説明

可塑剤としてのヘキサヒドロフタルイミド化合物の使用

Rがアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルを表し、後者の2つの基は非置換であるか又はアルキルにより置換されていてもよく、かつ前記基Rは少なくとも6個の炭素原子を有する、式(I)のヘキサヒドロフタルイミド化合物の、成形材料用、特にポリ塩化ビニル用の可塑剤としての使用を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマー用の、特にポリ塩化ビニル用の可塑剤としての所定のヘキサヒドロフタルイミド化合物の使用、及び少なくとも1種の所定のヘキサヒドロフタルイミド化合物を含有する成形材料に関する。
【0002】
ポリ塩化ビニル(PVC)は、最も使用される熱可塑性ポリマーに属する。このポリマーは難燃性で、薬品に対して耐性でありかつ耐腐食性である。PVCのこれらの特性は、可塑剤によって広範囲に変化させることができる。可塑剤の割合に応じて、硬質PVC(3%よりわずかな可塑剤)及び軟質PVC(3%より多い可塑剤)とに区別される。可塑剤として、特に、フタル酸エステル、特にジ−n−ブチルフタラート(DBP)、ジイソブチルフタラート(DIBP)、D−2−エチルヘキシルフタラート(DEHP)、ジイソノニルフタラート(DINP)、ジイソデシルフタラート(DIDP)及びベンジルブチルフタラート(BBP)が用いられる。アジピン酸のエステル及び他の有機酸並びにリン酸のエステルはあまり重要ではない。
【0003】
確かに、フタラートは弱い急性の毒性を有している。慢性の供給の場合に、DEHPは少量でも既に睾丸、腎臓及び肝臓に関して有害な作用を及ぼすことができる。動物試験においてDEHPは生殖能力を損ない、オスの子孫の生殖器に障害を引き起こす。欧州薬品廃棄物プログラムの範囲内で、現在では新たなリスク評価が行われている。1999年以来、所定のフタラートは玩具中にもはや含まれてはならない。これには、DEHPの他に、フタラートのDINP、DBP、DIDP及びBBPが属する。
【0004】
可塑剤の使用のために、特にPVCに対するそのゲル化挙動が重要である。ゲル化挙動とは、PVCのポリマー構造内へ侵入しかつポリマー鎖の間の相互作用を低下させることにより可塑化作用を引き起こす可塑剤の能力であると解釈される。この可塑剤のゲル化挙動の尺度は、PVCについての溶解温度であり、これはDIN53408により決定される。溶解温度が低くなれば、それだけゲル化挙動は改善される。ゲル化挙動がよくなるか又は可塑剤の溶解温度が低くなればそれだけ、この加工温度は軟質PVCの製造の場合によりいっそう低く選択することができる。低い温度によってエネルギー及び時間の節約になる。
【0005】
JP 63 301864, US-A 3652312, US-A 3615793, US-A 3579363, US-A 2547542, US-A 2684917, DE 860864, US-A 3579364, US-A 3957862, US-A 2547495は、多様なプラスチック用の可塑剤としてのN−置換フタルイミドの使用を開示している。
【0006】
US-A 3210313は、PVC用の可塑剤として、ε−ジカルボキシミド−カプロン酸エステル、例えばε−フタルイミド−カプロン酸エステル、ε−テトラヒドロフタルイミド−カプロン酸エステル及びε−ヘキサヒドロフタルイミド−カプロン酸エステルを記載している。
【0007】
フタルイミドはPVCに対して高い溶解温度を有する。テトラヒドロフタルイミドはオレフィン性二重結合を有し、従って酸化に敏感でありかつ黄変する傾向がある。
【0008】
本発明の根底をなす課題は、代替の可塑剤及び可塑化された成形材料を提供することである。特に、本発明は、PVCに対して良好なゲル化挙動及びより低い溶解温度を有する、簡単に製造可能な可塑剤に関する。
【0009】
本発明の場合に、前記課題は、熱可塑性ポリマー及び式(I)
【化1】

[式中、
Rは、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルを表し、その際、後者の2つの基は非置換であるか又はアルキル基により置換されていてもよく、かつ基Rは少なくとも6個の炭素原子を有する]の少なくとも1種のヘキサヒドロフタルイミド化合物を含有する成形材料により解決される。
【0010】
本発明は、さらに式(I)のヘキサヒドロフタルイミド化合物のポリ塩化ビニル用の可塑剤としての使用に関する。
