説明

可溶性ナノ結晶の無溶媒合成

【課題】ナノ結晶、例えば、安価な工程によって非極性環境で可溶性の金属酸化物ナノ結晶を得る合成工程を提供する。
【解決手段】新規の無溶媒方法を用いて高品質・高収率のナノ結晶、すなわち、金属酸化物ベースのナノ結晶を作成するための方法。ナノ結晶は、有利には有機アルキル鎖キャッピング基を含み、空気中及び非極性溶媒内で安定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、概して、可溶性ナノ結晶を合成する新しい改良型方法に関する。より詳細には、本発明は、無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で合成された可溶性金属酸化物ナノ結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 約1000nmより小さい粒径、例えば、一般に、ナノ粒子又はナノ結晶と呼ばれる約1nm〜約100nmの範囲の直径を有する粒子を有する粒子材料の制御された方法での製造に高い関心が寄せられている。例えば、金属酸化物ナノ結晶は、材料の全体の屈折率を高める手段としてのポリマー材料用の添加剤としての周知の用途を有する。このような添加剤は、光を透過又は反射する光学物品の作成に有用である。高い屈折率の添加剤を添加することで利益を得る物品としては、光学レンズ、光管理フィルム、フレネルレンズ、反射防止コーティング、光ディスク、ディフューザフィルム、ホログラフィ基板などが挙げられる。
【0003】
[0003] ナノ結晶は、表面積と表面エネルギーの大きさのために、触媒、電気触媒、吸光度、化学分離及び生物分離用途を含む様々な用途と、ディスプレイで使用する光学的に透明な導体、記憶媒体用の磁気コーティング及び電子機器用途の印刷回路などの薄膜又は厚膜の堆積に使用するインク、ペースト及びテープの形成に有用である。ナノ結晶を含むインク及びペーストは薄い層を塗布することができ、微小寸法のフィーチャの堆積を可能にする改善されたレオロジー特性(例えば、流動性)を有する。上の例に加えて、ナノ結晶は、医薬製剤、ドラッグデリバリ用途、医療診断支援、センサ、研磨剤、顔料、照明用蛍光体、ディスプレイ、セキュリティ用途、歯科用ガラス、ポリマーフィルタ、熱界面材料及び化粧品を含む他の多くの用途で使用されているか、又は使用が検討されている。
【0004】
[0004] 量子閉じ込めの効果が優勢な領域では、コロイド状ナノ結晶は、対応するばら材料では得られないようなサイズが調整可能な光学、電子、及び磁気特性を有する。特に半導体ナノ結晶の場合、粒径が励起子ボーア半径より小さい時にはバンドギャップはより高いエネルギーへシフトする。したがって、多くの場合、量子ドットと呼ばれる半導体ナノ結晶は、これに限定はされないが、光通信、発光ダイオード、レーザ、光チップ、光起電力デバイス、光電デバイス、触媒、バイオイメージング用のバイオラベル、センサ、バッテリー、燃料電池などを含む多数の用途に使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] 現在、ナノ結晶は、テンプレートとして逆ミセルを用いた水溶液内の共沈、溶媒を用いる熱合成、高温有機溶媒内の界面活性剤で制御された成長、物理的及び/又はエアロゾル方法、及びゾル−ゲル工程を含む幾つかの異なる方法を用いて合成される。不利なことには、可溶性コロイド状ナノ結晶の従来の合成は、高価で、有毒で、反応後の再利用又は回収が困難な大量の溶媒及び/又はキャッピング配位子を使用するのが普通である(例えば、Yin,Y.,Alivisatos,P.,Nature,437、664−670(2005)を参照)。さらに、周知の方法の大半は困難であり(骨が折れ)、複雑な装置と高レベルの技術及び/又は熱処理ステップ及び分離ステップ(洗浄、精製など)を含む多数の連続するステップを必要とし、大量の汚染源になる副生成物又は廃棄物(特に溶媒)を生成する。したがって、ナノ結晶合成のスケールアップはコスト高であり、しばしば大量の廃棄物を生成してきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006] 従来技術の上記欠点を克服するために、ナノ結晶、例えば、安価な工程によって非極性環境で可溶性の金属酸化物ナノ結晶を得る合成工程を本明細書で説明する。特に、非極性環境で可溶性のコロイド状金属酸化物ナノ結晶を合成する無溶媒又は実質的に無溶媒の工程を説明する。この工程は、コロイド状ナノ結晶を大量生産するようにスケーラブルであり、高収率のナノ結晶生成物を提供する。
【0007】
[0007] 本発明は、一般に、新しい無溶媒方法を用いて高品質の可溶性ナノ結晶、すなわち、金属酸化物ベースのナノ結晶を作成する新しい改良型方法に関する。ナノ結晶は、有利には有機アルキル鎖キャッピング基を含み、空気中及び非極性溶媒内で安定している。
【0008】
[0008] 一態様では、可溶性コロイド状ナノ結晶を合成する新しい改良型方法であって、少なくとも1種類の単一原料の金属−配位子錯体、金属−配位子混合物、又はそれらの組合せを含む反応混合物を、無溶媒の環境で、反応混合物をコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で加熱するステップを含む方法が記載される。コロイド状ナノ結晶は、非極性有機溶媒に可溶性である。
【0009】
[0009] 別の態様では、少なくとも1種類の金属酸化物を含む可溶性コロイド状ナノ結晶を合成する新しい改良型方法であって、
少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の長鎖界面活性剤を無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で、金属−配位子混合物を生成するのに有効な温度及び時間条件下で反応させるステップと、
任意選択で活性化剤の存在下で、無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で、金属−配位子混合物をコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で加熱するステップとを含む方法が記載される。
【0010】
[0010] さらに別の態様では、実質的に結晶状態のMgOを含み、ナノ結晶が非極性溶媒に可溶性である酸化マグネシウムナノ結晶が記載される。実質的に結晶状態のMgOの2θの値は、36.8±0.5°、42.8±0.5°、62.2±0.5°、74.5±0.5°、及び78.4±0.5°である。
【0011】
[0011] さらに別の態様は、実質的に結晶状態のGaIn2−x(x=0〜2)を含み、ナノ結晶が非極性溶媒に可溶性である酸化ガリウムインジウムナノ結晶に関する。
【0012】
[0012] さらに別の態様は、印刷可能な電子機器用及び可逆的コントラストエンハンスメント層、バッテリー、又は燃料電池を含む他の用途用の透明な導電酸化物として本明細書に記載する方法で形成される金属酸化物ナノ結晶の使用に関する。
【0013】
[0013] その他の態様、特徴及び利点は、下記の開示及び添付の特許請求の範囲からより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】[0014]本明細書に記載する方法を用いて合成された酸化ガリウム(Ga)ナノ結晶のFTIRスペクトルである。
【図2】[0015]本明細書に記載する方法を用いて合成された酸化ガリウム(Ga)ナノ結晶のXRDパターンである。
【図3】[0016]本明細書に記載する方法を用いて合成された酸化マグネシウム(MgO)ナノ結晶のXRDパターンである。
【図4】[0017]本明細書に記載する別の方法を用いて合成された酸化マグネシウム(MgO)ナノ結晶のXRDパターンである。
【図5】[0018]本明細書に記載する方法を用いて合成された酸化インジウム(In)ナノ結晶のXRDパターンである。
【図6】[0019]本明細書に記載する方法を用いて合成された酸化インジウム(In)ナノ結晶のXRDパターンである。
【図7】[0020]本明細書に記載する方法を用いて合成された酸化ガリウム(Ga)ナノ結晶のXRDパターンである。
【図8】[0021]本明細書に記載する方法を用いて合成された酸化ガリウムインジウム(GaInO)ナノ結晶のXRDパターンである。
【図9】[0022]金属−配位子混合物が結晶性MgOを生成するのに必要な温度より低い温度に維持された時に収集された材料のXRDパターンである。
【図10】[0023]金属−配位子混合物が結晶性MgOを生成するのに必要な期間より短い期間に反応した時に収集された材料のXRDパターンである。
【図11A】[0024]1:0.75のモル比のIn(acac)/オレイン酸から270℃、90分の条件下で生成された酸化インジウムナノ結晶のTEM画像である。
