説明

可撓性内視鏡の挿入部

【課題】挿入部に通電をすることなく挿入部可撓管の可撓性を任意に変化させて、大腸等のように曲がりくねった管腔臓器や体腔内の深部等に容易に挿入することができる可撓性内視鏡の挿入部を提供すること。
【解決手段】挿入部可撓管11内の全長にわたる範囲又は一部の範囲に、磁場の強さに対応して硬さが変化する磁性流体15を配置し、挿入部可撓管がおかれた環境の磁場の強さが変化すると挿入部可撓管11の可撓性が変化するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は可撓性内視鏡の挿入部に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡を大腸等のように曲がりくねった管腔臓器内に挿入する場合や、その他の部位でも体腔内の深部に挿入する場合には、挿入の状況に応じて挿入部可撓管の可撓性を任意に変えることができるようにすると挿入操作が容易になることがよく知られている。
【0003】
そのような機能を有する内視鏡として従来は、通電をすることにより硬さが変化するゲル状物質を挿入部可撓管内に配置して、挿入部可撓管の可撓性を任意に変化させることができるようにしたものがある(例えば、特許文献1)。また、形状記憶合金の特性を利用したもの等もある(例えば、特許文献2、3)。
【特許文献1】特開平5−176986
【特許文献2】特開昭62−97526
【特許文献3】特開平2−257907
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来の発明においては、挿入部可撓管内に配置されたゲル状部材に通電する必要があり、形状記憶合金の特性を利用する特許文献2、3に記載された発明においては、形状記憶合金を加熱するために通電する必要がある。
【0005】
しかし、人体内に挿入される内視鏡の挿入部全体に通電をするということは電気安全性の見地から好ましいことではないので、できれば挿入部に通電されない構成をとることが望ましい。
【0006】
そこで本発明は、挿入部に通電をすることなく挿入部可撓管の可撓性を任意に変化させて、大腸等のように曲がりくねった管腔臓器や体腔内の深部等に容易に挿入することができる可撓性内視鏡の挿入部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の可撓性内視鏡の挿入部は、挿入部可撓管内の全長にわたる範囲又は一部の範囲に、磁場の強さに対応して硬さが変化する磁性流体を配置し、挿入部可撓管がおかれた環境の磁場の強さが変化すると挿入部可撓管の可撓性が変化するようにしたものである。
【0008】
なお、磁性流体が、挿入部可撓管内の軸線周りに形成された環状スペース内に充填されていてもよく、或いは、挿入部可撓管内に軸線と平行方向に配置された綱状体に染み込ませた状態に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、挿入部可撓管内の全長にわたる範囲又は一部の範囲に、磁場の強さに対応して硬さが変化する磁性流体を配置したことにより、挿入部に通電をすることなく挿入部可撓管の可撓性を任意に変化させて、大腸等のように曲がりくねった管腔臓器や体腔内の深部に容易に挿入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
挿入部可撓管内の全長にわたる範囲又は一部の範囲に、磁場の強さに対応して硬さが変化する磁性流体を配置し、挿入部可撓管がおかれた環境の磁場の強さが変化すると挿入部可撓管の可撓性が変化するようにする。
【実施例】
【0011】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は内視鏡10の外観を示す側面図であり、体腔内に挿入される挿入部可撓管11の先端には、挿入部可撓管11の基端に連結された操作部14からの遠隔操作により任意の方向に任意の角度だけ屈曲させることができる湾曲部12が連結され、観察窓や照明窓等が配置された先端部本体13が湾曲部12の先端に連結されている。そして挿入部可撓管11内の中間部分には、磁場の強さに対応して硬さが変化する磁性流体15が配置されている。磁性流体15として具体的には、例えばシグマハイケミカル社の商品E−600やLoad社の商品MRF−150等を用いることができる。
【0012】
図1は、挿入部可撓管11内における磁性流体15の配置状態の一例を示している。
挿入部可撓管11は、金属帯材を一定の径で螺旋状に巻いて形成された螺旋管16の外面に、金属細線材を編組して形成された網状管17を被覆し、最外面に可撓性外皮18を被覆して構成されている。
【0013】
19は、挿入部可撓管11に軸線周りに環状に密封配置された袋状部材であり、その前後両端部分は固着環20を介して螺旋管16の内周部に固定され、袋状部材19の内部に形成された環状スペースに磁性流体15が充填されている。21は、光学繊維束その他のいわゆる内蔵物である。
【0014】
磁性流体15は、おかれた環境の磁界の強さが大きくなるにしたがって分子が整列状態になることにより、図3に示されるように降伏応力(粘度)が増大し、その結果として硬さが大きくなる特性を有する。
【0015】
したがって、挿入部可撓管11が強い磁場内に置かれると、磁性流体15の部分が硬くなって、挿入部可撓管11の可撓性がその部分だけ低下し、磁場を弱くすると磁性流体15の部分の硬さが低下して、その部分の挿入部可撓管11の可撓性が増大する。
【0016】
そこで、内視鏡検査を行う場合には、図4に略示されるように、人体100の外部に例えば大きな電磁石状の磁場形成装置50を配置して、その駆動回路51で電流制御を行うことにより、人体100内に挿入された挿入部可撓管11に及ぼす磁場の強さを適宜調整して、挿入部可撓管11の(磁性流体15が配置されている部分の)可撓性を任意に変化させ、大腸等のように曲がりくねった管腔臓器や体腔内の深部に容易に挿入することができる。30と31は、ビデオプロセッサとテレビモニタである。
【0017】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば図5及び図6に示されるように、磁性流体15を挿入部可撓管11の全長にわたる範囲に配置してもよく、或いは、挿入部可撓管11の複数箇所に分けて配置してもよい。
【0018】
また、図7に示されるように、磁性流体を染み込ませた撚り線ワイヤ25(綱状体)を挿入部可撓管11内に軸線と平行方向に配置してもよい。26は、撚り線ワイヤ25を螺旋管16の内周面に固定する固定用座金である。
【0019】
そして、磁性流体を染み込ませた撚り線ワイヤ25を用いる場合には、図8に示されるように、複数の撚り線ワイヤ25を長手方向に部分的に重複するよう位置をずらして配置すれば、挿入部可撓管11の可撓性を段階的に変化させることも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施例の可撓性内視鏡の挿入部の側面部分断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の内視鏡の側面図である。
【図3】本発明の実施例に用いられる磁性流体の特性を示す線図である。
【図4】本発明の実施例の内視鏡の使用状態を示す略示図である。
【図5】本発明の第2の実施例の内視鏡の側面図である。
【図6】本発明の第3の実施例の内視鏡の側面図である。
【図7】本発明の第4の実施例の可撓性内視鏡の挿入部の側面部分断面図である。
【図8】本発明の第5の実施例の可撓性内視鏡の挿入部の側面部分断面図である。
【符号の説明】
【0021】
11 挿入部可撓管
15 磁性流体
19 袋状部材
25 撚り線ワイヤ(綱状体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部可撓管内の全長にわたる範囲又は一部の範囲に、磁場の強さに対応して硬さが変化する磁性流体を配置し、上記挿入部可撓管がおかれた環境の磁場の強さが変化すると上記挿入部可撓管の可撓性が変化するようにしたことを特徴とする可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項2】
上記磁性流体が、上記挿入部可撓管内の軸線周りに形成された環状スペース内に充填されている請求項1記載の可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項3】
上記磁性流体が、上記挿入部可撓管内に軸線と平行方向に配置された綱状体に染み込ませた状態に配置されている請求項1記載の可撓性内視鏡の挿入部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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