【0011】
本願発明の目的のために、「アルキル」の表現は、飽和、線状又は分枝状の炭化水素基を有する。これは、一般に1〜40個の炭素原子を有する(C1〜C40−アルキル)。有利に、これは直鎖又は分枝鎖のアルキル基である。例えば、C1〜C6−アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル等を有する。C1〜C40−アルキルの例は、前記したようなC1〜C6−アルキル並びにヘプチル、1−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、1−エチルフェニル、2−エチルフェニル、3−エチルフェニル、1−プロピルブチル、1,1−ジメチルペンチル、1,2−ジメチルペンチル、1,3−ジメチルペンチル、1,4−ジメチルペンチル、1−メチル−2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルブチル、1−エチル−1−メチルブチル、オクチル、1−メチルヘプチル、2−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、4−メチルヘプチル、5−メチルヘプチル、6−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、4−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、2−プロピルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1,2−ジメチルヘキシル、1,3−ジメチルヘキシル、1,4−ジメチルヘキシル、1,5−ジメチルヘキシル、2,3−ジメチルヘキシル、2,4−ジメチルヘキシル、2,5−ジメチルヘキシル、1−メチル−2−エチルフェニル、1−メチル−3−エチルフェニル、1−エチル−1−メチルペンチル、1−エチル−2−メチルペンチル、1−エチル−3−メチルペンチル、1−エチル−4−メチルペンチル、1−エチル−2−メチルペンチル、1−エチル−2,3−ジメチルブチル、ノニル、1−メチルオクチル、2−メチルオクチル、3−メチルオクチル、4−メチルオクチル、5−メチルオクチル、6−メチルオクチル、7−メチルオクチル、1−エチルヘプチル、2−エチルヘプチル、3−エチルヘプチル、4−エチルヘプチル、5−エチルヘプチル、1,1−ジメチルヘプチル、1,2−ジメチルヘプチル、1,3−ジメチルヘプチル、1,4−ジメチルヘプチル、1,5−ジメチルヘプチル、1,6−ジメチルヘプチル、2,3−ジメチルヘプチル、2,4−ジメチルヘプチル、2,5−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチルヘプチル、1−プロピルヘキシル、2−プロピルヘキシル、3−プロピルヘキシル、1−メチル−2−エチルヘキシル、1−メチル−3−エチルヘキシル、1−メチル−4−エチルヘキシル、1−エチル−1−メチルヘキシル、1−エチル−2−メチルヘキシル、1−エチル−3−メチルヘキシル、1−エチル−4−メチルヘキシル、1−エチル−5−メチルヘキシル、2−エチル−2−メチルヘキシル、2−エチル−3−メチルヘキシル、2−エチル−4−メチルヘキシル、2−エチル−5−メチルヘキシル、デシル、1−メチルノニル、2−メチルノニル、3−メチルノニル、4−メチルノニル、5−メチルノニル、6−メチルノニル、7−メチルノニル、8−メチルノニル、1−エチルオクチル、2−エチルオクチル、3−エチルオクチル、4−エチルオクチル、5−エチルオクチル、6−エチルオクチル、1,1−ジメチルオクチル、1,2−ジメチルオクチル、1,3−ジメチルオクチル、1,4−ジメチルオクチル、1,5−ジメチルオクチル、1,6−ジメチルオクチル、1,7−ジメチルオクチル、2,3−ジメチルオクチル、2,4−ジメチルオクチル、2,5−ジメチルオクチル、2,6−ジメチルオクチル、2,7−ジメチルオクチル、1−プロピルヘプチル、2−プロピルヘプチル、3−プロピルヘプチル、4−プロピルヘプチル、1−メチル−2−エチルヘプチル、1−メチル−3−エチルヘプチル、1−メチル−4−エチルヘプチル、1−メチル−5−エチルヘプチル、1−エチル−1−メチルヘプチル、1−エチル−2−メチルヘプチル、1−エチル−3−メチルヘプチル、1−エチル−4−メチルヘプチル、1−エチル−5−メチルヘプチル、1−エチル−6−メチルヘプチル、2−エチル−2−メチルヘプチル、2−エチル−3−メチルヘプチル、2−エチル−4−メチルヘプチル、2−エチル−5−メチルヘプチル、2−エチル−6−メチルヘプチル、ウンデシル、1−メチルデシル、2−メチルデシル、9−メチルデシル、1−エチルノニル、2−エチルノニル、1,1−ジメチルノニル、1,2−ジメチルノニル、1,3−ジメチルノニル、1,4−ジメチルノニル、1,5−ジメチルノニル、1,6−ジメチルノニル、1,7−ジメチルノニル、1,8−ジメチルノニル、2,3−ジメチルノニル、2,4−ジメチルノニル、2,5−ジメチルノニル、2,6−ジメチルノニル、2,7−ジメチルノニル、2,8−ジメチルノニル、1−プロピルオクチル、2−プロピルオクチル、1−メチル−2−エチルオクチル、1−メチル−3−エチルオクチル、1−メチル−4−エチルオクチル、1−メチル−5−エチルオクチル、1−メチル−6−エチルオクチル、1−エチル−1−メチルオクチル、1−エチル−2−メチルオクチル、1−エチル−3−メチルオクチル、1−エチル−4−メチルオクチル、1−エチル−5−メチルオクチル、1−エチル−6−メチルオクチル、2−エチル−2−メチルオクチル、2−エチル−3−メチルオクチル、2−エチル−4−メチルオクチル、2−エチル−5−メチルオクチル、2−エチル−6−メチルオクチル、ドデシル、1−メチルウンデシル、2−メチルウンデシル、10−メチルウンデシル、1−エチルデシル、2−エチルデシル、1−プロピルノニル、2−プロピルノニル、トリデシル、1−メチルドデシル、2−メチルドデシル、11−メチルドデシル、1−エチルウンデシル、2−エチルウンデシル、1−プロピルデシル、2−プロピルデシル、1,2,6−トリメチルデシル、1,2,7−トリメチルデシル、1,2,8−トリメチルデシル、1,5,9−トリメチルデシル、2,4,6−トリメチルデシル、2,7,8−トリメチルデシル、テトラデシル、1−メチルトリデシル、2−メチルトリデシル、12−メチルトリデシル、1−エチルドデシル、2−エチルドデシル、1−プロピルウンデシル、2−プロピルウンデシル、ペンタデシル、1−メチルテトラデシル、2−メチルテトラデシル、13−メチルテトラデシル、1−エチルトリデシル、2−エチルトリデシル、1−プロピルドデシル、2−プロピルドデシル、ヘキサデシル、1−メチルペンタデシル、2−メチルペンタデシル、14−メチルペンタデシル、1−エチルテトラデシル、2−エチルテトラデシル、1−プロピルトリデシル、2−プロピルトリデシル、ヘプタデシル、1−メチルヘキサデシル、2−メチルヘキサデシル、15−メチルヘキサデシル、1−エチルペンタデシル、2−エチルペンタデシル、1−プロピルテトラデシル、2−プロピルテトラデシル、オクタデシル、1−メチルヘプタデシル、2−メチルヘプタデシル、16−メチルヘプタデシル、1−エチルヘキサデシル、2−エチルヘキサデシル、1−プロピルペンタデシル、2−プロピルペンタデシル、ノナデシルデシル、1−メチルオクタデシル、2−メチルオクタデシル、17−メチルオクタデシル、1−エチルヘプタデシル、2−エチルヘプタデシル、1−プロピルヘキサデシル、2−プロピルヘキサデシル、イコサニル、1−メチルノナデシル、2−メチルノナデシル、18−メチルノナデシル、1−エチルオクタデシル、2−エチルオクタデシル、1−プロピルヘプタデシル、2−プロピルヘプタデシル、ヘンイコサニル、1−メチルイコサニル、2−メチルイコサニル、19−メチルイコサニル、1−エチルノナデシル、2−エチルノナデシル、1−プロピルオクタデシル、2−プロピルオクタデシル、ドコサニル、トリアコンタニル、テトラコンタニル等である。
【0012】
「シクロアルキル」の表現は、単環式の飽和炭化水素基を有し、前記基は一般に環原子として3〜14個の炭素原子を含有し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル、シクロトリデシル及びシクロテトラデシルである。基本的に、シクロアルキルは、1箇所又は数箇所、例えば1箇所、2箇所、3箇所、4箇所、5箇所又は6箇所、アルキル、例えばC1〜C6−アルキルにより置換されていてもよい。例えば、2−、3−メチルシクロペンチル、2,2−ジメチルシクロペンチル、2,5−ジメチルシクロペンチル、4−メチルシクロヘキシル、4,4−ジメチルシクロヘキシル、2−、3−、4−メチルヘプチル、2−、3−,4−メチルオクチル等を有する。
【0013】
