説明

可逆性感熱記録媒体

【課題】画像情報や文字情報を必要なときに随時書き換えすることができ、かつそれらの情報のうち選択的に隠蔽しておきたい部分を確実に隠蔽できる可逆性感熱記録媒体とすることである。
【解決手段】温度変化に伴う発色性または透明性の変化により可視画像を表示および消去可能な可逆性感熱記録層2を有する可逆性感熱記録媒体において、この可逆性感熱記録媒体の表面に、感熱記録層2の表示を隠蔽可能であると共に簡易に剥ぎ取り可能なスクラッチ性隠蔽層4を設けた可逆性感熱記録媒体とする。可逆性感熱記録層2の裏面側に不可逆性記録層5または光反射層を設けておくことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、感熱発色性や透明性によって文字や画像等の情報の表示および消去を可逆的に行なえる可逆性感熱記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
文字や画像等の情報の表示または消去が可能な可逆性感熱記録媒体の記録部材料として、加熱温度や加熱後の冷却速度を調節することによって透明性が可逆的に変化する有機低分子化合物を樹脂母材中に分散させた可逆性感熱記録材料が知られている。
【0003】
可逆性感熱記録媒体の例としては、所定の有機低分子化合物を塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの適当な樹脂母材中に分散状態に配合し、多数のドットまたは区分された所定領域の透明または白濁状態を温度によって可逆的に変化させ、これをアルミニウム蒸着層などの光反射層に反射させてコントラストのよい画像を表示する可逆性感熱記録媒体が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、加熱温度や加熱後の冷却速度の調整によって、色調を可逆的に変化させる記録材料として、ラクトン環を有し、電子放出に伴うラクトン環の開環により発色性を示す物質である電子供与性呈色性化合物(いわゆるロイコ染料)を用いた可逆性感熱記録材料もある。
【0005】
そして、上述のように発色性や透明性を可逆的に変化させえる可逆性感熱記録材料からなる可視画像エリアを設けたカードやラベルなどが実用化され、その画像表示・消去手段として、ドット単位で加熱制御が可能なサーマルヘッドを用い、または消去手段としてはサーマルヘッドや加熱スタンプ、ヒーターバーなどのエリア全面を消去できる手段が適用されている。
【0006】
ところで、宝くじや店舗などが配布するゲームカードとして、銀インクなどの隠蔽性の強い顔料を含有する塗料からなる比較的軟質の隠蔽層を設け、この隠蔽層はコインなどで削り取って簡易に除去可能であるいわゆるスクラッチカードが知られている。
【0007】
このようなスクラッチカードは、隠蔽層によって隠された情報を使用者の意思で簡単に削り取って見ることはできるが、印刷された情報の変更や除去したスクラッチ性隠蔽層の再形成は、カードの製造工程を要し、製造設備のない場所では容易に再生できない。
【0008】
一方、従来技術として、スクラッチカードの代りに可逆型の感熱発色層を用いた情報カードが知られている(特許文献2参照)。
また、スクラッチ性隠蔽層に代えて、透明性を加熱条件や加圧条件によって可逆的に変更可能な材料を用い、画像の隠蔽と露出を速やかに変化させられる隠蔽層を設け、この隠蔽層の下に設けた印刷文字や画像を適宜に隠蔽し、または表示できる記録媒体も知られている(特許文献3参照)。
【0009】
しかし、上記した隠蔽層は、記録情報の変更を容易にするものではなく、また隠蔽性が確実に発揮されない場合もあった。
【0010】
【特許文献1】特開昭63−41186号公報
【特許文献2】特開2003−67702号公報
【特許文献3】特開2001−113860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように可逆性感熱記録媒体の要所を確実にスクラッチ性のある隠蔽層で被覆するこは容易でなく、しかも画像や文字を一旦印刷すると、その後に容易に書き換えできないという問題点があり、このことがスクラッチカードの用途を狭める要因にもなっている。
【0012】
たとえば、遊園地やイベント会場でなどで男女別や年齢別などのグループ毎に適当な記載事項(例えば景品の種類など)のスクラッチカードを来客に手渡す場合には、これまで予め多種類のスクラッチカードを準備しておき、対象者のグループ毎に外見上は同じカードを間違えないように手渡さねばならず、煩雑であった。特に特定種類のスクラッチカードが不足した場合に、即時にカードを補充することはできなかった。
