説明

可逆性画像表示媒体

【課題】画像表示、画像消去を繰り返し行うことができ、コントラストに優れ、高解像度で高品質な画像を長期にわたり安定的に表示でき、残像が発生しにくく、良好な可逆性を示し、駆動電圧が低く済む可逆性画像表示媒体を提供する。
【解決手段】画像表示媒体12は少なくとも一方が光透過性を有する2枚のシート121、122と、その2枚のシートの間に形成され、周囲を仕切り壁で囲まれた1又は2以上の現像剤収容セル124と、各セルに内包された乾式現像剤とを有し、現像剤は、互いに帯電極性の異なる、且つ、互いに光学的反射濃度の異なる少なくとも2種類の、摩擦帯電性を有する乾式現像粒子WP、BPを含んでおり、2枚のシートのうち一方のシートの外表面の表面抵抗率は1010Ω/□〜1016Ω/□である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示媒体及び画像表示方法に関する。特に画像表示、画像消去を繰り返し行うことができる可逆性画像表示媒体及び可逆性画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日における画像表示は、鉛筆、ペン、絵の具等を用いて紙等の画像表示媒体上に人手により文字、図形等を書き込んだり、コンピュータ、ワードプロセッサ等により作成した文書、図形等をCRTディスプレイ等のディスプレイで表示したり、プリンタで紙等の媒体に出力表示する等によりなされている。
【0003】
また、人手により作成された紙等の媒体上の文書、図形等や、プリンタ出力された紙等の媒体上の文書、図形等を複写機等を用いて別の紙等の媒体上に複写作成したり、ファクシミリ機等で送信して送信先において紙等の媒体上に複写出力することも行われている。
【0004】
これらの画像表示のうち、鉛筆、ペン等を用いて紙等の画像表示媒体に文字、図形等を表示する画像表示や、電子写真方式、インク吹き付け方式、熱転写方式等によるプリンタ、複写機、ファクシミリ機等の画像形成装置によって紙等の画像表示媒体に文字、図形等を表示する画像表示では、高解像度で鮮明に画像表示でき、画像を見るにあたってその画像は人目に優しい。
【0005】
なお、画像表示、画像消去を繰り返すことができる画像表示手法として、電気泳動型表示が提案されている(例えば、特開平4−212990号公報参照)。この表示手法は、少なくとも一方が透明な2枚の基板をスペーサを介して間隔を開けて対向配置することで密封空間を形成し、その中に電気泳動能のある粒子をそれとは色の異なる分散媒中に分散させた表示液を充填したもので、静電場を付与して表示液中の粒子を泳動させることで、粒子の色若しくは分散媒の色で画像表示を行うものである。
かかる表示液は通常イソパラフィン系などの分散媒、二酸化チタンなどの粒子、この粒子と色のコントラストを付けるための染料、界面活性剤などの分散剤及び荷電付与剤等の添加剤から構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−212990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、紙等の画像表示媒体に対して画像表示、画像消去を繰り返すことはできない。鉛筆を用いて文字等を書き込む場合においては、該文字等を消しゴムである程度消すことができるが、該文字等が薄くかかれた場合はともかく、通常の濃さで書かれた場合には完全に消し去ることは困難であり、一旦画像表示された紙等の媒体については、未だ画像表示されていない媒体裏面にも画像表示する場合を除けば、それを再使用することは困難である。
【0008】
そのため、画像表示された紙等の媒体は用済みとなったあとは廃棄されたり、焼却されたりし、多くの資源が消費されていく。プリンタ、複写機等においてはトナーやインクと言った消耗品も消費される。また、新しい紙等の表示媒体、トナー、インク等を得るためにさらに媒体等の資源、媒体等の製作エネルギーが必要となる。このことは今日求められている環境負荷の低減に反する結果となっている。
【0009】
この点、CRTディスプレイ等のディスプレイによる画像表示では、画像表示、画像消去を繰り返すことができる。しかし、ディスプレイに表示される画像は、紙等にプリンタ等によって表示された画像と比べると、解像度が低く、鮮明、精細な画像を得るには限界がある。また、比較的解像度が低いことや、ディスプレイからの発光により長時間の目視作業では眼が非常に疲れやすい。
【0010】
前記電気泳動型表示では、二酸化チタンなどの高屈折率粒子と絶縁性着色液体とのコントラスト表示のため、どうしても該粒子による着色液体の隠蔽度(着色液体を粒子で隠してしまえる度合い)が悪く、そのためコントラストが低くなってしまう。また、該粒子と表示液中の分散媒との比重差が非常に大きく、粒子の沈降、凝集が発生し易いため、表示のコントラストの低下が起こり易く、長期間安定な画像表示が困難であるうえ、前回の表示残像が発生しやすい。さらに、粒子の液中での帯電は経時変化が大きく、この点でも画像表示安定性が劣る。
【0011】
そこで本発明は、次の利点を有する可逆性画像表示媒体及び可逆的画像表示方法を提供することを課題とする。
(1)画像表示、画像消去を繰り返し行うことができ、よって従来の画像表示に関係する紙等の画像表示媒体、現像剤、インク等の消耗品の使用を低減することができ、それだけ今日の環境負荷低減に応えることができる。
(2)コントラストに優れ、高解像度で高品質な画像を長期にわたり安定的に表示できる。
(3)残像が発生しにくく、従って良好な可逆性を示し、この点でも高品質な画像を表示できる。
(4)駆動電圧が低く済む。
【0012】
また本発明は、画像ムラ少なく画像表示できる可逆性画像表示媒体及び可逆性画像表示方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は次の可逆性画像表示媒体及び可逆性画像表示方法を提供する。
(1)第1の可逆性画像表示媒体及び第1の可逆性画像表示方法。
(1-1) 第1の可逆性画像表示媒体
所定のギャップをおいて対向する、少なくとも一方が光透過性を有する2枚のシートと、
前記2枚のシートの間に形成され、周囲を仕切り壁で囲まれた1又は2以上の現像剤収容セルと、
前記各セルに内包された乾式現像剤と、
を有しており、
前記乾式現像剤は、互いに帯電極性の異なる、且つ、互いに光学的反射濃度の異なる少なくとも2種類の、摩擦帯電性を有する乾式現像粒子を含んでいる、
可逆性画像表示媒体。
(1-2) 第1の可逆性画像表示方法
かかる第1の可逆性画像表示媒体であって、前記現像剤収容セル内の前記乾式現像剤を構成している少なくとも2種類の前記乾式現像粒子が互いに異なる帯電極性に摩擦帯電している可逆性画像表示媒体を準備する工程と、
前記各セルに内包された現像粒子が摩擦帯電している状態で該現像粒子に対し表示しようとする画像に対応させて画素ごとに所定の静電場を形成することで該現像粒子を移動させて画像表示する工程と、
を含む可逆性画像表示方法。
(2)第2の可逆性画像表示媒体及び第2の可逆性画像表示方法
(2-1) 第2の可逆性画像表示媒体
所定のギャップをおいて対向する、少なくとも一方が光透過性を有する2枚のシートと、
前記2枚のシートの間に形成され、周囲を仕切り壁で囲まれた1又は2以上の現像剤収容セルと、
前記各セルに内包された乾式現像剤と、
光透過性を有する一方の前記シートの内面に形成された電極(好ましくは透明電極)と、
他方の前記シートの内面に形成された前記電極に対向する電極と、
を有しており、
前記乾式現像剤は、互いに帯電極性の異なる、且つ、互いに光学的反射濃度の異なる少なくとも2種類の、摩擦帯電性を有する乾式現像粒子を含んでいる、
ことを特徴とする可逆性画像表示媒体。
【0014】
前記他方のシート内面の電極は画素ごとに形成された個別電極群からなっていてもよい。
(2-2) 第2の可逆性画像表示方法
かかる第2の可逆性画像表示媒体であって、前記現像剤収容セル内の前記乾式現像剤を構成している少なくとも2種類の前記乾式現像粒子が互いに異なる帯電極性に摩擦帯電している可逆性画像表示媒体を準備する工程と、
前記各セルに内包された現像粒子が摩擦帯電している状態で前記両電極間に電圧を印加して該両電極間に表示しようとする画像に対応させて画素ごとに所定の静電場を形成することで該現像粒子を移動させて画像表示する工程と、
を含む可逆性画像表示方法。
【0015】
この可逆性画像表示方法で用いる可逆性画像表示媒体についても他方のシート内面の電極は画素ごとに形成された個別電極群からなっていてもよい。
(3)第3〜第5の可逆性画像表示媒体及び第3の可逆性画像表示方法
(3-1) 第3の可逆性画像表示媒体
所定のギャップをおいて対向する、少なくとも一方が光透過性を有する2枚のシートと、
前記2枚のシートの間に形成され、周囲を仕切り壁で囲まれた1又は2以上の現像剤収容セルと、
前記各セルに内包された乾式現像剤と、
を有しており、
前記乾式現像剤は、互いに帯電極性の異なる、且つ、互いに光学的反射濃度の異なる少なくとも2種類の、摩擦帯電性を有する乾式現像粒子を含んでおり、
前記各シートの厚みが5μm〜100μmであり、
前記両シート間のギャップが20μm〜300μmであり、
全体の厚みが30μm〜500μmである、
可逆性画像表示媒体。
(3-2) 第4の可逆性画像表示媒体
所定のギャップをおいて対向する、少なくとも一方が光透過性を有する2枚のシートと、
前記2枚のシートの間に形成され、周囲を仕切り壁で囲まれた1又は2以上の現像剤収容セルと、
前記各セルに内包された乾式現像剤と、
を有しており、
前記乾式現像剤は、互いに帯電極性の異なる、且つ、互いに光学的反射濃度の異なる少なくとも2種類の、摩擦帯電性を有する乾式現像粒子を含んでおり、
前記2枚のシートのうち少なくとも一方のシートの外表面の表面抵抗率は1010Ω/□〜1016Ω/□である、
可逆性画像表示媒体。
(3-3) 第5の可逆性画像表示媒体
所定のギャップをおいて対向する、少なくとも一方が光透過性を有する2枚のシートと、
前記2枚のシートの間に形成され、周囲を仕切り壁で囲まれた1又は2以上の現像剤収容セルと、
前記各セルに内包された乾式現像剤と、
を有しており、
前記乾式現像剤は、互いに帯電極性の異なる、且つ、互いに光学的反射濃度の異なる少なくとも2種類の、摩擦帯電性を有する乾式現像粒子を含んでおり、
前記2枚のシートのうち少なくとも一方のシートの外表面の表面抵抗率は107 Ω/□以下である、
可逆性画像表示媒体。
(3-4) 第3の可逆性画像表示方法
かかる第3〜5のいずれかの可逆性画像表示媒体であって、前記現像剤収容セル内の前記乾式現像剤を構成している少なくとも2種類の前記乾式現像粒子が互いに異なる帯電極性に摩擦帯電している可逆性画像表示媒体を準備する工程と、 前記各セルに内包された現像粒子が摩擦帯電している状態で該現像粒子に対し表示しようとする画像に対応させて画素ごとに所定の静電場を形成することで該現像粒子を移動させて画像表示する工程と
を含む可逆性画像表示方法。
【0016】
本発明に係るいずれの可逆性画像表示媒体及びこれを利用した可逆性画像表示方法においても、画像表示媒体における各セルに内包された現像粒子が摩擦帯電している状態で該現像粒子に対し表示しようとする画像に対応させて画素ごとに所定の静電場を形成することで(前記電極を有する第2の可逆性画像表示媒体及びこれを用いる第2の可逆性画像表示方法では前記両電極間に電圧を印加して該両電極間に表示しようとする画像に対応させて画素ごとに所定の静電場を形成することで)、クーロン力にて該現像粒子を移動させて現像を行い、画像を表示することができる。
【0017】
本発明に係るいずれの可逆性画像表示媒体及びこれを利用した可逆性画像表示方法においても、一旦画像表示したあとでも異なる静電場を形成したり、後述するように交番電場等を形成するなどして画像を消去したり、異なる静電場を形成して画像を書き換えることもできる。従って一旦画像表示された画像表示媒体を廃棄する必要はない。また、現像粒子は前記セルに内包されており、従って外部からの現像剤の供給を要しない。これらにより従来における画像表示にまつわる紙等の画像表示媒体、現像剤等の消耗品の使用を大幅に低減することができる。
【0018】
また、従来の電子写真方式の画像形成のようにトナーを紙等のシートに熱で溶かして定着するようなことが不要であり、従来のこの種の画像形成装置で必要とされる作像エネルギーの大半を節約できる。
【0019】
かくして今日の環境負荷低減に応えることができる。
【0020】
また、本発明に係るいずれの可逆性画像表示媒体及びこれを利用した可逆性画像表示方法においても、前記セルに内包される現像剤は、光学的反射濃度の異なる(別の言い方をすれば、「コントラストの異なる」或いは「色の異なる」)少なくとも2種類の現像粒子を含んでおり、しかもその現像粒子は乾式の現像粒子であって一方の種類の現像粒子による他方の種類の現像粒子の隠蔽度が良好であるから、コントラスト良好に画像表示できる。
【0021】
前記セルに内包される現像剤は互いに帯電極性の異なる少なくとも2種類の相互摩擦帯電可能の帯電性乾式現像粒子を含んでおり、画像表示にあたっては摩擦帯電により互いに逆極性に帯電した現像粒子がクーロン力をうけて移動するため、この点でもコントラスト良好に画像表示でき、また前回表示の残像が発生し難い。
【0022】
乾式現像粒子は、例えば既述の電気泳動型画像表示に用いる表示液における導電性トナーと比べると、液体を介在させないため沈降、凝集が発生し難く、この点でも画像表示のコントラストの低下が起こり難く、またそれだけ長期にわたり安定した画像表示を行える。現像粒子の沈降、凝集が発生し難いから、前回表示の残像も生じ難い。さらに乾式現像粒子は液中のトナーと比べると、帯電性能の経時変化が少ないからこの点でも長期にわたり安定した画像表示を行える。
【0023】
また、従来のCRTディスプレイ等による画像表示と比べると、高解像度で眼にやさしく画像表示できる。
【0024】
また本発明に係る可逆性画像表示媒体及びこれを利用した可逆性画像表示方法によると、各セルに内包された少なくとも2種類の現像粒子が摩擦帯電により互いに逆極性に帯電している状態で該現像粒子に対し静電場を形成して画像表示を行うので(前記電極を有する第2の可逆性画像表示媒体及びこれを用いる第2の可逆性画像表示方法では前記両電極間に電圧を印加して画像表示を行うので)、該粒子が移動しやすく、従ってそれだけ画像表示のための駆動電圧は低く済む。
【0025】
本発明に係る前記第3の可逆性画像表示媒体、すなわち、前記各シートの厚みが5μm〜100μm、前記両シート間のギャップが20μm〜300μm、全体の厚みが30μm〜500μmである可逆性画像表示媒体及びこれを利用した可逆性画像表示方法によると次の利点がある。
【0026】
すなわち、シート間のギャップや、各シートの厚みが大きすぎると、シート間の現像剤にかかる電場が弱くなって現像性が悪くなり、コントラストの低下、解像度の低下を招く。また、シート間のギャップが小さすぎると、現像剤収容セル内に内包できる現像剤量が少なくなり、必要なコントラストが得られ難くなる。また、各基板の厚み、ひいては各基板の厚みに基づく媒体全体の厚みが小さすぎると、媒体が撓みやすくなり、シート間ギャップの均一性が得られなくなり、画像ムラが発生し易くなる。
【0027】
この点、各シートの厚みを5μm〜100μm、両シート間のギャップを20μm〜300μm、全体の厚みを30μm〜500μmに設定したことで、かかる問題が解消され、それだけコントラスト良好に、高解像度で、画像ムラ少なく画像表示できる。
【0028】
なお、本発明に係る、このようにシートの厚み等を規定した可逆性画像表示媒体及びこれを利用した可逆性画像表示方法においては、可逆性画像表示媒体における光透過性を有する一方の前記シートの内面に電極(好ましくは透明電極)を形成するとともに他方のシートの内面に該電極に対向する電極を形成してもよい。この場合には、該両電極間に電圧を印加して該両電極間に表示しようとする画像に対応させて画素ごとに所定の静電場を形成することで、クーロン力にて現像粒子を移動させて現像を行い、画像を表示することができる。画像を消去したり、書き換えたりすることもできる。他方のシート内面の電極は画素ごとに形成された個別電極群からなっていてもよい。
【0029】
また、本発明に係る前記第4の可逆性画像表示媒体、すなわち、前記2枚のシートのうち少なくとも一方のシートの外表面の表面抵抗率を1010Ω/□〜1016Ω/□とした可逆性画像表示媒体及びこれを利用した可逆性画像表示方法、或いは本発明に係る前記第5の可逆性画像表示媒体、すなわち、前記2枚のシートのうち少なくとも一方の外表面の表面抵抗率を107 Ω/□以下とした可逆性画像表示媒体及びこれを利用した可逆性画像表示方法によると次の利点がある。
【0030】
シートの表面抵抗値、特に静電場を形成する側のシートの表面抵抗値が小さいと、画像表示のための静電場を形成すべく、シート表面に直接静電潜像を形成したり、媒体外部で形成した静電潜像をシート表面に転写する場合のいずれにおいても静電潜像が崩れやすくなる。
【0031】
この点、前記2枚のシートのうち少なくとも一方のシートの外表面の表面抵抗率を1010Ω/□〜1016Ω/□とすることで、かかる問題が解消され、それだけ画像表示を確実、容易に行うことができ、長期にわたり安定した画像表示を行える。
【0032】
またシート表面の抵抗値、特に静電場を形成する側とは反対側のシートの表面抵抗値が大きすぎると、画像形成とその保持に支障が生じる。特に静電場形成側のシート表面に直接静電潜像を形成する場合に潜像電荷が乗りにくくなるし、外部で形成した静電潜像を転写する場合には、均一な電場が得にくくなり、画像ムラが発生しやくなる。さらに、画像形成後の媒体同士を重ねたとき、隣り合う媒体間の静電遮蔽が困難になり、画像が崩れやすく、保持しがたくなる。
【0033】
この点、前記2枚のシートのうち少なくとも一方の外表面の表面抵抗率を107 Ω/□以下(紙と同程度かそれ以下の抵抗率)とすることで、かかる問題を解消でき、それだけ画像表示を確実、容易に行うことができ、長期にわたり安定した画像表示を行え、画像ムラを少なくすることができる。