「シクロアルキルアルキル」の表現は、原則として環原子として3〜14個の炭素原子を含有する1つ又は複数の単環式の飽和炭化水素基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル、シクロトリデシル及びシクロテトラデシルにより置換されている上記に定義されたアルキル基を表す。基本的に、前記シクロアルキル部分は、1箇所又は数箇所、例えば1箇所、2箇所、3箇所、4箇所、5箇所又は6箇所、アルキル、例えばC1〜C6−アルキルにより置換されていてもよい。シクロアルキルアルキルの例は、シクロヘキシルメチル、2−(シクロヘキシル)エチル等である。
【0014】
有利な実施態様の場合に、Rは、6〜28個の炭素原子を有する分枝状のアルキル、特に分枝状のC7〜C15−アルキルを表す。このアルキル基は、1又は複数の分枝鎖、特に1又は2つの分枝鎖、特に有利に1つの分枝鎖を有していることができる。この分枝は、有利にメチル分枝鎖、エチル分枝鎖又はn−プロピル分枝鎖である。特に有利なのは、Rが、β−炭素原子に分枝鎖を有するC7〜C15−アルキル、例えば2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、2−エチルヘプチル、2−プロピルヘキシル、2−エチルオクチル、2−プロピルヘプチル、2−エチルノニル又は2−プロピルオクチルを表す化合物である。
【0015】
さらに有利な実施態様の場合には、Rは、8〜28個の炭素原子、特に9〜20個又は10から18個の炭素原子を有する、例えば8、9、10又は13個の炭素原子を有し、かつ1,1〜3.0、特に1.5〜2.5の分枝度を有するイソ−アルキルを表す。これには、イソオクチル、イソノニル、イソデシル、イソウンデシル、イソドデシル及びイソトリデシルが挙げられる。これは一般に同じ又は異なる炭素数を有する分枝したアルキル基の混合物である。前記イソアルキル基は、たいていは第1級アルコールから誘導され、前記アルコールはC2〜C6−オレフィンのオリゴマー化及び引き続くヒドロホルミル化及び水素化により得られる。
【0016】
有利に使用されたヘキサヒドロフタルイミド化合物は、200℃での30hPaより低い、特に25hPaより低い蒸気圧を有する。
【0017】
一般式Iの化合物は、多様な文献に記載の方法で製造することができる、これについてはBeilstein著, Springer Verlag 1989, 5th. Suppl. Series EV 21/10 p. 78ffを参照。
【0018】
一般式Iの化合物は、例えばシクロヘキサンジカルボン酸又はシクロヘキサンジカルボン酸無水物と第1級アミンR−NH2との反応により製造することができる。この反応のための溶剤として、温度範囲に応じて、脂肪族、環式脂肪族又は芳香族炭化水素、例えばヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、メシチレン又はこれらの溶剤の混合物が使用される。有利に、例えば分離器により反応水は除去される。
【0019】
シクロヘキサンジカルボン酸(無水物)は、WO 02/066412に記載された方法により得ることができる。
【0020】
本発明により使用される可塑剤を添加することができる熱可塑性ポリマーは、PVCの他に、ポリ酢酸ビニル、例えばポリビニルブチラール、ポリアクリラート、セルロースエステル、特にニトロセルロース及び酢酸セルロース、及びポリスルフィドである。
【0021】
本発明による成形材料の式(I)の化合物の含有量(phrで表す)は、一般に5〜100phr、有利に10〜60phr、特に有利に20〜50phrであることができる。ポリマー組成物のための通常の配合表示の「phr」は、「parts per hundred resin」の省略形であり、添加物は全体の質量中のそのパーセント質量によるのではなく、ポリマー100質量部に対する質量割合として秤量、測定及び表示されることを意味する。例えば式(I)の化合物がPVC/可塑剤混合物中で80:20のPVC:可塑剤の重量比で存在する場合に、エステル混合物の含有量は25phrである、それというのも80部の25%は20部であるためである。
【0022】
ポリ塩化ビニルは塩化ビニルの単独重合により得られる。本発明により使用されるポリ塩化ビニル(PVC)は、例えば懸濁重合、マイクロ懸濁重合、乳化重合又は塊状重合委より製造することができる。塩化ビニルの重合によるPVCの製造並びに可塑化されたPVCの製造及び組成は、例えば"Becker/Braun, Kunststoff-Handbuch, Band 2/1 : Polyvinylchlorid", 第2版, Carl Hanser Verlag, Muenchenに記載されている。
