説明

可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置及び可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役方法

【課題】陸上側の搬送用基地と船舶との間で、可燃性ガスを発生するガスハイドレート貨物を、バラ積み貨物として荷役するガスハイドレート荷役装置及びガスハイドレート荷役方法を提供する。
【解決手段】第1の搬送装置が配設される上部搬送部20と、第2の搬送装置が配設される下部搬送部30と、この上部搬送部20と下部搬送部30を連結する垂直搬送部40と、下部搬送部30から下に降りている垂直伸縮搬送部50とを、陸上を岸壁に沿って移動する前記支持台車10に搭載し、前記上部搬送部20の陸上側の接続部20aを、搬送用基地3の取付部3aと着脱可能に形成すると共に、前記上部搬送部20の海上側の垂直搬送部40を旋回上部の下に旋回下部を旋回可能に接続し、更に、前記垂直伸縮搬送部50を、船倉の上下変位に対応して伸縮可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上側の搬送用基地と船舶との間で、ガスハイドレート等の可燃性ガスを発生する物を、固形バラ積み貨物として搬送して荷役することができる、可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置及び可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天然ガスをハイドレート化して、この固体状の天然ガスハイドレート(NGH)を輸送することが考えられている。この輸送方法としては、この天然ガスハイドレートは可燃性ガスを発生するため、気密保持を行い易い配管内のスラリー輸送等の固液混合輸送が多く提案されている。
【0003】
しかしながら、固液混合輸送の場合には、ドライ状態の天然ガスハイドレートの輸送に比べて、実際に使用できない搬送用液体も搬送する必要があるため、搬送効率が低下する上に、搬送前の貯蔵段階から搬送に移る時に搬送用液体を混入する必要があり、また、搬送の終端や貯蔵段階や使用段階において搬送用液体を分離及び除去する固液分離を行う必要がある。また、この固液分離により分離した搬送用液体の処理も必要となる。
【0004】
そのため、固液混合輸送ではなく、天然ガスハイドレートをドライなペレット等の粒状体のままで搬送及び貯蔵することが好ましい。この天然ガスハイドレートをバラ積み貨物として荷役してバラ積み貨物船で運搬する際には、可燃性ガスを発生するため、その搬送経路に於いて可燃性ガスの大気中への放出や空気の流入を防止することが必要となり、陸上の搬送用基地とバラ積み貨物船との間で荷役を行うための専用のガスハイドレート荷役装置が必要となる。
【0005】
このような荷役装置に関して、メタンガスハイドレートをドライの状態で揚げ荷役する装置として、メタンガスハイドレートペレットを、フレキシブルな吸入管からメタンガスを排気ポンプで排気することにより吸引すると共に、排気口の手前のノズル部で加速されたメタンガスハイドレートペレットを、開閉自在隔膜を通過したところで、搬送用メタンガス噴出ノズルから高圧のメタンガスを噴出して、管内搬送することにより、不凍液や低温液化ガス等の液体冷媒を使用しないで、運搬船や貯蔵タンクからドライの状態で荷揚げ及び搬送するメタンガスハイドレートペレット荷揚げ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、この装置は、メタンガスの気流によりメタンガスハイドレートを吸引及び搬送するものであり、管内固気混合輸送であるため、船倉内の集荷等の非常に短い距離の搬送には適しているが、比較的長い距離の搬送には、使用するメタンガス量や気流を生じるための動力が多くなり、適しているとは言えない。
【0007】
また、石炭等のバラ積み貨物を輸送船から陸揚げするための荷役装置として多くのアンローダー装置が提案されており、例えば、走行体の上に、旋回テーブルを設け、この旋回テーブルと共に旋回する搬送部を、直交して接続された垂直部と水平部とに無端状のバケットコンベアを巻き掛けて構成し、このバケットコンベアの垂直部の下端を掻取部とすると共に水平部の一端を排出部とする連続アンローダが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
しかしながら、これらの荷役装置では、ガスハイドレート等のように可燃性ガスを発生する貨物では必要な、外部との気密保持に関しては特に説明されていない。これらの外部との気密保持は、陸上側の搬送用基地と船舶との搬送区間の全領域で必要であるが、特に、荷役装置と陸上側の搬送用基地との接続部、荷役装置の旋回部、荷役装置の伸縮部における気密保持が難しいものとなる。
【0009】
現状のバラ積み貨物に対する荷役装置では、防塵対策はなされているものの、可燃性ガスの発生を考慮する必要が無かったため、気密保持に対しては考慮されておらず、そのまま使用することはできない。また、現状のバラ積み貨物に対する荷役装置は、必ずしも、気密保持に適した構成をしていない。
【0010】
一方、洋上オフローディング装置を、第1洋上浮体側から固形物を受ける垂直コンベアと、この垂直コンベアで上昇された固形物を受け入れ部で受けて先端部に移送する水平コンベアと、この水平コンベアの先端部近傍に配置され、固形物を落下させながら第2洋上浮体に導くシューターとから構成すると共に、シューターを第1洋上浮体と第2洋上浮体の間の相対変位を吸収する伸縮性を備えた蛇腹構造で形成して、天然ガスハイドレートペレットなどの固体物を、洋上生産設備や輸送船等の複数の洋上浮体間で、海象によって生じる洋上浮体間における相対変位を吸収しながら、移送することも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0011】
しかしながら、この洋上オフローディング装置では、気密保持構造に関しては触れておらず、簡便な構造で適用しやすい気密保持用の構成が必要になる。
【特許文献1】特開2004−131272号公報
【特許文献2】特開平11−49374号公報
