説明

可変分散補償器

【課題】ヒータの温度制御による温度勾配を保持したままグレーティング部に迅速に熱伝達できる構成の可変分散補償器を提供することを目的とする。
【解決手段】光ファイバの一部に形成されたグレーティング部11と、グレーティング部11に所望の温度分布を与えるよう複数のエレメント9aが配置されたヒータ9と、グレーティング部11を収納すると共に、上記ヒータ9の各エレメント9a間に対向する位置にスリット4aが形成され、スリット4aにより分割された各セル4bがヒータ9の各エレメント9aに接着されるグレーティング収納部4とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムにおいて、光ファイバで伝送される光信号の分散を補償する可変分散補償器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光信号は、波長によって伝送路を伝搬する速度が異なるという現象がある。これは、波長毎に伝送媒体の屈折率が異なることに起因する。光ファイバに代表される光伝送路では、光を伝送媒体に閉じ込めて伝送するため、波長の違いにより信号の伝搬速度に差が生じる。この波長毎の伝搬速度差を分散と呼び、遅延時間を波長の関数として示したときの微分で与えられる。分散は、例えば伝送速度40Gpsで光信号を伝送するような高速光伝送においては不可避の現象であり、伝送による信号波形の劣化を引き起こす要因となる。そのため、長距離伝送を行う場合には分散を補償することが不可欠であり、この技術を光分散補償あるいは光分散等化と呼ぶ。光分散補償デバイスとしては、光分散補償ファイバ(以下DCFと称する)や微調整用の可変光分散等化器が用いられる。DCFは伝送路中で生じる分散とは逆符号の分散量を有したファイバ形デバイスであり、伝送路中で生じる分散量に対してファイバ長を合わせて補償量を調整する。このとき、DCFの補償する分散量は固定値のため、使用状況の変化に伴う小規模な分散量の変化に対しては分散補償量を細かく制御できる可変式の光分散等化器が用いられる。この可変式の光分散等化器は、VIPA(Virtually Imaged Phased Array)型、PLC(Planar Lightwave Circuit)型、エタロン型、ファイバグレーティング型等の様々な光学的な方式、さらには電気的な方式についても提案されている。
【0003】
ここで、上記可変式の光分散等化器において一般的である、ファイバグレーティング型の光分散等化器について説明する。光ファイバのコア(光導波路)に、グレーティングと呼ばれるコア屈折率をブラッグ波長周期で変化させた解析格子を書き込む。ブラッグ波長(λB)とはグレーティングで反射する波長のことであり、グレーティングの等価屈折率(Neff)より次の(1)式で表される。
λB=3・Neff・A −(1)
【0004】
グレーティング形状は、間隔を光導波路の長手方向に線形に変化させたチャープドグレーティングとし、このときのブラッグ波長は光導波路の長手方向に対して一次関数的に分布する。これは各ブラッグ波長に対応した光の反射点が導波路の長手方向に一次関数的に分布していることと等価であり、その反射点までの距離に応じて遅延時間が決まるため、遅延量は波長の一次関数として表される。この原理を利用して、伝送路中の遅延時間が小さい波長には、グレーティング中の反射点までの距離を長く与え、遅延時間の大きい波長には、グレーティング中の反射点までの距離を短く与え、その間の波長域には遅延量を線形に与えることで、各波長における分散量を一定にすることが出来る。
【0005】
また、光導波路の屈折率は温度の関数でもあるため、グレーティングの等価屈折率(Nsff)も温度の関数になる。そのためグレーティングの温度を変化させてNeffを変えることで、グレーティング中の反射点までの距離を制御することができる。この原理により、グレーティング部に温度差ΔTとなる温度勾配を与えると、グレーティング中の反射点までの距離が温度に対して線形に変化するため分散量が変わる。つまりグレーティングに温度勾配を与えて、温度差ΔTを可変することで分散量の制御が可能となり、可変の光分散補償が実現できる。なお、可変の分散補償における理想的な温度勾配は、グレーティング全長において温度変化率が一定の直線勾配となることであり、複数個のヒータで制御する際の理想的なヒータは、ヒータ面積小、ヒータ数量大、ヒータ間の隙間極小であり、この理想に近いほど直線近似の温度勾配を得ることが可能となる。
【0006】