【0013】
このように、従来のスクラッチカードでは、隠蔽層の裏面側に予め印刷された画像を簡便に変更することができないため、スクラッチカードの配布対象者毎に予め印刷された内容のみで対応することしかできないという問題点があった。
【0014】
また、作成したスクラッチカードは、例えば、遊園地などで客が好みに応じて利用したとしても複数のアトラクションの数と順番に対応させえず、複数回の使用が可能なスクラッチくじとしての使用はできなかった。
【0015】
そこで、この発明の課題は、上記したように隠蔽の必要性のある情報を即時に伝達することと、秘密にしておくこととの両立ができないという問題点、および配布対象者毎に異なる情報を記入できる記録媒体にすることができないという問題点を解決し、画像情報や文字情報を必要なときに随時書き換えすることができ、かつそれらの情報のうち選択的に隠蔽しておきたい部分を確実に隠蔽することが可能な可逆性感熱記録媒体とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、この発明では、温度変化に伴う発色性または透明性の変化により可視画像を表示および消去可能な可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体において、この可逆性感熱記録媒体の表面に、前記感熱記録層の表示を隠蔽し、かつ簡易に削り取り可能なスクラッチ性隠蔽層を設けたことを特徴とする可逆性感熱記録媒体としたのである。上記の可逆性感熱記録媒体において、前記可逆性感熱記録層の裏面側に不可逆性記録層を設けておくことが好ましい。
【0017】
上記したように構成されるこの発明の可逆性感熱記録媒体は、表面にスクラッチ性隠蔽層を設けたので、表面の一部または全部の所定区域を隠蔽層で覆っておき、その状態で情報を人目に曝されないように随時に記録することができる。感熱記録は、可逆性感熱記録媒体の表面側からでも裏面側からでも行なうことができる。
【0018】
表面にスクラッチ性隠蔽層を有する可逆性感熱記録媒体は、これを特定対象者に配布する場合に対象者毎に印刷内容を変える必要があっても、手渡す直前に可逆性感熱記録層に印刷すればよく、即時に対象者に適当な情報を記録した可逆性感熱記録媒体を手渡すことができる。
【0019】
また、隠蔽層が、その裏面側に保護層を介在して可逆性感熱記録媒体の表面に積層形成されている可逆性感熱記録媒体とすれば、コインなどの硬質板状片で隠蔽層を削り剥がす際に可逆性感熱記録層を傷つけない。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、可逆性感熱記録媒体の表面にスクラッチ性隠蔽層を設けたので、画像情報や文字情報を必要に応じて適宜に書き換えることが可能になり、かつ記録される情報のうち隠蔽しておきたい部分を予めスクラッチ性隠蔽層で被覆された部分に印刷することにより、確実に隠蔽できる可逆性感熱記録媒体となる利点がある。
【0021】
また、隠蔽の必要性がある情報を適宜に印刷して伝達できるから、引き渡される対象者毎に異なる情報を可逆性感熱記録媒体の引渡しの現場においても簡便に記入できる記録媒体になる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明における可逆性感熱記録媒体の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示す実施形態は、積層体からなるスクラッチカードであり、支持体1の上に可逆性感熱記録材料からなる可逆性感熱記録層2を有し、その上に保護層3を介して表面に簡易に剥ぎ取り可能なスクラッチ性隠蔽層4を設けたものである。
【0023】
この発明における可逆性感熱記録層2は、いわゆるリライト層として周知の可逆性感熱記録材料からなるものを採用でき、例えば透明白濁タイプのものやロイコ系色素を含有するもののいずれでも採用することもできる。
【0024】
このような可逆性感熱記録媒体の層構成としては、例えば可逆性感熱記録層2と支持体1の間にインクで印刷された印刷による不可逆性記録層5を設けてもよく、可逆性感熱記録層2と保護層3との間に不可逆性記録層5があってもよく、また不可逆性記録層5を支持体1の裏面に設けることもでき、または保護層3の上に設けても良い。
【0025】
なお、支持体1の裏面に磁気記録層を設けたり、支持体1にICチップを埋め込んで設けたりすることもできる。
【0026】
