説明

可逆性多色感熱記録媒体

【課題】発色・消色感度が高く、画像の均一性に優れた可逆性多色感熱記録媒体を提供すること。
【解決手段】支持体上に、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/又は加熱後の冷却速度の違いにより相対的に黒色発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体において、該記録層中に粒子径10nm以上100nm以下の酸化亜鉛微粒子を含有し、さらに、該記録層と光の三原色に区分された繰り返し単位を有する着色層とが順次積層されており、該着色層の三原色に区分された部分が、それぞれ異なる波長の光を吸収して発熱する光熱変換材料を含有していることを特徴とする可逆性多色感熱記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の発色反応を利用した可逆性多色感熱発色組成物を用い、熱エネルギーを制御することにより発色画像の形成と消去が可能な可逆性多色感熱記録媒体におよびこれを用いた記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子供与性呈色性化合物(以下、発色剤またはロイコ染料ともいう)と電子受容性化合物(以下、顕色剤ともいう)との間の発色反応を利用した感熱記録媒体は広く知られており、OA化の進展と共にファクシミリ、ワードプロセッサ、科学計測機などの出力用紙として、また最近ではプリペイドカードやポイントカードなどの磁気感熱カードとしても広く使用されている。しかし、これら実用化されている従来の記録媒体は環境問題上、リサイクルや使用量の減量化などの見直しが迫られているが、不可逆的な発色であるため、一度記録した画像を消去して繰り返し使用することはできないし、新しい情報は画像が記録されていない部分に追記されるぐらいで記録可能な部分の面積は限られている。そのため、記録する情報量を減らしたり、記録エリアがなくなった時点でカードを作り直しているのが実状である。そこで、近年盛んに論じられているゴミ問題や森林破壊問題を背景に、何度でも書き換え可能な可逆性感熱記録媒体の開発が望まれていた。
【0003】
ところで、これらの要求から様々な可逆性感熱記録媒体が提案されてきた。例えば、透明・白濁という物理的変化を利用した高分子タイプの可逆性感熱記録媒体が開示されている(特許文献1、2参照)。また、新たに化学的変化を利用した染料タイプの可逆性感熱記録媒体も提案されている。具体的には、顕色剤として没食子酸とフロログルシノールの組合せを用いるもの(例えば、特許文献3参照)、顕色剤にフェノールフタレインやチモールフタレインなどの化合物を用いるもの(例えば、特許文献4参照)、発色剤と顕色剤とカルボン酸エステルの均質相溶体を記録層に含有するもの(例えば、特許文献5、6、7参照)、顕色剤にアスコルビン酸誘導体を用いたもの(例えば、特許文献8参照)、顕色剤にビス(ヒドロキシフェニル)酢酸または没食子酸と高級脂肪族アミンとの塩を用いるもの(例えば、特許文献9、10参照)などが開示されている。
【0004】
さらに本発明者らは、先に特許文献11において顕色剤として長鎖脂肪族炭化水素基をもつ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物またはフェノール化合物を用い、これと発色剤であるロイコ染料とを組み合わせることによって、発色と消色を加熱冷却条件により容易に行なわせることができ、その発色状態と消色状態を常温において安定に保持させることが可能であり、しかも発色と消色を繰り返すことが可能な可逆性感熱発色組成物およびこれを記録層に用いた可逆性感熱記録媒体を提案した。またその後、長鎖脂肪族炭化水素基をもつフェノール化合物について特定の構造のものを使用することが提案されている(例えば、特許文献12、13参照)。
【0005】
しかし、このような材料を用いた記録媒体では、消色速度が遅く書き替えに時間がかかる、消色が不十分、あるいは発色画像の熱安定性が低いなどの問題を有していた。
そこで、さらに本発明者らは特許文献14に記載のフェノール化合物を用いることで、発色と消色のコントラストが高く、高速消去が可能であり、画像部の発色安定性に優れる記録媒体を提案した。このフェノール化合物を用いた記録媒体は、ホットスタンプやヒートローラ、セラミックヒータなどの加熱部材による消去が可能であり実用性に優れるものであった。
【0006】
また、一方で記録媒体の使用方法の多様化に伴い、近年カラー化の要望が高まってきた。特許文献15や特許文献16には、特定の波長の光吸収染料を用いて、色調の異なる複数の可逆性記録層を積層、あるいは、それぞれ光熱変換層を隣接させた複数の可逆性記録層を積層した可逆性記録層記録媒体を用いてレーザ記録を行なう方法や、発色色調毎に記録層面を分割した記録媒体を用いてレーザ記録を行なう方法が提案されている。しかしながら、これらの方法では記録および消去の感度が十分でなかったり、均一でないと言った問題を有していた。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−107584号公報
