説明

可搬式電源装置

【課題】可搬式電源装置に内蔵された蓄電池の固定を目的とする。
【解決手段】可搬式電源装置100は、少なくとも一面に開口部を有する筐体102と、開口部を封止する蓋104で構成された外装部を有している。筐体102の内部に収納された蓄電池120は、筐体102内に収納された電子基板112と、電子基板112の上に配置される、少なくとも一部が弾性を有する略柱状のスペーサ118の上に設置され、かかる弾性により固定される。筐体102の壁面との間で蓄電池120を挟持する押さえ板108に貼付される緩衝材124、蓋104の内側に貼付される緩衝材126、および壁面の内側に貼付される緩衝材122が蓄電池120に当接するように備えられ、蓋104を筐体102に固定することで、蓄電池120が筐体102に3つの軸方向で固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池を収容した可搬式電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
停電等により発電所を含む電力供給システムからの電力の供給が一時的に途絶えることがある。このような停電時においてもエアコン、冷蔵庫等の電気機器には継続的な電力の供給が必要である。この場合、コンセントへ接続していたプラグを、屋内配線とは独立して電力供給可能なポータブル電源装置等の外部電源に接続して動作させることができる。かかる外部電源は、燃料電池や二次電池を利用したものがあり、燃料電池の例では水素を燃料として数百W以上の電力を生成できるものもある。
【0003】
外部電源の中でも、持ち運ぶことが可能な、可搬式電源装置(いわゆる、ポータブル電源装置)が知られている。可搬式電源装置では燃料式の動力を備えているものもあるが、蓄電池を内蔵したものも多く利用されている。
【0004】
蓄電池を内蔵する可搬式電源装置の場合、蓄電池を筐体に固定する必要がある。特許文献1には複数の蓄電池としての電池パックを筐体に収容し、筐体の一部を折り曲げて固定する構成が開示されている。
【0005】
しかし、可搬式電源装置は、商用電源から充電するためのコンバータや、所定の電力(電圧)を出力するためのインバータなどの電子回路を備えているものも多い。すなわち可搬式電源装置の筐体の内部には、電子回路と重量物である蓄電池とが一緒に収容されるため、持ち運ぶためにそれぞれを確実に固定する必要がある。
【0006】
蓄電池の固定方法としては、例えば特許文献2には、蓄電池電池パックにビスで固定するための穴を有するフランジを備えた構成が開示されている。特許文献2では、車載用の蓄電池としての電池パックをビスで固定し、外部からの衝撃がかかると、ビスで固定されている一部が容易に破壊する構造となっており、蓄電池としての電池パックにかかる力を和らげている。
【特許文献1】特開2006−339031号公報
【特許文献2】特開2007−230329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記説明したように、持ち運ぶことが前提となる場合、搬送時に装置本体(筐体)に内蔵された蓄電池にあらゆる方向から力や衝撃が加わる。このため、安定した動作を実現するためには、筐体に内蔵された蓄電池が確実に固定されている必要がある。
【0008】
通常、市販の蓄電池本体は略直方体ないし、略柱状の形状をしており、固定用のフランジは設けられていないことが多い。そのため、従来は筐体の内部に蓄電池を囲むフレームを設けて、フレームに蓄電池を固定する構成を取っている。しかし、フレームをネジ留めなどするための工程がいるために、蓄電池の取り付けに工数がかかるという問題があった。また蓄電池は消耗品であるために保守として交換が必要になるが、円滑な保守作業を行うためには、作業工程数を削減しつつ、確実な固定と容易な脱着を行うことが求められている。さらに、筐体の内部に頑丈なフレームを設けることにより、可搬式電源装置全体の重量が増大するという問題もあった。
【0009】
