可動間仕切装置及び引き戸取付ユニット
【課題】既設の可動間仕切装置にも簡単に適用できて的確に引き戸式の出入口を構成することができ、レイアウト変更にも容易に対応できるようにした新規有用な可動間仕切装置を提供する。
【解決手段】間仕切パネルA,A間または間仕切パネルAと支柱Bとの間に形成される開放空間SSの上方にレール取付部材101を、当該間仕切パネルA,A間または間仕切パネルAと支柱Bとの間に架け渡して設け、このレール取付部材101の下方空間を閉止する位置から隣接する間仕切パネルAへの重合位置までの間で引き戸100を案内するレール102を当該レール取付部材101に一体的に設けて、このレール102に引き戸100を移動可能に支持させるようにした。
【解決手段】間仕切パネルA,A間または間仕切パネルAと支柱Bとの間に形成される開放空間SSの上方にレール取付部材101を、当該間仕切パネルA,A間または間仕切パネルAと支柱Bとの間に架け渡して設け、このレール取付部材101の下方空間を閉止する位置から隣接する間仕切パネルAへの重合位置までの間で引き戸100を案内するレール102を当該レール取付部材101に一体的に設けて、このレール102に引き戸100を移動可能に支持させるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス空間等を必要に応じて間仕切る可動間仕切装置に関し、特に出入り口となる部位に引き戸を簡単に取り付け得るようにした可動間仕切装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の可動間仕切装置は、間仕切パネル同士、或いは間仕切パネルと支柱の間を連結することにより適宜の壁面を形成して、居住空間を必要に応じて間仕切るものであり、パーソナルワーク用の執務スペースから共同ワークエリアの形成まで、種々多様に使用されている。
【0003】
このような可動間仕切装置において、壁面の一部に必要に応じて出入口を形成したい場合等には、その部位を開放空間として、その開放空間に枠体を構築して引き戸を配設することが考えられる。
【0004】
特許文献1に例示するものは、可動間仕切ではないが、共有空間の外郭を画定する所定位置から立設したポールと、隣り合うポールの上端を連結した状態で略水平に支持されるフレームとを備え、ポールとフレームで囲まれた面が一方のポール側に開口を残してパネル体により閉塞され、開口をフレームに設けたレールに沿って移動する扉により開閉可能とした共有空間構造体が示されている。
【0005】
これに倣うならば、引き戸の可動範囲を囲むように縦枠と上枠とで少なくとも三方枠を構成し、その三方枠で囲まれた面を一方の縦枠側に開口を残してパネル体により閉塞して、その開口を、上枠に設けたレールに沿って移動する引き戸により開閉可能とすることで出入口を構成する事は可能である。
【特許文献1】特開2005−139802
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、可動間仕切装置の場合は、ポールやフレームのような骨格がなく、縦枠と横枠を用いて三方枠を新たに構築しなければならない。このため、枠構造が大掛かりになり、コストや労力が大幅に増大する上に、少なくとも2枚分の間仕切パネルを取り去った部位に三方枠を構築し、その片半分に別途にパネル体を取り付け、その上で引き戸を配置しなければならない。このため、既設の可動間仕切装置に簡単に適用するわけにはいかず、レイアウト変更に係る自由度も低いものとなる。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、既設の可動間仕切装置にも簡単に適用できて的確に引き戸式の出入口を構成することができ、レイアウト変更にも容易に対応できるようにした新規有用な可動間仕切装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、本発明の可動間仕切装置は、間仕切パネル間または間仕切パネルと支柱との間に形成される開放空間の上方にレール取付部材を、当該間仕切パネル間または間仕切パネルと支柱との間に架け渡して設け、このレール取付部材の下方空間を閉止する位置から隣接する間仕切パネルへの重合位置までの間で引き戸を案内するレールを当該レール取付部材に一体的に設けて、このレールに引き戸を移動可能に支持させてなることを特徴とする。
【0010】
このように構成すると、一対の間仕切パネルとレール取付部材とで三方枠と同様の構造体をなし、或いは間仕切パネル、支柱及びレール取付部材で三方枠と同様の構造体をなすので、かかるレール取付部材にレールを一体的に設ける簡単な構成のみで、所要の強度を有するレール構造を有効に実現することができる。しかも、このレールは、引き戸を隣接する間仕切パネルへの重合位置まで案内するものであるので、大掛かりな枠を構成してその一部を別途にパネル体で閉止するといった事も不要であり、一層簡素な手段として利用に供することができる。
【0011】
施工の便を有効に向上させるためには、間仕切パネルの側縁部における上端近傍にレール取付部材との間を連結する係合部材を工具不要の操作部材と関連づけて当該間仕切パネルから分離し得ないように収容し、操作部材に加える操作に伴って間仕切パネルの連結する側の端面のみから係合部材を突出させ、これを隣接位置にあるレール取付部材の側縁部に係合させて、かかる係合部材のみによりレール取付部材との連結に必要な位置決め固定をなし得るようにしていることが有効である。
【0012】
レイアウトの多様性に適切に対応するためには、間仕切パネルに収容する係合部材が、他の間仕切パネルや支柱などの間仕切要素との間を連結する係合部材としても機能するものであることが望ましい。
【0013】
レール取付部材を1箇所のみにて間仕切パネルに適切に連結するためには、係合部材は、隣接する間仕切パネル同士を連結する場合にも、それのみで間仕切パネル間の上下方向の位置決め固定をなし得るものであることが望ましい。
【0014】
或いは、レール取付部材側から支柱等に対して連結操作を行う場合を考慮して、レール取付部材の側縁部内に他の間仕切パネルや支柱などの間仕切要素との間を連結する係合部材を工具不要の操作部材と関連づけて収容し、操作部材に加える操作に伴ってレール取付部材の連結する側の端面から係合部材を突出させ、これを隣接する間仕切要素の側縁部に係合させて、かかる係合部材のみにより間仕切要素との連結に必要な位置決め固定をなし得るようにしておくことも有効である。
【0015】
既設の可動間仕切装置を大幅に解体せずとも引き戸の取り付けやその後のレイアウト変更に対応可能とするためには、係合部材を非係合位置に引き込んだ状態で、間仕切パネルに対するレール取付部材の長手方向と直交する方向への相対移動、あるいは支柱に対するレール取付部材の長手方向と直交する方向への相対移動をなし得るようにしておくことが効果的である。
【0016】
係合部材の好ましい実施の態様としては、側縁部から突出させた対をなす係合片を係合先の側縁部に設けた被係合部に挿入し、挿入位置から少なくとも一方の係合片を引き戻す動作を与えることにより両係合片に相寄る方向又は相離れる方向の相対動作を同時に引き起こし、これにより側縁部同士を引き寄せつつ前記相対方向の位置決め固定をなすようにしているものが挙げられる。
【0017】
レールをレール取付部材に確実に支持させるためには、レールが、一部をレール取付部材に固定され、他の一部を間仕切パネルの側縁部に形成したスリットにブラケットを介して掛止されることにより取り付けられるようにしておくことが好ましい。
【0018】
以上のように懸吊支持される引き戸の下端側を適切に支持するためには、間仕切パネルの下端部と引き戸の下端部との間に、当該引き戸を厚み方向の変位を規制しつつ幅方向に沿って誘導し得るガイド機構を構成しておくことが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上説明した構成であるから、既設の可動間仕切装置にも簡単に適用できて的確に引き戸式の出入口を構成することができ、レイアウト変更にも容易に対応可能な新規有用な可動間仕切装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
この実施形態の可動間仕切装置は、間仕切パネルや支柱によって組まれた可動間仕切装置に対して、その一部に簡単な引き戸取付ユニットを用いて引き戸を取り付けるようにしたものである。
【0022】
その取付構造には、間仕切パネル間や間仕切パネルと支柱との間を連結する連結具それ自体、或いはそれと同様の構造のものを用いているため、先ず、これらの間仕切パネルや支柱を始めとする可動間仕切装置全般の構造について説明し、しかる後、引き戸を取り付ける際の取付構造に言及する。
(可動間仕切装置の全体説明)
【0023】
図1及び図2は、間仕切パネルAを模式的に示している。このものは、剛性のある縦枠11や横枠12、鋼板13、適宜の補強部材等を組み合わせて構造体であるパネル本体1を構成し、このパネル本体1をアジャスタ14で支持するとともに、パネル本体1の両面に化粧材15を被着し、上端に笠木16を、下端に幅木17をそれぞれ配置したものである。笠木16の一部にはカバー16aが枢着してあり、笠木16をパネル本体1に取り付けた状態のままで、カバー16aを当該笠木16から分離させることなく回動させ得るようにしている。そのカバー16aの位置は、回動することによって間仕切パネルAの上方に収容されている操作部材3(図2等参照)をパネル本体1外の操作可能位置に持ち出し得る位置まで退避可能とされている。勿論、回動以外の動作で退避できるように構成してもよく、操作部材3の上面がカバーを兼ねるように構成することもできる。