【特許文献2】特開平4−78573号公報
【特許文献3】特開昭60−193691号公報
【特許文献4】特開昭61−237684号公報
【特許文献5】特開昭62−138556号公報
【特許文献6】特開昭62−138568号公報
【特許文献7】特開昭62−140881号公報
【特許文献8】特開昭63−173684号公報
【特許文献9】特開平2−188293号公報
【特許文献10】特開平2−188294号公報
【特許文献11】特開平5−124360号公報
【特許文献12】特開平6−210954号公報
【特許文献13】特開平10−95175号公報
【特許文献14】特開平10−67177号公報
【特許文献15】特開2003−266941号公報
【特許文献16】特開2003−266942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は発色・消色感度が高く、画像の均一性に優れた可逆性多色感熱記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題はレーザ照射によって発生した熱が記録層内に拡散する速度が遅いことによって、温度分布幅が大きくなり、均一な加熱状態にならないことが問題であると考え、特に記録層内部の熱伝導を向上させて層内を均一にさせることで、改善を検討した。
熱伝導を向上させるための種々の材料を検討した結果、特に、酸化亜鉛微粒子を記録層中に含有させることによって、発色・消色感度、画像の均一性が著しく改善できることが判った。
【0010】
すなわち、上記課題は、以下の本発明の(1)〜(6)によって解決される。
(1)「支持体上に、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/又は加熱後の冷却速度の違いにより相対的に黒色発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体において、該記録層中に粒子径10nm以上100nm以下の酸化亜鉛微粒子を含有し、さらに、該記録層と光の三原色に区分された繰り返し単位を有する着色層とが順次積層されており、該着色層の三原色に区分された部分が、それぞれ異なる波長の光を吸収して発熱する光熱変換材料を含有していることを特徴とする可逆性多色感熱記録媒体」
(2)「前記記録層と着色層との間に、透光性の断熱層が形成されてなることを特徴とする前記第(1)項に記載の可逆性多色記録媒体」
(3)「最表面に保護層が形成されていることを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の可逆性多色記録媒体」
(4)「前記電子受容性化合物が下記式(1)で示される炭素数8以上の飽和脂肪族基を有するフェノール化合物であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の可逆性多色感熱記録媒体;
【0011】
【化1】

式中、X及びXは直接結合手、または−NH−,−CO−,−O−,−SO−,−S−からなる2価の基を示す。ただし、X及びXは同時に直接結合手であることはない。Rは炭素数1から22の2価の炭化水素基を表わし、Rは炭素数8から30の炭化水素基を表わす。また、pは0から4の整数を表わし、pが2から4のとき繰り返されるRおよびXは同一でも異なっていても良い。また、pが0のときXは直接結合手ではない。さらに、qは1から3の整数を表わす」
(5)「前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の可逆性多色感熱記録媒体を用いた記録方法であって、画像情報に応じて選択された波長の光を照射して露光し、記録層の特定領域を発色させて、画像表示を行なうことを特徴とする記録方法」
(6)「前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の可逆性多色感熱記録媒体を用いた記録方法であって、全面を発色させた後、画像情報に応じて選択された波長の光を照射して露光し、記録層の特定領域を消色させて、画像表示を行なうことを特徴とする記録方法」
【0012】
ここで、酸化亜鉛は、記録層中に用いられているロイコ染料や顕色剤、ポリマーといった有機物や、この種の記録材料に添加されるシリカ、タルク、炭酸カルシウムなどの無機充填剤に比べて熱伝導度が高いものであり、記録層への添加によって層内の熱伝導が良好となって加熱温度ムラの低減が期待される。しかしながら、従来公知の酸化亜鉛を記録層中に添加した場合には、粒子径が数ミクロン程度と粗大であるために酸化亜鉛を記録層内に均一に添加させることが困難となり、記録層内の酸化亜鉛粒子の分布によって温度分布のムラが発生して消去不良を起こしたり、酸化亜鉛粒子による光散乱によって記録層の発色濃度を低下させてしまったり、記録層自体が着色する原因となってしまう。
【0013】
本発明においては、粒子径10〜100nmの酸化亜鉛微粒子を用いることによって、酸化亜鉛微粒子は可視領域で実質的に透明となり、上記のような画像濃度の低下への悪影響がなくなり、さらに、粒子が微細化されることによって記録層内に均一に添加することが可能となり、層内の温度分布が均一になることが見い出された。
また、一方で粒子径が10nm未満の場合には凝集しやすくなるため安定な分散が難しくなるという問題があることが見い出され、そこで、本発明においては酸化亜鉛微粒子は粒子径10nm〜100nmのものが好ましく用いられ、さらに、特に好ましくは10nm〜70nmのものが用いられる。
100nmを超える酸化亜鉛微粒子を用いた場合には、記録層内での光散乱が生じて発色濃度の低下がおきる。また、10nm未満の場合は1次粒子での安定性が悪く、凝集状態となって粗大粒子と同様に光散乱を起こす可能性がある。
さらに、こうした粗大粒子(凝集して結果的に粗大になった場合も含む)の場合には、記録層内に均一に含有せずに、密度が高い部分と低い部分ができてしまうため、熱の拡散が不均一となり、発色/消色に対して悪影響が出ると考えられる。
【0014】
本発明において用いられる酸化亜鉛微粒子の添加量は、記録層中の5〜40重量%が好ましく、5%よりも少ない場合には消去性向上の効果が見られず、また、40%よりも多い場合には記録層の強度が低下するなどの問題が起きる。
【発明の効果】
【0015】
以下の詳細且つ具体的な記載から、本発明の可逆性多色感熱記録媒体は、選択された特定の波長の光(赤外線を含む)を照射することで、任意の場所に可逆的に発色および消色を行なうことができ、さらに、書き替えの際にも光の照射によって消去可能な、発色・消色特性に優れたものであることがわかる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明の可逆性多色記録媒体は、以下の例に限定されるものではない。
図1に本発明の第1の例における可逆性多色記録媒体を示す。この可逆性多色記録媒体(1)は、支持体(10)に、記録層(11)と、光の三原色に区分された繰り返し単位を有する着色層(12)とが、順次積層形成されてなり、最上層に保護層(13)が形成された構成を有している。
【0017】
支持体(10)は、この種の記録材料に使用される従来公知の材料を使用することができ、例えば白色ポリエステルフィルムなどが好ましく用いられる。
【0018】
記録層(11)は、酸化亜鉛微粒子、ロイコ染料、可逆性の顕色剤化合物、樹脂を含有しており、また、記録層内には発色の安定性や消色速度向上のため、発色消色制御剤などを添加してもよい。
さらに記録層中に用いるロイコ染料は黒色に発色するロイコ染料は単独または混合されて用いられ、例えば、フタリド化合物、アザフタリド化合物、フルオラン化合物など公知の染料前駆体である。これらの化合物の例としては、特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−230680号公報などに記載の黒色系ロイコ染料がある。
【0019】
また、本発明において顕色剤としては、下記式(1)で示される炭素数8以上の脂肪族基を有するフェノール化合物が特に好ましく用いられる。
【0020】
【化2】


式中、X及びXは直接結合手、または−NH−,−CO−,−O−,−SO−,−S−からなる2価の基を示す。ただし、X及びXは同時に直接結合手であることはない。Rは炭素数1から22の2価の炭化水素基を表わし、Rは炭素数8から30の炭化水素基を表わす。また、pは0から4の整数を表わし、pが2から4のとき繰り返されるRおよびXは同一でも異なっていても良い。また、pが0のときXは直接結合手ではない。さらに、qは1から3の整数を表わす。
【0021】
具体的には、RおよびRは置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、これらは脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、これらの両方から構成される炭化水素基でもよい。また脂肪族炭化水素基は直鎖でも分枝していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。炭化水素基につく置換基としては、水酸基、ハロゲン、アルコキシ基等がある。なお、Rは直接結合手でも良い。
【0022】
またRの炭素が7以下では発色の安定性や消色性が低下するため、炭素数は8以上が好ましく、11以上であることがより好ましい。X及びXは直接結合手またはヘテロ原子を含む2価の基を示し、好ましくは以下に表わされる基を少なくとも1個以上有する2価の基を表わす。
【0023】
【表1】

その具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0024】