【図11B】[0025]1:3のモル比のIn(acac)/オレイン酸から300℃、90分の条件下で生成された酸化インジウムナノ結晶のTEM画像である。
【図12A】[0026]1:10のモル比のIn(My)/オクタデカノールから280℃、10分の条件下で生成された酸化インジウムナノ結晶のTEM画像である。
【図12B】[0027]1:5のモル比のIn(My)/オクタデカノールから280℃、10分の条件下で生成された酸化インジウムナノ結晶のTEM画像である。
【図13】[0028]In(My)と1,2−ドデカンジオールの1:5のモル比での反応から280℃、10分の条件下で生成された酸化インジウムナノ結晶のTEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0029] 本発明は、一般に、新しい無溶媒合成ルートを用いて可溶性ナノ結晶を生成する方法に関する。合成されたナノ結晶、特に金属酸化物ベースのナノ結晶は、金属酸化物の表面に1つ又は複数の非極性キャッピング基があるために非極性溶媒に可溶性である。
【0016】
[0030] 表面のキャッピング配位子の少なくとも部分的な層、例えば、界面活性剤又は特定のペンダント基によって安定化された無機コアを有するコロイド状ナノ結晶が当技術分野で周知である。界面活性剤などの有機キャッピング配位子が粒子の可溶性を提供し、粒子の凝集を制限するためにナノ結晶の粒径と形状とを決定する必須部分であるということが広く了解されている。同上。さらに、コロイド状ナノ結晶の組成と結晶構造は、合成反応の化学的及び物理的条件を変更することで容易に調整可能である。この調整可能性によって、コロイド状ナノ結晶は、すべての多数の材料、デバイス、及び生物学的用途にとって有望なものである。
【0017】
[0031] 当業者には明らかなように、「ナノ結晶」という用語は、特に、ナノメートル寸法、例えば、約1nm〜約100nmの無機コアを含むナノ粒子を意味する。ナノ結晶は、半導体、導体、又は誘電体であってもよく、又はナノ結晶は、磁気及び触媒挙動を含むその他の対象とする特性を示していてもよい。本発明は、結晶性、半結晶性、多結晶性、及び非結晶性、すなわち、非晶質金属酸化物の無機コアを有するナノ粒子を含む。本明細書に記載する方法は、結晶性のナノ粒子生成物を生成するのに特に有利である。さらに、ナノ結晶という用語は、ナノメートル寸法の無機コアの凝集体又は非凝集体を描写するために使用することができることを理解されたい。ナノ結晶、ナノ粒子、ナノドット、ナノフラワー、ナノ材料、ナノ球、ナノビーズ、マイクロクリスタライト、ナノクラスタ、量子ドット、量子球、量子クリスタライト、マイクロ結晶、コロイド粒子、Q粒子、及びナノキューブという用語は、相互に交換可能であると考えられる。
【0018】
[0032] 当技術分野で確立されているように、「溶質」は、「溶媒」に溶解して「溶液」を形成する。「溶媒」は、金属塩がその内部に溶解して金属塩溶液を形成する、配位子がその内部に溶解して配位子溶液を形成する、又は金属−配位子混合物がその内部に溶解して金属−配位子溶液を形成する任意の物質に相当し、又は単一原料の金属−配位子錯体がその内部に溶解して単一原料の金属−配位子錯体溶液を形成する任意の物質に相当する。ここで、溶媒と溶液とは、液相である。本明細書に詳述するように、溶媒は、過剰に存在する成分であり、不動態である。言い換えれば、他の成分への化学的関与のために特定のモル量又はその等量だけ添加される成分は本明細書では溶媒とみなさない。溶媒としては、水、非極性溶媒、極性溶媒、(過剰な)界面活性剤、及びそれらの組合せが挙げられる。「無溶媒の」は、溶媒を含まない金属塩及び配位子、金属−配位子混合物、又は単一原料の金属−配位子錯体に相当する。「実質的に無溶媒の」は、反応混合物の総重量に基づいた約2重量%未満の溶媒、より好ましくは1重量%未満の溶媒、さらに好ましくは0.5重量%未満の溶媒、最も好ましくは0.1重量%未満の溶媒を含む金属塩及び配位子、金属−配位子混合物、又は単一原料の金属−配位子錯体に相当する。
【0019】
[0033] 本明細書に記載する「可溶性」は、本明細書に記載する方法に従って作成されたコロイド状ナノ結晶のある割合の少なくとも溶媒への溶解に相当する。例えば、作成されたコロイド状ナノ結晶の少なくとも約50%、好ましくは作成されたコロイド状ナノ結晶の少なくとも約70%、より好ましくは作成されたコロイド状ナノ結晶の少なくとも約90%、最も好ましくは、本明細書に記載するように作成されたコロイド状ナノ結晶の少なくとも約95%が溶媒に可溶性である。理論に縛られることは望まないが、可溶性の程度はコロイド状ナノ結晶の表面に付着した配位子の量に依存すると考えられている。
【0020】
[0034] 本明細書に記載する化学種の「実質的な不在」は、反応混合物の総重量に基づく反応混合物内の指定された化合物の5重量%未満の存在、好ましくは2重量%未満の存在、より好ましくは1重量%未満の存在、最も好ましくは0.1重量%未満の存在に相当する。
【0021】
[0035] 本明細書に記載する「反応混合物」は、反応物、例えば、本明細書に記載する方法を用いてコロイド状ナノ結晶に変換される少なくとも1種類の活性化剤の存在下での単一原料の金属−配位子錯体、金属−配位子混合物、金属−配位子錯体、又は少なくとも1種類の活性化剤の存在下での金属−配位子混合物を意味する。
【0022】
[0036] 本明細書に記載する「金属−配位子混合物」は、少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の配位子が化学量論比より大きい比、化学量論比又は化学量論比より小さい比で、好ましくは化学量論比又は化学量論比より小さい比で混合する時に現場で形成される固体、液体、又はゼラチン状混合物に相当する。金属−配位子錯体は化学量論比の金属と配位子から構成され、金属−配位子錯体は化学量論比より小さい比の金属と配位子、金属塩及び/又は配位子、又はそれらの組合せからなることを理解されたい。「単一原料の金属−配位子錯体」は、市販のものが購入されたか又は合成され、分離され、乾燥された、化学量論比又は化学量論比より小さい比の金属と配位子からなる固体又は液体の金属−配位子錯体に相当する。
【0023】
[0037] 本明細書に記載する「化学量論比より小さい比の」は、金属との完全な化学量に必要な量に満たない量の配位子を有するということに相当する。
【0024】
[0038] 本明細書に記載する「ゼラチン状」は、性質がオリゴマー又はポリマーである半固体コロイド状ゲルに相当する。
【0025】
[0039] 「金属酸化物」ナノ結晶、好ましくはMgO、ZnO、In、MnO、MnO、Ga、及びAlという表現が繰り返し用いられているが、反応工程は、混合金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、金属窒化物、金属リン化物、金属ヒ化物、及びそれらの合金を作成するために容易に使用することができる。
【0026】
[0040] 本明細書に記載する「混合金属酸化物」又は「合金酸化物」は、無機酸化物コア内に少なくとも2つの異なる金属を有するナノ結晶に相当する。
【0027】
[0041] 本明細書に記載する「実質的に結晶状態の」は、決まった順序の原子、イオン又は分子のアレイを有し、X線回折パターンが、対応する結晶状態の材料として表示することができるブラッグ反射を含む材料に相当する。
【0028】
[0042] 本発明者らは、本明細書で、可溶性金属酸化物ナノ結晶が溶媒を用いずに合成することができることを立証する。例えば、長鎖界面活性剤及び少なくとも1種類の金属イオンを含む単一原料の金属−配位子錯体を含む「反応混合物」を本明細書に記載する方法に従って処理することができる。あるいは、長鎖界面活性剤及び少なくとも1種類の金属イオン(塩)を含む金属−配位子錯体を含む「反応混合物」を本明細書に記載する方法に従って処理することができる。いずれの場合も、界面活性剤又は化学ペンダント基は、少なくとも1種類の金属化合物が金属酸化物ナノ結晶に分解すると、キャッピング配位子として振舞う。上述したキャッピング配位子は、成長するナノ結晶コアの粒径及び形状を制御し、様々な非極性溶媒での可溶性を提供する。これらの無溶媒又は実質的に無溶媒の反応は、多くの場合、1〜2時間以下で完了する。
【0029】
[0043] 本明細書に記載する方法には、当技術分野で周知の工程に関連する幾つかの重要な利点がある。これらの利点とは、これに限定はされないが、溶媒と反応工程に関与しない過剰な配位子の必要を解消するより簡単で、コスト効率が高い、環境に配慮した工程と、ナノ結晶の精製を容易にする大幅に少量の試薬の使用と、様々な市販の金属前駆体を使用する可撓性と、装置の小型化とそれに伴う占有面積の削減と、大量のナノ結晶の生成のための工程のスケーラビリティとを含む。
【0030】