【特許文献3】特開2006−15910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ペレット状等のガスハイドレート等の可燃性ガスを発生する貨物を、陸上側の搬送用基地と船舶との搬送区間で、外気との間で気密状態を保持しながら、荷役することができる可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置及び可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置は、陸上側の搬送用基地と船舶との間で、可燃性ガスを発生するバラ積み貨物を荷役する荷役装置であって、支持台車と上部搬送部と下部搬送部と、この上部搬送部と下部搬送部を連結する垂直搬送部と、下部搬送部から下に降りている垂直伸縮搬送部とを有して構成され、前記上部搬送部と、前記下部搬送部と、前記垂直搬送部と、前記垂直伸縮搬送部は、陸上を岸壁に沿って移動する前記支持台車に搭載され、前記上部搬送部は、陸上側に配置される一端側の接続部が、前記搬送用基地の取付部と着脱可能に形成されると共に、海上側に配置される他端側で前記垂直搬送部に接続し、前記下部搬送部は陸上側に配置される一端側で前記垂直搬送部に接続すると共に、海上側に配置される他端側で前記垂直伸縮搬送部に接続し、前記垂直搬送部は、前記下部搬送部が前記上部搬送部に対して旋回可能になるように、旋回上部と該旋回上部に旋回可能に接続した旋回下部とを有して構成され、前記垂直伸縮搬送部は、下端部の上下変位に対応して伸縮可能に構成され、更に、前記接続部と前記取付部との間の気密構造、前記旋回上部と前記旋回下部との間の気密構造、前記垂直伸縮搬送部の伸縮部分における気密構造のいずれか一つに、仕切り部を液溜まり部に挿入し、該液溜まり部を内周側室と外周側室に分けると共に、前記内周側室と前記外周側室の下部では液体が流通するように連通させて構成し、前記液溜まり部に入れた液体によって、前記内周側室の上部と前記外周側室の上部との間を気密にする気密構造を用いるように構成される。
【0014】
この構成によれば、この気密構造を用いることにより、液体のU字管効果を用いて気密を保持することができる。そして、液封であるため、比較的簡単な構造で、簡便かつ容易に、気密性を維持できるので、小さな開口部だけでなく、大きな開口部であっても、接続状態では気密性を定常的に確保することができる。また、液封部分が外周側の部分のみで収まるので、構造を単純化することができる。なお、この液封とは液体を封じ込めることではなく、液体による気体封入、言い換えれば、液溜まり部に溜まった液体により気密性を保つことを意味する。
【0015】
また、切り離し及び接続や伸縮部の伸縮に際しての上下移動や旋回における、気密のための抵抗も液体の粘性による抵抗であるため、上下移動速度や旋回速度が遅い場合には非常に小さくすることができる。
【0016】
なお、液体を用いるため、旋回方向は水平方向であることが好ましいが、液溜まり部の形状や仕切り部の形状を工夫することにより、水平方向からある程度傾斜した方向に対して旋回する場合にも適用することができる。また、切り離し及び接続や伸縮のための移動方向も鉛直方向(上下方向)であることが好ましいが、液溜まり部の形状や仕切り部の形状を工夫することにより、鉛直方向からある程度傾斜した方向に対して伸縮する場合にも適用することができる。
【0017】
そして、液溜まり部に入れる液封用の液体としては、不凍液や海水や水等が考えられる。なお、海水又は水を使用すると、簡便に利用できる上、万一、液封用の液体が漏れ出しても、海域や水域の汚染を回避することができ、また、液封用液体を確保するためのタンクが不要となるので、環境汚染の問題や液封用液体の貯蔵の問題も回避できる。
【0018】
通常は、伸縮部の伸縮量による液溜まり部への仕切り部の挿入量の変化による液溜まり部の容積の変化分と、液封用の液体の蒸発や漏れ等による減少分とを自動的に補うため、液体補充タンクを液溜まり部に外からパイプで接続し、液体の液面高さをモニターしながら液体を補充する。これにより、液溜まり部内の液体量を常に適切に保つと共に、液体の液面高さの異常な上昇又は異常な下降の検知で内部圧力の異常を検知する。
【0019】
また、内圧と外圧(大気圧)との圧力差が大きい場合には、比重の大きい液体を用いることが好ましく、内圧の圧力変動が大きい場合には粘性の大きな液体を用いて、液位の変動を小さくすることが好ましい。また、火災時に液封用の液体が蒸発、燃焼することは好ましくないため、蒸発し難い液体を用いたり、不燃性の液体を用いたり、液体表面に蒸発や燃焼を防ぐ別種の液体を注入するなど、液体を多層に設けてもよい。
【0020】
また、上記の接続部の構造において、前記液溜まり部に入れた液封用の液体を循環させると、天然ガスハイドレート等の低温の貨物の場合であっても、液封用の液体が凍ることを防止できる。この循環においては、循環用配管と循環ポンプとにより、新たな液体を供給して循環させてもよく、液溜まり部と液溜まり部の外部に当たる熱交換部との間を再循環させてもよい。なお、この再循環では、循環用配管が熱交換部を兼用してもよい。
【0021】
更に、この構成では、支持台車を設けると共に、上部搬送部の接続部が、搬送用基地の取付部と着脱可能に形成されることにより、容易に陸上側の搬送用基地を適宜変更しながら荷役することができる。なお、この上部搬送部の接続部と搬送用基地の取付部との位置関係は、通常は取付部を上に接続部をその下とするが、この位置関係に限定するものではない。
【0022】
また、第1の搬送装置が配設される上部搬送部と、第2の搬送装置が配設される下部搬送部とを、旋回可能に構成したので、船倉内において水平方向に均等に荷役し易くなる。また、陸上側の搬送用基地に対する荷役可能な範囲が広くなるため、支持台車の移動が少なくなり、荷役効率を上げることができる。また、海上側に配置される垂直搬送部以下を旋回する構成としているので、旋回部分の重量を減少でき、旋回部の構造を簡素化できる。特に、旋回可能とする垂直搬送部を、海上に突出した部位に設けると、下部搬送部の長さの割に、より荷役可能な船倉の範囲を広げることができる。なお、この旋回方向は通常は水平面内における旋回とするが、多少の傾斜、例えば10°程度は許容される。
【0023】
更に、船倉に連結される部位に、垂直伸縮搬送部を設けたので、水位の変化や船舶の喫水変化による船倉と下部搬送部との距離の変化に容易に対応することができる。また、船倉に最も近い部位に設けたので、垂直伸縮搬送部は自重を支えればよいので、伸縮機構をより簡略化できる。特に、石炭等のバラ積み貨物のアンローダー装置のように、鉛直面内で搬送部全体を鉛直面内で傾斜させて掻取部を船倉内に挿入したり、又は、船倉内から引き抜いたりしないので、傾斜機構が不要となり、気密保持をし易くなる。なお、この垂直伸縮搬送部は、鉛直方向に伸縮するが、厳密に鉛直方向である必要はなく、例えば、10°程度の傾斜も許容される。
【0024】
これらの構成により、可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置の接続部、旋回部、垂直伸縮部の気密性を確保できると共に、容易に切り離し及び接続や旋回や伸縮ができる。そのため、接続状態においては、可燃性ガス等が発生しても、可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置の外部に漏出することが無く、また、逆に外気が可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置の内部に入ることも無い。従って、この可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置で、天然ガスハイドレート等の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物を搬送する場合に、外気と遮断しながら、安全に搬送することができる。
