説明

可変光位相器

【課題】光位相の連続可変と高速制御が可能で、低損失で、部品点数を削減し、小型化でき、高価な光学部品を減らしてより一層の低コスト化を実現する。
【解決手段】入力光を、偏光方向が互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離する偏光子10と、その光路の異なる2つの直線偏光をそれぞれ偏光面が同一方向に回転する円偏光に変換する四分の一波長板12と、2つの円偏光をそれぞれの偏光面を回転させながら透過させる可変ファラデー回転子14と、透過した2つの円偏光の光路方向を変える集光用レンズ16と、2つの円偏光を反射する反射鏡18とを具備し、反射鏡は集光用レンズの焦点位置に設置されていて、集光用レンズと反射鏡の組み合わせによって、入力側から反射鏡に向かう往路光と反射された復路光の光路が入れ替わるようにし、偏光子を逆進して偏光合成された出力光の位相を、可変ファラデー回転子のファラデー回転角に応じて変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバあるいは自由空間を伝播する光の位相を変化させる反射型の可変光位相器に関するものである。この技術は、例えば光通信システムなどで使用する位相変調器や光計測などの分野で使用する各種の光制御デバイスなどに有用である。
【背景技術】
【0002】
光通信における変調方式の1つに位相変調方式がある。これは、情報を位相に乗せて伝送する方式であり、近年、通信の高速化(ワイドバンド化)に適した変調方式として有望視されている。位相変調では、位相を変化させる位相変調器や位相の変化を検出する位相復調器が必要となる。
【0003】
従来公知の可変光位相器(位相シフタ)としては、導波路構造の熱光学位相シフタ(例えば特許文献1など参照)があり、その他、電気光学結晶を用いる電気光学位相シフタ、液晶を用いる液晶光学位相シフタなどがある。
【0004】
これらにおいて、熱光学位相シフタの場合には、熱光学効果を利用しているため、応答速度が遅く、雰囲気温度の影響を受け易いなどの欠点がある。また、電気光学位相シフタの場合には、電気光学結晶と光ファイバの屈折率差が大きいため、損失が大きくなる問題がある。更に、液晶光学位相シフタの場合には、液晶を利用しているため、応答速度が遅いことが欠点である。光通信では、通信速度の高速化や通信の信号レベル低下を最小限に抑えることが必要であるため、応答速度が速く、低損失であることが要求される。
【0005】
その他、光計測の分野では、光位相器をマッハ・ツェンダ干渉計などに組み合わせて使用することもある。その場合には、温度等の環境条件からの影響を受け難いことも要求される。
【0006】
しかし、上記のような従来の可変光位相器では、これら全ての要求を満たすことは困難であった。これらの問題を解決できるものとして、本発明者等は先に、可変ファラデー回転子によるファラデー回転角の連続可変を利用した磁気光学式の可変光位相器を提案した(特願2009−157883)。なかでも、反射鏡を用いて往路光と復路光を折り返す反射形式は、部品点数の削減、それによる低コスト化、小型化などの点で、有利な構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−131179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、光位相の連続可変と高速制御が可能で、低損失であり、部品点数を削減でき、その上、高価な光学部品を極力減らしてより一層の低コスト化が実現でき、しかも小型化に適する構成の可変光位相器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、入力光を、偏光方向が互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離する偏光子と、その光路の異なる2つの直線偏光をそれぞれ偏光面が同一方向に回転する円偏光に変換する四分の一波長板と、2つの円偏光をそれぞれの偏光面を回転させながら透過させる可変ファラデー回転子と、該可変ファラデー回転子を透過した2つの円偏光の光路方向を変える集光用レンズと、該集光用レンズで光路方向を変えた2つの円偏光を反射する反射鏡とを具備し、それら偏光子、四分の一波長板、可変ファラデー回転子、集光用レンズ、反射鏡が、光軸に沿ってその順序で入力側から配列され、前記反射鏡は集光用レンズの焦点位置に設置されていて、集光用レンズと反射鏡の組み合わせによって、入力側から反射鏡に向かう往路光と反射された復路光の光路が入れ替わるようにし、前記偏光子を逆進して偏光合成された出力光の位相を、前記可変ファラデー回転子のファラデー回転角に応じて変化させることを特徴とする可変光位相器である。