【0023】
PVCの分子量を特性決定しかつDIN53726により決定されるK値は、本発明による可塑化されたPVCについて、たいていは57〜90、有利に61〜85、特に64〜75である。
【0024】
本発明による成形材料は、イミダゾール化合物の他に他の適当な添加剤を含有することができる。
【0025】
例えば、安定剤、離型剤、充填剤、顔料、難燃剤、光安定剤、発泡剤、ポリマーの加工助剤、耐衝撃性改善剤、蛍光増白剤、耐電防止剤又はバイオスタビライザーを含有することができる。
【0026】
単に説明の目的で、次にいくつかのこのような添加剤及びその機能を例示的に記載するが、この記載は本発明による成形材料に関して制限する効果を有していない。
【0027】
安定剤は、例えば加工の間及び/又は加工の後にPVCから分解される塩酸を中和するか、又はラジカルスカベンジャーとしてPVC分解に対抗する作用を示す。
【0028】
安定剤としては、固体及び液体の形の全ての通常の安定剤、例えばCa/Zn−、Ba/Zn−、Pb−又はSn安定剤並びに酸結合性層状ケイ酸、ハイドロタルサイトが挙げられる。有利に、Ba/Zn−安定剤、三塩基性硫酸鉛(3PbO・PbSO4・H2O)及び亜リン酸鉛、特に有利に三塩基性硫酸及び亜リン酸鉛である。ラジカルスカベンジャーとして、有利にジブチルスズマレイン酸塩が挙げられる。
【0029】
本発明による成形材料は、0.05〜7phr、有利に0.1〜5phr及び特に有利に0.2〜4phrの安定剤の含有量を有することができる。
【0030】
離型剤は、加工の際にPVC粒子と熱い機械部材との間に作用し、混合、可塑化及び変形の際の摩擦力に対抗する作用を示す。
【0031】
潤滑剤として、本発明の成形材料は、熱可塑性ポリマー、特にPVCの加工のために常用の全ての潤滑剤を含有することができる。例えば、炭化水素、例えば油、パラフィン及びポリエチレン−ワックス、脂肪酸、10〜20個のC原子を有する脂肪アルコール、ケトン、カルボン酸、例えば脂肪酸及びモンタン酸、酸化されたポリエチレン−ワックス、カルボン酸の金属塩、カルボン酸アミド並びにカルボン酸エステル、例えばアルコールのエタノール、脂肪アルコール、グリセリン、エタンジオール、ペンタエリトリットと、酸成分として長鎖カルボン酸とからなるカルボン酸エステルが挙げられる。
【0032】
本発明による成形材料は、0.01〜10phr、有利に0.05〜5phr、特に有利に0.1〜3phrの離型剤の含有量を有することができる。
【0033】
充填剤は、特に可塑化されたポリ塩化ビニルの圧縮強さ、引張強さ及び曲げ強さ並びに硬度及び熱変形安定性に有利な影響を及ぼす。
【0034】
本発明による成形材料には、充填剤、例えば無機充填剤、例えば天然の炭酸カルシウム、例えばチョーク、石灰石及び大理石、合成の炭酸カルシウム、ドロマイト、シリケート、シリカ、砂、ケイソウ土、ケイ酸アルミニウム、例えばカオリン、雲母及び長石を混合することができる。有利に、充填剤として、炭酸カルシウム、チョーク、ドロマイト、カオリン、シリケート又はタルク、特に有利にチョーク又はカルサイトが使用される。
【0035】
本発明による材料は、0.01〜100phr、有利に1〜80phrの充填剤の含有量を有することができる。
【0036】
本発明による成形材料は、得られた製品を多様な使用可能性に適合させるために、顔料を含有することができる。
【0037】
このために、無機顔料も有機顔料も使用することができる。無機顔料として、例えばチタン顔料、例えばTiO2、コバルト顔料、例えばCoO/Al23、及びクロム(III)顔料、例えばCr23を使用することができる。有機顔料として、例えば縮合されたアゾ顔料、アゾメチン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン、フタロシアニン顔料、ジオキサアゼピン顔料、例えばC.I.顔料バイオレット23及びアニリンブラック(C.I.顔料ブラック1)が挙げられる。
【0038】
本発明による成形材料は、0.01〜10phr、有利に0.05〜5phr、特に有利に0.1〜3phr、殊に0.5〜2phrの顔料の含有量を有することができる。
【0039】
引火性を抑制しかつ燃焼時の発煙を低減するために、本発明による成形材料は難燃剤を添加することができる。
【0040】