さらに、可搬式電源装置においては、可搬性を向上するために、装置自体の容積(大きさ)が小さいことが望ましい。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、小型軽量で可搬性に優れ、組立および保守作業を容易に行うことのできる可搬式電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる可搬式電源装置の代表的な構成は、少なくとも一面に開口部を有する筐体と、開口部を封止する蓋と、筐体内に収納された蓄電池と、筐体内に収納された電子基板と、電子基板と蓄電池との間に配置され、少なくとも一部が弾性を有する略柱状のスペーサと、筐体内に配置され、筐体の壁面との間で二つの軸方向に蓄電池を挟持する押さえ板と、蓋の内側、および壁面の内側または押さえ板に貼付され、蓄電池に当接する緩衝材と、を備え、蓋を筐体に固定することで、蓄電池が筐体に3つの軸方向で固定されることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、スペーサによって電子基板と蓄電池の間に電子部品を配置する空間を確保しつつ、スペーサと蓋の内側の間(1軸方向)、および筐体の壁面の内側と押さえ板との間(2軸方向)によって、蓄電池を固定することができる。これにより、筐体に蓋を取り付ける操作によって蓄電池も固定することができ、蓄電池の取り付けおよび交換作業の工数を最小限とすることができる。
【0013】
また電子基板の平面方向において蓄電池と電子基板とを重ねて配置することができる(蓄電池と電子基板との間に電子部品を実装できる)ため、装置全体の小型化と軽量化を図ることができる。
【0014】
なお、蓄電池と押さえ板ないし壁面の間に緩衝材を設けることで、双方の間に生じる隙間を充填して、密着させることができる。また、スペーサの少なくとも一部が弾性を有することにより、電子基板と蓋体との間の寸法誤差を吸収してがたつきを防止し、蓄電池を過不足なく固定することができる。またスペーサおよび緩衝材が微小に変形することによって、様々な方向から蓄電池に対して加えられる衝撃を緩和することができる。
【0015】
上記緩衝材は、壁面の内側または押さえ板の一方または両方に貼付されていてもよい。
【0016】
壁面と押さえ板によって蓄電池を挟み込む場合、両方の内側に蓄電池と当接する緩衝材を設けることにより、様々な方向から蓄電池に加えられる衝撃を吸収することができる。一方、壁面と押さえ板の一方の内側に緩衝材を設ける場合には、緩衝材を設けない方向への衝撃は緩和することができない。しかし一方に設けた緩衝材が隙間を充填して寸法誤差を吸収するため、がたつきが防止され、蓄電池に与えられる振動による繰り返し負荷を軽減することができる。
【0017】
上記押さえ板は、蓋の内側に固定されていてもよい。
【0018】
蓄電池は筐体の中に収納する限りにおいて、その寸法は筐体の大きさより小さい。この場合において、蓄電池を筐体の壁面の内側に沿って配置するとき蓄電池の、壁面に沿う面と反対側の面が筐体の反対側の壁面に到達しない場合には、押さえ板を備えることにより適切に蓄電池を収容することができる。そして、上記のように押さえ板を蓋の内側に固定することにより、蓋を取り外すと押さえ板も取り外される。したがって蓄電池の着脱の際には筐体の内部空間を広く取ることができ、電子基板の取り付けやメンテナンスを容易にすることができる。また、蓋を取り付けることによって押さえ板も同時に所定位置に配置されるため、蓄電池の固定を、蓋を取り付けるという一つの作業で完了することができる。
【0019】
上記電子基板上に背の高い部品を実装する領域と、背の低い部品を実装する領域と、に分割し、背の低い部品を実装する領域にスペーサを介して蓄電池を配置してもよい。
【0020】
可搬式電源装置には、商用電源等を利用して蓄電池を充電するためのコンバータや、蓄電池から所定の電力(電圧)を出力するためのインバータなど付随する電子回路が必要となる。限られた大きさで求められる機能を実現するためには、蓄電池をはじめとした部品を実装する際の配置の効率化が求められている。
【0021】
そして上記構成によれば、電子基板上に背の高い部品を実装する領域と、背の低い部品を実装する領域と、に分割し、背の低い部品を実装する領域に蓄電池を配置したことにより、さらに電子基板と蓄電池との距離を近づけることができる。これにより、さらに可搬式電源装置の小型化を図ることができる。
【0022】
また、蓄電池を少なくとも2辺の壁面と当接するように配置することで、対向する壁面の側に空間が設けられる。この空間と、電子基板上に背の高い部品を実装する領域とを対応させることにより、電子基板上の空間は、基板の上から蓋までの高さとなり、背の高い部品を実装するために充分な空間を確保することができる。
【0023】
