説明

可逆性感熱記録媒体及びこの記録媒体を用いた画像記録方法

【課題】 与えられた光エネルギーを効率良く熱に変換して感熱記録を行い、画像記録のスピードアップを図る。
【解決手段】 感熱部(3)、および前記感熱部と接するように形成された光透過断熱層(4)を具備する可逆性感熱記録媒体(100)である。前記光熱変換材料は、特定波長の光を吸収して熱エネルギーに変換し、前記感熱可逆層は、電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を含有し、加熱温度及び加熱後の冷却温度の一方又は両方の違いにより発色状態と消色状態とに変化する。前記光透過断熱層は、前記光熱変換材料が吸収する特定波長の光を透過し、前記光熱変換材料の発する熱を断熱することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を使用して非接触で画像記録し、かつ、消去できる可逆性感熱記録媒体及びこの記録媒体を用いた画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を使用して非接触で画像記録し、かつ、消去できる可逆性感熱記録媒体として、ポリエチレンテレフタレート、紙などからなる支持体に、光熱変換層と可逆性感熱記録層と光熱変換層とを順次積層したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。光熱変換層は光熱変換材料を主成分とし、光熱変換層は光熱変換材料を主成分とする。可逆性感熱記録層は、通常、無色ないし淡色のロイコ染料と、加熱によりこのロイコ染料を発色させこれを再加熱して消色させる可逆顕色剤とを含有する。
【0003】
また、支持基板の上に、第1の記録層、第2の記録層および第3の記録層を、それぞれ断熱層を間に介して積層し、最上層に保護層を形成した構成も知られている(例えば、特許文献2参照)。各記録層には、安定した繰り返し記録が可能な消色状態と発色状態とを制御し得る材料が用いられる。各記録層には、それぞれ異なる波長の赤外線を吸収して発熱する光−熱変換材料が含有される。
【特許文献1】特開平11−151856号公報
【特許文献2】特開2004−155011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光を使用して非接触で可逆性感熱記録媒体に画像記録を行う場合、照射する光エネルギーと記録速度との関係が問題になる。書き込みの光として半導体レーザを使用した場合、書き込み装置を小形化、低廉化できるというメリットはあるが、光エネルギーが低い。このため、従来の可逆性感熱記録媒体では、与えられた光エネルギーを熱に変換する効率が低く、走査するときのレーザ光の速度を遅くしなければ画像記録に必要な熱が充分に発生しないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、与えられた光エネルギーを効率良く熱に変換して感熱記録ができ、画像記録のスピードアップを図ることができる可逆性感熱記録媒体及びこの記録媒体を用いた画像記録方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる可逆性感熱記録媒体は、特定波長の光を吸収して熱エネルギーに変換する光熱変換材料と、電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を含有し、加熱温度及び加熱後の冷却温度の一方又は両方の違いにより発色状態と消色状態とに変化する感熱可逆層とを含有する感熱部、および
前記感熱部と接するように形成され、前記光熱変換材料が吸収する特定波長の光を透過し、前記光熱変換材料の発する熱を断熱する光透過断熱層
を具備することを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様にかかる画像記録方法は、光透過性基材と、この上に順次設けられた光透過断熱層、感熱可逆層、および第2の光透過断熱層とを備えた可逆性感熱記録媒体に画像を記録する方法であって、前記記録媒体の両側から特定波長のレーザ光を照射し、前記光熱変換材料でこのレーザ光を吸収して熱エネルギーに変換し、この熱エネルギーで前記感熱可逆層を発色させて画像記録を行うことを含む。
【0008】
本発明の他の態様にかかる画像記録方法は、光透過性基材と、この上に順次設けられた光透過断熱層、光熱変換層、感熱可逆層、第2の光熱変換層、および第2の光透過断熱層とを備えた可逆性感熱記録媒体に画像を記録する方法であって、前記記録媒体の両側から特定波長のレーザ光を照射し、前記光熱変換材料でこのレーザ光を吸収して熱エネルギーに変換し、この熱エネルギーで前記感熱可逆層を発色させて画像記録を行うことを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、与えられた光エネルギーを効率良く熱に変換して感熱記録ができ、画像記録のスピードアップを図ることができる可逆性感熱記録媒体及びこの記録媒体を用いた画像記録方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。第1の実施の形態乃至第6の実施の形態では、可逆性感熱記録媒体の構成について述べる。第7の実施の形態では、可逆性感熱記録媒体を用いて画像記録方法について述べる。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1に示す可逆性感熱記録媒体100においては、基材1の上に断熱層2を介して感熱可逆層3が設けられる。断熱層2は必ずしも必要ではなく、無くてもよい。
【0012】
前記感熱可逆層3は、特定波長の光である近赤外線の波長、例えば808nmの波長の光を吸収して熱を発する光熱変換材料と、電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料と、電子受容性化合物である顕減色剤を含有する。前記感熱可逆層3は、加熱温度及び加熱後の冷却温度の一方又は両方の違いによって、発色状態と消色状態に変化する。
【0013】