ここで、上記のように理想的な直線近時の温度勾配を得るための方法として、一般的には光ファイバを複数個のヒータ上へ配置し、ヒータの発熱量を場所毎に調整する方法を用いている。また、分散量と光ファイバの温度勾配を求め、ヒータ発熱量を所定量に合わせている。以上の方法によりファイバ温度を理想的な直線近似の温度勾配に近づけることが可能となるばかりでなく、分散量を検知してヒータ発熱量を調整することにより温度勾配の微調整及び可変が可能となる(以上、特許文献1、非特許文献1を参照)。
【0007】
このように、従来から、光ファイバのグレーティング部の全長方向に一定の直線勾配となる温度勾配を与えて光の分散量を制御し、可変の光分散補償を行うことが知られており、例えば特許文献1には、絶縁体及び断熱材料でグレーティング部を覆い、グレーティング部の長手方向に沿って直線的に配置された複数個のヒータによりグレーティング部を加熱する構成が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、グレーティング部が一繋がりのヒータ上に配置され、このヒータへの配線パターンによりグレーティング部全長方向に沿った各位置の温度制御を行い、グレーティング部に温度勾配を与える構成が開示されている。
【0009】
さらに、グレーティング部の温度変化を迅速に行うために、グレーティング部の径と略同じ内径を持つステンレス鋼管にグレーティング部を挿入し、ステンレス鋼管の外周にヒータを配置する構成も考案されており、ステンレスは良熱伝導体であるため、ヒータからの温度変化をステンレス鋼管により、グレーティング部全体に迅速に伝えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−169029号公報
【特許文献2】特開2006−349853号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】2007年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会論文集S−19〜S−26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の可変分散補償器は、グレーティング部を絶縁体や断熱材等の熱を伝えにくい材質で覆っているため、グレーティング部全体の加熱及び冷却には時間がかかり、グレーティング部の温度制御を迅速に行うことができない。
また、特許文献2の可変分散補償器は、光ファイバを保持・収納することなく、光ファイバをヒータ上に露出させているため、ヒータに接する側とヒータに接していない側とでは温度差が発生し、グレーティング部全体の温度勾配を正確に制御することができない。
また、従来のステンレス鋼管を用いた可変分散補償器は、ステンレス鋼管がグレーティングの外周を全面覆う円筒形状であり、ヒータの各エレメントに接する部分の熱が隣接するエリアへも迅速に放散されて温度勾配が平滑化されてしまうため、グレーティング部の温度制御が難しいという課題があった。
【0013】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、ヒータの温度制御による温度勾配を保持したままグレーティング部に迅速に熱伝達できる構成の可変分散補償器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係る可変分散補償器は、光ファイバの一部に形成されたグレーティング部と、グレーティング部に所望の温度分布を与えるよう複数のエレメントが配置された加熱手段と、グレーティング部を収納すると共に、加熱手段の各エレメント間に対向する位置にスリットが形成され、スリットにより分割された各セルが加熱手段の各エレメントに接着されるグレーティング収納部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る可変分散補償器によれば、グレーティング部を収納するグレーティング保持部は、加熱手段の各エレメント間に対向する位置にスリットを設けて、スリットにより分割された各セルと加熱手段の各エレメントとを接着するように構成したので、加熱手段のエレメント相互の温度差を分離してグレーティング部の各位置に伝達することができる。その結果、グレーティング部の温度分布を迅速かつ容易に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明による可変分散補償器の実施の形態1を示す構造図である。
【図2】この発明による可変分散補償器の実施の形態2を示す構造図である。
【図3】この発明による可変分散補償器の実施の形態3を示す構造図である。
【図4】この発明による可変分散補償器の実施の形態4を示す構造図である。