[0044] 一態様では、少なくとも1種類の金属酸化物を含む可溶性コロイド状ナノ結晶を合成する方法であって、少なくとも1種類の単一原料の金属−配位子錯体を無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で、単一原料の金属−配位子錯体をコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で加熱するステップを含む方法が記載される。「コロイド状ナノ結晶を含む材料」は溶液とはみなされない。
【0031】
[0045] 一実施形態では、少なくとも1種類の単一原料の金属−配位子錯体を無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で、単一原料の金属−配位子錯体をコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で、少なくとも1種類の活性化剤が少なくとも1種類の単一原料の金属−配位子錯体と混合する。少なくとも1種類の活性化剤は、少なくとも1種類の単一原料の金属−配位子錯体への化学的関与のために特定のモル量又はその等量だけ添加され、したがって、溶媒とみなされない。「コロイド状ナノ結晶を含む材料」は溶液とはみなされない。
【0032】
[0046] この態様の好ましい条件は、ガス環境内での、例えば、N、Ne、Ar,Kr、又はXeの存在下、及び/又は空気、NO又はO内での加熱を含む。反応温度は好ましくは約30℃〜350℃の範囲内、より好ましくは約240℃〜320℃の範囲内である。反応温度は、金属−配位子錯体に関連付けられた純配位子の沸点以下でなければならない。反応時間は、好ましくは約10秒〜約240分の範囲内、より好ましくは約10分〜約180分の範囲内である。圧力は好ましくは雰囲気圧であるが、雰囲気圧より高い圧力も低い圧力も使用することができる。反応の温度は反応温度まで急速に増加してもよく、あるいは、温度は反応温度に達するまで時間と共に徐々に増加してもよく(例えば、10℃/分)、その後、コロイド状ナノ結晶が形成されるまで温度は反応温度に維持されてもよい。
【0033】
[0047] コロイド状ナノ結晶の形成に続けて、材料を、例えば100℃未満まで、好ましくは室温まで冷却して、材料からコロイド状ナノ結晶を抽出して少なくとも1種類の非極性溶媒に溶解してもよい。有機キャッピング配位子のために、本明細書に記載する方法に従って合成されたコロイド状ナノ結晶は、非極性溶媒への可溶性が大きい。非極性溶媒の例は、これに限定はされないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、及びドデカンを含む。可溶化されたコロイド状ナノ結晶を含む非極性溶媒溶液に極性有機溶媒を添加してナノ結晶を沈殿させ、遠心分離法でナノ結晶を単離、収集することができる。考えられる極性有機溶媒の例は、直鎖及び分岐C−Cアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びペンタノール)、エチルアセテート、及びアセトンを含む。同じ又は別々の溶媒を用いて非極性及び極性溶媒を続けて1回から数回添加してもよい。例えば、コロイド状ナノ結晶を非極性ヘキサンで抽出し、ブタノールで沈殿させ、ヘキサンで再溶解し、メタノールで沈殿させてもよい。当業者はナノ結晶を抽出して沈殿させ、溶媒を使用する回数を容易に決定することができる。非極性及び極性溶媒の組合せは、本明細書に記載する例に限定されない。無溶媒又は実質的に無溶媒の合成で形成されたナノ結晶を単離する場合、少量の非極性及び極性溶媒が添加される。とりわけ、コロイド状ナノ結晶の単離と精製に使用される溶媒の量は、ナノ結晶を生産するのに溶媒を必要とする従来技術の方法のナノ結晶合成に必要な溶媒の量よりも大幅に少ない。あるいは、ナノ結晶を、反応副生成物を溶解しない溶媒内の溶解によって単離することができ、この方法はさらに少量の溶媒しか必要としない。これと対照的に、反応副生成物を溶解するがナノ結晶を溶解しない溶媒を選択することで反応副生成物を反応混合物から選択的に除去してもよい。
【0034】
[0048] 金属前駆体、したがって金属酸化物ナノ結晶内の金属の非限定的な例は、Li、Na、K、Rb、又はCsなどのアルカリ金属;Mg、Ca、Sr、又はBaなどのアルカリ土類;Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、又はCdなどの第3族から第12族の遷移金属;Ce、Pr、Nd、Dy、Th、Eu、Gd、Er、又はLaなどの希土類;B、Al、Ga、In、Ge、Sn、Sb、Bi、又はPbなどの半金属などである。
【0035】
[0049] 単一原料の金属−配位子錯体は、少なくとも、極性ヘッド基と少なくとも6つの炭素原子を有する非極性テールとを備えた少なくとも1つの長鎖界面活性剤を含む。一般に、界面活性剤は、非イオン系、陰イオン系、陽イオン系、双生イオン系又はそれらの組合せでよい。界面活性剤は、金属錯体とイオン結合、共有結合、又は供与結合を形成してもよく形成しなくてもよい。界面活性剤は、酸化物ナノ粒子を形成する反応の前、その間、又はその後にミセル性の構造を形成してもよく形成しなくてもよい。通常、界面活性剤は、6〜25個の炭素原子を含む側鎖置換基を含む又は含まない非極性テール基と、金属前駆体、ナノ結晶の表面、又はその両方と相互作用する極性ヘッド基とを含む。ヘッド基の例は、硫酸塩(−OSO)、スルホネート(−SOOH)、スルフィネート(−SOOH)、リン酸塩((−O)PO)、ホスファイト((−O)P)、ホスフィン(−P)、ホスフィンオキシド(−PO)、ホスフィネート(−POOH)、ホスホネート(−PO(OH))、カルボキシレート(−COOH)、アルコール(−OH)、チオール(−SH)、及びアミン(−NH)を含む。界面活性剤は、単一のヘッド基によって金属前駆体又はナノ結晶の表面と配位結合することができる。又は界面活性剤は多座配位が可能で、複数のヘッド基によって結合することができる。後者の例としては、ジオール、トリオール、ジチオール、ジアミン、トリアミン、二価酸などが挙げられる。多座配位子もオリゴマー又はポリマー系界面活性剤の形態をとることができる。
【0036】
[0050] 通常、本明細書で有用な非イオン系界面活性剤は、オレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、リノール酸、ラウリン酸、2−エチルヘキサン酸、アゼライン酸、パルミチン酸、リノレン酸、エルカ酸などの化学式RCOOHのカルボン酸類、ステアリルアミン、オレイルアミン、エルカアミン、ラウリルアミンなどのアミン類、デカノール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコールなどのアルコール類、デカンチオール、ドデカンチオール、テトラデカンチオール、ヘキサデカンチオールなどのチオール類、トリオクチルホスフィン、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、メチルディフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ベンジルジフェニルホスフィンなどのホスフィン類、トリオクチルホスフィンオキシド、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフィンオキシド、トリヘプチルホスフィンオキシド、トリペンチルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド類、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステリルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリシクロデカンジメタノールホスファイトなどのホスファイト類、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェートなどのホスフェート類、オクタデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ペンタデシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、デシルホスホン酸などのホスホン酸類、デシルメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジオレイルスルホキシド、ジラウリルスルホキシド、ジステアリルスルホキシドなどのスルホキシド類、トシルオキシフェニルスルホン、トシルオキシビニルスルホンなどのスルホン類である。
【0037】