このように光熱変換材料を含む感熱可逆層を、感熱部と称する。場合によっては、光熱変換材料は、感熱可逆層以外の層に含有されてもよい。例えば、光熱変換材料は、光熱変換層に含有され、この光熱変換層と感熱可逆層とによって感熱部が形成される。こうした感熱部については、後述する。
【0014】
ロイコ染料としては、例えば、フルオラン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、フルオレン系化合物等が使用可能であるがこれに限定されない。顕減色剤としては、加熱によりロイコ染料に可逆的な色調変化を生じさせる化合物を用いることができる。
【0015】
基材1としては、紙基材、プラスティックの基材が使用可能である。紙基材の場合は、表面の平滑性が高い方が望ましい。表面が粗いと、発色や消去状態で濃淡のムラが発生しやすいためである。また、紙基材が厚くなると湿度の影響を受ける。これを避けるため、紙の膜厚は、表面に塗布される材料の厚さと同程度か若干多い程度が望ましい。
【0016】
プラスティックの基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリキシリレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)などが使用可能である。強靭性、耐熱性、耐薬品性、透明性等からPETやPENがより望ましい。
【0017】
断熱層2には、焼成カオリン、多孔質のシリカ、炭酸カルシウム等の無機材料や、ポリスチレン、架橋スチレンーアクリル樹脂等の中空粒子の樹脂材料が含有される。こうした材料は、バインダー樹脂とともに用いられる。バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、塩化ビニル樹脂、スチレンブタジエン樹脂等が使用可能である。塗布量としては2μm〜50μm程度であることが好ましい。なお、厚さが薄いと断熱層としての効果が少なく、50μm以上の場合は可逆性感熱記録媒体の繰返し使用回数が低下する。断熱層2には、白色度を増すために蛍光増白剤等が含有されてもよい。
【0018】
感熱可逆層3に含有される光熱変換材料は、可視光に吸収がほとんど無く、近赤外線の領域の光を吸収し、熱を発する材料である。例えば、近赤外線の半導体レーザに適合する材料としては、780nm〜850nm程度波長をよく吸収し、熱に変換する材料が挙げられる。具体的には、シアニン系、ポリメチン系、フタロシアニン系、ナフトロシアンニン系等を用いることができる。光熱変換材は、バインダー樹脂内に溶解または微分散して使用される。
【0019】
バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれを用いてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン−塩ビ共重合体、エチレン−酢ビ共重合体、エチレン−酢ビ−塩ビ共重合体、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノキシ樹脂、ブタジエン樹脂、石油樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリカーボネートスチレン、ポリサルホン、ポリパラメチルスチレン、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ピリフェニレンエーテルポリプロピレン、ポリメチルペンテン、メタクリル樹脂、およびアクリル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、およびユリア樹脂などがある。バインダー樹脂は、それぞれを重合して用いてもよく、混合してもよい。
【0020】
感熱可逆層3を形成するには、溶媒に光熱変換材を溶解してなる塗工液が用いられる。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、その他グリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、シクロヘキサノン等を使用することができる。溶媒に光熱変換材を添加し、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル等の分散機で微分散し塗工液が得られる。微分散は、それぞれ分散した後に混合してもよい。
【0021】
感熱可逆層3の塗工方法は特に制限されず、エアーナイフ、ワイヤーバー、グラビアコーティング、キスコーティング、ダイコーティング、マイクログラビアコーティング等を採用することができる。こうした方法によって、断熱層または基材の上に、通常5〜15μm程度の厚さで塗工液を塗工して、感熱可逆層3を形成することができる。
【0022】
感熱可逆層3の上には、照射される近赤外線の波長よりも粒子径が小さい中空粒子を含有する光透過断熱層4が形成される。中空粒子は、光熱変換材料の熱を上部に逃がさないために用いられる。光透過断熱層4には、高分子系の紫外線吸収剤がさらに含有される。
【0023】
光透過断熱層4は、光熱変換材料の波長を透過し熱の断熱性の高い材料を主成分とする。このような材料としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル樹脂等からなる中空粒子が望ましい。中空粒子の平均粒子径は、使用される光熱変換材料の吸収波長以下が好ましく、半分波長程度がより望ましい。小さすぎる場合には、断熱効果が少なくなるので、平均粒子径で0.2μm以上0.5μm以下の粒子が望ましい。
【0024】
中空粒子、前述したバインダー樹脂、および紫外線吸収剤を、中空粒子を痛めない水、アルコール等の溶剤に分散して塗工液を得る。塗工液を前述の塗工方法で感熱可逆層3の上にコーティングして、光透過断熱層4が形成される。紫外線吸収剤としては、高分子系のベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等が使用可能である。紫外線吸収剤が溶媒に不溶な場合は、変わりにエマルジョンが使用可能である。紫外線吸収剤として使用するエマルジョンの粒子径は、光熱変換材料と同様に、0.2μm以上0.5μm以下が好ましい。
【0025】
