説明

可撓性容器のスパウト

【課題】可撓性の容器体Aの口部2に固定して収納物を取り出すためのスパウトBであって、収納物の残量の少ない効率の良い排出が可能な可撓性容器のスパウトを提案する。
【解決手段】容器体口部2に外周を溶着するスパウト本体10と、該本体の容器体内に垂設した誘導体11とを備えている。誘導体11はスパウト本体10の下端開口周縁部に配置した上縁中央部を前記本体10に連結した半管状をなし、両側に拡開可能な一対の拡開板部22を備えている。そして、必要に応じて拡開板部22を拡開して効率の良い収納物の取り出しを行える如く構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可撓性容器のスパウトに関する。
【背景技術】
【0002】
内部に例えば流動状の食品等を収納し、可撓性を備えた袋状の容器体に筒状のスパウトを融着固定した袋状容器(業界ではチアパック等の称呼が用いられている)が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記容器のスパウトは、上記袋状の容器体外部に露出させた筒状の口部に、容器体内部に垂下させた筒状のストロー部を一体に連設している。また、ストロー部外面上部から両側にそれぞれ板状に突設し、容器本体に熱溶着させた耳部を備えている。また、口部に着脱自在に螺着したキャップを備えている。更に、口部の先端には、流動状の食品を充填した後に、開口部を封止するシール材が設けられており、加圧加熱殺菌しても口部から内容物が漏れ出るのを防ぐことができるように構成している。これらのシール材は合成樹脂フィルムと金属箔とをラミネートしたフィルム等により形成され、口部の先端開口にヒートシールなどの手段により溶着される。
【0004】
また、この種の容器では流動状の食品等の収納物を口部から容器体内に充填した後前記シール材を溶着する。また、容器体内に於ける収納物の案内及び吸引効率向上等を目的としてストロー部の上部に孔を穿設しており、喫食時にはストロー下端開口或いは前記孔を介して収納物を口部より吸引する。
【特許文献1】特開2001−120240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のこの種の容器では、ストロー部の前記孔の存在により、安定した収納物の吸引が行えるとともに、残量の少ない効率の良い吸引が行える。しかしながら、ストロー部はその様な目的を達成するために保形性を必要とし、その結果、前記孔や下端開口がそれぞれ容器体内の略定位置に位置するため、容器体が可撓性材質で形成されているにも拘わらず、その吸引効率には未だ改良の余地が残されている。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、更に効率の良い収納物の吸引が可能であり、また、取り扱い操作も容易であり、構造も簡単で安価に製造することができる可撓性容器のスパウトを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段として、容器体Aの口部2に固定する筒状をなすスパウト本体10と、前記スパウト本体下面より前記容器体内に垂設した誘導体11とを備え、該誘導体11は、前記スパウト本体10の下端開口の周縁部に配置した上縁中央部を前記スパウト本体10に連結した半管状をなすとともに、両側にヒンジ21b を介して拡開可能な一対の拡開板部22を画成し、且つ、前記各拡開板部の拡開を防止する解除可能な拡開防止手段を備えて構成した。
【0008】
第2の手段として、前記第1の手段に於いて、前記誘導体11の上縁中央部をヒンジ21a を介して前記スパウト本体10に連結した。
【0009】
第3の手段として、前記第1の手段に於いて、前記誘導体11が、前記スパウト本体10にヒンジ21a を介して上縁を連結した縦長矩形状の基板23と、該基板23両側にヒンジ21b を介して一側縁をそれぞれ連結した縦長矩形状をなすとともに、前記基板23に対してそれぞれ所定のなす角度を備えた一対の前記拡開板部22とで構成した。
【0010】
第4の手段として、前記第1の手段又は第2の手段又は第3の手段に於いて、前記解除可能な拡開防止手段が、前記各拡開板部22上面を前記スパウト本体10下面に易切断性の連結部bを介して連結した。
【0011】
第5の手段として、前記第1の手段又は前記第2の手段又は前記第3の手段又は第4の手段に於いて、前記誘導体11に窓孔25を穿設した。
【0012】