【0024】
また、パネル側縁部1aには目地1cが形成され、その目地底には以下に述べる係合部材2,4を出入りさせる開口18をスリット状に設けており、上下の係合部材2,4はその開口18を介して隣接する間仕切要素である間仕切パネルAや支柱Bに対して係合動作を行う。
【0025】
その際の連結動作は、部材間を引き寄せて密着させながら上下方向にも同時に位置決め固定するという挙動に基づいている。
【0026】
図1においてパネル側縁部1aの内側に位置するパネル本体1には、図2及び図4に示すように構造体である当該パネル本体1の剛性を利用して上方及び下方にそれぞれ係合部材2、4が離脱し得ないように付帯され、これらの係合部材2,4を操作部材3,5を介して作動させることによって、パネル側縁部1aに設けた開口18を介して突没させ得るようにしている。
【0027】
上係合部材2は、図2及び図3に示すように、第1係合片21及び第2係合片22からなり、これらの係合片21,22を操作部材3に関連づけて構造体であるパネル本体1に突没可能に付帯させている。そして、操作部材3に加える操作によりこれらの係合片21,22を図6(b)に示すようにパネル側縁部1aから突出させた後、操作部材3を通じ第1係合片21に対して第2係合片22を同図(c)に示すように引き戻す動作を与えることによって、両係合片21,22間を図中x2に示す方向に拡幅させるようにしたものである。
【0028】
図3に詳細に示すように、第1係合片21は先端側に爪部を有しない直線状のもので、先端側の上面に突出方向に向かって前傾する傾斜面21aを成形しており、先端付近の上面21b、基端付近の上面21c及び下面21d全体は突没方向に略平行をなし、中間部の上面が前記傾斜面21aと平行な傾斜面21eをなしている。この第1係合片21は、基端上部を被枢着部21fとされている。
【0029】
第2係合片22は、先端に係合対象を呼び込む斜面を有した上向きの爪部22aを備え、先端側及び基端側の下面に前記傾斜面21a、21eに同時に摺動可能な傾斜面22b、22cを有するとともに、中間部の上面22d及び下面22eは突没方向に略平行をなしている。この第2係合片22は基端上部を被枢着部22fとされている。
【0030】
操作部材3は、下向きチャネル状の操作部31と、この操作部31の先端付近の対向壁31a、31a間に支軸3aを介して基端を枢着された連動体32とからなるもので、この連動体32の先端に支軸P1を介して第2係合片22の被係合部22fを枢着している。操作部31の先端には被枢結部31bが設定され、この被枢結部31bは、支軸P2を介して第1係合片21の被係合部21fに枢結されており、さらにこの支軸P2が構造体であるパネル本体1に設けた突没方向に延びるガイド凹所q2にスライド可能に係合している。前記各支軸P1、P2,3aは互いに平行であって突没方向に対して直交方向すなわちパネル本体1の厚み方向を向いている。操作部3の後端側には弾性係合爪33が設けてあり、上方にはその解除レバー33aが設けてある。
【0031】
操作部31は通常は後方スライド端に設定した図2に示す待機位置にあり、弾性係合爪33を介してパネル本体1の横枠12の開口12aに固定されている。このとき、両係合片21,22は全てパネル側縁部1a内の没入位置にあって、第2係合片22の斜面22b、22cが第1係合片21の斜面21a、21eをほぼ滑り上がった状態にある。この状態から操作部31を支軸P2回りに把持し易い位置まで回動させると、連動体32が支軸3aを介して付勢されることにより図6(a)に示すように遊動して支軸P1により第2係合片22を作動させ、この第2係合片22の斜面22b、22cが第1係合片21の斜面21a、21eを滑り降りつつ前方に移動する。このため、第1係合片21の下面21dから第2係合片22の爪部22aの上端までの上下間隔がパネル側縁部1aの開口18よりも小さくなる。この状態で操作部31を図6(b)に示す前方スライド端までガイド凹所q2に沿って移動させると、パネル側縁部1aから第1、第2係合片21,22が突出する。この位置で操作部31を支軸P2回りに図6(c)に示すように上記とは逆方向に回動操作すると、連動体32に後方への揺動動作が与えられ、これにより第1係合片21は動かずに第2係合片22が動いてその斜面22b、22cが再び第1係合片21の斜面21a、21eを滑り上がる。すなわち、第2係合片22は矢印x1に示すようにパネル本体1側に引き戻されながら、第1係合片21の斜面21a、21eがカム、第2係合片22の斜面22b、22cがフォロアとなって、第2係合片22が引き戻されるにつれて次第に引き戻し方向と直交する矢印x2方向に第1係合片21に対して離反動作を行う。
【0032】
したがって、操作部31を通じ両係合片21,22を突出させて、例えば隣接する間仕切要素である支柱Bの立壁b1に設けた開口b18に挿入し、しかる後、操作部31を前記とは逆方向に回動操作すると、第2係合片22の爪部22aが立面である外壁b1の内面に係合してこれを引き寄せながら第1係合片21から離反する方向に作動して、図6(c)に示す作動位置で両係合片21,22が開口b18の上下縁を被係合部としてこの上縁縁に係合する。連結相手の間仕切要素が同じ間仕切パネルAである場合は、開口18の奥に位置する横枠12の底壁に設けた切欠12b(図2(a)等参照)を上側の被係合部としてその内面に係合片22を係合させる。このようにしているのは、仮に係合片22を縦枠11の側面(隣接する間仕切パネルAに対向する面)に直接係合させると面に垂直な引っ張り力が作用した際に縦枠11の開口の周辺が変形する恐れがあるような場合に、横枠12の底壁に設けた切欠12bに係合させるようにすれば、引っ張り力が面に沿った方向すなわち部材を圧縮する方向に作用することになり、部材の剛性でこれを支持することができるようになるからである。勿論、以上の事情は比較的構造がシンプルで強度を確保し易い支柱Bに対して内部構造上の問題や軽量化の要請等から間仕切パネルAに支柱Bほどの強度が期待できない場合の対応であるから、間仕切パネルAの縦枠11に所定の強度が期待できる場合には支柱Bと同様の係合構造、すなわち開口縁に直接係合させる構造を採用することも可能である。
【0033】
下係合部材4は、図4及び図5に示すように、先端に係合対象を呼び込む斜面を有した下向きの爪部41を備え、中間部42がアングル状に屈曲して、基端に形成した回転部43の被枢着部44がパネル本体1の厚み方向に平行な支軸P3を介して構造体であるパネル本体1に枢着されている。回転部43の下方には操作部材5を収容する空洞44が設けてあり、空洞44の側壁には支軸P3に平行な遊動軸51を挿通する挿通部45が設けてある。
【0034】
操作部材5は、この遊動軸51に取り付けた円柱状のもので、前記空洞44内に位置づけられ、その状態で遊動軸51を、挿通部45を通過させてパネル本体1の立壁に設けたガイド凹所q3に係合させている。このガイド凹所q3は、前方に前傾部q31、後方に後傾部q32を有し、両者間を連絡路q33で接続したもので、遊動軸31を前傾部q31に位置づけた際に下係合部材4がパネル本体1内の没入位置に保持され、後傾部q3に位置づけた際に下係合部材4が爪部41をパネル側縁部1aの外方に進出させて突出位置に保持される。
【0035】
この操作部材5は、少なくともその下半部がパネル本体1の下端に付帯する幅木17と床Fとの隙間C(図4参照)を介してパネル本体1の正面側又は背面側よりアクセス可能な位置に配される。そして、前記隙間Cを指が入る程度の大きさのものにしておき、その下半部を、指を掛けて操作することのできる操作端5aとして利用可能としている。
【0036】
操作部材5は操作端5aの最降下位置若しくはその近傍を思案点Sとし、それを越えて係合部材4の荷重を加味した重心が移動するように設定してあり、係合部材4を突出位置及び没入位置の双方で重力により安定させるようにしている。
【0037】
したがって、操作端5aを操作して係合部材4を突出させ、しかる後、この間仕切パネルAを持ち上げて隣接する他の間仕切パネルAの開口18や支柱B等の開口b18に下係合部材4の下向きの爪部41を進入させ、そこから間仕切パネルAを降下させると、係合部材4が突出位置で上下方向の係合を深めるとともに、これによる反力で支軸51が後傾部q32の上向き面に押し付けられて操作部材4が安定的に固定される。因みに、この実施形態では間仕切パネルAの開口18の位置と支柱B等の開口b18の位置が若干変位しているため、爪部41にこれらに対応する係合部分41a、41bを段階的に設けることで何れにも対応可能としている。
【0038】
以上の係合部材2、4及び操作部材3、5は、開口18とともに図1に示すパネル本体1の他方の側縁部1bにも設けられる。
【0039】
このように構成される間仕切パネルAは、図7(a)に矢印で示すように例えば隣接する間仕切要素である間仕切パネルAに下方の係合部材4を係合させた後、同図(b)に矢印で示すように上方の係合部材2を進退動作を通じて係合させることにより連結を完了することができる。
【0040】
この実施形態では、上係合部材2がそれのみで間仕切パネルAを上下方向に位置決め固定する機能を発揮するため、下係合部材4は積極的に開口18に深く係合する必要はなく、主としてパネル本体1の厚み方向や幅方向に係合する役割を果たせば足りるものとなっている。
【0041】