【0034】
以上のことから、2枚のシートのうち一方のシートの外表面の表面抵抗率を1010Ω/□〜1016Ω/□、他方のシートの外表面の表面抵抗率を107 Ω/□以下としてもよい。
【0035】
なお、支障のない範囲で、各シートの厚みを5μm〜100μm、両シート間のギャップを20μm〜300μm、全体の厚みを30μm〜500μmとするとともに2枚のシートのうち一方のシートの外表面の表面抵抗率を1010Ω/□〜1016Ω/□、他方のシートの外表面の表面抵抗率を107 Ω/□以下としてもよい。
【0036】
以上説明したように、本発明に係る可逆性画像表示媒体及びこれを利用した可逆性画像表示方法によると、コントラスト良好に、高解像度で高品質な画像を長期にわたり安定的に表示できる。さらに残像が発生しにくく、従って良好な可逆性を示し、この点でも高品質な画像を表示できる。さらに画像表示のための駆動電圧が低く済む。
【0037】
本発明に係る可逆性画像表示媒体及びこれを利用した可逆性画像表示方法によると、紙媒体の表示特性に近い表示特性の画像表示が可能である。電気泳動型ディスプレイ(EPD)に比べるとコントラストをより高くできる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように本発明によると、次の利点を有する可逆性画像表示媒体及び可逆性画像表示方法を提供することができる。
(1)画像表示、画像消去を繰り返し行うことができ、よって従来の画像表示に関係する紙等の画像表示媒体、現像剤、インク等の消耗品の使用を低減することができ、それだけ今日の環境負荷低減に応えることができる。
(2)コントラストに優れ、高解像度で高品質な画像を長期にわたり安定的に表示できる。
(3)残像が発生しにくく、従って良好な可逆性を示し、この点でも高品質な画像を表示できる。
(4)駆動電圧が低く済む。
また本発明によると、画像ムラ少なく画像表示できる可逆性画像表示媒体及び可逆性画像表示方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図(A)から図(I)のそれぞれは現像剤収容セルの形状例を示す図である。
【図2】図(A)から図(H)はそれぞれ現像剤移動抑制部材の形状及び配列の例を示す図である。図(I)は媒体単位面積Sbとその中のセルによる画像部面積Saの1例を示す図である。
【図3】電極付きの可逆性画像表示媒体の1例の画像表示前の断面図である。
【図4】図3に示す媒体の画像表示状態の断面図である。
【図5】図3に示す媒体における第2シートとこれに形成された格子状隔壁等の斜視図である。
【図6】図3に示す媒体における第2シートとこれに形成された個別電極の平面図である。
【図7】図3に示す媒体の画像表示例を示す図である。
【図8】可逆性画像表示媒体の他の例の断面図である。図8(A)は可逆性画像表示媒体の画像表示前の断面図であり、図8(B)は画像表示時の1例の断面図である。
【図9】図8に示す媒体の一部を切り欠いて示す平面図である。
【図10】図8に示す媒体の画像表示例を示す図である。
【図11】外部静電潜像形成装置を備えている画像形成装置例の概略構成を示す図である。
【図12】本発明に係る可逆性画像表示媒体のさらに他の例の断面図である。
【図13】図(A)は画像表示のさらに他の例を示す平面図であり、図(B)は非画像部面積の割合(非画像部面積/媒体単位面積)と反射濃度比との関係を示すグラフである。
【図14】イオンフロー方式の直接静電潜像形成装置を備えている画像形成装置例の概略構成を示す図である。
【図15】イオンフロー方式の直接静電潜像形成装置を備えてい画像形成装置の他の例の概略構成を示す図である。
【図16】イオンフロー方式の直接静電潜像形成装置を備えている画像形成装置のさらに他の例の概略構成を示す図である。
【図17】マルチスタイラス方式の直接静電潜像形成装置を備えている画像形成装置例の概略構成を示す図である。
【図18】隣接制御電極を有するマルチスタイラス型静電潜像形成装置を備えている画像形成装置例の概略構成を示す図である。
【図19】外部静電潜像形成装置を備えた画像形成装置の等価回路を示す図である。図(A)は像担持体と画像表示媒体とが離間している状態の等価回路、図(B)は像担持体を画像表示媒体に近接させて静電誘導させた状態の等価回路、図(C)は絶縁破壊により電荷移動が生じた状態の等価回路、図(D)は電荷移動後に像担持体と媒体が離間した状態の等価回路である。
【図20】画像消去装置を備えた画像形成装置例の概略構成を示す図である。
【図21】画像消去装置を備えた画像形成装置の他の例の概略構成を示す図である。
【図22】画像消去装置を備えた画像形成装置のさらに他の例の概略構成を示す図である。
【図23】現像剤攪拌装置を備えた画像形成装置例の概略構成を示す図である。
【図24】現像剤攪拌装置を備えた画像形成装置の他の例の概略構成を示す図である。
【図25】現像剤攪拌装置を備えた画像形成装置のさらに他の例の概略構成を示す図である。
【図26】現像剤攪拌装置を備えた画像形成装置のさらに他の例の概略構成を示す図である。
【図27】現像剤攪拌装置を備えた画像形成装置のさらに他の例の概略構成を示す図である。
【図28】現像剤攪拌装置を備えた画像形成装置のさらに他の例の概略構成を示す図である。
【図29】現像剤攪拌装置を備えた画像形成装置のさらに他の例の概略構成を示す図である。
【図30】予備帯電装置を備えた画像形成装置の1例の概略構成を示す図である。
【図31】予備帯電装置を備えた画像形成装置の他の例の概略構成を示す図である。
【図32】外部静電潜像形成装置を備えた画像形成装置において静電潜像形成前に媒体を帯電させる場合の等価回路を示す図である。図(A)は像担持体と画像表示媒体とが離間している状態の等価回路、図(B)は像担持体を画像表示媒体に近接させて静電誘導させた状態の等価回路、図(C)は絶縁破壊により電荷移動が生じた状態の等価回路、図(D)は電荷移動後に像担持体と媒体が離間した状態の等価回路、図(E)は対向電極ローラを接地した場合の等価回路である。
【図33】可逆性画像表示媒体のさらに他の例の一部の断面図である。
【図34】可逆性画像表示媒体のさらに他の例の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下本発明の実施の形態について説明する。
本発明の好ましい実施形態の可逆性画像表示媒体は基本的に次の構成のものである。
すなわち、所定のギャップをおいて対向する、少なくとも一方が光透過性を有する2枚のシートと、前記2枚のシートの間に形成され、周囲を仕切り壁で囲まれた1又は2以上の現像剤収容セルと、前記各セルに内包された乾式現像剤とを有する可逆性画像表示媒体である。前記乾式現像剤は、互いに帯電極性の異なる、且つ、互いに光学的反射濃度の異なる少なくとも2種類の、摩擦帯電性を有する乾式現像粒子を含んでいる。
【0041】
また、本発明の好ましい実施形態の可逆性画像表示方法は、前記可逆性画像表示媒体を利用するもので、基本的に次の方法である。
【0042】
すなわち、前記の可逆性画像表示媒体であって、前記乾式現像剤における前記少なくとも2種類の現像粒子が互いに異なる帯電極性に摩擦帯電した可逆性画像表示媒体を準備する工程と、前記各セルに内包された現像粒子が摩擦帯電している状態で該現像粒子に対し表示しようとする画像に対応させて画素ごとに所定の静電場を形成することで該現像粒子を移動させて画像表示する工程とを含む可逆性画像表示方法である。
【0043】
これらの可逆性画像表示媒体及びこれを利用した可逆性画像表示方法によると、画像表示媒体における各セルに内包された現像粒子が摩擦帯電している状態で該現像粒子に対し表示しようとする画像に対応させて画素ごとに所定の静電場を形成することで、静電場と帯電現像粒子との間に働くクーロン力にて該現像粒子を移動させて現像を行い、所定のコントラストで画像を表示することができる。
【0044】
前記静電場は、例えば前記2枚のシートのいずれかの外表面に静電潜像を形成して該静電潜像に基づいて形成できる。静電場の形成は静電潜像の形成と同時的になされても、静電潜像形成後になされてもよい。かかる静電場は、例えば静電潜像を形成するシートとは反対側のシートにバイアス電圧を印加したり、該反対側シートを接地すにるなどして該反対側シートを静電場形成のための所定電位に設定すればよい。
【0045】
前記可逆性画像表示媒体は電極を備えていてもよい。
【0046】
すなわち、光透過性を有する一方の前記シートの内面に透明電極を形成するとともに他方の前記シートの内面に該透明電極に対向する電極を設けてもよい。
【0047】
電極を設けた可逆性画像表示媒体及びこれを利用した可逆性画像表示方法では、媒体における各セルに内包された現像粒子が摩擦帯電している状態で前記両電極間に電圧を印加して該両電極間に表示しようとする画像に対応させて画素ごとに所定の静電場を形成することで、静電場と帯電現像粒子との間に働くクーロン力にて該現像粒子を移動させて現像を行い、所定のコントラストで画像を表示することができる。
【0048】
前記他方のシートの内面の電極は、画素ごとに形成された個別電極の群れからなっていてもよい。
【0049】
前記いずれのタイプの可逆性画像表示媒体(可逆性画像表示方法で採用する表示媒体も含む)においても、前記セルに内包された現像粒子が摩擦帯電した状態を得るには、現像粒子をセルに内包するに先立って混合攪拌等により摩擦帯電させたのちセルに内包したり、現像粒子をセルに内包してから何らかのエネルギー付与によりセル内で混合攪拌して摩擦帯電させたり、或いはそれらの双方により摩擦帯電させればよい。
【0050】
かかる現像粒子の混合攪拌の具体例として、交番電場(例えばAC電場)印加による混合攪拌、現像粒子の少なくとも一つが磁性粒子であるときにおける磁気力による混合攪拌、超音波照射や機械的振動付与による混合攪拌、これらのうち2以上の組み合わせによる混合攪拌等を挙げることができる。
【0051】
現像粒子を混合攪拌してよく帯電させることにより、一層のコントラスト向上、さらなる駆動電圧の低下が可能である。
【0052】
前記いずれのタイプの可逆性画像表示媒体(可逆性画像表示方法で採用する表示媒体も含む)においても、2枚のシートのそれぞれは、厚さに比べて面積が大きく、面的に広がりのあるものを指し、合成樹脂、ガラス等種々の材料で形成することができ、柔軟性を有するもの、可撓性を有するもの、ガラス板のように可撓性に乏しいもの等のいずれでもよく、2枚のシートのうち少なくとも一方(画像観察側のシート)が画像を視認できるように光透過性を有していればよい。双方のシートが光透過性を有していてもよい。
【0053】
また前記乾式現像剤の前記現像剤収容セル内での横方向の移動を抑制するための現像剤移動抑制部材を前記2枚のシート間に設けてもよい。当然のことながら、セルを形成している仕切り壁も現像剤の横方向の移動を抑制する。
【0054】
また前記現像剤収容セルを形成している前記仕切り壁及び(又は)前記現像剤移動抑制部材が前記2枚のシート間ギャップを所定のギャップに維持するスペーサを兼ねていてもよい。2枚のシート間ギャップを所定のギャップに維持する専用のスペーサを仕切り壁や現像剤移動抑制部材とは別途に設けてもよい。
【0055】
かかる現像剤移動抑制部材を設けることでセル内の現像粒子の偏りが抑制され、それだけ画像ムラの少ない高品質の画像を表示できる。またスペーサにより2枚のシート間ギャップが所定のものに維持されることで、画像ムラの少ない画像表示ができる。現像剤移動抑制部材の形状は柱状部材、壁状部材など任意である。
【0056】
電極の有無に拘らず、可逆性画像表示媒体における現像剤収容セルの数、大きさ、形状、分布、配列(規則的、不規則)等については、画像表示できるのであれば特に制限はない。現像剤移動抑制部材や専用スペーサについても同様である。
【0057】
仕切り壁、現像剤移動抑制部材、専用スペーサのそれぞれは、例えば2枚のシートの少なくとも一方に少なくとも一部を接着等にて接合固定したり、シートと成形等により一体的に形成することができる。しかし、仕切り壁、現像剤移動抑制部材、専用スペーサのそれぞれは、2枚のシートのうち一方又は双方に接着固定されたり、シートと一体的に形成されたりせず、2枚のシート間に、少なくとも一方のシートに対し動かないように配置されているだけでもよい。
【0058】
現像剤収容セルの形状については、連続溝タイプ、独立タイプに大別できる。連続溝タイプのセルCElは図1の(A)、(B)、(C)に例示するように、各仕切り壁w1が他の仕切り壁w1と交わることなく延在しているセルである。例えば媒体S周縁部の相互に対向している封止部cw間に延在することで形成されているセルである。この場合、封止部cwはセルを形成する仕切り壁を兼ねることができる。連続溝タイプのセルCE1は、媒体Sの平行2辺と平行に延びていても(図1(A))、媒体Sの各辺と交わる方向に延びていても(図1(B))、波形状に延びていても(図1(C))、或いはさらに他の態様で延びていてもよい。
【0059】
独立タイプのセルCE2は例えば碁盤目状(図1(D))、煉瓦塀状(図1(E))、蜂の巣状(図1(F))、三角形を連ねた態様(図1(G))、波形区画を連ねた態様(図1(H))、それぞれが周囲を仕切り壁で囲まれた連続溝を連ねた態様(図1(I))等に配列形成できる。
【0060】
なおこれらの図においてαは仕切り壁の厚さ、ptは隣り合う仕切り壁間隔を表している。
【0061】
いずれにしても個々のセルは図1(A)〜図1(I)に示すように他のセルと隣接するように他のセルに連続形成されていてもよいが、他のセルと離れて形成されてもよい。セルの配列は規則的でも、不規則でもよい。またセルの数は一つでもよい。また仕切り壁w1がシート間ギャップを所定のものに維持するスペーサを兼ねていてもよい。
【0062】
なお、画像表示のための画素については、一つのセルに対し一つの画素がある場合、一つのセルに複数の画素がある場合、複数のセルに対し一つの画素がある場合などのいずれでもよい。
【0063】
現像剤移動抑制部材の形状については、柱状(円柱、四角柱、三角柱など)、錐状(円錐、四角錐、円錐台、四角錐台など)、壁状等のいずれでもよい。様々のタイプの現像剤移動抑制部材を用いてもよい。その配列は規則的でも、不規則でもよい。柱状の部材はこれをシートと強固に接合等するうえで都合がよい。長く延びる壁状の部材は大きい現像剤移動抑制効果を期待できる。壁状部材のうち薄い板状のものは、所望の現像剤収容量を確保するうえで都合がよい。現像剤移動抑制部材の高さは任意である。従っていずれか一方のシートに動かないように配置されているだけでもよい。2枚のシート間にわたる高さを有しているときには、シート間ギャップを所定のものに維持するスペーサを兼ねていてもよい。
【0064】
図2の(A)〜(H)は現像剤移動抑制部材の形状及び配列を例示している。
【0065】
図2(A)は断面矩形状の柱状抑制部材CL1を所定方向に間隔をあけて配列してなる部材列を平行に複数列配置した状態を示している。図2(B)は断面円形状の柱状抑制部材CL2を分散配置した状態を示している。図2(C)は薄い板状(壁状)の抑制部材CL3を複数平行に配置した状態を示している。図2(D)は柱状抑制部材CL2と長さがまちまちの薄い板状(壁状)の抑制部材CL3とを不規則に分散配置した状態を示している。図2(E)は柱状抑制部材CL2と長さが同じ薄い板状(壁状)の抑制部材CL3とをある程度規則的に分散配置した状態を示している。図2(F)は図1(A)に示す連続溝タイプのセルCE1のそれぞれに断面矩形状の柱状抑制部材CL4を複数個、島状に配置した状態を示している。図2(G)は図1(D)に示すタイプの碁盤目状配置の独立セルCE2のそれぞれに断面矩形状の柱状抑制部材CL4を一つずつ島状に配置した状態を示している。各抑制部材CL1、CL2、CL3、CL4はスペーサを兼ねることができる。なお、これらの図においてβ1、β2は柱状抑制部材の縦横の寸法を示している。γ1、γ2は画像表示領域の一つの単位の縦横の寸法を示している。図2(F)のδは隣り合う部材CL4間の間隔を示している。
【0066】
ところで、画像表示媒体には、前記したような仕切り壁、現像剤移動抑制部材、スペーサ等により非画像表示領域が発生する。かかる非画像表示領域はその合計面積が大きすぎると画像表示が困難になったり、画像品位が低下する。また小さすぎると、スペーサを設ける領域面積が小さくなる結果を招き、ひいてはシート間ギャップの不均一、さらにはそれによる画像ムラを招く。
【0067】
よって電極の有無に拘らず、画像表示媒体により提供される単位面積So(例えば図2の(A)、(H)におけるγ1×γ2の領域)における非画像部の面積Snの割合Sn/Soを0.0001以上0.5以下とすることが好ましい。なお、単位面積Soは任意に設定できるが、実際に画像を表示できる領域と非画像部領域の双方が含まれているように設定すればよい。さらに言えば例えば実際に画像を表示できる領域と非画像部領域の双方が含まれていて、それが媒体において繰り返し現れるような繰り返し単位で設定するとよい。
【0068】
或いは、任意の一つの現像剤収容セル(又は順次連続する複数の任意の現像剤収容セル群)において、一つの現像剤収容セル(又は複数の現像剤収容セル群)により提供される画像表示領域の面積がSaであり、前記一つの現像剤収容セルの外輪郭を形成している仕切り壁の中心線で囲まれる面積(又は前記複数の現像剤収容セル群の外輪郭を形成している仕切り壁の中心線で囲まれる面積)がSbであるとき、前記一つの現像剤収容セル(又は前記複数の現像剤収容セル群)に関する(1−Sa/Sb)の値を0.0001以上0.5以下とすることが望ましい(図2(I)参照)。
【0069】
これにより画像表示に支障のない画像表示領域面積を確保してして、コントラスト良好に高品質の画像を表示できる一方、仕切り壁によるスペーサ、現像剤移動抑制部材によるスペーサ、専用のスペーサなどのスペーサの領域を確保して2枚のシート間ギャップを所定のものに維持し、画像ムラの発生を抑制することができる。
【0070】
なお、電極ありの画像表示媒体については、該電極にリードを接続形成するが、該リードは仕切り壁等のある非画像表示領域に設けることが望ましい。
