可変分光素子
【課題】初期面間隔から波長制御に必要とされる面間隔の範囲まで光学基板を高速且つ確実に移動可能な可変分光素子の提供。
【解決手段】一対の光学基板1,1’、光学基板間の静電容量を検出するセンサ2、光学基板の面間隔を変化させるアクチュエータ3、一対の光学基板の面間隔の目標値生成部4、一対の光学基板の面間隔の現在値を検出する面間隔検出部5、一対の光学基板の面間隔の目標値と現在値との差分値に基づき、PID制御により一対の光学基板の駆動量を算出する駆動量算出部6、算出した駆動量に基づく駆動電圧をアクチュエータに印加しうる駆動指令部7を備えた可変分光素子であって、面間隔検出部が検出した一対の光学基板の面間隔の現在値が初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間と到達した後とで、一対の光学基板の駆動制御方法を異ならせる駆動制御方法切替部8を有する。
【解決手段】一対の光学基板1,1’、光学基板間の静電容量を検出するセンサ2、光学基板の面間隔を変化させるアクチュエータ3、一対の光学基板の面間隔の目標値生成部4、一対の光学基板の面間隔の現在値を検出する面間隔検出部5、一対の光学基板の面間隔の目標値と現在値との差分値に基づき、PID制御により一対の光学基板の駆動量を算出する駆動量算出部6、算出した駆動量に基づく駆動電圧をアクチュエータに印加しうる駆動指令部7を備えた可変分光素子であって、面間隔検出部が検出した一対の光学基板の面間隔の現在値が初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間と到達した後とで、一対の光学基板の駆動制御方法を異ならせる駆動制御方法切替部8を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタロン型の可変分光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空間を隔てて対向するように配置された一対の光学基板のいずれか一方又は両方を、ピエゾ素子のようなアクチュエータを用いて移動させることにより、それらの光学基板の対向する面同士又はその面上に形成された反射膜同士の面間隔(以下、総称して「光学基板の面間隔」という。)を変化させ、光学特性を変化させることのできるエタロン型の可変分光素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
また、このようなエタロン型の可変分光素子においては、光学基板の面間隔を所望の面間隔とするために、対向する面上に配置した静電容量センサにより所定のサンプリング周期で現在の面間隔を測定し、測定した面間隔と所望の面間隔との比較を行ない、その比較結果に基づいてPID制御による駆動量の算出を行い、算出した駆動量に基づいてアクチュエータを駆動させて面間隔の調整を行うものが知られている。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−129149号公報
【特許文献2】特開平6−241899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エタロン型の可変分光素子は、無制御状態では、図13(a)に示すように、光学基板1,1’同士の面間隔が、個体差があるものの、おおよそ3〜5μm程度離れている。なお、図13中、2,2はピエゾ素子等のアクチュエータである。
一方、エタロン型の可変分光素子において実際に分光器として波長制御するのに必要とされる面間隔は、図13(b)、図13(c)に示すように、約400〜2000nmである。
そこで、エタロン型の可変分光素子では、制御の初期段階として、無制御状態での初期面間隔(約3〜5μm)から制御領域(約400〜2000nm)の面間隔になるように、光学基板を高速に移動させる必要がある。
【0006】
従来の可変分光素子においては、無制御状態、波長制御状態に関係なく、PID制御のパラメータ値を同一にして光学基板の駆動量を算出していた。そして、波長制御に必要とされる面間隔の範囲400〜2000nmで高速且つ高精度に面間隔を制御できるようにするために、PID制御のパラメータ値を極力大きくしていた。
PID制御のパラメータ値を大きくすればフィードバック制御の威力は大きくなる。そのため、光学基板の面間隔を検出する静電容量センサの分解能が良ければ、電源ON時に面間隔が波長制御に必要とされる面間隔の範囲に到達するまでの時間が早くなり、また、波長制御も高速で行われることになる。
【0007】
しかし、光学基板の面間隔を検出する静電容量センサは、図14に示すように、面間隔が所定距離以上離れると、距離の変化に対する静電容量の変化が微小になって分解能が悪くなり、静電容量の検出値と実際の面間隔の値との誤差が大きくなる。
また、無制御状態での光学基板の面間隔は、所定距離以上大きく離れている。
このため、無制御状態での光学基板に対し、大きなPID制御のパラメータ値で波長制御に必要とされる面間隔の範囲まで面間隔制御を行うと、PID制御のパラメータ値が大きすぎて制御系の暴走(発振)を招いてしまい易い。
制御系の暴走を回避するためには、小さなPID制御のパラメータ値で面間隔制御を行い、光学基板をゆっくり移動させることが考えられるが、それでは波長制御に必要とされる面間隔の範囲に到達するまでに多くの時間を要し、処理が遅くなってしまう。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、初期面間隔から波長制御に必要とされる面間隔の範囲まで光学基板を高速且つ確実に移動させることの可能な可変分光素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明による可変分光素子は、間隔を隔てて対向配置された一対の光学基板と、前記一対の光学基板間の静電容量を検出する静電容量センサと、前記一対の光学基板の面間隔を変化させるアクチュエータと、前記一対の光学基板の面間隔の目標値を生成する目標値生成部と、前記静電容量センサが検出した前記一対の光学基板間の静電容量に基づいて前記一対の光学基板の面間隔の現在値を検出する面間隔検出部と、前記目標値生成部が生成した前記一対の光学基板の面間隔の目標値と前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値との差分値に基づき、PID制御により前記一対の光学基板の駆動量を算出する駆動量算出部と、前記駆動量算出部が算出した前記一対の光学基板の駆動量に基づく駆動電圧を前記アクチュエータに印加しうる駆動指令部と、を備え、前記一対の光学基板の面間隔を変えることにより分光特性が可変となる可変分光素子であって、前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値が初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間と到達した後とで、前記一対の光学基板の駆動制御方法を異ならせる駆動制御方法切替部を有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の可変分光素子においては、前記駆動制御方法切替部は、前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値に対応するPID制御のパラメータ値を、前記駆動量算出部が用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定するPID制御パラメータ値切替設定部を有するのが好ましい。
【0011】
また、本発明の可変分光素子においては、前記PIDパラメータ値切替設定部は、前記一対の光学基板の面間隔の範囲に対応するPID制御のパラメータ値を記録したテーブルを有し、前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値を用いて前記テーブルからPID制御のパラメータ値を抽出し、抽出したPID制御のパラメータ値を前記駆動量算出部が用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定するのが好ましい。
【0012】
また、本発明の可変分光素子においては、前記テーブルは、前記一対の光学基板における所定範囲の面間隔ごとに、前記面間隔が小さくなるにしたがって前記PID制御のパラメータ値が大きくなるように、前記PID制御のパラメータ値が複数段階に分かれて記録されているのが好ましい。
【0013】
また、本発明の可変分光素子においては、前記テーブルは、前記PID制御のパラメータ値が、さらに、温度、湿度又は経時変化に対応して複数段階に分かれて記録されているのが好ましい。
【0014】
また、本発明の可変分光素子においては、前記駆動制御方法切替部は、所定の大電圧を前記アクチュエータに印加しうる大電圧駆動部と、前記駆動指令部を前記大電圧駆動部と前記駆動量算出部のいずれかに切り替えて接続する接続切替部と、前記接続切替部による接続の切り替えを制御する接続切替制御部を有し、前記接続切替制御部は、前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値が所定の範囲よりも大きいときには、前記接続切替部に対し前記駆動指令部の前記大電圧駆動部への接続を指示し、前記一対の光学基板の面間隔の現在値が前記所定の範囲内であるときには、前記接続切替部に対し前記駆動指令部の前記駆動量算出部への接続を指示するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、初期面間隔から波長制御に必要とされる面間隔の範囲まで光学基板を高速且つ確実に移動させることの可能な可変分光素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の各実施例の可変分光素子に共通の構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】図1の可変分光素子におけるエタロン装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例1にかかる可変分光素子における駆動制御方法切替部による駆動制御方法の切り替えに応じて変化する光学基板の面間隔の制御状態を概念的に示すタイミングチャートである。
【図4】実施例1にかかる可変分光素子における全体の制御構成を模式的に示すブロック図である。
【図5】実施例1の可変分光素子における駆動制御方法切替部の処理ステップを示すフローチャートである。
【図6】図5の各処理ステップに対応する光学基板の面間隔の範囲を模式的に例示する説明図である。
【図7】実施例1の可変分光素子における駆動制御方法切替部に備わるルックアップテーブルの一構成例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施例2にかかる可変分光素子における駆動制御方法切替部による駆動制御方法の切り替えに応じて変化する光学基板に印加する駆動電圧を概念的に示すタイミングチャートである。
【図9】実施例2にかかる可変分光素子における全体の制御構成を模式的に示すブロック図である。
【図10】実施例2の可変分光素子における駆動制御方法切替部の処理ステップを示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施例3にかかる可変分光素子における全体の制御構成を模式的に示すブロック図である。
【図12】実施例3の可変分光素子における駆動制御方法切替部の処理ステップを示すフローチャートである。
【図13】可変分光素子における光学基板の面間隔を模式的に示す説明図で、(a)は無制御状態(初期状態)の面間隔を示す図、(b)は分光器としての制御に必要とされる最大の面間隔を示す図、(c)は分光器としての制御に必要とされる最小の面間隔を示す図である。
