説明

可撓性リーフレットを有する人工心臓弁

本願発明は、人工心臓弁(10)に係る。当該人工心臓弁は、中空で環状のステント(20)、及びステントに対して取り付けられる複数の可撓性のリーフレット(30a,30b,30c)を有する。1つ又はそれより多くの固定具構造(即ちクリップ(100a)は、リーフレットをステントに対して取り付けるよう使用されるため、縫合がかかる目的に対して使用される必要がない。固定具構造は望ましくは、当該弁の少なくとも実質的に全周囲にわたって環状に延在する。当該弁の使用中に動くリーフレットの一部分に接触することになり得る固定具構造の表面は、運動中にかかるリーフレットの一部分を有利に形成する支援をするよう形成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工心臓弁に係り、より特には、可撓性のリーフレット(葉状部、leaflets)及び該リーフレットを支持及び形成する(shape)支援をする為のステント構造を有する人工心臓弁に係る。
【背景技術】
【0002】
周知である既知の人工心臓弁の種類の1つは、複数(例えば3つ)の可撓性のリーフレットが取り付けられる中空で環状のステント構造を有し、リーフレットの自由エッジは交互に、ステントの内部において互いに向かって動いて互いに接触し得る(弁閉鎖状態)か、あるいは互いから離れて動き得る(弁開放状態)。この種類の弁において、リーフレットは、典型的には縫合によってステントに対して取り付けられる。縫合工程は大きな労力を要するものであり、結果もたらされる質は、個々の手術者の技術レベルに依存する。縫合は、リーフレットの材料を穿孔し、特には大きな作動応力(operational stress)を受ける場所に置かれるときに、応力集中を潜在的に引き起こし得る。縫合によって加えられる張力は制御されず、縫合接着の場所におけるリーフレットの局所形状に影響を与え得る。かかる要因の全ては、装置の寿命に悪影響を及し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明によれば、1つ又はそれより多くの固定具構造(クリップ状のものであり得る)は、人工心臓弁の可撓性リーフレットを弁のステント構造に対して固定するよう縫合の代わりに使用される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
例えば、弁のリーフレットのうちの1つの一部分は、ステントの2つの環状に近接した交連領域間においてステントの血液流出エッジ(blood−outflow edge)の上方に設置され得る。固定具構造は、かかる2つの交連領域間において少なくとも実質的に環状に延在し、かかる2つの交連領域間におけるステント血液流出エッジに結合するよう形成され、リーフレットをステントに対して固定するようリーフレットの上述された部分の上方に与えられ得る。ステント流出エッジ部及び固定具構造は、相互係合するよう形成され得(可能な場合はリーフレット材料を介在することを通して)、それによって固定具構造は、ステントにおいて保持される。弁の使用中に動くリーフレットの一部によって接触され得る固定具構造の表面は、該リーフレットの動作に有益な影響を及すよう形成され得る。上述された構造及び措置の全て又は複数は、弁のリーフレットの全てに対して使用され得る。
【0005】
本発明の更なる機構(特性)、性質、及び多種の利点は、添付の図面及び以下の詳細な説明からより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明に従った部分的に組み立てられている人工心臓弁の実施例の簡略化された斜視又は等角図である。
【図2】図1中の線2−2に沿って取られた簡略化された断面図である。
【図3】本発明に従った他の実施例の代表的な部分の簡略化された斜視又は等角図である。
【図4】図3中の線4に沿って全般的に取られた他の簡略化された斜視又は等角図である。
【図5】図3中の線5に沿って全般的に取られた更に他の簡略化された斜視又は等角図である。