【図5】この発明による可変分散補償器の実施の形態5を示す構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
可変分散補償器は、例えば、後述するグレーティングユニットと、図示しない筺体、保温部及びプリント基板部とから構成されるものである。
筺体は、収納部及び蓋部からなり、この収納部及び蓋部が、中央を切り欠いたプリント基板部を挟み込み、その中央部分にグレーティングユニット、保温部、温度感知器を覆うように収納している。
保温部は、可変分散補償器の全体の温度を一定の温度に保持するために設けられており、温度感知器は、グレーティングユニットの長手方向に沿って複数個が等間隔で配置され、グレーティング近傍の温度を感知するように構成している。
【0018】
以下、可変分散補償器のグレーティングユニットについて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1の可変分散補償器のグレーティングユニットの構造を説明する図であり、図1(a)が側面図、図1(b)が正面図、図1(c)がA−A線断面図である。
図1に示すように、グレーティングユニット1は、グレーティング収納部4、接着剤8、ヒータ(加熱手段)9、基板10、グレーティング部11から構成されている。
【0019】
図1(a)に示すように、ヒータ9は、複数に細分化した複数のエレメント9aを等間隔に配置し、各エレメント9aのパターンが基板10上に配線されて構成されている。この基板10上の各エレメント9aに接するようにグレーティング収納部4が接着されている。
【0020】
図1(a),(b)に示すように、グレーティング収納部4は、略中心軸線上に断面が円形の空間を形成しており、この空間には、光ファイバの一部に形成されたグレーティング部11が収納され接着固定されている。グレーティング収納部4の空間の内径は、グレーティング部11の径より僅かに大きいが、グレーティング部11を挿入して軽く支持できる程度の大きさである。
グレーティングユニット1は以上のように構成されており、可変分散補償器の筺体に組み付けられる際には、グレーティングユニット1の基板10と筺体の内部底面とを接着することで固定される。
【0021】
ここで、グレーティング収納部4の構成について詳しく説明する。
グレーティング収納部4は、例えばステンレス鋼等の良熱伝導体材料からなり、略円筒形状の細管である。
このグレーティング収納部4は、ヒータ9の各エレメント9a間に対向する位置にグレーティング収納部4の外径の1/2から2/3の深さの切り込みで一定の寸法に揃えたスリット4aが形成されており、図1(c)に示すように、各スリット4aにより分割された外周(セル4b)とヒータ9の各エレメント9aとが接着剤8により接着されている。
【0022】
次に、可変分散補償器のグレーティングユニット1の温度制御について説明する。なお、図示しないが、ここでは3個の温度感知器がグレーティング収納部4の両端側及び長手方向中間に位置するスリット4aに対応する基板上にハンダ付けされ、グレーティング部11の両端部及び中間部近傍の温度を検出するものとして説明する。
【0023】
図示しない制御手段は、温度感知器により検出された各位置の温度から、グレーティング部11の両端近傍の温度差が直線勾配となるように補正された温度制御に基づき、プリント基板部を中継してヒータ9の各エレメント9aに制御電流を加える。それぞれの温度に加熱された各エレメント9aは、グレーティング収納部4との接着面に熱を加え、各スリット4aにより分割された細管部(セル)4b毎に制御された温度に速やかに温度が変化する。
【0024】
各セル4bの間は、スリット4aにより分離され空気層が介在するため、各セル4b間の熱伝導は阻害されセル4b毎の温度変化が確実にグレーティング部11に伝達され、グレーティング部11の温度微調が確実に行われる。
また、ヒータ9のエレメント9aが温度の低いほうに制御された場合も、スリット4aによりセル4b毎に放熱され温度が低下するため、容易かつ迅速に温度が制御される。
このようにして、グレーティング部11に温度分布を与えることで、光信号の分散を補償し、光ファイバの郡遅延時間特性が制御される。
【0025】
以上のように、実施の形態1の可変分散補償器は、円管形状のグレーティング収納部4の長手方向に沿って接着されるヒータ9の各エレメント9aと同ピッチのスリット4aを形成した。その結果、スリット4aの空気層による作用で、各エレメント9aの温度がグレーティング収納部4で平衡化することなく、スリット4aで分割された各セル4b毎にグレーティング部11に伝達することができる。
【0026】
実施の形態2.