【0071】
シート、セル仕切り壁、現像剤移動抑制部材、スペーサ等の材質は特に限定されない。しかし例えば媒体表面(シート表面)に画像表示のために静電潜像を形成する場合には、少なくとも該静電潜像を形成するシートについては絶縁性シートとする。反対側のシートについては、電極の有無に拘らず、絶縁性シートでも、そうでなくてもよい。絶縁性シートとする場合においてこれを接地電位としたり、これにバイアス電圧を印加する必要があるときには、その絶縁シートのままでもよいが、例えばシート外面に導電性膜を形成したり、反対側シート全体を導電性を有する材料や、導電性材料を含む材料で形成してもよい。このようにすると、要すれば容易に、該シートを接地して接地電位にしたり、該シートにバイアス電圧を印加できる。また、電極の有無に拘らず、反対側シートが絶縁性シートであってその外面に導電性膜を形成してある場合や、該反対側シートそれ自身が導電性シートであるときは、他からの電荷の遮蔽効果があり、画像表示した媒体を重ねるようなときでも、画像が崩れにくく、画像をそれだけ安定に保持することができる。
【0072】
電極無しの媒体の場合、シート間のギャップや、各シートの厚みが大きすぎると、シート間の現像剤にかかる電場が弱くなって現像性が悪くなり、コントラストの低下、解像度の低下を招く。また、シート間のギャップが小さすぎると、現像剤収容セル内に内包できる現像剤量が少なくなり、必要なコントラストが得られ難くなる。また、各シートの厚み、ひいては各シートの厚みに基づく媒体全体の厚みが小さすぎると、媒体が撓みやすくなり、シート間ギャップの均一性が得られなくなり、画像ムラが発生し易くなる。
【0073】
よって電極無しの可逆性画像表示媒体では、それには限定されないが、前記各シートの厚みが5μm〜100μm、前記両シート間のギャップは20μm〜300μm、全体の厚みは30μm〜500μmであることが望ましい。
【0074】
電極有りの可逆性画像表示媒体についても、現像剤量を確保し、シート間ギャップの均一性を維持するために、それには限定されないが、各シートの厚みを5μm〜100μm、両シート間のギャップを20μm〜300μm、全体の厚みを30μm〜500μmとしてもよい。
【0075】
また、電極無しの可逆性画像表示媒体において、例えば媒体表面(シート表面)に静電潜像を形成して該静電潜像に基づいて静電場を形成するようなときは、シートの表面抵抗値、特に静電場を形成する側のシートの表面抵抗値が小さいと、画像表示のための静電場を形成すべく該シート表面に直接静電潜像を形成したり、媒体外部で形成した静電潜像を該シート表面に転写する場合のいずれにおいても該静電潜像が崩れやすくなる。
【0076】
よって電極無しの可逆性画像表示媒体では、前記2枚のシートのうち少なくとも一方のシートの外表面の表面抵抗率を1010Ω/□〜1016Ω/□とすることが好ましい。
【0077】
またシート表面の抵抗値、特に静電場を形成する側とは反対側のシートの表面抵抗値が大きすぎると、画像形成とその保持に支障が生じる。特に静電場形成側のシート表面に直接静電潜像を形成する場合に潜像電荷が乗りにくくなるし、外部で形成した静電潜像を転写する場合には、均一な電場が得にくくなり、画像ムラが発生しやくなる。さらに、画像形成後の媒体同士を重ねたとき、隣り合う媒体間の静電遮蔽が困難になり、画像が崩れやすく、保持しがたくなる。
【0078】
よって前記2枚のシートのうち少なくとも一方の外表面の表面抵抗率を107 Ω/□以下(紙と同程度かそれ以下の抵抗率)とすることが好ましい。
【0079】
以上のことから、電極無し可逆性画像表示媒体では、2枚のシートのうち一方のシートの外表面の表面抵抗率を1010Ω/□〜1016Ω/□、他方のシートの外表面の表面抵抗率を107 Ω/□以下とすることが推奨される。
【0080】
支障のない範囲で、各シートの厚みを5μm〜100μm、両シート間のギャップを20μm〜300μm、全体の厚みを30μm〜500μmとするとともに2枚のシートのうち一方のシートの外表面の表面抵抗率を1010Ω/□〜1016Ω/□、他方のシートの外表面の表面抵抗率を107 Ω/□以下としてもよい。
【0081】
なお各シートの表面抵抗率は、例えばシートに抵抗値の異なる導電性材料(例えば導電性カーボン)を含有させる、シート表面に界面活性剤を塗布する等して調整できる。
【0082】
電極あり、電極無しのいずれの可逆性画像表示媒体についても、現像剤収容セルに内包される現像剤は、互いに帯電極性の異なる、且つ、互いに光学的反射濃度の異なる(換言すれば「コントラストの異なる」或いは「色の異なる」)少なくとも2種類の乾式現像粒子を含んでいるとよい。代表例として、光吸収性を有する正帯電性(又は負帯電性)の黒色粒子と、光反射性を有する負帯電性(又は正帯電正)の白色粒子とを挙げることができる。
【0083】
乾式現像剤を構成する前記少なくとも2種類の現像粒子のうち少なくとも一方は非導電性粒子としてもよい。この場合、画像表示媒体が電極を有しているか否かに拘らず、かかる非導電性粒子の存在により該2種類の現像粒子が容易、確実に摩擦帯電することができ、それだけ良好な画像表示を行える。
【0084】
また、乾式現像剤を構成する前記少なくとも2種類の現像粒子のうち少なくとも一方は磁性粒子としてもよい。画像表示媒体が電極を有しているか否かに拘らず、かかる磁性粒子の存在により、後述するように、現像剤(現像粒子)を磁場、例えば振動磁場により攪拌することができ、かかる現像剤の攪拌により画像形成(画像表示)に先立つ前回画像の消去や、画像表示において現像粒子を画像表示のための静電場で動きやすくすることができ、それだけ良好に画像表示できる。
【0085】
いずれにしても、現像粒子が小さすぎると、付着力が非常に大きくなり、現像粒子間の固着、現像効率の低下を招く。また現像粒子が小さすぎると、粒子の帯電量が非常に大きくなるため、画像表示にあたり粒子を動かすための電場を大きいものにしなければならず、そのため高い駆動電圧が必要となってしまう。
【0086】
現像粒子が大きすぎると、摩擦帯電がうまく行えず、画像表示のための静電場において十分な現像粒子移動速度が得られなかったり、良好なコントラストが得られなかったりする。
【0087】
これらのことと、所定の特性の現像粒子を得るための材料等に照らし、非導電性現像粒子については粒径1μm〜50μm、磁性現像粒子については粒径1μm〜100μmが適当である。
【0088】
なお、1種の現像粒子が非導電性粒子であるとともに磁性粒子であってもかまわない。
【0089】
現像粒子は例えばバインダー樹脂、着色剤等から、或いは着色剤単独等で形成することができる。これらについて使用できるものを示すと次のとおりである。
・バインダー樹脂
着色剤、磁性体等を分散させることができ、通常結着剤として使用されるものであれば特に限定されない。電子写真用トナーに用いられる結着樹脂が代表例として挙げられる。
【0090】
例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフイン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、フツ素系樹脂、シリコン系樹脂ならびにこれらの共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体、及びポリマーブレンドなどを用いることができる。
【0091】
ガラス転移点Tgはかなり高くてもよく、場合によっては熱可塑性樹脂である必要はない。
・着色剤
着色剤としては、以下に示すような、有機又は無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0092】
黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などがある。
【0093】
黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルフアストイエロー、ニッケルチタンエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、バンザーイエローG、バンザーイエロー10G、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキなどがある。
【0094】
橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKなどがある。
【0095】
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレツド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどがある。
【0096】
紫色顔料としては、マンガン紫、フアストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどがある。
【0097】
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどがある。
【0098】
緑色顔科としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどがある。
【0099】
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などがある。
【0100】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどがある。
【0101】
また塩基性、酸性、分散、直接染料などの各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどがある。
【0102】
これらの着色剤は、単独で或いは複数組合せて用いることができる。
【0103】
特に白黒表示においては、黒色着色剤としてカーボンブラックが、白色着色剤として二酸化チタンが好ましい。
【0104】
また、特に白色顔料を溶融結着樹脂(バインダー樹脂)と混練して、その混練物から現像粒子を得る場合、白色顔料の使用量は、十分な白色度を得るために、白色粒子の原料モノマー100重量部に対して、10重量部以上、好ましくは、20重量部以上であることが望ましく、白色顔料の十分な分散性を確保するために、60重量部以下、好ましくは50重量部以下であることが望ましい。白色顔料が60重量部を超えてくると、顔料と結着樹脂との結着性、顔料の分散性が悪化し、また白色顔料が10重量部未満であると他の色の現像粒子の十分な隠蔽性が得られない。
【0105】
また、黒色着色剤としてはカーボンブラックが好ましいが、現像粒子に磁性を持たせるような場合にはマグネタイト、フェライト等の磁性体粒子及び磁性体微粉末を着色剤として用いることもできる。
・その他の内添剤
前記バインダー樹脂、着色剤以外に好ましく使用される内添剤として、磁性体、荷電制御剤、抵抗調整剤等が挙げられる。
・荷電制御剤
荷電制御剤としては、現像粒子に摩擦帯電にて電荷を与えるものであれば特に制限はない。
【0106】
正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフエニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。
【0107】
負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。
【0108】
その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、弗素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることができる。
・磁性体
磁性体粒子及び磁性体微粉末を用いることができ、それらとしては、強磁性の元素及びこれらを含む合金、化合物等で、例えば、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の合金や化合物、その他の強磁性合金等、従来より知られている磁性材料が含有されていればよい。これら磁性粉の形状としては、粒状、針状、薄片状等各種あるが、適宜選択して使用できる。
・抵抗調整剤
抵抗調整剤としては、前述した磁性紛、着色剤と同等なものもあり、薄片状、繊維状、粉末状等の各種形状の金属酸化物、グラファイト、カーボンブラック等を好ましく用いることができる。
【0109】
次に現像粒子の製造例について説明する。
【0110】
前記した様なバインダー樹脂、磁性粉、着色剤、荷電制御剤、抵抗調整剤及びその他の添加剤等の中から必要なものを選択し、それらを所定量ずつ十分混合後、加圧ニーダや2軸混練装置等により加熱混練し、冷却後、ハンマーミル、カッターミル等により粗粉砕する。次いで、ジェットミル、オングミル等によりさらに微粉砕化した後、風力分級機等を用いて所定の平均粒径になるまで分級し、現像粒子を得る。
【0111】
このようにして得られた異なる帯電極性、異なるコントラスト(光学的反射濃度)の粒子を、所定の割合で混合攪拌することにより、所定の帯電量を有する現像剤を調製することができる。このとき流動性向上剤等の第3成分(粒子)を添加、混合してもかまわない。
・かかる流動化剤について
流動性向上剤としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0112】
特にシリカ、酸化アルミニウム、二酸化チタン、フツ化マグネシウム等の微粉末が好ましく、また流動化剤を単独或いは組み合わせて添加してもよい。
【0113】
電極無し可逆性画像表示媒体を採用する画像表示のための現像粒子に対する静電場の形成は、例えば前記2枚のシートのうちいずれか一方(例えば画像観察側のシート)の表面に、表示しようとする画像に対応した静電潜像を形成して該静電潜像に基づいて形成することができる。この場合静電場の形成は、静電潜像の形成と同時的になされてもよいし、静電潜像形成後になされてもよい。静電場の形成は、例えば静電潜像を形成するシートとは反対側のシートに該静電場形成のための所定電位を設定することで行える。該所定の電位の設定は例えば反対側シートにバイアスを印加するか、又は該シートを接地することで行える。
【0114】
静電潜像は、例えば直接静電潜像形成装置を用いて媒体表面(シート表面)に直接形成してもよいし、外部静電潜像形成装置を用いて媒体外部で形成した静電潜像を媒体表面(シート表面)に転写して形成してもよい。
【0115】
直接静電潜像形成装置としては、表示しようとする画像に応じて媒体表面に放電して静電潜像電荷をのせる各種の放電型静電潜像形成装置、表示しようとする画像に応じて媒体表面に電荷注入して静電潜像電荷をのせる各種の電荷注入型の静電潜像形成装置を例示できる。前者の例としてイオンフロー型の装置や、所定方向(例えばシートを装置で走査するときの主走査方向)に記録電極を配列した静電記録ヘッドを有するマルチスタイラス型の装置を挙げることができ、後者の例として所定方向(例えばシートを装置で走査するときの主走査方向)に記録電極を配列するとともに該記録電極に隣り合わせて隣接制御電極を配列した静電記録ヘッドを有するマルチスタイラス型装置を挙げることができる。
【0116】
外部静電潜像形成装置としては、静電潜像担持体上に表示しようとする画像に対応した静電潜像を形成し、該静電潜像担持体上の静電潜像を前記シート表面に転写するものを例示できる。さらに言えば、感光体のような光導電体上に表示しようとする画像に対応した静電潜像を形成し、該光導電体上の静電潜像を前記シート表面に転写するものや、誘電体上に表示しようとする画像に対応した静電潜像を形成し、該誘電体上の静電潜像を前記シート表面に転写するものを例示できる。
【0117】
画像表示にあたっては、いずれかの静電潜像形成装置を含む電場形成装置を採用することができる。
【0118】
このように転写であれ、直接形成であれ、画像表示媒体に静電潜像を形成すると、後ほど詳しく説明するように、画像保持性が良好となる。特に流動性の高い現像剤や、画像表示に先立って現像剤攪拌処理により流動性が高められる現像剤を用いる場合に画像保持の点で有利である。
【0119】
なお、電極を有する可逆性画像表示媒体については、該電極に電圧を印加することで画像表示のための静電場を形成できる。この媒体についての電場形成装置は後ほど例示する。
【0120】
電極あり、電極無しのいずれの可逆性画像表示媒体を採用する場合であれ、画像表示前に前回表示の画像を消去する画像消去処理を施すようにしてもよい。
【0121】
画像消去処理は、例えば画像表示媒体における現像剤を構成している現像粒子を移動させる電界を形成すること、現像剤に攪拌力を作用させること、又はこれらの両者により行える。攪拌力の付与は、例えば現像剤に対し交番電界を形成する、振動磁場を形成する、超音波を照射する、機械的振動を付与する、これらを組み合わせる等により行える。
【0122】
従ってまた、画像表示にあたっては、画像消去装置として、例えば現像粒子を移動させる電界を形成する電界形成装置を含んでいるもの、現像粒子に攪拌力を作用させる攪拌装置を含んでいるもの、かかる電界形成装置と攪拌装置の双方を含んでいるもの等を適宜採用できる。
【0123】
例えば電界のもとに前記2種類の現像粒子のうち一方の同じ光学的反射濃度の(換言すれば、「同じコントラストの」或いは「同じ色の」)現像粒子を一方のシート側へ集めるとともに、他方の同じ光学的反射濃度の現像粒子を他方のシート側へ集めるようにすれば、画像消去できるとともに、次に新たな画像を形成するとき、画像部のみ現像粒子を移動させるだけでよいから、それだけ画像表示が円滑、確実に、高品質になされる。
【0124】
また例えば現像剤(現像粒子)の攪拌を行うときは、画像が消去され、現像粒子の帯電量、流動性が向上し、この場合もそれだけつぎの画像表示が円滑、確実に、高品質になされる。
【0125】
かかる電界形成装置としては、可逆性画像表示媒体を間にして配置される一対の電極(通常金属)又は誘電体と、これらにバイアス電圧を印加する電源装置とを含んでいるものを例示できる。
【0126】