【図6】本発明に従った他の実施例の一部を図示する簡略化された立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、部分的に組み立てられた状態にある本発明の実施例を示す。図2は、完全に組み立てられたかあるいは完成された図1中の一部を介する断面図を示す。図3−5は、本発明に従った1つの構成要素(即ち、図1及び2中に示されるリーフレット取付け固定具100aの代わりに使用され得る典型的なリーフレット取付け固定具200a)の他の実施例を示す。リーフレット取付け固定具100(図1及び2)及び200(図3−5)は互いに対して代替的であるが、いずれの所定の弁においても、リーフレット取付け固定具の全てに対して類似した設計が使用される傾向がある。図1及び2における機構と概して同様である図3−5における機構は、図1及び2における対応する機構の参照符号から100を増大された参照符号を有する。例えば、図2中の機構120並びに図3及び5中の機構220は、互いに概して類似する。図示される多種の構成要素はこれより、以下の詳細な説明において記載されるであろう。
【0008】
図1及び2に示される通り、典型的な人工心臓弁10は、中空で環状のステント構造20を有する。ステント20は、血液流入エッジ(blood−inflow edge)22(図1及び2中に示される下方エッジ)を備える。ステント20の他方(上方)の端部は、血液流出エッジ24であり、リーフレット材料(即ち、リーフレット30a,30b,及び30cの一部32)によって覆われる。完成された弁において、リーフレット材料32は、固定具100によって覆われる(図1中、1つのみの典型的な固定具100aが適所にある)。故に、固定具100の上方エッジ又は表面110は、完成された弁10の実際の血液流出エッジを構成する。
【0009】
弁10の内部は、3つの可撓性のリーフレット30a,30b,及び30cを有する。リーフレット30の各々は、可撓性材料のシートである。リーフレットとしての使用に適切である可撓性材料の複数の例は以下の通りである: (1)動物又はヒト組織由来の材料(例えば、心膜、心臓弁、静脈弁、硬膜、小腸粘膜下組織)、(2)生物学的合成材料又は組織工学材料(例えば、コラーゲン、線維芽細胞ポピュレーテッドマトリクス(fibroblast populated matrix)、幹細胞ポピュレーテッドスキャフォールド(stem cell populated scaffold)、内皮細胞シード材料(endothelial cell seeded material)、並びに、(3)高分子材料(例えば、シリコン、ポリウレタン、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、高分子注入ファブリックメッシュ)。また、かかるリストは、単なる実例であり、網羅的なものではない。本願において使用される「可撓性材料」という用語は、かかるリストからのもの等である適切な材料、具体的に列挙されていない機能的に類似する材料、及びそれらの組合せを有する。
【0010】
各リーフレット30は、リーフレットの一部分32がステントの3つの交連領域26のうち環状に近接する2つの間において少なくとも実質的に連続的にステント20の血液流出エッジ部24の上方に設置され得るよう、形成される。続いて固定具100の夫々は、リーフレットをステント20に対して適所に固定するよう、(やはり交連領域26のうち環状に近接する2つの間において少なくとも実質的に連続的に)かかる各リーフレット部分32の上方に設置され得る。(エッジ部32は、便宜上、本願において固定エッジとも称される。)リーフレット30は更に、ステント20に対して固定されないエッジ34が弁の閉鎖状態を与えるために図1に示される通りステント20の内部において集まる(come together)ことができるよう、形成される。(エッジ34は、本願において便宜上、自由エッジとも称される。)リーフレット30は、十分に可撓性であるため、弁の流入側における血圧が弁の流出側における血圧を上回る(弁の使用中)とき、リーフレット30の自由エッジ34は、血液が弁を通過し得るよう離れて動き得る。弁の流入側における血圧が弁の流出側における血圧より大きくないときには、自由エッジ34は、再度集まり、血液が弁を通って逆流することを防ぐ。
【0011】