【図14】可変分光素子を構成する光学基板に備わる静電容量センサが検出する光学基板の面間隔に対する静電容量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の各実施例に共通の構成について、図1、図2を用いて説明する。
図1は本発明の各実施例の可変分光素子に共通の構成を概念的に示すブロック図である。図2は図1の可変分光素子におけるエタロン装置の構成を示す断面図である。
【0018】
本発明の各実施形態の可変分光素子は、図1、図2に示すように、一対の光学基板1,1’と静電容量センサ2(21,22,23,24)とアクチュエータ3(31,32,33,34)を備えたエタロン装置10と、目標値生成部4と面間隔検出部5と駆動量算出部6と駆動指令部7と駆動制御方法切替部8を備えた制御部20とによって構成されている。
【0019】
一対の光学基板1,1’は、間隔を隔てて対向配置されている。
静電容量センサ2(21,22,23,24)は、一対の光学基板1,1’に対向配置された、例えば4組の一対の電極(211,212、221,222、231、232、241,242)からなり、一対の光学基板1,1’間の静電容量を検出する。
アクチュエータ3(31,32,33,34)は、例えば、4つのピエゾ素子からなり、一対の光学基板1,1’の一方を保持し、保持する光学基板を移動させることによって光学基板1,1’同士の面間隔を変化させる。
目標値生成部4は、例えば、一対の光学基板1,1’の夫々の重心同士の間隔の目標値を面間隔の目標値gとして生成する。なお、目標値生成部4は、光学基板の平行度を良好に制御すべく、一対の光学基板1,1’における対向する面同士がなす第1及び第2の角度の目標値φ1,φ2も生成しうる。
面間隔検出部5は、静電容量センサ2が検出した一対の光学基板1,1’間の静電容量に基づいて一対の光学基板の面間隔の現在値g’を検出する。
駆動量算出部6は、目標値生成部4が生成した一対の光学基板1,1’の面間隔の目標値gと面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’との差分値に基づき、PID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板(ここでは光学基板1)の駆動量を算出する。
駆動指令部7は、駆動量算出部6が算出した一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量に基づく駆動電圧をアクチュエータ3に印加することができるように構成されている。
そして、可変分光素子は、一対の光学基板1,1’同士の面間隔を変えることにより分光特性が可変となっている。
【0020】
駆動制御方法切替部8は、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間と到達した後とで、一対の光学基板1,1’の駆動制御方法を異ならせるように構成されている。
【0021】
実施例1
図3は本発明の実施例1にかかる可変分光素子における駆動制御方法切替部による駆動制御方法の切り替えに応じて変化する光学基板の面間隔の制御状態を概念的に示すタイミングチャートである。図4は実施例1にかかる可変分光素子における全体の制御構成を模式的に示すブロック図である。図5は実施例1の可変分光素子における駆動制御方法切替部の処理ステップを示すフローチャートである。図6は図5の各処理ステップに対応する光学基板の面間隔の範囲を模式的に例示する説明図である。図7は実施例1の可変分光素子における駆動制御方法切替部に備わるルックアップテーブルの一構成例を示す説明図である。
【0022】
実施例1の可変分光素子では、駆動制御方法切替部8は、図4に示すように、PID制御パラメータ値切替設定部8aで構成されている。
【0023】
PIDパラメータ値切替設定部8aは、例えば、図7に示すように、図6に示す一対の光学基板1,1’の面間隔の範囲(範囲1〜6)に対応するPID制御のパラメータ値(図7の例では、k、2k、4k、6k、8k、10k)を記録したルックアップテーブル8a1を有している。
ルックアップテーブル8a1は、一対の光学基板1,1’における所定範囲の面間隔ごとに、面間隔が小さくなるにしたがってPID制御のパラメータ値が大きくなるように、PID制御のパラメータ値が複数段階に分かれて記録されている。
そして、PIDパラメータ値切替設定部8aは、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’を用いてルックアップテーブル8a1からPID制御のパラメータ値を抽出し、抽出したPID制御のパラメータ値を駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定するように構成されている。
【0024】
なお、ルックアップテーブル8a1には、PID制御のパラメータ値として、PID制御の式を構成する比例項、積分項、微分項のうち、少なくとも比例項のパラメータ値が記録されている。積分項、さらには微分項のパラメータ値を記録されているとさらによい。
また、温度、湿度、経時変化等の影響を極力抑えて、高精度に面間隔制御することができるように、ルックアップテーブル8a1に記録されるPID制御のパラメータ値は、面間隔の現在値g’に加えて、さらに、温度、湿度又は経時変化に対応して複数段階に分かれているのが好ましい。
また、ルックアップテーブル8a1は、図7の例に限定されるものではなく、一対の光学基板の面間隔の範囲、及びそれに対応するPID制御のパラメータ値は、面間隔が小さくなるにしたがってPID制御のパラメータ値が大きくなるように、PID制御のパラメータ値が複数段階に分かれて記録されるものであれば、どのように設定してもよい。
【0025】
このように構成された実施例1の可変分光素子の制御動作について図4を用いて説明する。
まず、説明の便宜上、駆動制御方法切替部8以外の制御動作について説明する。
一対の光学基板1,1’の面間隔を所望の間隔にしようとする場合、目標値生成部4が、一対の光学基板1,1’の対向する面の重心同士の間隔の目標値gを生成する。なお、実施例1の可変分光素子では、目標値生成部4が、一対の光学基板1,1’の重心同士を結んだ線に垂直な面と一方の光学基板1の対向する面とがなす第1の角度の目標値φ1及び第2の角度の目標値φ2も生成するように構成されている。
【0026】
上記目標値g、φ1、φ2が生成された後、面間隔検出部5が、4組の静電容量センサ2により測定された各静電容量センサの配置位置における一対の光学基板1,1’の面間隔x1,x2,x3,x4を取得し、それらの面間隔x1,x2,x3,x4を、一対の光学基板1,1’の対向する面の各々の重心同士の間隔の現在値g’、一対の光学基板1,1’の対向する面の重心同士を結んだ線に垂直な面と一方の光学基板1の対向する面がなす第1の角度の現在値φ1’及び第2の角度の現在値φ2’に変換する。
重心同士の間隔の現在値g’、第1の角度の現在値φ1’及び第2の角度の現在値φ2’は、夫々次の式により求まる。
g’=(x1+x2+x3+x4)/4
φ1’=(x3−x1)/2r
φ2’=(x4−x2)/2r
ここで、rは光学基板1の面上における重心から4組の静電容量センサ2の配置位置までの距離である。
次に、図示しない差分値算出部において、目標値g、φ1、φ2と変換値g’、φ1’、φ2’との、それぞれの差分値を算出する。
次に、駆動量算出部6が、差分値に基づいてPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量の指令値を求める。
【0027】
次に、駆動指令部7は、図示しない指令値変換部において、駆動量算出部6が算出した駆動量の指令値を4つのピエゾ素子のそれぞれに対する駆動量の指令値に変換する。そして、変換した指令値をそれぞれ対応する4つのピエゾ素子を駆動する図示しないピエゾ素子ドライバに入力し、このピエゾ素子入力ドライバを介して4つのピエゾ素子のそれぞれに駆動電圧を印加する。
【0028】
その後、4つのピエゾ素子は、それぞれに対する指令値に基づいてピエゾ素子ドライバにより印加される電圧により駆動され、光学基板1を移動させて、面間隔を変化させる。
【0029】
そして、面間隔検出部5、差分値算出部、駆動量算出部6、駆動指令部7におけるこれらの制御処理及びその制御処理に基づく4つのピエゾ素子の駆動を、面間隔及び角度が目標値g、φ1、φ2に到達するまで繰り返す。
【0030】
次に、駆動制御方法切替部8の制御動作について説明する。
実施例1の可変分光素子では、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間、駆動制御方法切替部8を構成するPID制御パラメータ切替設定部8aが次の処理を行う。
【0031】
PID制御パラメータ値切替設定部8aは、まず、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’をルックアップテーブル8a1に記録された面間隔の範囲と照合し、該当する面間隔の範囲を検出する。次に、検出した面間隔の範囲に対応するPID制御のパラメータ値を抽出する。次に、抽出したPID制御のパラメータ値を、駆動量算出部6による駆動量の算出に用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定する。
【0032】
この点に関し、初期面間隔から波長制御に必要とされる面間隔となるまでの実施例1の可変分光素子の制御動作について図3、図5〜図7を用いて具体的に説明する。
初期面間隔においては、図6に示す一対の光学素子1,1’の面間隔は、3〜5μm程度であり、波長制御に必要な面間隔400〜2000nmよりも大きく離れている。ここでは、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’は、図7に示すルックアップテーブル8a1に記録された面間隔の範囲のうち、もっとも離れた範囲1(:3μm<g’)に該当するものとする。このとき、PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲1に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、パラメータ1とする:K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS1)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ1:K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7は、駆動量算出部6が求めた一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量に基づく駆動電圧をアクチュエータ3に印加し、アクチュエータ3が一対の光学基板1,1’同士の面間隔を変化させる。また、面間隔検出部5は、静電容量センサ2が検出した一対の光学基板1,1’間の静電容量に基づいて一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’を検出する(ステップS2)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲2(:2.75μm<g’≦3μm)に到達するまで繰り返す(ステップS3)。
パラメータ1の値を用いて面間隔制御しているときの光学基板1の移動速度は、図3に示すように遅く、範囲1から範囲2までに到達するまでにある程度の時間がかかる。
【0033】