[0051] イオン系界面活性剤の例は、極性基が、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ベンゼンスルホネートナトリウム、トリスルホネートナトリウムなどのスルホネート類、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、セチルトリメチル臭化アンモニウム、水酸化テトラフェニルアンモニウムなどのアンモニウム塩類、リチウム、ナトリウム、ポタジウム、カルシウム、マグネシウムなどの対イオンを有するチオール酸類、上に列挙したカルボン酸類のカルボキシレート類、及び上に列挙したホスホン酸類のホスホネート類を含むイオン基又は塩である化合物を含む。
【0038】
[0052] 単一原料の金属−配位子錯体は市販のものを購入してもよく、又は合成、単離、乾燥してもよい。単一原料の金属−配位子錯体の合成は、ユーザが金属イオンと配位子の比を変更することができ、それによってユーザが生成された金属酸化物ナノ結晶の粒径を調整することができるという利点を有する。単一原料の金属−配位子錯体を得る方法に関わらず、単一原料の前駆体は、化学量論比又は化学量論比より小さい比の金属及び配位子からなる。
【0039】
[0053] 考えられる活性化剤は、アルコール類、ジオール類、アミン類、ジアミン類、カルボン酸類、二価酸類、酸塩化物類、カルボン酸塩類、酸無水物類、並びに複数の反応部位を含むオリゴマー及びポリマー構造類を含む。その例は、化学式CH(CHOH又はCH(CHCH(OH)CH(nは5〜21の範囲内の整数、mは3〜19の範囲内の整数)を有するC−C22アルコール類を含む。例えば、アルコール類は、1−テトラデカノール、2−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール、2−ヘキサデカノール、1−ヘプタデカノール、1−オクタデカノール、1−ノナデカノール、1−エイコサノール、1−ドコサノール、又はそれらの組合せであってもよい。考えられるジオール類は、化学式R−CHCH(OH)CHOH(RはC−C19アルキル基)を有する化合物を含む。例えば、長鎖ジオールは1,2−ドデカンジオールであってもよい。長鎖アミンは、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、エイコサニルアミン、及びドコサニルアミンなどのC−C22第一級アミン類を含む。オリゴマー及びポリマー活性化剤の例は、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びそれらの修飾(例えば、アルキル鎖を備えた)を含む。さらに別の代替形態では、活性化剤は触媒であってもよい。理論に縛られることを意図はしないが、活性化剤は、金属−配位子前駆体の分解を容易にすることで金属酸化物粒子が成長する化学的機構を変更すると考えられる。場合によっては、活性化剤は、ナノ結晶の表面にある程度結合することも期待される。したがって、活性化剤は工程内で不動態成分ではない。したがって、活性化剤は、本明細書に記載する方法のために、溶媒ではない。
【0040】
[0054] 粒径及び/又は形状は実質的に無溶媒の環境で反応温度、反応時間、配位子の識別及び/又は量で調整することができる。また、活性化剤を含む反応の場合、粒径及び/又は形状は反応に含まれる活性化剤の識別及び量を変えることで調整することができる。幾つかの実施形態では、ナノ結晶の凝集の程度とナノ構造の形状はこれらの同じ条件を変えることで調整することができる。
【0041】
[0055] 別の態様では、少なくとも1種類の金属酸化物を含む可溶性コロイド状ナノ結晶を合成する別の方法であって、無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で、金属−配位子錯体をコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で加熱するステップを含む方法が記載される。「コロイド状ナノ結晶を含む材料」は、溶液とはみなされない。
【0042】
[0056] 一実施形態では、無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で、金属−配位子錯体をコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で少なくとも1種類の活性化剤が金属−配位子錯体に混合される。少なくとも1種類の活性化剤が少なくとも1種類の単一原料の金属−配位子錯体への化学的関与のために特定のモル量又はその等量だけ添加される。「コロイド状ナノ結晶を含む材料」は溶液とはみなされない。
【0043】
[0057] 好ましい条件は、ガス環境内での、例えば、N、Ne、Ar,Kr、又は、Xeの存在下、及び/又は空気、NO又はO内での加熱を含む。反応温度は、好ましくは約30℃〜350℃の範囲内、より好ましくは約240℃〜320℃の範囲内である。反応温度は、金属−配位子錯体に関連付けられた純配位子の沸点以下でなければならない。反応時間は、好ましくは約10秒〜約240分の範囲内、より好ましくは約10分〜約180分の範囲内である。圧力は好ましくは雰囲気圧であるが、雰囲気圧より高い圧力も又は雰囲気圧より低い圧力も使用することができる。反応の温度は反応温度まで急速に増加してもよく、あるいは、温度は反応温度に達するまで時間と共に徐々に増加してもよく(例えば、10℃/分の割合で)、その後、コロイド状ナノ結晶が形成されるまで温度は反応温度に維持されてもよい。
【0044】
[0058] コロイド状ナノ結晶の形成に続けて、材料を、例えば100℃未満まで、好ましくは室温まで冷却して、材料からコロイド状ナノ結晶を抽出して少なくとも1種類の非極性溶媒に溶解してもよい。有機キャッピング配位子のために、本明細書に記載する方法に従って合成されたコロイド状ナノ結晶は、非極性溶媒への可溶性が大きい。非極性溶媒の例は、これに限定はされないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、及びドデカンを含む。可溶化されたナノ結晶を含む非極性溶媒溶液に極性有機溶媒を添加してナノ結晶を沈殿させ、遠心分離法でナノ結晶を収集することができる。考えられる極性有機溶媒の例は、直鎖及び分岐C−Cアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びペンタノール)、エチルアセテート、及びアセトンを含む。同じ又は別々の溶媒を用いて非極性及び極性溶媒を続けて1回から数回添加してもよい。例えば、コロイド状ナノ結晶を非極性ヘキサンで抽出し、ブタノールで沈殿させ、ヘキサンで再溶解し、メタノールで沈殿させてもよい。当業者はナノ結晶を抽出して沈殿させる回数及び使用する溶媒を容易に決定することができる。非極性及び極性溶媒の組合せは、本明細書に記載する例に限定されない。無溶媒又は実質的に無溶媒の合成で形成されたナノ結晶を単離する場合、少量の非極性及び極性溶媒の両方が必要であるが、その量は、ナノ結晶を生産するのに溶媒を必要とする従来技術の方法のナノ結晶合成に必要な溶媒の量よりも大幅に少ない。あるいは、ナノ結晶を、反応副生成物を溶解しない溶媒内の溶解によって単離することができ、この方法はさらに少量の溶媒しか必要としない。これと対照的に、反応副生成物を溶解するがナノ結晶を溶解しない溶媒を選択することで反応副生成物を反応混合物から選択的に除去してもよい。
【0045】
[0059] 少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の長鎖界面活性剤を、無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で、金属−配位子混合物を生成するのに有効な温度及び時間条件下で混合することで、金属−配位子混合物を生成することができる。界面活性剤については前述した。金属塩は、ギ酸塩、酢酸塩、アセチルアセトネート、フッ化物、酸化物、アルコキシド、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸塩、及び硝酸塩、並びに上記の金属類からなる群から選択された陰イオン基を含む。金属塩は水和されていてもよく、又は無水であってもよい。少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の長鎖界面活性剤を容器内で混合して約50℃〜約200℃の範囲内の温度まで約10分〜約120分の範囲内の時間だけ加熱してもよい。加熱中、ガス、例えば、N、Ne、Ar、Kr、又はXeストリームを金属塩−界面活性剤の混合物内に噴射して存在する水分を追い出してもよく、あるいは、存在する水分を真空内で除去してもよい。金属−配位子混合物の反応物は、化学量論比又は化学量論比より小さい比の少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の配位子を含み、それによって、少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の配位子の生成物は、金属−配位子混合物を含む。本明細書に記載するように、生成物は、続けて無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で、金属−配位子混合物をコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で加熱することができる固体、液体、又はゼラチン状金属−配位子混合物である。あるいは、本明細書に記載するように、固体、液体、又はゼラチン状金属−配位子混合物を少なくとも1種類の活性化剤と混合して、その混合物を無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で金属−配位子混合物をコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で加熱してもよい。金属−配位子混合物を作成する時には、金属と配位子が化学量論比又は化学量論比より小さい比で混合されるという事実によって立証されるように、溶媒は使用されない。同様に、金属−配位子混合物を分解する時には、活性化剤があるか否かに関わらず、溶媒は使用されない。