また、前記開口18は、隣接する間仕切パネルAから突出する係合部材2,4を受け入れる開口18としての役割をも果たす。このために、上係合部材2及び下係合部材4が没入位置に移動することによって生じる空間S2、S4(図2及び図4参照)は、隣接する間仕切パネルAの係合部材2,4が当該開口18に挿入されて係合するに足る動作しろ以上に設定してあり、係合部材2,4を受け入れた際に自身の係合部材2,4を干渉させないようにしている。
【0042】
勿論、上下の係合部材2,4は各々に付帯する操作部材3,5で互いに別個独立に操作可能であることから、叙述のように上下の係合部材2,4を開口18から突出させる態様や上下の係合部材2,4を開口18内に引き込んでその開口18にともに隣接する間仕切パネルAの係合部材2,4を受け入れる態様のほかに、図7(c)に示すように上下何れか一方の係合部材2(4)を開口18から突出させ他方の係合部材4(2)を開口18内に引き込んでその開口18に隣接する間仕切パネルAの係合部材4(2)を受け入れる態様もとり得る。これらの全部又は一部は支柱Bの構造次第では隣接する間仕切要素が当該支柱Bである場合にも妥当し得る。
【0043】
さらに、この間仕切パネルAは、隣接部位における全ての係合部材2,4をパネル本体1内に収容した状態で、隣接する間仕切パネルAや支柱Bとの間、特にパネル側縁部1a周辺に厚み方向の重合箇所が存在しないように構成してあり、この間仕切パネルAの両側に他の間仕切パネルAが隣接し連結された状態であっても、各々の間仕切パネルAとの間の係合を解除して、図7(d)に示すように真ん中の間仕切パネルAのみを厚み方向に移動させて中抜きすることができる。
【0044】
特に、下方の係合部材4の爪部41が下向きであり、間仕切パネルAを落とし込んで下方の係合部材4を係合させた後、上方の係合部材2で引き込みながら上下に位置決めできるため、コーナー連結等における間仕切パネルAの後付け作業を極めて容易に行ない得るものとなっている。
(引き戸を取り付ける態様の説明)
【0045】
以上を踏まえて、以下に、本実施形態に係る引き戸100の取付構造について説明する。先ず、図8に示すように支柱Bと間仕切パネルAとの間に予め開放空間SSを確保し、或いは一部の間仕切パネルAを上述した手順により中抜きすることによって開放空間SSを形成する。そして、その開放空間SSの上方に図9→図10のようにレール取付部材101を、図示例では間仕切パネルAと支柱Bとの間に架け渡して設け、その前後においてこのレール取付部材101にレール102を一体的に設けて、レール取付部材101の下方空間Sxを閉止する位置から隣接する間仕切パネルAへの重合位置までの間で当該引き戸100を移動可能に支持させている。
【0046】
具体的に説明すると、レール取付部材101は、長手寸法を間仕切パネルAの幅寸法に略一致させてなるもので、図11に示すように枠体111の上にチャネル材112を剛接した構成からなり、チャネル材112の一端側に、前記間仕切パネルAの係合部材2を係合させるための図2の開口18、b18と同様の開口118(図9参照)及び切欠12bと同様の切欠112b(同じく図9参照)を設けて被係合部Xとしている。そして、間仕切パネルAに格納されている操作部材3を取り出して操作することにより、係合部材2を被係合部Xに対して図6(a)→(b)→(c)の手順で係合させて、レール取付部材101と間仕切パネルAとの間を連結するようにしている。また、レール取付部材101の他端側には、この間仕切パネルAにおけると同様の係合部材2及び操作部材3が組み込んであり、図9の支柱Bには図6(a)におけると同様の開口b18が被係合部として設けてある。そして、操作部材3をレール取付部材101から取り出して操作することにより、係合部材2を図6の手順により被係合部b18に係合させて、レール取付部材101と支柱Bとの間を連結するようにしている。
【0047】
レール102は、図9及び図11等に示すように、前面に連続開口121を有した部分枠体状のもので、長手寸法が間仕切パネルAやレール取付部材101の幅寸法の略2倍に設定されている。そして、このレール102の片半部における立面122を前記レール取付部材101の前面に止着具たるねじ123により締着し、他半部を間仕切パネルAの上端に沿って当該間仕切パネルAの前面に延出させて、その延出端に固定したブラケット124を間仕切パネルAの側縁部に係合させている。ブラケット124にはそのための係止爪124aが設けられ、間仕切パネルAの側縁部には図示しないスリットが設けられている。このスリットは、棚やパネル等のオプション部材を取り付けるために当初より間仕切パネルAの側縁部に開口しているものである。そして、前記レール102内の上向き面に、断面略円形状をなす軌条125を形成している。
【0048】
一方、引き戸100は、前記レール取付部材101の下方空間Sxを閉止する大きさの戸板100aと、この戸板100aの上端にアングル状のブラケット100bを介して水平軸m回りに取り付けた車輪100cとを具備してなり、この車輪100cを前記レール102の軌条125に転動自在に係合させている。車輪100cの断面は軌条125の断面に対応しており、ブラケット100bの前面には化粧板100dが添設してある。そして、このブラケット100bをストッパーとして機能させるために、レール102側には図12に示すように引き戸100が閉止位置又は開成位置に到来した際にブラケット100bを停止させるストッパー受け100eが設けてある。勿論、このようなストッパー構造は一例に過ぎない。
【0049】
このようにして、引き戸100は車輪100cを介してレール102に転動可能に懸吊支持された図10の状態となる。このから再び引き戸100を取り外して図8の開放空間SSに戻したい場合、あるいはその部位に間仕切パネルAを配置したい場合等には、前述した操作部材3を操作して係合部材2を図6(c)→(b)→(a)のように非係合位置に引き込むことにより、レール取付部材101と間仕切パネルAとの間、或いはレール取付部材101と支柱Bとの間の連結を解除する。これにより、図9の矢印と反対方向に向かってレール取付部材101をレール102や引き戸100ともども支柱Bと間仕切パネルAの間から中抜きすることができる。
【0050】
さらに、この引き戸100の下端をガイドすべく、図13及び図14に示すように、間仕切パネルAの下端部と引き戸100の下端部との間に、当該引き戸100の厚み方向の変位を規制しつつこれを幅方向に沿って誘導するガイド機構103を構成している。
【0051】
このガイド機構103は、引き戸100の下端部に位置する下向きに開口したチャネル材をガイドレール131として利用する一方、間仕切パネルAの下端部を支持するアジャスタ1に基端を係合させて側方にベース部材132を持ち出し、このベース部材132におけるガイドレール131の移動軌跡上に鉛直軸n回りに回転自在にガイドローラ133を配置したものである。そして、このガイドローラ133を引き戸100のガイドレール131に転動可能に係わり合わせて、当該引き戸100の厚み方向の変位を規制しつつ当該引き戸100を幅方向に沿って誘導し得るようにしている。
【0052】
以上は間仕切パネルA、A間に形成される開放空間にレール取付部材101を取り付ける際にも全く同様であり、そのなかでレール取付部材101側から係合部材2を持ち出して間仕切パネルAに係合させる態様も勿論採用することができる。
【0053】
このようにして、本実施形態に係る可動間仕切装置は、間仕切パネルA,A間または間仕切パネルAと支柱Bとの間に形成される開放空間SSの上方にレール取付部材101を、当該間仕切パネルA,A間または間仕切パネルAと支柱Bとの間に架け渡して設け、このレール取付部材101の下方空間Sxを閉止する位置から隣接する間仕切パネルAへの重合位置までの間で引き戸100を案内するレール102を当該レール取付部材101に一体的に設けて、このレール102に引き戸100を移動可能に支持させるようにしたものである。
【0054】
このように構成すると、一対の間仕切パネルA、Aとレール取付部材101とで三方枠と同様の構造体をなし、或いは間仕切パネルA、支柱B及びレール取付部材101で三方枠と同様の構造体をなすことになるので、かかるレール取付部材101にレール102を一体的に設けるだけで、所要の強度を有するレール構造を有効に実現することができる。しかも、このレール102は、引き戸100を隣接する間仕切パネルAへの重合位置まで案内するものであるので、大掛かりな枠を構成してその一部を別途にパネル体で閉止するといった事も不要であり、一層簡素な構造を通じて所期の目的を実現することができる。
【0055】
また、間仕切パネルAの側縁部における上端近傍にレール取付部材101との間を連結する係合部材2を工具不要の操作部材3と関連づけて当該間仕切パネルAから分離し得ないように収容し、操作部材3に加える操作に伴って間仕切パネルAの連結する側の端面のみから係合部材2を突出させ、これを隣接位置にあるレール取付部材101の側縁部に係合させて、かかる係合部材2のみによりレール取付部材101との連結に必要な位置決め固定をなし得るようにしている。
【0056】
このようにすれば、操作部材3が係合部材2とともに間仕切パネルAに付帯して格納され、これを操作すれば係合部材2を突出させてレール取付部材101に係合させることができるので、工具レスで作業が行え、工具やボルト等の部品が離脱して取扱いに不便となることも有効に防止することができる。
【0057】