【表2】

【0025】
本発明におけるフェノール化合物の具体的な例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、フェノール化合物を単独または混合して用いることもできる。
【0026】
【表3】

(式中のr,sは前記のRおよびRの炭素数を満足する整数を表わす。)
【0027】
また、これらの他にも、例えば特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−95175号公報、特開平9−290563号公報、特開平11−188969号公報、特開平11−99749号などに記載の顕色剤を用いることができる。
【0028】
以下に、上記の記録層の発色・消色について説明する。
この記録層は、加熱温度および/または加熱後の冷却速度により相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうるものである。この基本的な発色・消色現象を説明する。
図3はこの記録媒体の発色濃度と温度との関係を示したものである。はじめ消色状態(A)にある記録媒体を昇温していくと、溶融し始める温度(T)でロイコ染料と顕色剤が溶融混合し、発色が起こり溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると発色状態のまま室温に下げることができ、固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態からの降温の速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が起き、はじめと同じ消色状態(A)あるいは急冷発色状態(C)より相対的に濃度の低い状態が形成される。一方、急冷発色状態(C)をふたたび昇温していくと発色温度より低い温度(T)で消色が起き(DからE)、ここから降温するとはじめと同じ消色状態(A)に戻る。実際の発色温度、消色温度は、用いる顕色剤と発色剤の組合せにより変化するので目的に合わせて選択できる。また溶融発色状態の濃度と急冷したときの発色濃度は、必ずしも一致するものではなく、異なる場合もある。
【0029】
本発明の記録媒体では、溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は顕色剤と発色剤が分子どうしで接触反応しうる状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態は顕色剤と発色剤が凝集して発色を保持した状態であり、この凝集構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は両者が相分離した状態である。この状態は少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより発色剤と顕色剤が分離して安定化した状態であると考えられる。本発明では多くの場合、両者が相分離し顕色剤が結晶化することによってより完全な消色が起きる。図3に示した溶融状態から徐冷による消色および発色状態からの昇温による消色は、いずれもこの温度で凝集構造が変化し、相分離や顕色剤の結晶化が起きている。
【0030】
また、記録層中に用いられる樹脂としては架橋状態にある樹脂が好ましく用いられ、具体的にはアクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなど架橋剤と反応する基を持つ樹脂、または架橋剤と反応する基を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0031】
更に、本発明において好ましくは、特に発色の安定性が良好で、消色性が良好であることからアクリルポリオール樹脂が好ましく用いられる。その水酸基価は70(KOHmg/g)以上であり、特に好ましくは90(KOHmg/g)以上である。また、硬化剤としては、従来公知のイソシアネート類、アミン類、フェノール類、エポキシ化合物等が挙げられる。その中でもイソシアネート系硬化剤が好ましく用いられる。また、これらの架橋性樹脂以外にも従来公知の熱可塑性樹脂も用いることができ、その例としては、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチルセルロース、ポリスチレン、スチレン系共重合体、フェノキシ樹脂、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系重合体、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン等が挙げられる。
【0032】
記録層(11)は、上記酸化亜鉛微粒子、ロイコ染料、顕色剤などの材料を、溶媒を用いて上記樹脂中に分散させて作製した塗料を塗布することによって形成することができる。
【0033】