面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲2(:2.75μm<g’≦3μm)に到達したとき、PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲2に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、パラメータ2とする:2K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS4)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ2:2K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5がステップS2と同様の処理を行う(ステップS5)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲3(:2.5μm<g’≦2.75μm)に到達するまで繰り返す(ステップS6)。
パラメータ2の値を用いて面間隔制御しているときの光学基板1の移動速度は、図3に示すように、パラメータ1の値を用いたときの光学基板1の移動速度よりも早くなり、範囲2から範囲3に到達するまでの時間は、範囲1から範囲2に到達するまでの時間に比べて短縮される。
【0034】
面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲3(:2.5μm<g’≦2.75μm)に到達したとき、PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲3に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、パラメータ3とする:4K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS7)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ3:4K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5がステップS2と同様の処理を行う(ステップS8)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲4(:2.25μm<g’≦2.5μm)に到達するまで繰り返す(ステップS9)。
パラメータ3の値を用いて面間隔制御しているときの光学基板1の移動速度は、図3に示すように、パラメータ2の値を用いたときの光学基板1の移動速度よりもさらに早くなり、範囲3から範囲4に到達するまでの時間は、範囲2から範囲3に到達するまでの時間に比べてさらに短縮される。
【0035】
面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲4(:2.25μm<g’≦2.5μm)に到達したとき、PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲4に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、パラメータ4とする:6K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS10)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ4:6K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5がステップS2と同様の処理を行う(ステップS11)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲5(:2μm<g’≦2.25μm)に到達するまで繰り返す(ステップS12)。
パラメータ4の値を用いて面間隔制御しているときの光学基板1の移動速度は、図3に示すように、パラメータ3の値を用いたときの光学基板1の移動速度よりもさらに早くなり、範囲4から範囲5に到達するまでの時間は、範囲3から範囲4に到達するまでの時間に比べてさらに短縮される。
【0036】
面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲5(:2μm<g’≦2.25μm)に到達したとき、PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲5に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、パラメータ5とする:8K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS13)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ5:8K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5がステップS2と同様の処理を行う(ステップS14)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲6(:g’≦2μm)に到達するまで繰り返す(ステップS15)。
パラメータ5の値を用いて面間隔制御しているときの光学基板1の移動速度は、図3に示すように、パラメータ4の値を用いたときの光学基板1の移動速度よりもさらに早くなり、範囲5から範囲6に到達するまでの時間は、範囲4から範囲5に到達するまでの時間に比べてさらに短縮される。
【0037】
面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲6(:g’≦2μm)に到達したとき、波長制御に必要とされる面間隔となり、光学基板の駆動制御方法が次のように切り替わる。
PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲5に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、パラメータ6とする:10K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS16)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ6:10K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5がステップS2と同様の処理を行う(ステップS17)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が目標値gに到達するまで繰り返す(ステップS18)。
【0038】
このように、実施例1の可変光学素子によれば、PIDパラメータ値切替設定部8aが、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’を用いて、一対の光学基板1,1’における所定範囲の面間隔ごとに、面間隔が小さくなるにしたがってPID制御のパラメータ値が大きくなるように、PID制御のパラメータ値が複数段階に分かれて記録されたルックアップテーブル8a1からPID制御のパラメータ値を抽出し、抽出したPID制御のパラメータ値を駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定する。このため、実施例1の可変光学素子によれば、初期面間隔から制御必要範囲の面間隔に到達するまでの間、光学基板1が段階的に高速化して移動するので、静電容量センサの分解能が悪い初期面間隔での制御系の暴走を抑えながら、迅速に制御必要範囲の面間隔にすることができる。
【0039】
実施例2
図8は本発明の実施例2にかかる可変分光素子における駆動制御方法切替部による駆動制御方法の切り替えに応じて変化する光学基板に印加する駆動電圧を概念的に示すタイミングチャートである。図9は実施例2にかかる可変分光素子における全体の制御構成を模式的に示すブロック図である。図10は実施例2の可変分光素子における駆動制御方法切替部の処理ステップを示すフローチャートである。なお、実施例1の可変分光素子と同じ構成については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0040】
実施例2の可変分光素子では、駆動制御方法切替部8は、大電圧駆動部8cと、接続切替部8dと、接続切替部8dによる接続の切り替えを制御する接続切替制御部8eとで構成されている。
大電圧駆動部8cは、駆動指令部7と接続されているときに、所定の大電圧を、光学基板1を保持する4つのアクチュエータ3に印加するように構成されている。
接続切替部8dは、駆動指令部7を大電圧駆動部8cと駆動制御部6のいずれかに切り替えて接続可能に構成されている。
接続切替制御部8eは、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲(ここでは、波長制御に必要とされる範囲である400〜2000nm)よりも大きいときには、接続切替部8dに対し駆動指令部7の大電圧駆動部8cへの接続を指示し、一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲(400〜2000nm)内であるときには、接続切替部8dに対し駆動指令部7の駆動量算出部6への接続を指示するように構成されている。
その他の構成は、実施例1の可変分光素子と略同じである。
【0041】
このように構成された実施例2の可変分光素子に特有の制御動作について図8、図10を用いて説明する。
実施例2の可変分光素子では、一対の光学基板1,1’の初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間、駆動制御方法切替部8を介して、次の処理が行われる。
初期面間隔においては、一対の光学素子1,1’の面間隔は、3〜5μm程度であって、波長制御に必要な面間隔400〜2000nmよりも大きく離れている。従って、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’は、所定の範囲(ここでは、例えば、400〜2000nmとする。)より大きい。このため、接続切替制御部8eは、接続切替部8dに対し駆動指令部7の大電圧駆動部8cへの接続を指示する。接続切替部8は、接続切替制御部8eの指示に基づき、駆動指令部7を大電圧駆動部8cに接続する(ステップS21)。これにより、所定の大電圧がアクチュエータ3に印加されて一対の光学基板1,1’同士の面間隔が変化する(ステップS22)。面間隔検出部5は、静電容量センサ2が検出した一対の光学基板1,1’間の静電容量に基づいて一対の光学基板の面間隔の現在値g’を検出する(ステップS23)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲に到達するまで繰り返す(ステップS24)。
【0042】
一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲内に到達したとき、波長制御に必要とされる面間隔となり、光学基板の駆動制御方法が次のように切り替わる。
接続切替制御部8eは、接続切替部8dに対し駆動指令部7の駆動量算出部6への接続を指示する。接続切替部8は、接続切替制御部8eの指示に基づき、駆動指令部7を駆動量算出部6に切り替えて接続する(ステップS25)。
以後、面間隔検出部5、駆動量算出部6、駆動指令部7を介した、通常のPID制御を伴った光学基板の面間隔制御を、一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が目標値gに到達するまで繰り返す(ステップS26)。
【0043】