第6の手段として、前記第1の手段に於いて、前記誘導体11が、前記スパウト本体10にヒンジ21a を介して上縁を連結した縦長矩形状の上部基板23a と、該上部基板23a と間隔をあけて下方に配置した縦長矩形状の下部基板23b と、前記上部基板23a の両側及び前記下部基板23b の両側にそれぞれヒンジ21b を介して一側縁上部及び一側縁下部を連結し、前記各上部基板23a 及び下部基板23b に対してそれぞれ所定のなす角度を備えた一対の拡開板部22a とからなり、前記各拡開板部のうち一方の拡開板部22a より内方へ前記基板23と平行する係止板部26を突設するとともに、他方の拡開板部22a より内方へ、他方の拡開板部22a の拡開時に前記係止板部26に当接係止され、且つ強制的に乗り越えが可能な係合板部27を突設し、また、他方の拡開板部22a より内方へ前記係止板部26を突設するとともに、一方の拡開板部22a より内方へ前記係合板部27を突設した。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスパウトは、誘導体11を備えているため、当初収納物が充満している状態ではその流路を形成してスムースな吸引が可能であり、また、収納物が減少した際には、各拡開板部22を拡開して誘導体11全体を扁平状にすることにより、残液の少ない、効率の良い吸引が行える。誘導体11は半管状であるため周囲の収納物を広範囲で吸引でき、しかも口部2からの吸引で充分な収納物の流動を発動させることが可能である。また、各拡開板部22の拡開を防止する拡開防止手段を備えているため、勝手に各拡開板部22が広がって円滑な吸引操作を阻害する等の不都合はなく、また、この拡開防止手段は解除が可能であるため、必要に応じて上記扁平状な状態とすることができる。また、誘導体11の上縁中央部をヒンジ21a を介してスパウト本体10に連結すれば、スパウト本体10に対して揺動が可能であり、その点からもより高い吸引効率に寄与する。
【0014】
また、スパウト本体10にヒンジ21a を介して上縁を連結した縦長矩形状の基板23と、該基板23両側にヒンジ21b を介して一側縁を連結するとともに、基板23に対してそれぞれ所定のなす角度を備えた一対の縦長矩形状の拡開板部22とで誘導体11を構成した場合には、必要に応じてまっ平らな誘導体状況を呈することが可能であり、残液の吸収効率をより向上することができ、また、誘導体11がヒンジ21a により揺動可能の構造の場合には更なる吸収効率の向上を図ることができる。
【0015】
更に、前記各拡開板部22上面を前記スパウト本体10下面に易切断性の連結部bを介して連結することにより解除可能な拡開防止手段としたものにあっては、容器体の外側から両拡開板部22を掴んで連結部bを切断すれば簡単に拡開板部22を拡開することができる。また、誘導体11の上端をヒンジ21a で連結させれば、連結部bを破断する方向へ拡開板部22を傾ける等の変動を行い易く、その点からも拡開し易い。
【0016】
また、誘導体11に窓孔25を穿設したものにあっては、該窓孔25を介して半管状の凹溝部分を流動する収納物の流れに合流して誘導体11裏面の収納物を同時に吸引でき、更に円滑な吸引を行える。
【0017】
また、前記誘導体11が、上部基板23a と、下部基板23b と、一対の拡開板部22a とからなり、係止板部26と、係合板部27とを備えたものの場合には、必要に応じて上記扁平状な状態とすることができるとともに、一旦扁平状に拡開した誘導体が係止板部26と係合板部27との係合で簡単にもとに戻らないという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明スパウトを使用した容器の一例を示し、該容器は、容器体Aと、スパウトBとを備えている。
【0020】
容器体Aは、可撓性のある袋状のものが好ましく採用でき、例えば、二枚のシートの周縁を融着等の手段で固着したタイプ、或いは箱型の所謂ガゼットタイプ、或いは横三角柱状の所謂スタンディングパウチタイプ等が採用でき、その他薄肉のブロー成形容器等の各種の可撓性容器が使用できる。この様な容器体は、例えば、合成樹脂の単独層或いは積層、或いは合成樹脂と金属薄膜層との積層等の可撓性を備えた材質を種々選択できる。そして、袋状の容器体Aの場合はその口部2にスパウト本体10を融着固定させる。容器体Aの口部2は主として上端部に位置するがこれに限られない。
【0021】
