏心して回転する。カム13のプッシュロッド9の当たり面が+X方向に向かう場合、カム13はハウジング7に軸受けを持つプッシュロッド9を押し、バネXに対抗しながら絞りホルダ8を+X方向に移動する。カム当たり面が−X方向に動く場合はその逆方向の移動となる。
【0034】
カムは半径Rの円柱形状で、X駆動シャフト5の軸中心からカム13の中心までの距離をδとし、カム13の中心位置がX動駆動シャフト5の回転中心位置とθの位相をなすとすると(図3参照))、X駆動シャフト5の中心O点からカム13とプッシュロッド9の当たり位置までの距離rは、
r = δ(cosθ)+R ・・・・(式1)
となり、rはδ+R 〜−δ+Rの範囲で変化する。プッシュロッド9の移動範囲は2×δである。
【0035】
また、(式1)を微分すると、
dr/dθ = −δsinθ
となり、Rに関係なくX駆動シャフトの回転位相によってX動の移動量が変化する。
【0036】
θ = π/2 又は 3π/2
付近の場合に絞り位置が電子線中心になるように設計作成された場合、例えばX駆動シャフト5の1/32回転は、2×π/32=約0.196radに相当し、δ=0.25mmとすれば、dr=0.25×0.196=約0.05mmだけ移動する。このときのX動の可変範囲は最大2×δ=0.5mmである。
【0037】
カムの断面形状を変えてXの運動を線形にする方法は多々知られている。X駆動シャフト5の中心からからX方向当たり位置迄の距離をrとし、同シャフトの回転位相をθとする極座標(r,θ)でカム断面の形状を表わす。
【0038】
カム13の断面を図6の(a)に示す形状、即ち、θ=0の時r=r1,θ=2×πの時r=r2 として、
r=(r2 −r1)/(2π)×θ+r1
とすると、X駆動シャフト5の回転角に比例して上記X動を得る。X駆動シャフト5の1回転に対して、(r2 −r1)なるX移動を得る。
【0039】
また、カム13の断面を図6の(b)に示す形状、即ちθ=0の時r=r1, θ=πの時r=r2として、
r=(r2 −r1)/π×θ+r1 , θ=0〜πの時
r=−(r2 −r1)/π×θ+2×r2−r1 , θ=π〜2πの時
とするとX動駆動シャフト5の回転角に比例して上記X動をえる。X駆動シャフト5の半回転に対して、(r2 −r1)なるX移動を得る。
【0040】
(2)X動をネジシャフトで行う図4の構成の動作を詳細に説明する。
【0041】
図4においてX駆動ネジシャフト5’を時計方向に回すと、鏡筒1の内部のシャフト14’の先端にある円錐形の傾斜部13’が回転しながらプッシュロッド9を+X方向に押し、バネXに対抗しながら絞りホルダ8を+X方向に移動する。カム当たり面が−X方向に動く場合はその逆方向の移動となる。
【0042】
(3)また、図4と同様にして、図5のように、X駆動ネジシャフト5’とプッシュロッド9の間に、ベース4に回転動中心軸を持つ扇型の直交伝達器17を設ける方法もある。
【0043】
(4)Y動について図1、図4、図5の構成の動作を詳細に説明する。
【0044】
図1、図4、図5において、Y駆動ネジシャフト6を時計方向に回すと、T型プッシュロッド10をY方向に動かし、バネYに抗して絞りホルダ8をY方向に動かす。プッシュロッドをT型とするのは、絞りホルダ8がZ軸中心の回転をしないように束縛するものである。ここでプッシュロッドガイド15は、T型プッシュロッド10のY軸のヨー運動(Z軸回転)を許さないように精度よく作る必要がある。その為に、T型プッシュロッド10に与えるを与圧ネジ16をプッシュロッドガイド15に設ければよい。
【0045】
(5)絞りの交換について図1、図4、図5を用いて詳細に説明する。
【0046】
フランジ3の止めネジを外し、可動絞りアセンブリ機構を鏡筒1より引き出し、ふたを外して絞り2を取り出し交換する。
【0047】
以上のように、可動絞りアセンブリ機構の部品点数は、従来の図8、図9に比して部品点数は少なく組立も簡単であり、また、フランジ3にベース4を固着する構造によってこの可動絞り装置の剛性は高い構造となっている。以下図1から図6について、個別に説明する。
【0048】
図1は、本発明の絞り装置(X駆動に円柱状カムを用いた場合)の模式図を示す。
【0049】
図1において、鏡筒1は、電子光学系を構成する図7の電子銃30、レンズ33、36などの電子線ビームの通過する通路を真空に保持するための筒(通常は外周に設けた円柱状の筒)である。鏡筒1の内部は、図示外の真空ポンプで真空(例えば10−5Torr以下)に排気されている。
【0050】
フランジ3は、円筒状の鏡筒1の一部を平坦にカットした面にOリンクAを介して真空が保持されるように構成したフランジであって、ベース4、ハウジング7を介して絞り2を保持するための部分である。フランジ3は、図示のボルトを取り外すことで当該フランジ3の全体を鏡筒1から取り外し、絞り2を交換などしたりすることが可能となっている。
【0051】