【0025】
上記の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置において、上部搬送部と下部搬送部における搬送を水平方向に搬送するベルトコンベアの搬送によって行うと共に、垂直搬送部と垂直伸縮搬送部における搬送を自然落下による搬送又は搬送物を垂直方向に搬送するベルトコンベアによる搬送で行うように構成すると、ドライのガスハイドレート等の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の搬送に用いる搬送装置を、単純な装置の組み合わせで構成できる。
【0026】
上記の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置において、前記上部搬送部と前記垂直搬送部と前記下部搬送部と前記垂直伸縮搬送部とを、前記搬送用基地の取付部回りに旋回又は揺動可能に構成すると、搬送用基地に対する荷役範囲を著しく広くすることができるので、搬送用基地の数の減少と、接続回数の減少による荷役効率の向上を図ることができる。
【0027】
上記の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置は、可燃性ガスを発生するバラ積み貨物として、ガスハイドレートを荷役するのに最適な荷役装置となる。しかしながら、本発明は、ガスハイドレートに限定されるものではなく、その他の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物に対しても適用可能である。
【0028】
上記の目的を達成するための本発明の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役方法は、陸上側の搬送用基地に接続可能な上部搬送部と、この上部搬送部に垂直搬送部を介して旋回可能に連結する下部搬送部と、この下部搬送部から下に降りている垂直伸縮搬送部とを支持台車に搭載した可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置における、陸上側の搬送用基地と船舶との間で可燃性ガスを発生するバラ積み貨物を荷役する方法であって、前記接続部と前記取付部との間の気密構造、前記旋回上部と前記旋回下部との間の気密構造、前記垂直伸縮搬送部の伸縮部分における気密構造のいずれか一つで、仕切り部を液溜まり部に挿入し、該液溜まり部を内周側室と外周側室に分けると共に、前記内周側室と前記外周側室の下部では液体が流通するように連通させて構成し、前記液溜まり部に入れた液体によって、前記内周側室の上部と前記外周側室の上部との間を気密にする気密構造を用いながら、前記船舶の荷役対象の船倉に対して最寄りの陸上側の前記搬送用基地の取付部に、前記上部搬送部の一端側の接続部で接続し、その後、前記搬送用基地からの可燃性ガスを発生するバラ積み貨物を、前記上部搬送部、前記垂直搬送部、前記下部搬送部、前記垂直伸縮搬送部を経由して、前記垂直伸縮搬送部の下端に配置された前記荷役対象の船倉に搬送する方法である。
【0029】
この方法によれば、液封であるため、接続上部と接続下部との切り離し及び接続、旋回部の旋回、垂直伸縮部の伸縮が容易となる上に、接続状態では、気密性を確保でき、大きな開口部であっても、気密性を定常的に確保することができる。また、2個以上の筒状体で形成した伸縮部においても、容易に気密性と伸縮性を確保できるので、接続上部と接続下部との切り離し(分離)及び接続、垂直伸縮部の伸縮を容易に行うことができる。
【0030】
上記のガスハイドレート荷役方法において、前記上部搬送部と前記下部搬送部における搬送を水平方向に搬送するベルトコンベアの搬送によって行うと共に、前記垂直搬送部と前記垂直伸縮搬送部における搬送を自然落下による搬送又は搬送物を垂直方向に搬送するベルトコンベアによる搬送で行うと、ドライのガスハイドレートの搬送に用いる搬送装置を、単純な装置の組み合わせで構成できる。
【0031】
上記の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役方法は、可燃性ガスを発生するバラ積み貨物として、ガスハイドレートを荷役するのに最適な荷役方法となる。しかしながら、本発明は、ガスハイドレートに限定されるものではなく、その他の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物に対しても適用可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置によれば、接続部と取付部との間の気密構造、旋回上部と旋回下部との間の気密構造、垂直伸縮搬送部の伸縮部分における気密構造のいずれか一つに、液体のU字管効果を利用した液封による気密構造を採用しているので、非常に簡単な構成で接続部における気密性と伸縮性を確保することができる。また、この液封による気密構造は、静的な装置となるため、緻密な制御や複雑なメンテナンス等が不要となる。更に、液封部分を適用部分の外周近傍のみに収めることができ、伸縮のための構造と兼用することもできるので、適用部分の構造を著しく単純化することができる。
【0033】
その上、本発明の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置の支持台車等の構成によれば、陸上側の搬送用基地を適宜変更しながら荷役することができると共に、陸上側の搬送用基地に対する荷役可能な範囲が広くなるため、支持台車の移動が少なくなり、荷役効率を上げることができる。
【0034】
また、海上側に配置される垂直搬送部以下を旋回する構成としているので、旋回部分の重量を減少でき、旋回部の構造を簡素化できる。更に、船倉に連結される部位に垂直伸縮搬送部を設けたので、石炭等のバラ積み貨物のアンローダー装置のように、鉛直面内で搬送部全体を鉛直面内で傾斜させて掻取部を船倉内に挿入したり、又は、船倉内から引き抜いたりしないので、傾斜機構が不要となり、気密保持をし易くなる。
【0035】
また、上部搬送部と垂直搬送部と下部搬送部と垂直伸縮搬送部とを、搬送用基地の取付部回りに旋回又は揺動可能に構成することにより、搬送用基地に対する荷役範囲を著しく広くすることができ、搬送用基地の数の減少と、接続回数の減少による荷役効率の向上を図ることができる。
【0036】