実施例2の可変光学素子によれば、一対の光学基板1,1’の現在値g’が所定の範囲内に入るまでは、接続切替制御部8eが、接続切替部8dを介して駆動指令部7を大電圧駆動部8cに接続させて、PID制御を伴った光学基板の面間隔制御を行なわせずに所定の大電圧を印加して光学基板1を駆動し、一対の光学基板1,1’の現在値g’が所定の範囲内に到達したときに、接続切替制御部8eが、接続切替部8dを介して駆動指令部7を駆動量算出部6に接続させて、通常のPID制御を伴った光学基板の面間隔制御を行わせるので、波長制御に必要な範囲となるまで制御系を暴走させることなく光学基板1を高速に移動させることができる。
なお、大電圧駆動部8cは、所定の大電圧を4つのアクチュエータに印加する構成としたが、夫々のアクチュエータの個体差に応じて個々に最適な大電圧を印加するように構成してもよい。このようにすれば、所定の範囲内に到達したときにおける光学基板の平行度が良好に保たれ、所定の範囲内に到達後の光学基板の面間隔制御がし易くなる。
【0044】
実施例3
図11は実施例3にかかる可変分光素子における全体の制御構成を模式的に示すブロック図である。図12は実施例3の可変分光素子における駆動制御方法切替部の処理ステップを示すフローチャートである。なお、実施例1の可変分光素子と同じ構成については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0045】
実施例3の可変分光素子では、駆動制御方法切替部8は、実施例1の可変光学素子におけるPID制御パラメータ値切替設定部8aと、実施例2の可変分光素子における大電圧駆動部8c、接続切替部8d及び接続切替制御部8eを備えて構成されている。
接続切替制御部8eは、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が波長制御に必要とされる範囲である400〜2000nmよりも大きな所定範囲(例えば、図7に示したルックアップテーブル8a1における範囲4の2.25〜2.5μm等。ここでは、便宜上、範囲4の2.25〜2.5μmとする。)よりも大きいときには、接続切替部8dに対し駆動指令部7の大電圧駆動部8cへの接続を指示し、一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲(図7に示した範囲4の2.25〜2.5μm)内であるときには、接続切替部8dに対し駆動指令部7の駆動量算出部6への接続を指示するように構成されている。
その他の構成は、実施例1の可変分光素子と略同じである。
【0046】
このように構成された実施例3の可変分光素子に特有の制御動作について図12を用いて説明する。
実施例3の可変分光素子では、一対の光学基板1,1’の初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間、駆動制御方法切替部8を介して、次の処理が行われる。
初期面間隔においては、一対の光学素子1,1’の面間隔は、波長制御に必要な面間隔よりも大きく離れており、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’は、所定の範囲(図7に示した範囲4の2.25〜2.5μm)より大きくなっている。このため、接続切替制御部8eは、接続切替部8dに対し駆動指令部7の大電圧駆動部8cへの接続を指示する。接続切替部8は、接続切替制御部8eの指示に基づき、駆動指令部7を大電圧駆動部8cに接続する(ステップS31)。これにより、所定の大電圧がアクチュエータ3に印加されて一対の光学基板1,1’同士の面間隔が変化する(ステップS32)。面間隔検出部5は、静電容量センサ2が検出した一対の光学基板1,1’間の静電容量に基づいて一対の光学基板の面間隔の現在値g’を検出する(ステップS33)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲(図7に示した範囲4の2.25〜2.5μm)に到達するまで繰り返す(ステップS34)。
【0047】
一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲(図7に示した範囲4の2.25〜2.5μm)内に到達したとき、接続切替制御部8eは、接続切替部8dに対し駆動指令部7の駆動量算出部6への接続を指示する。接続切替部8は、接続切替制御部8eの指示に基づき、駆動指令部7を駆動量算出部6に切り替えて接続する(ステップS35)。
【0048】
PID制御パラメータ値切替設定部8aは、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’をルックアップテーブル8a1に記録された面間隔の範囲と照合し、該当する面間隔の範囲を検出する。次に、検出した面間隔の範囲に対応するPID制御のパラメータ値を抽出する。次に、抽出したPID制御のパラメータ値を、駆動量算出部6による駆動量の算出の際に用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS36)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5が図5に示したステップS2と同様の処理を行う(ステップS37)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が図7に示した範囲6(g’≦2μm)に到達するまで繰り返す(ステップS38)。
【0049】
面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が、図7に示した範囲6(g’≦2μm)に到達したとき、波長制御に必要とされる面間隔となり、光学基板の駆動制御方法が次のように切り替わる。
PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲6に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、図7に示したパラメータ6とする:10K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS39)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ6:10K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5がステップS37と同様の処理を行う(ステップS40)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が目標値gに到達するまで繰り返す(ステップS41)。
【0050】
初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間、所定の大電圧を印加して光学基板1を駆動する場合、アクチュエータの個体差等により、制御に必要とされる所定面間隔に高精度に調整することが難しい。このため、例えば、所望の波長に対応する面間隔が制御に必要とされる面間隔の最大値(2μm)近傍である場合において、所望の波長を高精度に分光できないおそれがある。
実施例3の可変分光素子によれば、初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔の手前までを大電圧印加により光学基板を駆動し、波長制御に必要とされる所定面間隔の手前から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間、PID制御のパラメータ値を切り替えて光学基板1が段階的に高速化して移動するようにしたので、静電容量センサの分解能が悪い初期面間隔での制御系の暴走を抑えながら、迅速且つ確実に制御必要範囲の面間隔にすることができる。
【0051】
以上、本発明の可変分光素子の実施例について説明したが、本発明の可変分光素子は、上記各実施例の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的特徴を備えた構成であればどのような構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の可変分光素子は、エタロン型の可変分光素子に有用である。
【符号の説明】
【0053】
1、1’ 光学基板
2、21、22、23、24 静電容量センサ
31、32、33、34 アクチュエータ
4 指令値生成部
5 面間隔検出部
6 駆動量算出部
7 駆動指令部
8 駆動制御方法切替部
8a PID制御パラメータ値切替設定部
8a1 ルックアップテーブル
8c 大電圧駆動部
8d 接続切替部
8e 接続切替制御部
10 エタロン装置
20 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタロン型の可変分光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空間を隔てて対向するように配置された一対の光学基板のいずれか一方又は両方を、ピエゾ素子のようなアクチュエータを用いて移動させることにより、それらの光学基板の対向する面同士又はその面上に形成された反射膜同士の面間隔(以下、総称して「光学基板の面間隔」という。)を変化させ、光学特性を変化させることのできるエタロン型の可変分光素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
また、このようなエタロン型の可変分光素子においては、光学基板の面間隔を所望の面間隔とするために、対向する面上に配置した静電容量センサにより所定のサンプリング周期で現在の面間隔を測定し、測定した面間隔と所望の面間隔との比較を行ない、その比較結果に基づいてPID制御による駆動量の算出を行い、算出した駆動量に基づいてアクチュエータを駆動させて面間隔の調整を行うものが知られている。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−129149号公報
【特許文献2】特開平6−241899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エタロン型の可変分光素子は、無制御状態では、図13(a)に示すように、光学基板1,1’同士の面間隔が、個体差があるものの、おおよそ3〜5μm程度離れている。なお、図13中、2,2はピエゾ素子等のアクチュエータである。
一方、エタロン型の可変分光素子において実際に分光器として波長制御するのに必要とされる面間隔は、図13(b)、図13(c)に示すように、約400〜2000nmである。
そこで、エタロン型の可変分光素子では、制御の初期段階として、無制御状態での初期面間隔(約3〜5μm)から制御領域(約400〜2000nm)の面間隔になるように、光学基板を高速に移動させる必要がある。
【0006】
従来の可変分光素子においては、無制御状態、波長制御状態に関係なく、PID制御のパラメータ値を同一にして光学基板の駆動量を算出していた。そして、波長制御に必要とされる面間隔の範囲400〜2000nmで高速且つ高精度に面間隔を制御できるようにするために、PID制御のパラメータ値を極力大きくしていた。
PID制御のパラメータ値を大きくすればフィードバック制御の威力は大きくなる。そのため、光学基板の面間隔を検出する静電容量センサの分解能が良ければ、電源ON時に面間隔が波長制御に必要とされる面間隔の範囲に到達するまでの時間が早くなり、また、波長制御も高速で行われることになる。
【0007】
しかし、光学基板の面間隔を検出する静電容量センサは、図14に示すように、面間隔が所定距離以上離れると、距離の変化に対する静電容量の変化が微小になって分解能が悪くなり、静電容量の検出値と実際の面間隔の値との誤差が大きくなる。
また、無制御状態での光学基板の面間隔は、所定距離以上大きく離れている。