ベース4は、フランジ3に固定したハウジング7を介して絞り2を保持するためのベースである。
【0052】
ハウジング7は、ベース4に固定され、絞り2などを保持するためのものである。
【0053】
絞りホルダ8は、絞り2を交換可能に保持するホルダである。
【0054】
絞り2は、電子線ビームの軸上の所定開き角度の部分のものを通過させ、それ以外を遮断させたり(例えば通常の明視野像を得る場合)、逆に軸上の所定開き角度の部分のものを遮断させ、それ以外を通過させたり(例えば暗視野像を得る場合)するためのものである。絞り2は、通常は、荷電粒子ビーム(例えば電子線ビーム)で照射されて加熱されるので、耐熱性の板、円盤などに小さな穴を開けた形状を持つものである。
【0055】
X駆動シャフト5は、X駆動を行うためのシャフトであって、ここでは、回転させることでシャフト14を回転させ、絞り2をX駆動するためのものである。
【0056】
カム13は、X駆動シャフト5と連結して回転し、当該カム13の偏心によりプッシュロッド9をここでは、左右(X方向)に移動させるものである。
【0057】
プッシュロッド9は、カム13によりここでは、左右(X方向)に移動したことにより、絞り2を左右(X方向)に直進移動させるものである。
【0058】
Y駆動ネジシャフト6は、Y駆動を行うためのシャフトであって、回転させると、送りネジでその先端が回転しながら直進、ここでは、上下(Y方向)に直進移動させ、絞り2をY駆動するためのものである。
【0059】
回転、移動するY駆動ネジシャフト6のY方向移動は、T型プッシュロッド10に伝わる。プッシュロッドガイド15が、このT型プッシュロッド10をY方向直進に束縛するものである。
【0060】
T型プッシュロッド10は、絞りホルダ8(絞り2)をX方向(左右方向)に直進移動可能な状態で、Y方向(上下方向)に、Y駆動ネジシャフト6の先端の上下方向(Y方向)の移動を行うためのものである。
【0061】
バネX、Yは、絞り2を一定方向(X方向、Y方向)に押して機械的なバックラッシュなどを低減するためのものである。
【0062】
図2は、本発明の絞り装置(図1のA−A断面)を示す。
【0063】
図2において、X駆動シャフト5を回転させると、X駆動シャフト5の先端(左側)に取り付けた偏心したカム13が回転し、図示のプッシュロッド9を図2の面に垂直方向(X方向)に直進移動し、絞り2をX方向に直進移動させる。
【0064】
図3は、本発明の絞り装置(図1のB)を示す。これは、図1のシャフト14、および偏心したカム13の取り付け状態を示す。
【0065】
図3において、シャフト14(図1のX駆動シャフト5を回転させたときに同軸で回転するシャフト14)に、カムシャフト13が偏心して固定されているので、当該シャフト14が回転すると、偏心したカムシャフト13にバネXの力で押し付けられているプッシュロッド9が移動、ここでは、左右方向(X方向)に直進移動する。
【0066】
図4は、本発明の絞り装置(X駆動に傾斜部を用いた場合)を示す。これは、図1ではX駆動シャフト5を回転させて当該回転に連動して回転するシャフト14の先端に偏心したカム13を固定したが、これらの代わりに、図示のX駆動ネジシャフト5’で回転させると回転しながらシャフト14’を移動させ、当該シャフト14’の先端部分に傾斜部13’を固定し、当該傾斜部13’でプッシュロッド9を左右方向(X方向)に直進移動させるようにしたものである。他の構成は図1と同じである。
【0067】
図5は、本発明の絞り装置(X駆動に扇型直交伝達器を用いた場合)を示す。これは、図4のX駆動ネジシャフト5’、シャフト14’、傾斜部13’の代わりに、図示のX駆動ネジシャフト5’で回転させると回転しながらシャフト14’を移動させ、当該シャフト14’の先端部分に、ピンを持つ直交伝達器17で上下方向の移動を、左右方向の移動に変換し、プッシュロッド9を左右方向(X方向)に直進移動させるようにしたものである。他の構成は図1と同じである。
【0068】
図6は、本発明のカム例を示す。これは、図1のシャフト14に偏心して固定するカム13の形状の例を示す。
【0069】
図6の(a)は、等速カム(1回転1行程型)の例を示す。図示の等速カム13は、軸中心を1回転させると、1行程の直進移動に変換するものであって、例えば右側から図1のプッシュロッド9をバネXの力で等速カム13に押し付けると、当該プッシュロッド9は図示の太い曲線の部分で左右方向に移動し、ここでは、等速カム13の回転角度に比例して左右方向の直進移動する。
【0070】
図6の(b)は、等速カム(半回転1行程型)の例を示す。図示の等速カム13は、半回転させると、1行程の直進移動に変換するものである。
【産業上の利用分野】
【0071】