従って、本発明の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置によれば、ペレット状等のガスハイドレート等の可燃性ガスを発生する貨物を、陸上側の搬送用基地と船舶との搬送区間で、外気との間で気密状態を保持しながら、荷役することができ、また、本発明の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役方法によっても同様な効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明に係る可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置及び可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役方法の実施の形態について、ガスハイドレート荷役装置及びガスハイドレート荷役方法を例にして説明する。図1及び図2に、本発明の実施の形態の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置を示し、図3及び図4に、接続部の構造を、図5及び図6に旋回部の構造を、また、図7及び図8に、垂直伸縮搬送部の構造をそれぞれ示す。なお、ここでは、可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の例としてガスハイドレートで説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物に対しても適用可能である。
【0038】
図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置であるガスハイドレート荷役装置1は、ペレット状等の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物としてのガスハイドレートAを、陸上4の搬送用基地3とバラ積み貨物船(船舶)2の船倉2aとの間で、積み荷役と揚げ荷役等の荷役するための装置であり、ガスハイドレートAは可燃性ガスを発生するため、荷役中は気密性を保持するように構成される。
【0039】
最初に、ガスハイドレート荷役装置1の構成について説明する。このガスハイドレート荷役装置1は、支持台車10と上部搬送部20と下部搬送部30と、この上部搬送部20と下部搬送部30を連結する垂直搬送部40と、下部搬送部30から下に降りている垂直伸縮搬送部50とを有して構成される。この上部搬送部20と、下部搬送部30と、垂直搬送部40と、垂直伸縮搬送部50は、陸上4を岸壁に沿って移動する支持台車10に搭載されている。
【0040】
上部搬送部20は、陸上側に配置される一端側の上側では、接続下部(接続部)20aが、搬送用基地3の接続上部(取付部)3aと着脱可能及び旋回可能に接続できるように構成され、海上側に配置される他端側の下側では垂直搬送部40に接続し、この垂直搬送部40を介して下部搬送部30に接続して構成される。この上部搬送部20には水平ベルトコンベア等で形成される第1の搬送装置21が配設される。
【0041】
また、下部搬送部30は、陸上側に配置される一端側の上側では垂直搬送部40に接続し、海上側に配置される他端側の下側では垂直伸縮搬送部50に接続する。この下部搬送部30には水平ベルトコンベアなどで形成される第2の搬送装置31が配設される。
【0042】
垂直搬送部40は、下部搬送部30が上部搬送部20に対して旋回可能になるように、旋回上部41とこの旋回上部41に旋回可能に接続した旋回下部42とを有して構成される。また、垂直伸縮搬送部50は、下端部53fの上下変位に対応して伸縮可能に構成される。
【0043】
このガスハイドレート荷役装置1では、上部搬送部20と下部搬送部30における搬送を水平方向に搬送するベルトコンベア21の搬送によって行うと共に、垂直搬送部40と垂直伸縮搬送部50における搬送を自然落下による搬送又は垂直方向に搬送するベルトコンベア(図示しない)による搬送で行う。
【0044】
そして、接続下部(接続部)20aと接続上部(取付部)3aとの間の気密構造、旋回上部41と旋回下部42との間の気密構造、垂直伸縮搬送部50の伸縮部分における気密構造は、仕切り部を液溜まり部に挿入し、この液溜まり部を内周側室と外周側室に分けると共に、内周側室と外周側室の下部では液体が流通するように連通させて構成し、液溜まり部に入れた液体によって、内周側室の上部と外周側室の上部との間を気密にする気密構造を用いて構成される。以下、これらの構造について説明する。
【0045】
図3及び図4に示すように、搬送用基地3の接続上部(取付部)3aと、上部搬送部20の接続下部(接続部)20aの気密構造は、次にように構成される。
【0046】
接続上部3aは、搬送用基地3の下面側に突出する筒状体3aaに上部フランジ部3abを設けて構成され、搬送用基地3に固定されている。この上部フランジ部3abより下側に筒状体3aaを延長して仕切り部3adを設け、更に、この筒状体3aaの内周側に、カバー3acを設ける。このカバー3acは、接続上部3aを通るガスハイドレートAが、後述する液溜まり部20bd、20cdに入らないように、内周側室20be、20ceを覆うように、下側が狭くなる円錐形状に形成したり、布状のカバーで形成したりして設ける。これにより、液溜まり部20bd、20cdにガスハイドレートAが入って、気密機能を担う部分や切り離しや接続時における可動部分にガスハイドレートAが挟まる等の不具合の発生を非常に簡単な構造で防止できる。
【0047】
接続下部20aは、上方の筒状体20bと下方の筒状体20cと油圧シリンダ(アクチュエータ)20dとから構成され、この下方の筒状体20cと油圧シリンダ20dは、上部搬送部20のケーシングに固定されている。
【0048】
上方の筒状体20bは、その上端に下部フランジ部20aaを設け、その内周側に液溜まり部20bdを設ける。この下部フランジ部20aaは油圧シリンダ20dの上端側に固定され、油圧シリンダ20dの伸縮により上下移動する。この液溜まり部20bdは、外周壁20baと内周壁20bbとで構成される二重壁構造とその底部20bcとからなる。この液溜まり部20bdに液封用の液体Bを供給するために、液体補充タンク20bgが配管20bhにより液溜まり部20bdに接続される。なお、この液溜まり部20bdは、下方の液溜まり部20cdに対しては仕切り部としての役割を果たす。
【0049】
下方の筒状体20cは、外周壁20caと内周壁20cbとで構成される二重壁構造とその底部20ccとからなる液溜まり部20cdを有して構成される。この底部20ccは図3及び図4の構成では、上部搬送部20のケーシングの一部で構成される。この液溜まり部20cdに液封用の液体Bを供給するために、液体補充タンク20cgが配管20chにより液溜まり部20cdに接続される。
【0050】
そして、下方の筒状体20cの液溜まり部20cdに、上方の筒状体20bの液溜まり部20bdで兼用される仕切り部20bdが挿入される。言い換えれば、これらの複数の筒状体20b、20cを一部重複させて上下方向に連続して配置する。これらの筒状体20b、20cの相互の重複部分の長さLbc、言い換えれば、挿入深さLbcを変化させることにより、筒状体の全体としての上下方向の長さLaを変化させる。この上下方向の長さLaの変化は油圧シリンダ20dの伸縮により行う。
【0051】
そして、上部フランジ部3abと下部フランジ部20aaとの接続部分と、2つの筒状体20b、20cの重複部分において、次のような液封による気密構造が設けられる。
【0052】