【0046】
[0060] さらに別の態様では、無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で、混合物をコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で、少なくとも1種類の活性化剤が少なくとも1種類の金属塩及び少なくとも1種類の長鎖界面活性剤と混合する。
【0047】
[0061] さらに別の態様では、無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で、混合物をコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で、少なくとも1種類のカルボン酸が少なくとも1種類の金属酸化物成分と混合し、少なくとも1種類のカルボン酸は活性化剤として作用し、少なくとも1種類のカルボン酸と少なくとも1種類の金属酸化物は、化学量論比又は化学量論比より小さい比で混合される。
【0048】
[0062] 上記のように、金属−配位子混合物の使用は、ユーザが金属イオン対配位子の比を変更することができ、それによってユーザが生成された金属酸化物ナノ結晶の粒径を調整することができるという利点を有する。例えば、配位子対金属イオンの比が減少するにつれて、ナノ結晶の粒径は減少する。好ましくは金属イオン対配位子の比は、化学量論比又は化学量論比より小さい比である。さらに、粒径及び/又は形状は、実質的に無溶媒の環境で反応温度、反応時間、配位子の識別及び/又は量で調整することができる。活性化剤を含む反応の場合、粒径及び/又は形状は反応に含まれる活性化剤の識別及び量を変えることで調整することができる。幾つかの実施形態では、ナノ結晶の凝集の程度とナノ構造の形状は、これらの同じ条件を変えることで調整することができる。
【0049】
[0063] 本明細書に記載する方法の利点は、結果として得られる金属酸化物ナノ結晶が有機材料、例えば、キャッピング配位子とも呼ばれる界面活性剤もしくはその他の側基(類)の少なくとも部分的な層でコーティングされているということである。有機コーティングは、例えば、薬品の組成、化粧品、フィルムなどの様々な用途での上記方法のその後の使用に有益である。さらに、この方法は、コロイド状ナノ結晶合成中に溶媒が使用される従来の方法に従って生成された材料の収量に匹敵するか又はそれより多い優れた大収量のナノ結晶を提供する。さらに、単離と精製にしか溶媒を使用しないため、必要な溶媒の量は少なく、これによって、コストと、適切に廃棄しなければならない廃棄物とが低減し、コロイド状ナノ結晶を生成するための反応時間は、従来の方法に従って生成されたナノ結晶の場合よりも短くて済む。
【0050】
[0064] 本明細書に記載する方法を用いて様々な一価、二価、三価、及び四価の金属と混合金属酸化物から金属酸化物を生成することができる。例えば、反応混合物は、少なくとも2種類の異なる金属がある少なくとも2種類の単一原料金属−配位子錯体を含んでいてもよい。あるいは、反応混合物は、単一原料金属−配位子錯体と金属−配位子混合物の組合せが少なくとも2種類の異なる金属を含む少なくとも1種類の単一原料金属−配位子錯体と金属−配位子混合物を含んでいてもよい。さらに別の代替形態では、反応混合物は、少なくとも2種類の異なる金属がある金属−配位子混合物を含んでいてもよい。上記の反応混合物内には、少なくとも1種類の活性化剤が存在していてもよい。考えられる混合金属酸化物は、これに限定はされないが、酸化インジウムスズ、酸化ガリウムインジウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化インジウムアルミニウム、酸化亜鉛アルミニウム、酸化亜鉛ガリウム、酸化亜鉛インジウム、及び酸化マグネシウム亜鉛を含む。少なくとも1種類の単一原料金属−配位子錯体又は金属−配位子混合物を加熱する方法は、ナトリウム塩、ポリソルベート80、還元剤類、水酸化物基、及び1−オクタデセンなどの炭化水素溶媒の実質的な不在下で実行される。
【0051】
[0065] 本明細書に記載するコロイド状ナノ結晶は単分散又は多分散でよく、凝集又は非凝集でよい。コロイド状ナノ結晶の直径は、好ましくは約1〜約30nmの範囲内である。ナノ結晶は、球形、多角形、立方体、棒状、管状、又は円盤状、凝集又は非凝集でよく、対称又は非対称でよい。好ましくは、ナノ結晶は球形又は実質的に球形である。さらに、ナノ結晶は、結晶構造が実質的に均一である。
【0052】
[0066] 当技術分野のコロイド状ナノ結晶と同様、コロイド状ナノ結晶上の配位子は交換可能である。ナノ粒子を特定の溶媒又はマトリックスと適合させるためにナノ粒子の化学特性を変更する配位子交換手順が当技術分野で知られている。例えば、ナノ結晶の合成中に使用される配位子を複数の金属キレート基を有する多官能配位子を介した架橋を可能にする配位子と交換することができる。多官能配位子は、複数のナノ結晶への付着を可能にする複数の官能基を有するように選択することができる。多官能配位子は、ポリアミン及びポリチオールを含む。あるいは、ナノ結晶の水溶性を配位子交換によって(例えば、疎水性末端基をカルボン酸又はアミン基などの親水性末端基を有する配位子と交換することで)実現することができる。
【0053】
[0067] 別の態様では、少なくとも1種類の金属酸化物を含むコロイド状ナノ結晶を合成する方法であって、
少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の長鎖界面活性剤とを無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で、金属−配位子混合物を生成するのに有効な温度及び時間条件下で反応させるステップと、
任意選択で活性化剤の存在下で、無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で、金属−配位子混合物をコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で加熱するステップとを含む方法が記載される。
ガスストリームを金属塩−界面活性剤の混合物内に噴射して存在する水分を追い出す、少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の長鎖界面活性剤との反応については前述した。上記のように、コロイド状ナノ結晶をその後単離してもよい。
【0054】
[0068] さらに別の態様では、非極性溶媒に可溶性である酸化マグネシウムコロイド状ナノ結晶が記載される。MgOナノ結晶は、実質的に結晶状態で、36.8±0.5°、42.8±0.5°、62.2±0.5°、74.5±0.5°、及び78.4±0.5°の2θの値を有し、界面活性剤でキャッピングされている。
【0055】
[0069] さらに別の態様では、非極性溶媒に可溶性である酸化インジウムガリウムコロイド状ナノ結晶が記載される。GaInOナノ結晶は、実質的に結晶状態で、粉末回折ファイル(PDF)番号21〜0333に対応する2θの値(29.6°、31.1°、32.0°、34.6°、38.5°、43.5°、49.3°、55.4°、55.8°、57.7°、61.5°、62.9°、64.1°、65.0°、65.4°、67.0°)を有し、界面活性剤でキャッピングされている。
【0056】
[0070] さらに別の態様では、単一原料の金属−配位子錯体を、任意選択で活性化剤の存在下で、無溶媒又は実質的に無溶媒の環境でMgOコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で少なくとも1種類の単一原料の金属−配位子錯体を加熱するステップを含むMgOコロイド状ナノ結晶の合成が記載される。
【0057】