着色層(12)は、光の三原色に区分された繰り返し単位を有するものとし、これらの三原色(RGB)は、目視できない程度の微細な画点で塗り分けられているものとする。この着色層(12)は、通常液晶ディスプレイに用いられるフォトリソグラフィーや、印刷法によって形成することができる。色材としては、顔料系ではレッド(R)を表わすものとして、ジアミノアントラキノニル、ジバビルツルイソインドリン、グリーン(G)を表わすものとして、ナノブロームドリクロロ銅フタロシアニン、ジバビルツルイソインドリン、ブルー(B)を表わすものとして、銅フタロシアニンが挙げられる。色材はこれらに限定されるものではなく、インク、ペンキ、印刷、プリンターの分野で用いられている各種色材を適用することができる。
【0034】
着色層(12)を構成する画素一単位、すなわち画点の大きさは、この可逆性多色記録媒体(1)の使用者の観察距離によって、目視で認識できない程度の大きさに適宜調整する。また、着色層(12)の三原色に区分された部分は、それぞれ異なる波長(図1中λ1、λ2、λ3)の光を吸収して発熱する光熱変換材料が含有されているものとする。この光熱変換材料としては、可視域に吸収ピークがない赤外線吸収色素として一般的に用いられているフタロシアニン系染料や、シアニン系染料、金属錯体系染料、ジインモニウム系染料等を適用することができる。
【0035】
保護層(13)は、従来公知の紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いて形成することができ、膜厚は0.1〜20μm、さらに好ましくは0.5〜5μm程度に形成する。
【0036】
次に、本発明の可逆性多色記録媒体の他の一例について、図2を参照して説明する。
この例における可逆性多色記録媒体(2)は、支持体(10)上に、記録層(11)、断熱層(14)、着色層(12)および保護層(13)が順次積層形成された構成を有するものとする。
【0037】
支持体(10)、記録層(11)、着色層(12)および保護層(13)は上記第1の例と同様である。
【0038】
断熱層(14)は、可視光を透過する材料を用いて形成する。この断熱層は下側にある記録層を遮蔽しないために透明な層が好ましく、その例としては、上記の記録層中に用いられた熱硬化性の樹脂や熱可塑性の樹脂が用いられる。この断熱層の厚みは、層を構成する材料の熱伝導度によって必要とされる厚みが異なるが、3〜50μm程度が好ましい。
【0039】
次に、記録媒体の記録方法について説明する。
上記に示した記録媒体の任意の場所に波長と出力を選択した光線、例えば赤外線を半導体レーザなどによって照射する。
着色層(12)中のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の領域にはそれぞれ、波長λ1、λ2、λ3の光線を吸収する光熱変換材料が含有されている。
第1の方法として、記録媒体の記録には、無色状態の記録層を画像情報に応じて発色させて行なう方法がある。
例えば、λ1の波長の光線を照射することによってレッドの部分の光熱変換材料が発熱し、記録層が黒色に発色する。これによって、グリーンとブルーの光合成によって、シアンの画像が表示される。さらに、λ1とλ2の光線を照射することによって、レッドとグリーンの部分の光熱変換層が黒色化してブルーの画像が表示される。
画像の消去はλ1の照射を、光熱変換材料の発熱が消色温度領域になるようにして行なう方法か、セラミックヒータやヒートローラなどによって全面を一様に消色温度領域まで加熱する方法があるが、装置の繁雑さなどの点から光照射による消色が好ましい。
【0040】
次に第2の方法として、記録媒体全面を発色させ、画像情報に応じて消色させて行なう方法がある。
セラミックヒータやヒートローラなどによって発色温度以上に加熱した後、急冷して全面を黒色化したのち、例えば波長λ1の光線を、消色温度域まで加熱する程度に照射し、レッドの部分の記録層(11)を消色させることで、レッドの画像を表示させる。さらに、λ1とλ2の光線を照射することで、レッドとグリーンの部分の記録層(11)を消色させる。これによって、レッドとグリーンにより色合成されたイエローが表示される。
画像の消去には、記録層(11)の全面を黒色発色させれば良く、対応した波長の光線照射によって発色させる方法と、セラミックヒータやヒートローラによる方法などがある。
なお、この際に記録層を記録温度よりも低い温度に予め裏面などから加熱することによって、より低エネルギーでの記録が可能となる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明の可逆性多色記録媒体の具体的な実施例を挙げて説明するが本発明の可逆性多色記録媒体は以下に示す例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
支持体(10)上に記録層(11)、着色層(12)および保護層(13)が順次積層された構成の可逆性多色感熱記録媒体を作製した。