この発明の可逆性感熱記録媒体は、可逆性感熱記録層がリライタブルであるから、隠蔽層を除去した後、再生する工程を繰り返して、同じカードを再使用することもできる。
【0027】
以下に、この発明の可逆性感熱記録媒体の各層を構成する材料について説明する。
[スクラッチ性隠蔽層]
この発明に用いるスクラッチ性隠蔽層は、テープや粘着ロールなどで剥離可能としたり、コインや爪でこすって簡単に剥がすことができるように柔らかく形成されており、かつ画像を完全に隠蔽することができる周知の塗装材料からなる。具体的には、隠蔽層と接する下層と接着性の弱い樹脂材料を採用し、その中に遮光性の顔料または染料などを混合し、分散させて混合したものを使用することができる。
【0028】
隠蔽層の基材となる樹脂材料としては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどのゴム系樹脂やアクリル、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン系重合体、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、各種ワックス、ロジン、テルペン系樹脂、テルペン系重合体などの樹脂が用いられる。
【0029】
また隠蔽用の分散(光散乱性のある)材料としては、アルミニウム粉末、真鍮粉末、銅粉末などの金属粉末の他に酸化チタン、酸化鉄など金属酸化物の無機顔料またはアゾ染料、フタロシアニン染料などの有機染料などを使用することができる。
【0030】
これら分散材料または基材は、単独成分を用いても良いが、2種類以上を任意の配合比で混合して用いることもできる。また、表面性やカード層構成のため、滑剤や離型剤その他に必要な添加剤を適宜に添加しても良い。
【0031】
スクラッチ性隠蔽層は、調製された塗液に応じて、塗工方法を選択的に採用できる。たとえば、スクリーン印刷、オフセット印刷などの周知の印刷方式や、グラビアコーター、バーコーターなどのコーティング方式や、ダイコート、熱ラミネートなどの手法を採用することができる。
【0032】
スクラッチ性隠蔽層の厚みは、5〜50μm程度が好ましく、5μm未満では厚みが薄過ぎて隠蔽性が弱くなり、逆に50μmを超えて厚すぎると、可逆性感熱記録材料への記録が確実に行なえない場合がある。
【0033】
[保護層]
保護層は、可逆性感熱記録材料の保護およびスクラッチ層を剥離しやすくする目的で設けられる。この保護増は、コインや爪で擦っても剥がれない程度の硬さであることが必要であり、また可逆性感熱記録材料との密着性を良くし、しかもスクラッチ層とは低密着性の材料を選択することが好ましい。そのような材料として具体的なものは、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂などである。
【0034】
また、保護層は、離型処理された耐熱性フィルムを適用することができ、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレートなどをラミネートしてもよい。
【0035】
保護層の厚みは、これを樹脂材料の種類等に応じて適宜設計することが好ましいが、一般的には、0.5〜20μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは2〜10μmの範囲内である。保護層の厚みが0.5μmより薄いと充分な保護効果が得られない場合があり、20μmより厚いと可逆性記録層のコントラストが低下することがある。
【0036】
[可逆性感熱記録層]
可逆性感熱記録層は、透明性または発色性を温度によって可逆的に変化させることにより可視画像を表示および消去可能な材料からなり、この材料は、樹脂母材と記録材料とからなる。
【0037】
記録層に用いる樹脂母材の種類としては、透明で製膜性の良い合成樹脂が好ましく、例えばポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、その他の酢酸ビニル化合物、塩化ビニル系共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂などの透明なアモルファス樹脂などが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。さらに架橋性樹脂を用いることもできる。
【0038】
透明性が変化するタイプの記録材料としては、有機低分子化合物を高分子樹脂母材内に0.1〜2.0μm程度の直径の集合体となって分散させたものが好ましく用いることができる。このタイプ記録層では、高分子樹脂母材中に分散した有機低分子化合物が、結晶化と溶融の間で体積変化を起こし、それに伴って高分子樹脂母材との間でボイドが生成され、これにより光散乱が生じるという作用を利用している。