この接続部分においては、接続上部3aに設けた仕切り部3adを、接続下部20aの上方の筒状体20bに設けた液溜まり部20bdに挿入し、この液溜まり部20bdを内周側室20beと外周側室20bfに分けると共に、内周側室20beと外周側室20bfの下部では液体Bが流通するように連通させて構成する。これにより、液溜まり部20bdに入れた液体BのU字管効果によって、内周側室20beの上部と外周側室20bfの上部との間を液封により気密にする。
【0053】
また、2つの筒状体20b、20cの重複部分においては、上方の筒状体20bの液溜まり部20bdを兼用する仕切り部20bdを、下方の筒状体20cの液溜まり部20cdに挿入し、この液溜まり部20cdを内周側室20ceと外周側室20cfに分けると共に、内周側室20ceと外周側室20cfの下部では液体Bが流通するように連通させて構成し、この液溜まり部20cdに入れた液体Bによって、内周側室20ceの上部と外周側室20cfの上部との間を液封により気密にする。この構成により、2つの筒状体20b、20cで形成した伸縮部においても、容易に気密性と伸縮性を確保できるので、接続上部3aと接続下部20aとの切り離し及び接続を容易に行うことができる。
【0054】
なお、この筒状体の重複は、3つ以上の筒状体においても同様に形成することができるが、上方側の筒状体の仕切り部が下方側の液溜まり部から抜け出すことが無いように、重複量の最大値を規制するようにチェーン等の規制部材を設ける。
【0055】
また、筒状体の数が増加し、仕切り部を液溜まり部で兼用していくと、仕切り部の幅が増加していくので、液溜まり部20bdで仕切り部を兼用せずに、液溜まり部20bdの下側に内周壁20bbの延長の仕切り板等で形成される仕切り部を設けることにより、仕切り部の幅を狭くすることができる。この場合は、液溜まり部20bdが浅くなるので、伸展時の重複部分Lbcが小さくなり易いので、内圧と外圧との差が小さく、また、圧力変動も小さい場合に適している。
【0056】
また、接続上部3aと接続下部20aの形状は、接続上部3aの仕切り部3adが、接続下部20aの液溜まり部20bdに挿入できる構成であればよく、仕切り部3adと液溜まり部20bdの水平断面形状は、相互の回転移動を許す場合には円形とする。なお、回転移動を考慮しなくてもよい場合は、円形に限らず、楕円、多角形等、任意の形状であってもよい。また、液体Bを用いるため、切り離し及び接続のための移動方向は鉛直方向(上下方向)であることが好ましいが、液溜まり部20bdの形状や仕切り部3adの形状を工夫することにより、鉛直方向からある程度傾斜した方向に対して伸縮する場合にも適用することができるようになる。
【0057】
そして、液溜まり部20bd、20cdに入れる液封用の液体Bとしては、比重の大きい液体の利用が考えられるが、天然ガスハイドレートの荷役等で、液溜まり部20bd、20cdが低温となる場合は、不凍液を使用したり、あるいは、海水や水を循環させたりする。海水又は水を使用すると、簡便に利用できる上、万一、液封用の液体Bが漏れ出しても、海域や水域の汚染を回避することができ、また、液封用液体Bを確保するためのタンクが不要となるので、環境汚染の問題や液封用液体の貯蔵の問題も回避できる。
【0058】
更に、伸縮部の伸縮量Lbcによる液溜まり部20bd、20cdへの仕切り部3ad、20bdの挿入よる液溜まり部20bd、20cdの容積の変化分と、液封用の液体Bの蒸発や漏れ等による減少を自動的に補うため、液体補充タンク20bg、20cgから液溜まり部20bd、20cdに液封用の液体Bを供給する。
【0059】
この液体Bの供給に際しては、液体補充タンク20bg、20cgを適当な高さに設置することで、液溜まり部20bd、20cd内の液面高さをモニターし、液溜まり部20bd、20cd内の液量を適切な量として液位を適切な高さに維持するとともに、液体の液面高さの異常な上昇や異常な下降の検知で内部圧力の異常を検知する。
【0060】
また、内圧と外圧(大気圧)との圧力差が大きい場合には、比重の大きい液体を用いることが好ましく、内圧の圧力変動が大きい場合には粘性の大きな液体を用いて、液位の変動を小さくすることが好ましい。また、火災時に液封用の液体が蒸発、燃焼することは好ましくないため、蒸発し難い液体を用いたり、不燃性の液体を用いたり、液体表面に蒸発や燃焼を防ぐ別種の液体を注入するなど、液体を多層に設けてもよい。
【0061】
そして、更に、接続状態で、搬送用基地3の接続上部3a、3Aaに対して、接続下部20a、20Aaが、つまり、上部搬送部20より先の部分の全体が旋回できるように構成される。この構成については、例えば、図1に示すように、支持台車10の上面に、接続上部3a、3Aaと接続下部20a、20Aaの軸心22を中心とする円弧状のレール12を敷き、このレール12上を上部搬送部20を走行させることで旋回又は揺動させる。この旋回の動力としては、車輪23を駆動する場合には油圧モータ等を使用でき、揺動の場合には、支持台車10側と上部搬送部20を連結する油圧シリンダ等を使用することができる。
【0062】
この接続部3a、20aにおける分離(切り離し)と接続について説明する。図3に示すような接続状態では、仕切り部3adが液溜まり部20bdに挿入され、液溜まり部20bdで兼用される仕切り部20bdが液溜まり部20cdに挿入され、2ヶ所で液封による気密保持が行われている。
【0063】
この図3の状態から図4の状態に移行するには、搬送用基地3側及び上部搬送部20側において、図示しない気密扉を閉鎖して、搬送用基地3側及び上部搬送部20側の気密を保持し、搬送用基地3側から接続上部3aや上部搬送部20側から接続下部20aに可燃性ガスが流出しないようにした後、気密扉間に挟まれた接続内部の可燃性ガスを不活性ガスによって置換する。その後、接続上部3a及び接続下部20aを大気開放にしてもよい状態にする。
【0064】
この状態になったら、必要に応じて、接続上部3aと接続下部20aとの間の固定、例えば、上部フランジ部3abと下部フランジ部20aaとの間の締結等を解除してから、油圧シリンダ20dを短縮し、下部フランジ部20aaを引き下げて、上部フランジ部3abから切り離す。この下部フランジ部20aaの引き下げにより、仕切り部3adが液溜まり部20bdから抜き出され、その一方で、液溜まり部20bdを兼用する仕切り部20bd(又は、液溜まり部20bdの下部の仕切り板20bba)が液溜まり部20cdに挿入される深さLbcが増加する。仕切り部3adが液溜まり部20bdの液体Bから完全に抜き出されると、内部と外部との気密が解除され、接続上部3aと接続下部20aとは分離し、大気開放状態となる。そして、更に、下部フランジ部20aaを引き下げて、下部フランジ部20aa及び内周壁20bbが仕切り部3adの下端より低くなった時点で、下部フランジ部20aaの引き下げを停止する。
【0065】