また、間仕切パネルAに収容する前記係合部材2は、他の間仕切パネルAや支柱Bなどの間仕切要素との間を連結する係合部材としても機能するものであるので、間仕切パネルA,A同士を連結していた部位、あるいは間仕切パネルAと支柱Bとを連結していた部位からその一方の間仕切パネルを抜き取ってレール取付部材101に置換する態様、或いはその逆の態様等を、係合部材2をそのまま用いて簡易に実現することができる。
【0058】
その係合部材2は、隣接する間仕切パネルA,A同士を連結するにあたり、それのみで間仕切パネルA間の上下方向の位置決め固定をなし得るものであるので、レール取付部材101と一箇所のみにて連結を行う場合等にも確実に連結を行うことができ、間仕切パネルAと引き戸100との高さ位置も適切に揃えることができる。
【0059】
一方、レール取付部材101の側縁部内にも、他の間仕切パネルAや支柱Bなどの間仕切要素との間を連結する係合部材2を工具不要の操作部材3と関連づけて収容し、操作部材3に加える操作に伴ってレール取付部材101の連結する側の端面から係合部材2を突出させ、これを隣接する間仕切要素の側縁部に係合させて、かかる係合部材2のみにより間仕切要素との連結に必要な位置決め固定をなし得るようにしている。
【0060】
このため、支柱Bや間仕切パネルAに対してレール取付部材101側から係合部材2及び操作部材3を用いて連結操作を行う場合にも、工具レスで作業が行え、しかもレール取付部材101から分離し得ないように収容した状態とすれば、上記と同様、工具やボルト等の部品が離脱、紛失して取扱いに不便となることも有効に防止することができる。
【0061】
さらに、係合部材2を非係合位置に引き込んだ状態で、間仕切パネルAに対するレール取付部材101の長手方向と直交する方向への相対移動、あるいは支柱Bに対するレール取付部材101の長手方向と直交する方向への相対移動をなし得るようにしているので、特定の間仕切パネルAを取り外してそこに引き戸100を配置する必要が生じた場合に、係合部材2を非係合位置に引き込めば、間仕切パネルを厚み方向に移動させて有効に中抜きすることができ、レール取付部材101に容易に置換することができる。勿論、その逆の場合も同様である。したがって、既設の可動間仕切装置を大幅に解体せずとも引き戸100の取り付けやその後のレイアウト変更に速やかに効率よく対応することが可能となる。
【0062】
また、かかる係合部材2の具体的構成としては、側縁部から突出させた対をなす係合片21,22を係合先の側縁部に設けた開口18等よりなる被係合部Xに挿入し、挿入位置から一方の係合片22を引き戻す動作を与えることにより、両係合片21,22に相離れる方向の相対動作を同時に引き起こし、これにより側縁部同士を引き寄せつつ前記相対方向の位置決め固定をなすようにしている。
【0063】
このため、間仕切パネルAとレール取付部材101の間、レール取付部材101と支柱Bの間、或いは間仕切パネルA,A同士などの部材間を積極的に引き寄せつつそれと直交する方向にも同時に位置決め固定することができ、強固で的確な連結状態を簡易に実現することができる。しかも、係合片21,22は進退動作を主体とするので、レール取付部材101のようにレール方向には動作しろが十分あるものの上下方向の動作しろが限られているものに適用する場合に極めて有用となる。
【0064】
さらにまた、レール取付部材101の長手寸法は開放空間SSに対応するのに対して、レール102は引き戸100の可動範囲に対応して前記レール取付部材101よりも長尺となるが、レール102の一部をレール取付部材101にねじ123を用いて固定する一方、レール102の他の一部を間仕切パネルAの側縁部に形成したスリットにブラケット124を介して掛止させるようにしているので、レール102のうちレール取付部材101に直接固定できずに持ち出された部分を間仕切パネルAに的確に支持させることが可能となる。
【0065】
このように、本実施形態の基本は引き戸100を上縁のみにて移動可能に支持することにあるが、間仕切パネルAの下端部と引き戸100の下端部との間に、当該引き戸100を厚み方向の変位を規制しつつ幅方向に沿って誘導し得るガイド機構103を付加的に構成しているので、引き戸100の厚み方向の振れ等を的確に抑止して円滑な作動を確保することが可能となる。
【0066】
そして、レール取付部材101、レール102及びブラケット124を引き戸取付ユニットとして取り扱うようにすれば、上記の目的を簡易に達成することが可能となる。
【0067】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0068】
例えば、レール取付部材には、係合部材及び操作部材を両端部に不離一体に設けておくことが有効であるが、引き戸の使用頻度を考えると、別体で設けて必要に応じてレール取付部材に組み込むようにしても構わない。また、係合部材や操作部材は上記実施形態のように間仕切パネルや支柱の連結に用いられているものと共通である事が望ましいことは言うまでもないが、可動間仕切装置がさほど大掛かりでない場合や、規格外のものである場合、後付でレール取付部材を取り付ける場合等には、必ずしも共用化を必須とするものではない。係合部材や操作部材の構造も上記に限定されないし、本発明の基本的な作用効果を奏する上では本発明に言う係合部材や操作部材の概念を有しない連結具を用いても構わない。
【0069】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態に係る可動間仕切装置の基本構造を説明するための斜視図。
【図2】間仕切パネルのパネル本体上部を示す図。
【図3】同パネル本体上部に付帯する上係合部材及び操作部材を示す斜視図。
【図4】間仕切パネルのパネル本体下部を示す図。
【図5】同パネル本体下部に付帯する下係合部材及び操作部材を示す斜視図。
【図6】同実施形態の上係合部材の作動説明図。
【図7】同取扱い説明図。
【図8】同実施形態において引き戸の取付先となる開放空間を示す斜視図。
【図9】同開放空間への引き戸の取付手順を示す斜視図。
【図10】図9に対応して取付状態を示す斜視図。
【図11】間仕切パネル上部における引き戸の取付構造を示す断面図。
【図12】同正面図。
【図13】間仕切パネル下部における引き戸の取付構造を示す断面図。
【図14】同部分斜視図。
【符号の説明】
【0071】
2…係合部材
3…操作部材
100…引き戸
101…レール取付部材
102…レール
103…ガイド機構
124…ブラケット
A…間仕切パネル
B…支柱
SS…開放空間
Sx…下方空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス空間等を必要に応じて間仕切る可動間仕切装置に関し、特に出入り口となる部位に引き戸を簡単に取り付け得るようにした可動間仕切装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の可動間仕切装置は、間仕切パネル同士、或いは間仕切パネルと支柱の間を連結することにより適宜の壁面を形成して、居住空間を必要に応じて間仕切るものであり、パーソナルワーク用の執務スペースから共同ワークエリアの形成まで、種々多様に使用されている。
【0003】
このような可動間仕切装置において、壁面の一部に必要に応じて出入口を形成したい場合等には、その部位を開放空間として、その開放空間に枠体を構築して引き戸を配設することが考えられる。
【0004】
特許文献1に例示するものは、可動間仕切ではないが、共有空間の外郭を画定する所定位置から立設したポールと、隣り合うポールの上端を連結した状態で略水平に支持されるフレームとを備え、ポールとフレームで囲まれた面が一方のポール側に開口を残してパネル体により閉塞され、開口をフレームに設けたレールに沿って移動する扉により開閉可能とした共有空間構造体が示されている。
【0005】
これに倣うならば、引き戸の可動範囲を囲むように縦枠と上枠とで少なくとも三方枠を構成し、その三方枠で囲まれた面を一方の縦枠側に開口を残してパネル体により閉塞して、その開口を、上枠に設けたレールに沿って移動する引き戸により開閉可能とすることで出入口を構成する事は可能である。
【特許文献1】特開2005−139802
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、可動間仕切装置の場合は、ポールやフレームのような骨格がなく、縦枠と横枠を用いて三方枠を新たに構築しなければならない。このため、枠構造が大掛かりになり、コストや労力が大幅に増大する上に、少なくとも2枚分の間仕切パネルを取り去った部位に三方枠を構築し、その片半分に別途にパネル体を取り付け、その上で引き戸を配置しなければならない。このため、既設の可動間仕切装置に簡単に適用するわけにはいかず、レイアウト変更に係る自由度も低いものとなる。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、既設の可動間仕切装置にも簡単に適用できて的確に引き戸式の出入口を構成することができ、レイアウト変更にも容易に対応できるようにした新規有用な可動間仕切装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、本発明の可動間仕切装置は、間仕切パネル間または間仕切パネルと支柱との間に形成される開放空間の上方にレール取付部材を、当該間仕切パネル間または間仕切パネルと支柱との間に架け渡して設け、このレール取付部材の下方空間を閉止する位置から隣接する間仕切パネルへの重合位置までの間で引き戸を案内するレールを当該レール取付部材に一体的に設けて、このレールに引き戸を移動可能に支持させてなることを特徴とする。