このため、無制御状態での光学基板に対し、大きなPID制御のパラメータ値で波長制御に必要とされる面間隔の範囲まで面間隔制御を行うと、PID制御のパラメータ値が大きすぎて制御系の暴走(発振)を招いてしまい易い。
制御系の暴走を回避するためには、小さなPID制御のパラメータ値で面間隔制御を行い、光学基板をゆっくり移動させることが考えられるが、それでは波長制御に必要とされる面間隔の範囲に到達するまでに多くの時間を要し、処理が遅くなってしまう。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、初期面間隔から波長制御に必要とされる面間隔の範囲まで光学基板を高速且つ確実に移動させることの可能な可変分光素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明による可変分光素子は、間隔を隔てて対向配置された一対の光学基板と、前記一対の光学基板間の静電容量を検出する静電容量センサと、前記一対の光学基板の面間隔を変化させるアクチュエータと、前記一対の光学基板の面間隔の目標値を生成する目標値生成部と、前記静電容量センサが検出した前記一対の光学基板間の静電容量に基づいて前記一対の光学基板の面間隔の現在値を検出する面間隔検出部と、前記目標値生成部が生成した前記一対の光学基板の面間隔の目標値と前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値との差分値に基づき、PID制御により前記一対の光学基板の駆動量を算出する駆動量算出部と、前記駆動量算出部が算出した前記一対の光学基板の駆動量に基づく駆動電圧を前記アクチュエータに印加しうる駆動指令部と、を備え、前記一対の光学基板の面間隔を変えることにより分光特性が可変となる可変分光素子であって、前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値が初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間と到達した後とで、前記一対の光学基板の駆動制御方法を異ならせる駆動制御方法切替部を有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の可変分光素子においては、前記駆動制御方法切替部は、前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値に対応するPID制御のパラメータ値を、前記駆動量算出部が用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定するPID制御パラメータ値切替設定部を有するのが好ましい。
【0011】
また、本発明の可変分光素子においては、前記PIDパラメータ値切替設定部は、前記一対の光学基板の面間隔の範囲に対応するPID制御のパラメータ値を記録したテーブルを有し、前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値を用いて前記テーブルからPID制御のパラメータ値を抽出し、抽出したPID制御のパラメータ値を前記駆動量算出部が用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定するのが好ましい。
【0012】
また、本発明の可変分光素子においては、前記テーブルは、前記一対の光学基板における所定範囲の面間隔ごとに、前記面間隔が小さくなるにしたがって前記PID制御のパラメータ値が大きくなるように、前記PID制御のパラメータ値が複数段階に分かれて記録されているのが好ましい。
【0013】
また、本発明の可変分光素子においては、前記テーブルは、前記PID制御のパラメータ値が、さらに、温度、湿度又は経時変化に対応して複数段階に分かれて記録されているのが好ましい。
【0014】
また、本発明の可変分光素子においては、前記駆動制御方法切替部は、所定の大電圧を前記アクチュエータに印加しうる大電圧駆動部と、前記駆動指令部を前記大電圧駆動部と前記駆動量算出部のいずれかに切り替えて接続する接続切替部と、前記接続切替部による接続の切り替えを制御する接続切替制御部を有し、前記接続切替制御部は、前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値が所定の範囲よりも大きいときには、前記接続切替部に対し前記駆動指令部の前記大電圧駆動部への接続を指示し、前記一対の光学基板の面間隔の現在値が前記所定の範囲内であるときには、前記接続切替部に対し前記駆動指令部の前記駆動量算出部への接続を指示するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、初期面間隔から波長制御に必要とされる面間隔の範囲まで光学基板を高速且つ確実に移動させることの可能な可変分光素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の各実施例の可変分光素子に共通の構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】図1の可変分光素子におけるエタロン装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例1にかかる可変分光素子における駆動制御方法切替部による駆動制御方法の切り替えに応じて変化する光学基板の面間隔の制御状態を概念的に示すタイミングチャートである。
【図4】実施例1にかかる可変分光素子における全体の制御構成を模式的に示すブロック図である。
【図5】実施例1の可変分光素子における駆動制御方法切替部の処理ステップを示すフローチャートである。
【図6】図5の各処理ステップに対応する光学基板の面間隔の範囲を模式的に例示する説明図である。
【図7】実施例1の可変分光素子における駆動制御方法切替部に備わるルックアップテーブルの一構成例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施例2にかかる可変分光素子における駆動制御方法切替部による駆動制御方法の切り替えに応じて変化する光学基板に印加する駆動電圧を概念的に示すタイミングチャートである。
【図9】実施例2にかかる可変分光素子における全体の制御構成を模式的に示すブロック図である。
【図10】実施例2の可変分光素子における駆動制御方法切替部の処理ステップを示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施例3にかかる可変分光素子における全体の制御構成を模式的に示すブロック図である。
【図12】実施例3の可変分光素子における駆動制御方法切替部の処理ステップを示すフローチャートである。
【図13】可変分光素子における光学基板の面間隔を模式的に示す説明図で、(a)は無制御状態(初期状態)の面間隔を示す図、(b)は分光器としての制御に必要とされる最大の面間隔を示す図、(c)は分光器としての制御に必要とされる最小の面間隔を示す図である。
【図14】可変分光素子を構成する光学基板に備わる静電容量センサが検出する光学基板の面間隔に対する静電容量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の各実施例に共通の構成について、図1、図2を用いて説明する。
図1は本発明の各実施例の可変分光素子に共通の構成を概念的に示すブロック図である。図2は図1の可変分光素子におけるエタロン装置の構成を示す断面図である。
【0018】
本発明の各実施形態の可変分光素子は、図1、図2に示すように、一対の光学基板1,1’と静電容量センサ2(21,22,23,24)とアクチュエータ3(31,32,33,34)を備えたエタロン装置10と、目標値生成部4と面間隔検出部5と駆動量算出部6と駆動指令部7と駆動制御方法切替部8を備えた制御部20とによって構成されている。
【0019】
一対の光学基板1,1’は、間隔を隔てて対向配置されている。
静電容量センサ2(21,22,23,24)は、一対の光学基板1,1’に対向配置された、例えば4組の一対の電極(211,212、221,222、231、232、241,242)からなり、一対の光学基板1,1’間の静電容量を検出する。
アクチュエータ3(31,32,33,34)は、例えば、4つのピエゾ素子からなり、一対の光学基板1,1’の一方を保持し、保持する光学基板を移動させることによって光学基板1,1’同士の面間隔を変化させる。
目標値生成部4は、例えば、一対の光学基板1,1’の夫々の重心同士の間隔の目標値を面間隔の目標値gとして生成する。なお、目標値生成部4は、光学基板の平行度を良好に制御すべく、一対の光学基板1,1’における対向する面同士がなす第1及び第2の角度の目標値φ1,φ2も生成しうる。
面間隔検出部5は、静電容量センサ2が検出した一対の光学基板1,1’間の静電容量に基づいて一対の光学基板の面間隔の現在値g’を検出する。
駆動量算出部6は、目標値生成部4が生成した一対の光学基板1,1’の面間隔の目標値gと面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’との差分値に基づき、PID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板(ここでは光学基板1)の駆動量を算出する。
駆動指令部7は、駆動量算出部6が算出した一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量に基づく駆動電圧をアクチュエータ3に印加することができるように構成されている。
そして、可変分光素子は、一対の光学基板1,1’同士の面間隔を変えることにより分光特性が可変となっている。
【0020】
駆動制御方法切替部8は、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間と到達した後とで、一対の光学基板1,1’の駆動制御方法を異ならせるように構成されている。
【0021】
実施例1
図3は本発明の実施例1にかかる可変分光素子における駆動制御方法切替部による駆動制御方法の切り替えに応じて変化する光学基板の面間隔の制御状態を概念的に示すタイミングチャートである。図4は実施例1にかかる可変分光素子における全体の制御構成を模式的に示すブロック図である。図5は実施例1の可変分光素子における駆動制御方法切替部の処理ステップを示すフローチャートである。図6は図5の各処理ステップに対応する光学基板の面間隔の範囲を模式的に例示する説明図である。図7は実施例1の可変分光素子における駆動制御方法切替部に備わるルックアップテーブルの一構成例を示す説明図である。
【0022】
実施例1の可変分光素子では、駆動制御方法切替部8は、図4に示すように、PID制御パラメータ値切替設定部8aで構成されている。
【0023】
PIDパラメータ値切替設定部8aは、例えば、図7に示すように、図6に示す一対の光学基板1,1’の面間隔の範囲(範囲1〜6)に対応するPID制御のパラメータ値(図7の例では、k、2k、4k、6k、8k、10k)を記録したルックアップテーブル8a1を有している。
ルックアップテーブル8a1は、一対の光学基板1,1’における所定範囲の面間隔ごとに、面間隔が小さくなるにしたがってPID制御のパラメータ値が大きくなるように、PID制御のパラメータ値が複数段階に分かれて記録されている。
そして、PIDパラメータ値切替設定部8aは、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’を用いてルックアップテーブル8a1からPID制御のパラメータ値を抽出し、抽出したPID制御のパラメータ値を駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定するように構成されている。
【0024】