この状態で、バラ積み貨物荷役装置1の上部搬送部20は、搬送用基地3から切り離された状態になる。そして、荷役対象の船倉2a側も必要に応じて気密を保持しながら、あるいは、大気開放にしながら、垂直伸縮搬送部50と船倉2aとを切り離す。なお、切り離し時においては、必要に応じて、垂直伸縮搬送部50と上部搬送部20との間を大気に対して気密に保持して、荷役の貨物から発生する可燃性ガスの漏出を少しでも少なくするようにしてもよい。この切り離し状態では、バラ積み貨物荷役装置1は支持台車10で陸上4のレール4a上を走行して移動することができるので、この状態で、次の荷役対象となっている船倉2a又は搬送用基地3まで移動する。そして、荷役対象の搬送用基地3の接続上部3aに対向する位置まで、上部搬送部20の接続下部20aを移動させる。
【0066】
次に、図4の状態から図3の状態に移行するには、搬送用基地3側の気密を保持したままで、油圧シリンダ20dを伸展し、下部フランジ部20aaを引き上げる。この下部フランジ部20aaの引き上げにより、仕切り部3adが液溜まり部20bdに挿入され、その一方で、液溜まり部20bdを兼用する仕切り部20bd(又は、仕切り板20bba)が液溜まり部20cdに挿入される深さLbcが減少する。仕切り部3adが液溜まり部20bdの液体Bに挿入されると、内部と外部との気密が保持された状態となる。そして、更に、下部フランジ部20aaを引き上げて、下部フランジ部20aaを上部フランジ部3abに当接させた時点で、下部フランジ部20aaの引き上げを停止する。必要に応じて、接続上部3aと接続下部20aとを固定する作業、例えば、下部フランジ部20aaと上部フランジ部3abとの締結作業を行う。なお、この固定作業を行わなくても、仕切り部3adが液溜まり部20bdの液体Bに挿入されて気密性を保持しているので、作業性を考えて、簡単な固定作業で済ましたり、固定しないで荷役作業を行う。
【0067】
この状態では、バラ積み貨物荷役装置1の上部搬送部20は、搬送用基地3と気密状態を維持しながら接続された状態になっている。そして、垂直伸縮搬送部50を荷役対象の船倉2a側に接続し、この部分でも気密を保持する。搬送用基地3側及び上部搬送部20側の気密扉に挟まれた接続部内部の空気を不活性ガスによって置換した後、搬送用基地3側及び上部搬送路20側の気密扉を開放し、また、必要に応じて、船倉2a〜上部搬送部20の間において気密扉を開放することにより、搬送用基地3、接続上部3a、接続下部20a、上部搬送部20、垂直搬送部40、下部搬送部30、垂直伸縮搬送部50、船倉2aが気密状態を保持しながら連通することになる。
【0068】
図5及び図6に示すように、垂直搬送部40は、旋回上部41と旋回下部42とで構成され、旋回上部41の下に旋回下部42を旋回可能に接続した旋回部に、液封による気密構造を設けて構成される。この液封による気密構造も、接続上部3aと接続下部20aと同様な気密構造であり、旋回上部41は円筒壁41aを有して形成され、その中間部には、フランジ部41bが設けられ、その下端側には、円筒等で形成される仕切り部41cが設けられる。一方、旋回下部42は、円筒形状の外周壁42aと内周壁42bとこの二重壁の間の底部42cとで形成される液溜まり部42dを有して構成される。更に、バラ積み貨物Aが、次に述べる旋回下部42の内周側室42eに入ることを防ぐために、円筒壁41aの内側の適当な位置に、下側が狭くなる円錐形状等に形成されるカバー41dや布状のカバー等が設けられる。
【0069】
また、この液溜まり部42dに、仕切り部41cを挿入し、内周側室42eと外周側室42fに分ける。それと共に、内周側室42eと外周側室42fの下部では液体Bが流通するように連通させる。そして、この液溜まり部42dに入れた液体Bによって、内周側室42eの上部と外周側室42fの上部との間を液体BのU字管効果で液封により気密にする。
【0070】
更に、液封用の液体Bの蒸発や漏れ等による減少を自動的に補うため、液体補充タンク42hと配管42iにより液溜まり部42dに液封用の液体Bを供給できるように構成する。この液体Bや液体Bの供給や液溜まり部42d内の液面高さのモニター等は垂直伸縮搬送部50と略同様である。
【0071】
この旋回部5の気密構造により、液封による気密構造を設けているので、旋回上部41と旋回下部42とが相対的に旋回しても、容易に、気密性を維持でき、小さな開口部だけでなく、大きな開口部であっても、気密性を定常的に確保することができる。
【0072】
そして、外周側室42fの液面より上方の空間に、窒素ガス等の不活性ガス(イナートガス)Cを入れておくことにより、万一、可燃性ガスが漏れた場合でも、この空間部分やこの空間に繋がる近傍部分が、爆発雰囲気になるのを防止することができるので、より安全性を増すことができる。
【0073】
なお、二重壁の間の底部42cは、気密性を保つのに充分な深さを液溜まり部42dで確保できればよく、必ずしも、図示しているように下部搬送部30のケース(筐体)と同じレベルにする必要はない。
【0074】
また、旋回するための旋回部5の機構としては、例えば、旋回上部41の上部フランジ部41bと、旋回下部42の下部フランジ部42gとの間にベアリング43を配置し、図示しないモータとギヤ等の機構により、旋回下部42に対して旋回力を与える。なお、下部搬送部30の重量は、図示しない構成により支持台車10で支持したり、上部搬送部20から吊り下げて支持したりすることができる。この支持は周知の技術により容易に行うことができる。
【0075】
図7及び図8に示すように、垂直伸縮搬送部50は、複数(図7及び図8では3個)の筒状体51、52、53から構成され、これらの複数の筒状体51、52、53を一部重複させて上下方向に連続して配置する。これらの筒状体51、52、53の相互の重複部分の長さL12、L23、言い換えれば、仕切り部51aの液溜まり部52bへの挿入深さL12、L23を変化させることにより、筒状体の全体としての垂直伸縮搬送部50の上下方向の長さLtを変化させる。この垂直伸縮搬送部50の上端は、最上方の筒状体51に設けられたフランジ部51bとなっており、図3に示す下部搬送部30に接続される。一方、垂直伸縮搬送部50の下端は、最下方の筒状体53に設けられたフランジ部53fとなっており、船倉2a側に接続される。
【0076】
この重複部分においても、接続上部3aと接続下部20aと同様な液封による気密構造を設ける。最上方の筒状体51と中間の筒状体52との接続部言い換えれば重複部分において、最上方の筒状体51の下端側の仕切り部51aを、中間の筒状体52に設けた液溜まり部52bに挿入し、この液溜まり部52bを内周側室52baと外周側室52bbに分ける。それと共に、内周側室52baと外周側室52bbの下部では液体Bが流通するように連通させる。この液溜まり部52bに入れた液体Bによって、内周側室52baの上部と外周側室52bbの上部との間を液封により気密にする。
【0077】
この最上方の筒状体51の下端側の仕切り部51aは、筒状体51の壁面51aの下部と兼用する。また、中間の筒状体52の液溜まり部52bは外周壁52aaと内周壁52abと底部52acとで形成される二重管構造によって構成する。そして、この中間の筒状体52の二重管構造で構成された液溜まり部52bに、最上方の筒状体51の下端側の仕切り部51aが挿入され、この液溜まり部52bに液体Bが入れられると、この液溜まり部52bで形成される液体BのU字管効果により気体の封入を行う。