【0042】
[記録層の作製]
N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−オクタデシルウレア 4部
アクリルポリオール樹脂
(三菱レイヨン社製LR503 固形分濃度50%溶液) 12部
テトラヒドロフラン(THF) 70部
上記組成物をボールミルを用いて平均粒径約1μmまで粉砕分散した。得られた分散液に粒子径30nm(メーカー値)の酸化亜鉛微粒子分散液(住友大阪セメント社製 ZS−303 固形分濃度30%)10部、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン(発色色調:黒)1.5部、日本ポリウレタン社製コロネートHL(アダクト型ヘキサメチレンジイソシアネート75%酢酸エチル溶液)2.5部を順次加え、良く攪拌し記録層塗布液を調製した。
上記組成の感熱記録層塗布液を、厚さ188μmの白PETにワイヤーバーを用い塗布し、100℃2分で乾燥した後、60℃24時間加熱して、膜厚約8.0μmの第1の記録層(11)を設けた。
【0043】
上述のようにして形成した記録層(11)上に、RGBの三色のカラーフィルター用フォトレジストを用いて、膜厚約1μmの着色層(12)を形成した。1画点は約500μm×166μmの大きさとした。また、着色層(12)を構成するR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)のそれぞれの領域部分に、下記のフタロシアニン系赤外線吸収色素を含有させた。
レッド部分:YKR−1010(山本化成製、吸収波長ピーク687μm)
グリーン部分:YKR−3071(山本化成製、吸収波長ピーク788μm)
ブルー部分:YKR−3070(山本化成製、吸収波長ピーク830μm)
【0044】
[保護層の作成]
紫外線吸収性ポリマーの40%溶液(日本触媒社製UV−G300) 10部
イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHX) 1.4部
シリコーン系アクリル樹脂(東亞合成社製GS−1015) 0.5部
メチルエチルケトン 10部
以上の組成物を良く撹拌し、保護層塗布液を調整した。
上記組成の保護層塗布液を上記着色層(12)上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃2分で乾燥した後、60℃24時間加熱して、厚さ約3.5μmの保護層を設け本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0045】
以上のように作製した可逆性多色感熱記録媒体の任意の場所に波長685nm、パワー30mWの半導体レーザをスポット径20μmとなるように照射した。着色層(12)のレッドの照射部分において光熱変換材料が発熱し、隣接する記録層(11)が黒色に発色した。これによって、着色層(12)のグリーンとブルーとが合成されて表示され、シアンの画像が記録された。
【0046】
つぎに、同一の場所に波長784nm、パワー30mWの半導体レーザをスポット径20μmとなるように照射した。すると、着色層(12)のグリーンの照射部分において光熱変換材料が発熱し、隣接する記録層(11)が黒色に発色した。これによって、ブルーの画像が表示された。
【0047】
つぎに、同一の場所を波長685nm、パワー30mWの半導体レーザをスポット径150μmとなるように照射し、さらに波長784nm、パワー30mWの半導体レーザをスポット径150μmとなるように照射したところ、レッド部分とグリーン部分の光熱変換材料が発熱し、隣接する記録層(11)を消色させ、表示画像が消去された。消去された部分は消去残りのない均一な状態であった。
この画像の表示/消去をくり返し行ったところ、記録媒体の損傷や、画像表示濃度の低下、消去残りなどのない良好な状態であった。
【0048】
〔実施例2〕
実施例1で作製した可逆性多色感熱記録媒体の全面をセラミックヒータで加熱した後、金属ローラで急冷し、全面を発色させた。
この記録媒体の任意の場所を784nm、パワー30mWの半導体レーザをスポット径150μmとなるように照射した。着色層(12)のグリーンの照射部分において光熱変換材料が発熱し、隣接する記録層(11)を消色させて、着色層(12)のグリーンが表示された。他の任意の部分をそれぞれ別々に680nm、830nmの波長にて同様に照射したところ、それぞれ、レッドとブルーが表示された。
また、同一の場所を784nm、830nmの波長にて同様に順次照射したところ、グリーンとブルーの光合成されたシアンが表示された。
また、これらの画像は、いずれもドット毎の混色のない、均一なものであった。
【0049】
次に、記録した画像部分を680nm、784nm、830nmの各波長で、30mW、スポット径20μmの条件で、3回照射したところ、それぞれに対応する着色層(12)の光熱変換材料が発熱し、隣接する記録層(11)を発色させて黒色化し、画像は消去された。