光透過断熱層4の上には、外部環境から保護するために、例えば、耐水性樹脂等を主成分とした保護層5が形成される。保護層5は必要に応じて設ければよい。保護層5の膜厚は特に制限されず、近赤外線の照射を阻害しない範囲で決定できる。塗工法および樹脂は、感熱可逆層3で使用したものが使用可能である。
【0026】
このような構成の可逆性感熱記録媒体100においては、保護層5から入射される近赤外光、例えば近赤外の半導体レーザ光は、光透過断熱層4を透過して感熱可逆層3に到達する。さらに、感熱可逆層3において光熱変換材により熱に変換される。この熱は、感熱可逆層3の下に形成された断熱層2と、感熱可逆層3の上に形成された光透過断熱層4とによって閉じ込められ、熱の拡散が防止される。これにより、熱は感熱可逆層3の内部で有効に利用される。
【0027】
こうして、レーザ光は効率良く熱に変換され、感熱可逆層3ではロイコ染料が発色する。従って、短時間のレーザ光照射であっても画像を記録することが可能になる。この可逆性感熱記録媒体100を使用すれば、レーザ光走査による画像記録のスピードアップを図ることができる。
【0028】
(第2の実施の形態)
前述した実施の形態と同一部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図2に示す可逆性感熱記録媒体101においては、基材1の上に、断熱層2を介して感熱可逆層13が形成される。断熱層2は必ずしも必要ではなく、無くてもよい。
【0029】
感熱可逆層13は、電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料と、電子受容性化合物である顕減色剤を含有する。感熱可逆層13は、加熱温度及び加熱後の冷却温度の一方又は両方の違いにより、発色状態と消色状態とに変化する。
【0030】
感熱可逆層13の上には、光熱変換材料を含有する光熱変換層6、光透過断熱層4および保護層5が順次形成される。光熱変換材料は、特定波長の光である近赤外線の波長、例えば808nmの波長の光を吸収して熱を発する。本実施形態においては、感熱可逆層13と光熱変換層6とによって、感熱部が形成される。
【0031】
このような構成の可逆性感熱記録媒体101においては、保護層5から入射される近赤外光、例えば、近赤外の半導体レーザ光は、光透過断熱層4を透過して光熱変換層6に到達する。光熱変換層6では光熱変換材により光が熱に変換される。この熱は、可逆性感熱記録媒体の下部にある感熱可逆層13に伝達されるが、光透過性断熱層4に阻まれて可逆性感熱記録媒体の上部には伝達されず、熱の拡散が防止される。これにより、発生した熱は、感熱可逆層13の内部で有効に利用される。
【0032】
こうして、レーザ光は効率良く熱に変換され、感熱可逆層13ではロイコ染料が発色する。従って、短時間のレーザ光照射でも画像記録が可能になり、この可逆性感熱記録媒体101を使用すればレーザ光走査による画像記録のスピードアップを図ることができる。
【0033】
(第3の実施の形態)
前述した実施の形態と同一部分には同一の符号を付し詳細な説明は省略する。
図3に示す可逆性感熱記録媒体102においては、光透過性基材である透明基材11の上に、光透過断熱層4、光熱変換材を含有した感熱可逆層3、および保護層15が順次形成される。透明基材11としては、PETやPEN等が使用される。本実施形態においては、光熱変換材を含有する感熱可逆層3が感熱部に相当する。
【0034】
このような構成の可逆性感熱記録媒体102においては、透明基材11から入射される近赤外光、例えば近赤外の半導体レーザ光は光透過断熱層4を透過して感熱可逆層3に到達する。感熱可逆層3では光熱変換材により光が熱に変換される。この熱は下部の光透過断熱層4によって拡散が防止される。保護層15側はあまり断熱性が良くないが、透明基材側に光透過断熱層4を設けているので、感熱可逆層3の内部で熱は有効に利用される。
【0035】
こうして、レーザ光は効率良く熱に変換され、感熱可逆層3ではロイコ染料が発色する。従って、短時間のレーザ光照射でも画像記録が可能になり、この可逆性感熱記録媒体102を使用すればレーザ光走査による画像記録のスピードアップを図ることができる。
【0036】
(第4の実施の形態)
前述した実施の形態と同一部分には同一の符号を付し詳細な説明は省略する。
図4に示す可逆性感熱記録媒体103においては、透明基材11の上に、光透過断熱層4、光熱変換層6、感熱可逆層13、および保護層15が順次形成される。感熱可逆層13は、電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料と電子受容性化合物である顕減色剤とを含有する。本実施形態においては、光熱変換層6と感熱可逆層13とによって感熱部が構成される。
【0037】
このような構成の可逆性感熱記録媒体103においては、透明基材11から入射される近赤外光、例えば近赤外の半導体レーザ光は、光透過断熱層4を透過して光熱変換層6に到達する。光熱変換層6では、光熱変換材により光が熱に変換される。この熱は、可逆性感熱記録媒体の上部にある感熱可逆層13に伝達されるが、光透過性断熱層4に阻まれて可逆性感熱記録媒体の下部には伝達されず、熱の拡散が防止される。保護層15側はあまり断熱性が良くないが、透明基材側に光透過断熱層4を設けているので、感熱可逆層3の内部で熱は有効に利用される。これにより、光熱変換層6で発生した熱は感熱可逆層13の内部で有効に利用される。
【0038】
こうして、レーザ光は効率良く熱に変換され、感熱可逆層13ではロイコ染料が発色する。従って、短時間のレーザ光照射であっても画像記録が可能になり、この可逆性感熱記録媒体103を使用すればレーザ光走査による画像記録のスピードアップを図ることができる。
【0039】
(第5の実施の形態)
前述した実施の形態と同一部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図5に示す可逆性感熱記録媒体104においては、光透過性基材である透明基材11の上に、光透過断熱層4、感熱可逆層23、第2の光透過断熱層7、および保護層5が順次形成される。
【0040】
