説明

可視光通信装置

【課題】複数の異なる信号光を別々のエリアに送信しても一部の受信エリアが重畳する場合に、受信側の不要な信号を除去して所望の信号のみを受信する。
【解決手段】R、G、Bの各可視光送信部1R、1G、1Bは、3つのチャネルのオーディオ信号の各々でそれぞれ異なる波長の可視光を変調して目視可能に、また、受信エリアの一部が重畳するように送信し、受信カード2a、2bは可視光送信部のいずれかにより送信された可視光から少なくとも1つの波長を色フィルタ20により選択して受光し、受光した波長を光電変換して復調する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の信号で可視光を変調して伝送する可視光通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光を通信媒体として無線通信を行う場合には、目に見えない赤外光が用いられている。その理由は、赤外光の送信デバイスや受信デバイスの伝送効率が可視光のそれに対して高く、また、可視光を用いると人にとって視覚的に不快であったり、邪魔になることなどが挙げられる。一方、可視光を用いた場合には、受信可能エリアを人が視覚的に認識できるので、用途によっては利便性、娯楽性などに優れている。例えば2以上のPC(パーソナルコンピュータ)に光の送受信器を設けてお互いに向き合わせて通信を行うことを考えた場合、送信光は可視光の方がユーザにとって各PCの配置が容易である。
【0003】
上記のような配置を可能にする従来例としては、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1では、電子機器の状況を表示する可視光LEDと、送信光を出射する赤外LEDと、可視光LED及び赤外LEDの各出射光を結合するオプティカルガイドとで構成して、電子機器の1つの開口から可視光と赤外光の両方を出力するようにしている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−303463号公報(要約、図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例では、可視光LED及び赤外LEDの各出射光を結合するので、構成が複雑であるという問題点がある。また、複数の異なる信号光を別々のエリアに送信する場合に、ユーザにとって各受信エリアを視覚的に認識可能にすることが望まれる。しかしながら、複数の異なる信号光を別々のエリアに送信しても一部の受信エリアが重畳する場合、受信側では不要な信号が混合するという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑み、受信側の複数の異なる信号光を別々のエリアに送信しても一部の受信エリアが重畳する場合に、不要な信号を除去して所望の信号のみを受信することができる可視光通信装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、受信側で波長を波長選択性フィルタにより選択して受光するようにしたものである。
すなわち本発明によれば、複数の信号の各々をそれぞれ異なる波長の可視光に変換し、その各可視光を受信エリアの一部が重畳するように送信する可視光送信手段と、
前記可視光送信手段により前記受信エリアに送信された前記複数の可視光のうちの少なくとも1つの可視光を波長選択性フィルタにより選択して受光し、受光した可視光を光電変換して復調する可視光受信手段とを、
備えた可視光通信装置が提供される。
【0008】
また本発明は上記目的を達成するために、送信側で各チャネルの信号でそれぞれ異なるキャリア周波数の信号を周波数変調し、受信側で周波数を周波数選択性フィルタにより選択するようにしたものである。
すなわち本発明によれば、複数の信号の各信号でそれぞれ異なるキャリア周波数の信号を周波数変調して各信号を異なる波長の可視光に変換し、その各可視光を受信エリアの一部が重畳するように送信する可視光送信手段と、
前記可視光送信手段により前記受信エリアに送信された前記複数の可視光のうちの少なくとも1つの可視光を受光して光電変換し、その光電変換した信号からキャリア周波数を周波数選択性フィルタにより選択して周波数復調する可視光受信手段とを、
備えた可視光通信装置が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明に係る可視光通信装置の第1の実施の形態を示す構成図、図2は図1の可視光通信装置の受信エリアを示す説明図、図3は図1の可視光通信装置のシステム構成を示すブロック図、図4は図3の色フィルタを示す構成図である。
【0010】