この他さらに、画像表示媒体に放電して電界を形成する各種の放電型電界形成装置、可逆性画像表示媒体に電荷注入して電界を形成する各種の電荷注入型電界形成装置を例示できる。前者の例としてコロナ帯電装置、イオンフロー型の電界形成装置、所定方向に電極を配列したヘッドを有するマルチスタイラス型の電界形成装置を挙げることができ、後者の例として所定方向に電極を配列するとともに該電極に隣り合わせて隣接制御電極を配列したヘッドを有するマルチスタイラス型電界形成装置を挙げることができる。
【0127】
また攪拌装置として、次のものを例示できる。
・可逆性画像表示媒体に対し交番電界を形成する装置。
【0128】
この装置は現像剤粒子の少なくとも1種が絶縁性である場合に利用できる。
・可逆性画像表示媒体に対し振動磁場を形成する装置。
【0129】
この装置は現像剤粒子の少なくとも1種が磁性体を含んでいる場合に利用できる。
・可逆性画像表示媒体に対し超音波を照射する装置。
・可逆性画像表示媒体に対し機械的振動を与える装置。
・上記装置を2以上組み合わせた装置。
【0130】
既述のように、現像剤(現像粒子)の攪拌を行うときは、現像粒子の帯電量、流動性が向上し、それだけ次の画像表示が円滑、確実に、高品質になされる。
【0131】
また、画像表示に先立って現像剤を攪拌すると、現像粒子の帯電量が安定し、この点でも良好に画像表示できる。さらに、現像剤の帯電性、流動性の許容幅が広がる利点もある。
【0132】
よって、画像表示にあったっては、電極あり、電極無しのいずれの可逆性画像表示媒体を採用する場合であれ、前記の画像消去処理を兼ねて、或いは画像消去処理とは別途に、現像剤を攪拌してもよい。
【0133】
電極無しの画像表示媒体を採用するときには、例えば画像表示媒体の表面(シート表面)に表示しようとする画像に対応した静電潜像を形成して該静電潜像に基づいて該静電潜像形成と同時的に又は該静電潜像形成後に画像表示のための静電場を形成するようにし、該静電場形成と同時的に及び(又は)該静電場形成前に現像剤を攪拌すればよい。
【0134】
電極を有する画像表示媒体については、電極間に電圧を印加して静電場を形成するようにし、該静電場形成の前、又は該静電場形成と同時的に現像剤を攪拌すればよい。電極の有無に拘らず、現像剤攪拌は、例えば電場形成装置に対する画像表示媒体の相対的搬送方向において該電場形成装置による静電場形成領域又はそれより上流側で画像表示媒体搬送路に臨んでいる攪拌装置を用いて行える。
【0135】
現像剤攪拌方法や攪拌装置については、前記画像消去処理に関連して例示した攪拌方法、攪拌装置と同様の方法、装置を採用できる。
【0136】
このように画像表示にあたり現像剤を攪拌することでも、一層のコントラスト向上、さらなる駆動電圧の低下が可能である。
【0137】
前記の電極無しの可逆性画像表示媒体を採用する場合において画像表示にあたり、画像表示媒体の表面(シート表面)に静電潜像を形成するときには、該静電潜像形成前に媒体表面を所定電位に一様に帯電させ、その帯電域に表示しようとする画像に対応する静電潜像を形成してもよい。そして該静電潜像に基づいて現像剤収容セル内の現像粒子に対し表示しようとする画像に対応する画素ごとに所定の静電場を形成することで該現像粒子を移動させて画像表示してもよい。
【0138】
かかる画像表示方法は、
所定色の絶縁性液体中に該液体の色とは異なる色の帯電した帯電現像粒子を分散させ、これら絶縁性液体及び帯電現像粒子を所定のギャップをおいて対向する、少なくとも一方が光透過性を有する2枚のシートの間に密封した可逆性画像表示媒体にも適用できる。
【0139】
すなわち、画像表示に先立って、該画像表示媒体の表面を一様に所定電位に帯電させる。そのあと、帯電した媒体表面に静電潜像を形成し、該静電潜像に基づいて媒体内の絶縁性液体に分散している帯電現像粒子に対し表示しょうとする画像に対応する画素ごとに所定の静電場を形成するのである。
【0140】
またかかる画像表示方法は、
外表面のうち半分の面と反対側の残り半分の面が色において互いに異なるとともにイオン吸着量において互いに異なる球状現像粒子がその周囲を絶縁性液体層で囲繞される状態で絶縁性保持媒体中に埋め込まれている可逆性画像表示媒体にも適用できる。
【0141】
すなわち、画像表示に先立って、該画像表示媒体の表面を一様に所定電位に帯電させる。そのあと、帯電した媒体表面に静電潜像を形成し、該静電潜像に基づいて前記球状現像粒子に対し表示しょうとする画像に対応する画素ごとに所定の静電場を形成することで該球状現像粒子の互いに色の異なる面の向きを制御して画像表示するのである。さらに言えば、絶縁性液体層に囲繞されていて回転可能である球状現像粒子が静電場の影響により反転し、画像が表示される。かかる球状現像粒子の反転は、球状現像粒子の外表面のうち半分の面と反対側の残り半分の面がイオン吸着量において互いに異なっており、従って電界の方向により面の向きが変化することで起こる。また、球状現像粒子の外表面のうち半分の面と反対側の残り半分の面が色において互いに異なっているから、これにより画像表示できる。
【0142】
セル内包の現像粒子、絶縁性液体中の現像粒子、回転可能の球状粒子のいずれを採用する媒体であれ、媒体上の静電潜像は、例えば前記帯電工程で帯電した媒体表面に直接形成することで、或いは媒体外部で静電潜像担持体上に形成した静電潜像を前記帯電工程で帯電した媒体表面に転写形成することで形成できる。
【0143】
媒体上に形成される静電潜像の領域の帯電極性は、該静電潜像の形成に先立つ媒体表面の一様な帯電による帯電領域の帯電極性と同極性であっても、異なる極性であっても、或いは0〔V〕であってもよい。
【0144】
静電場の形成は静電潜像形成と同時的になされてもよいし、この他、静電潜像形成後に媒体にバイアス電圧を印加する、該媒体を接地するなどしてなされてもよい。
【0145】
このように画像表示媒体表面を予め一様に所定電位に帯電させてから、該帯電域に静電潜像を書き込むと、媒体構造に応じて、前記の現像剤収容セル内の帯電現像粒子或いは絶縁性液体中の帯電現像粒子を移動させたり、前記の球状現像粒子を反転させたりできる。そしてさらには移動した現像粒子や反転した現像粒子をその位置に保持するに十分な静電場が形成される。換言すれば画像表示媒体表面を予め一様に所定電位に帯電させてから、該帯電域に静電潜像を書き込むと、画像保持性が良好となる。特に流動性の高い現像剤や、画像表示に先立って現像剤攪拌処理により流動性が高められる現像剤を用いる場合に画像保持の点で有利である。これらによりコントラストに優れた高品質の画像を長期にわたり安定的に表示できる。
【0146】
なお、絶縁性液体中に帯電現像粒子を分散させた媒体、球状現像粒子を含む媒体のいずれについても、異なる静電場を形成したり、交番電場を形成するなどして画像を消去できるし、異なる静電潜像を形成することで画像を書き換えることもできる。
【0147】
以上説明した各種可逆性画像表示媒体及びそれを利用した可逆性画像表示方法によると、コントラスト良好に、高解像度で高品質な画像を長期にわたり安定的に表示できる。さらに残像が発生しにくく、従って良好な可逆性を示し、この点でも高品質な画像を表示できる。駆動電圧を低く済ませることも可能である。画像ムラ少なく画像表示することも可能である。
【0148】
以下、現像粒子及び現像剤の具体例を説明し、さらに図面を参照して可逆性画像表示媒体、可逆性画像表示方法、画像形成装置等のそれぞれの具体的例を説明する。
<現像粒子及び現像剤>
・白色現像粒子WP
熱可塑性ポリエステル樹脂(軟化点121℃、ガラス転移点67℃)100重量部と、酸化チタン(石原産業社製:CR−50)40重量部と、負荷電制御剤としてサリチル酸亜鉛錯体(オリエント化学社製:ボントロンE−84)5重量部とをヘンシェルミキサーで十分に混合した後、2軸押し出し機で混練後冷却した。該混練物を粗粉砕し、その後ジェット粉砕機で粉砕し、風力分級して白色微粉末を得た。白色微粉末は体積平均粒径が0.7μm、2.1μm、10.1μm、46.2μm、55.3μmのものを得た。
【0149】
各粒径の白色微粉末に対し、その後に疎水性シリカ粒子(日本アエロジル社製:アエロジルR−972)0.3重量部を加え、ヘンシェルミキサーにより混合処理を行い実質上次の粒径の白色現像粒子WP(WP1〜WP5)を得た。
【0150】
粒子WP1:体積平均粒径 0.7μm
粒子WP2:体積平均粒径 2.1μm
粒子WP3:体積平均粒径 10.1μm
粒子WP4:体積平均粒径 46.2μm
粒子WP5:体積平均粒径 55.3μm
これらの白色現像粒子は非導電性粒子である。
・黒色現像粒子BP
スチレンーnブチルメタクリレート系樹脂(軟化点132℃、ガラス転移点65℃)100重量部と、カーボンブラック(ライオン油脂社製,ケッチェンブラックEC)を4重量部と、シリカ(日本アエロジル社製 ♯200)を1.5重量部と、マグネタイト系磁性粉(RB−BL チタン工業社製)500重量部とをヘンシェルミキサーで充分混合した後、ベント二軸混練装置で混練した。
【0151】
この混練物を冷却後フェザーミルで粗粉砕した後、ジェットミルで微粉砕し、これを風力分級機で分級して次の体積平均粒径の黒色粒子BP(BPo、BP1〜BP5)を得た。
【0152】
粒子BPo:体積平均粒径 25.0μm
粒子BP1:体積平均粒径 0.8μm
粒子BP2:体積平均粒径 3.0μm
粒子BP3:体積平均粒径 25.1μm
粒子BP4:体積平均粒径 87.7μm
粒子BP5:体積平均粒径 121.0μm
これらの黒色現像粒子は磁性粒子である。
・現像剤DL
前記白色粒子WP3(10.1μm)と黒色粒子BPo(25.0μm)を白色粒子20g、黒色粒子80gの割合でポリエチレン製のボトルに入れ、ボールミル架台にて回転させて30分間混合攪拌を行い現像剤DL(DLo)を得た。
【0153】
また、白色粒子及び黒色粒子を以下の組み合わせで、且つ、白色粒子20gと黒色粒子80gとをポリエチレン製のボトルに入れ、ボールミル架台にて回転させて30分間混合攪拌を行い、以下の現像剤DL(DL1〜DL9)を作るとともに、比較例現像剤として以下の現像剤De1〜De16を作った。
【0154】
いずれの現像剤でも、白色粒子はマイナスに、また黒色粒子はプラスに帯電していた。
【0155】
現像剤DL1 :WP2(2.1μm) +BP2(3.0μm )
現像剤DL2 :WP3(10.1 μm)+BP2
現像剤DL3 :WP4(46.2 μm)+BP2
現像剤DL4 :WP2+BP3(25.1 μm)
現像剤DL5 :WP3+BP3
現像剤DL6 :WP4+BP3
現像剤DL7 :WP2+BP4(87.7 μm)
現像剤DL8 :WP3+BP4
現像剤DL9 :WP4+BP4
比較例現像剤De1 :WP1(0.7μm) +BP1(0.8μm )
比較例現像剤De2 :WP2(2.1μm) +BP1
比較例現像剤De3 :WP3(10.1 μm) +BP1
比較例現像剤De4 :WP4(46.2 μm) +BP1
比較例現像剤De5 :WP5(55.3 μm) +BP1
比較例現像剤De6 :WP1(0.7μm) +BP2(3.0μm )
比較例現像剤De7 :WP5(55.3 μm) +BP2
比較例現像剤De8 :WP1(0.7μm) +BP3(25.1 μm)
比較例現像剤De9 :WP5(55.3 μm) +BP3
比較例現像剤De10:WP1(0.7μm) +BP4(87.7 μm)
比較例現像剤De11:WP5(55.3 μm) +BP4
比較例現像剤De12:WP1(0.7μm) +BP5(121μm)
比較例現像剤De13:WP2(2.1μm) +BP5
比較例現像剤De14:WP3(10.1 μm) +BP5
比較例現像剤De15:WP4(46.2 μm) +BP5
比較例現像剤De16:WP5(55.3 μm) +BP5
なお比較例現像剤として次の現像液も調製した。
・比較例現像液d1
イソパラフィン系炭化水素(商品名:アイソパG、エクソン化学(株)製)100mlにスーダンブラックX60(BASF社製、商品名)1gを添加して十分に溶解混合させ、着色液体を作製した。
【0156】
これに二酸化チタン粒子(石原産業社製:CR−50)を10gと、0.5wt%のスルホールBa−30N((株)松村石油研究所製バリウムスルホネート)のIPソルベント1620溶液70gとを混合し、サンドグラインダー(IGARASHI KIKAI SEIZO CO.,Ltd.製)を用い、メディアとして直径1mmのガラスビーズ(1500cc)を用いて、ウォータージャケット付き1/8GLベツセルにて、冷却水温度20℃、ディスク回転数2000rpmで15時間処理することにより湿式グラインデイング処理した。
【0157】
この濃厚液体現像剤100重量部に、IPソルベント1620を900重量部加えて希釈し、T.K.オートホモミクサーM型(特殊機化工業(株)製)を用いて10000rpmにて5分間分散処理することにより現像液d1を得た。
<可逆性画像表示媒体>
・可逆性画像表示媒体11
図3及び図4に可逆性画像表示媒体の1例を示す。図3及び図4に示す媒体11は、第1シート111と第2シート112とを含んでいる。これらシート111、112は両者間に所定のギャップをおいて対向している。シート111、112の間には、隔壁113が設けられており、これら隔壁113により両シート間ギャップが所定のものに確保されている.すなわち隔壁113は両シート111、112間のスペーサを兼ねている。また両シート111、112が隔壁113により相互に連結固定されている。
【0158】
第1シート111は、例えば透明ガラス等の光透過性板、透明樹脂フィルム等で形成される。このシート111は画像観察側のシートとされる。
【0159】
このシートの第2シート112と対向する内面に第1電極114が設けられている。第1電極114はシート111の内面のうち画像表示領域の全体にわたって連続している。第1電極114は例えば酸化インジウム錫(ITO)等で形成される透明電極である。
【0160】
第2シート112は必ずしも透明である必要はないが、例えば透明ガラス等の光透過性板、樹脂フィルム等で形成される。
【0161】
第2シート112の第1シート111との対向内面には、第2電極115が形成されている。第2電極115はここでは複数の個別電極115aが碁盤目状に配列されたものである。各個別電極は必ずしも透明電極である必要はないが、例えば透明ITO膜で形成される。
【0162】
前記の隔壁113は、図5に示すように第2シート112の内面に格子状に立設形成され、これにより、それぞれが隔壁113の一部を仕切り壁として四角形状に仕切られた複数の現像剤収容セル116が形成されており、前記の個別電極115aはセル116のそれぞれに一つずつ配置されている。すなわちここでは一つのセルが一つの画素に対応している。
【0163】
さらに各セルに相互に摩擦帯電した白色現像粒子WP及び黒色現像粒子BPを含む乾式現像剤DLが収容されている。
【0164】
各セルは密閉されており、該セルから現像剤DLが漏れ出ることはない。
【0165】
シート間ギャップ、或いは隔壁113の高さ、或いは第1電極114と第2電極115間の距離は、それには限定されないが、例えば20μm〜1mmの間に設定される。
【0166】
この画像表示媒体11における第2電極115を横成している個別電極115aは、図6に示すようにそれぞれにリード部110が接続形成され、これらリード部を介して図1に示すように電極選択回路117に接続される。電極選択回路117には正駆動電圧発生回路118a、負駆動電圧発生回路118b及び表示データ制御部119を接続してある。個別電極115aのそれぞれは、電極選択回路117から独立して駆動電圧が印加されるようになっており、また、表示データ制御部119は、図示を省略した表示データ出力手段(例えばコンピュータ、ワードプロセッサ、ファクシミリ機等)から表示データが入力され、これに基づいて電極選択回路117を制御する。換言すれば、これら電極選択回路等は電極有り可逆性画像表示媒体のための電場形成装置或いは画像形成装置の1例を構成している。
【0167】
かくして画像表示媒体11における第1電極114を接地電極として、該電極114と各個別電極115aのそれぞれとの間に、表示データ制御部119で所望の画像表示がなされるように制御されている電極選択回路117を介して正駆動電圧発生回路118a又は負駆動電圧発生回路118bから所定の電圧を印加し、各画素ごとに所定の電場を形成することで、図3に示すように現像剤DLにおいて現像粒子が混合されている状態から図4に示すように現像粒子WP、BPがそれぞれ電場に応じて移動する。かくして所定のコントラストで画像を表示することができる。例えば図7に示すように画像表示できる。図7においてBkは黒色表示部分であり、Wは白色表示部分である。
【0168】
なお、図4に示すローラR2については後ほど説明する。
・可逆性画像表示媒体12
図8及び図9に画像表示媒体の他の例を示す。図8(A)は可逆性画像表示媒体12の画像表示前の断面図であり、図8(B)は画像表示時の1例の断面図である。図9は媒体12の一部を切り欠いて示す平面図である。
【0169】
図8及び図9に示す画像表示媒体12は、全体が矩形の媒体であり、第1シート121、第2シート122及びこれら両シート間の隔壁123を含んでいる。
【0170】
第1シート121と隔壁123とは合成樹脂基材を加熱型押し成形して一体的に形成されている。少なくとも第1シート121は透明であり、画像観察側のシートとされる。第2シート122も合成樹脂シートである。
【0171】
隔壁123は媒体12の縦方向辺と平行に延びる複数本の縦仕切り壁123aからなり、各隣り合う縦仕切り壁の間に現像剤収容セル124が提供されている。各セル124には相互に摩擦帯電した白色現像粒子WP及び黒色現像粒子BPを含む現像剤DLが収容されている。
【0172】
媒体12の周縁部において両シート121、122はヒートシールされて封止部120とされている。封止部120のうち縦仕切り壁123aの長手方向における両端部に連設されて各セルの両端部を封止している部分120aはセル124を形成する仕切り壁を兼ねている。
【0173】