感熱可逆層23は、特定波長の光である近赤外線の波長の光を吸収して熱を発する光熱変換材料と、電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料と、電子受容性化合物である顕減色剤とを含有する。第2の光透過断熱層7は、中空粒子および高分子系の紫外線吸収材を含有する。中空粒子は、照射する近赤外線の波長よりも粒子径が小さく、これによって光熱変換材料の熱を上部に逃がすことは避けられる。本実施形態においては、光熱変換材料を含有する感熱可逆層23が感熱部に相当する。
【0041】
このような構成の可逆性感熱記録媒体104においては、透明基材11と保護層5との両側から近赤外光、例えば近赤外の半導体レーザ光が入射される。透明基材11から入射される半導体レーザ光は、光透過断熱層4を透過して感熱可逆層23に到達する。保護層5から入射される半導体レーザ光は、第2の光透過断熱層7を透過して感熱可逆層23に到達する。感熱可逆層23では光熱変換材により光が熱に変換される。この熱は、下部の光透過断熱層4及び上部の第2の光透過断熱層7によって拡散が防止される。従って、感熱可逆層23の内部の熱は閉じ込められて有効に利用される。
【0042】
こうして、両側から入射されたレーザ光は効率良く熱に変換され、感熱可逆層23ではロイコ染料が発色する。しかも、両側から入射されるレーザ光のパワーが等しければ照射されるレーザ光のパワーは略2倍になる。このように2本のレーザ光を照射することで、照射時間がごく短時間であっても画像記録が可能になる。従って、この可逆性感熱記録媒体104を使用すれば、レーザ光走査による画像記録のスピードをさらに高めることができる。
【0043】
(第6の実施の形態)
前述した実施の形態と同一部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図6に示す可逆性感熱記録媒体105においては、透明基材11の上に、光透過断熱層4、光熱変換層6、感熱可逆層13、第2の光熱変換層8、光透過断熱層7および保護層5が順次形成される。第2の光熱変換層8は、特定波長の光である近赤外線の波長の光を吸収して熱を発する光熱変換材料を含有する。本実施形態においては、光熱変換層6と感熱可逆層13と第2の光熱変換層8とによって、感熱層が構成される。
【0044】
このような構成の可逆性感熱記録媒体105においては、透明基材11と保護層5との両側から例えば、近赤外の半導体レーザ光が入射される。透明基材11から入射される半導体レーザ光は、光透過断熱層4を透過して光熱変換層6に到達する。光熱変換層6では、光熱変換材により光が熱に変換される。
【0045】
また、保護層5から入射される半導体レーザ光は、第2の光透過断熱層7を透過して第2の光熱変換層8に到達する。第2の光熱変換層8では、光熱変換材により光が熱に変換される。
【0046】
感熱可逆層13には、両側の光熱変換層6、8から熱が与えられる。光熱変換層6の熱は下部の光透過断熱層4によって拡散が防止され、第2の光熱変換層8の熱は上部の第2の光透過断熱層7によって拡散が防止される。従って、感熱可逆層13の内部の熱は閉じ込められて有効に利用される。
【0047】
こうして、両側から入射されたレーザ光は効率良く熱に変換され、感熱可逆層13ではロイコ染料が発色する。しかも、両側から入射されるレーザ光のパワーが等しければ照射されるレーザ光のパワーは略2倍になる。このように2本のレーザ光を照射することで、照射時間がごく短時間であっても画像記録が可能になる。従って、この可逆性感熱記録媒体105を使用すれば、レーザ光走査による画像記録のスピードをさらに高めることができる。
【0048】
(第7の実施の形態)
この実施の形態では、可逆性感熱記録媒体を用いた画像記録方法について述べる。可逆性感熱記録媒体としては、第6の実施の形態の可逆性感熱記録媒体105を使用する。
【0049】
図7に示すように、第1のレーザ光学系31を使用して透明基材11側から半導体レーザ光L1を照射するとともに、第2のレーザ光学系32を用いて保護層5側から半導体レーザ光L2を照射して画像記録を行う。
【0050】
感熱可逆層13の両側の光熱変換層6、8に含有される光熱変換材が発生する熱は、照射する光エネルギーに略比例する。したがって、2本のレーザ光L1、L2を可逆性感熱記録媒体100の両面からダブルで同一画素位置を照射することにより、1画素を形成する時間を半分にできる。すなわち、画像記録のスピードアップを図ることができる。また、同じ時間で画像を形成するのであれば、1本の場合に比べてレーザ光のパワーを半分にできる。
同一部分を照射することが構造上難しいとすれば、2本のレーザ光L1、L2は異なる位置を照射し走査してもよい。
【0051】
このようなレーザ光学系は比較的大きくなるので、可逆性感熱記録媒体の近傍に位置させることが難しくなる。本実施の形態の可逆性感熱記録媒体105を使用することにより、光を効率良く熱に変換できるので、光学系を小さくでき、これらの光学系を設置する際の制限も緩和することができる。
【0052】
次に、前述した各実施の形態で述べた構成の可逆性感熱記録媒体を使用した具体的な実施例と、実施の形態とは異なる構成の比較例とについて述べる。
先ず、使用した各種塗布液について説明する。
断熱層を形成する塗布液として、A1液及びA2液の2種類用意する。
【0053】
A1液は、光遮断型断熱層を形成する塗布液であり、以下の成分をペイントシェーカーで10時間分散して得た。
【0054】
顔料として、KOKAL(焼成カオリン:白石カルシウム社製) ・・・25重量部
バインダー樹脂として、PVA318 ・・・ 8重量部
溶媒として、水 ・・・75重量部
A2液は、中空粒子使用の断熱層を形成する塗布液であり、以下の成分をペイントシェーカーで10時間分散して得た。
【0055】
中空粒子として、M−600(松本油脂製薬社製) ・・・16重量部
樹脂として、ダイフェラミン5022(大日精化工業(株)社製) ・・・14重量部
溶媒として、MEK ・・・80重量部
感熱可逆層を形成する塗布液としては、B1液及びB2液の2種類用意する。
B1液は、光熱変換材を含有した感熱可逆層3,23を形成する塗布液であり、以下の成分をガラスビーズとともにペイントシェーカーに収容し、24時間分散して得た。
【0056】
電子供与性呈色性化合物として、ODB−2(山本化成社製) ・・・2重量部