難燃剤として、例えば三酸化アンチモン、リン酸エステル、クロロパラフィン、水酸化アルミニウム、ホウ素化合物、三酸化モリブデン又はフェロセンを使用することができる。有利に、三酸化アンチモン又はリン酸エステル、特に有利にリン酸エステル、殊にビスフェニルクレシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート又はトリクレシルホスフェートが使用される。
【0041】
本発明による成形材料は、0.01〜100phr、有利に0.1〜20phrの難燃剤の含有量を有することができる。
【0042】
本発明による成形材料から製造された物品を、光の影響による表面領域での損傷から保護するために、このPVC乾燥混合物は光安定剤を添加されていてもよい。
【0043】
このため、例えばヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール又はシアンフェニルアクリラートを使用することができる。シアンフェニルアクリラートが有利であり、特に2−エチルヘキシル−2−シアン−3,3−ジフェニルアクリラートが有利である。
【0044】
本発明による成形材料は、0.01〜7phr、有利に0.1〜5phr及び特に有利に0.2〜1phrの量の光安定剤を有することができる。
【0045】
本発明による可塑剤を使用して可塑化されたPVCの製造は、通常では個々の成分を高めた温度で撹拌しながら混合することにより行われる。ポリ塩化ビニル、可塑剤及び他の添加剤からなる混合物の製造は、例えば"Becker/Braun, Kunststoff-Handbuch, Band 2/1 : Polyvinylchlorid", 第2版, Carl Hanser Verlag, Muenchenに記載されている。
【0046】
有利な製造の場合に、まずポリ塩化ビニル及び全ての他の固体成分を500〜5000rpm(1分当たりの回転数)、有利に1000〜3000rpm、特に有利に2000〜2500rpmの撹拌速度で、30〜150℃、有利に40〜100℃、特に有利に50〜70℃の温度で撹拌することにより混合する。引き続き、本発明による可塑剤及び全ての他の液体成分を添加し、500〜5000rpm(1分当たりの回転数)、有利に1000〜3000rpm、特に有利に2000〜2500rpmの回転数で撹拌することにより混合し、その際、前記温度を70〜190℃、有利に80〜160℃、特に有利に90〜130℃の最終値に高める。引き続き、この混合物を室温に冷却し、最終製品に加工することができる。
【0047】
本発明による可塑剤は、例えばPVCシートの製造のために適している。本発明による可塑剤は、特に自己接着シート、FKZ−シート、家具シート及び事務用品シート、農業用シート、食品シート(cling film)、屋根用シート、オイルタンク内部シート、貯水シート、プール用シート、建築保護シート、レインコート、スウィングドア、シャワー用カーテン、ゴムボート、潜水用フィンの製造ために適している。
【0048】
本発明による可塑剤は、さらにPVCケーブルの製造のために適している。本発明による可塑剤は、特に配線ケーブル、高圧電線ケーブル、通信ケーブル、螺旋コード、コンピュータケーブル、自動車ケーブルの製造のために適している。
【0049】
本発明による可塑剤は、さらにPVC被覆の製造のために適している。本発明による可塑剤は、特に人工皮革(自動車製造又は革製品における使用)、LKW幌及び防水布、デスクカバー、保護服、ビニル壁紙、コンベヤベルトの製造のために適している。
【0050】
本発明による可塑剤は、さらにPVC床用被覆の製造のために適している。本発明による可塑剤は、発泡した床用被覆(Cudhion vinyl)、異種のコンパクトな被覆、同種のコンパクトな被覆、カーペット床被覆の製造ために特に適している。
【0051】
本発明による可塑剤は、同様にPVC異形材の製造のためにも適している。本発明による可塑剤は、工業用ホース及び庭用ホース、シーラント(例えば冷蔵庫における使用のため)、医学的ホース、階段用手すりの製造のために特に適している。
【0052】
本発明による可塑剤は、ブーツ及びサンダルを含めた靴、人形及びサッカーボールを含めた玩具、工業用及び医学用の手袋を含めた手袋、地盤保護、密閉キャップ、ベローズ、消しゴムの製造のためにも特に適している。
【0053】
これらの製品の製造は、カレンダー、押出、被覆、流し込み、浸漬、回転成形又は射出成形によって行うことができる。この加工法のための詳細な記載は例えば"Becker/Braun, Kunststoff-Handbuch, Band 2/1 : Polyvinylchlorid", 第2版, Carl Hanser Verlag, Muenchenに見られる。
