説明

可染性ポリプロピレン繊維の染色方法

【課題】 可染性ポリプロピレン繊維の染色において、糸強度の低下を抑制し、また、ポリエステル繊維と複合された繊維製品では、ポリエステル繊維と類似の色相に染めることできる染色方法を提供するものである
【解決手段】 染色時の染色槽内の空気:水の割合が、容積比で3(空気):1(水)よりも水の割合が大きいことを特徴とする可染性ポリプロピレン繊維の染色方法。また、染色時の染料が、非キノン系分散染料であり、かつ、分子量が400以上の分散染料と400未満の同系色の分散染料を含むか、若しくは、親水基を有する分散染料と有さない同系色の分散染料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可染性ポリプロピレン繊維の染色方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン繊維は、比重が0.92と小さく軽い、熱伝導率が小さく暖かい、水分率が低く濡れないなどの優れた性能を有している。
【0003】
しかしながら、難染色性であり糸や織物等にした後には染めることができない、融点が160℃と低く染色仕上げ加工中に糸が溶解したり、劣化してしまうといった欠点を有していた。
【0004】
そこで、染色性を改善するため糸を改質する技術が種々知られている。例えばポリエステル成分を配合したもの(特許文献1)、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレートを配合したもの(特許文献2)、ビニル系単量体を配合したもの(特許文献3)、エチレンビニルアセテートを配合したもの(特許文献4)、染色促進剤を配合したもの(特許文献5)、ステアリン酸の金属塩(Ni、Zn、Alなど)を配合したものなど多数のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−2275
【特許文献2】特開2004−305086
【特許文献3】特開2001−262433
【特許文献4】特開2000−8223
【特許文献5】特開2008−533315
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらのものは染色性は改善されているものの、染色処理によって糸の強度が低下してしまい、衣服等に用いた場合に強度が不足するという問題を有していた。
【0007】
また、強度不足を補うため等の理由により、レギュラーポリエステル繊維と混紡、混繊、交織、交編等されたものの染色をおこなうと、可染性ポリプロピレン繊維には特定の色の染料がほとんど染着せず、レギュラーポリエステル繊維と可染性ポリプロピレン繊維では色相が全く異なるといった問題を有していた。
【0008】
そこで、本発明では上記課題を解決し、可染性ポリプロピレン繊維の染色において、糸強度の低下を抑制し、また、ポリエステル繊維と複合された繊維製品では、ポリエステル繊維と類似の色相に染めることできる染色方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記課題を解決するために、以下の構成を有するものである。
(1)染色時の染色槽内の空気:水の割合が、容積比で3(空気):1(水)よりも水の割合が大きいことを特徴とする可染性ポリプロピレン繊維の染色方法。
この染色方法によれば、染色時における糸強度の低下を抑制することができる。
【0010】
(2)染色時の染料が、非キノン系分散染料であり、かつ、分子量が400以上の分散染料と400未満の同系色の分散染料を含むか、若しくは、親水基を有する分散染料と親水基を有さない同系色の分散染料を含むことを特徴とする前記(1)記載の可染性ポリプロピレン繊維の染色方法。
この染色方法によれば、染色時の糸強度の低下を抑制しつつ、レギュラーポリエステル繊維と複合した場合においても類似の色相に染色することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る可染性ポリプロピレン繊維(以下、可染性PPという)は染色時の糸強度の低下を抑制し、衣服等の繊維製品に好適にもちいることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る可染性PPの染色方法について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の可染性ポリプロピレンの染色方法は、染色時の染色槽内の空気:水の割合が容積比で3(空気):1(水)よりも水の割合が大きい。
【0014】
可染性ポリプロピレン繊維とは、分散染料で染色ができるようにしたポリプロピレン繊維であり、上記のようにポリエステル成分を配合したもの、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレートを配合したもの、ビニル系単量体を用いたもの、エチレンビニルアセテートを配合したもの(特許文献4)、染色促進剤を配合したものなどが知られているがこれらに限定されるものではない。