電子受容性化合物(顕減色剤)として、N−(p−ヒドロキシフェニル)−N’−n−ドデシル尿素 ・・・8重量部
光熱変換材として、SDA1816(H.W.SANDS社製) ・・・2重量部
バインダー樹脂として、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂 ・・・20重量部
溶媒として、MEK ・・・150重量部
B2液は、光熱変換材を含有しない感熱可逆層13を形成する塗布液であり、以下の成分をガラスビーズとともにペイントシェーカーに収容し、24時間分散して得た。
【0057】
電子供与性呈色性化合物として、ODB−2(山本化成社製) ・・・2重量部
電子受容性化合物(顕減色剤)として、N−[5−(p−ヒドロキシフェニルカルバモイル)ペンチル]−n−n−オクタデシル尿素 ・・・8重量部
バインダー樹脂として、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂 ・・・20重量部
溶媒として、トルエン ・・・150重量部
光熱変換層を形成する塗布液としては、C液の1種類用意する。
C液は、光熱変換層6、8を形成する塗布液であり、以下の成分をガラスビーズとともにペイントシェーカーに収容し、24時間分散して得た。
【0058】
光熱変換材として、SDA1816(H.W.SANDS社製) ・・・2重量部
バインダー樹脂として、ポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡社製)
・・・10重量部
溶媒としてMEK ・・・100重量部
光透過断熱層を形成する塗布液としては、D1液及びD2液の2種類用意する。
D1液は、紫外線吸収剤が入っていない光透過断熱層を形成する塗布液であり、以下の成分をよく混合して得た。
【0059】
光透過断熱材として、架橋スチレン−アクリル中空粒子分散液(SX−866(B)JSR社製) ・・・75重量部
バインダー樹脂として、PVA318 ・・・10重量部
溶媒として、水 ・・・50重量部
D2液は、紫外線吸収剤入りの光透過断熱層を形成する塗布液であり、以下の成分をよく混合して得た。
【0060】
光透過断熱材として、架橋スチレン-アクリル中空粒子分散液(SX−866(B)JSR社製) ・・・75重量部
バインダー樹脂として、PVA318 ・・・10重量部
溶媒として、水 ・・・50重量部
紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系(ULS−700、一方社油脂工業(株)社製) ・・・20重量部
保護層を形成する塗布液としては、E1液及びE2液の2種類用意する。
E1液は、紫外線吸収剤が入っていない保護層を形成する塗布液であり、以下の成分をよく混合して得た。
【0061】
樹脂として、ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂(大日本インキ社製C7−157) ・・・15重量部
溶媒として、酢酸エチル ・・・85重量部
E2液は、紫外線吸収剤入りの保護層を形成する塗布液であり、以下の成分をよく混合して得た。
【0062】
樹脂として、PVA318 ・・・15重量部
紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系(ULS−700、一方社油脂工業(株)社製) ・・・20重量部
溶媒として、水 ・・・85重量部
次に、上記各塗布液を使用して各層を形成した可逆性感熱記録媒体の実施例と比較例について述べる。
(実施例1)
基材1として上質紙を用いて、図1の構成の可逆性感熱記録媒体を作製した。この上質紙の上に、乾燥重量5g/m2のA1液をバーコータで塗工乾燥して断熱層2を形成し、この断熱層2の上に、乾燥重量8g/m2のB1液をバーコータで塗工乾燥して感熱可逆層3を形成した。
【0063】
感熱可逆層3の上には、乾燥重量5g/m2のD1液をバーコータで塗工乾燥して光透過断熱層4を形成し、光透過断熱層4の上には、乾燥重量5g/m2のE1液をバーコータで塗工乾燥して保護層5を形成した。こうして、可逆性感熱記録媒体100を得た。
【0064】
(実施例2)
基材1として厚さ180μmのPETフィルムを用いて、図1の構成の可逆性感熱記録媒体を作製した。このPETフィルムの上に、乾燥重量5g/m2のA2液をバーコータで塗工乾燥して断熱層2を形成した。それ以外は実施例1と同様にして、可逆性感熱記録媒体100を得た。
【0065】
(実施例3)
基材1として上質紙を用いて、図2の構成の可逆性感熱記録媒体を作製した。この上質紙の上に、乾燥重量5g/m2のA1液をバーコータで塗工乾燥して断熱層2を形成し、この断熱層2の上に、乾燥重量8g/m2のB2液をバーコータで塗工乾燥して感熱可逆層13を形成した。
【0066】
感熱可逆層13の上に、乾燥重量3g/m2のC液をバーコータで塗工乾燥して光熱変換層6を形成し、光熱変換層6の上に、乾燥重量5g/m2のD1液をバーコータで塗工乾燥して光透過断熱層4を形成した。光透過断熱層4の上に、乾燥重量で5g/m2のE1液をバーコータで塗工乾燥して保護層5を形成し、可逆性感熱記録媒体101を得た。
【0067】
(実施例4)
基材1として厚さ180μmのPETフィルムを用いて、図2の構成の可逆性感熱記録媒体を作製した。このPETフィルムの上に、乾燥重量5g/m2のA2液をバーコータで塗工乾燥して断熱層2を形成した。それ以外は実施例3と同様にして、可逆性感熱記録媒体101を得た。
【0068】
(実施例5)
透明基材11として厚さが180μmのPETフィルムを用いて、図3の構成の可逆性感熱記録媒体を作製した。このPETフィルムの上に、乾燥重量5g/m2のD2液をバーコータで塗工乾燥して光透過断熱層4を形成し、光透過断熱層4の上に、乾燥重量8g/m2のB1液をバーコータで塗工乾燥して感熱可逆層3を形成した。感熱可逆層3の上に、乾燥重量5g/m2のE2液をバーコータで塗工乾燥して保護層15を形成し、可逆性感熱記録媒体102を得た。
【0069】
(実施例6)