なお、ルックアップテーブル8a1には、PID制御のパラメータ値として、PID制御の式を構成する比例項、積分項、微分項のうち、少なくとも比例項のパラメータ値が記録されている。積分項、さらには微分項のパラメータ値を記録されているとさらによい。
また、温度、湿度、経時変化等の影響を極力抑えて、高精度に面間隔制御することができるように、ルックアップテーブル8a1に記録されるPID制御のパラメータ値は、面間隔の現在値g’に加えて、さらに、温度、湿度又は経時変化に対応して複数段階に分かれているのが好ましい。
また、ルックアップテーブル8a1は、図7の例に限定されるものではなく、一対の光学基板の面間隔の範囲、及びそれに対応するPID制御のパラメータ値は、面間隔が小さくなるにしたがってPID制御のパラメータ値が大きくなるように、PID制御のパラメータ値が複数段階に分かれて記録されるものであれば、どのように設定してもよい。
【0025】
このように構成された実施例1の可変分光素子の制御動作について図4を用いて説明する。
まず、説明の便宜上、駆動制御方法切替部8以外の制御動作について説明する。
一対の光学基板1,1’の面間隔を所望の間隔にしようとする場合、目標値生成部4が、一対の光学基板1,1’の対向する面の重心同士の間隔の目標値gを生成する。なお、実施例1の可変分光素子では、目標値生成部4が、一対の光学基板1,1’の重心同士を結んだ線に垂直な面と一方の光学基板1の対向する面とがなす第1の角度の目標値φ1及び第2の角度の目標値φ2も生成するように構成されている。
【0026】
上記目標値g、φ1、φ2が生成された後、面間隔検出部5が、4組の静電容量センサ2により測定された各静電容量センサの配置位置における一対の光学基板1,1’の面間隔x1,x2,x3,x4を取得し、それらの面間隔x1,x2,x3,x4を、一対の光学基板1,1’の対向する面の各々の重心同士の間隔の現在値g’、一対の光学基板1,1’の対向する面の重心同士を結んだ線に垂直な面と一方の光学基板1の対向する面がなす第1の角度の現在値φ1’及び第2の角度の現在値φ2’に変換する。
重心同士の間隔の現在値g’、第1の角度の現在値φ1’及び第2の角度の現在値φ2’は、夫々次の式により求まる。
g’=(x1+x2+x3+x4)/4
φ1’=(x3−x1)/2r
φ2’=(x4−x2)/2r
ここで、rは光学基板1の面上における重心から4組の静電容量センサ2の配置位置までの距離である。
次に、図示しない差分値算出部において、目標値g、φ1、φ2と変換値g’、φ1’、φ2’との、それぞれの差分値を算出する。
次に、駆動量算出部6が、差分値に基づいてPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量の指令値を求める。
【0027】
次に、駆動指令部7は、図示しない指令値変換部において、駆動量算出部6が算出した駆動量の指令値を4つのピエゾ素子のそれぞれに対する駆動量の指令値に変換する。そして、変換した指令値をそれぞれ対応する4つのピエゾ素子を駆動する図示しないピエゾ素子ドライバに入力し、このピエゾ素子入力ドライバを介して4つのピエゾ素子のそれぞれに駆動電圧を印加する。
【0028】
その後、4つのピエゾ素子は、それぞれに対する指令値に基づいてピエゾ素子ドライバにより印加される電圧により駆動され、光学基板1を移動させて、面間隔を変化させる。
【0029】
そして、面間隔検出部5、差分値算出部、駆動量算出部6、駆動指令部7におけるこれらの制御処理及びその制御処理に基づく4つのピエゾ素子の駆動を、面間隔及び角度が目標値g、φ1、φ2に到達するまで繰り返す。
【0030】
次に、駆動制御方法切替部8の制御動作について説明する。
実施例1の可変分光素子では、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間、駆動制御方法切替部8を構成するPID制御パラメータ切替設定部8aが次の処理を行う。
【0031】
PID制御パラメータ値切替設定部8aは、まず、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’をルックアップテーブル8a1に記録された面間隔の範囲と照合し、該当する面間隔の範囲を検出する。次に、検出した面間隔の範囲に対応するPID制御のパラメータ値を抽出する。次に、抽出したPID制御のパラメータ値を、駆動量算出部6による駆動量の算出に用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定する。
【0032】
この点に関し、初期面間隔から波長制御に必要とされる面間隔となるまでの実施例1の可変分光素子の制御動作について図3、図5〜図7を用いて具体的に説明する。
初期面間隔においては、図6に示す一対の光学素子1,1’の面間隔は、3〜5μm程度であり、波長制御に必要な面間隔400〜2000nmよりも大きく離れている。ここでは、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’は、図7に示すルックアップテーブル8a1に記録された面間隔の範囲のうち、もっとも離れた範囲1(:3μm<g’)に該当するものとする。このとき、PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲1に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、パラメータ1とする:K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS1)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ1:K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7は、駆動量算出部6が求めた一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量に基づく駆動電圧をアクチュエータ3に印加し、アクチュエータ3が一対の光学基板1,1’同士の面間隔を変化させる。また、面間隔検出部5は、静電容量センサ2が検出した一対の光学基板1,1’間の静電容量に基づいて一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’を検出する(ステップS2)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲2(:2.75μm<g’≦3μm)に到達するまで繰り返す(ステップS3)。
パラメータ1の値を用いて面間隔制御しているときの光学基板1の移動速度は、図3に示すように遅く、範囲1から範囲2までに到達するまでにある程度の時間がかかる。
【0033】
面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲2(:2.75μm<g’≦3μm)に到達したとき、PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲2に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、パラメータ2とする:2K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS4)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ2:2K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5がステップS2と同様の処理を行う(ステップS5)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲3(:2.5μm<g’≦2.75μm)に到達するまで繰り返す(ステップS6)。
パラメータ2の値を用いて面間隔制御しているときの光学基板1の移動速度は、図3に示すように、パラメータ1の値を用いたときの光学基板1の移動速度よりも早くなり、範囲2から範囲3に到達するまでの時間は、範囲1から範囲2に到達するまでの時間に比べて短縮される。
【0034】
面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲3(:2.5μm<g’≦2.75μm)に到達したとき、PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲3に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、パラメータ3とする:4K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS7)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ3:4K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5がステップS2と同様の処理を行う(ステップS8)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲4(:2.25μm<g’≦2.5μm)に到達するまで繰り返す(ステップS9)。
パラメータ3の値を用いて面間隔制御しているときの光学基板1の移動速度は、図3に示すように、パラメータ2の値を用いたときの光学基板1の移動速度よりもさらに早くなり、範囲3から範囲4に到達するまでの時間は、範囲2から範囲3に到達するまでの時間に比べてさらに短縮される。
【0035】
面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲4(:2.25μm<g’≦2.5μm)に到達したとき、PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲4に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、パラメータ4とする:6K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS10)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ4:6K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5がステップS2と同様の処理を行う(ステップS11)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲5(:2μm<g’≦2.25μm)に到達するまで繰り返す(ステップS12)。
パラメータ4の値を用いて面間隔制御しているときの光学基板1の移動速度は、図3に示すように、パラメータ3の値を用いたときの光学基板1の移動速度よりもさらに早くなり、範囲4から範囲5に到達するまでの時間は、範囲3から範囲4に到達するまでの時間に比べてさらに短縮される。
【0036】
面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲5(:2μm<g’≦2.25μm)に到達したとき、PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲5に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、パラメータ5とする:8K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS13)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ5:8K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5がステップS2と同様の処理を行う(ステップS14)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲6(:g’≦2μm)に到達するまで繰り返す(ステップS15)。