[0071] 別の態様では、少なくとも2種類の単一原料の金属−配位子錯体、例えば、インジウムオレアート及びガリウムオレアートを、任意選択で活性化剤の存在下で、無溶媒又は実質的に無溶媒の環境でGaIn2−x(x=0〜2)コロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で加熱するステップを含むGaIn2−x(x=0〜2)コロイド状ナノ結晶の合成が記載される。さらに別の態様では、単一原料の金属−配位子錯体内にインジウム及びガリウムの両方を含む単一原料の金属−配位子錯体を、任意選択で活性化剤の存在下で、無溶媒又は実質的に無溶媒の環境でGaIn2−x(x=0〜2)コロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で加熱するステップを含むGaIn2−x(x=0〜2)コロイド状ナノ結晶の合成が記載される。
【0058】
[0072] 別の態様は、金属−配位子混合物を、任意選択で活性化剤の存在下で、無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で金属−配位子混合物をMgOコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で加熱することで合成されるMgOコロイド状ナノ結晶に関する。
【0059】
[0073] さらに別の態様は、インジウム及びガリウム金属塩を含む金属−配位子混合物を、任意選択で活性化剤の存在下で、無溶媒又は実質的に無溶媒の環境でGaIn2−x(x=0〜2)コロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で加熱することで合成されるGaIn2−x(x=0〜2)コロイド状ナノ結晶に関する。
【0060】
[0074] さらに別の態様は、本明細書に記載するコロイド状ナノ結晶のフィルム、光ファイバ、有機、無機、又はハイブリッドポリマー、複合材料、又は有機溶媒への混合に関する。コロイド状ナノ結晶は可溶性であるために、機械的又は化学的操作でフィルム、複合材料などのより大きい構造に容易に混合することができる。
【0061】
[0075] さらに別の態様は、可逆的光漂白可能材料として本明細書に記載するナノ結晶の使用に関する。
【0062】
[0076] ある材料が特定の波長の光子を吸収するために、その波長光を通さないことは周知である。吸収によって、時折、光吸収機構の劣化又は飽和が引き起こされ、その結果、材料は前記波長を透過する。この工程を光漂白と呼ぶ。多くの材料では、光漂白は可逆的ではなく、例えば、ポリマーフォトレジストは劣化又は架橋する。しかし、多くの用途では、可逆的光漂白が非常に望ましく、すなわち、材料は光が消灯された後に元の光学特性を回復する。緩和工程は自動的に実行されることがあり、電界又は磁界、様々な波長の光、熱などの外部条件によってトリガされることもある。
【0063】
[0077] 1つの好ましい実施形態は、半導体ナノ結晶を含む可逆的光漂白可能材料を提供する。前記可逆的光漂白可能材料は、ポリマーマトリックス及びその他の化学薬品に浸漬されたナノ結晶を含み、前記可逆的光漂白可能材料は、任意の薄膜成長技法によって可逆的光漂白可能層を形成する表面でかけられ、噴霧され、すすがれ、浸漬され、蒸発又は堆積される。半導体ナノ結晶は他の要素でドーピングされ、及び/又は他の半導体又は化学薬品でコーティングできる。光子で照明されると、前記可逆的光漂白可能材料は前記光子の波長に対して透明度を増し、前記材料は化学線波長以外の波長に対して透明度を増し、前記可逆的光漂白可能材料は前記照明の消灯後一定時間が経ってから元の不透明度を少なくとも一部回復することができる。前記照明は、遠赤外線から深紫外線の光子波長を含んでいてもよく、前記可逆的光漂白可能材料は様々な組成と構造とを備えた粒子を含んでいてもよい。
【0064】
[0078] 別の態様では、可逆的光漂白可能材料に基づく可逆的コントラストエンハンスメント層が提供される。例えば、可逆的コントラストエンハンスメント層を生成する方法は、フォトレジスト層上にコロイド状ナノ結晶を含む層を提供するステップと、コロイド状ナノ結晶を含む前記層を照明して前記フォトレジスト層の少なくとも一部を露光するステップとを含んでいてもよい。
【0065】
[0079] さらに別の態様では、本明細書に記載するコロイド状ナノ結晶は、タッチスクリーン、OLED、EL照明、光電池及びLCDなどの電子機器用途に有用である。
【0066】
[0080] 有利には、本明細書に記載する無溶媒又は実質的に無溶媒の環境で生成されたナノ結晶を調整して様々な形状及びサイズを生成することができ、ナノ結晶は凝集又は非凝集状態でよい。さらに、反応から不動態溶媒を解消することで、多くの場合、ナノ結晶をより迅速に、及び/又はより低温で生成することができる。
【0067】
[0081] 以下に説明する例示的な実施例によって特徴及び利点を詳述する。
【0068】
実施例1
[0082] 塩化ガリウムとオレイン酸ナトリウムの室温反応から作成され精製されたオレイン酸ガリウム(Ga(oleate))を窒素下で300℃まで加熱してこの温度に1時間維持した。次に、材料を室温まで冷却した。固体をヘキサンで抽出し、ナノ結晶をブタノールで沈殿させ、遠心分離して沈殿物を単離した。この反応で、オレイン酸ガリウム前駆体から得たオレイン酸配位子は、合成された酸化ガリウムナノ結晶の表面のキャッピング基として作用する。酸化ガリウムナノ結晶をフーリエ変換赤外線(FTIR)分光分析法で分析し、スペクトル(図1を参照)は、500、640及び690cm−1の振動帯域をはっきりと示し、これはオレイン酸及びオクタデセン内で合成されたガンマ型酸化ガリウムナノ結晶のFTIRスペクトルと一致する。ガンマ型酸化ガリウムナノ結晶のX線回折(XRD)パターンを図2に示す。
【0069】
実施例2
[0083] 塩化マグネシウムとオレイン酸ナトリウムの室温反応から作成され精製されたオレイン酸マグネシウム(Mg(oleate))を窒素雰囲気下で310℃まで加熱してこの温度に2時間維持した。次に、材料を室温まで冷却し、固体をトルエンで抽出した。ナノ結晶をメタノールで沈殿させ、遠心分離して沈殿物を収集し、トルエン内で溶解して分析した。酸化マグネシウムナノ結晶のXRDパターンを図3に示す。ブラッグ反射のシェラー分析に基づいて、結晶状態の粒子は直径が約11nmである。
【0070】
実施例3
[0084] 酢酸マグネシウム四水和物(0.41g)とオレイン酸(0.64g)(Mgとオレイン酸の比が1:1.2)とをフラスコで混合した。混合物を165℃まで加熱して、水分を除去するために窒素ストリーム下でこの温度に90分間維持した。結果として得られた材料は液体であった。次に、液体材料を310℃まで加熱して、この温度に90分間維持し、その後、室温まで冷却した。ヘキサンを用いて材料を抽出し、ナノ結晶をブタノール/メタノール混合物で2回沈殿させた。最終的な沈殿物をヘキサン内で溶解して分析した。材料のXRDパターンを図4に示す。ブラッグ反射のシェラー分析に基づいて、粒子は直径が約7nmである。
【0071】
実施例4
[0085] オレイン酸インジウムを窒素雰囲気下で300℃まで加熱してこの温度に40分間維持した。次に、材料を室温まで冷却し、固体をヘキサンで抽出した。ナノ結晶をブタノールで沈殿させ、遠心分離して沈殿物を収集し、ヘキサン内で再溶解した。次に、ナノ結晶をメタノールで沈殿させ、収集された沈殿物をヘキサン内で溶解して分析した。酸化インジウムナノ結晶のXRDパターンを図5に示す。
【0072】
実施例5
[0086] インジウムアセチルアセトナート(In(acac)、1.64g)とオレイン酸(0.887g)(金属と配位子の比が1:0.75)を窒素雰囲気下で300℃まで加熱してこの温度に30分間維持した。次に、材料を室温まで冷却し、固体をヘキサンで抽出した。ナノ結晶をブタノールで沈殿させ、沈殿物をヘキサン内で収集して再溶解し、メタノールで沈殿させた。沈殿物をヘキサン内で溶解して分析した。酸化インジウムナノ結晶のXRDパターンを図6に示す。200mbarの真空下で乾燥した後で収集されたInナノ結晶の質量は0.6322gであった。Inナノ結晶の熱重量分析(TGA)は、収集された材料の73%がInである(配位子を含まない)ことを示す。したがって、キャッピング配位子を除くInの収率は83%である。比較のために、従来技術のこれまでの方法を用いて、窒素雰囲気下の300℃の20mlのオクタデセン溶媒内のインジウムアセチルアセトナート(In(acac)、1.64g)とオレイン酸(0.887g)からInナノ結晶を合成し、この温度に30分間維持した。200mbarの真空下で乾燥した後で収集されたInナノ結晶の質量は、0.5891gであった。Inナノ結晶のTGAは、50%の残留質量を示し、これは53%のInの収率に相当する。
【0073】
実施例6
[0087] 金属と配位子のモル比が1:3のガリウムアセチルアセトナート(Ga(acac))とラウリン酸を窒素雰囲気下で310℃まで加熱してこの温度に60分間維持した。酸化ガリウムナノ結晶のXRDパターンを図7に示す。