【0010】
また本発明は、入力光を、偏光方向が互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離する偏光子と、その光路の異なる2つの直線偏光をそれぞれ偏光面が同一方向に回転する円偏光に変換する第1の四分の一波長板と、2つの円偏光をそれぞれの偏光面を回転させながら透過させる可変ファラデー回転子と、該可変ファラデー回転子を透過した2つの円偏光をそれぞれ直線偏光に変換する第2の四分の一波長板と、直線偏光の光路を入れ替えて逆進させるプリズムとを具備し、それら偏光子、第1の四分の一波長板、可変ファラデー回転子、第2の四分の一波長板、プリズムが、光軸に沿ってその順序で入力側から配列され、前記プリズムによって、入力側からプリズムに向かう往路光と逆進する復路光の光路が入れ替わるようにし、前記偏光子を逆進して偏光合成された出力光の位相を、前記可変ファラデー回転子のファラデー回転角に応じて変化させることを特徴とする可変光位相器である。
【0011】
これらにおいて、コリメート光が入力する場合には、偏光子の入力側に集光用レンズを設けるのが好ましい。
【0012】
これらの可変光位相器に光ファイバ付き入出力コリメータを設置し、光ファイバを伝播してきた入力光が、前記入出力コリメータから可変光位相器に入力し、該可変光位相器からの出力光が前記入出力コリメータを経て光ファイバに伝播する光ファイバ付き可変光位相器とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の可変光位相器は、可変ファラデー回転子によるファラデー効果を利用していることから、ファラデー素子に印加磁界を形成するコイル電流の強度を制御することによって、光位相の連続可変と高速制御が可能で、しかも光透過性に優れた光学部品が使用できるため挿入損失を極めて低く抑えることができる。また、温度等の環境条件からの影響も受け難い。更に、本発明の可変光位相器は反射鏡もしくはプリズムを用いた反射形式であることから、透過型に比べて部品点数が半減し小型化できるし、偏光子で偏光分離された2つの偏光の光路が往路と復路で入れ替わるため、本質的に偏波モード分散が補償され、偏波モード分散を補償するための複屈折結晶を別途組み込む必要が無くなり、低コスト化できる。
【0014】
また、偏光子の入力側に集光用レンズを設けることにより、使用する光学部品を小さくすることが可能となり、全体の小型化にも寄与しうるし、コスト低減にも有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る可変光位相器の第1実施例を示す説明図。
【図2】その動作説明図。
【図3】本発明に係る可変光位相器の第2実施例を示す説明図。
【図4】その応用例を示す説明図。
【図5】本発明に係る可変光位相器の第3実施例を示す説明図。
【図6】その動作説明図。
【図7】本発明に係る可変光位相器の第4実施例を示す説明図。
【図8】その応用例を示す説明図。
【図9】第3実施例の変形例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の可変光位相器は、可変ファラデー回転子によるファラデー効果を利用して円偏光の位相を制御し、出力光の位相変化がもたらされるようにした磁気光学方式である。偏光分離のため偏光子を配置し、また可変ファラデー回転子に円偏光を通すため四分の一波長板を組み込んでいる。可変ファラデー回転子を透過した光が、逆進して再び可変ファラデー回転子を透過するような反射形式とし、光が逆進する際、往路の光路と復路の光路が入れ替わるようにする。そのために、集光用レンズとその焦点に位置する反射鏡の組み合わせ、もしくは四分の一波長板とプリズムの組み合わせを用いる。
【実施例】
【0017】
(第1実施例)