固定具100の各々は、細長い流路状部材である(あるいは流路状部分を有する)。各流路の内部表面は、リーフレットによって覆われるステント20の上方部分が流路において受容されるように形成される。加えて、各流路の内部表面は、近接するステント及びリーフレット部分上への固定具100の圧迫を容易にするよう、またその後、受容されるステント及びリーフレット部分からの固定具の取外しに抵抗するよう、形成される。
【0012】
まず、ステント及びリーフレット部分上への固定具100の圧迫を容易にする機構に関して、流路の下方及び半径方向外側部分120は、傾斜された引込みランプ又はカム形状を備える。流路の他側においては、流路の下方及び半径方向内側部分130は、隆起ビード(raised bead)形状を備える。下方から見ると、表面120及び130は、最初は向斜(互いに向かって傾斜)されている。したがって、固定具の流路において受容されるべきステント及びリーフレット部分上へと固定具100が下行することが所望されるとき、表面120及び130のカムは流路の2つの側部を離し(surfaces 120 and 130 cam the two sides of the channel apart)、固定具は、ステント20の拡大されたビード状の上方部分28にわたって下行し得る。ステントのビード28の最大寸法D1は(弁10の半径方向(あるいは弁の血流軸に対して横断方向)である方向において)、固定流路表面120及び130の間の同一の方向における最小寸法D2より大きい。言い換えれば、ステント及びリーフレット部分28及び32が流路に入るために通らなければならない流路入口又はスロートは、該ステント及びリーフレット部分の幅(寸法D1)より小さいかあるいは狭い(寸法D2)。したがって、固定具流路の側部は、固定具100がかかるリーフレット及びステント機構にわたって適合するよう(fit down over)、機構28及び32によってカムで離され(cammed apart)なければならない。各固定具100における流路の内側表面は、望ましくは潤滑であり且つ鋭いエッジを有さず、構成要素28及び32上への固定具の潤滑な適合を容易にし、またリーフレット部分32のその後の切断(cutting)を回避するようにする。ステントビード28の外側表面もまた、同様の理由により潤滑であり且つ鋭いエッジを有さない。固定具100は望ましくは、流路の側部が上述された通り離れて動くよう、また、表面120及び130間におけるスロートがリーフレット及びステント部分32及び28にわたって圧迫した後に互いに向かって弾性的に戻って動くよう必要である範囲で、弾性的に変形し得る材料を有して作られる。
【0013】
また、各固定具100における流路の機構、及びステント上に設置された後に固定具100の取外しに抵抗するよう協働するステントビード28の特性に関して、固定具機構120の上方又は「後背(“back”)」部121は、弁の血流軸に対して横断方向である。表面121は、弁の血流軸に対して横断方向であるステントビード28の表面29aに対面する。したがって、固定具100がステント20上へと押し下げられた後に、固定具表面121は、固定具がステント(及びステントと固定具との間において捕捉されるリーフレット部分32)から外れることを防ぐよう、ステントビード表面29aの下方においてラッチする(latches)。固定具ビード130の上方又は後背部は同様に、ステントビード28の対向する表面29bと協働し、ステント及びリーフレット部分28及び32からの固定具100の取外しに抵抗する支援を追加的にする。特には、表面29bは、該表面に沿って上方向に動く際に(全体的に弁の)内方向に傾斜され、該表面に沿って上方向に動く際にビード130の後背部の内方向傾斜を補完する。ステント20の両側上におけるラッチ作用は(図1及び2中の固定具100における流路に対する入口の両側上における内方向に突出する表面120及び130と同様に)任意である、ことが留意される。その代わりに、図3−5によって示される代替的な実施例が与える通り、かかるラッチ作用をステントの一側上においてのみ有することは十分であり得る。故に、図3−5において、表面230は比較的潤滑であり、構造220のみは、ラッチするよう与えられる。
【0014】