【0010】
このように構成すると、一対の間仕切パネルとレール取付部材とで三方枠と同様の構造体をなし、或いは間仕切パネル、支柱及びレール取付部材で三方枠と同様の構造体をなすので、かかるレール取付部材にレールを一体的に設ける簡単な構成のみで、所要の強度を有するレール構造を有効に実現することができる。しかも、このレールは、引き戸を隣接する間仕切パネルへの重合位置まで案内するものであるので、大掛かりな枠を構成してその一部を別途にパネル体で閉止するといった事も不要であり、一層簡素な手段として利用に供することができる。
【0011】
施工の便を有効に向上させるためには、間仕切パネルの側縁部における上端近傍にレール取付部材との間を連結する係合部材を工具不要の操作部材と関連づけて当該間仕切パネルから分離し得ないように収容し、操作部材に加える操作に伴って間仕切パネルの連結する側の端面のみから係合部材を突出させ、これを隣接位置にあるレール取付部材の側縁部に係合させて、かかる係合部材のみによりレール取付部材との連結に必要な位置決め固定をなし得るようにしていることが有効である。
【0012】
レイアウトの多様性に適切に対応するためには、間仕切パネルに収容する係合部材が、他の間仕切パネルや支柱などの間仕切要素との間を連結する係合部材としても機能するものであることが望ましい。
【0013】
レール取付部材を1箇所のみにて間仕切パネルに適切に連結するためには、係合部材は、隣接する間仕切パネル同士を連結する場合にも、それのみで間仕切パネル間の上下方向の位置決め固定をなし得るものであることが望ましい。
【0014】
或いは、レール取付部材側から支柱等に対して連結操作を行う場合を考慮して、レール取付部材の側縁部内に他の間仕切パネルや支柱などの間仕切要素との間を連結する係合部材を工具不要の操作部材と関連づけて収容し、操作部材に加える操作に伴ってレール取付部材の連結する側の端面から係合部材を突出させ、これを隣接する間仕切要素の側縁部に係合させて、かかる係合部材のみにより間仕切要素との連結に必要な位置決め固定をなし得るようにしておくことも有効である。
【0015】
既設の可動間仕切装置を大幅に解体せずとも引き戸の取り付けやその後のレイアウト変更に対応可能とするためには、係合部材を非係合位置に引き込んだ状態で、間仕切パネルに対するレール取付部材の長手方向と直交する方向への相対移動、あるいは支柱に対するレール取付部材の長手方向と直交する方向への相対移動をなし得るようにしておくことが効果的である。
【0016】
係合部材の好ましい実施の態様としては、側縁部から突出させた対をなす係合片を係合先の側縁部に設けた被係合部に挿入し、挿入位置から少なくとも一方の係合片を引き戻す動作を与えることにより両係合片に相寄る方向又は相離れる方向の相対動作を同時に引き起こし、これにより側縁部同士を引き寄せつつ前記相対方向の位置決め固定をなすようにしているものが挙げられる。
【0017】
レールをレール取付部材に確実に支持させるためには、レールが、一部をレール取付部材に固定され、他の一部を間仕切パネルの側縁部に形成したスリットにブラケットを介して掛止されることにより取り付けられるようにしておくことが好ましい。
【0018】
以上のように懸吊支持される引き戸の下端側を適切に支持するためには、間仕切パネルの下端部と引き戸の下端部との間に、当該引き戸を厚み方向の変位を規制しつつ幅方向に沿って誘導し得るガイド機構を構成しておくことが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上説明した構成であるから、既設の可動間仕切装置にも簡単に適用できて的確に引き戸式の出入口を構成することができ、レイアウト変更にも容易に対応可能な新規有用な可動間仕切装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
この実施形態の可動間仕切装置は、間仕切パネルや支柱によって組まれた可動間仕切装置に対して、その一部に簡単な引き戸取付ユニットを用いて引き戸を取り付けるようにしたものである。
【0022】
その取付構造には、間仕切パネル間や間仕切パネルと支柱との間を連結する連結具それ自体、或いはそれと同様の構造のものを用いているため、先ず、これらの間仕切パネルや支柱を始めとする可動間仕切装置全般の構造について説明し、しかる後、引き戸を取り付ける際の取付構造に言及する。
(可動間仕切装置の全体説明)
【0023】
図1及び図2は、間仕切パネルAを模式的に示している。このものは、剛性のある縦枠11や横枠12、鋼板13、適宜の補強部材等を組み合わせて構造体であるパネル本体1を構成し、このパネル本体1をアジャスタ14で支持するとともに、パネル本体1の両面に化粧材15を被着し、上端に笠木16を、下端に幅木17をそれぞれ配置したものである。笠木16の一部にはカバー16aが枢着してあり、笠木16をパネル本体1に取り付けた状態のままで、カバー16aを当該笠木16から分離させることなく回動させ得るようにしている。そのカバー16aの位置は、回動することによって間仕切パネルAの上方に収容されている操作部材3(図2等参照)をパネル本体1外の操作可能位置に持ち出し得る位置まで退避可能とされている。勿論、回動以外の動作で退避できるように構成してもよく、操作部材3の上面がカバーを兼ねるように構成することもできる。
【0024】
また、パネル側縁部1aには目地1cが形成され、その目地底には以下に述べる係合部材2,4を出入りさせる開口18をスリット状に設けており、上下の係合部材2,4はその開口18を介して隣接する間仕切要素である間仕切パネルAや支柱Bに対して係合動作を行う。
【0025】
その際の連結動作は、部材間を引き寄せて密着させながら上下方向にも同時に位置決め固定するという挙動に基づいている。
【0026】
図1においてパネル側縁部1aの内側に位置するパネル本体1には、図2及び図4に示すように構造体である当該パネル本体1の剛性を利用して上方及び下方にそれぞれ係合部材2、4が離脱し得ないように付帯され、これらの係合部材2,4を操作部材3,5を介して作動させることによって、パネル側縁部1aに設けた開口18を介して突没させ得るようにしている。
【0027】
上係合部材2は、図2及び図3に示すように、第1係合片21及び第2係合片22からなり、これらの係合片21,22を操作部材3に関連づけて構造体であるパネル本体1に突没可能に付帯させている。そして、操作部材3に加える操作によりこれらの係合片21,22を図6(b)に示すようにパネル側縁部1aから突出させた後、操作部材3を通じ第1係合片21に対して第2係合片22を同図(c)に示すように引き戻す動作を与えることによって、両係合片21,22間を図中x2に示す方向に拡幅させるようにしたものである。
【0028】
図3に詳細に示すように、第1係合片21は先端側に爪部を有しない直線状のもので、先端側の上面に突出方向に向かって前傾する傾斜面21aを成形しており、先端付近の上面21b、基端付近の上面21c及び下面21d全体は突没方向に略平行をなし、中間部の上面が前記傾斜面21aと平行な傾斜面21eをなしている。この第1係合片21は、基端上部を被枢着部21fとされている。
【0029】
第2係合片22は、先端に係合対象を呼び込む斜面を有した上向きの爪部22aを備え、先端側及び基端側の下面に前記傾斜面21a、21eに同時に摺動可能な傾斜面22b、22cを有するとともに、中間部の上面22d及び下面22eは突没方向に略平行をなしている。この第2係合片22は基端上部を被枢着部22fとされている。
【0030】
操作部材3は、下向きチャネル状の操作部31と、この操作部31の先端付近の対向壁31a、31a間に支軸3aを介して基端を枢着された連動体32とからなるもので、この連動体32の先端に支軸P1を介して第2係合片22の被係合部22fを枢着している。操作部31の先端には被枢結部31bが設定され、この被枢結部31bは、支軸P2を介して第1係合片21の被係合部21fに枢結されており、さらにこの支軸P2が構造体であるパネル本体1に設けた突没方向に延びるガイド凹所q2にスライド可能に係合している。前記各支軸P1、P2,3aは互いに平行であって突没方向に対して直交方向すなわちパネル本体1の厚み方向を向いている。操作部3の後端側には弾性係合爪33が設けてあり、上方にはその解除レバー33aが設けてある。
【0031】
操作部31は通常は後方スライド端に設定した図2に示す待機位置にあり、弾性係合爪33を介してパネル本体1の横枠12の開口12aに固定されている。このとき、両係合片21,22は全てパネル側縁部1a内の没入位置にあって、第2係合片22の斜面22b、22cが第1係合片21の斜面21a、21eをほぼ滑り上がった状態にある。この状態から操作部31を支軸P2回りに把持し易い位置まで回動させると、連動体32が支軸3aを介して付勢されることにより図6(a)に示すように遊動して支軸P1により第2係合片22を作動させ、この第2係合片22の斜面22b、22cが第1係合片21の斜面21a、21eを滑り降りつつ前方に移動する。このため、第1係合片21の下面21dから第2係合片22の爪部22aの上端までの上下間隔がパネル側縁部1aの開口18よりも小さくなる。この状態で操作部31を図6(b)に示す前方スライド端までガイド凹所q2に沿って移動させると、パネル側縁部1aから第1、第2係合片21,22が突出する。この位置で操作部31を支軸P2回りに図6(c)に示すように上記とは逆方向に回動操作すると、連動体32に後方への揺動動作が与えられ、これにより第1係合片21は動かずに第2係合片22が動いてその斜面22b、22cが再び第1係合片21の斜面21a、21eを滑り上がる。すなわち、第2係合片22は矢印x1に示すようにパネル本体1側に引き戻されながら、第1係合片21の斜面21a、21eがカム、第2係合片22の斜面22b、22cがフォロアとなって、第2係合片22が引き戻されるにつれて次第に引き戻し方向と直交する矢印x2方向に第1係合片21に対して離反動作を行う。