上記スペーサは樹脂材料からなる円錐台形状であって、電子基板に固定されていてもよい。樹脂材料としては弾性を有していればよく、例えばゴム、エラストマー樹脂などを好適に用いることができる。また全体が単一の材料で形成されていてもよいが、部分的に異なる材料で形成してもよい。例えば、基体を硬度の高い材料で形成し、蓄電池に当接する先端部分のみを弾性の大きい材料で形成してもよい。このように電子基板上に樹脂材料のスペーサを設けることにより、重量物である蓄電池を支持および固定するとともに、電子基板の破損を防止することが可能となる。
【0024】
上記緩衝材は、樹脂材料からなる板形状であって、壁面の内側または押さえ板の一部または全部に、一つの面につき一つ又は複数配置されていてもよい。
【0025】
緩衝材を樹脂の板材で形成することにより、安価でかつ取り回しのよい緩衝材とすることができる。また緩衝材として機能するために、押さえ板の全部(全面)に配置してもよいが、一部(例えば中央部分)のみに配置してもよいし、複数の小さな緩衝材を分散させて配置してもよい。これにより、蓄電池を確実に固定すると共に、充分に衝撃を吸収することができる。
【0026】
上記押さえ板は、断面L字形状のアングル材であって、蓄電池の角に当接してもよい。
L字形状のアングル材を押さえ板として用いることにより、平板のみで構成された押さえ板を用いる場合と比べ、軽量かつ高強度な押さえ板を実現できる。
【0027】
上記筐体はアルミニウム製であり、押さえ板は鉄系合金製であってもよい。
【0028】
アルミニウム製の筐体とすることで、装置自体の軽量化を図ることができる。また、押さえ板は鉄系合金製とすることで、重量物である蓄電池の固定を確実に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、小型軽量で可搬性に優れ、組立および保守作業を容易に行うことができる可搬式電源装置を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。なお以下の説明において上下方向をいうときは、蓋を上にしたときの上下方向であって、必ずしも重力方向に対する上下方向ではない。
【0031】
図1は本実施形態にかかる可搬式電源装置100の代表的な構成を説明する図である。図1では、内蔵された部品類を破線にて示している。
【0032】
(外観構成)
図1に示すように、可搬式電源装置100の外装は、少なくとも一面(本実施形態では上面)に開口部を有する筐体102と、開口部を封止する蓋104とで構成される。蓋104はネジ106(図4参照)を用いて筐体102を封止する。可搬式電源装置100の側面には、商用電源から電源供給を行うためのインレット136と、外部に電力を供給するためのアウトレット138と、可搬式電源装置100の電源の投入及び切断を行うためのスイッチ140が設けられている。可搬式電源装置100の電源を投入し外部に電源が供給される状態になった場合発光ダイオード144が点灯する。また、商用電源等から電源の供給を受け充電をしている場合や、商用電源等から電源の供給を受けながら外部に電源が供給される場合なども発光ダイオード144は点灯する。また他の側面には持ち運びを容易にするためのハンドル(取手)142が設けられている。
【0033】
インレット136およびアウトレット138は、可搬式電源装置100を積み重ねて使用する場合を考えて、側面(幅の狭い面)に設けられることが好ましい。またインレット136およびアウトレット138は、規格で寸法が決まっているために、小型化をすることが困難である。そのため、蓄電池が当接して設置される壁面と対向する壁面に設けられることが望ましい。
【0034】
(内部の概略構成)
図2は可搬式電源装置100の図1におけるA−A断面図である。図2に示すように、筐体102の内部には、電子部品110が実装される電子基板112および蓄電池120が収容されている。
【0035】
電子基板112は筐体102の底部に配置されて固定されている。電子基板112の上には、背の低い部品110aおよび背の高い部品110bからなる電子部品110が実装されている。これらの電子部品110は、商用電源等を利用して蓄電池120を充電するためのコンバータや、蓄電池120から所定の電力(電圧)を出力するためのインバータなど、電源装置としての各種機能を実現するための部品である。
【0036】