図1は、一例としてカラオケ装置を示し、三原色のR、G、Bの各可視光送信部1R、1G、1Bは、ステージ上を投影するようにステージの天井に設置されている。可視光送信部1R、1G、1Bの投影形状は、例えば図2に示すように加色法による色再現を説明するための形状であり、一部が重畳するように構成される。ステージ上には可視光送信部1R、1G、1Bの送信光を受信する受信カード2a、2bが任意に移動可能に載置され、受信カード2a、2bにはそれぞれヘッドホン3a、3bが接続される。なお、受信カード2a、2bはマイクロホン(不図示)と一体で組み込むようにすれば、ユーザにとってより便利である。
【0011】
可視光送信部1R、1G、1Bからは、例えば図2に示すように、それぞれピアノ、ボーカル、ギターの各チャネルの音声信号でR、G、Bの各可視光を変調した光信号が送信される。このため、ステージ上に投影されたRのみのエリアでは、ピアノの音声信号でRの可視光を変調した光信号のみが受信され、Gのみのエリアでは、ボーカルの音声信号でGの可視光を変調した光信号のみが受信され、Bのみのエリアでは、ギターの音声信号でBの可視光を変調した光信号のみが受信される。
【0012】
さらに、RとGが重畳したY(イエロー)のエリアでは、ピアノ付きボーカルが受信され、GとBが重畳したC(シアン)のエリアでは、ギター付きボーカルが受信され、BとRが重畳したM(マゼンタ)のエリアでは、ピアノ/ギターの合奏(カラオケ)が受信され、このため、Y、M、Cの受信エリアでは2チャネルが受信される。また、R、G、Bのすべてが重畳したW(白)のエリアでは、3チャネル全て、すなわちピアノ/ギター付きボーカルが受信される。
【0013】
次に図3を参照して上記のカラオケ装置のシステム構成について説明する。まず、図3(a)に示す送信側では、R、G、Bの各可視光送信部1R、1G、1Bはそれぞれ、ステージ上に十分大きな広さを投影可能なように複数の赤LED、緑LED、青LEDを配列した赤LEDアレイ10R、緑LEDアレイ10G、青LEDアレイ10Bにより構成され、赤LEDアレイ10R、緑LEDアレイ10G、青LEDアレイ10Bにはユニバーサル電源11から共通に電源が供給されている。また、上記の3つのチャネルの各音声信号は、それぞれAM変調器12R、12G、12Bにより、図示省略の所定の搬送波をAM変調し、変調された各信号が赤LEDアレイ10R、緑LEDアレイ10G、青LEDアレイ10Bに供給される。
【0014】
このため、赤LEDアレイ10R、緑LEDアレイ10G、青LEDアレイ10Bからは、上記3つのチャネルの各音声信号により強度が変調された光信号がそれぞれ送信される。このため、ステージ上の色の重畳したY、M、C、Wの各エリアでは、R、G、Bの各受信強度に比例したレベルで受信される。
【0015】
図3(b)に示す受信カード2では、受信光のうちの第1、第2、第3の波長がそれぞれ色フィルタ20−1、20−2、20−3により選択されて、それぞれPD21−1、21−2、21−3により受光され、O/E変換器(O/E)22−1、22−2、22−3によりそれぞれAM変調信号に変換され、次いでこのAM変調信号はAM復調器23−1、23−2、23−3によりそれぞれアナログ音声信号に変換される。次いでこれらのアナログ音声信号は混合器24により混合されてヘッドホン(AMP)アンプ25により増幅されてヘッドホン3に印加される。
【0016】
色フィルタ20は図4に示すように、R、G、Bの各フィルタとフィルタなしが選択可能であり、例えばRとGが重畳したYのエリアに位置するユーザは、Rのみの音声チャネルが所望であればRフィルタを選択することによりRのみの音声チャネルを聞くことができ、また、RとGの音声チャネルが所望であればフィルタなしを選択することによりRとGの音声チャネルを聞くことができる。
【0017】
<第2の実施の形態>
次に図5〜図7を参照して第2の実施の形態について説明する。図5は第2の実施の形態の全体構成を示し、送信側はFM変調部30と図1に示した赤LEDアレイ10R、緑LEDアレイ10G、青LEDアレイ10Bにより構成された発光器40R、40G、40Bにより構成され、受信側は受光部50とFM復調部60により構成されている。図6はFM変調部30の構成を詳しく示し、3CHの音声信号の第1CH、第2CH、第3CHは、それぞれFM変調器31R、31G、31Bによりキャリア周波数f1=2.06MHz、f2=2.56MHz、f3=3.20MHzでFM変調されて発光器40R、40G、40Bにより送信される。
【0018】
図7は受光部50とFM復調部60の構成を詳しく示している。まず、受光部50では、図3(b)に示したPD21により受光されてO/E変換器22によりFM変調信号に変換され、FM復調部60に送られる。FM復調部60では、まず、BPF61R、61G、61Bによりそれぞれキャリア周波数f1、f2、f3が選択され、BPF61R、61G、61Bによりそれぞれ選択されたFM変調信号は、RF(AMP)アンプ62R、62G、62B、周波数変換器63R、63G、63Bを経由して同じ周波数=10.7MHzに変換されてFM復調器64R、64G、64BとRFレベル検出部66R、66G、66Bに送られ、FM復調器64R、64G、64Bにそれぞれ送られたR、G、Bの各信号はFM復調されてVCA65R、65G、65Bに送られる。