図1は、本発明に係る可変光位相器の第1実施例を示す説明図である。これは、反射部材として反射鏡(ミラー)を用いる例である。入力側(本装置は反射型なので、入力側は同時に出力側でもある)から光軸に沿って、偏光子10、四分の一波長板12、可変ファラデー回転子14、集光用レンズ16、反射鏡18を、その順序で配設する。なお、偏光子や四分の一波長板の中に記した両側矢印は光学軸の向きを表している。部品間の実線両側矢印は直線偏光の向きを表し、楕円は円偏光であることを示している。また、点線矢印は光路を示している。
【0018】
偏光子10は複屈折結晶からなり、往路を進む入力光を偏光方向が互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離すると共に、偏光方向が互いに直交する逆方向の復路を進む2つの直線偏光を偏光合成する機能を有する。四分の一波長板12は、2つの直線偏光のそれぞれの偏光方向に対して光学軸が45度回転している2個1対の組み合わせであり、光路毎に別の光学軸を持つように並置されている。ここでは、上段光路は水平方向から反時計回りに45度の光学軸をもち、下段光路は水平方向から時計回りに45の光学軸を持つ。この四分の一波長板12は、往路を進む2つの直線偏光をそれぞれ偏光面が同一方向に回転する円偏光に変換すると共に、復路を逆進する偏光面が同一方向に回転する2つの円偏光をそれぞれ直線偏光に変換する機能を有する。従って、直線偏光と円偏光を変換するものであれば、[(λ/4)×(2n+1)]波長板(但し、n=0,1,2,・・・)が使用可能である。つまり、波長板の次数nは任意である。
【0019】
可変ファラデー回転子14は、2つの円偏光をそれぞれの偏光面を回転させながら透過させるものであり、図示されていないが、光が透過する磁気光学結晶(ファラデー素子)と、該磁気光学結晶に外部磁界を印加する可変磁界印加手段からなる。可変磁界印加手段は、永久磁石と電磁石の組み合わせ、あるいは電磁石のみで構成され、電磁石のコイル電流の大きさ、あるいは向きと大きさを制御することで、磁気光学結晶への印加磁界の大きさ、あるいは向きと大きさを操作でき、それによって透過光のファラデー回転角が変化する。磁気光学結晶の材質と光軸方向の長さなどによるが、例えば、ファラデー回転角を45度+0度から45度+90度まで無段階で変化させるように構成することができ、円偏光が透過する場合は円偏光の位相を+0度から+90度まで無段階で変化させることができる。
【0020】
集光用レンズ16は、2つの円偏光を反射鏡に集光させるものであり、その焦点が反射鏡18の表面に位置するように設置した凸レンズである。往路を進む互いに平行な2つの円偏光の光路の向きを変えて反射鏡18に向かわせ、該反射鏡18で反射した2つの円偏光の光路の向きを互いに平行な光路に変えて復路を逆進させるようにする。このような集光用レンズ16と、その焦点位置に設置される反射鏡18の組み合わせによって、反射鏡18に向かう往路光と反射された後の復路光の光路が入れ替わるように構成されている。
【0021】
この第1実施例の動作を図2により説明する。Aは入力光が反射鏡18へ向かう往路の光路であり、Bは反射鏡18での反射光が逆進して出力光となる復路の光路である。まずAに示す往路では、入力光は偏光子10で、偏光方向が互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離され、互いに平行な光路を進む。その2つの直線偏光は、四分の一波長板12に入力し、それぞれ偏光面が同一方向に回転する円偏光に変換される。それら2つの円偏光は、それぞれの偏光面を回転させながら可変ファラデー回転子14を透過し、その際、ファラデー効果によって円偏光の位相が変化する。可変ファラデー回転子14を透過した2つの円偏光は、集光用レンズ16で光路が曲げられ、反射鏡18に達する。
【0022】
次にBに示す復路では、反射鏡18による反射光は、集光用レンズ16で光路が曲げられ、互いに平行な2つの円偏光となる。その2つの円偏光は、偏光面が同じ方向に回転しており、それぞれの偏光面を回転させながら可変ファラデー回転子14を透過する。逆方向の透過でも、ファラデー効果によって円偏光の位相が同様に変化する。透過した2つの円偏光は、四分の一波長板12でそれぞれ偏光方向が互いに直交する直線偏光に変換される。これら2つの直線偏光は、偏光子10によって偏光合成され、ファラデー回転に応じて位相変化した光が出力する。
【0023】