組み立てられた要素20及び100の間における「適合(“fit”)」又はクリアランスは、リーフレットがかかる要素間において存在し得るよう、また、リーフレット30を要素20及び100に対して適所にしっかりと保持するよう十分な圧力をリーフレット部分32に対して加えるよう、十分である。上述された構造上の機構(特徴)のうち複数は、要素20及び100に対するリーフレット30の固定を支援し得る。かかる機構は、(1)要素20及び100の間を通る際にリーフレット部分32がとる比較的複雑な経路、(2)各固定具が要素28及び32にわたって押し付けられる際に弾性的に離れるよう屈折した後に流路の側部が互いに向かって弾性的に戻るよう動くように、固定具100を構成すること(かかる弾性は、組み立てられた弁におけるリーフレット部分32に対して圧力を加える)、及び、(3)121及び29a等である補完表面(complementary surfaces)間におけるラッチ作用(該ラッチ作用は、例えばステントビード24の上部と固定具流路の最上方表面との間において、リーフレット部分32に対して追加的な圧力を加え得る)、を有する。
【0015】
固定具100の使用は、リーフレット30をステント20に対して保持するための縫合の必要性を回避又は低減し得る、ことが留意される。上述された実施例においては、3つの固定具100が使用される。各固定具100は、ステント20の1つの交連領域26から他の環状に近接する1つの交連領域まで少なくとも実質的に連続的に延在する。したがって、各固定具100は、リーフレット30の夫々をステント20に対して固定するよう要求される仕事(作業、work)の少なくとも実質的に全てを行なうことができる(即ち、リーフレットの一部分32の少なくとも実質的に全てを覆い、ステントに対して固定することによって)。その長手方向において、各固定具100は、間において固定具100が使用される2つの交連領域26間でステント20の上方エッジに追随するよう形成される(あるいはそのように形成された一部分を有する)(例えば、他の実施例に対して1つの典型的な固定具200aの長手方向形状を示す図3−5を参照のこと)。各固定具100又は200は、関連付けられるリーフレットの一部分32をステント20の上方部分に対してクリップするよう、比較的長いクリップとして考えられ得る。固定具100又は200は、各リーフレットの一部分32の長さに沿って幅広く分布され得るリーフレット30に対する固定力を加えることができる。例えば、この固定力は、各リーフレットの一部分32の長さに沿って均等又は実質的に均等であり得る。これは、縫合材料がリーフレット材料を通過する離間された場所において固定力を集中させる傾向がある縫合接着とは対照的である。固定具100又は200はまた、ステント20に対するリーフレットの最終(長期的)固定を目的とするリーフレット30の穿孔を避けることができる。リーフレット固定力の量及び分布は、構成要素20及び100又は200等の(望ましくは自動化又は少なくとも大半が自動化された)製造の機能(function of manufacture)であり、縫合によるリーフレット固定の場合におけるような操作者の技能又は熟練度によるものではない。したがって、より均等であり且つ反復可能な結果は達成され得る。
【0016】
各固定具100又は200は、弁を介する血液流の軸の周囲におけるステント20の弧に追随するよう、また、環状に近接する一組の交連領域26の間におけるステント20の流出エッジ24の下降及び上昇曲率(down−and−up curvature)に追随するよう、その長さに沿って湾曲される。この最後に言及された曲率は、ステント20が各交連領域26において「高い」が、その流出エッジ24は環状に近接する交連領域の各組の間で落ちる、という事実によるものである。
【0017】
所望に応じて、複数の固定具100又は200は、環状又は実質的に環状である1つの固定具構造へと組み合わされ得る。
【0018】
本発明の他の有利な特性は、固定具100等の下方及び半径方向内側表面が多種の方途においてリーフレット動作及び/又は性能に影響を及すよう形成され得る、ことである。固定具表面の関連部分は、図2中の参照符号140によって全般的に図示される。(図3−5中の表面240は、ここで説明される点において表面140とは異なる。したがって図3−5は、ここで説明される点が任意であり、所望されない場合は有される必要がない、ことを説明するものである。)