【0039】
有機低分子化合物の具体例としては、炭素数12以上の高級脂肪酸、高級脂肪酸エステルなど周知の有機低分子化合物の他、カルボン酸、ジカルボン酸、ケトン、エーテル、アルコール、エステル、スルフィド、脂肪酸アミド、脂肪族二塩基酸、脂肪族二塩基酸エステルおよびその誘導体などからなる結晶性低分子化合物でもよく、これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いることもできる。
【0040】
この発明においては、樹脂母材に分散させる有機低分子化合物のうち、炭素数12以上の脂肪酸アルキルエステルは、低融点(mp)のものであり、比較的低温での熱処理によって融解し、結晶化するので好ましいものである。さらに炭素数12以上の脂肪酸アルキルエステルに加えて炭素数10以上の脂肪族二塩基酸の高融点(mp)のものを併用し、脂肪酸アルキルエステルと脂肪族二塩基酸の配合割合を調整すれば、透明化する温度領域を調整でき、所定温度での透明性および白濁の程度を変化させることができる。
【0041】
また、炭素数12以上の脂肪酸アルキルエステルの例としては、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ベヘニル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸ブチル、ベヘン酸オクチル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、リグノセリン酸メチル、リグノセリン酸エチルなどが挙げられる。
【0042】
また炭素数10以上の脂肪族二塩基酸の例としては、セバシン酸、ドデカン2酸、テトラデカン2酸、エイコサン2酸などが挙げられる。
【0043】
炭素数10以上の脂肪族二塩基酸としては、例えばセバシン酸、ドデカン2酸、テトラデカン2酸、エイコサン2酸等が挙げられる。炭素数12以上の脂肪酸アルキルエステルおよび炭素数10以上の脂肪族二塩基酸は、単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0044】
発色性、すなわち色調が変化するタイプの記録材料の例としては、電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を高分子樹脂母材に溶解もしくは分散させたものが挙げられる。熱の作用によって酸の性質を示したり、塩基の性質を示す電子受容性化合物が、可逆的構造を有する電子供与性呈色化合物に対して、顕色剤となったり、減色剤となったりすることを利用したものである。
【0045】
例えば、電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物の溶融温度異常の温度まで加熱した後、急冷すると発色し、溶融温度以下の温度で加熱した後、徐々に冷却すると消色する。また、顕色剤として長鎖アルキル基を持つ電子受容性化合物を用いた場合は、長鎖アルキル基構造のため顕色剤自体が凝集力を持つ。このため、加熱条件や加熱後の冷却速度により、ロイコ染料に接触したり分離したりすることができ、顕色剤とロイコ染料が接触することで発色し、分離することで消色するのである。
【0046】
なお、構造の異なる電子受容性化合物に変更することによって、発色コントラストや消去スピード、印字保存性などの性能を向上させることができる。
そして、このような色調が変化するタイプの記録材料を用いる場合にも、高分子樹脂簿材として、透明白濁タイプの記録材料に使用した高分子樹脂母材と同様のものを使用することができる。
【0047】
分子構造内にラクトン環を持ち、電子放出によるラクトン環の開環という構造変化により発色性を示す電子供与性呈色性化合物(いわゆるロイコ染料)の具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(1−エチル2−メチルインドール−3−イル)フタリド等のフタリド化合物、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6(N−エチルイソペンチルアミノ)フルオラン、3−シクロヘキシルメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ベンジルエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−メチルプロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオランなどのフルオラン化合物等が挙げられる。