透明基材11として厚さが180μmのPETフィルムを用いて、図4の構成の可逆性感熱記録媒体を作製した。このPETフィルムの上に、乾燥重量5g/m2のD2液をバーコータで塗工乾燥して光透過断熱層4を形成し、光透過断熱層4の上には、乾燥重量3g/m2のC液をバーコータで塗工乾燥して光熱変換層6を形成した。光熱変換層6の上には、乾燥重量8g/m2のB2液をバーコータで塗工乾燥して感熱可逆層13を形成し、感熱可逆層13の上に、乾燥重量5g/m2のE2液をバーコータで塗工乾燥して保護層15を形成した。こうして、可逆性感熱記録媒体103を得た。
【0070】
(実施例7)
透明基材11である厚さが180μmのPETフィルムを用いて、図5の構成の可逆性感熱記録媒体を作製した。このPETフィルムの上に、乾燥重量5g/m2のD2液をバーコータで塗工乾燥して光透過断熱層4を形成し、光透過断熱層4の上に、乾燥重量8g/m2のB1液をバーコータで塗工乾燥して感熱可逆層23を形成した。
【0071】
感熱可逆層23の上には、乾燥重量5g/m2のD2液をバーコータで塗工乾燥して第2の光透過断熱層7を形成した。光透過断熱層7の上に、乾燥重量5g/m2のE2液をバーコータで塗工乾燥して保護層5を形成して、可逆性感熱記録媒体104を得た。
【0072】
(実施例8)
透明基材11として厚さ180μmのPETフィルムを用いて、図6の構成の可逆性感熱記録媒体を作製した。このPETフィルムの上に、乾燥重量5g/m2のD2液をバーコータで塗工乾燥して光透過断熱層4を形成し、光透過断熱層4の上に、乾燥重量3g/m2のC液をバーコータで塗工乾燥して光熱変換層6を形成した。
【0073】
光熱変換層6の上に、乾燥重量8g/m2のB2液をバーコータで塗工乾燥して感熱可逆層13を形成し、感熱可逆層13の上に、乾燥重量3g/m2のC液をバーコータで塗工乾燥して第2の光熱変換層8を形成した。第2の光熱変換層8の上に、乾燥重量5g/m2のD2液をバーコータで塗工乾燥して第2の光透過断熱層7を形成し、光透過断熱層7の上に、乾燥重量5g/m2のE2液をバーコータで塗工乾燥して保護層5を形成した。こうして、可逆性感熱記録媒体105を得た。
【0074】
(実施例9)
光透過断熱層4に使用する光透過断熱材の中空粒子を、粒子径が0.5μmのNipol MH5055(日本ゼオン社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0075】
(比較例1)
光透過断熱層4を設けない以外は実施例2と同様の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0076】
(比較例2)
光透過断熱層4を設けない以外は実施例5と同様の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0077】
(比較例3)
光透過断熱層4に使用する光透過断熱材の中空粒子を、粒子径1.1μmのSX8782(A)(JSR社製)に変更した以外は実施例2と同様にして、可逆性感熱記録媒体を作製した。ここで用いた中空粒子の粒子径は、光熱変換材料の吸収波長(830nm)よりも若干大きい。
【0078】
(比較例4)
光透過断熱層4に使用する光透過断熱材の中空粒子を、粒子径4.0μmの中空粒子E−1030(東ソーシリカ(株)社製)に変更した以外は実施例2と同様にして、可逆性感熱記録媒体を作製した。ここで用いた中空粒子の粒子径は、光熱変換材料の吸収波長(830nm)よりも大きい。
【0079】
作製された各可逆性感熱記録媒体には、図7に示す光学系で縦ラインの画像を形成した。この際の記録媒体の搬送速度と、形成される画像のライン幅とを測定して評価した。
【0080】
光学系を固定し、記録媒体の搬送速度を変化させて画像を形成すると、媒体感度に応じて、ライン幅の寸法が変化する。従って、規定のライン幅の寸法を形成できる記録媒体の搬送速度を測定して、可逆性感熱記録媒体としての感度を算出することができる。
【0081】
光学系としては、波長が808nmで出力が150mWの半導体レーザを使用する。そして、この半導体レーザをコリメータで平行光にする。このレーザ光の媒体面でのパワーは、1/e2分布で測定して35mWであった。この半導体レーザを、可逆性感熱記録媒体の片面あるいは両面から照射して画像を形成した。媒体位置でのビームの形状は、100μmφである。ライン幅の寸法は、ドットアナライザーを使用して測定した。
【0082】
レーザ光のパワーが同じ場合には、記録媒体の搬送速度が速くなると同一位置での照射時間が短くなるので、記録媒体に印加されるエネルギーが小さくなる。レーザ光のビーム径のうち、画像形成できる部分がセンター付近になるため、エネルギーが小さくなるとライン幅が細ることになる。
【0083】
100μmφのビーム形状で100μmの線幅が形成できるということは、画像形成にレーザ光の1/e2までのパワーが有効に働いたことを示している。可逆性感熱記録媒体の感度が高ければ、搬送速度を大きくしても100μmのライン幅の形成が可能になる。
【0084】
換言すれば、各実施例及び各比較例の可逆性感熱記録媒体について、100μmφのビーム形状で100μmの線幅が形成できるときの搬送速度を測定することによって、可逆性感熱記録媒体の感度が向上しているか否かを評価できることになる。
【0085】
評価結果を表1に示す。
【表1】

【0086】
実施例1は、図1の構成の可逆性感熱記録媒体であり、比較例1の可逆性感熱記録媒体に光透過断熱層を設けたものである。光透過断熱層に用いた光透過断熱材の中空粒子の粒子径は、0.3μmである。
【0087】
100μmのライン幅形成速度が、比較例1では48mm/secであるのに対し、実施例1では64mm/secとなり、記録媒体としての感度が向上した。これは、光透過断熱層において波長が808nmの近赤外線の光は透過し、中空粒子で断熱することにより、放出されていた熱を利用することができたものと思われる。
【0088】
実施例1の可逆性感熱記録媒体を使用することで、与えられた光エネルギーを効率良く熱に変換して感熱記録ができ、画像記録のスピードアップを図ることができる。
【0089】
実施例2は、実施例1の基材1をPETフィルムに変更したものである。PETフィルム基材の場合には、紙基材の場合より熱拡散が大きいので、100μmのライン幅形成速度は実施例1よりも若干遅くなるが、58mm/secである。この速度は、比較例1より速く、感度が向上したことがわかる。
