説明

可視光通信用LED照明装置

【課題】大振幅のLED駆動信号が入力側に回り込んで発振することがなく、送信データの欠損、ノイズの混入などの不都合が防止され、可視光通信の信頼性向上が可能な可視光通信用LED照明装置を提供する。
【解決手段】LED照明装置は、LED照明用の電力波形に送信データを変調した信号を重畳してLED照明装置に送信し、この照明装置で受信した変調信号に基づいてLED駆動信号を生成する駆動回路を備える。駆動回路の入力側に、同軸ケーブルからの変調信号に対してその周波数を変換する手段を設ける。この周波数変換手段によって変換されたされた信号に基づいて、LED駆動信号を生成する。周波数変換手段としては、変調信号の周波数を増大させる逓倍回路が使用できる。変換手段として、局部発振周波数信号と変調信号を乗算したり、局部発信周波数信号とベースバンド信号を乗算することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光通信用LED照明装置に関するもので、特にLEDの駆動回路の出力信号が入力側に回り込んで発振することを防止したLED照明装置に係る。
【背景技術】
【0002】
最近、LEDを使用した可視光通信システムが提案されている(特許文献1から特許文献4参照)。このような可視光通信システムの1つとして、天井などに設置した照明装置に使用されるLEDと、この照明装置の照射範囲内に位置するヘッドセットやPDAなどの携行型の通信端末との間で、通信を行うものがある。このシステムでは、電力線に通信用の信号を重畳させ、この信号に応じて点灯したLEDを発振させることで送信が行われる。
【0003】
すなわち、このシステムでは、LEDを点灯するための電力波形に送信データを変調(符号化)した信号を重畳させて照明装置に供給する。照明装置では、前記電力波形上の変調された信号を取り出し、その信号をLED駆動回路に供給する。LED駆動回路は、この信号に基づいて、前記送信データに対応した波形を有する駆動信号を生成し、この駆動信号波形に基づいてLEDを点滅(光量変化も含む)させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−147063号公報
【特許文献2】特開2009−260842号公報
【特許文献3】特開2009−219032号公報
【特許文献4】特開2009−225196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のような駆動回路によってLEDを点滅させる場合、LED駆動用の信号波形として大振幅のものが要求されることから、このLED駆動用の信号が駆動回路の入力側に回り込み、入力信号と共振して発振するおそれがある。このような発振が生じると、駆動回路に供給される信号波形に乱れを生じ、電力波形に重畳した送信データと駆動回路で生成するLED駆動信号との同一性が確保できなくなる。同様なことは、ベースバンド信号を電力波形に重畳して送信し、照明装置側でAM変調或いはFM変調する場合にも生じる。
【0006】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、大振幅のLED駆動用の信号波形が駆動回路から出力される場合であっても、その駆動信号の入力側への回り込みによる発振がなく、送信データの同一性が確保できる可視光通信用LED照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、LED照明用の電力波形に送信データを示す信号を重畳してLED照明装置に送信し、この照明装置で受信した信号に基づいてLED駆動信号を生成する駆動回路を備えた可視光通信用LED照明装置において、前記送信データを示す信号に対してその周波数を変換する手段を設け、この周波数変換手段によって変換されたされた信号に基づいてLED駆動信号を生成することを特徴とする。なお、本発明において、送信データを示す信号とは、送信データを変調した信号及びベースバンドの信号を含む。
【0008】
前記周波数変換手段としては、送信データを示す信号の周波数を増大させる逓倍回路を設け、この逓倍回路からの信号に基づいてLED駆動信号を生成することができる。また、前記照明用の電力波形に局部発振周波数信号を重畳しておき、この局部発信周波数と送信データを示す信号とを乗算し、この乗算された信号に基づいてLED駆動信号を生成することもできる。また、前記照明用の電力波形にベースバンド信号を重畳しておき、このベースバンド信号と送信データを示す信号とを乗算し、この乗算された信号に基づいてLED駆動信号を生成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
前記のような構成を有する本発明の可視光通信用LED照明装置では、大振幅のLED駆動信号を出力しても、その信号が入力側に回り込んで送信データを示す信号が発振することがないので、送信データの欠損、ノイズの混入などの不都合が防止され、可視光通信の信頼性向上が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のLED照明装置を適用する可視光通信システムの一例を示す配線図。
【図2】本発明のLED照明装置の実施例1を示すブロック図。
【図3】本発明のLED照明装置の実施例2を示すブロック図。
【図4】本発明のLED照明装置の実施例3を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施例1を図1及び図2に従って具体的に説明する。
図1において、符号1は本発明において、照明用及び可視光通信用として使用されるLEDである。本実施例において、複数個のLED1が、電源及び信号を供給する同軸ケーブル2によって、カスケード接続されている。この同軸ケーブル2は、各LED1の発光を制御したり、各LED1を通じて端末から受信した信号を処理する親機3に接続され、更に、公衆回線網4などの外部ネットワークにも接続されている。
【0012】
この同軸ケーブル2は、LED照明用の電力波形に、前記親機3からの送信データを変調した信号を重畳してLED照明装置に送信するもので、親機3には送信データを変調して送信用の信号とするための変調器が設けられている。この場合、送信データを電力波形に重畳して各照明装置に送信する手段としては、公知のものが適宜採用できる。
【0013】
データ通信のための変調方式は、同期信号に関して、同期信号を送信しない方式(NO−SYNC方式)と同期信号を別途送信する方式(SYNC方式)、また、送信データを親機側でFM或いはAM変調する方式と、送信データをベースハンドで電力波形に重畳して照明装置側でFM或いはAM変調する方式がある。この実施例1は、親機側で送信データを変調して、同期信号は送らない方式である。
【0014】
各LED1の近傍(通信範囲)には、ヘッドセット5やPDA6などの端末が配置(作業員が携行)されている。この端末としては、必ずしもヘッドセットやPDAに限定されることなく、可視光通信を行うことが可能なものであれば、どのようなものでも使用可能である。この端末と各LED1とは、可視光通信システムによって信号を授受するが、必ずしも双方向可視光通信である必要はなく、ダウンリンクを可視光通信とし、アップリンクを赤外線通信としても良い。
【0015】
図2は、実施例1の照明装置における駆動回路部分のブロック図である。図2において、10は、同軸ケーブル2からLED照明装置に対する電力及び信号分岐器である。この分岐器10には、照明用の電力波形と送信データを変調した信号が供給されている。信号分岐器10の出力側には、バンドパスフィルタ11及びリミッタ12が設けられている。このリミッタ12の出力側には、本発明の周波数変換手段である逓倍回路13が設けられている。この逓倍回路13からの出力がLED駆動回路14に接続されている。
【0016】
このような構成を有する実施例1では、分岐器10を経由して受信した変調信号(例えば、1MHzの周波数)の雑音成分をバンドパスフィルタ11によって除去して信号波形(a)を得る。信号波形(a)をリミッタ12で波形成形して得られた信号波形(b)を逓倍回路13によって2倍の周波数(例えば、2MHz)に変換し、信号波形(c)を得る。この逓倍回路13からの信号波形(c)に基づいて、駆動回路14にてLEDを駆動するための信号が生成される。この場合、駆動回路14では、周波数の変換は行わず、振幅を増大させることで、LEDを信号波形に合わせて点滅(光量変化も含む)させるに足る大振幅の駆動信号(d)を得る。
【0017】
このように、実施例1においては、逓倍回路13により入力側の信号(a)に比較して2倍の周波数をもった信号(c)を生成し、これにより入力信号(a)とは異なる周波数の駆動信号(d)を得ている。その結果、駆動信号(d)がたとえ大振幅でも、入力側に回り込んで発振を生じさせることがない。
【実施例2】
【0018】
図3は、本発明の実施例2の駆動回路部分を示すブロック図である。この実施例2は、同軸ケーブルに電力波形、送信データの変調信号に加えて、同期信号として局部発信周波数信号を重畳したものである。
【0019】
実施例2では、例えば、変調信号を3MHzとした場合に、局部発信周波数信号の周波数は10MHzとする。この局部発信周波数信号の存在により、複数のLED照明装置を併設した場合においても、各照明装置におけるLEDの駆動、すなわち各照明装置から発信される可視光通信データの同一性、同時性を確保できる。
【0020】
この実施例2では、分岐器10に接続されたバンドパスフィルタ21の後段に増幅器22を設けると共に、前記分岐器10からは前記バンドパスフィルタ21とは並列に局部発信周波数信号のバンドパスフィルタ23を設け、その出力側に増幅器24を設ける。前記バンドパスフィルタ21からの出力信号とこの局部発信周波数信号は後段の乗算器25に入力され、この乗算器25からの出力が駆動回路26に入力される。
【0021】