表面140がどのようにリーフレット動作に影響を及ぼすよう形成及び/又は位置付けされ得るかに関する一例として、該表面は、リーフレットが弁を開放及び閉鎖するよう曲がる際の場合よりも大きな範囲にわたって関連付けられるリーフレット30の近接する部分の湾曲を分布するよう形成され得るか、あるいは丸くされ得る。まず弁が閉鎖されるときの形状に関して、表面140の曲率半径(固定具100の横断面である平面における(例えば、図2において斜行線で図示される通り))は、夫々のリーフレット30aの近接する部分の曲率半径より多少小さくなり得る。かかる表面140及びリーフレット30aの湾曲は、ステント20に向かう方向において互いに対して収束し、ステントから内方向に動く際に徐々に互いから分かれる。リーフレット30aが開放し始める際、更なるリーフレットは、(ステント20から内方向において)更なる表面140と接触し始める。言い換えれば、より多くのリーフレット30aは、表面140に対して巻き上がる(rolls up against)。閉鎖リーフレット30aの近接する部分の曲率半径より小さいが、開放リーフレット30aの一部の曲率半径より大きい(表面140がない場合)曲率半径を表面140に与えることによって、表面140は、リーフレットのこの部分の屈曲をより大きなリーフレットの該部分にわたって分布するよう使用され得る。これにより、リーフレット30aの屈曲を保持又は湾曲等であり得るものから変える(convert flexure of leaflet 30a from something that can be like folding or creasing)支援をし、その代わりに該屈曲をより幅広く分布させ、それによって局所的に激しい(severe)ものではなくする。このことは、リーフレットの耐用年数を延ばし得る。固定具100の下方及び半径方向内側表面は、所望される通りにリーフレット動作及び/又は作動に有利な影響を与えるよう、所望される通りに形成され得る。
【0019】
上述されたうちの少なくとも複数を要約すると、ステント20の流出リム24に合致されるリーフレット取付け固定具100又は200は、リーフレットを穿孔することなく可撓性のリーフレット30をステントに対して取り付けるよう使用され得る。固定具100又は200は、製造工程を単純化し、また一貫性のある信頼性の高い取付けを与える。固定具100又は200を使用することは、応力集中点を排除し、また、取付け箇所におけるリーフレット30の局所形状を形成することができ、荷重分配、接触制御、又は他の種類のリーフレット機能に対して望ましいリーフレット構造を更に促進する。
【0020】
図1は、リーフレット30a及びステント20を有して組み立てられた1つの種類の取付け固定具100aの一例を示す。この特定の組立体において、リーフレット30aは、ステント20の外側表面に対して最初に設置される。取付け固定具10は、流出リム24に沿って適所においてスナップ留めされ、リーフレットをステント上へとクランプ留めする(図2も参照)。取付け固定具100は、ステントに係合するよう機構(参照符号121等)、並びに「エンドエフェクタ」を備え得、取付けエッジに沿ったリーフレット構造を促進する。固定具100はまた、縫合又は他の接着手段を使用してステント20に対して更に固定され得る。係合機構(参照符号121/29a等)及びエンドエフェクタ(参照符号140等)の構成は、固定具100の長さに従って変わり得る。固定具は、ステント20の流出リム24に沿って設置される連続的な単一片、又は複数片であり得る。固定具100はまた、構造上、取付け上、又は他の目的で戦略的に位置決めされたカットアウトを備え得る。固定具200は、固定具100に関して上述された機構のうちの少なくとも複数に類似する機構を備え得る固定具の他の例である。
【0021】
固定具100又は200は、金属、重合体、所望される物理的及び化学的特性を有する化合物等である適切な材料を有して作られ得る。固定具100又は200の表面は、血液適合性、細胞接着、及び/又は組織被覆を強化するよう多種の方法を有して加工され得る。
【0022】