パラメータ5の値を用いて面間隔制御しているときの光学基板1の移動速度は、図3に示すように、パラメータ4の値を用いたときの光学基板1の移動速度よりもさらに早くなり、範囲5から範囲6に到達するまでの時間は、範囲4から範囲5に到達するまでの時間に比べてさらに短縮される。
【0037】
面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が範囲6(:g’≦2μm)に到達したとき、波長制御に必要とされる面間隔となり、光学基板の駆動制御方法が次のように切り替わる。
PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲5に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、パラメータ6とする:10K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS16)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ6:10K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5がステップS2と同様の処理を行う(ステップS17)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が目標値gに到達するまで繰り返す(ステップS18)。
【0038】
このように、実施例1の可変光学素子によれば、PIDパラメータ値切替設定部8aが、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’を用いて、一対の光学基板1,1’における所定範囲の面間隔ごとに、面間隔が小さくなるにしたがってPID制御のパラメータ値が大きくなるように、PID制御のパラメータ値が複数段階に分かれて記録されたルックアップテーブル8a1からPID制御のパラメータ値を抽出し、抽出したPID制御のパラメータ値を駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定する。このため、実施例1の可変光学素子によれば、初期面間隔から制御必要範囲の面間隔に到達するまでの間、光学基板1が段階的に高速化して移動するので、静電容量センサの分解能が悪い初期面間隔での制御系の暴走を抑えながら、迅速に制御必要範囲の面間隔にすることができる。
【0039】
実施例2
図8は本発明の実施例2にかかる可変分光素子における駆動制御方法切替部による駆動制御方法の切り替えに応じて変化する光学基板に印加する駆動電圧を概念的に示すタイミングチャートである。図9は実施例2にかかる可変分光素子における全体の制御構成を模式的に示すブロック図である。図10は実施例2の可変分光素子における駆動制御方法切替部の処理ステップを示すフローチャートである。なお、実施例1の可変分光素子と同じ構成については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0040】
実施例2の可変分光素子では、駆動制御方法切替部8は、大電圧駆動部8cと、接続切替部8dと、接続切替部8dによる接続の切り替えを制御する接続切替制御部8eとで構成されている。
大電圧駆動部8cは、駆動指令部7と接続されているときに、所定の大電圧を、光学基板1を保持する4つのアクチュエータ3に印加するように構成されている。
接続切替部8dは、駆動指令部7を大電圧駆動部8cと駆動制御部6のいずれかに切り替えて接続可能に構成されている。
接続切替制御部8eは、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲(ここでは、波長制御に必要とされる範囲である400〜2000nm)よりも大きいときには、接続切替部8dに対し駆動指令部7の大電圧駆動部8cへの接続を指示し、一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲(400〜2000nm)内であるときには、接続切替部8dに対し駆動指令部7の駆動量算出部6への接続を指示するように構成されている。
その他の構成は、実施例1の可変分光素子と略同じである。
【0041】
このように構成された実施例2の可変分光素子に特有の制御動作について図8、図10を用いて説明する。
実施例2の可変分光素子では、一対の光学基板1,1’の初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間、駆動制御方法切替部8を介して、次の処理が行われる。
初期面間隔においては、一対の光学素子1,1’の面間隔は、3〜5μm程度であって、波長制御に必要な面間隔400〜2000nmよりも大きく離れている。従って、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’は、所定の範囲(ここでは、例えば、400〜2000nmとする。)より大きい。このため、接続切替制御部8eは、接続切替部8dに対し駆動指令部7の大電圧駆動部8cへの接続を指示する。接続切替部8は、接続切替制御部8eの指示に基づき、駆動指令部7を大電圧駆動部8cに接続する(ステップS21)。これにより、所定の大電圧がアクチュエータ3に印加されて一対の光学基板1,1’同士の面間隔が変化する(ステップS22)。面間隔検出部5は、静電容量センサ2が検出した一対の光学基板1,1’間の静電容量に基づいて一対の光学基板の面間隔の現在値g’を検出する(ステップS23)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲に到達するまで繰り返す(ステップS24)。
【0042】
一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲内に到達したとき、波長制御に必要とされる面間隔となり、光学基板の駆動制御方法が次のように切り替わる。
接続切替制御部8eは、接続切替部8dに対し駆動指令部7の駆動量算出部6への接続を指示する。接続切替部8は、接続切替制御部8eの指示に基づき、駆動指令部7を駆動量算出部6に切り替えて接続する(ステップS25)。
以後、面間隔検出部5、駆動量算出部6、駆動指令部7を介した、通常のPID制御を伴った光学基板の面間隔制御を、一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が目標値gに到達するまで繰り返す(ステップS26)。
【0043】
実施例2の可変光学素子によれば、一対の光学基板1,1’の現在値g’が所定の範囲内に入るまでは、接続切替制御部8eが、接続切替部8dを介して駆動指令部7を大電圧駆動部8cに接続させて、PID制御を伴った光学基板の面間隔制御を行なわせずに所定の大電圧を印加して光学基板1を駆動し、一対の光学基板1,1’の現在値g’が所定の範囲内に到達したときに、接続切替制御部8eが、接続切替部8dを介して駆動指令部7を駆動量算出部6に接続させて、通常のPID制御を伴った光学基板の面間隔制御を行わせるので、波長制御に必要な範囲となるまで制御系を暴走させることなく光学基板1を高速に移動させることができる。
なお、大電圧駆動部8cは、所定の大電圧を4つのアクチュエータに印加する構成としたが、夫々のアクチュエータの個体差に応じて個々に最適な大電圧を印加するように構成してもよい。このようにすれば、所定の範囲内に到達したときにおける光学基板の平行度が良好に保たれ、所定の範囲内に到達後の光学基板の面間隔制御がし易くなる。
【0044】
実施例3
図11は実施例3にかかる可変分光素子における全体の制御構成を模式的に示すブロック図である。図12は実施例3の可変分光素子における駆動制御方法切替部の処理ステップを示すフローチャートである。なお、実施例1の可変分光素子と同じ構成については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0045】
実施例3の可変分光素子では、駆動制御方法切替部8は、実施例1の可変光学素子におけるPID制御パラメータ値切替設定部8aと、実施例2の可変分光素子における大電圧駆動部8c、接続切替部8d及び接続切替制御部8eを備えて構成されている。
接続切替制御部8eは、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が波長制御に必要とされる範囲である400〜2000nmよりも大きな所定範囲(例えば、図7に示したルックアップテーブル8a1における範囲4の2.25〜2.5μm等。ここでは、便宜上、範囲4の2.25〜2.5μmとする。)よりも大きいときには、接続切替部8dに対し駆動指令部7の大電圧駆動部8cへの接続を指示し、一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲(図7に示した範囲4の2.25〜2.5μm)内であるときには、接続切替部8dに対し駆動指令部7の駆動量算出部6への接続を指示するように構成されている。
その他の構成は、実施例1の可変分光素子と略同じである。
【0046】
このように構成された実施例3の可変分光素子に特有の制御動作について図12を用いて説明する。
実施例3の可変分光素子では、一対の光学基板1,1’の初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間、駆動制御方法切替部8を介して、次の処理が行われる。
初期面間隔においては、一対の光学素子1,1’の面間隔は、波長制御に必要な面間隔よりも大きく離れており、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’は、所定の範囲(図7に示した範囲4の2.25〜2.5μm)より大きくなっている。このため、接続切替制御部8eは、接続切替部8dに対し駆動指令部7の大電圧駆動部8cへの接続を指示する。接続切替部8は、接続切替制御部8eの指示に基づき、駆動指令部7を大電圧駆動部8cに接続する(ステップS31)。これにより、所定の大電圧がアクチュエータ3に印加されて一対の光学基板1,1’同士の面間隔が変化する(ステップS32)。面間隔検出部5は、静電容量センサ2が検出した一対の光学基板1,1’間の静電容量に基づいて一対の光学基板の面間隔の現在値g’を検出する(ステップS33)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲(図7に示した範囲4の2.25〜2.5μm)に到達するまで繰り返す(ステップS34)。
【0047】
一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が所定の範囲(図7に示した範囲4の2.25〜2.5μm)内に到達したとき、接続切替制御部8eは、接続切替部8dに対し駆動指令部7の駆動量算出部6への接続を指示する。接続切替部8は、接続切替制御部8eの指示に基づき、駆動指令部7を駆動量算出部6に切り替えて接続する(ステップS35)。
【0048】
PID制御パラメータ値切替設定部8aは、面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’をルックアップテーブル8a1に記録された面間隔の範囲と照合し、該当する面間隔の範囲を検出する。次に、検出した面間隔の範囲に対応するPID制御のパラメータ値を抽出する。次に、抽出したPID制御のパラメータ値を、駆動量算出部6による駆動量の算出の際に用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS36)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5が図5に示したステップS2と同様の処理を行う(ステップS37)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が図7に示した範囲6(g’≦2μm)に到達するまで繰り返す(ステップS38)。