【0048】
電子受容性化合物としては、例えば炭素数6以上の脂肪族基を有する有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物またはフェノール性化合物(炭素数12以上の脂肪族基を有するフェノール性化合物が好ましい。)が挙げられる。
【0049】
電子受容性化合物の具体例としては、例えばドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エイコシルホスホン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシテトラデカン酸、α−ヒドロキシヘキサデカン酸、α−ヒドロキシペンタデカン酸、α−ヒドロキシエイコサン酸、α−ヒドロキシドコサン酸、α−ヒドロキシテトラコサン酸、α−ヒドロキシヘキサコサン酸、α−ヒドロキシオクタコサン酸などが挙げられる。
【0050】
また、フェノール性化合物としては、例えば4´−ヒドロキシ−4−オクタデシルベンズアニリド、N−オクタデシル−4−ヒドロキシベンズアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N´−オクタデシル尿素、4−ヒドロキシフェニルプロピオノ−ベヘニルヒドラジドなどが挙げられる。
【0051】
電子供与性呈色化合物、電子受容性化合物および高分子樹脂母材の配合割合は、例えばロイコ染料10質量部に対し、電子受容性化合物を好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは20〜50質量部であり、ロイコ染料10質量部に対し、高分子樹脂母材は、好ましくは10〜200質量部、さらに好ましくは20〜100質量部である。
【0052】
可逆性記録層は、高分子樹脂母材中に有機低分子化合物を分散させたのち、支持体などの上に塗布することにより、または高分子樹脂母材中に電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物を溶解または分散させた後、支持体などの上に塗布することにより形成される。
【0053】
可逆性感熱記録層の厚さは、3μm〜30μmであることが好ましいが、特にこの範囲に限定されるものではない。
【0054】
透明白濁タイプの場合には、可視画像のコントラストを高くして鮮明さを向上させるために、光反射層をさらに設けることが好ましい。
【0055】
この第2の実施形態は、可逆性記録層2の下に不可逆性記録層5(図1参照。)に代えて光学的反射面として機能する光反射層を設け、その他は前記した第1実施形態と同様の層構成としたものである。
【0056】
光反射層は、例えばアルミニウム、スズなどの金属蒸着または蒸着箔の接着またはアルミニウム粉、白色系顔料等を混合した光反射性着色塗料を支持体に塗布することにより形成しても良い。
【0057】
因みに、金属を蒸着する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着法などの周知な手法を採用することができる。
【0058】
図示した実施形態においては、可逆性記録層2が色調変化タイプによって形成されている場合には、光反射層の代りに不可逆性記録層5または着色層を配置することが好ましい。着色層は、例えば顔料、染料などを混合した着色塗料など塗布することによって形成することができる。着色層の色調は、可逆性記録層が発色したときにコントラスト良く視認できる色を採用すればよい。
【0059】
以上のようにして製造される可逆性感熱記録媒体は、通常の感熱記録方法として、ドット単位で加熱制御が可能なサーマルヘッドを用い、または消去手段としてはサーマルヘッドや加熱スタンプ、ヒーターバーなどのエリア全面を消去できる手段を適用することができる。ただし、スクラッチ隠蔽層の種類によっては、表面から記録することができない場合があり、その場合は裏面から記録することも可能である。
【0060】
このようにして製造される可逆性感熱記録媒体は、配布対象者毎に印刷された内容を変えたいときなどに即時に対応でき、新規な用途としては、例えば情報として公にしても問題のない情報をカード表面に表示しておくと共に、個人情報など秘密性の要求される情報を隠蔽層でカード外部から透けて見えないようにして、本人に手渡すまで確実に隠蔽しておくことのできるものであり、各種通知書や証明書または荷札などに利用できるものである。