【0015】
また、染色時の可染性PPの形状は、モノフィラメント、マルチフィラメント、スパン、織物、編物、不織布、綿、衣服等いかなる形態の繊維製品であってもよい。
【0016】
また、PP繊維は、ポリエステルなどの他の繊維と混紡、混繊、交織、交編などにより複合し、マルチフィラメント、スパン、織物、編物、不織布、綿、衣服等の形状の繊維製品とされていてもよい。
【0017】
染色方法としては、染色時の染色槽内の空気:水の割合が容積比で3(空気):1(水)よりも水の割合が大きい条件にて染色をおこなう。染色時に容積比にて3(空気):1(水)よりも空気の割合が水の割合に比べ多い場合は、染色処理により可染性PPの強度が低下する。好ましくは、染色時の染色槽内の空気:水の割合が容積比で1(空気):1(水)、さらに好ましくは1(空気):2(水)がよい。
【0018】
また、より好ましくは染色層内の空気を窒素や水蒸気に置換するとよりよい。
具体的な染色方法としては、染料を水の中に分散させた染色浴中にPP繊維を浸しながら染色をおこなう浴中吸尽法による染色方法が好ましい。
【0019】
用いる染色機としては、染色中、可染性PP全体を常に染色浴(染色液ということもある)中に浸漬することができるチーズ型染色機やビーム型染色機やドラム型染色機、また、染色中にPP繊維が染色浴中から空気中に出てしまうものであっても染色槽を密封し、新たな空気との接触を抑えたり、染色槽内を窒素や水蒸気で置換することができる高圧型液流染色機などを用いることができるがこれに限定されるものではない。
【0020】
染色時の染色温度としては、5〜30℃程度の常温から昇温し、100〜135℃にて染色するとよい。染色温度が100℃を下回ると可染性PPが十分染色されないおそれがある。また、135℃を超えると可染性PPが劣化し、繊維の強度が低下したり、各種染色堅牢度が低下するおそれがある。染色時間は、最高温度に達した後、1〜90分程度おこなうとよい。
【0021】
染色時の染色浴と可染性PPの浴比(質量比)は可染性PP:染色液=1:1〜1:100が好ましい。浴比で1:1よりも可染性PPが多いと染ムラが発生するおそれがあり、浴比が1:100よりも染色液が多いと染色液の温度上昇にエネルギーと時間がかかりコスト面より不利である。
【0022】
染色時に用いる染料は分散染料を用いることができる。また、スルホン基などを付加しカチオン染料可染性に変性した可染性PPを用いた場合にはカチオン染料、アミノ基などを付加し酸性染料可染性に変性した可染性PPを用いた場合には酸性染料を用いてもよい。
【0023】
なお、カチオン染料や酸性染料を用い染色する場合は、100℃未満の低温染色が可能なため、染色時の可染性PPの糸強度の低下が少ないが、本発明では100℃以上で染色される分散染料での染色時、さらに可染性PPとレギュラーポリエステル繊維(カチオン可染や常圧可染性に変性されていないポリエステル繊維)とが複合された繊維製品を、100℃以上の高温にて染色した場合においても、強度低下の抑制、染色堅牢度維持に効果を発揮する。
【0024】
なお、染色時には、染色浴中に、酢酸などの酸またはpH調整剤、均染剤、緩染剤、キャリア、紫外線吸収剤、SR剤、抗菌剤、消臭剤、親水化剤、制電剤などを添加してもよい。
【0025】
染色した後、必要に応じ、ソーピングを行えばよい。ソーピングは、水洗い、湯洗い、還元洗浄など染色濃度と必要な染色堅牢度に応じ行えばよい。また、水洗い、湯洗い時には必要に応じ、界面活性剤、アルカリなどを併用してもよい。
【0026】
可染性PPの形状が織物、編物など布帛状の場合には、染色された可染性PPは、シワ取りや密度調整のために仕上げセットを行うとよい。仕上げセット条件は、120〜150℃にて30秒〜10分程度行えばよい。
また、必要に応じ、紫外線吸収剤、SR剤、抗菌剤、消臭剤、親水化剤、制電剤、柔軟剤、撥水剤などを染色した後の可染性PPに付与してもよい。
【0027】
以上のようにして得られた染色された可染性PPは、染色後においても強度の低下が少なく、また、良好な染色堅牢度を有する可染性PPが得られる。
【0028】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について以下に説明をおこなう。
可染性ポリプロピレン繊維とレギュラーポリエステル繊維の複合品(以下、可染性PP/レギュラーPET複合品ともいう。)の染色時の染料が、非キノン系分散染料であり、かつ、分子量が400以上の分散染料と400未満の同系色の分散染料を含むか、若しくは、親水基を有する分散染料と親水基を有さない同系色の分散染料を含むことを特徴とする第1の実施の形態に記載の可染性ポリプロピレン繊維の染色方法。
【0029】
可染性PP/レギュラーPET複合品を分散染料で染色する場合、単一の染料、例えば赤色の染料単品にて染色する場合は、両者の濃度には多少差はでることはあるものの、色相面では可染性PP繊維もレギュラーポリエステル繊維もほぼ同一のため商品価値が大きく低下しない。