各仕切り壁123aは幅α、高さhで、隣り合う縦仕切り壁123a間隔をptとして形成されている。
【0174】
各セルは密閉されており、該セルから現像剤DLが漏れ出ることはない。
【0175】
隔壁123(仕切り壁123a)は両シート121、122間を所定のギャップに維持するスペーサを兼ねている。
【0176】
既述のとおり、いずれのシート121、122も厚さ5μm〜100μmの範囲で形成することが好ましく、仕切り壁123aの高さh(換言すればシート間ギャップ)は20μm〜300μmが好ましい。また、媒体12全体の厚みは30μm〜500μmが好ましい。
【0177】
また、静電潜像を形成する第1シート121の表面抵抗率は1010Ω/□〜1016Ω/□、第2シート122の表面抵抗率は107 Ω/□以下が好ましい。
【0178】
媒体12は例えば図11に示す画像形成装置により画像表示させることができる。
【0179】
図11に示す画像形成装置は、図中矢印方向に回転駆動される感光体ドラムPCを含んでいる。この感光体ドラムPCの周囲にスコロトロン帯電器CH、レーザー画像露光装置EX、イレーサランプIRが配置してある。感光体ドラムPCの下方には回転駆動される電極ローラR1を配置してある。電極ローラR1は画像表示のための静電場を形成するための現像電極ローラである。ローラR1には電源PW1からバイアス電圧を印加できる。ローラR1はローラR1とは反対方向に回転駆動される(或いは往復回転駆動される)回転磁極ローラR2を内蔵してもよい。
【0180】
かかる感光体ドラムPC表面を帯電器CHにより帯電させた後、その帯電域に露光装置EXにより画像露光してドラムPC上に静電潜像EIを形成する。一方、電極ローラR1には電源PW1からバイアスを印加する。
【0181】
そして感光体ドラムPC上の静電潜像EIと同期をとって該ドラムと電極ローラR1との間に媒体12を送り込む。
【0182】
かくして、媒体12の各セル124に内包された現像剤DLの現像粒子BP、WPに対し画素ごとに所定の静電場が形成され、これにより該静電場と帯電現像粒子との間に働くクーロン力にて該現像粒子が移動する。そして、図8(A)に示すように現像剤DLにおいて白黒粒子WP、BPが混合されている状態から図8(B)に示すように白色粒子WP、黒色粒子BPがそれぞれ電場に応じて移動する。かくして所定のコントラストで画像を表示することができる。例えば図10に示すように画像表示できる。図10においてBkは黒色表示部分であり、Wは白色表示部分である。
【0183】
以上のように画像表示したのちは、次回のプリントに備えて、感光体ドラムPC表面の電荷をイレーサーランプIRで消去しておく。
【0184】
なお、この画像表示にあたり、磁極ローラR2を設け、これを回転させると、各セル124内の現像剤DLが攪拌されて現像粒子BP、WPが移動しやすくなり、一層良好な画像を表示できるし、駆動電圧も低くて済むようになる。
【0185】
前記の図3に示す媒体11についてもかかる回転磁極ローラR2を採用できる。
・可逆性画像表示媒体13
図12に可逆性画像表示媒体のさらに他の例の断面図を示す。図12に示す画像表示媒体13は、図8に示す媒体12の第2シート122の外面に導電性膜122Aを形成したもので、その他の点は媒体12と同じである。媒体12と同じ部分については同じ参照符号を付してある。
【0186】
この媒体13についても、例えば図11に示す画像形成装置を用いて所定のコントラストで画像表示できる。なお、電極ローラR1を用いる代わりに、第2シート122表面上の導電性膜122Aを接地してもよい。
・他の可逆性画像表示媒体
他の可逆性画像表示媒体として次のものを例示する。
a)前記の媒体11〜13において、現像剤収容セルの形状を図1(A)〜図1(I)のうちから選ばれた他の形状とした媒体、
b)前記の媒体11〜13において、現像剤収容セルに図2(A)から図2(H)のいずれかに示す現像剤移動抑制部材を設けた媒体、
c)媒体11〜13で採用した以外の現像剤収容セルを採用するとともにいずれかの現像剤移動抑制部材を採用した媒体。
【0187】
以上、図面を参照して説明した各画像表示媒体、並びに今述べた他の媒体は、画像表示、画像消去を繰り返すことができる。また現像粒子WP、BPはセルに内包されており、外部からの現像剤供給を必要としない。これらにより従来における画像表示にまつわる紙等の媒体、現像剤等の消耗品の使用を大幅に抑制することができる。また画像表示にあたり従来のようにトナーを媒体に溶着する熱エネルギーを必要としないから作像エネルギーがそれだけ少なく済む。よって今日の環境負荷低減に応えることができる。
【0188】
また、各媒体11、12、13等は、色の異なる現像粒子WP、BPを含む乾式現像剤DLを採用しているから一方の現像粒子WP(又はBP)による他方の現像粒子BP(又はWP)による隠蔽度が良好であり、それだけコントラスト良好に画像表示できる。
【0189】
また、セルに内包されている現像粒子WP、BPは互いに異なる帯電極性に帯電しており、従ってそれだけ画像表示にあたりクーロン力を受けて容易に移動できるから、この点でもコントラスト良好に画像表示でき、前回の残像も発生し難い。
【0190】
さらに、現像剤として乾式現像剤DLを採用しているので、現像粒子の沈降、凝集が起こり難く、それだけ画像表示におけるコントラストの低下が少なく、長期にわたり安定した画像表示を行える。現像粒子の沈降、凝集が起こり難いから前回表示画像の残像も生じ難い。乾式現像剤DLは経時変化が少ないからこの点でも長期にわたり安定した画像表示を行える。
【0191】
また1画素を小さくできるから、そうすることで高解像度に画像表示できる。
【0192】
これらにより、優れたコントラストで、高解像度で高品質に長期にわたり安定的に画像表示できる。
【0193】
次に可逆性画像表示媒体のさらに具体例媒体(実施例媒体)とそれを用いた画像表示について説明する。
(実施例1)
図3から図7に示すタイプの電極付き可逆性画像表示媒体であって次のように形成したもの。
【0194】
すなわち、厚さ100μmの透明PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムからなる第1シート111に、第1電極114としてITO膜をスパッタリング法により500Åの膜厚で全面に成膜する。
【0195】
次に、全面にAL蒸着層が形成されたPETフィルムを用い、フォトレジストを塗布して、露光、現像、エッチングによりパターニングした後、フォトレジスト層の剥離除去を行い、2次元配列された個別画素電極115a群を有する第2シート112を形成する。
【0196】
こうして形成した透明個別画素電極群151aは、例えば図6に示すように縦横5mmの正方形状の電極が、電極間隔0.5mmで碁盤目状に配列された配置状態にあり、それぞれの個別電極に電圧を印加できるようにリード部110が個別電極間にパターニングされている。
【0197】
この第2シート112上の個別電極以外の部分(個別電極間とそれらの周囲領域に厚膜レジストを繰り返し塗布して、高さ90μmの隔壁113を格子状に形成した(図5参照)。この格子状隔壁113の各凹部をセル116の空間としてそれらに現像剤DLを90%の高さまで入れる。現像剤DLは先に述べた現像剤の幾つかの例のうち現像剤DL(DLo)であり、白色現像粒子WP(WP3 10.1μm)と黒色現像粒子BP(BPo 25.0μm)を含んでいる。
【0198】
次に隔壁113上部にのみ光硬化性接着剤119aを薄く塗布した後、第1シート111を密着させ、紫外線照射により該接着剤を硬化させシート111を接着する。
【0199】
その後、第1及び第2シート111、112の周囲を図3等に示すようにエポキシ系接着剤119bにてシールして封止し、実施例1の可逆性画像表示媒体を得た。
【0200】
なお、この媒体11に対する比較例として、各セル空間に前記の現像液dlを気泡が入らないように充填した以外は、媒体11と同様にして比較例媒体E1も併せて形成した。
【0201】
以上説明した実施例1の媒体については、個別電極115aのうち黒く表示させたい画素に対応する電極には+100Vを、白く表示させたい画素に対応する電極には−100Vをそれぞれ印加した。このようにして表示データに応じた電圧をそれぞれ印加して、図7に例示するように所望の画像表示を行うことができた。
【0202】
比較例画像表示媒体E1(図示省略)にも実施例1の媒体と同様に+100V、−100Vの電圧を印加して画像表示させ、実施例1の媒体とともに画像コントラストの評価を行った。
【0203】
コントラストの評価は、黒色部Bk及び白色部Wの画像濃度を反射濃度計(コニカ社製:SAKURA DENSITOMETER PDA −65)を用いて測定し、その比(BK/W)により評価した。反射濃度比が10.0以上を良好(◎)、7.0以上10.0未満を許容可(○)、7.0未満を不良(×)とした。なお、コントラストの評価方法は特にことわらない限り、本明細書においていずれも同じである。
【0204】
評価結果は次のとりおであった。
・実施例1の媒体
黒色部の反射濃度(BK)は1.5、白色部の反射濃度(W)は0.1で、反射濃度比は15.0と良好(◎)であった。
・比較例媒体E1
黒色部の反射濃度は0.6、白色部の反射濃度は0.1で、反射濃度比は6.0と不良(×)であった。
(実施例2)
図8〜図10に示すタイプの電極無し可逆性画像表示媒体であって次のように形成したもの。
【0205】
透明なPETからなる基材を加熱形押し、平均厚さ25μmの第1シート121と平行な複数本の仕切り壁123aからなる隔壁123を一体的に形成した。各仕切り壁123aの幅α=20μm、高さh=100μm、隣り合う仕切り壁間隔pt=200μmである。
【0206】
各隣り合う仕切り壁123a間に提供されるセル124に現像剤DLをその空間高さの90%まで入れ、そのあと隔壁123の上部にのみ光硬化性接着剤123bを塗布した後、その上に厚さ25μmの第2シート122を密着させ、その後紫外線照射により該接着剤を硬化させた。シート121、122の周縁部はヒートシールして封止部120とした。かくして実施例2の可逆性画像表示媒体を形成した。
【0207】
現像剤DLは先に述べた現像剤DL(DLo)であり、白色現像粒子WP(WP3 10.1μm)と黒色現像粒子BP(BPo 25.0μm)を含んでいる。
(実施例3)
実施例2の媒体12において、第2シート122の外表面にアルミニウム蒸着により図12に示すように導電性膜122Aを形成したもので、その他の点は実施例2の媒体12と同じもの。
【0208】
この実施例2、3の媒体について図11に示す画像形成装置を用いて次のように画像表示した。
【0209】
チヤージャCHにより感光体ドラムPC表面を+1000Vに帯電させ、その帯電域に画像露光して静電潜像EIを形成する一方、電極ローラR1にバイアス+500Vを印加し、感光体ドラムPCと電極ローラR1との間に媒体12を通過させた。このとき、感光体ドラムPCの周速と、対向電極ローラR1の周速との比(周速比)θについてはθ=1で一定とした。
【0210】
かくして、図10に示すような画像を表示できた。
【0211】
なお、この実施例2、3の媒体に対する比較例として、実施例2の媒体の各セル空間に前記の現像液dlを気泡が入らないように充填した以外は、これら媒体と同様にして比較例媒体E2(図示省略)も併せて形成した。
【0212】
実施例2、3の媒体及び比較例媒体E2についても、図11に示す画像形成装置を用いて画像表示させ、画像コントラストの評価を行った。
【0213】
評価結果は次のとりおであった。
・実施例2の媒体
黒色部の反射濃度(Bk)は1.5、白色部の反射濃度(W)は0.1で、反射濃度比は15.0と良好(◎)であった。
・実施例3の媒体
黒色部の反射濃度(Bk)は1.6、白色部の反射濃度(W)は0.1で、反射濃度比は16.0と良好(◎)であった。
・比較例媒体E2
黒色部の反射濃度は0.6、白色部の反射濃度は0.1で、反射濃度比は6.0と不良(×)であった。
【0214】
次に画像表示媒体により提供される単位面積Soにおける非画像部の面積Snの割合Sn/Soを0.0001以上0.5以下とすること、或いは前記の(1−Sa/Sb)の値を0.0001以上0.5以下とすることが好ましいことを示す実施例媒体(実施例4〜9)及び比較例媒体E3〜E4について説明する。
(実施例4)
実施例2の媒体(仕切り壁厚さα=20μm、隣り合う仕切り壁間隔pt=200μm)において、Sn/Soが0.091である媒体。この媒体は実質上実施例2の媒体と同構造である。
【0215】
画像コントラストの評価は図11に示す画像形成装置を用い図13(A)に示すように右側2分の1が黒色部Bk、左側2分の1が白色部Wの画像を表示させて行った。画像形成にあったては、チヤージャCHにより感光体ドラムPC表面を+1000Vに帯電させ、その帯電域に画像露光して静電潜像EIを形成する一方、電極ローラR1にバイアス+500Vを印加し、感光体ドラムPCと電極ローラR1との間に媒体を通過させた。このとき、感光体ドラムPCの周速と、対向電極ローラR1の周速との比(周速比)θについてはθ=1で一定とした。
【0216】
画像コントラスト評価結果は、黒色部の反射濃度が1.65、白色部の反射濃度が0.133で、反射濃度比(Bk/W)は12.4(◎)であった。
(実施例5)
実施例2の媒体において、現像剤収容セルの形状、配列を図1(D)に示す碁盤目状とし、セルを形成する仕切り壁の厚さ(幅)αを20μm、隣り合う仕切り壁間隔ptを200μm(換言すればセル寸法を200μm×200μm)とし、Sn/Soは0.174とした媒体。その他は実施例2の媒体と同様である。
【0217】
この媒体について実施例4の媒体と同様の画像形成装置、画像形成条件で同様の画像を形成した。
【0218】
画像コントラスト評価結果は、黒色部の反射濃度が1.52、白色部の反射濃度が0.135で、反射濃度比(Bk/W)は11.2(◎)であった。
(実施例6)
実施例1の電極付き媒体(セルが碁盤目状のもの)において、セル116の空間寸法を200μm×200μmとし、セルを形成する仕切り壁を兼ねる隔壁113の厚さ(幅)を20μmとし、Sn/Soは0.174とした媒体。その他は実施例1の媒体と同様である。。
【0219】
この媒体について実施例1の媒体と同様の電場形成装置、画像形成条件で図13(A)と同様の画像を形成した。
【0220】
画像コントラスト評価結果は、黒色部の反射濃度が1.59、白色部の反射濃度が0.135で、反射濃度比(Bk/W)は11.8(◎)であった。
(実施例7)
実施例2の媒体において、図2(A)で示すと同様に縦横寸法β1×β2=60μm×10μmの現像剤移動抑制柱部材を分散立設し、且つ、媒体単位面積γ1×γ2=1000μm×800μmの中に該抑制部材が一つずつ配置されるパターンを繰り返している媒体。Sn/Soは0.0008である。その他は実施例2の媒体と同様である。
【0221】
この媒体について実施例4の媒体と同様の画像形成装置、画像形成条件で同様の画像を形成した。
【0222】
画像コントラスト評価結果は、黒色部の反射濃度が1.80、白色部の反射濃度が0.130で、反射濃度比(Bk/W)は13.8(◎)であった。
(実施例8)
実施例2の媒体において、各セルの中に、図2(F)で示すように、縦横寸法β1×β2=60μm×10μmの現像剤移動抑制柱部材をδ=1000μm間隔で立設した媒体。Sn/Soは0.101である。その他は実施例2の媒体と同様である。
【0223】
この媒体について実施例4の媒体と同様の画像形成装置、画像形成条件で同様の画像を形成した。
【0224】
画像コントラスト評価結果は、黒色部の反射濃度が1.63、白色部の反射濃度が0.133で、反射濃度比(Bk/W)は12.3(◎)であった。
(実施例9)
実施例2の媒体において、現像剤収容セルの形状、配列を図1(D)に示す碁盤目状とし、セルを形成する仕切り壁の厚さ(幅)αを50μm、隣り合う仕切り壁間隔ptを150μm(換言すればセル寸法を150μm×150μm)とし、さらに各セル内に縦横寸法β1×β2=60μm×10μmの現像剤移動抑制柱部材を一つずつ立てた媒体。Sn/Soは0.468である。その他は実施例2の媒体と同様である。
【0225】
この媒体について実施例4の媒体と同様の画像形成装置、画像形成条件で同様の画像を形成した。
【0226】
画像コントラスト評価結果は、黒色部の反射濃度が1.03、白色部の反射濃度が0.144で、反射濃度比(Bk/W)は7.2(○)であった。
(比較例媒体E3)
実施例2の媒体において、図2(H)で示すと同様に縦横寸法β1×β2=20μm×20μmの現像剤移動抑制柱部材を分散立設し、且つ、媒体単位面積γ1×γ2=5000μm×2000μmの中に該抑制部材が一つずつ配置されるパターンを繰り返している媒体。Sn/Soは0.00004である。その他は実施例2の媒体と同様である。
【0227】
この媒体について実施例4の媒体と同様の画像形成装置、画像形成条件で同様の画像を形成した。
【0228】
画像コントラスト評価結果は、黒色部の反射濃度が0.90、白色部の反射濃度が0.186で、反射濃度比(Bk/W)は4.8で不良(×)であった。
【0229】
黒べた画像部、白べた画像ともに濃度ムラのある画像となった。
(比較例媒体E4)
実施例2の媒体において仕切り壁厚さα=160μm、隣り合う仕切り壁間隔pt=140μmとし、Sn/Soを0.53とした媒体。この媒体は実質上実施例2の媒体と同構造である。
【0230】
この媒体について実施例4の媒体と同様の画像形成装置、画像形成条件で同様の画像を形成した。
【0231】
画像コントラスト評価結果は、黒色部の反射濃度が0.84、白色部の反射濃度が0.146で、反射濃度比(Bk/W)は5.8で不良(×)であった。
【0232】
仕切り壁間で形成される黒べた画像部がストライプ状にしか得られなかった。
【0233】
以上説明した実施例4〜9の媒体の構成を表1にまとめて示す。
【0234】
また、実施例4〜9の媒体並びに比較例媒体E3、E4に関する画像コントラスト評価結果を表2にまとめて示す。
【0235】
【表1】