【実施例1】
【0061】
支持体として、厚み250μmの白色ポリエチレンテレフタレート(三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「ダイアホイルW400」)を用い、支持体上に可逆性記録層を形成した。
【0062】
すなわち、色素前駆体としてクリスタルバイオレットラクトン10質量部と、電子受容性化合物としてヒドロキシフェニルプロピオノ−ベヘニルヒドラジド20質量部と、高分子樹脂母材として三菱レイヨン社製:商品名「LR−1503」50質量部と、溶剤としてトルエン150質量部とを混合し、ペイントシェーカーを用いて2時間分散させて可逆性記録層用分散液を調製した。
【0063】
この可逆性記録層用分散液に、硬化剤としてイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製:商品名「コロネートL」、固形分75質量%)を5質量部添加して、充分に攪拌し、可逆性記録層用塗布液を作製した。
【0064】
得られた可逆性記録層用塗布液を、支持体の白色PET(商品名「ダイアホイルW400」)上に塗布し、100℃で5分間乾燥させて、乾燥後の厚みが7μmである可逆性記録層を形成した。
【0065】
この可逆性記録層の上に、紫外線硬化性樹脂を乾燥後の厚みが2μmとなるように塗布し、120W/cm×10m/分の条件で紫外線を照射して硬化させ、保護層を形成した。
【0066】
次いで、60℃で16時間熱処理を施した後、保護層上にスクラッチ隠蔽層を形成した。
すなわち、アルミニウム粉末と紫外線硬化樹脂からなるインクをスクリーン印刷して厚み5μmのスクラッチ隠蔽層とした。
【0067】
以上のように作成した可逆性感熱記録媒体をカード状に打ち抜いて、実施例1のスクラッチカードを複数枚作製し、得られた複数枚のスクラッチカードを以下のテストに供した。
【0068】
すなわち、○型と×型の凸部をもつホットスタンプを用意し、このホットスタンプを150℃に設定し、それぞれカード裏面から押しあて、次に、カードを充分さました後、スクラッチ層から確認した。
【0069】
その結果、特に印字のあとは見えず、2枚のカードはその他に何ら外見上の違いはなかった。また、スクラッチ隠蔽層をコインで擦って剥離したところ、片方には○の印字が確認でき、また別のカードをコインで擦ると×が確認できた。
【実施例2】
【0070】
スクラッチ隠蔽層に、真鍮粉末と合成ゴムを用いて、カードを作成したこと以外は、実施例1と全く同様にしてスクラッチカードを作成した。
【0071】
スタンプで印字したのち、スクラッチ隠蔽層を粘着テープで剥がしたところ、○型の印字が確認できた。再度、同種材料でスクラッチ隠蔽層を設けて、同じカードに×スタンプで印字した。粘着テープで剥がしたら、×の印字が確認できた。このようにして、同一のスクラッチカードで別のくじの結果を簡単に提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1実施形態の断面図
【符号の説明】
【0073】
1 支持体
2 可逆性感熱記録層
3 保護層
4 スクラッチ性隠蔽層
5 不可逆性記録層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化に伴う発色性または透明性の変化により可視画像を表示および消去可能な可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体において、
この可逆性感熱記録媒体の表面に、前記感熱記録層の表示を隠蔽し、かつ簡易に削り取り可能なスクラッチ性隠蔽層を設けたことを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体において、可逆性の感熱記録層の裏面側に不可逆性記録層を設けたことを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項3】
隠蔽層が、可逆性の感熱記録層に保護層を介して重ねて形成されている請求項1または2に記載の可逆性感熱記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−68993(P2006−68993A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254072(P2004−254072)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】