蓄電池120は、外形が略直方体をなしており、表面に樹脂モールドまたは樹脂ケースを有するパッケージである。蓄電池120と電子基板112とは不図示の電極または配線によって接続されている。蓄電池120としては、例えばニッケル水素電池や、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、ニッケル−カドミウム電池などの二次電池を好適に用いることができる。
【0037】
(蓄電池を固定する構成)
蓄電池120は、電子基板112の上に固定された円錐台形状のスペーサ118の上に載置され、上方を蓋104によって抑えることによって上下方向(1軸方向)が固定されている。
【0038】
スペーサ118は、少なくとも一部が弾性を有する材質で構成されている。本実施形態においてスペーサ118は、樹脂材料によって形成され、円錐台形状であって、電子基板112に固定されている。ここで用いるスペーサ118に用いられる樹脂の材料は、少なくとも先端(蓄電池120に当接する先端部分)が弾性を有しているものであればよい。例えばゴム、エラストマー樹脂、などを好適に用いることができる。また本実施形態のように単一材料により形成されたスペーサ118を用いてもよいが、部分的に異なる材料で形成してもよい。例えば、基体を硬度の高い材料で形成し、蓄電池120に当接する先端部分のみを弾性の大きい材料で形成してもよい。このように電子基板112上に樹脂材料のスペーサ118を設けることにより、重量物である蓄電池120を支持および固定するとともに、電子基板112の破損や損傷を防止できる。
【0039】
蓄電池120の壁面に対向する2軸方向は、筐体102の壁面と押さえ板108によって挟持されて固定されている。本実施形態において押さえ板108は、蓋104の内側に固定されている。
【0040】
図3は、蓋104を下方から斜視した図である。蓋104は、ネジ106を挿通するための穴132と、蓋104に接合された押さえ板108、押さえ板108に貼付された緩衝材124とを備えている。押さえ板108は、断面L字形状のアングル材となっている。押さえ板108の上部は蓋104に接合され、蓄電池120の角に当接している。
【0041】
蓄電池120は、筐体102の中に収納する限りにおいて、その寸法は筐体102の大きさより小さくなる。この場合において、蓄電池120を筐体の壁面の内側に沿って配置するとき、蓄電池120の壁面に沿う面と反対側の面は筐体102の反対側の壁面に到達しない場合には、押さえ板108を備えることにより適切に蓄電池120を収容することができる。
【0042】
そして、上記のように押さえ板108を蓋104に接合することで、蓋104を取り外すと押さえ板108も取り外され、蓄電池120の脱着が容易に行えるようになる。さらに、押さえ板108が蓋104と同時に脱着できることにより、押さえ板108で仕切られることなく筐体102の内部に広い空間を確保でき、蓄電池120の交換だけでなく電子基板112の取り付けやメンテナンスを容易にすることができる。
【0043】
またL字形状のアングル材を押さえ板108として用いることにより、平板のみで構成された押さえ板108を用いる場合と比べて座屈に強く、軽量かつ高強度な押さえ板108を実現できる。
【0044】
なお筐体102はアルミニウム製であり、押さえ板108は鉄系合金製としている。本実施形態で扱う可搬式電源装置100は可搬性が重要であるから、装置全体の重量を軽くしたいという要請がある。そこで筐体102はアルミニウム製とすることで、電源装置自体の軽量化を図り、接合された押さえ板108を鉄系合金製とすることで、重量物である蓄電池120の固定を確実に行うことが可能となる。
【0045】
上記のように、スペーサ118、蓋104、筐体102の壁面および押さえ板108によって、3つの軸方向(x軸方向、y軸方向、およびz軸方向)が固定されている。
【0046】
図4は、可搬式電源装置100の組立図である。図に示すように、筐体102の底部から電子基板112、スペーサ118、蓄電池120、緩衝材126、蓋104の順番で固定されている。筐体102に電子基板112とスペーサ118が取り付けられており、スペーサ118の上に蓄電池120が配置(載置)されている。可搬式電源装置100は、蓄電池120をスペーサ118の上に載置した状態であれば、筐体102に蓋104を取り付ける操作のみで蓄電池120も筐体102に固定することができる。かかる構成により、可搬式電源装置100は、保守作業時の蓄電池120の取り付けおよび交換作業の工数を最小限とすることができる。