【0030】
しかしながら、例えば、複数の色の染料、例えば、青色と黄色の染料をもちいて染色をおこなった場合、レギュラーポリエステル繊維は緑色に染まり、可染性PPは黄色の染料がほとんど染まっておらず、青色に染まるといった現象が現れる。
【0031】
リバーシブル用途や杢調の繊維製品を要望されているときには商品価値はあるが、色合わせも困難であり、一般的な繊維製品としては、商品価値が低下してしまうおそれがあった。
【0032】
したがって、第2の実施形態では、染色による糸強度の低下を抑えながら、レギュラーポリエステル繊維と可染性PPを類似した色相に染色することが可能となる。
【0033】
本発明の可染性PPは第1の実施形態に記載のものを用いることができる。
また、レギュラーポリエステル繊維についても、第1の実施形態に記載のようにカチオン可染や常圧可染性に変性されていないポリエステル繊維をいい、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0034】
また、可染性PP/レギュラーPET複合品とは、可染性PPとレギュラーポリエステル繊維を複合し用いたマルチフィラメント、スパン、織物、編物、不織布、綿、衣服等の形状の繊維製品などいう。
【0035】
本発明に用いられる分散染料は、非キノン系のものが用いることができ、アゾ系、キノリン系、ニトロ系、クマリン系、メチン系、アミノケトン系などの分散染料をもちることができる。特に、アゾ系染料が堅牢度、カラーバリエーションの観点より好ましく用いられる。
【0036】
本発明では、上記の非キノン系分散染料の中でも、分子量が400以上の分散染料と400未満の同系色の分散染料を含むとよい。分子量が400以上の分散染料と400未満の同系色の分散染料は少なくとも1種類ずつ含む必要があるが、2種類以上含んでいてもよい。
【0037】
分子量400未満の非キノン系分散染料としては、Disperse Yellow 42(分子量 369)、Disperse Yellow 60(分子量 326)、Disperse Yellow 104(分子量 366)、Disperse Blue 165:1(分子量 389)、Disperse Blue 366(分子量 322)、Disperse Red 73(分子量 342)、Disperse Red 17(分子量 256)などが挙げられる。
【0038】
分子量が400以上の非キノン系分散染料としては、Disperse Yellow 160(分子量 418)、Disperse Yellow 163(分子量 416)、Disperse Red 323(分子量 454)、Disperse Red 343(分子量 438、410)、Disperse Red 111(分子量 432)、Disperse Blue 149(分子量 443)、Disperse Blue 266(分子量 481)、Disperse Orange 61(分子量 481)、Disperse Orenge 73(分子量 443)などが挙げられる。
【0039】
同色系とは、THE SOCIETY OF DYERS AND COLOURISTSから出されている「COLOUR INDEX」や(株)色染社からだされている「染色ノート」や染料メーカーから販売さている染料の商品名称にて赤色、青色、黄色等を参考に判断すればよい。
【0040】
また、染色時、非キノン系染料の中でも親水基を有する分散染料と親水基を有さない同系色の分散染料を含むとよい。親水基を有する分散染料と有さない同系色の分散染料は少なくとも1種類ずつ含む必要があるが、2種類以上含んでいてもよい。
【0041】
親水性基とは、水酸基、カルボキシル基、アミド基、スルホ基、アミノ基などが挙げられる。
【0042】
具体的な親水性基をもつ非キノン系分散染料としては、Disperse Yellow 3(水酸基)、Disperse Yellow 104(水酸基)、Disperse Yellow 160(水酸基)、Disperse Orenge 5(水酸基)、Disperse Blue266(アミド基)、Disperse Blue 165:1(アミド基)、Disperse Red 13(水酸基)、Disperse Red 17(水酸基)、Disperse Yellow 56(水酸基)、Disperse Yellow 60(水酸基)、Disperse Blue 106(水酸基)、Disperse Yellow 9(アミノ基)、Disperse Orange 29(水酸基)などが挙げられる。
【0043】
親水性基を持たない非キノン系分散染料としては、Disperse Yellow 163、Disperse Yellow 86、Disperse Orange 61、Disperse Orange 73、Disperse Red 54、Disperse Red 65、Disperse Blue 79、Disperse Blue 183、Disperse Blue 291などが挙げられる。