【0236】
【表2】

【0237】
図13は非画像部面積の割合(非画像部面積/媒体単位面積)と反射濃度比との関係を示すグラフである。
【0238】
このように実施例4〜実施例8の画像表示媒体によると、画像ムラがなく、高コントラストを示す画像が得られた。実施例9の画像表示媒体では、非画像部の面積割合が高くなるため、コントラストがやや悪くなるが、実用上許容できる。
【0239】
比較例媒体E3では、非画像部の割合があまりにも少なくなるため、シート間ギャップが保持できなくなって画像ムラが生じ、黒色部の反射濃度の低下、白色部の反射濃度の増加が観察された。
【0240】
比較例媒体E4では、非画像部の割合があまりにも大きいため、十分なコントラストが得られなかった。その原因は、黒色表示において黒ベタが黒白の縞状に表示されるために反射濃度が低下する一方、白色表示において非画像領域の反射濃度が大きいために白ベタの反射濃度が増加したためである。
【0241】
次に可逆性画像表示媒体において、各シートの厚みを5μm〜100μm、両シート間のギャップを20μm〜300μm、全体の厚みを30μm〜500μmとすること、媒体の2枚のシートのうち一方のシートの外表面の表面抵抗率を1010Ω/□〜1016Ω/□、他方のシートの外表面の表面抵抗率を107 Ω/□以下とすることが好ましいことを示す実施例媒体(実施例10〜21)及び比較例媒体E5〜E12について説明する。
(実施例10〜14、比較例媒体E5〜E8)
実施例2の媒体において、各シートの厚みは25μm、シート間ギャップは100μmのままとして第1シート121の表面抵抗率及び第2シート122の表面抵抗率を種々変えた画像表示媒体。シート表面抵抗率を種々変更した以外は実施例2の媒体と同様である。
【0242】
なお、これら媒体のほか、このあと説明する実施例15〜21の媒体等についても、第1シート121の表面抵抗率はシート表面に界面活性剤を塗布することで調整した。第2シート122の表面抵抗率は第2シートに導電性カーボンを含有させ、その含有量を変化させることで調整した。また表面抵抗率は測定法ASTM D−257に準じて、65%RH環境下で測定した。
【0243】
実施例10〜14の媒体及び比較例媒体E5〜E8を表3にまとめて示す。
(実施例15)
実施例3の媒体(第2シートにAl蒸着膜を有する媒体)において、第1シート121の表面抵抗率を1.20×1015Ω/□とし、第2シート122の表面抵抗率を8.50×10-1Ω/□とした媒体。その他は実施例3の媒体と同様である。
(実施例16〜21、比較例媒体E9〜E12)
実施例15の媒体において、各シートの表面抵抗率はそのままとして各シートの厚み、シート間ギャップを種々変化させた媒体。その他は実施例15の媒体と同様である。
【0244】
実施例16〜21の媒体及び比較例媒体E9〜E12を表3にまとめて示す。
【0245】
【表3】

【0246】
前記実施例媒体(実施例10〜21)及び比較例媒体E5〜E12のそれぞれにつき、図16(A)及び図16(B)に示す画像形成装置を用いて図13に示すような画像を形成し、画像コントラストについて評価した。なお、図16に示す画像形成装置は、イオンフロー型の直接静電潜像形成装置を利用した画像形成装置である。これについては後ほど説明する。
【0247】
評価は、ここでは、黒色部、白色部のいずれについても、最大反射濃度、最小反射濃度を測定し、これらに基づいて黒色部Bk、白色部Wの各平均反射濃度を求め、これら平均反射濃度から反射濃度比を求めることで行った。この場合も反射濃度比が10.0以上を良(○)、10.0より小さいときを不良(×)とした。
【0248】
また、画像ムラについても評価した。画像ムラ評価は黒色部の画像濃度を反射濃度計(コニカ社製:SAKURA DENSITOMETER PDA −65)を用いて測定し、画像濃度の最大値と最小値との差を求め、画像濃度差が0.2以下を良(○)、それより大きいときを不良(×)として行った。
【0249】
これらの評価結果を表4にまとめて示す。なお、表4にはコントラスト不良のものについても不良マークを記してある。
【0250】
【表4】

【0251】
この評価結果から、各シートの厚みを5μm〜100μm、両シート間のギャップを20μm〜300μm、全体の厚みを30μm〜500μmとすること、媒体の2枚のシートのうち一方のシートの外表面の表面抵抗率を1010Ω/□〜1016Ω/□、他方のシートの外表面の表面抵抗率を107 Ω/□以下とすることが好ましいことが分かる。
【0252】
さて、図16(A)及び図16(B)に示す画像形成装置は、図14や図15に原理を示す画像形成装置を発展させたものである。
【0253】
図14に示す画像形成装置は、図12の媒体13のように、一方のシートが導電性膜を備えた電極無しのタイプの画像表示媒体に適している。
【0254】
図14の画像形成装置は、イオンフロー型の直接静電潜像形成装置CR1を備えている。装置CR1は、コロナイオンを発生させるコロナイオン発生部c1と、該発生部で発生するコロナイオンをシート121表面へ導くための書き込み電極e1と、正又は負のコロナイオンを表示しようとする画像に応じてシート121表面の画素対応部分へ導くための電圧を書き込み電極e1へ印加する書き込み電極制御回路f1とを含んでいる。電極制御回路f1には、図示を省略した制御電源及びバイアス電源が含まれる。
【0255】
コロナイオン発生部c1はシールドケースc11内に、それには限定されないが、例えば60〜120μm径の金メッキタングステン線を張設してコロナワイヤc12とし、このワイヤに電源Pc1から正極性又は負極性の電圧(例えば4kV〜10kV)を印加してコロナイオンを発生させるものである。
【0256】
書き込み電極e1は、媒体(例えば媒体13)の第1シート121に向けられたシールドケースc11の部分に臨設されており、中央に設けられた透孔をコロナイオン流が通過できる。
【0257】
電極制御回路f1は媒体13へ向け導出しようとするイオンの正、負に応じたイオン引出し電圧を電極e1に印加できる。
【0258】
かくして媒体13をその第2シート122を接地電位として(或いは潜像極性と同極性で且つ潜像電位より小さい値のバイアス電圧を印加して)装置CR1に対し相対的に移動させつつ、表示しようとする画像に応じて、シート121表面の画素対応部分へ正又は負のコロナイオンを導き、これにより第1シート121表面に静電潜像電荷を付与し、これと同時的に静電場を形成して媒体13における各セル内の現像粒子を移動させて画像表示させることができる。
【0259】
図15の画像形成装置は、図8等に示す媒体12のように、一方のシートに導電性膜を備えない、電極無しのタイプの画像表示媒体に適している。図15の画像形成装置は、静電潜像を形成する側のシート121とは反対側のシート122に接触する電極Eaを有している。図14の場合と同様に電極Eaにはバイアス電圧を印加してもよい。それ以外の点は図14の装置と同様である。
【0260】
前記評価実験に用いた図16(A)及び図16(B)の画像形成装置は、イオンフロー型の直接静電潜像形成装置CR2を含んでいる。装置CR2は、コロナイオンを発生させるコロナイオン発生部c2と、該発生部で発生するコロナイオンをシート121表面へ導くための書き込み電極e2と、正(又は負)のコロナイオンを表示しようとする画像に応じてシート121表面の画素対応部分へ導くための電圧を書き込み電極e2へ印加する書き込み電極制御回路f2とを含んでいる。
【0261】
コロナイオン発生部c2はシールドケースc21内に図14に示す装置CR1におけると同様のコロナワイヤc22を張設し、このワイヤに電源Pc2からプラス(又はマイナス)の電圧を印加してコロナイオンを発生させるものである。
【0262】
書き込み電極e2は、媒体12、13のタイプの媒体(図には媒体12を代表例として示す)の第1シート121に向けられたシールドケースc21の部分に臨設されており、上部電極e21と下部電極e22とからなり、それらの中央の透孔をコロナイオン流が通過できる。
【0263】
電極制御回路f2は、制御電源Pc21、バイアス電源Pc22及び制御部f21を含んでおり、制御部f21は、媒体12へ向け導出しようとするイオンの極性に応じたイオン引出し電圧を電極e21、e22に印加できる。
【0264】
ここでは制御部f21の指示のもとに、上部電極e21に正電圧を、下部電極e21に負電圧を印加すると、正コロナイオンを媒体へ導くことができる(図16(A))。上部電極e21に負電圧を、下部電極e21に正電圧を印加すると、正コロナイオンを閉じ込めておくことができる(図16(B))。
【0265】
また書き込み電極e2に対向させて電極ローラR1を設け、これに電源PW1からここでは正のバイアス電圧を印加する。ローラR1は回転駆動される磁極ローラR2を内蔵している。
【0266】
かくして媒体12を装置CR2に対し相対的に移動させつつ、且つ、電極ローラR1を媒体送り方向に、磁極ローラR2を反対方向に回転させつつ、表示しようとする画像に応じて、制御部f21の指示のもとに、第1シート121表面の複数の画素対応部分のうち表示しようとする画像に応じた所定の画素対応部分については図16(A)に示すように正コロナイオンを導き、他の画素については図16(B)に示すようにイオンの流出を阻止する。
【0267】
前記画像評価実験では、第1シート121表面の複数の画素対応部分のうち表示しようとする画像に応じた所定の画素対応部分に正コロナイオンを導き、その部分を+500V〜+600Vに帯電させ、他の画素についてはバイアス電圧+250Vだけを印加した。これにより正コロナイオンが乗った部分は負帯電性の白色現像粒子WPにより白く表示され、正コロナイオンが乗らなかった部分は正帯電性の黒色現像粒子BPにより黒く表示され、かくして画像表示がなされた。
【0268】
なお、装置CR1やCR2における放電ワイヤc12、c22は固体放電素子に代えることもできる。
【0269】
また図14から図16に示す静電潜像形成装置CR1、CR2は放電現象を利用したものであるが、これら装置の他、各種放電型静電潜像形成装置を利用できる。
【0270】
また図14から図16に示す画像形成装置に代えて図17や図18に示す画像形成装置を採用しても画像表示できる。
【0271】
図17の画像形成装置は、マルチスタイラス方式の直接静電潜像形成装置CR3を備えている。装置CR3は、例えば媒体13に対する主走査方向に配列されて第1シート121に近接配置される複数の電極e3を有するマルチスタイラスヘッドH3を含んでいる。各電極e3に表示しようとする画像に応じて第1シート121表面の画素対応部分に静電潜像電荷を付与すべく信号電圧が印加される。媒体13は、反対側の第2シート122に例えばバイアスを印加して、該ヘッドH3に対し相対的に搬送され、これにより画像表示される。
【0272】
図18に示す画像形成装置は電荷注入型の直接静電潜像形成装置CR4を含んでいる。装置CR4は媒体に対する主走査方向に複数の記録電極e4を配列するとともに記録電極e4に隣り合わせて隣接制御電極e41を配列した静電記録ヘッドH4を有するマルチスタイラス型装置である。このヘッドを例えば媒体13に近接配置し、ヘッドH4の制御電極e41に画像記録に必要な電圧(記録電圧)の約1/2の電圧を順次シーケンシヤルに印加し、記録電極e4に記録電圧の約1/2の画信号電圧を印加することにより、記録電極直下に位置する媒体に静電潜像を形成することができる。
【0273】
ここで潜像形成を行うことが有利であることを、図11に示すような外部静電潜像形成装置を備えた画像形成装置を例にとって説明する。
【0274】
該装置の等価回路を図19(A)から(D)に示す。これら図において、感光体ドラムのような静電潜像担持体、画像表示媒体及びその間の空気層の静電容量をそれぞれC1、C2、C0とする。
【0275】
静電潜像担持体(以下「像担持体」という)は帯電チャージャ、画像露光装置によって潜像電荷Q(その時の電位V)が印加されているとする。
【0276】
図19(A)は像担持体と画像表示媒体とが離間している状態の等価回路を示し、C1、C2がC0に比べてて非常に大きいため、電荷Qは移動せず、媒体は静電潜像の影響を受けない。
【0277】
この状態から、像担持体と媒体が接近すると、C0が大きくなり、C1及びC2に充電されていた電荷が静電誘導によって誘起されて、図19(B)の状態となる。図19(B)は像担持体を画像表示媒体に近接させて静電誘導させた状態の等価回路である。
【0278】
図19(B)の状態で、誘起電荷によって、像担持体、媒体、空気層に誘起される電位差V1、V2、V0は以下の式(1)、式(2)、式(3)のように表せる。
【0279】
【数1】