【0090】
実施例2の可逆性感熱記録媒体を使用することで、与えられた光エネルギーを効率良く熱に変換して感熱記録ができ、画像記録のスピードアップを図ることができる。
【0091】
実施例3及び4の可逆性感熱記録媒体は、図2の構成である。光透過断熱層に用いた光透過断熱材の中空粒子の粒子径は、3μmである。実施例3では基材1として上質紙を使用し、実施例4では基材1としてPETフィルムを使用した。実施例3は、実施例1の可逆性感熱記録媒体の感熱可逆層に含まれる光熱変換材料を、光熱変換層6として独立させた構成であり、実施例4は、実施例2の可逆性感熱記録媒体の感熱可逆層に含まれる光熱変換材料を、光熱変換層6として独立させた構成である。
【0092】
実施例2の可逆性感熱記録媒体では、光熱変換材料が感熱可逆層中に含有されて電子供与呈色性化合物や電子受容性化合物の近傍にあるのに対し、実施例3,4では、光熱変換材料が光熱変換層中に含有されている。このため、実施例3,4は、実施例2より効果が小さいが、実施例3のライン幅形成速度は62mm/secとなり、実施例4のライン幅形成速度は57mm/secとなり、比較例1に比べ速くなり感度が向上している。
【0093】
実施例3、4の可逆性感熱記録媒体を使用することで、与えられた光エネルギーを効率良く熱に変換して感熱記録ができ、画像記録のスピードアップを図ることができる。
【0094】
実施例5は、図3の構成の可逆性感熱記録媒体であり、光透過断熱層4が透明基板11の上に形成されている。光透過断熱層に用いた光透過断熱材の中空粒子の粒子径は、0.3μmである。実施例1乃至実施例4や比較例1の可逆性感熱記録媒体は、保護層側からの片面照射であるが、この実施例は、保護層側と透明基板11の両面からレーザ光を照射できる。
【0095】
通常、断熱層を除けば両面照射は可能であるが、断熱層がない分、PET基材へ熱が拡散するので有効に使用できない。そこで、光透過型断熱層4を設けているが、その効果は比較例2と比較すれば分かる。すなわち、両面照射における100μmのライン幅形成速度が、比較例1では78mm/secであったのに対し、この実施例では94mm/secとなり、記録媒体としての感度が改善した。なお、比較例2における片面照射における100μmのライン幅形成速度は、40mm/secであった。
【0096】
実施例5の可逆性感熱記録媒体を使用することで、与えられた光エネルギーを効率良く熱に変換して感熱記録ができ、画像記録のスピードアップを図ることができる。
【0097】
実施例6は図4の構成の可逆性感熱記録媒体であり、実施例5の可逆性感熱記録媒体の感熱可逆層に含まれる光熱変換材料を光熱変換層として独立させたタイプである。実施例5では、光熱変換材料が感熱可逆層中に含有されるので、電子供与呈色性化合物や電子受容性化合物の近傍にあるのに対し、実施例6では、光熱変換材料が光熱変換層中に含有される。このため、実施例6は実施例5に比べて効果が小さいが、両面照射によるライン幅形成速度は90mm/secであり、比較例1の両面照射によるライン幅形成層度78mm/secに比べて速く、感度が向上したことがわかる。
【0098】
実施例6の可逆性感熱記録媒体を使用することで、与えられた光エネルギーを効率良く熱に変換して感熱記録ができ、画像記録のスピードアップを図ることができる。
【0099】
実施例7は、図5の構成の可逆性感熱記録媒体である。感熱可逆層23の下部及び上部に、光透過断熱層4,7が配置される。光透過断熱層に用いた光透過断熱材の中空粒子の粒子径は、0.3μmである。この実施例7では、両面照射によるライン幅形成速度は98mm/secとなり、実施例5と比べ、更に感度が向上していることがわかる。
【0100】
実施例7の可逆性感熱記録媒体を使用することで、与えられた光エネルギーを効率良く熱に変換して感熱記録ができ、画像記録のスピードアップを図ることができる。
【0101】
実施例8は、図6の構成の可逆性感熱記録媒体である。実施例7の感熱可逆層23を、光熱変換材を含有しない感熱可逆層13として、その上下を光熱変換層6,8でサンドイッチした形状である。光透過断熱層に用いた光透過断熱材の中空粒子の粒子径は、0.3μmである。両面照射によるこの実施例8のライン幅形成速度は102mm/secとなり、実施例7と比べ、更に感度が向上していることがわかる。
【0102】
実施例8の可逆性感熱記録媒体を使用することで、与えられた光エネルギーを効率良く熱に変換して感熱記録ができ、画像記録のスピードアップを図ることができる。
【0103】
実施例9は、図1の構成の可逆性感熱記録媒体であるが、光透過断熱層4に用いた光透過断熱材としての中空粒子の粒子径を変更した。すなわち、粒子径を0.5μmとしている。粒子径が0.3μmから0.5μmに大きくなった分、断熱効果が増し、実施例1よりも若干感度が向上できた。すなわち、片面照射による100μmのライン幅形成速度が65mm/secであった。
【0104】
実施例9の可逆性感熱記録媒体を使用することで、与えられた光エネルギーを効率良く熱に変換して感熱記録ができ、画像記録のスピードアップを図ることができる。
【0105】
比較例3や比較例4は、実施例2と同じ構成である。光透過断熱層4に用いた光透過断熱材としての中空粒子の粒子径を、照射するレーザの波長よりも大きい1.1μm、4μmとしたものである。これらサンプルでは、比較例1よりも逆に感度が低下している。これは、近赤外線レーザの波長よりも粒子径が大きい中空粒子を使用しているので、中空粒子を通過する光量が少なくなり、感度が低下したものと考えられる。
【0106】