このように、出力光の位相変化は、可変ファラデー回転子14でのファラデー回転角の変化によってもたらされる。可変ファラデー回転子14のファラデー回転角は、印加磁界の向きと強度によって連続的に可変させることができ、その印加磁界の向きと強度は電磁石のコイルへの通電電流によって任意に可変制御できる。そのため、出力光の位相の連続可変と高速制御が可能となる。
【0024】
ところで、偏光分離及び偏光合成を行う偏光子10では、偏光モードの違いによる光の伝播速度差によって偏波モード分散が生じる可能性がある。しかし、本発明では、集光用レンズの焦点位置に反射鏡が設けられているので、光の伝播速度が遅い偏光成分軸である遅軸と速い偏光成分軸である速軸を伝播した光路が入れ替わる。つまり、入力光が偏光子で偏光分離されて往路を進む一方の直線偏光(例えば図2で上段の光路を進む光)は、反射鏡で反射された後、復路では下段の光路を進んで偏光子に至る。また、入力光が偏光子で偏光分離されて往路を進む他方の直線偏光(図2で下段の光路を進む光)は、反射鏡で反射された後、復路では上段の光路を進んで偏光子に至る。つまり、偏光分離された2つの光は、往路と復路で光路が入れ替わり、全体としては全く同じ光路を通ることになる。従って、本質的に偏波モード分散が補償される構造となり、偏波モード分散を補償するための複屈折結晶などを光路に挿入する必要がなくなる。
【0025】
(第2実施例)
図3は、本発明に係る可変光位相器の第2実施例を示す説明図である。これも、反射部材として反射鏡(ミラー)を用いる例である。主要部の構成と動作は、図1及び図2に示す第1実施例と同様であるので、それらについては同一符号を付し、説明は省略する。
【0026】
この実施例では、偏光子10の入力側(本装置は反射型なので、入力側は同時に出力側でもある)に、別の集光用レンズ20を、その焦点が四分の一波長板12に位置するように設置する。従って、コリメート光が入力する場合、集光用レンズ20によって、該コリメート光を四分の一波長板12に集光することが可能となる。これによって、使用する光学部品を小さくすることが可能となり、全体の小型化にも寄与しうるし、コスト低減にも有効となる。
【0027】
図4は、図3に示す第2実施例の応用例である。ここでは、可変光位相器の集光用レンズ20よりも更に入力側に、光ファイバ22に結合された入出力コリメータ24が配置されている。光ファイバ22を伝播してきた入力光は、入出力コリメータ24から可変光位相器に入力する。反射鏡18で反射し逆進してきた可変光位相器からの出力光は、入出力コリメータ24によって光ファイバ22へと伝播する。この形態を採ることによって、光ファイバ22とコリメータ24を入力と出力で共用することができ、部品点数を少なくすることができる。この場合、同一の光ファイバを伝播する入力光と出力光は、進行方向が逆であることから、例えば光サーキュレータなどによって分離することが可能である。
【0028】
(第3実施例)
図5は、本発明に係る可変光位相器の第3実施例を示す説明図である。これは、反射部材としてプリズムを用いる例である。入力側(本装置は反射型なので、入力側は同時に出力側でもある)から光軸に沿って、偏光子30、第1の四分の一波長板32、可変ファラデー回転子34、第2の四分の一波長板36、プリズム38が、その順序で配設される。
【0029】
偏光子30は複屈折結晶からなり、往路を進む入力光を偏光方向が互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離すると共に、偏光方向が互いに直交する逆方向の復路を進む2つの直線偏光を偏光合成する機能を有する。第1の四分の一波長板32は、2つの直線偏光のそれぞれの偏光方向に対して光学軸が45度回転している2個1対の組み合わせであり、光路毎に別の光学軸(一方は水平方向から反時計回りに45度回転した方向、他方は水平方向から反時計回りに45度回転した方向)を持つように並置されている。この四分の一波長板32は、往路を進む2つの直線偏光をそれぞれ偏光面が同一方向に回転する円偏光に変換すると共に、復路を進む偏光面が同一方向に回転する2つの円偏光をそれぞれ直線偏光に変換する機能を有する。従って、直線偏光と円偏光を変換するものであれば、[(λ/4)×(2n+1)]波長板(但し、n=0,1,2,・・・)が使用可能である。つまり、波長板の次数nは任意である。
【0030】