【0078】
また、中間の筒状体52と最下方の筒状体53との重複部分では、中間の筒状体52の液溜まり52b部を仕切り部52aとしても兼用し、この中間の筒状体52の液溜まり部兼用の仕切り部52aを、最下方の筒状体53の液溜まり部53cに挿入し、最下方の筒状体53の液溜まり部53cを内周側室53caと外周側室53cbに分ける。それと共に、内周側室53caと外周側室53cbの下部では液体Bが流通するように連通させる。この最下方の筒状体53の液溜まり部53cに入れた液体Bによって、内周側室53caの上部と外周側室53cbの上部との間を液封により気密にする。
【0079】
なお、これらの筒状体51、52、53は上方の仕切り部51a、52aが下方の筒状体の液溜まり部52b、53cに挿入できる構成であればよく、筒状体51、52、53の断面形状は円形に限らず、楕円、多角形等であってもよい。また、この図7及び図8では3個の筒状体で構成される垂直伸縮搬送部50について説明したが、2個の場合も、3個以上の場合も同様にして構成することができる。また、筒状体の数が増加し、仕切り部を液溜まり部で兼用していくと、仕切り部の幅が増加していくので、液溜まり部の下側に仕切り板等で形成される仕切り部を設けることにより、仕切り部の幅を狭く重複部分を適宜設けることが好ましい。
【0080】
この構成によれば、液封であるため、上方の筒状体51(又は52)と下方の筒状体52(又は53)とが相対的に上下移動しても、容易に、気密性を維持できるので、小さな開口部だけでなく、大きな開口部であっても、気密性を定常的に確保することができる。また、液封部分が上方の筒状体51(又は52)と下方の筒状体52(又は53)の接続部分の外周側の部分のみで収まるので、構造を単純化することができる。しかも、上下伸縮のための構造と兼用することができる。また、上下移動による伸縮部分における気密のための抵抗も液体の粘性による抵抗であるため、伸縮の上下速度が遅い場合には非常に小さくすることができる。更に、この重複部分L12、L23の幅方向の隙間を余裕を持たせることにより、波による船舶の横や前後方向の揺れ(ロール)や移動(スエイ、ヨウ)の動揺に対しても小さいものであれば吸収することができる。
【0081】
また、液溜まり部52b、53cに筒状体51、52、53の内部を通過する天然ガスハイドレートペレット等の被搬送物Aが入らないように、内周側室52ba、53caを覆うカバー51c、52eを設けて、液溜まり部52b、53cに、天然ガスハイドレートペレット等の被搬送物Aが入って、気密機能を担う部分等に被搬送物Aが挟まる等の不具合の発生を非常に簡単な構造で防止する。
【0082】
更に、垂直伸縮搬送部50の伸縮量による液溜まり部52b、53cへの仕切り部51a、52aの挿入量L12、L23の変化による液溜まり部52b、53cの容積の変化分と、液封用の液体Bの蒸発や漏れ等による減少を自動的に補うため、液体補充タンク52c、53dと配管52d、53eにより、液溜まり部52b、53cに液封用の液体Bを供給できるように構成する。この液体Bや液体Bの供給や液溜まり部52b、53c内の液面高さのモニター等は、接続上部3aと接続下部20aと略同様である。
【0083】
上記のように、接続下部(接続部)20aと接続上部(取付部)3aとの間の気密構造、旋回上部41と旋回下部42との間の気密構造、垂直伸縮搬送部50の伸縮部分における気密構造は、液体のU字管効果を利用した液封による気密構造を採用しているので、次のような効果を奏することができる。
【0084】
接続上部3a(又は3Aa)と接続下部20a(又は20Aa)では、2個以上の筒状体で形成した伸縮部で容易に気密性と伸縮性を確保できるので、切り離し及び接続を容易に行うことができ、その上、接続状態においても、気密性を確保できる。また、旋回部5では、旋回上部41と旋回下部42とが相対的に旋回しても、容易に気密性を維持できる。更に、垂直伸縮搬送部50では、気密性と伸縮性を確保できる。また、これらの部分が大きな開口部であっても、気密性を定常的に確保することができる。
【0085】
そして、上記のガスハイドレート荷役装置1は、上記の接続部3a、20a(又は、3Aa、20Aa)を備えて構成されるので、ガスハイドレート荷役装置1の接続部3a、20a(又は、3Aa、20Aa)の気密性を確保できる。そのため、可燃性ガス等が発生しても、ガスハイドレート荷役装置1の外部に漏出することが無く、また、逆に外気がガスハイドレート荷役装置1の内部に入ることも無い。従って、可燃性ガスを発生するガスハイドレートAをバラ積み貨物として搬送する場合に、外気と遮断しながら安全に搬送することができる。
【0086】
次に、このガスハイドレート荷役装置1における荷役について説明する。このガスハイドレート荷役装置1では、積み荷役の際には、荷役対象の船倉2aの近傍まで陸上4のレール4a上を車輪11で走行する支持台車10で移動する。その後、最寄の搬送用基地3の取付部である接続上部3aに、バラ積み貨物荷役装置1の上部搬送部20の接続部である接続下部20aを接続し、ガスハイドレートAを、搬送用基地3から接続上部3a、接続下部20a、上部搬送部20、垂直搬送部40、下部搬送部30、垂直伸縮搬送部50を経由して船倉2aに搬送する。
【0087】
この積み荷役の場合、上部搬送部20と下部搬送部30の水平移動は上部搬送部20に配設された第1の搬送装置(水平コンベア)21や、下部搬送部30に配設された第2の搬送装置(水平コンベア)31等を使用し、垂直搬送部40と垂直伸縮搬送部50の下方向移動は自然落下や垂直コンベア等を利用する。この時、垂直搬送部40を回転軸にして下部搬送部30を水平面内で旋回させて、船倉2aに平面的に均等に積み込む。
【0088】
この船倉2aが搭載量に達したら、荷役対象を次の船倉2aにする。この次の船倉2aが上部搬送路20と下部搬送部30の旋回範囲内にある場合は、搬送用基地3を変えず、そのまま、上部搬送路20と下部搬送部30の旋回のみで、船倉2aを変更して積み荷役を行う。次の船倉2aが上部搬送路20と下部搬送部30の旋回範囲内にない場合は、搬送用基地3の接続上部3aから上部搬送部20の接続下部20aを離脱し、次の船倉2aまで支持台車10を車輪11によりレール4a上を走行させて、最寄の搬送用基地3に、改めて上部搬送部20を接続して、同様な積み荷役を行う。
【0089】
また、揚げ荷役では、天然ガスハイドレートAを船倉2aから陸上へ搬送するために、積み荷役同様に水平搬送部と垂直搬送部を適当に組み合わせた装置によって行われる。
【0090】