【0280】
【数2】

【0281】
【数3】

【0282】
ここでVは像担持体の潜像表面電位、Vbはバイアス値である。
【0283】
媒体には現像剤が内包されている。電界下において現像剤粒子が電荷を搬送するため、現像剤層は見かけ上、導電層に近似する。つまり、媒体の静電容量C2は、上下2枚の樹脂シートの合成容量と近似する。
【0284】
ここで、像担持体の潜像電荷が媒体に転写するためには、空気層が絶縁破壊を起こし、電荷移動する必要がある。もし、絶縁破壊が発生しなければ、像担持体と媒体が離間すると、再び図19(A)の状態に戻り、潜像転写は行われない。
【0285】
つまり、例えばV0が小さい場合は、誘導による静電界で粒子の移動が発生するが、潜像が転写されない。
【0286】
例えばギャップ10μmの空気層が絶縁破壊を発生するためには、パッシェン則よりV0は約370V以上必要である。
【0287】
ここでバイアス値Vb=一1000Vに設定し、V=1000V、各々の静電容量の比をC1:C2:C0=18:5:12とした場合、V0(空気層の電位差)=480Vとなり、絶縁破壊が発生して潜像が転写される。
(但し、像担持体は通常の有機系感光体、媒体は前記構成の合成容量、空気層は絶縁破壊が生じやすい間隙約10μmを想定し、各々の静電容量の比を考えている。)
このように、V−Vbが約1500V以上の条件において、潜像が転写されることとなる。逆にこの条件以外では、像担持体と媒体が近接している状態で静電誘導はされるが、潜像転写しないこととなる。
【0288】
像担持体上の静電潜像において、帯電部(1)は媒体との間で電荷移動が発生し、非帯電部(露光部)(2)では電荷移動が発生しない。このため、媒体上の表面電位に差が生じる。帯電部(1)の電荷移動が行われた後の媒体の表面電位は次の式(4)で、非帯電部(2)のそれは前式(3)で表される。
【0289】
図19(C)は絶縁破壊により電荷移動が生じた状態の等価回路を示しているるが、このように絶縁破壊により電荷移動が生じた状態では次式(4)が成立する。
【0290】
【数4】

【0291】
式(4)においてV’0は放電可能な最小電位差、V1、V2は前式(2)、(3)である。
【0292】
例えば、前記設定条件において、媒体上の表面電位は、帯電部に相当する領域(1)は約+265V、非帯電部に相当する領域(2)は約−340Vとなる。
【0293】
ここで、対向電極ローラに任意のバイアス(あるいは接地)を印加すると、帯電部(1)及び非帯電部(2)の領域は互いに逆向きの電界が形成され、現像粒子がその電界に沿って移動して画像を形成することができる。
【0294】
その後、像担持体と媒体が離間すると、誘導電荷に移動が生じて、媒体の表面電位は変化する。(1)部は約+275Vに、(2)部は略0Vに復帰し、媒体に潜像を形成することができる。
【0295】
以上は静電潜像担持体が感光体ドラム(光導電体)である場合を説明したが、誘電体ドラムを用いてもよい。静電潜像の極性は負極性でもよい。現像粒子の帯電極性は逆でもよい。
【0296】
このように媒体に潜像を近接させるだけでなく、静電潜像を転写、直接形成等にて媒体上に形成することによって、静電潜像担持体と対向電極の対向領域を通過後も、現像剤粒子と可逆性画像表示媒体に静電的吸着力が発生するため、画像保持性が良好となることがわかる。要するに静電潜像を媒体上に形成することが有利である。特に流動性の高い現像剤や、画像表示に先立って現像剤攪拌処理により流動性が高められる現像剤を用いる場合に画像保持の点で有利である。
【0297】
次に現像剤に含まれる現像粒子の粒径は非導電性現像粒子については体積平均粒径1μm〜50μmが、磁性現像粒子については体積平均粒径1μm〜100μmが好ましいことを示す実施例媒体(実施例22〜30)及び比較例媒体E13〜E28について説明する。
【0298】
これら媒体はいずれも、実施例2の媒体において、隔壁123の高さhを150μmに、隣り合う仕切り壁123aの間隔ptを250μmに変更し、各セル124に内包する現像粒子を種々変えた以外は実施例2の媒体と同じ構造の媒体である。
【0299】
これらについても画像コントラストの評価を行った。そのとき、図11に示す画像形成装置を用いて図13(A)に示すように右側半分が黒色部(Bk)、左側半分が白色部(W)の画像を形成して評価した。
【0300】
なおここでのコントラスト評価は、反射濃度比(Bk/W)が9.0以上を非常に良好(◎)、9.0より小さく7.0以上を良好(○)、7.0より小さく5.0以上をやや不良(△)、5.0より小さいものを不良(×)とした。
【0301】
これら各媒体及び評価結果を表5にまとめて示す。表5においてWP1〜WP5、BP1〜BP5はそれぞれ既述の粒径を有する非導電性の白色現像粒子、磁性の黒色現像粒子である。実施例22〜30では既述の現像剤DL1〜DL9を、比較例E13〜E28では既述の比較例現像剤De1〜De16を採用した。
【0302】
また表5の実施例、比較例を示す各枡目中、右側の上段はコントラスト評価結果を、中段は反射画像濃度比を、下段は黒色画像部の反射濃度、その左側は白色画像部の反射濃度を示している。
【0303】
【表5】

【0304】
表5から分かるように、現像剤に含まれる現像粒子の粒径は非導電性現像粒子(ここでは白色粒子)については体積平均粒径1μm〜50μmが、磁性現像粒子(ここでは黒色粒子)については体積平均粒径1μm〜100μmが好ましいと言える。
【0305】
次に画像表示前に画像消去処理を施す画像表示方法について説明する。この画像表示方法の実施にあたっては前記実施例2の画像表示媒体(ここでは媒体12と記す)を採用した。
【0306】
図20から図22のそれぞれはこの画像表示方法を実施する画像形成装置例を示している。特に画像消去装置を備えた画像形成装置を示している。
【0307】
図20の画像形成装置は、図11の画像形成装置(但し回転磁極ローラR2を備えていないもの)において、感光体ドラムPCと電極ローラR1との対向領域よりも、媒体12の相対的搬送方向(図中直線矢印方向)において上流側に画像消去装置EL1を配置したものである。
【0308】
画像消去装置EL1は、上下一対の電極ローラR3、R4を含んでいる。上側電極ローラR3はバイアス電源PW3に接続される。電極ローラR3は接地してもよい。下側電極ローラR4はバイアス電源PW4に接続される。電極ローラR4は接地してもよい。
【0309】
この画像形成装置によると、画像表示に先立って画像消去装置EL1の電極ローラR3、R4にそれぞれ印加されるバイアスの電位差に応じた電界が媒体12に対し形成され、これにより異なる帯電極性の現像粒子BP、WPのうち一方の粒子BPが一方のシート側に、他方の粒子WPが他方のシート側に寄り集まり、これにより画像が消去される。媒体12はかかる画像消去処理後に感光体ドラムPCと対向電極ローラR1との間に送りこまれ、新たな画像が表示される。
【0310】
図20の装置を用いて次の条件で画像消去、画像形成の実験を行ってみた。
【0311】
すなわち、感光体ドラムPC上の静電潜像の帯電部電位を−800V、非帯電部(露光部)電位を−100Vとし、対向電極ローラR1に印加するバイアスを−100Vとした。消去装置EL1においては、電極ローラR4を接地し、電極ローラR3への印加バイアスを+1000Vとした。電極ローラR3、R4間を通過する際の電界で、現像剤はクーロンカを受ける。この場合、白色粒子WPは負極性、黒色粒子BPは正極性に帯電しているため、白色粒子は図中上側に、黒色粒子は図中下側に移動し、以前に表示された画像は全面にわたって消去される。このとき、媒体12を図中上側から見ると、全面白色となっていた。
【0312】
その後全面画像消去された媒体12は、感光体ドラムPCと電極ローラR1が対向する領域で、静電潜像に応じて電界が形成され、現像剤DLはクーロンカを受ける。感光体ドラムPC上の帯電部は、電極ローラR1のバイアスとの電位差によって、700Vの図中上向きの電界が形成され、白色粒子が下向きに移動し、非帯電部は電位差がないため粒子が移動せず、白色粒子は上面に存在したままであった。このようにして形成された画像は、図中上側から見ると、帯電部相当領域は黒色部、非帯電部相当領域は白色部となった。
【0313】
このように、帯電部に応じた現像粒子を移動させるだけで画像形成でき、このため現像粒子を移動させるための電界強度を大きくすることができる。
【0314】
また以下の条件でも実験した。すなわち、感光体ドラムPCの帯電部電位を−800V、非帯電部(露光部)電位を−100V、対向電極口一ラR1に印加するバイアスを−800Vとした。また消去装置EL1においては、電極ローラR4のバイアスを+1000V、電極ローラR3は接地状態とした。
【0315】
この場合、媒体12が電極ローラR4、R3間を通過した後、白色粒子は図中下側に、黒色粒子は図中上側に移動し、以前に表示された画像は全面にわたって消去された。このとき、媒体12を図中上側から見ると、全面黒部となっていた。
【0316】
その後感光体ドラムPCの非帯電部について、対向電極ローラR1のバイアスとの電位差によって、700Vの図中下向きの電界が形成され、白色粒子が上向きに移動し、帯電部は電位差がないため粒子が移動せず、白色粒子は下側に存在したままであった。このようにして形成された画像は、図中上側から見ると、帯電部応じた領域は黒色部、非帯電部に応じた領域は白色部となった。
【0317】
図21の画像形成装置は、図14に示すイオンフロー型の静電潜像形成装置CR1に対し電極ローラR1を対向させ、これらの対向領域の上流側に図20に示すと同じ画像消去装置EL1を設けたものである。
【0318】
図22に示す画像形成装置は図20に示す画像形成装置において、消去装置EL1における下側電極ローラR4に回転磁極ローラR2を内蔵したものである。その他の点は図20の装置と同様である。回転磁極ローラR2は一方向に回転駆動、或いは往復回転駆動され、振動磁場を媒体12に対し形成する。これにより黒色の磁性現像粒子BPに影響して現像剤DLを攪拌する。この現像剤攪拌により、現像粒子の摩擦帯電量が増し、画像表示におけるクーロン力による移動速度が高まるとともに、現像粒子の流動性が向上し、現像粒子の移動効率が高まる。
【0319】
画像消去装置は図15〜図18に示す画像形成装置等にも適用できる。
【0320】
次に画像表示にあたり、現像剤を攪拌する画像表示方法について説明する。この画像表示方法の実施にあたっても前記実施例2の画像表示媒体(ここでは媒体12と記す)を採用した。
【0321】
図23から図29のそれぞれはこの画像表示方法を実施する画像形成装置例を示している。特に現像剤の攪拌装置を備えた画像形成装置を示している。図4に示す画像形成装置において回転磁極ローラR2を設けたり、図11に示す画像形成装置において感光体ドラムPCに対向する現像電極ローラR1に回転磁極ローラR2を内蔵させたりして、該磁極ローラR2を一方向に回転駆動したり、往復回転駆動する場合も、該磁極ローラR2は現像剤攪拌装置として機能する。
【0322】
先ず図11に示す画像形成装置を用いて現像剤の攪拌、画像表示を行った実験例について説明する。
【0323】
感光体ドラムPCの帯電部電位を+500V、非帯電部(露光部)電位を+100V、現像電極ローラR1に印加するバイアスを+300Vとした。また電極ローラR1内部の磁極ローラR2を、最大磁束密度400ガウス、磁極数8、回転速度約100rpm、図中左方向(反時計回り)に回転させた。
【0324】
このような条件下で、帯電部位に対応する白色粒子WPは電界の向きに逆らって図中上向きに、黒色粒子BPは電界の向きに沿って図中下向きに力を受けると同時に、黒色粒子BPが振動磁場によって撹乱されるため、現像粒子は効率よく移動した。
【0325】
図23の画像形成装置は、図14に示す画像形成装置においてイオンフロー型の静電潜像形成装置CR1に対向させて現像電極ローラR1を配置するとともに該ローラ内に回転磁極ローラR2を内蔵したものである。
【0326】
この装置において次の条件で現像剤攪拌及び画像表示の実験を行った。すなわち、媒体12の帯電部電位を+500V、非帯電部(露光部)電位を約0V、電極ローラR1に印加するバイアスを+300Vとした。磁極ローラR2は、最大磁束密度400ガウス、磁極数8、回転速度約100rpm、図中左方向(反時計回り)に回転させた。
【0327】
このような条件下で、帯電部位に対応する白色粒子WPは電界の向きに逆らって図中上向きに、黒色粒子BPは電界の向きに沿って図中下向きに力を受けると同時に、黒色粒子BPが振動磁場によって攪拌されるため、現像粒子が効率よく移動した。
【0328】
以上説明した画像形成装置は、ひろく捉えれば、画像表示工程において形成する静電場を、前記可逆性画像表示媒体の2枚のシートのうちいずれかの外表面に表示しようとする画像に対応した静電潜像を形成して該静電潜像に基づいて該静電潜像形成と同時的に形成し、さらに該静電場形成と同時的に前記現像剤の攪拌を行う例である。
【0329】
次に説明する図24、図25のそれぞれに示す画像形成装置は、広く捉えれば、画像表示工程において形成する静電場を、可逆性画像表示媒体の2枚のシートのうちいずれかの外表面に表示しようとする画像に対応した静電潜像を形成した後に該静電潜像に基づいて形成し、現像剤の攪拌を静電潜像を形成した後、前記静電場形成と同時的に行うものである。
【0330】
図24の画像形成装置は、図11の画像形成装置において現像電極ローラR1のあった位置に静電潜像転写のための転写電極ローラR5を配置し、感光体ドラムPCと転写電極ローラR5との対向領域より下流側に静電場形成のための現像電極ローラR1とそれに内蔵された回転磁極ローラR2を配置したものである。
【0331】
転写電極ローラR5にはバイアス電源PW5が、電極ローラR1にバイアス電源PW1が接続されている。
【0332】
図25の画像形成装置は、図23の画像形成装置において現像電極ローラR1のあった位置に静電潜像転写のための対向電極ローラR5を配置し、静電潜像形成装置CR1と対向電極ローラR5との対向領域より下流側に静電場形成のための現像電極ローラR1とそれに内蔵された回転磁極ローラR2を配置したものである。
【0333】
対向電極ローラR5にはバイアス電源PW5が、電極ローラR1にバイアス電源PW1が接続されている。
【0334】
図24、図25の画像形成装置によると、感光体ドラムPC又は静電潜像形成装置CR1と転写(対向)電極ローラR5とが対向する領域で媒体12に静電潜像が形成されたのち、該媒体が現像電極ローラR1に接触することで、静電潜像に応じて画素ごとの静電場が形成され、これにより画像が表示される。そしてこのとき、磁極ローラR2が一方向に回転駆動されるか、又は往復回転駆動されることで振動磁場が発生し、この磁場の影響により現像粒子が攪拌されながら画像表示される。現像粒子の攪拌により現像粒子の帯電量が増すとともに、現像粒子の流動性が向上する。これらにより円滑、良好に画像表示される。
【0335】
なお、磁極ローラR2は電極ローラR1、R5間に配置してもよい。
【0336】
次に説明する図26、図27に示す画像形成装置は、広く捉えれば、画像表示工程において形成する静電場を、可逆性画像表示媒体の2枚のシートのうちいずれかの外表面に表示しようとする画像に対応した静電潜像を形成して該静電潜像に基づいて該静電潜像形成と同時的に又は該静電潜像形成後に形成し、現像剤の攪拌を静電潜像形成前に行う例である。
【0337】
図26の画像形成装置は、図11の画像形成装置において電極ローラR1には磁極ローラを内蔵せず、感光体ドラムPCと電極ローラR1との対向領域より上流側に回転磁極ローラR2を配置したものである。磁極ローラR2は一方向に回転駆動されるか、又は往復回転駆動され、これにより現像剤を攪拌する振動磁場が形成される。
【0338】
電極ローラR1にはバイアス電源PW1が接続されている。
【0339】
この画像形成装置において、感光体ドラムPCの帯電部電位を+500V、非帯電部(露光部)電位を+100V、現像電極ローラR1に印加するバイアスを+300Vとすると、帯電部に対応する白色粒子は電界の向きに逆らって図中上向きに、黒色粒子は電界の向きに沿って図中下向きに移動した。現像粒子は予め攪拌されているため帯電量が高められるとともに流動性が向上しており、効率よく移動した。
【0340】
図27の画像形成装置は、図24の画像形成装置において、感光体ドラムPCと電極ローラR5との対向領域より上流側に回転磁極ローラR2を配置したものである。磁極ローラR2は一方向に回転駆動されるか、又は往復回転駆動され、これにより現像剤を攪拌する振動磁場が形成される。
【0341】
図28に示す画像形成装置は、磁性現像粒子BPが一つの磁極ローラR2による磁場のために現像剤収容セル中でいずれかへ偏るおそれがあるときに備えた画像形成装置である。この装置は、ひろく捉えれば、振動磁場を形成する現像剤攪拌装置を媒体搬送方向に沿って順次複数(ここでは2個)設けたものである。
【0342】
図28に示す例では、図11に示す画像形成装置において回転磁極ローラR2を内蔵した現像磁極ローラR1を二つ、感光体ドラムPCに対向配置したものである。ローラR1、R1には電源PW1、PW’が接続されている。二つの回転磁極ローラR2は互いに反対方向に回転駆動される。これにより磁性現像粒子(ここでは黒色粒子BP)のセル内での偏りを抑制できる。
【0343】
図29に示す画像形成装置は、図24に示す画像形成装置において現像電極ローラR1及び磁極ローラR2に代えて、N極、S極を交互に設けた磁石部材Mgを感光体ドラムPCの下流側に、到来する媒体12に接触するように配置し、且つ、該部材Mgに現像バイアス電源PW1”を接続したものである。
【0344】
媒体12が部材Mgに対し相対的に移動することで媒体12に対し振動磁場が形成される。
【0345】
次に画像表示にあたり、画像表示媒体の表面(シート表面)に静電潜像を形成し、該静電潜像形成前に媒体表面を所定電位に一様に帯電させ、その帯電域に静電潜像を形成する画像表示方法について説明する。この画像表示方法の実施にあたっても前記実施例2の画像表示媒体(ここでは媒体12と記す)を採用した。
【0346】
図30、図31のそれぞれはこの画像表示方法を実施する画像形成装置例を示している。特に静電潜像形成前に媒体表面を所定電位に一様に帯電させる帯電装置を備えた画像形成装置を示している。
【0347】
図30に示す画像形成装置は、図11に示す画像形成装置において現像電極ローラR1に磁極ローラR2を内蔵せず、感光体ドラムPCと電極ローラR1との対向領域より上流側に予備帯電装置2を備えたものである。帯電装置2は搬送される媒体12の静電潜像形成側の表面に対向するチャージャ21と媒体通路を挟んでこれに対向する接地電極22とからなっている。なお、電極ローラR1は場合によっては接地してもよい。
【0348】
図31の画像形成装置は、図21の画像形成装置において、静電潜像形成装置CR1の上流側の画像消去装置EL1に代えて前記と同じ予備帯電装置2を備えたものである。なお、電極ローラR1は場合によっては接地してもよい。
【0349】
これらの画像形成装置では、媒体12の表面が画像表示に先立って予備帯電装置により予め一様に帯電される。その後、図30の例では該帯電域に感光体ドラムPC上に形成された静電潜像が転写、書き込みされる。図31の例では静電潜像形成装置CR1により静電潜像が書き込まれる。いずれの例も予め一様に帯電された領域と、後に静電潜像が書き込まれた領域は互いに逆極性である。電極ローラR1のバイアスを接地、或いは適当に電位設定することで、静電潜像が書き込まれた領域とそうでない領域とで電界の向きが異なり、これにより現像粒子を移動させて画像を形成することができる。
【0350】
図30に示す例では、媒体12の表面を後に形成される静電潜像の極性とは逆極性に一様に帯電させることで、媒体12内部での絶縁破壊を防止でき、且つ、媒体12に潜像を確実に転写できる。このように静電潜像が確実に転写されるので、画像保持性が良好となる。
【0351】
図31に示す例では、静電潜像形成時に、画像部と非画像部の電位差を大きくすることができる。例えば、帯電装置2による予備帯電による負極性の一様帯電部を−1000V、静電潜像書き込みによる正極性帯電部を+1000Vとし、電極ローラR1のバイアスを接地とすることで、画像部と非画像部は各々1000Vの電位差が生じ、これにより現像粒子を駆動することができる。このように現像粒子駆動電界を大きくすることができ、現像粒子の移動速度を高めることができる。
【0352】
なお、予め一様に帯電された領域と、後に静電潜像が書き込まれた領域は同極性でもかまわない。この場合には、電極ローラR1のバイアスを静電潜像が書き込まれた領域とそうでない領域との中間電位に設定することで、両領域で電界の向きが異なり、画像を形成することができる。
【0353】
また、後に静電潜像が書き込まれた領域は0Vでもかまわない。この場合も、電極ローラR1のバイアスを静電潜像が書き込まれた領域とそうでない領域との中間電位に設定することで、両領域で電界の向きが異なり、画像を形成することができる。
【0354】
かくして媒体12は、感光体ドラムPC或いは静電潜像形成装置CR1と電極ローラR1との対向領域を通過後も、現像剤粒子と媒体のシート間に静電的吸着力が発生するため、画像保持性が良好となる。
【0355】
なお、形成する静電潜像の極性は負極性であってもよい。
【0356】
また白黒の現像粒子の帯電極性は逆であってもよい。
【0357】
また静電潜像形成装置は図30、図31に示すものに限定されず、先に説明した他の静電潜像形成装置も採用できる。
【0358】
ここで、媒体表面への静電潜像形成前に媒体表面を一様に帯電させ、その帯電域に静電潜像を形成することが有利であることを、図11に示すような外部静電潜像形成装置を備えた画像形成装置を例にとって説明する。
【0359】
該装置の等価回路を図32(A)から(E)に示す。これら図において、感光体ドラムのような静電潜像担持体、画像表示媒体及びその間の空気層の静電容量をそれぞれC1、C2、C0とする。
【0360】
静電潜像担持体(以下「像担持体」という)には帯電チャージャ、画像露光装置によって潜像電荷Q(その時の電位V)が、媒体には予備帯電装置によって予め電荷Q’(そのときの電位V’)が印加されているとする。
【0361】
図32(A)は像担持体と画像表示媒体とが離間している状態の等価回路を示し、C1、C2がC0に比べてて非常に大きいため、電荷Qは移動せず、媒体は静電潜像の影響を受けない。
【0362】
この状態から、像担持体と媒体が接近すると、C0が大きくなり、C1及びC2に充電されていた電荷が静電誘導によって誘起されて、図32(B)の状態となる。図32(B)は像担持体を画像表示媒体に近接させて静電誘導させた状態の等価回路である。
【0363】
図32(B)の状態で、誘起電荷によって、像担持体、媒体、空気層に誘起される電位差V1、V2、V0は以下の式(5)、式(6)、式(7)のように表せる。ここではバイアスを印加しないで、接地した場合を考える。
【0364】
【数5】