【0044】
また、分子量が400以上の分散染料と400未満の同系色の分散染料を含み、さらに、親水基を有する分散染料と有さない同系色の分散染料を含むものであってもよい。
【0045】
分子量が異なる同系色の分散染料、若しくは、親水性基を有する染料と有さない同系色の分散染料を配合し用いることで、複数の同系色(赤色ならば赤色、青色ならば青色、黄色ならば黄色)の染料がそれぞれ染まりやすい素材に分散して染着し、可染性PPまたはレギュラーポリエステル繊維のいずれか一方に特定の色の染料が集中して染着することを抑制する。
【0046】
そのため可染性PPとレギュラーポリエステル繊維との色相が大きくずれることを抑制し、繊維製品の表裏の色相の相違や杢感を抑え、より同色性に優れた繊維製品を提供することができる。
【0047】
また、染色時の温度、浴比(生地と染色液の質量比)、染色槽内の空気と水の容積比、ソーピング、染色機、仕上げ加工などは第1の実施形態と同様である。
【実施例】
【0048】
以下、本発明について実施例を挙げさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例での物性、堅牢度は以下の方法により測定を行った。
【0049】
(強度)
可染性PPの強度の測定は、試験布の破裂強度を測定し評価した。破裂強度は、JIS L1096 破裂強さ(A法 ミューレン法)に準じて測定をおこなった。
(耐光堅牢度)
JIS L0842(第3露光法)に準じて測定をおこなった。照射面は、表面(主としてレギュラーポリエステル繊維)と裏面(主として可染性PP)それぞれ照射をおこなった。
【0050】
(洗濯堅牢度)
JIS L0844(A―2法)に準じて測定をおこなった。なお、添付布は、綿、ナイロンを用いた。汚染の判定は最も汚染の強い添付布でおこなった。
(摩擦堅牢度)
JIS L0849に準じ、摩擦試験機2形(学振形)を用い測定をおこなった。
(ドライクリーニング堅牢度)
JIS L0860に準じて測定をおこなった。なお、添付布は、多繊交織布(交織1号)を用いた。汚染の判定は最も汚染の強いものでおこなった。
【0051】
(実施例1)
可染性PPとして84デシテックス24フィラメント53.8質量%を用い、レギュラーポリエステル繊維として84デシテックス72フィラメント46.2質量%を用い、二層構造編地(メッシュ、表面にレギュラーポリエステル繊維、裏面に可染性PPを配置)を編み立てし、精練及び予備セットをおこなった(可染性PP/レギュラーPET複合品)。
次に、下記の条件にて染色をおこなった。
【0052】
黄色染料 0.4%omf
配合染料
Disperse Yellow 42、分子量 369、親水性基 なし。
Disperse Yellow 163、分子量 416、親水性基 なし。
【0053】
青色染料 1.0%omf
配合染料
Disperse Blue 149、分子量 443、親水性基 あり(水酸基)。
Disperse Blue 125、分子量 409及び588、親水性基 なし。
【0054】
空気:水の割合(容積比)=1:4
浴比 PP繊維:染色液(質量比)=1:20
染色温度×時間 120℃×30分
酸 酢酸0.25g/l、
分散剤 ニッカサンソルト7000(日華化学製) 0.25g/l
染色機 ドラム型染色機(染料役者、(株)オノモリ製)
【0055】
上記の条件で染色した後、ハイドロサルファイト1g/l、ソーダ灰1g/lにて還元洗浄を90℃で10分間おこなった。
【0056】
次に、130℃にて3分間仕上げセットをおこなった。
得られた可染性PP/レギュラーPET複合品は、可染性PPが配置された裏面は少し色が薄いが両面とも緑色に均一に染色されていた。仕上げセット後の可染性PP/レギュラーPET複合品の密度はコース53本/2.54cm、ウエル48本/2.54cmであった。目付け172g/mであった。
破裂強度は、978kPaであり、比較例1に比べ強度低下は抑制されていた。染色処理をおこなわなかったもの破裂強度は1010kPaであった。
【0057】
また、染色堅牢度も下記のように良好であった。
耐光堅牢度 表面4級以上、裏面3級以上
摩擦堅牢度 乾 4級以上/湿 4級以上
洗濯堅牢度 変退色 4―5級、汚染(ナイロン) 4−5級、液汚染 4級
ドライクリーニング堅牢度 変退色 4―5級、汚染(ナイロン) 4−5級、液汚染 4級
【0058】
(比較例1)
染色槽内の空気:水の割合(容積比)を3:1と、空気の割合を大きくした以外は実施例1と同様にし染色処理および仕上げ処理をおこなった。
得られた可染性PP/レギュラーPET品の染色状態は、実施例1と同様に良好であったが、破裂強度は、863KPaと実施例1と比較し低下していた。
【0059】
(比較例2)
使用した染料を以下のように変更した(同系色の染料を複数含まない)以外は実施例1と同様にし染色処理および仕上げ処理をおこなった。