本発明は、鏡筒側面に固定するフランジに2つの駆動シャフトを設けてこれを移動、回転、回転・移動して絞りを一定方向および一定方向とほぼ直角方向に移動させ、鏡筒に1つの孔でよく、かつ部品点数を少なくして安価で鏡筒からの突出を極めて小さくして操作時に邪魔にならないようにできると共に、絞りの位置合わせを容易かつ絞りが汚染した場合に鏡筒を分解することなく簡易に交換する可動絞り装置に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の絞り装置(X駆動に円柱状カムを用いた場合)である。
【図2】本発明の絞り装置(図1のA−A)である。
【図3】本発明の絞り装置(図1のB)である。
【図4】本発明の絞り装置(X駆動に傾斜部を用いた場合)である。
【図5】本発明の絞り装置(X駆動に扇型直交伝達器を用いた場合)である。
【図6】本発明のカム例である。
【図7】一般的なSEMの簡単な例である。
【図8】従来の絞り装置例である。
【図9】従来の絞り装置例である。
【符号の説明】
【0073】
1:鏡筒
2:絞り
3:フランジ
5:X駆動シャフト
5’:X駆動ネジシャフト
6:Y駆動ネジシャフト
7:ハウジング
8:絞りホルダ
9:プッシュロッド
10:T型プッシュロッド
11、12:軸受
13:カム
14、14’:シャフト
15:プッシュロッドガイド
16:与圧ネジ
17:直交伝達器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子光学系に用い、所定範囲内の荷電粒子線を通過させ、それ以外を遮断、あるいは所定範囲内の荷電粒子線を遮断、それ以外を通過させる絞りを、荷電粒子の通路の任意位置に移動させる機構を有する絞り装置において、
前記荷電粒子光学系を構成する鏡筒の側面に設けたフランジと、
前記フランジに真空シールして軸方向に移動あるいは軸方向に回転あるいは両者の回転・移動を可能にして装着した2つのX駆動シャフトおよびY駆動シャフトと、
前記X駆動シャフトおよびY駆動シャフトの移動あるいは回転あるいは回転・移動に連動して前記絞りをある一定方向および当該一定方向にほぼ直角方向にそれぞれ移動させる移動機構と
を備えたことを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
前記移動機構として、X駆動シャフトあるいはY駆動シャフトのいずれか1つの駆動シャフトの移動あるいは回転あるいは回転・移動に対応して、面内で一定方向に前記絞りを直進移動させる直進機構と、
前記いずれか1つの他の駆動シャフトの移動あるいは回転あるいは回転・移動に対応して、当該駆動シャフトの移動あるいは回転あるいは回転・移動を、前記面内で一定方向にほぼ直角方向の直進移動に変換する移動変換機構と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の絞り装置。
【請求項3】
前記直進機構は、駆動シャフトが回転あるいは回転・移動したときにネジにより直進移動に変換する機構であることを特徴とする請求項2記載の絞り装置。
【請求項4】
前記移動変換機構は、駆動シャフトが移動あるいは回転・移動したときに当該駆動シャフトに連結した傾斜部を設けて当該傾斜部によりほぼ直角方向の直進移動に変換、あるいは駆動シャフトが回転あるいは回転・移動したときに当該駆動シャフトに連結した偏心カムを設けて当該偏心カムによりぼほ直角方向の直進移動に変換したことを特徴とする請求項2あるいは請求項3記載の絞り装置。
【請求項5】
前記絞りを面内で一定方向および当該一定方向とほぼ直角方向に移動させる機構を固定するハウジングを前記フランジに連結したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の絞り装置。
【請求項6】
前記鏡筒から前記フランジに固定したアセンブリを全部取り外して交換可能、あるいは取り外して前記絞りを交換可能に構成したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の絞り装置。
【請求項7】
前記鏡筒に固定した前記フランジの真空外側に前記X駆動シャフトおよびY駆動シャフトに連結した2つの小さなつまみを設け、当該2つのつまみを軸方向に移動あるいは回転あるいは回転・移動させて前記絞りを面内で一定方向および当該一定方向とほぼ直角方向の任意位置に真空外から調整可能にしたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の絞り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−150906(P2012−150906A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6847(P2011−6847)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(590002666)新日本電工株式会社 (7)
【出願人】(592191195)株式会社アプコ (9)
【Fターム(参考)】