【0365】
【数6】

【0366】
【数7】

【0367】
ここでVは像担持体の潜像表面電位、V’は媒体の表面電位である。
【0368】
媒体には現像剤が内包されている。電界下において現像剤粒子が電荷を搬送するため、現像剤層は見かけ上、導電層に近似する。つまり、媒体の静電容量C2は、上下2枚の樹脂シートの合成容量と近似する。
【0369】
ここで、像担持体の潜像電荷が媒体に転写するためには、空気層が絶縁破壊を起こし、電荷移動する必要がある。もし、絶縁破壊が発生しなければ、像担持体と媒体が離間すると、再び図32(A)の状態に戻り、潜像転写は行われない。
【0370】
つまり、例えばV0が小さい場合は、誘導による静電界で粒子の移動が発生するが、潜像が転写されない。
【0371】
例えばギャップ10μmの空気層が絶縁破壊を発生するためには、パッシェン則よりV0は約370V以上必要である。
【0372】
ここでV=1000V、V’=−1000V、各々の静電容量の比をC1:C2:C0=18:5:12とした場合、V0(空気層の電位差)=480Vとなり、絶縁破壊が発生して潜像が転写される。また媒体にかかる電位差は約200Vで、媒体内部での絶縁破壊は防止できる。(但し、像担持体は通常の有機系感光体、媒体は前記構成の合成容量、空気層は絶縁破壊が生じやすい間隙約10μmを想定し、各々の静電容量の比を考えている。)
像担持体上の静電潜像において、帯電部(1)は媒体との間で電荷移動が発生し、非帯電部(露光部)(2)では電荷移動が発生しない。このため、媒体上の表面電位に差が生じる。帯電部(1)の電荷移動が行われた後の媒体の表面電位は次の式(8)で、非帯電部(2)のそれは前式(7)で表される。
【0373】
図32(C)は絶縁破壊により電荷移動が生じた状態の等価回路を示しているるが、このように絶縁破壊により電荷移動が生じた状態では次式(8)が成立する。
【0374】
【数8】

【0375】
式(8)においてv0は放電可能な最小電位差、V1、V2は前式(6)、(7)である。
【0376】
例えば、前記設定条件において、媒体上の表面電位は、帯電部に相当する領域(1)は約+260V、非帯電部に相当する領域(2)は約−340Vとなる。
【0377】
ここで、対向電極ローラを接地すると、帯電部(1)及び非帯電部(2)の領域には互いに逆向きの電界が形成され、現像粒子がその電界に沿って移動して画像を形成することができる。
【0378】
その後、像担持体と媒体が離間すると、誘導電荷に移動が生じて、媒体の表面電位は変化する。(1)部は約−720Vに、(2)部は約−1000Vに復帰し、媒体に潜像を形成することができる(図32(D)参照)。
【0379】
以上は対向電極ローラR1を接地状態にして説明したが、該ローラに適当なバイアスを印加することもできる。この場合はV’をV’+Vbに置き換えて考えればよい。図32(E)はこの場合の等価回路を示している。
【0380】
また、静電潜像担持体が感光体ドラム(光導電体)である場合を説明したが、誘電体ドラムを用いてもよい。静電潜像の極性は負極性でもよい。現像粒子の帯電極性は逆でもよい。
【0381】
このように静電潜像担持体と媒体との間で絶縁破壊を発生させて潜像を転写する前に、予め媒体表面を所定電位に一様に帯電させることで、媒体内部の電位差を抑制することができ、これにより画像保持性が良好となる。
【0382】
次に可逆性画像表示媒体のさらに他の例について図33、図34を参照して説明する。
【0383】
図33に示す可逆性画像表示媒体14は電気泳動型の媒体例である。
【0384】
この媒体14は、透明支持基板146に支持された電界発色層140を備えている。電界発色層140は帯電着色粒子141を絶縁性液体142中に分散させた液体層143を透明導電層144と絶縁層145の間に密封したものである。絶縁性の液体142は、高純度石油(エッソ社 商品名アイソパー)に、イオン性界面活性剤及び染料を含有した有機物を混合したものである。このイオン性界面活性剤が顔料を含有した有機物着色粒子141に吸着して該粒子が電気化学的に安定的に帯電する。この帯電着色粒子141が液142中に分散して電気泳動の性質を示す。
【0385】
この媒体14は、電界が加わらないか、所定の電界とは逆電界が加わっているときは、絶縁性液体142中の染料の色が見えているが、静電潜像が書き込まれると、帯電着色粒子141が透明導電層144の方へ移動し、その顔料が見える。
【0386】
この媒体14による画像表示についても、例えば図30や図31に示す画像形成装置を用いて、画像表示に先立って、媒体14の表面を予め一様に所定電位に帯電させ、帯電した媒体表面に静電潜像EIを形成し、該静電潜像に基づいて媒体内の絶縁性液体142に分散している帯電現像粒子(ここでは帯電着色粒子)141に対し表示しょうとする画像に対応する画素ごとに所定の静電場を形成することで画像表示させることができる。
【0387】
このように静電潜像形成に先立って予め媒体14表面を帯電させ、その帯電域に静電潜像を形成することで、従来の電気泳動型画像表示媒体による画像表示のように、予備帯電しないで画像形成する場合に比べると、画像保持性が良好となる。
【0388】
図34に示す可逆性画像表示媒体15は、回転粒子球型表示媒体例である。
【0389】
この媒体15は、透明支持基板156に支持された電界発色層150を有している。電界発色層150は、片面に着色151aした片面着色球151を絶縁性液体152で囲繞し、該液体ごと絶縁性保持媒質153に埋め込み、該媒質153の片面に透明導電層154を、反対側面に絶縁層155を形成したものである。
【0390】
片面着色球151は、例えばTiO2 を主成分とするガラスの白色球を適当な台上に一様に配置し上面からクロム等を蒸着することで作製される。その大きさは30μm〜100μmの範囲でよいが、10μm以下とすれば、より解像度が高くなる。
【0391】
この片面着色球151を、例えばエラストマーのような絶縁性保持媒質153中に分散させ、この媒質153をトルエン等の有機溶媒にイオン性界面活性剤を溶かした溶液に浸たすことにより膨潤させ、それにより片面着色球151の周囲に絶縁性液体152を溜まらせる。かくして片面着色球151は絶縁性液体層152で囲繞され、回転可能な状態で該液体ごと絶縁性保持媒質153に埋め込まれた状態が得られる。
【0392】
片面着色球151は一方の半球面と他方の半球面とが性質が異なるため、これら両面においてイオンの吸着の量が異なる。よって媒体15に電界をかけると、電界の方向により片面着色粒子151の面の向きが変化する。従つて片面着色球151の着色面が見えたり、着色していない面が見えたりすることで画像表示される。
【0393】
この媒体15による画像表示についても、例えば図30や図31に示す画像形成装置を用いて、画像表示に先立って、媒体15の表面を予め一様に所定電位に帯電させ、帯電した媒体表面に静電潜像EIを形成し、該静電潜像に基づいて媒体内の絶縁性液体152に浮遊している片面着色球151に対し表示しょうとする画像に対応する画素ごとに所定の静電場を形成することで画像表示させることができる。これにより画像保持性良好に画像表示できる。
【0394】
媒体14、15についても画像表示、画像消去を繰り返すことができる。
【0395】
なお媒体14、15は、良好に画像表示できるのであれば、先に説明した他の画像形成装置によって画像形成してもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0396】
本発明は、画像表示、画像消去を繰り返し行うことができる可逆性画像表示媒体及び可逆性画像表示方法を提供することに利用できる。
【符号の説明】
【0397】
CE1 連続溝形状の現像剤収容セル
w1 仕切り壁
S 画像表示媒体
CE2 独立タイプのセル
α 仕切り壁の厚さ
pt 隣り合う仕切り壁間隔
h 仕切り壁の高さ
CL1、CL2、CL3、CL4 現像剤移動抑制部材
β1、β2 柱状現像剤移動抑制部材の縦横の寸法
γ1、γ2 画像表示領域の一つの単位の縦横の寸法
DL、DLo 現像剤
WP 白色現像粒子
BP 黒色現像粒子
11 可逆性画像表示媒体
111 第1シート
112 第2シート
113 隔壁
114 第1電極
115 第2電極
115a 個別電極(画素電極)
116 現像剤収容セル
110 リ一ド部
117 電極選択回路
118a 正駆動電圧発生回路
118b 負駆動電圧発生回路
119 表示データ制御部
Bk 黒色表示部分
W 白色表示部分
12 可逆性画像表示媒体
121 第1シート
122 第2シート
123 隔壁
123a 縦仕切り壁
124 現像剤収容セル
120 封止部
120a 封止部120の部分
PC 感光体ドラム
CH スコロトロン帯電器
EX レーザー画像露光装置
IR イレーサランプ
R1 電極ローラ
R2 回転磁極ローラ
PW1 バイアス電源
13 可逆性画像表示媒体
122A 導電性膜
CR1 イオンフロー型の直接静電潜像形成装置
c1 コロナイオン発生部
c11 シールドケース
c12 コロナワイヤ
e1 書き込み電極
f1 書き込み電極制御回路
Ea 接地電極
CR2 イオンフロー型の直接静電潜像形成装置
c2 コロナイオン発生部
e2 書き込み電極
f2 書き込み電極制御回路
c21 シールドケース
c22 コロナワイヤ
Pc2 電源
e21 上部電極
e22 下部電極
Pc21 制御電源
Pc22 バイアス電源
f21 制御部
R3 電極ローラ
PC20 電源
CR3 マルチスタイラス方式の直接静電潜像形成装置
e3 電極
H3 マルチスタイラスヘッド
CR4 隣接制御電極を有するマルチスタイラス型静電潜像形成装置
e4 記録電極
e41 制御電極
H4 静電記録ヘッド
EL1、EL2 画像消去装置
R5 転写電極ローラ
PW5 電源
Mg N極、S極を交互に設けた部材
PW1’ 現像バイアス電源
2 予備帯電装置
21 チャージャ
22 接地電極
14 電気泳動型可逆性画像表示媒体
140 電界発色層
141 帯電着色粒子
142 絶縁性液体
143 液体層
144 透明導電層
145 絶縁層
146 支持基板
15 回転粒子球型可逆性画像表示媒体
150 電界発色層
151 片面着色球
151a 着色
152 絶縁性液体
153 絶縁性保持媒質
154 透明導電性層
155 絶縁層
156 支持基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のギャップをおいて対向する、少なくとも一方が光透過性を有する2枚のシートと、
前記2枚のシートの間に形成され、周囲を仕切り壁で囲まれた1又は2以上の現像剤収容セルと、
前記各セルに内包された乾式現像剤と
を有しており、
前記乾式現像剤は、互いに帯電極性の異なる、且つ、互いに光学的反射濃度の異なる少なくとも2種類の、摩擦帯電性を有する乾式現像粒子を含んでおり、
前記2枚のシートのうち少なくとも一方のシートの外表面の表面抵抗率は1010Ω/□〜1016Ω/□である
ことを特徴とする可逆性画像表示媒体。
【請求項2】
所定のギャップをおいて対向する、少なくとも一方が光透過性を有する2枚のシートと、
前記2枚のシートの間に形成され、周囲を仕切り壁で囲まれた1又は2以上の現像剤収容セルと、
前記各セルに内包された乾式現像剤と
を有しており、
前記乾式現像剤は、互いに帯電極性の異なる、且つ、互いに光学的反射濃度の異なる少なくとも2種類の、摩擦帯電性を有する乾式現像粒子を含んでおり、
前記2枚のシートのうち少なくとも一方のシートの外表面の表面抵抗率は107 Ω/□以下である
ことを特徴とする可逆性画像表示媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2010−250325(P2010−250325A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104624(P2010−104624)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【分割の表示】特願2000−372845(P2000−372845)の分割
【原出願日】平成12年12月7日(2000.12.7)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】