なお、この実施例及び比較例で使用した光熱変換材の吸収波長は808nmであったが、使用する光学系のレーザ波長に合せて別の光熱変換材を使用できるのは勿論である。また、図7で示した画像形成光学系で両面からレーザ光を照射して同じ位置に光を集光させているため感度が略倍にできる。また、両面から照射するレーザ光を副走査方向のライン位置が異なる位置に照射し走査しても、1つの光学系で画像を記録する速度の2倍の速度で記録ができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る可逆性感熱記録媒体の構成を示す断面図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る可逆性感熱記録媒体の構成を示す断面図。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る可逆性感熱記録媒体の構成を示す断面図。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る可逆性感熱記録媒体の構成を示す断面図。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る可逆性感熱記録媒体の構成を示す断面図。
【図6】本発明の第6の実施の形態に係る可逆性感熱記録媒体の構成を示す断面図。
【図7】本発明の第7の実施の形態における可逆性感熱記録媒体への画像記録状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0108】
1…基材; 11…透明基材; 3,13,23…感熱可逆層
4,7…光透過断熱層; 6,8…光熱変換層
100,101,102,103,104,105…可逆性感熱記録媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定波長の光を吸収して熱エネルギーに変換する光熱変換材料と、電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を含有し、加熱温度及び加熱後の冷却温度の一方又は両方の違いにより発色状態と消色状態とに変化する感熱可逆層とを含有する感熱部、および
前記感熱部と接するように形成され、前記光熱変換材料が吸収する特定波長の光を透過し、前記光熱変換材料の発する熱を断熱する光透過断熱層
を具備することを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項2】
前記光熱変換材料は前記感熱可逆層に含有され、直接又は断熱層を介して、前記感熱性可逆層を支持する基材をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項3】
前記感熱部は、前記感熱可逆層と前記光透過断熱層との間に設けられた光熱変換層を有し、前記光熱変換材料はこの光熱変換層に含有され、直接又は断熱層を介して、前記感熱性可逆層を支持する基材をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項4】
前記光熱変換材料は前記感熱可逆層に含有され、前記光透過断熱層を支持する光透過性基材をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項5】
前記感熱可逆層上に設けられた第2の光透過断熱層をさらに具備し、前記第2の光透過断熱層は、前記光熱変換材料が吸収する特定波長の光を透過し、熱を断熱することを特徴とする請求項4に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項6】
前記光透過断熱層及び第2の光透過断熱層は、高分子系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項5に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項7】
前記感熱部は前記感熱可逆層と前記光透過断熱層との間に設けられた光熱変換層を有し、前記光熱変換材料はこの光熱変換層に含有され、前記光透過断熱層を支持する光透過性基材をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項8】
前記感熱可逆層上に設けられた第2の光透過断熱層をさらに具備し、前記第2の光透過断熱層は、前記光熱変換材料が吸収する特定波長の光を透過し、熱を断熱することを特徴とする請求項7に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項9】
前記光透過断熱層及び第2の光透過断熱層は、高分子系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項8に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項10】
前記感熱可逆層と前記第2の光透過断熱層との間に設けられた第2の光熱変換層をさらに具備し、前記第2の光熱変換層は特定波長の光を吸収して熱エネルギーに変換する光熱変換材料を含むことを特徴とする請求項8に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項11】
前記光透過断熱層及び第2の光透過断熱層は、高分子系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項10に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項12】
前記光透過断熱層は高分子系紫外線吸収剤を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項13】
請求項5に記載の可逆性感熱記録媒体に画像を記録する方法であって、前記記録媒体の両側から特定波長のレーザ光を照射し、前記光熱変換材料でこのレーザ光を吸収して熱エネルギーに変換し、この熱エネルギーで前記感熱可逆層を発色させて画像記録を行うことを特徴とする画像記録方法。
【請求項14】
請求項10に記載の可逆性感熱記録媒体に画像を記録する方法であって、前記記録媒体の両側から特定波長のレーザ光を照射し、前記各光熱変換層でこのレーザ光を吸収して熱エネルギーに変換し、この熱エネルギーで前記感熱可逆層を発色させて画像記録を行うことを特徴とする画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−37098(P2008−37098A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163375(P2007−163375)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】