【0032】
したがって、操作部31を通じ両係合片21,22を突出させて、例えば隣接する間仕切要素である支柱Bの立壁b1に設けた開口b18に挿入し、しかる後、操作部31を前記とは逆方向に回動操作すると、第2係合片22の爪部22aが立面である外壁b1の内面に係合してこれを引き寄せながら第1係合片21から離反する方向に作動して、図6(c)に示す作動位置で両係合片21,22が開口b18の上下縁を被係合部としてこの上縁縁に係合する。連結相手の間仕切要素が同じ間仕切パネルAである場合は、開口18の奥に位置する横枠12の底壁に設けた切欠12b(図2(a)等参照)を上側の被係合部としてその内面に係合片22を係合させる。このようにしているのは、仮に係合片22を縦枠11の側面(隣接する間仕切パネルAに対向する面)に直接係合させると面に垂直な引っ張り力が作用した際に縦枠11の開口の周辺が変形する恐れがあるような場合に、横枠12の底壁に設けた切欠12bに係合させるようにすれば、引っ張り力が面に沿った方向すなわち部材を圧縮する方向に作用することになり、部材の剛性でこれを支持することができるようになるからである。勿論、以上の事情は比較的構造がシンプルで強度を確保し易い支柱Bに対して内部構造上の問題や軽量化の要請等から間仕切パネルAに支柱Bほどの強度が期待できない場合の対応であるから、間仕切パネルAの縦枠11に所定の強度が期待できる場合には支柱Bと同様の係合構造、すなわち開口縁に直接係合させる構造を採用することも可能である。
【0033】
下係合部材4は、図4及び図5に示すように、先端に係合対象を呼び込む斜面を有した下向きの爪部41を備え、中間部42がアングル状に屈曲して、基端に形成した回転部43の被枢着部44がパネル本体1の厚み方向に平行な支軸P3を介して構造体であるパネル本体1に枢着されている。回転部43の下方には操作部材5を収容する空洞44が設けてあり、空洞44の側壁には支軸P3に平行な遊動軸51を挿通する挿通部45が設けてある。
【0034】
操作部材5は、この遊動軸51に取り付けた円柱状のもので、前記空洞44内に位置づけられ、その状態で遊動軸51を、挿通部45を通過させてパネル本体1の立壁に設けたガイド凹所q3に係合させている。このガイド凹所q3は、前方に前傾部q31、後方に後傾部q32を有し、両者間を連絡路q33で接続したもので、遊動軸31を前傾部q31に位置づけた際に下係合部材4がパネル本体1内の没入位置に保持され、後傾部q3に位置づけた際に下係合部材4が爪部41をパネル側縁部1aの外方に進出させて突出位置に保持される。
【0035】
この操作部材5は、少なくともその下半部がパネル本体1の下端に付帯する幅木17と床Fとの隙間C(図4参照)を介してパネル本体1の正面側又は背面側よりアクセス可能な位置に配される。そして、前記隙間Cを指が入る程度の大きさのものにしておき、その下半部を、指を掛けて操作することのできる操作端5aとして利用可能としている。
【0036】
操作部材5は操作端5aの最降下位置若しくはその近傍を思案点Sとし、それを越えて係合部材4の荷重を加味した重心が移動するように設定してあり、係合部材4を突出位置及び没入位置の双方で重力により安定させるようにしている。
【0037】
したがって、操作端5aを操作して係合部材4を突出させ、しかる後、この間仕切パネルAを持ち上げて隣接する他の間仕切パネルAの開口18や支柱B等の開口b18に下係合部材4の下向きの爪部41を進入させ、そこから間仕切パネルAを降下させると、係合部材4が突出位置で上下方向の係合を深めるとともに、これによる反力で支軸51が後傾部q32の上向き面に押し付けられて操作部材4が安定的に固定される。因みに、この実施形態では間仕切パネルAの開口18の位置と支柱B等の開口b18の位置が若干変位しているため、爪部41にこれらに対応する係合部分41a、41bを段階的に設けることで何れにも対応可能としている。
【0038】
以上の係合部材2、4及び操作部材3、5は、開口18とともに図1に示すパネル本体1の他方の側縁部1bにも設けられる。
【0039】
このように構成される間仕切パネルAは、図7(a)に矢印で示すように例えば隣接する間仕切要素である間仕切パネルAに下方の係合部材4を係合させた後、同図(b)に矢印で示すように上方の係合部材2を進退動作を通じて係合させることにより連結を完了することができる。
【0040】
この実施形態では、上係合部材2がそれのみで間仕切パネルAを上下方向に位置決め固定する機能を発揮するため、下係合部材4は積極的に開口18に深く係合する必要はなく、主としてパネル本体1の厚み方向や幅方向に係合する役割を果たせば足りるものとなっている。
【0041】
また、前記開口18は、隣接する間仕切パネルAから突出する係合部材2,4を受け入れる開口18としての役割をも果たす。このために、上係合部材2及び下係合部材4が没入位置に移動することによって生じる空間S2、S4(図2及び図4参照)は、隣接する間仕切パネルAの係合部材2,4が当該開口18に挿入されて係合するに足る動作しろ以上に設定してあり、係合部材2,4を受け入れた際に自身の係合部材2,4を干渉させないようにしている。
【0042】
勿論、上下の係合部材2,4は各々に付帯する操作部材3,5で互いに別個独立に操作可能であることから、叙述のように上下の係合部材2,4を開口18から突出させる態様や上下の係合部材2,4を開口18内に引き込んでその開口18にともに隣接する間仕切パネルAの係合部材2,4を受け入れる態様のほかに、図7(c)に示すように上下何れか一方の係合部材2(4)を開口18から突出させ他方の係合部材4(2)を開口18内に引き込んでその開口18に隣接する間仕切パネルAの係合部材4(2)を受け入れる態様もとり得る。これらの全部又は一部は支柱Bの構造次第では隣接する間仕切要素が当該支柱Bである場合にも妥当し得る。
【0043】
さらに、この間仕切パネルAは、隣接部位における全ての係合部材2,4をパネル本体1内に収容した状態で、隣接する間仕切パネルAや支柱Bとの間、特にパネル側縁部1a周辺に厚み方向の重合箇所が存在しないように構成してあり、この間仕切パネルAの両側に他の間仕切パネルAが隣接し連結された状態であっても、各々の間仕切パネルAとの間の係合を解除して、図7(d)に示すように真ん中の間仕切パネルAのみを厚み方向に移動させて中抜きすることができる。
【0044】
特に、下方の係合部材4の爪部41が下向きであり、間仕切パネルAを落とし込んで下方の係合部材4を係合させた後、上方の係合部材2で引き込みながら上下に位置決めできるため、コーナー連結等における間仕切パネルAの後付け作業を極めて容易に行ない得るものとなっている。
(引き戸を取り付ける態様の説明)
【0045】
以上を踏まえて、以下に、本実施形態に係る引き戸100の取付構造について説明する。先ず、図8に示すように支柱Bと間仕切パネルAとの間に予め開放空間SSを確保し、或いは一部の間仕切パネルAを上述した手順により中抜きすることによって開放空間SSを形成する。そして、その開放空間SSの上方に図9→図10のようにレール取付部材101を、図示例では間仕切パネルAと支柱Bとの間に架け渡して設け、その前後においてこのレール取付部材101にレール102を一体的に設けて、レール取付部材101の下方空間Sxを閉止する位置から隣接する間仕切パネルAへの重合位置までの間で当該引き戸100を移動可能に支持させている。
【0046】
具体的に説明すると、レール取付部材101は、長手寸法を間仕切パネルAの幅寸法に略一致させてなるもので、図11に示すように枠体111の上にチャネル材112を剛接した構成からなり、チャネル材112の一端側に、前記間仕切パネルAの係合部材2を係合させるための図2の開口18、b18と同様の開口118(図9参照)及び切欠12bと同様の切欠112b(同じく図9参照)を設けて被係合部Xとしている。そして、間仕切パネルAに格納されている操作部材3を取り出して操作することにより、係合部材2を被係合部Xに対して図6(a)→(b)→(c)の手順で係合させて、レール取付部材101と間仕切パネルAとの間を連結するようにしている。また、レール取付部材101の他端側には、この間仕切パネルAにおけると同様の係合部材2及び操作部材3が組み込んであり、図9の支柱Bには図6(a)におけると同様の開口b18が被係合部として設けてある。そして、操作部材3をレール取付部材101から取り出して操作することにより、係合部材2を図6の手順により被係合部b18に係合させて、レール取付部材101と支柱Bとの間を連結するようにしている。
【0047】