【0074】
[0088] この反応の生成物は、非極性溶媒に不溶性である。この実施例は、反応を配位子の沸点温度以下の温度に維持することの重要性を示している(ラウリン酸の沸点は760mmHgで299℃である)。
【0075】
実施例7
[0089] インジウムアセチルアセトナート、ガリウムアセチルアセトナート(Ga(acac):In(acac)の比が1:1)及び複合金属と配位子のモル比が1:1.2のオレイン酸の混合物を窒素雰囲気下で300℃まで加熱してこの温度に60分間維持した。次に、材料を室温まで冷却し、固体をヘキサンで抽出した。ナノ結晶をブタノールで沈殿させ、沈殿物を収集し、ヘキサン内で再溶解し、メタノールで沈殿させた。最終的な沈殿物をヘキサン内で溶解して分析した。酸化ガリウムインジウムナノ結晶のXRDパターンを図8に示す。
【0076】
実施例8
[0090] 金属と配位子の比が1:2の酢酸マグネシウム四水和物(0.49g)とオレイン酸(1.28g)をフラスコ内で混合した。混合物を165℃まで加熱して窒素流下でこの温度に1時間維持した。次に、反応物を300℃まで加熱し、この温度に75分維持し、その後、溶液を室温まで冷却した。材料をヘキサン内で溶解し、メタノール/ブタノール混合物で沈殿させた。XRD分析は、MgOの形成を反映していない(図9を参照)。
【0077】
実施例9
[0091] 金属と配位子の比が1:1.2の酢酸マグネシウム四水和物(0.82g)とオレイン酸(1.28g)をフラスコ内で混合した。混合物を165℃まで加熱して窒素流下でこの温度に90分間維持した。次に、反応混合物を310℃まで加熱してこの温度に10分間維持し、その後、室温まで冷却した。トルエンを添加して溶液を得て、メタノール/エタノールの混合物を用いて形成された材料を沈殿させた。遠心分離で沈殿物を収集し、トルエン内で再溶解し、ブタノールで沈殿させた。遠心分離の後に白い沈殿物が収集された。FTIR及びXRD分析(図10を参照)は、MgOの形成を示さない。したがって、単一原料の金属−配位子錯体と金属−配位子混合物が予測ナノ結晶形成温度(この例では310℃)に維持される時間の長さは、コロイド状ナノ結晶が形成されるか否かに影響する。
【0078】
実施例10
[0092] 塩化マグネシウムとオレイン酸ナトリウムの室温反応から作成され精製されたオレイン酸マグネシウム(Mg(oleate)、1.085g)を130℃まで加熱して10分間排気して残留溶媒又は水分を除去した。次の材料を窒素雰囲気下で310℃まで加熱し、この温度に2時間維持した。約60℃まで冷却した後、5mLのトルエンを添加して溶液を生成した。ナノ結晶を5mLのメタノールで沈殿させ、遠心分離で収集した沈殿物をトルエン内で再溶解した。ナノ結晶を再びメタノールで沈殿させた。収集した沈殿物をヘキサン内で溶解し、溶液を遠心分離して不溶性材料を除去した。溶媒を真空内で除去し122mgの材料を得た。ナノ結晶のTGAは、46%の残留質量を提供する。これは、77%の収率に相当する56.1mgのMgO(配位子がない)が収集されたことを示す。
【0079】
[0093] 比較のために、従来技術のこれまでの方法を用いて、7mLのオクタデセン内のオレイン酸マグネシウム(1.01g)からMgOナノ結晶を合成した。溶液を130℃まで加熱し、この時点で溶液を2分間排気した。次に溶液を窒素雰囲気下で310℃まで加熱して、この温度に2時間維持してから室温まで冷却した。ブタノール(15mL)を用いてナノ結晶を沈殿させ、混濁した溶液を遠心分離した。沈殿物をトルエン内で再溶解し、5mLのメタノールを添加してナノ結晶を沈殿させた。遠心分離の後、収集した沈殿物をヘキサン内で溶解し、溶液を遠心分離して不溶性材料を除去した。溶媒を真空内で除去し70mgの材料を得た。ナノ結晶のTGAから58.5%の残留質量が得られた。これは、59%の収率に相当する41mgのMgO(配位子がない)が収集されたことを示す。
【0080】
実施例11
[0094] 金属と配位子の比が1:0.75のインジウムアセチルアセトナート(1.65g)とオレイン酸(0.95mL)を窒素雰囲気下で270℃まで加熱してこの温度に90分間維持した。次に、材料を室温まで冷却し、固体をヘキサンで抽出した。酸化インジウムナノ結晶をブタノールで沈殿させ、沈殿物をヘキサン内で収集して再溶解し、メタノールで沈殿させた。ナノ結晶をヘキサン内で溶解して遠心分離し、不溶物を除去した。図11Aのナノ結晶の透過型電子顕微鏡(TEM)画像は、平均直径が9nmの個々の粒子を有するナノ結晶の小さい塊を示す。酸化インジウムがXRD分析で確認される。
【0081】
[0095] 同様に、金属と配位子の比が1:3のインジウムアセチルアセトナート(0.55g)とオレイン酸(1.27mL)を窒素雰囲気下で300℃まで加熱してこの温度に90分間維持した。次に、材料を室温まで冷却し、固体をヘキサンで抽出した。酸化インジウムナノ結晶をブタノールで沈殿させ、沈殿物をヘキサン内で収集して再溶解し、メタノールで沈殿させた。ナノ結晶をヘキサン内で溶解して遠心分離し、不溶物を除去した。図11Bのナノ結晶のTEM画像は、ナノ結晶の大きい塊を示す。酸化インジウムがXRD分析で確認される。
【0082】
[0096] TEM画像によって、金属−配位子の比を変更することで、粒径と凝集体サイズを調整することができることが確認された。特に、金属に対する配位子の量が増加するにつれて、粒径と凝集体サイズが増加した。
【0083】
実施例12
[0097] モル比が1:10のミリスチン酸インジウム(In(My)、0.653g)とオクタデカノール(2.16g)を50℃で30分間ガス抜きし、次に、窒素雰囲気下で280℃まで加熱してこの温度に10分間維持した。材料を冷却し、反応混合物をトルエンで抽出した。ナノ結晶をエチルアセテートで2回沈殿させ、最終沈殿物をトルエン内で溶解して遠心分離して不溶物を除去した。図12Aのナノ結晶のTEM画像は、十分に散乱した粒子を示す。酸化インジウムがXRD分析で確認される。
【0084】
[0098] モル比が1:5のミリスチン酸インジウム(In(My)、0.653g)とオクタデカノール(1.08g、0.004モル)を70℃で20分間ガス抜きし、次に、窒素雰囲気下で280℃まで加熱してこの温度に10分間維持した。材料を冷却し、反応混合物をトルエンで抽出した。ナノ結晶をエチルアセテートで2回沈殿させ、最終沈殿物をトルエン内で溶解して遠心分離して不溶物を除去した。図12Bのナノ結晶のTEM画像は、様々な形状の非凝集体粒子を示す。粒子は、図12Aに示すサンプルよりも大きい。酸化インジウムがXRD分析で確認される。
【0085】
[0099] TEM画像によって、活性化剤の量を変えることで粒径を調整することができることが確認された。
【0086】
実施例13
[00100] モル比が1:5のミリスチン酸インジウム(In(My)、0.653g)と1,2−ドデカンジオール(0.816g)を70℃で60分間ガス抜きし、次に、窒素雰囲気下で280℃まで加熱してこの温度に10分間維持した。結果として得られた溶液を冷却し、反応混合物をトルエンで抽出した。ナノ結晶をエチルアセテートで2回沈殿させ、最終沈殿物をヘキサン内で溶解して遠心分離して不溶物を除去した。図13のナノ結晶のTEM画像は、分散度が改善され粒径が図12の結果よりも小さい酸化インジウムナノ結晶を示す。これは、活性化剤を変えることによるサイズ調整可能性を示す。酸化インジウムがXRD分析で確認される。
【0087】
[00101] 以上、本明細書で例示的な実施形態及び特徴を参照しながら本発明をさまざまに開示してきたが、上記の実施形態及び特徴は本発明を限定するものではなく、当業者は、本明細書内の開示に基づいてその他の変形形態、修正形態及びその他の実施形態を思い付くことができるであろうことを理解されたい。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に収まるそのような変形形態、修正形態及び代替実施形態をすべて包含するものと広く解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性コロイド状ナノ結晶を合成する方法であって、少なくとも1種類の単一原料の金属−配位子錯体、金属−配位子混合物、又はそれらの組合せを含む反応混合物を、無溶媒の環境で、反応混合物をコロイド状ナノ結晶を含む材料に熱分解するのに有効な温度及び時間条件下で加熱するステップを含む、
方法。
【請求項2】
前記加熱ステップが、ガスの存在下で実行され、前記ガスがN、Ne、Ar、Kr、Xe、空気、NO、O、及びそれらの組合せからなる群から選択される種を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