得られた可染性PP/レギュラーPET複合品は、黄色の染料、青色の染料それぞれ1種類ずつしか同系色の染料が含まれていないため、レギュラーポリエステル繊維が配置された表面は緑色に染色されていたが、裏面の可染性PPが配置された裏面は青色に染色されていた。
【0060】
黄色染料 0.4%omf
Disperse Yellow 160、分子量 418、親水性基 あり(水酸基)。
【0061】
青色染料 1.0%omf
Disperse Blue 266、分子量 481、親水性基 あり(アミド基)。
【0062】
(実施例2)
可染性PPとして84デシテックス24フィラメント57.7質量%を用い、レギュラーポリエステル繊維として84デシテックス72フィラメント42.3質量%を用い、二層構造編地(カノコ、表面にレギュラーポリエステル繊維、裏面に可染性PPを配置)を編み立てし、精練及び予備セットをおこなった(可染性PP/レギュラーPET複合品)。
次に、下記の条件にて染色をおこなった。
【0063】
黄色染料 0.48%omf
配合染料
Disperse Yellow 42、分子量 369、親水性基 なし。
Disperse Yellow 163、分子量 416、親水性基 なし。
【0064】
赤色染料 0.24%omf
配合染料
Disperse Red 343、分子量 438及び410 親水性基 なし。
Disperse Red(化審法番号5−5930)、分子量 436、親水性基 なし。
Disperse Red(化審法番号5−5931)、分子量 436、親水性基 なし。
Disperse Red 111、分子量 432、親水性基 なし。
Disperse Red 111の「−COCOCH」を「−COH」としたもの、分子量 391、親水性基 あり(水酸基)。
【0065】
青色染料 1.2%omf
配合染料
Disperse Blue 149、分子量 443、親水性基 あり(水酸基)。
Disperse Blue 125、分子量 409及び588、親水性基 なし。
【0066】
空気:水の割合(容積比)=1:3
浴比 PP繊維:染色液(質量比)=1:20
染色温度×時間 120℃×30分
酸 酢酸0.25g/l、
分散剤 ニッカサンソルト7000(日華化学製) 0.25g/l
染色機 ドラム型染色機(染料役者、(株)オノモリ製)
【0067】
上記の条件で染色した後、ハイドロサルファイト1g/l、ソーダ灰1g/lにて還元洗浄を90℃で10分間おこなった。
【0068】
次に、130℃にて3分間仕上げセットをおこなった。
得られた可染性PP/レギュラーPET複合品は、可染性PPが配置された裏面は少し色が薄いが両面ともベージュに均一に染色されていた。仕上げセット後の密度はコース43本/2.54cm、ウエル47本/2.54cmであった。目付け159g/mであった。
破裂強度は、623kPaであり、比較例2に比べ強度低下は抑制されていた。染色処理をおこなわなかったもの破裂強度は650kPaであった。
【0069】
また、染色堅牢度も下記のように良好であった。
耐光堅牢度 表面4級以上、裏面3級以上
摩擦堅牢度 乾 4級以上/湿 4級以上
洗濯堅牢度 変退色 4―5級、汚染(ナイロン) 4−5級、液汚染 4級
ドライクリーニング堅牢度 変退色 4―5級、汚染(ナイロン) 4−5級、液汚染 3級
【0070】
(比較例3)
染色槽内の空気:水の割合(容積比)を3:1と、空気の割合を大きくした以外は実施例2と同様にし染色処理および仕上げ処理をおこなった。
得られた可染性PP/レギュラーPET複合品の染色状態は、実施例2と同様に良好であったが、破裂強度は、560KPaと実施例2と比較し低下していた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る方法で可染性PPを染色したものは強度低下が少ない。また、染色による可染性PPとレギュラーポリエステル繊維の色相差も小さいため、表裏で色相が異なったり、杢調になったりすることを抑えることができ、下着をはじめとした衣服、運動用特殊服、カバン、靴などさまざまな用途に幅広く使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色時の染色槽内の空気:水の割合が、容積比で3(空気):1(水)よりも水の割合が大きいことを特徴とする可染性ポリプロピレン繊維の染色方法。
【請求項2】
可染性ポリプロピレン繊維とレギュラーポリエステル繊維の複合品の染色時の染料が、非キノン系分散染料であり、かつ、分子量が400以上の分散染料と400未満の同系色の分散染料を含むか、若しくは、親水基を有する分散染料と有さない同系色の分散染料を含むことを特徴とする請求項1記載の可染性ポリプロピレン繊維の染色方法。

【公開番号】特開2012−41664(P2012−41664A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186375(P2010−186375)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】