このような構成を有する実施例2においては、同軸ケーブル2からの変調信号はバンドパスフィルタ21を通過して雑音を除去されて信号波形(a)となり、増幅器22によって増幅されて信号波形(b)となる。一方、局部発信周波数信号は、バンドパスフィルタ23を通過して信号波形(c)となり、さらに増幅器24によって増幅され信号波形(d)となる。ここで、変調信号から得られた信号波形(b)と局部発信周波数信号から得られた信号波形(d)は、図示のようにその周波数が異なっている。
【0022】
この2つの系統の信号波形を乗算器25によって乗じることで、変調信号から得られた信号波形(b)とは周波数の異なる信号波形(e)を得ることができる。この信号波形(e)に基づいて、駆動回路26ではLED駆動用の信号波形(f)を生成する。その結果、この実施例2でも、入力側の信号(a)とは異なる周波数のLED駆動信号(f)を得ることができ、駆動信号(d)がたとえ大振幅でも、入力側に回り込んで発振を生じさせることがない。
【実施例3】
【0023】
図4は、本発明の実施例3の駆動回路部分を示すブロック図である。この実施例3は、同軸ケーブルに電力波形とベースバンドの信号に加えて、同期信号として局部発信周波数信号を重畳したものである。すなわち、この実施例3では、親機側では送信データの変調を行わずに、ベースバンドの信号をそのまま電力波形に重畳し、受信したベースバンドの送信データを照明装置側でFM或いはAM変調する。
【0024】
この実施例3では、分岐器10から入力されたベースバンドの信号を入力するバンドパスフィルタ31と、その後段に増幅器32を設ける。一方、前記分岐器10から、ベースバンド信号の入力系統とは並列に局部発信周波数信号の入力系統を設け、そこにローパスフィルタ33を設ける。前記ベースバンド信号とこの局部発信周波数信号は後段の乗算器34に入力され、この乗算器34からの出力が駆動回路35に入力される。
【0025】
このような構成を有する実施例3においては、同軸ケーブル2からのベースバンド信号は、バンドパスフィルタ31を通過して雑音を除去されて信号波形(a)となり、増幅器32によって増幅されて信号波形(b)となる。一方、局部発信周波数信号は、ローパスフィルタ33を通過して信号波形(c)となる。
【0026】
この2つの系統の信号波形を乗算器34によって乗じることで得られた信号波形(d)に基づいて、駆動回路35ではLED駆動用の信号波形(e)を生成する。その結果、この実施例3でも、入力側の信号(a)とは異なる周波数のLED駆動信号(e)を得ることができ、駆動信号(e)がたとえ大振幅でも、入力側に回り込んで発振を生じさせることがない。
【符号の説明】
【0027】
1…LED
2…同軸ケーブル
3…親機
4…公衆回線
5…ヘッドセット
6…PDA
10…分岐器
11…バンドパスフィルタ
12…リミッタ
13…逓倍回路
14…LED駆動回路
21…バンドパスフィルタ
22…増幅器
23…バンドパスフィルタ
24…増幅器
25…乗算器
26…駆動回路
31…バンドパスフィルタ
32…増幅器
33…ローパスフィルタ
34…乗算器
35…駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED照明用の電力波形に送信データを示す信号を重畳してLED照明装置に送信し、この照明装置で受信した信号に基づいてLED駆動信号を生成する駆動回路を備えた可視光通信用LED照明装置において、
前記送信データを示す信号に対してその周波数を変換する手段を設け、この周波数変換手段によって変換されたされた信号に基づいてLED駆動信号を生成することを特徴とする可視光通信用LED照明装置。
【請求項2】
前記周波数変換手段として、送信データを示す信号の周波数を増大させる逓倍回路を設け、この逓倍回路からの信号に基づいてLED駆動信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の可視光通信用LED照明装置。
【請求項3】
前記周波数変換手段として、前記照明用の電力波形に局部発振周波数信号を重畳しておき、この局部発信周波数と送信データを示す信号とを乗算し、この乗算された信号に基づいてLED駆動信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の可視光通信用LED照明装置。
【請求項4】
前記周波数変換手段として、前記照明用の電力波形にベースバンド信号を重畳しておき、このベースバンド信号と送信データを示す信号とを乗算し、この乗算された信号に基づいてLED駆動信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の可視光通信用LED照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−259261(P2011−259261A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132648(P2010−132648)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】