図6は、本発明に従った固定具構造の修正に関する複数の可能性を示す。200番台の参照符号は、異なる参照符号の過度の増大を避けるために図6においても使用される。図6中、固定具200’は、組み立てられた弁の周囲全てに延在する1つの環状構造である。この環状構造は、3つの部分200a、200b、及び200cを備え、該部分の各々は、図3−5中の固定具200aと多少類似し得る。しかしながら、図3−5に示されるものとの相違は、固定具構造200’の流路部分が前の図におけるように連続的ではなく中断される、という点である。故に、固定具200’の流路構造は、固定具の流出エッジ部210に沿って互いから離間され複数のセグメント250を有する。環状に近接する流路セグメント250は、流路が中断又は省略されている空隙260によって互いから離間される。流路セグメント250の各々は、連続的流路の実施例に対して前述されたような断面形状を備える。故に各流路セグメント250は、弁リーフレットの近接する部分を弁ステントの近接する部分に対して保持するようクリップのように作動する。流路セグメント250は、たとえリーフレット固定流路構造が前述された実施例におけるように連続的ではないとしても、十分な数、並びに、弁の周囲全てにおけるリーフレットに対する優れた固定を与える十分な環状範囲及び環状分布を有して与えられる。例えば、流路セグメント250は、望ましくは流路セグメント間における空隙260の平均環状範囲よりも環状範囲においてより大きく、少なくとも平均的である。故に流路セグメント250は、集合的に望ましくは組み立てられた弁の流出エッジに近接するリーフレット材料の環の半分より多くを覆う。実質的に連続的であるか、あるいは図6と合わせて説明されたような特徴を備えるセグメントを備える流路構造を有する固定具又はクリップ構造100、200、又は200’は、弁ステントの血液流出エッジの上方に設置されるリーフレットの一部分を実質的に覆い得るようにされ得る。かかる固定具又はクリップ構造100、200、又は200’はまた、間にリーフレットが配置される交連領域間において少なくとも実質的に連続的にリーフレットを弁ステントに対して固定するようにされ得る。
【0023】
前述は、本発明の原理の単なる例証であり、多種の修正は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱せずに当業者によって行なわれ得る、ことが理解される。例えば、本発明は、環状方向において特定の方途で波状にされるかあるいはうねっている血液流出エッジ24/110及び3つの交連領域26を備える3リーフレット弁に関して説明されるが、本発明に従った弁は代替的に、異なる数のリーフレット、異なる数の交連部、及び/又は異なる流出エッジ構造を備え得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁であって、
血液流出エッジを備える中空で環状のステント構造と、
該血液流出エッジの夫々関連付けられる一部分の上方に設置される一部分を各々が備える、複数のリーフレットと、
該リーフレットのうち少なくとも1つの前記一部分を実質的に覆い、該リーフレットの前記一部分を前記ステント構造に対して固定する、クリップ構造と、
を有する人工心臓弁。
【請求項2】
前記血液流出エッジ及び前記クリップ構造は、前記クリップ構造を前記ステント構造に対して固定するための相互係合形状を有する、
請求項1記載の人工心臓弁。
【請求項3】
前記リーフレットの材料は、前記相互係合形状間において介在される、
請求項2記載の人工心臓弁。
【請求項4】
前記相互係合形状は、前記ステント構造上における前記クリップ構造の設置を容易にするよう、また、その後前記ステント構造からの前記クリップ構造の取外しに抵抗するよう、形成される、
請求項3記載の人工心臓弁。
【請求項5】
前記クリップ構造は、前記ステント構造上における前記クリップ構造の設置中に弾性的に変形するよう、また、その後前記ステント構造に対する前記リーフレットにクランピング圧力を弾力的に加えるよう、構成される、
請求項4記載の人工心臓弁。
【請求項6】
前記クリップ構造は、当該人工心臓弁の使用中に動く前記リーフレットの一部分によって接触され得る表面部分を有する、
請求項1記載の人工心臓弁。
【請求項7】
前記クリップ構造の前記表面部分は、当該人工心臓弁の使用中に前記表面部分に接触する前記リーフレットの前記一部分の屈曲の曲率半径を増大させるよう形成される、
請求項6記載の人工心臓弁。
【請求項8】
人工心臓弁であって、