このガスハイドレート荷役方法は、陸上4側の搬送用基地3に接続可能な上部搬送部20と、この上部搬送部20に垂直搬送部40を介して旋回可能に連結する下部搬送部30と、この下部搬送部30から下に降りている垂直伸縮搬送部50とを支持台車10に搭載したガスハイドレート荷役装置1における、陸上4側の搬送用基地3と船舶2との間でのガスハイドレート荷役方法であり、接続下部20aと取付部3aとの間の気密構造、旋回上部41と旋回下部42との間の気密構造、垂直伸縮搬送部50の伸縮部分における気密構造で、仕切り部を液溜まり部に挿入し、液溜まり部を内周側室と外周側室に分けると共に、内周側室と外周側室の下部では液体が流通するように連通させて構成し、液溜まり部に入れた液体によって、内周側室の上部と外周側室の上部との間を気密にする気密構造を用いながら、船舶2の荷役対象の船倉2aに対して最寄りの陸上4側の搬送用基地3の取付部3aに、上部搬送部20の一端側の接続下部20aで接続し、その後、搬送用基地3からのガスハイドレートAを、上部搬送部20、垂直搬送部40、下部搬送部30、垂直伸縮搬送部50を経由して、垂直伸縮搬送部50の下端に配置された荷役対象の船倉2aに搬送する。
【0091】
従って、上記のガスハイドレート荷役方法によれば、ペレット状等のガスハイドレートを、陸上4側の搬送用基地3と船舶2との搬送区間で、外気との間で気密状態を保持しながら、荷役することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る実施の形態のガスハイドレート荷役装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のガスハイドレート荷役装置の構成を模式的に示す平面図である。
【図3】接続部の気密及び伸縮構造の短縮した状態を模式的に示す側断面図である。
【図4】図3の接続部の気密及び伸縮構造の伸長した状態を模式的に示す側断面図である。
【図5】気密構造の旋回部を有する垂直搬送部の構造を模式的に示す側断面図である。
【図6】図5の旋回部の構造を模式的に示す側断面図である。
【図7】垂直伸縮搬送部の気密及び伸縮構造の短縮した状態を模式的に示す側断面図である。
【図8】図7の垂直伸縮搬送部の気密及び伸縮構造の伸長した状態を模式的に示す側断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 ガスハイドレート荷役装置(可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置)
2 バラ積み貨物船
3 搬送用基地
3a 接続上部(取付部)
3aa 上方の筒状体
3ab 上部フランジ部
3ac カバー
3ad 仕切り部
3b 下方の筒状体
3bd 仕切り部(液溜まり部と兼用)
3ca 油圧シリンダ(アクチュエータ)
5 旋回部
10 支持台車
20 上部搬送部
20a 接続下部(接続部)
20aa 下部フランジ部
20b 上方の筒状体
20bd 液溜まり部(仕切り部と兼用)
20c 下方の筒状体
20cd 液溜まり部
20d 油圧シリンダ(アクチュエータ)
30 下部搬送部
40 垂直搬送部
50 垂直伸縮搬送部
A バラ積み貨物
B 液体
La、LAa 上下方向の長さ
Lab、Lbc 挿入深さ(重複部分の長さ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上側の搬送用基地と船舶との間で、可燃性ガスを発生するバラ積み貨物を荷役する荷役装置であって、
支持台車と上部搬送部と下部搬送部と、この上部搬送部と下部搬送部を連結する垂直搬送部と、下部搬送部から下に降りている垂直伸縮搬送部とを有して構成され、
前記上部搬送部と、前記下部搬送部と、前記垂直搬送部と、前記垂直伸縮搬送部は、陸上を岸壁に沿って移動する前記支持台車に搭載され、
前記上部搬送部は、陸上側に配置される一端側の接続部が、前記搬送用基地の取付部と着脱可能に形成されると共に、海上側に配置される他端側で前記垂直搬送部に接続し、
前記下部搬送部は陸上側に配置される一端側で前記垂直搬送部に接続すると共に、海上側に配置される他端側で前記垂直伸縮搬送部に接続し、
前記垂直搬送部は、前記下部搬送部が前記上部搬送部に対して旋回可能になるように、旋回上部と該旋回上部に旋回可能に接続した旋回下部とを有して構成され、
前記垂直伸縮搬送部は、下端部の上下変位に対応して伸縮可能に構成され、
更に、前記接続部と前記取付部との間の気密構造、前記旋回上部と前記旋回下部との間の気密構造、前記垂直伸縮搬送部の伸縮部分における気密構造のいずれか一つに、
仕切り部を液溜まり部に挿入し、該液溜まり部を内周側室と外周側室に分けると共に、前記内周側室と前記外周側室の下部では液体が流通するように連通させて構成し、前記液溜まり部に入れた液体によって、前記内周側室の上部と前記外周側室の上部との間を気密にする気密構造を用いることを特徴とする可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置。
【請求項2】
前記上部搬送部と前記垂直搬送部と前記下部搬送部と前記垂直伸縮搬送部とを、前記搬送用基地の取付部回りに旋回又は揺動可能に構成することを特徴とする請求項1記載の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置。
【請求項3】
可燃性ガスを発生するバラ積み貨物として、ガスハイドレートを荷役することを特徴とする可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置。
【請求項4】
陸上側の搬送用基地に接続可能な上部搬送部と、この上部搬送部に垂直搬送部を介して旋回可能に連結する下部搬送部と、この下部搬送部から下に降りている垂直伸縮搬送部とを支持台車に搭載した可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役装置における、陸上側の搬送用基地と船舶との間で可燃性ガスを発生するバラ積み貨物を荷役する方法であって、 前記接続部と前記取付部との間の気密構造、前記旋回上部と前記旋回下部との間の気密構造、前記垂直伸縮搬送部の伸縮部分における気密構造のいずれか一つで、
仕切り部を液溜まり部に挿入し、該液溜まり部を内周側室と外周側室に分けると共に、前記内周側室と前記外周側室の下部では液体が流通するように連通させて構成し、前記液溜まり部に入れた液体によって、前記内周側室の上部と前記外周側室の上部との間を気密にする気密構造を用いながら、
前記船舶の荷役対象の船倉に対して最寄りの陸上側の前記搬送用基地の取付部に、前記上部搬送部の一端側の接続部で接続し、その後、前記搬送用基地からの可燃性ガスを発生するバラ積み貨物を、前記上部搬送部、前記垂直搬送部、前記下部搬送部、前記垂直伸縮搬送部を経由して、前記垂直伸縮搬送部の下端に配置された前記荷役対象の船倉に搬送することを特徴とする可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−23751(P2009−23751A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186156(P2007−186156)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(505302948)財団法人日本船舶技術研究協会 (13)
【Fターム(参考)】