可変ファラデー回転子34は、2つの円偏光をそれぞれの偏光面を回転させながら透過させるものであり、光が透過する磁気光学結晶(ファラデー素子)と、該磁気光学結晶に外部磁界を印加する可変磁界印加手段からなる。可変磁界印加手段は、永久磁石と電磁石の組み合わせ、あるいは電磁石のみで構成され、電磁石のコイル電流の大きさ、あるいは向きと大きさを制御することで、印加磁界の大きさ、あるいは向きと大きさを操作でき、それによってファラデー回転角が変化する。磁気光学結晶の材質と光軸方向の長さなどによるが、例えば、ファラデー回転角を45度+0度から45度+90度まで無段階で変化させることができ、円偏光が透過する場合は円偏光の位相を+0度から+90度まで無段階で変化させることができる。
【0031】
第2の四分の一波長板36は、可変ファラデー回転子34を透過した2つの円偏光をそれぞれ直線偏光に変換するものである。従って、直線偏光と円偏光を変換するものであれば、ここでも[(λ/4)×(2n+1)]波長板(但し、n=0,1,2,・・・)が使用可能である。プリズム38は、直角プリズム(底角が45度の2等辺3角形の端面形状をもつ柱状体もしくは板状体)であり、その底辺による面が第2の四分の一波長板36に対向し、頂角による稜線が2つの直線偏光による面に垂直となる向きで設置される。これによって、プリズム38に向かう往路の直線偏光は、2回の反射で光路がシフトして逆進することになり、往路と復路で光路が入れ替わるように構成されている。
【0032】
この第3実施例の動作を図6で更に説明する。Aは入力光がプリズムへ向かう往路の光路を示しており、Bはプリズムによる戻り光が逆進して出力光となる復路の光路を示している。まずAに示す往路では、入力光は偏光子30で、偏光方向が互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離され、互いに平行な光路となる。その2つの直線偏光は、第1の四分の一波長板32に入力し、それぞれ偏光面が同一方向に回転する円偏光に変換される。それら2つの円偏光は、それぞれの偏光面を回転させながら可変ファラデー回転子34を透過し、その際、ファラデー効果によって円偏光の位相が変化する。可変ファラデー回転子34を透過した2つの円偏光は、第2の四分の一波長板36で直線偏光に変換され、プリズム38に達する。プリズムでは、2回の反射により光路が90度ずつ曲げられてシフトすると共に直線偏光を逆進させる。
【0033】
次にBに示す復路では、プリズム38により光路がシフトして逆進する直線偏光は、第2の四分の一波長板36で円偏光に変換される。その互いに平行な2つの円偏光は、偏光面が同じ方向に回転しており、それぞれの偏光面を回転させながら可変ファラデー回転子34を透過する。逆方向の透過でも、ファラデー効果によって円偏光の位相が変化する。透過した2つの円偏光は、第1の四分の一波長板32でそれぞれ偏光方向が互いに直交する直線偏光に変換される。これら2つの直線偏光は、偏光子30によって偏光合成され、ファラデー回転に応じて位相変化した光が出力される。
【0034】
このように、出力光の位相変化は、可変ファラデー回転子34でのファラデー回転角の変化によってもたらされる。可変ファラデー回転子34のファラデー回転角は、印加磁界の向きと強度によって連続的に可変させることができ、その印加磁界の向きと強度は電磁石のコイルへの通電電流によって任意に可変制御できる。そのため、出力光の位相の連続可変と高速制御が可能となる。
【0035】
前述のように、偏光分離及び偏光合成を行う偏光子では、偏光モードの違いによる光の伝播速度差によって偏波モード分散が生じる可能性がある。しかし、本発明では、プリズムにより光路をシフトし直線偏光を逆進させるので、光の伝播速度が遅い偏光成分軸である遅軸と速い偏光成分軸である速軸を伝播した光路が入れ替わり、本質的に偏波モード分散が補償される。
【0036】
(第4実施例)
図7は、本発明に係る可変光位相器の第4実施例を示す説明図である。これも、反射部材としてプリズムを用いる例である。主要部の構成と動作は、図5及び図6に示す第3実施例と同様であるので、対応する部材について同一符号を付し、それらについての説明は省略する。
【0037】
この実施例では、偏光子30の入力側(本装置は反射型なので、入力側は同時に出力側でもある)に、集光用レンズ40を、その焦点が第1の四分の一波長板32に位置するように設置する。コリメート光が入力する場合、集光用レンズ40によって、該コリメート光を光学部品に集光することが可能となる。これによって、使用する光学部品を小さくすることが可能となり、全体の小型化にも寄与しうるし、コスト低減にも有効となる。