レール102は、図9及び図11等に示すように、前面に連続開口121を有した部分枠体状のもので、長手寸法が間仕切パネルAやレール取付部材101の幅寸法の略2倍に設定されている。そして、このレール102の片半部における立面122を前記レール取付部材101の前面に止着具たるねじ123により締着し、他半部を間仕切パネルAの上端に沿って当該間仕切パネルAの前面に延出させて、その延出端に固定したブラケット124を間仕切パネルAの側縁部に係合させている。ブラケット124にはそのための係止爪124aが設けられ、間仕切パネルAの側縁部には図示しないスリットが設けられている。このスリットは、棚やパネル等のオプション部材を取り付けるために当初より間仕切パネルAの側縁部に開口しているものである。そして、前記レール102内の上向き面に、断面略円形状をなす軌条125を形成している。
【0048】
一方、引き戸100は、前記レール取付部材101の下方空間Sxを閉止する大きさの戸板100aと、この戸板100aの上端にアングル状のブラケット100bを介して水平軸m回りに取り付けた車輪100cとを具備してなり、この車輪100cを前記レール102の軌条125に転動自在に係合させている。車輪100cの断面は軌条125の断面に対応しており、ブラケット100bの前面には化粧板100dが添設してある。そして、このブラケット100bをストッパーとして機能させるために、レール102側には図12に示すように引き戸100が閉止位置又は開成位置に到来した際にブラケット100bを停止させるストッパー受け100eが設けてある。勿論、このようなストッパー構造は一例に過ぎない。
【0049】
このようにして、引き戸100は車輪100cを介してレール102に転動可能に懸吊支持された図10の状態となる。このから再び引き戸100を取り外して図8の開放空間SSに戻したい場合、あるいはその部位に間仕切パネルAを配置したい場合等には、前述した操作部材3を操作して係合部材2を図6(c)→(b)→(a)のように非係合位置に引き込むことにより、レール取付部材101と間仕切パネルAとの間、或いはレール取付部材101と支柱Bとの間の連結を解除する。これにより、図9の矢印と反対方向に向かってレール取付部材101をレール102や引き戸100ともども支柱Bと間仕切パネルAの間から中抜きすることができる。
【0050】
さらに、この引き戸100の下端をガイドすべく、図13及び図14に示すように、間仕切パネルAの下端部と引き戸100の下端部との間に、当該引き戸100の厚み方向の変位を規制しつつこれを幅方向に沿って誘導するガイド機構103を構成している。
【0051】
このガイド機構103は、引き戸100の下端部に位置する下向きに開口したチャネル材をガイドレール131として利用する一方、間仕切パネルAの下端部を支持するアジャスタ1に基端を係合させて側方にベース部材132を持ち出し、このベース部材132におけるガイドレール131の移動軌跡上に鉛直軸n回りに回転自在にガイドローラ133を配置したものである。そして、このガイドローラ133を引き戸100のガイドレール131に転動可能に係わり合わせて、当該引き戸100の厚み方向の変位を規制しつつ当該引き戸100を幅方向に沿って誘導し得るようにしている。
【0052】
以上は間仕切パネルA、A間に形成される開放空間にレール取付部材101を取り付ける際にも全く同様であり、そのなかでレール取付部材101側から係合部材2を持ち出して間仕切パネルAに係合させる態様も勿論採用することができる。
【0053】
このようにして、本実施形態に係る可動間仕切装置は、間仕切パネルA,A間または間仕切パネルAと支柱Bとの間に形成される開放空間SSの上方にレール取付部材101を、当該間仕切パネルA,A間または間仕切パネルAと支柱Bとの間に架け渡して設け、このレール取付部材101の下方空間Sxを閉止する位置から隣接する間仕切パネルAへの重合位置までの間で引き戸100を案内するレール102を当該レール取付部材101に一体的に設けて、このレール102に引き戸100を移動可能に支持させるようにしたものである。
【0054】
このように構成すると、一対の間仕切パネルA、Aとレール取付部材101とで三方枠と同様の構造体をなし、或いは間仕切パネルA、支柱B及びレール取付部材101で三方枠と同様の構造体をなすことになるので、かかるレール取付部材101にレール102を一体的に設けるだけで、所要の強度を有するレール構造を有効に実現することができる。しかも、このレール102は、引き戸100を隣接する間仕切パネルAへの重合位置まで案内するものであるので、大掛かりな枠を構成してその一部を別途にパネル体で閉止するといった事も不要であり、一層簡素な構造を通じて所期の目的を実現することができる。
【0055】
また、間仕切パネルAの側縁部における上端近傍にレール取付部材101との間を連結する係合部材2を工具不要の操作部材3と関連づけて当該間仕切パネルAから分離し得ないように収容し、操作部材3に加える操作に伴って間仕切パネルAの連結する側の端面のみから係合部材2を突出させ、これを隣接位置にあるレール取付部材101の側縁部に係合させて、かかる係合部材2のみによりレール取付部材101との連結に必要な位置決め固定をなし得るようにしている。
【0056】
このようにすれば、操作部材3が係合部材2とともに間仕切パネルAに付帯して格納され、これを操作すれば係合部材2を突出させてレール取付部材101に係合させることができるので、工具レスで作業が行え、工具やボルト等の部品が離脱して取扱いに不便となることも有効に防止することができる。
【0057】
また、間仕切パネルAに収容する前記係合部材2は、他の間仕切パネルAや支柱Bなどの間仕切要素との間を連結する係合部材としても機能するものであるので、間仕切パネルA,A同士を連結していた部位、あるいは間仕切パネルAと支柱Bとを連結していた部位からその一方の間仕切パネルを抜き取ってレール取付部材101に置換する態様、或いはその逆の態様等を、係合部材2をそのまま用いて簡易に実現することができる。
【0058】
その係合部材2は、隣接する間仕切パネルA,A同士を連結するにあたり、それのみで間仕切パネルA間の上下方向の位置決め固定をなし得るものであるので、レール取付部材101と一箇所のみにて連結を行う場合等にも確実に連結を行うことができ、間仕切パネルAと引き戸100との高さ位置も適切に揃えることができる。
【0059】
一方、レール取付部材101の側縁部内にも、他の間仕切パネルAや支柱Bなどの間仕切要素との間を連結する係合部材2を工具不要の操作部材3と関連づけて収容し、操作部材3に加える操作に伴ってレール取付部材101の連結する側の端面から係合部材2を突出させ、これを隣接する間仕切要素の側縁部に係合させて、かかる係合部材2のみにより間仕切要素との連結に必要な位置決め固定をなし得るようにしている。
【0060】
このため、支柱Bや間仕切パネルAに対してレール取付部材101側から係合部材2及び操作部材3を用いて連結操作を行う場合にも、工具レスで作業が行え、しかもレール取付部材101から分離し得ないように収容した状態とすれば、上記と同様、工具やボルト等の部品が離脱、紛失して取扱いに不便となることも有効に防止することができる。
【0061】
さらに、係合部材2を非係合位置に引き込んだ状態で、間仕切パネルAに対するレール取付部材101の長手方向と直交する方向への相対移動、あるいは支柱Bに対するレール取付部材101の長手方向と直交する方向への相対移動をなし得るようにしているので、特定の間仕切パネルAを取り外してそこに引き戸100を配置する必要が生じた場合に、係合部材2を非係合位置に引き込めば、間仕切パネルを厚み方向に移動させて有効に中抜きすることができ、レール取付部材101に容易に置換することができる。勿論、その逆の場合も同様である。したがって、既設の可動間仕切装置を大幅に解体せずとも引き戸100の取り付けやその後のレイアウト変更に速やかに効率よく対応することが可能となる。
【0062】
また、かかる係合部材2の具体的構成としては、側縁部から突出させた対をなす係合片21,22を係合先の側縁部に設けた開口18等よりなる被係合部Xに挿入し、挿入位置から一方の係合片22を引き戻す動作を与えることにより、両係合片21,22に相離れる方向の相対動作を同時に引き起こし、これにより側縁部同士を引き寄せつつ前記相対方向の位置決め固定をなすようにしている。
【0063】
このため、間仕切パネルAとレール取付部材101の間、レール取付部材101と支柱Bの間、或いは間仕切パネルA,A同士などの部材間を積極的に引き寄せつつそれと直交する方向にも同時に位置決め固定することができ、強固で的確な連結状態を簡易に実現することができる。しかも、係合片21,22は進退動作を主体とするので、レール取付部材101のようにレール方向には動作しろが十分あるものの上下方向の動作しろが限られているものに適用する場合に極めて有用となる。
【0064】
さらにまた、レール取付部材101の長手寸法は開放空間SSに対応するのに対して、レール102は引き戸100の可動範囲に対応して前記レール取付部材101よりも長尺となるが、レール102の一部をレール取付部材101にねじ123を用いて固定する一方、レール102の他の一部を間仕切パネルAの側縁部に形成したスリットにブラケット124を介して掛止させるようにしているので、レール102のうちレール取付部材101に直接固定できずに持ち出された部分を間仕切パネルAに的確に支持させることが可能となる。
【0065】
このように、本実施形態の基本は引き戸100を上縁のみにて移動可能に支持することにあるが、間仕切パネルAの下端部と引き戸100の下端部との間に、当該引き戸100を厚み方向の変位を規制しつつ幅方向に沿って誘導し得るガイド機構103を付加的に構成しているので、引き戸100の厚み方向の振れ等を的確に抑止して円滑な作動を確保することが可能となる。