実施の形態1において、グレーティング収納部4が略円筒形状である例について説明したが、実施の形態2は、さらに熱伝導効率を向上させたグレーティング収納部42を用いる例について説明する。
図2は、この発明の実施の形態2の可変分散補償器のグレーティングユニット1の構造を説明する図であり、図2(a)が側面図、図2(b)が正面図、図2(c)がB−B線断面図である。なお、図2において、グレーティング収納部42以外は、実施の形態1で説明した可変分散補償器及びグレーティングユニット1と同様の構成であり、図1と同じ構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0027】
図2(a),(b)に示すように、グレーティング収納部42は、その横断面が長方形の略角柱形状であり、基板10上のヒータ9の各エレメント9aの間隙に対向する位置にグレーティング収納部42の高さの1/2から2/3の深さのスリット4aが形成されている。グレーティング収納部42は、各スリット4aにより分割された各セル4bと、ヒータ9の各エレメント9aとが接着剤8で接着され固定されている。
【0028】
このグレーティング収納部42の長手方向には、U字型溝4uが形成されている。U字型溝4uは、スリット4aと直交して、グレーティング収納部42の長手方向に延びており、U字型溝4uの開口部がヒータ9の各エレメント9aと接着する面に形成されている。このU字型溝4uの幅はグレーティング部11の径より僅かに大きいが、グレーティング部11を挿入すると軽く保持される程度の大きさである。
【0029】
グレーティング部11は、グレーティング収納部42とヒータ9の各エレメント9aとを接着する前に、U字型溝4uの開口部から嵌め込まれ、グレーティング収納部42の略中心軸上に収納されている。
【0030】
ヒータ9による温度制御動作は発明の実施の形態1と同等であるが、熱の伝達はグレーティング収納部42の底面が平面であるため接する面が広くなるとともに、図2(c)に示すようにヒータ9と接する面との距離が略等しく、ヒータ9からの熱がグレーティング収納部42に伝わりやすい。
【0031】
上述のように実施の形態2による可変分散補償器は、グレーティング部11への熱伝導効率を向上させるため、円筒形状を角柱形状に替え、ヒータ9と同ピッチのスリット4aを設けると同時に長手方向にグレーティング部11を収納するU字型溝4uを設けたグレーティング収納部42とする構成とした。
【0032】
その結果、ヒータ9からグレーティング収納部42への熱伝導効率が向上し、より温度制御性能が向上する。
また、グレーティング収納部42の断面が長方形であるため、スリット4aを形成しても強度を高く保持でき、生産性が向上する。
【0033】
実施の形態3.
実施の形態2において、グレーティング収納部42が略角柱形状である例について説明したが、実施の形態3は、さらに機械的強度を増す構造にしたグレーティング収納部43を用いる例について説明する。
図3は、この発明の実施の形態3の可変分散補償器のグレーティングユニット1の構造を説明する図であり、図3(a)が側面図、図3(b)が正面図、図3(c)がC−C線断面図である。なお、図3において、グレーティング収納部43以外は、実施の形態1,2で説明した可変分散補償器及びグレーティングユニット1と同様の構成であり、図1及び図2と同じ構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0034】
図3(a),(b)に示すように、グレーティング収納部43は、その横断面が長方形の略角柱形状であり、基板10上のヒータ9の各エレメント9aの間隙に対向する位置にグレーティング収納部43の高さの1/2から2/3の深さのスリット4aが形成されている。
【0035】
このグレーティング収納部43の長手方向には、U字型溝4uが形成されている。U字型溝4uは、スリット4aと直交して、グレーティング収納部43の長手方向に延びており、U字型溝4uの開口部をヒータ9の各エレメント9aと接着する面と相対する側に形成している。
【0036】
グレーティング部11は、U字型溝4uの開口部から嵌め込まれ、グレーティング収納部43の略中心軸上に収納されている。なお、グレーティング部11はグレーティング収納部43とヒータ9の各エレメント9aとの接着の後に嵌め込むこともできる。
【0037】
ヒータ9による温度制御動作は発明の実施の形態2と同様であるが、図3(c)に示すように、スリット4aにより分割されたセル4bとヒータ9のエレメントとの接触面が大きくなり、ヒータ9からの熱伝導効率がさらに良くなる。
【0038】
上述のように、実施の形態3の可変分散補償器は、角柱形状のグレーティング収納部43が、スリット4aとU字型溝4uとをそれぞれ対向する面に形成しているので、グレーティング収納部43のセル4bとヒータ9の各エレメント9aとの接着面が大きくなり、ヒータ9からグレーティング収納部43への熱伝導効率がさらに向上し、より温度制御性能が向上する。また、グレーティング収納部43の機械的強度が増したことにより体積を少なくでき熱容量を最小にできる。
また、グレーティング収納部43と基板10上のヒータエレメント9aとを、グレーティング部11を収納する前に接着することが出来るので、グレーティング部11の接着作業時の熱照射や化学物質との接触が避けられ、品質が安定し生産性が向上する。
【0039】
実施の形態4.