RFレベル検出部66R、66G、66Bはそれぞれ、周波数変換器63R、63G、63Bから送られた各信号に基づいてR、G、Bの各RFレベルを検出して各レベルに比例したゲインをVCA65R、65G、65Bに設定する。これにより、VCA65R、65G、65BはそれぞれR、G、Bの各信号をR、G、Bの重なり具合に応じた受光レベルで増幅するので、これらを混合することによりR、G、Bの重なり具合に応じた受光レベルで再生することができる。
【0019】
なお、上記各実施の形態では、可視光で送信する信号形態として音声信号を、また、システム構成としてカラオケ装置を例にしたが、本発明は音声信号、カラオケ装置に限定されず、コンテンツデータなどのあらゆる信号形態に適用することができるので、例えばゲーム機器やPC間通信などにも適用することができる。また、上記各実施の形態ではアナログ信号の振幅変調(AM)や周波数変調(FM)を採用しているが、デジタル信号の場合はPCMやPWMなどの変調方式を用いることができる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、複数の異なる信号光を別々のエリアに送信しても一部の受信エリアが重畳する場合に、受信側の不要な信号を除去して所望の信号のみを受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る可視光通信装置の第1の実施の形態を示す構成図である。
【図2】図1の可視光通信装置の受信エリアを示す説明図である。
【図3】図1の可視光通信装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図4】図3の色フィルタを示す構成図である。
【図5】第2の実施の形態の可視光通信装置の全体構成を示す図である。
【図6】図5の送信側のFM変調部の構成を詳しく示すブロック図である。
【図7】図5の受光部とFM復調部の構成を詳しく示すブロック図である。
【符号の説明】
1R、1G、1B 可視光送信部
2a、2b 受信カード
3a、3b ヘッドホン
10R 赤LEDアレイ
10G 緑LEDアレイ
10B 青LEDアレイ
11 ユニバーサル電源
12R、12G、12B AM変調器
20 色フィルタ
21、21−1、21−2、21−3 PD
22、22−1、22−2、22−3 O/E変換器(O/E)
23、23−1、23−2、23−3 AM復調器
24 混合器
25 ヘッドホン(AMP)アンプ
31R、31G、31B FM変調器
40R、40G、40B 発光器
61R、61G、61B BPF

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号の各々をそれぞれ異なる波長の可視光に変換し、その各可視光を受信エリアの一部が重畳するように送信する可視光送信手段と、前記可視光送信手段により前記受信エリアに送信された前記複数の可視光のうちの少なくとも1つの可視光を波長選択性フィルタにより選択して受光し、受光した可視光を光電変換して復調する可視光受信手段とを、
備えた可視光通信装置。
【請求項2】
前記可視光受信手段は、前記波長選択性フィルタにより2以上の異なる波長の可視光を選択して受光した場合に、前記受信エリアにおける各可視光の重なり具合に応じたそれぞれの可視光の受光レベルに基づき各信号を復調することを特徴とする請求項1に記載の可視光通信装置。
【請求項3】
複数の信号の各信号でそれぞれ異なるキャリア周波数の信号を周波数変調して各信号を異なる波長の可視光に変換し、その各可視光を受信エリアの一部が重畳するように送信する可視光送信手段と、
前記可視光送信手段により前記受信エリアに送信された前記複数の可視光のうちの少なくとも1つの可視光を受光して光電変換し、その光電変換した信号からキャリア周波数を周波数選択性フィルタにより選択して周波数復調する可視光受信手段とを、
備えた可視光通信装置。
【請求項4】
前記可視光受信手段は、前記周波数選択性フィルタにより2以上の異なるキャリア周波数を選択した場合に、前記選択した各キャリア周波数の信号から周波数復調した各信号の再生レベルを、前記選択した各キャリア周波数の受信レベルに基づき制御することを特徴とする請求項3に記載の可視光通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2004−193908(P2004−193908A)
【公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−358662(P2002−358662)
【出願日】平成14年12月10日(2002.12.10)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】