【0066】
そして、レール取付部材101、レール102及びブラケット124を引き戸取付ユニットとして取り扱うようにすれば、上記の目的を簡易に達成することが可能となる。
【0067】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0068】
例えば、レール取付部材には、係合部材及び操作部材を両端部に不離一体に設けておくことが有効であるが、引き戸の使用頻度を考えると、別体で設けて必要に応じてレール取付部材に組み込むようにしても構わない。また、係合部材や操作部材は上記実施形態のように間仕切パネルや支柱の連結に用いられているものと共通である事が望ましいことは言うまでもないが、可動間仕切装置がさほど大掛かりでない場合や、規格外のものである場合、後付でレール取付部材を取り付ける場合等には、必ずしも共用化を必須とするものではない。係合部材や操作部材の構造も上記に限定されないし、本発明の基本的な作用効果を奏する上では本発明に言う係合部材や操作部材の概念を有しない連結具を用いても構わない。
【0069】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態に係る可動間仕切装置の基本構造を説明するための斜視図。
【図2】間仕切パネルのパネル本体上部を示す図。
【図3】同パネル本体上部に付帯する上係合部材及び操作部材を示す斜視図。
【図4】間仕切パネルのパネル本体下部を示す図。
【図5】同パネル本体下部に付帯する下係合部材及び操作部材を示す斜視図。
【図6】同実施形態の上係合部材の作動説明図。
【図7】同取扱い説明図。
【図8】同実施形態において引き戸の取付先となる開放空間を示す斜視図。
【図9】同開放空間への引き戸の取付手順を示す斜視図。
【図10】図9に対応して取付状態を示す斜視図。
【図11】間仕切パネル上部における引き戸の取付構造を示す断面図。
【図12】同正面図。
【図13】間仕切パネル下部における引き戸の取付構造を示す断面図。
【図14】同部分斜視図。
【符号の説明】
【0071】
2…係合部材
3…操作部材
100…引き戸
101…レール取付部材
102…レール
103…ガイド機構
124…ブラケット
A…間仕切パネル
B…支柱
SS…開放空間
Sx…下方空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間仕切パネル間または間仕切パネルと支柱との間に形成される開放空間の上方にレール取付部材を、当該間仕切パネル間または間仕切パネルと支柱との間に架け渡して設け、このレール取付部材の下方空間を閉止する位置から隣接する間仕切パネルへの重合位置までの間で引き戸を案内するレールを当該レール取付部材に一体的に設けて、このレールに引き戸を移動可能に支持させてなることを特徴とする可動間仕切装置。
【請求項2】
間仕切パネルの側縁部における上端近傍にレール取付部材との間を連結する係合部材を工具不要の操作部材と関連づけて当該間仕切パネルから分離し得ないように収容し、操作部材に加える操作に伴って間仕切パネルの連結する側の端面のみから係合部材を突出させ、これを隣接位置にあるレール取付部材の側縁部に係合させて、かかる係合部材のみによりレール取付部材との連結に必要な位置決め固定をなし得るようにしている請求項1記載の可動間仕切装置。
【請求項3】
間仕切パネルに収容する係合部材は、他の間仕切パネルや支柱などの間仕切要素との間を連結する係合部材としても機能するものである請求項2記載の可動間仕切装置。
【請求項4】
係合部材は、隣接する間仕切パネル同士を連結するにあたり、それのみで間仕切パネル間の上下方向の位置決め固定をなし得るものである請求項2又は3記載の可動間仕切装置。
【請求項5】
レール取付部材の側縁部内に他の間仕切パネルや支柱などの間仕切要素との間を連結する係合部材を工具不要の操作部材と関連づけて収容し、操作部材に加える操作に伴ってレール取付部材の連結する側の端面から係合部材を突出させ、これを隣接する間仕切要素の側縁部に係合させて、かかる係合部材のみにより間仕切要素との連結に必要な位置決め固定をなし得るようにしている請求項2〜4記載の可動間仕切装置。
【請求項6】
係合部材を非係合位置に引き込んだ状態で、間仕切パネルに対するレール取付部材の長手方向と直交する方向への相対移動、あるいは支柱に対するレール取付部材の長手方向と直交する方向への相対移動をなし得るようにしている請求項2〜5記載の可動間仕切装置。
【請求項7】
側縁部から突出させた係合部材たる対をなす係合片を係合先の側縁部に設けた被係合部に挿入し、挿入位置から少なくとも一方の係合片を引き戻す動作を与えることにより両係合片に相寄る方向又は相離れる方向の相対動作を同時に引き起こし、これにより側縁部同士を引き寄せつつ前記相対方向の位置決め固定をなすようにしている請求項2〜6記載の可動間仕切装置。
【請求項8】
レールが、一部をレール取付部材に固定され、他の一部を間仕切パネルの側縁部に形成したスリットにブラケットを介して掛止されることにより取り付けられる請求項1〜7記載の可動間仕切装置。
【請求項9】
間仕切パネルの下端部と引き戸の下端部との間に、当該引き戸を厚み方向の変位を規制しつつ幅方向に沿って誘導し得るガイド機構を構成している請求項1〜8記載の可動間仕切装置。
【請求項10】
請求項8記載の可動間仕切装置を構成するものであって、レール取付部材、レール及びブラケットを具備してなることを特徴とする引き戸取付ユニット。
【請求項1】
間仕切パネル間または間仕切パネルと支柱との間に形成される開放空間の上方にレール取付部材を、当該間仕切パネル間または間仕切パネルと支柱との間に架け渡して設け、このレール取付部材の下方空間を閉止する位置から隣接する間仕切パネルへの重合位置までの間で引き戸を案内するレールを当該レール取付部材に一体的に設けて、このレールに引き戸を移動可能に支持させてなることを特徴とする可動間仕切装置。
【請求項2】
間仕切パネルの側縁部における上端近傍にレール取付部材との間を連結する係合部材を工具不要の操作部材と関連づけて当該間仕切パネルから分離し得ないように収容し、操作部材に加える操作に伴って間仕切パネルの連結する側の端面のみから係合部材を突出させ、これを隣接位置にあるレール取付部材の側縁部に係合させて、かかる係合部材のみによりレール取付部材との連結に必要な位置決め固定をなし得るようにしている請求項1記載の可動間仕切装置。
【請求項3】
間仕切パネルに収容する係合部材は、他の間仕切パネルや支柱などの間仕切要素との間を連結する係合部材としても機能するものである請求項2記載の可動間仕切装置。
【請求項4】
係合部材は、隣接する間仕切パネル同士を連結するにあたり、それのみで間仕切パネル間の上下方向の位置決め固定をなし得るものである請求項2又は3記載の可動間仕切装置。
【請求項5】
レール取付部材の側縁部内に他の間仕切パネルや支柱などの間仕切要素との間を連結する係合部材を工具不要の操作部材と関連づけて収容し、操作部材に加える操作に伴ってレール取付部材の連結する側の端面から係合部材を突出させ、これを隣接する間仕切要素の側縁部に係合させて、かかる係合部材のみにより間仕切要素との連結に必要な位置決め固定をなし得るようにしている請求項2〜4記載の可動間仕切装置。
【請求項6】
係合部材を非係合位置に引き込んだ状態で、間仕切パネルに対するレール取付部材の長手方向と直交する方向への相対移動、あるいは支柱に対するレール取付部材の長手方向と直交する方向への相対移動をなし得るようにしている請求項2〜5記載の可動間仕切装置。
【請求項7】
側縁部から突出させた係合部材たる対をなす係合片を係合先の側縁部に設けた被係合部に挿入し、挿入位置から少なくとも一方の係合片を引き戻す動作を与えることにより両係合片に相寄る方向又は相離れる方向の相対動作を同時に引き起こし、これにより側縁部同士を引き寄せつつ前記相対方向の位置決め固定をなすようにしている請求項2〜6記載の可動間仕切装置。
【請求項8】
レールが、一部をレール取付部材に固定され、他の一部を間仕切パネルの側縁部に形成したスリットにブラケットを介して掛止されることにより取り付けられる請求項1〜7記載の可動間仕切装置。
【請求項9】
間仕切パネルの下端部と引き戸の下端部との間に、当該引き戸を厚み方向の変位を規制しつつ幅方向に沿って誘導し得るガイド機構を構成している請求項1〜8記載の可動間仕切装置。
【請求項10】
請求項8記載の可動間仕切装置を構成するものであって、レール取付部材、レール及びブラケットを具備してなることを特徴とする引き戸取付ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−25282(P2008−25282A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201305(P2006−201305)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(304046982)コクヨファニチャー株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(304046982)コクヨファニチャー株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
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