実施の形態2,3は、グレーティング収納部にスリットを形成する例について説明したが、実施の形態4は、変形しにくいグレーティング収納部の構成について説明する。
図4は、本発明の実施の形態4の可変分散補償器のグレーティングユニット1の構造を示しており、図4(a)が側面図であり、図4(b)が正面図である。
なお、図4において、グレーティング収納部44以外は、実施の形態2で説明した可変分散補償器及びグレーティングユニット1と同様の構成であり、図2と同じ構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0040】
図4(a),(b)に示すように、グレーティング収納部44は、実施の形態2のグレーティング収納部42と同じ形状であり、そのスリット4a内にシリコン系接着剤60を充填したものである。シリコン系接着剤60は、弾性が高く、スリット4aの間隔の寸法を保持している。
なお、ヒータ9による温度制御動作は実施の形態2と同様である。
【0041】
上述のように、実施の形態4の可変分散補償器は、グレーティング収納部44に設けたスリット4aにシリコン系接着剤60を充填成形したことにより、グレーティング収納部44が容易に変形しないように強度を補強することができる。その結果、可変分散補償器のグレーティング収納部44は、弾性復元力が増し、寸法安定性、組立作業性が向上する。そして、金属部の体積を減じ、熱容量の最小化を図ることができる。
【0042】
なお、シリコン系接着剤は非熱伝導性であるため、実施の形態1〜3の可変分散補償器と同様にセル4b間の温度を遮断する効果がある。
また、実施の形態4の可変分散補償器では、グレーティング収納部44を実施の形態2のグレーティング収納部42と同様の形状としたが、実施の形態3のグレーティング収納部43と同様の形状を用いても同じ効果を得ることができる。
【0043】
実施の形態5.
実施の形態4は、グレーティング収納部44に設けたスリット4a内にシリコン系接着剤60を充填してグレーティング収納部44の強度を補強する構成について説明したが、実施の形態5では、ヒータ9による熱をさらに安定してグレーティング部11に伝達できる構成について説明する。
図5は、本発明の実施の形態5の可変分散補償器のグレーティングユニット1の構造を示す図であり、図5(a)が側面図であり、図5(b)が正面図である。
なお、図5において、両面接着剤81以外は、実施の形態4で説明した可変分散補償器及びグレーティングユニット1と同様の構成であり、図4と同じ構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0044】
グレーティング収納部45の各セル4bとヒータ9の各エレメント9aとは、実施の形態1〜4の接着剤8に替えて両面接着剤81で接着固定されている。
実施の形態1〜4の接着剤8は、例えば、紫外線硬化型接着剤などの温度を伝えにくい材質であるため、温度伝達上は厚みを均一化することが理想的であるが、均一に塗布することは難しい。両面接着剤81は、例えば基板を接着する際に用いられる両面接着テープなどの厚みが均一化されているものであり、ヒータ9の各エレメント9aとの接着面の距離を一定にして、グレーティング収納部45への温度伝達特性を安定化させることができる。
【0045】
上述のように、実施の形態5の可変分散補償器は、グレーティング収納部45とヒータ9との接着に両面接着剤81を用いたので、接着層厚みを均一化でき、温度伝達特性を安定化させることができる。
また、両面接着剤81の厚みが均一化されているものであるので作業性が良く、接着作業中に有害なガスが発生することもないので、安全に作業を行うことができる。
【0046】
なお、実施の形態5において、グレーティング収納部45に替えてグレーティング収納部42,43,44を用いてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、各図において、グレーティング収納部に設けるスリット4a、セル4bの数は、適宜決められるものであればよい。
【符号の説明】
【0048】
1 グレーティングユニット、4,42,43,44,45 グレーティング収納部、4a スリット、4b セル、4u U字型溝、8 接着剤、9 ヒータ(加熱手段)、9a エレメント、10 基板、11 グレーティング部、60 シリコン系接着剤(接着剤)、81 両面接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの一部に形成されたグレーティング部と、
上記グレーティング部に所望の温度分布を与えるよう複数のエレメントが配置された加熱手段と、
上記グレーティング部を収納すると共に、上記加熱手段の各エレメント間に対向する位置にスリットが形成され、上記スリットにより分割された各セルが上記加熱手段の各エレメントに接着されるグレーティング収納部とを備えた可変分散補償器。
【請求項2】
上記グレーティング収納部は、円筒形状を有し、上記円筒形状の中心軸線上に形成された空間に上記グレーティング部を収納することを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項3】
上記グレーティング収納部は、角柱形状を有し、上記角柱形状の長手方向に形成されたU字型溝に上記グレーティング部を収納することを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項4】
上記グレーティング収納部のU字型溝の開口部を上記加熱手段の各エレメントと接着する面側に形成することを特徴とする請求項3記載の可変分散補償器。
【請求項5】
上記グレーティング収納部のU字型溝の開口部を上記加熱手段の各エレメントと接着する面と相対する側に形成することを特徴とする請求項3記載の可変分散補償器。
【請求項6】
上記グレーティング収納部に形成されたスリットに接着剤を充填することを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項7】
上記グレーティング収納部の各セルと上記加熱手段の各エレメントを両面接着剤で接着することを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−204300(P2010−204300A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48371(P2009−48371)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】