スパウトBは、スパウト本体10と、誘導体11とを備えている。両者は合成樹脂により一体に形成される。スパウト本体10は、前記容器体Aの口部2に外周を溶着固定する筒状をなし、外周下部には口部2の密な溶着を可能ならしめるために、平面視紡錘形状の帯状の融着外面aを突出形成している。また、融着外面a上方には一対のフランジ12を突設し、その更に上方外周に突条13及び螺条14を順次周設している。また、スパウト本体10にはキャップ15を螺着しており、前記螺条14に螺合する螺条16を内周に周設している。また、キャップ15の下端面には破断部17を介して切り取り可能な切取帯18を一体に形成して未使用を表現できる如く構成している。この切取帯18は内面より斜め上方へ突設した係合片19を周方向複数設け、各係合片19の先端部をそれぞれ前記突条13下面に係合させている。そして、キャップ15を強制的に螺脱方向に回動した際に前記破断部17が破断して切取帯18が分離され、キャップ15の螺脱が可能となるとともに、開封が確認される。尚、上記融着外面aはこの形状に限定されず、例えば、平面視楕円状をなす帯状融着面であっても、左右一対の板状突起の両側面であっても良い。
【0022】
誘導体11は、容器体A内の収納物を円滑に且つ効率良く吸引するために作用し、また、可撓性を備えた容器体Aの保形にも寄与する。本発明では、スパウト本体10の下端開口20の周縁部に配置した上縁中央部をヒンジ21a を介してスパウト本体10に連結した半管状をなしている。また、両側にヒンジ21b を介して拡開可能な一対の拡開板部22を画成している。具体的には、上縁を上記ヒンジ21a を介してスパウト本体10下面所定位置に連結した縦長矩形状の基板23と、該基板23の両側にそれぞれヒンジ21b を介して一側縁を連結するとともに、基板23に対してそれぞれ所定のなす角度を備えた一対の前記拡開板部22とから構成している。前記なす角度は、前記スパウト本体10の下端開口周縁に位置する如き所定の角度とし、この角度はある程度の自由度がある。図示例では、前記開口20後部に位置する基板23から左右対称に延設し、各々基板23とのなす角度を120°程度とっている。
【0023】
また、各拡開板部22の拡開を防止する解除可能な拡開防止手段を備えている。図1の例では、この拡開防止手段として、各拡開板部22上面を前記スパウト本体10下面に易切断性の連結部bを介して連結した。易切断性の連結部bの具体例としては、図示例の如く、両者間を細棒状の連結片24により連結することにより構成できるが、これに限られず、両者間を薄肉状に一体に連結することも可能である。
【0024】
また、本例では誘導体11に窓孔25を穿設している。この窓孔25は基板23を横断して左右両拡開板部22に至る横幅を有し、上下方向中央部に穿設している。尚、窓孔25の形状もこれに限られず、その数も複数設けても良い。
【0025】
上記の如く構成した容器1を使用する際には、例えば、キャップ15を外してスパウト本体10上端開口より容器体A内収納物を吸引する。収納物が少なくなった際には、容器体Aの上から連結部bを切断し、両拡開板部22を開いて扁平状にした後、容器体Aをスクイズしつつ残液を吸引する。尚、図5及び図6は連結部bの切断を説明する説明図であるが、図5(a) に示す如く、誘導体11はヒンジ21a により揺動するため連結部bがより切断し易くなる。
【0026】
また、図7から図11は、図1の例に於いて、他の誘導体11を用いた例を示すものである。該誘導体11は、ヒンジ21a を介して上縁をスパウト本体10に連結した上部基板23a と、該上部基板23a と間隔をあけて下方に配置した下部基板23b と、上部基板23a の両側及び下部基板の両側にそれぞれヒンジ21b を介して一側縁上部及び一側縁下部を連結し、各上部基板23a 及び下部基板23b に対してそれぞれ所定のなす角度を備えた一対の拡開板部22a とを備えている。
【0027】
また、前記各拡開板部22a のうち一方の拡開板部22a より内方へ前記各上部基板23a 及び下部基板23b と平行し、上部基板23a と連結した係止板部26を突設するとともに、他方の拡開板部22a より内方へ、他方の拡開板部22a の拡開時に前記係止板部26に当接係止され、且つ強制的な乗り越えが可能に係合板部27を突設している。また、他方の拡開板部22a より内方へ下部基板23b と連結した前記係止板部26を突設するとともに、一方の拡開板部22a より内方へ前記係合板部27を突設している。
【0028】
この様な誘導体11を備えた容器を使用する際には、例えば、前記と同様にキャップ15を外してスパウト本体10上端開口より容器体A内収納物を吸引する。収納物が少なくなった際には、容器体Aの上から各拡開板部22a を強制的に開いて各係合板部27を各係止板部26を強制的に乗り越えさせ、両拡開板部22a を開いて扁平状にした後、同様に容器体Aをスクイズしつつ残液を吸引する。
【0029】