【0047】
(緩衝材の構成)
筐体の壁面の蓄電池120に当接する位置には緩衝材122が、押さえ板108の蓄電池120に当接する位置には緩衝材124が、また蓋104の蓄電池120に当接する位置には緩衝材126がそれぞれ貼付されている。緩衝材122、緩衝材124、緩衝材126は、樹脂材料からなる板形状を有している。これらの緩衝材122、緩衝材124、緩衝材126は、取り付けられる面の一部または全部に、一つの面につき一つ又は複数配置されている。例えば図4では、押さえ板108の場合は蓄電池120に当接する部分全面に緩衝材124が貼付されている。一方、筐体102の壁面に張られた緩衝材122は、長方形の緩衝材を複数枚貼付されている。
【0048】
なお、蓄電池120を取り囲む6面に、スペーサ118、緩衝材122、緩衝材124、緩衝材126をそれぞれ設けることで、可搬式電源装置100がいかなる方向への衝撃を受けたとしても、その衝撃を吸収することができる。このとき、外力方向にある緩衝材が収縮することはもちろんであるが、外力方向と平行な面に配置された緩衝材が剪断変形を生じうることにより、蓄電池120の表層に損傷を与えることなく、やわらかくかつ確実に保持することができる。
【0049】
ただし、必ずしも蓄電池120を取り囲む6面に緩衝材を設ける必要はなく、3軸方向のそれぞれにおいて少なくとも一方の面に緩衝材を設けていればよい。例えばスペーサ118があることから、蓋104の内面にある緩衝材126は省略することができる。また筐体102の壁面に緩衝材122を設けた場合には、押さえ板108の緩衝材124を省略することができる。この場合において、緩衝材方向への衝撃は緩和することができるが、緩衝材のない方向への衝撃は緩和することができない。しかし緩衝材は隙間の充填材として機能し、寸法誤差を吸収してがたつきを防止しうるため、衝撃や振動によって蓄電池120に与えられる損傷を防止することができる。
【0050】
(電子部品の配置構成)
上述のように電子基板112の上には、電源に関する種々の電子部品が実装される。電源に関する部品は、流れる電流の容量に応じて配線の太さが決まるため、トランスやコンデンサなどは耐圧が高くなると部品の大きさも大きくなる。一方、可搬式電源装置100は可搬性が重要であるから、装置全体の大きさを小さくしたいという要請がある。
【0051】
そこで図2および図4に示すように、筐体102内部の配置として、電子基板112上に背の低い部品110aを実装する領域R1と、背の高い部品110bを実装する領域R2とに分割している。背の低い部品110aとは、例えば面実装のトランジスタやアルミ電解コンデンサ、チップ抵抗やチップコンデンサなどである。背の高い部品110bとは、例えばトランスやコイル、トロイダルコア、インレットやアウトレットなどのコネクタ部材などである。なお背の低い部品110aと背の高い部品110bとの高さの境界は必ずしも明確に分かれるわけではなく、装置全体の大きさ(高さ)の要請、部品配置に要する面積と蓄電池120の大きさの関係、スペーサ118の高さなどによって適宜設定することができる。
【0052】
仮に、電子基板112上に無作為に必要な部品を配置するとすれば、蓄電池120と電子基板112との間には、最大の部品の大きさよりも広い隙間が必要となる。しかし、電子基板112上を上記のような領域に分割し、背の低い部品110aを実装する領域R1と蓄電池120の配置とを対応させることにより、電子基板112と蓄電池120との距離を近づけることが可能となる。
【0053】
換言すれば、領域R1においては、電子基板112と蓄電池120がスペーサ118を介して配置されている。これにより、電子基板112と蓄電池120の間に空間128が生じる。この空間128を利用して、領域R1には、スペーサ118によって形成される空間128の高さの範囲内の大きさの背の低い部品110aを配置することができる。
【0054】
一方、背の高い部品を実装する領域R2には、上方に蓄電池120が存在しないため、領域R2の上の空間130の高さは、電子基板112の上から蓋104までの高さとなる。したがって、背の高い電子部品110bを実装するために充分な空間を確保することができる。これらのことから、筐体102内部の空間を有効に活用することが可能となり、装置全体の小型化と軽量化を図ることができる。