【0054】
本発明を以下の実施例につき具体的に詳説する。
【0055】
例1:N−2−エチルヘキシル−ヘキサヒドロフタルイミドの合成
内部温度計及び水循環路を備えた1リットル撹拌フラスコ中に、メシチレン500ml中のシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物154.0g(1.0mol)を装入した。この混合物を還流下で沸騰に加熱し、90分内で2−エチルヘキシルアミン130.0g(1.0mol)を滴加した。8時間後に水分離器に水15mlが分離された。
【0056】
前記溶液を室温に冷却後に、2%の苛性ソーダ液200mlで5回振出し、次いで水200mlで2回洗浄し、炭酸カリウムで乾燥した。前記溶剤を回転蒸発器で60℃の浴温度で油ポンプ真空中で留去した。
【0057】
黄色がかった液体257.7gが得られた;含有量(GC):97%;酸価1.9mg KOH/g。収率:理論値の94%。
【0058】
粗製生成物398.16(2つのバッチから)を真空中で蒸留した。次のフラクションが得られた:
【表1】

【0059】
フラクション3、4及び5を合わせ、次の試験のために使用した。
【0060】
実施例2:溶解温度
DIN 53408により、N−2−エチルヘキシル−ヘキサヒドロフタルイミドのPVC用の溶解温度を測定した。比較のために、公知の可塑剤のジ(2−エチルヘキシル)−フタラート及びジイソブチルフタラートの溶解温度を測定した。蒸気圧測定を、欧州委員会92/69/ECCの規定の付録A4、OECD試験規定104又はEPA試験規定OPPTS830.7950により行った。この結果は以下の表中で対比されている。
【0061】
【表2】

【0062】
この結果は、実施例1からの本願発明による可塑剤が、典型的に急速にゲル化する可塑剤のジイソブチルフタラートと同じようなPVCに対して比較的低い溶解温度を示し、これは標準可塑剤のジ(2−エチルヘキシル)−フタラートの溶解温度を明らかに下回る。本発明による可塑剤の蒸気圧は、140〜200℃の全体の関連する温度範囲にわたり、ジイソブチルフタラートの蒸気圧よりも明らかに低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー及び式(I)
【化1】

[式中、
Rは、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルを表し、その際、後者の2つの基は非置換であるか又はアルキル基により置換されていてもよく、かつ基Rは少なくとも6個の炭素原子を有する]の少なくとも1種のヘキサヒドロフタルイミド化合物を含有する成形材料。
【請求項2】
Rは、6〜28個の炭素原子を有する分枝状のアルキルを表す、請求項1記載の成形材料。
【請求項3】
Rは、8〜28個の炭素原子を有し、1.1〜3.0の平均分枝度を有するイソアルキルを表す、請求項1記載の成形材料。
【請求項4】
ヘキサヒドロフタルイミド化合物は、200℃で25hPaより低い蒸気圧を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項5】
熱可塑性ポリマーはポリ塩化ビニルである、請求項1から4までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項6】
式(I)
【化2】

[式中、
Rは、アルキル又はシクロアルキルを表し、その際、後者のシクロアルキル基は非置換であるか又はアルキルにより置換されていてもよく、前記基Rは少なくとも6個の炭素原子を有する]のイミダゾール化合物の、ポリ塩化ビニル用の可塑剤としての使用。
【請求項7】
Rは6〜28個の炭素原子を有する分枝状のアルキルを表す、請求項6記載の使用。
【請求項8】
Rは、8〜28個の炭素原子を有し、1.1〜3.0の平均分枝度を有するイソアルキルを表す、請求項6記載の使用。

【公表番号】特表2009−534495(P2009−534495A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505910(P2009−505910)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053916
【国際公開番号】WO2007/122204
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】