尚、上記各例では、誘導体11の中央部に基板23或いは上部基板23a 、下部基板23b が存在する例を示したが、実質的に基板がない状態でV字状に両拡開板部を設ける形態も本発明は包含する。また、容器体Aとして袋状容器体の例について説明し、スパウト本体の外周を容器体の口部に溶着して固定する例を示したが、容器体がブロー成形容器等の場合には、その口部にスパウト本体を密嵌して固定する手段を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明スパウトの斜視図である。(実施例1)
【図2】本発明スパウトのキャップを外した状態の斜視図である。(実施例1)
【図3】本発明スパウトの一部切欠正面図である。(実施例1)
【図4】本発明スパウトの一部切欠側面図である。(実施例1)
【図5】本発明スパウトの拡開板部の拡開を説明する説明図である。(実施例1)
【図6】本発明スパウトの拡開板部の拡開を説明する説明図である。(実施例1)
【図7】本発明スパウトの誘導板を示す正面図である。(実施例2)
【図8】図7のA−A線に沿う縦断面図である。(実施例2)
【図9】図7のB−B線に沿う縦断面図である。(実施例2)
【図10】図7のC−C線に沿う縦断面図である。(実施例2)
【図11】本発明スパウトの誘導板を拡開した状態の縦断面図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0031】
10…スパウト本体,11…誘導体,21a ,21b …ヒンジ,22,22a …拡開板部,
23…基板,23a …上部基板,23b …下部基板,25…窓孔,26…係止板部,
27…係合板部,A…容器体,B…スパウト,b…易切断性の連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体Aの口部2に固定する筒状をなすスパウト本体10と、前記スパウト本体下面より前記容器体内に垂設した誘導体11とを備え、該誘導体11は、前記スパウト本体10の下端開口の周縁部に配置した上縁中央部を前記スパウト本体10に連結した半管状をなすとともに、両側にヒンジ21b を介して拡開可能な一対の拡開板部22を画成し、且つ、前記各拡開板部の拡開を防止する解除可能な拡開防止手段を備えてなることを特徴とする可撓性容器のスパウト。
【請求項2】
前記誘導体11の上縁中央部をヒンジ21a を介して前記スパウト本体10に連結してなる請求項1記載のスパウト。
【請求項3】
前記誘導体11が、前記スパウト本体10にヒンジ21a を介して上縁を連結した縦長矩形状の基板23と、該基板23両側にヒンジ21b を介して一側縁をそれぞれ連結した縦長矩形状をなすとともに、前記基板23に対してそれぞれ所定のなす角度を備えた一対の前記拡開板部22とで構成してなる請求項1記載のスパウト。
【請求項4】
前記解除可能な拡開防止手段が、前記各拡開板部22上面を前記スパウト本体10下面に易切断性の連結部bを介して連結してなる請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のスパウト。
【請求項5】
前記誘導体11に窓孔25を穿設してなる請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスパウト。
【請求項6】
前記誘導体11が、前記スパウト本体10にヒンジ21a を介して上縁を連結した縦長矩形状の上部基板23a と、該上部基板23a と間隔をあけて下方に配置した縦長矩形状の下部基板23b と、前記上部基板23a の両側及び前記下部基板23b の両側にそれぞれヒンジ21b を介して一側縁上部及び一側縁下部を連結し、前記各上部基板23a 及び下部基板23b に対してそれぞれ所定のなす角度を備えた一対の拡開板部22a とからなり、前記各拡開板部のうち一方の拡開板部22a より内方へ前記基板23と平行する係止板部26を突設するとともに、他方の拡開板部22a より内方へ、他方の拡開板部22a の拡開時に前記係止板部26に当接係止され、且つ強制的に乗り越えが可能な係合板部27を突設し、また、他方の拡開板部22a より内方へ前記係止板部26を突設するとともに、一方の拡開板部22a より内方へ前記係合板部27を突設してなる請求項1記載のスパウト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−56583(P2006−56583A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242560(P2004−242560)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】