【0038】
図8は、図7に示す第4実施例の応用例である。ここでは、可変光位相器の集光用レンズ40よりも更に入力側に、光ファイバ42に結合された入出力コリメータ44が配置されている。光ファイバ42を伝播してきた入力光は、入出力コリメータ44から可変光位相器に入力する。プリズム38から逆進してきた可変光位相器からの出力光は、入出力コリメータ44によって光ファイバ42へと伝播する。この形態を採ることによって、光ファイバとコリメータを入力と出力で共用することができ、部品点数を少なくすることができる。この場合、同一の光ファイバを伝播する入力光と出力光は、進行方向が逆であることから、例えば光サーキュレータなどによって分離することが可能である。
【0039】
図9は、図5に示す第3実施例の変形例である。図5に示す第3実施例では、第2の四分の一波長板を1枚で構成しているが、図9のように、第2の四分の一波長板46を、2つの円偏光に対してそれぞれ別々の2枚並置する構成としてもよい。その場合、第1の四分の一波長板32と同じものが使用でき、部品点数は多くなるが、部品の種類は少なくて済む。
【符号の説明】
【0040】
10 偏光子
12 四分の一波長板
14 可変ファラデー回転子
16 光路変更用プリズム
18 反射鏡
20 集光用レンズ
22 光ファイバ
24 入出力コリメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光を、偏光方向が互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離する偏光子と、その光路の異なる2つの直線偏光をそれぞれ偏光面が同一方向に回転する円偏光に変換する四分の一波長板と、2つの円偏光をそれぞれの偏光面を回転させながら透過させる可変ファラデー回転子と、該可変ファラデー回転子を透過した2つの円偏光の光路方向を変える集光用レンズと、該集光用レンズで光路方向を変えた2つの円偏光を反射する反射鏡とを具備し、それら偏光子、四分の一波長板、可変ファラデー回転子、集光用レンズ、反射鏡が、光軸に沿ってその順序で入力側から配列され、前記反射鏡は集光用レンズの焦点位置に設置されていて、集光用レンズと反射鏡の組み合わせによって、入力側から反射鏡に向かう往路光と反射された復路光の光路が入れ替わるようにし、前記偏光子を逆進して偏光合成された出力光の位相を、前記可変ファラデー回転子のファラデー回転角に応じて変化させることを特徴とする可変光位相器。
【請求項2】
入力光を、偏光方向が互いに直交する2つの直線偏光に偏光分離する偏光子と、その光路の異なる2つの直線偏光をそれぞれ偏光面が同一方向に回転する円偏光に変換する第1の四分の一波長板と、2つの円偏光をそれぞれの偏光面を回転させながら透過させる可変ファラデー回転子と、該可変ファラデー回転子を透過した2つの円偏光をそれぞれ直線偏光に変換する第2の四分の一波長板と、直線偏光の光路を入れ替えて逆進させるプリズムとを具備し、それら偏光子、第1の四分の一波長板、可変ファラデー回転子、第2の四分の一波長板、プリズムが、光軸に沿ってその順序で入力側から配列され、前記プリズムによって、入力側からプリズムに向かう往路光と逆進する復路光の光路が入れ替わるようにし、前記偏光子を逆進して偏光合成された出力光の位相を、前記可変ファラデー回転子のファラデー回転角に応じて変化させることを特徴とする可変光位相器。
【請求項3】
偏光子の入力側に集光用レンズを設け、該集光用レンズにコリメート光が入力する請求項1又は2記載の可変光位相器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の可変光位相器に光ファイバ付き入出力コリメータを設置し、光ファイバを伝播してきた入力光が、前記入出力コリメータから可変光位相器に入力し、該可変光位相器からの出力光が前記入出力コリメータを経て光ファイバに伝播するようにした光ファイバ付き可変光位相器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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