温度が、約30℃〜約350℃の範囲内にある、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記反応混合物が、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ce、Pr、Nd、Dy、Th、Eu、Gd、Er、La、B、Al、Ga、In、Ge、Sn、Sb、Bi、Pb、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種類の金属を含む、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応混合物が、硫酸塩、スルホネート、スルフィネート、リン酸塩、ホスファイト、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスフィネート、ホスホネート、カルボキシレート、アルコール、チオール、アミン、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種類のヘッド基を有する少なくとも1種類の界面活性剤を含む、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応混合物が、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、2−エチルヘキサン酸、アゼライン酸、パルミチン酸、リノレン酸、エルカ酸、ステアリルアミン、オレイルアミン、エルカアミン、ラウリルアミン、デカノール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、デカンチオール、ドデカンチオール、テトラデカンチオール、ヘキサデカンチオール、トリオクチルホスフィン、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、メチルディフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ベンジルジフェニルホスフィン、トリオクチルホスフィンオキシド、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフィンオキシド、トリヘプチルホスフィンオキシド、トリペンチルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステリルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリシクロデカンジメタノールホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、オクタデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ペンタデシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、デシルホスホン酸、デシルメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジオレイルスルホキシド、ジラウリルスルホキシド、ジステアリルスルホキシド、トシルオキシフェニルスルホン、トシルオキシビニルスルホン、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種類の界面活性剤を含む、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記コロイド状ナノ結晶が、金属酸化物を含む、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記コロイド状ナノ結晶が、混合金属酸化物を含む、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記コロイド状ナノ結晶が、前記金属酸化物に付着した配位子の少なくとも部分的な層によって安定化される、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記コロイド状ナノ結晶が、約1nm〜約30nmの範囲内の直径を有する、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記コロイド状ナノ結晶が、実質的に結晶状態である、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
時間が、約10秒〜約240分の範囲内にある、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
(i)単離と精製のために前記コロイド状ナノ結晶を冷却するステップ、
(ii)少なくとも1種類の非極性有機溶媒で前記材料から前記コロイド状ナノ結晶を抽出して抽出混合物を形成し、前記抽出混合物を少なくとも1種類の極性溶媒と混合して前記コロイド状ナノ結晶を沈殿させるステップ、
(iii)前記副生成物を実質的に溶解することなく前記コロイド状ナノ結晶を選択的に溶解するステップ、及び
(iv)前記コロイド状ナノ結晶を実質的に溶解することなく前記副生成物を選択的に溶解するステップからなる群から選択される少なくとも1つの追加工程をさらに含む、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記反応混合物を加熱する前記方法が、ナトリウム塩、ポリソルベート80、還元剤類、水酸化物基、炭化水素溶媒、及びそれらの組合せの実質的な不在下で実行される、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記反応混合物が、少なくとも1種類の単一原料の金属−配位子錯体を含む、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応混合物が、金属−配位子混合物を含む、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物が、金属−配位子混合物と、少なくとも1種類の単一原料の金属−配位子錯体とを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の長鎖界面活性剤とを無溶媒の環境で、前記金属−配位子混合物を生成するのに有効な温度及び時間条件下で反応させることで前記金属−配位子混合物が生成される、
請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1種類の金属塩が、ギ酸塩、酢酸塩、アセチルアセトネート、酸化物、アルコキシド、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸塩、及び硝酸塩からなる群から選択される陰イオン基を含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
温度が、約30℃〜約200℃の範囲内にあり、時間が、約10分〜約120分の範囲内にある、
請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記反応混合物が、少なくとも1種類の活性化剤をさらに含む、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種類の活性化剤が、アルコール類、ジオール類、アミン類、カルボン酸類、酸塩化物類、カルボン酸塩類、酸無水物類、並びにこれらの複数の反応部位を含む分子、オリゴマー及びポリマー、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含む、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記環境が、無溶媒である、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
実質的に結晶状態のMgOを含むナノ結晶であって、
前記ナノ結晶が、非極性溶媒に可溶性である、
酸化マグネシウムナノ結晶。
【請求項25】
実質的に結晶状態のGaIn2−x(x=0〜2)を含むナノ結晶であって、
前記ナノ結晶が、非極性溶媒に可溶性である、
酸化ガリウムインジウムナノ結晶。

【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−502946(P2011−502946A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534216(P2010−534216)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/083592
【国際公開番号】WO2009/065010
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(599006351)アドバンスド テクノロジー マテリアルズ,インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】