【0055】
また領域R2には広い空間130が形成されることから、MOS−FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などのように熱を発する部材を領域R2に配置することにより、放熱効果を期待することができる。これにより素子の温度上昇を抑え、加熱による暴走や故障を防止することができる。
【0056】
上記説明した如く、本実施形態にかかる可搬式電源装置によれば、蓋104を筐体102に取り付ける作業によって蓄電池120の固定を行うことができ、かつスペーサ118によって電子基板112と蓄電池120の間に電子部品(背の低い部品110a)を配置する空間128を確保しつつ小型化を図ることができる。したがって装置の組立および保守作業が容易となり、小型軽量で可搬性に優れた可搬式電源装置とすることができる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、蓄電池を収容した可搬式電源装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態における可搬式電源装置の代表的な構成を説明する図である。
【図2】本実施形態における可搬式電源装置の断面図である。
【図3】本実施形態における蓋を下方からみた斜視図である。
【図4】本実施形態における可搬式電源装置の組立図である。
【符号の説明】
【0060】
100 …可搬式電源装置
102 …筐体
104 …蓋
106 …ネジ
108 …押さえ板
110 …電子部品
110a …背の低い部品
110b …背の高い部品
112 …電子基板
118 …スペーサ
120 …蓄電池
122、124、126 …緩衝材
128、130 …空間
132 …穴
136 …インレット
138 …アウトレット
140 …スイッチ
142 …ハンドル
144 …発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面に開口部を有する筐体と、
前記開口部を封止する蓋と、
前記筐体内に収納された蓄電池と、
前記筐体内に収納された電子基板と、
前記蓄電池と前記電子基板の間に配置され、少なくとも一部が弾性を有する略柱状のスペーサと、
前記筐体内に配置され、該筐体の壁面との間で二つの軸方向に前記蓄電池を挟持する押さえ板と、
前記蓋の内側、および前記壁面の内側または前記押さえ板に貼付され、前記蓄電池に当接する緩衝材と、
を備え、
前記蓋を前記筐体に固定することで、前記蓄電池が前記筐体に3つの軸方向で固定されることを特徴とする可搬式電源装置。
【請求項2】
前記緩衝材は、前記壁面の内側または前記押さえ板の一方または両方に貼付されていることを特徴とする請求項1に記載の可搬式電源装置。
【請求項3】
前記押さえ板は、前記蓋の内側に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の可搬式電源装置。
【請求項4】
前記電子基板上を、背の高い部品を実装する領域と、背の低い部品を実装する領域と、に分割し、
前記背の低い部品を実装する領域に前記スペーサを介して前記蓄電池を配置することを特徴とする請求項1に記載の可搬式電源装置。
【請求項5】
前記スペーサは樹脂材料からなる円錐台形状であって、前記電子基板に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の可搬式電源装置。
【請求項6】
前記緩衝材は樹脂材料からなる板形状であって、前記壁面の内側または押さえ板の一部または全部に、一つの面につき一つ又は複数配置されることを特徴とする請求項1に記載の可搬式電源装置。
【請求項7】
前記押さえ板は、断面L字形状のアングル材であって、前記蓄電池の角に当接することを特徴とする請求項1に記載の可搬式電源装置。
【請求項8】
前記筐体はアルミニウム製であり、前記押さえ板は鉄系合金であることを特徴とする請求項1に記載の可搬式電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−123281(P2010−123281A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293407(P2008−293407)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】