【0049】
面間隔検出部5が検出した一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が、図7に示した範囲6(g’≦2μm)に到達したとき、波長制御に必要とされる面間隔となり、光学基板の駆動制御方法が次のように切り替わる。
PID制御パラメータ値切替設定部8aは、範囲6に該当するPID制御のパラメータ値(ここでは、図7に示したパラメータ6とする:10K)を抽出し、駆動量算出部6が用いるPID制御のパラメータ値として設定する(ステップS39)。
駆動量算出部6は、PID制御パラメータ値切替設定部8aが設定したPID制御のパラメータ値(ここではパラメータ6:10K)でPID制御を行い、一対の光学基板1,1’における可動基板1の駆動量を求める。以後、駆動指令部7、面間隔検出部5がステップS37と同様の処理を行う(ステップS40)。
これらの処理を一対の光学基板1,1’の面間隔の現在値g’が目標値gに到達するまで繰り返す(ステップS41)。
【0050】
初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間、所定の大電圧を印加して光学基板1を駆動する場合、アクチュエータの個体差等により、制御に必要とされる所定面間隔に高精度に調整することが難しい。このため、例えば、所望の波長に対応する面間隔が制御に必要とされる面間隔の最大値(2μm)近傍である場合において、所望の波長を高精度に分光できないおそれがある。
実施例3の可変分光素子によれば、初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔の手前までを大電圧印加により光学基板を駆動し、波長制御に必要とされる所定面間隔の手前から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間、PID制御のパラメータ値を切り替えて光学基板1が段階的に高速化して移動するようにしたので、静電容量センサの分解能が悪い初期面間隔での制御系の暴走を抑えながら、迅速且つ確実に制御必要範囲の面間隔にすることができる。
【0051】
以上、本発明の可変分光素子の実施例について説明したが、本発明の可変分光素子は、上記各実施例の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的特徴を備えた構成であればどのような構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の可変分光素子は、エタロン型の可変分光素子に有用である。
【符号の説明】
【0053】
1、1’ 光学基板
2、21、22、23、24 静電容量センサ
31、32、33、34 アクチュエータ
4 指令値生成部
5 面間隔検出部
6 駆動量算出部
7 駆動指令部
8 駆動制御方法切替部
8a PID制御パラメータ値切替設定部
8a1 ルックアップテーブル
8c 大電圧駆動部
8d 接続切替部
8e 接続切替制御部
10 エタロン装置
20 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を隔てて対向配置された一対の光学基板と、
前記一対の光学基板間の静電容量を検出する静電容量センサと、
前記一対の光学基板の面間隔を変化させるアクチュエータと、
前記一対の光学基板の面間隔の目標値を生成する目標値生成部と、
前記静電容量センサが検出した前記一対の光学基板間の静電容量に基づいて前記一対の光学基板の面間隔の現在値を検出する面間隔検出部と、
前記目標値生成部が生成した前記一対の光学基板の面間隔の目標値と前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値との差分値に基づき、PID制御により前記一対の光学基板の駆動量を算出する駆動量算出部と、
前記駆動量算出部が算出した前記一対の光学基板の駆動量に基づく駆動電圧を前記アクチュエータに印加しうる駆動指令部と、を備え、前記一対の光学基板の面間隔を変えることにより分光特性が可変となる可変分光素子であって、
前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値が初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間と到達した後とで、前記一対の光学基板の駆動制御方法を異ならせる駆動制御方法切替部を有することを特徴とする可変分光素子。
【請求項2】
前記駆動制御方法切替部は、前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値に対応するPID制御のパラメータ値を、前記駆動量算出部が用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定するPID制御パラメータ値切替設定部を有することを特徴とする請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項3】
前記PIDパラメータ値切替設定部は、前記一対の光学基板の面間隔の範囲に対応するPID制御のパラメータ値を記録したテーブルを有し、
前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値を用いて前記テーブルからPID制御のパラメータ値を抽出し、抽出したPID制御のパラメータ値を前記駆動量算出部が用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定することを特徴とする請求項2に記載の可変分光素子。
【請求項4】
前記テーブルは、前記一対の光学基板における所定範囲の面間隔ごとに、前記面間隔が小さくなるにしたがって前記PID制御のパラメータ値が大きくなるように、前記PID制御のパラメータ値が複数段階に分かれて記録されていることを特徴とする請求項3に記載の可変分光素子。
【請求項5】
前記テーブルは、前記PID制御のパラメータ値が、さらに、温度、湿度又は経時変化に対応して複数段階に分かれて記録されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の可変分光素子。
【請求項6】
前記駆動制御方法切替部は、所定の大電圧を前記アクチュエータに印加しうる大電圧駆動部と、
前記駆動指令部を前記大電圧駆動部と前記駆動量算出部のいずれかに切り替えて接続する接続切替部と、
前記接続切替部による接続の切り替えを制御する接続切替制御部を有し、
前記接続切替制御部は、前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値が所定の範囲よりも大きいときには、前記接続切替部に対し前記駆動指令部の前記大電圧駆動部への接続を指示し、前記一対の光学基板の面間隔の現在値が前記所定の範囲内であるときには、前記接続切替部に対し前記駆動指令部の前記駆動量算出部への接続を指示することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の可変分光素子。
【請求項1】
間隔を隔てて対向配置された一対の光学基板と、
前記一対の光学基板間の静電容量を検出する静電容量センサと、
前記一対の光学基板の面間隔を変化させるアクチュエータと、
前記一対の光学基板の面間隔の目標値を生成する目標値生成部と、
前記静電容量センサが検出した前記一対の光学基板間の静電容量に基づいて前記一対の光学基板の面間隔の現在値を検出する面間隔検出部と、
前記目標値生成部が生成した前記一対の光学基板の面間隔の目標値と前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値との差分値に基づき、PID制御により前記一対の光学基板の駆動量を算出する駆動量算出部と、
前記駆動量算出部が算出した前記一対の光学基板の駆動量に基づく駆動電圧を前記アクチュエータに印加しうる駆動指令部と、を備え、前記一対の光学基板の面間隔を変えることにより分光特性が可変となる可変分光素子であって、
前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値が初期面間隔から波長制御に必要とされる所定面間隔に到達するまでの間と到達した後とで、前記一対の光学基板の駆動制御方法を異ならせる駆動制御方法切替部を有することを特徴とする可変分光素子。
【請求項2】
前記駆動制御方法切替部は、前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値に対応するPID制御のパラメータ値を、前記駆動量算出部が用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定するPID制御パラメータ値切替設定部を有することを特徴とする請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項3】
前記PIDパラメータ値切替設定部は、前記一対の光学基板の面間隔の範囲に対応するPID制御のパラメータ値を記録したテーブルを有し、
前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値を用いて前記テーブルからPID制御のパラメータ値を抽出し、抽出したPID制御のパラメータ値を前記駆動量算出部が用いるPID制御のパラメータ値として切り替えて設定することを特徴とする請求項2に記載の可変分光素子。
【請求項4】
前記テーブルは、前記一対の光学基板における所定範囲の面間隔ごとに、前記面間隔が小さくなるにしたがって前記PID制御のパラメータ値が大きくなるように、前記PID制御のパラメータ値が複数段階に分かれて記録されていることを特徴とする請求項3に記載の可変分光素子。
【請求項5】
前記テーブルは、前記PID制御のパラメータ値が、さらに、温度、湿度又は経時変化に対応して複数段階に分かれて記録されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の可変分光素子。
【請求項6】
前記駆動制御方法切替部は、所定の大電圧を前記アクチュエータに印加しうる大電圧駆動部と、
前記駆動指令部を前記大電圧駆動部と前記駆動量算出部のいずれかに切り替えて接続する接続切替部と、
前記接続切替部による接続の切り替えを制御する接続切替制御部を有し、
前記接続切替制御部は、前記面間隔検出部が検出した前記一対の光学基板の面間隔の現在値が所定の範囲よりも大きいときには、前記接続切替部に対し前記駆動指令部の前記大電圧駆動部への接続を指示し、前記一対の光学基板の面間隔の現在値が前記所定の範囲内であるときには、前記接続切替部に対し前記駆動指令部の前記駆動量算出部への接続を指示することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の可変分光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−19939(P2013−19939A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150817(P2011−150817)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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