以上の画像の表示・消去をくり返し行なったところ、記録媒体の損傷や、画像表示濃度の低下、消去残りなどのない良好な状態であった。
【0050】
〔比較例1〕
酸化亜鉛微粒子を用いない他は実施例1と同様に作製した任意の場所に波長685nm、パワー30mWの半導体レーザをスポット径20μmとなるように照射した。着色層(12)のレッドの照射部分において光熱変換材料が発熱し、隣接する記録層(11)が黒色に発色した。これによって、着色層(12)のグリーンとブルーとが合成されて表示され、シアンの画像が記録された。
【0051】
つぎに、同一の場所に波長784nm、パワー30mWの半導体レーザをスポット径20μmとなるように照射した。すると、着色層(12)のグリーンの照射部分において光熱変換材料が発熱し、隣接する記録層(11)が黒色に発色した。これによって、ブルーの画像が表示された。
【0052】
つぎに、同一の場所を、波長685nm、パワー30mWの半導体レーザをスポット径150μmとなるように照射し、さらに波長784nm、パワー30mWの半導体レーザをスポット径150μmとなるように照射したところ、レッド部分とグリーン部分の光熱変換材料が発熱し、隣接する記録層(11)を消色させ、表示画像が消去された。しかしながら、消去部には不均一な消去残りがあった。
この画像の表示/消去をくり返し行なったところ、継続して不均一な消し残りが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の可逆性多色感熱記録媒体の第1の構成例を示す図である。
【図2】本発明の可逆性多色感熱記録媒体の第2の構成例を示す図である。
【図3】本発明に用いられる可逆性感熱発色組成物の発色・消色特性を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1:可逆性多色感熱記録媒体
2:可逆性多色感熱記録媒体
10:支持体
11:記録層
12:着色層
13:保護層
14:断熱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/又は加熱後の冷却速度の違いにより相対的に黒色発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体において、該記録層中に粒子径10nm以上100nm以下の酸化亜鉛微粒子を含有し、さらに、該記録層と光の三原色に区分された繰り返し単位を有する着色層とが順次積層されており、該着色層の三原色に区分された部分が、それぞれ異なる波長の光を吸収して発熱する光熱変換材料を含有していることを特徴とする可逆性多色感熱記録媒体。
【請求項2】
前記記録層と着色層との間に、透光性の断熱層が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の可逆性多色記録媒体。
【請求項3】
最表面に保護層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可逆性多色記録媒体。
【請求項4】
前記電子受容性化合物が下記式(1)で示される炭素数8以上の飽和脂肪族基を有するフェノール化合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可逆性多色感熱記録媒体。
【化1】

式中、X及びXは直接結合手、または−NH−,−CO−,−O−,−SO−,−S−からなる2価の基を示す。ただし、X及びXは同時に直接結合手であることはない。Rは炭素数1から22の2価の炭化水素基を表わし、Rは炭素数8から30の炭化水素基を表わす。また、pは0から4の整数を表わし、pが2から4のとき繰り返されるRおよびXは同一でも異なっていても良い。また、pが0のときXは直接結合手ではない。さらに、qは1から3の整数を表わす。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の可逆性多色感熱記録媒体を用いた記録方法であって、画像情報に応じて選択された波長の光を照射して露光し、記録層の特定領域を発色させて、画像表示を行なうことを特徴とする記録方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の可逆性多色感熱記録媒体を用いた記録方法であって、全面を発色させた後、画像情報に応じて選択された波長の光を照射して露光し、記録層の特定領域を消色させて、画像表示を行なうことを特徴とする記録方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−118204(P2007−118204A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309287(P2005−309287)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】