互いから離間される複数の交連領域を周囲において有する血液流出エッジを備える中空で環状のステント構造と、
複数のリーフレットと、
クリップ構造と、
を有し、
前記複数のリーフレットの各々は、前記交連領域のうち2つの環状に近接する交連領域の夫々の組の間において実質的に連続的に前記血液流出エッジの上方に設置される一部分を備え、
前記クリップ構造は、(a)前記組の1つにおける前記交連領域間において実質的に連続的に延在し、(b)該交連領域間において前記血液流出エッジの前記一部分の上方において設置される前記リーフレットの前記一部分の上に重なり、(c)前記リーフレットを前記ステント構造に対して固定する、
人工心臓弁。
【請求項9】
前記ステント構造及び前記クリップ構造は、前記クリップ構造を前記ステント構造に対して固定するための相互係合形状を有する、
請求項8記載の人工心臓弁。
【請求項10】
前記リーフレットの材料は、前記相互係合形状間において介在される、
請求項9記載の人工心臓弁。
【請求項11】
前記相互係合形状は、前記ステント構造上における前記クリップ構造の設置を容易にするよう、また、その後前記ステント構造からの前記クリップ構造の取外しに抵抗するよう、形成される、
請求項9記載の人工心臓弁。
【請求項12】
前記クリップ構造は、前記ステント構造上における前記クリップ構造の設置中に弾性的に変形するよう、また、その後前記ステント構造に対する前記リーフレットにクランピング圧力を弾力的に加えるよう、構成される、
請求項11記載の人工心臓弁。
【請求項13】
前記クリップ構造は、当該人工心臓弁の使用中に動く前記リーフレットの一部分によって接触され得る表面部分を有する、
請求項8記載の人工心臓弁。
【請求項14】
前記クリップ構造の前記表面部分は、当該人工心臓弁の使用中に前記表面部分に接触する前記リーフレットの前記一部分の屈曲の曲率半径を増大させるよう形成される、
請求項13記載の人工心臓弁。
【請求項15】
人工心臓弁であって、
互いから離間される複数の交連領域を周囲において有する血液流出エッジを備える中空で環状のステント構造と、
複数のリーフレットと、
固定具構造と、
を有し、
前記複数のリーフレットの各々は、前記交連領域のうち2つの環状に近接する交連領域の夫々の組の間において実質的に連続的に前記ステント構造への取付けに対して構成され、
前記固定具構造は、間においてリーフレットが取付けに対して構成される前記交連領域の前記組における前記交連領域間において少なくとも実質的に連続的に前記リーフレットのうち少なくとも1つを前記ステント構造に対して固定する、
人工心臓弁。
【請求項16】
前記固定具構造は、前記交連領域の組における前記交連領域間において少なくとも実質的に連続的に延在する、
請求項15記載の人工心臓弁。
【請求項17】
前記ステント構造及び前記固定具構造は、前記固定具構造を前記ステント構造に対して固定するための相互係合形状を有する、
請求項15記載の人工心臓弁。
【請求項18】
前記リーフレットの材料は、前記ステント構造と前記固定具構造との間において介在される、
請求項15記載の人工心臓弁。
【請求項19】
前記固定具構造は、当該人工心臓弁の使用中に動く前記リーフレットの一部分によって接触され得る表面部分を有する、
請求項15記載の人工心臓弁。
【請求項20】
前記固定具構造の前記表面部分は、当該人工心臓弁の使用中に前記表面部分に接触する前記リーフレットの前記一部分の屈曲の曲率半径を増大させるよう形成される、
請求項19記載の人工心臓弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−521227(P2010−521227A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553611(P2009−553611)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/003252
【国際公開番号】WO2008/112243
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(500232466)セント ジュード メディカル インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】