説明

可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料

【課題】 発色状態での経時による褐変を防止でき、発色時と消色時のコントラストに優れた可逆変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を提供する。
【解決手段】 (イ)電子供与性呈色性有機化合物として式(1)乃至(3)のいずれかのラクトン誘導体、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体からなる加熱消色型の可逆熱変色性組成物。
【化1】


(式中、R、R、R、Rは炭素数1〜10のアルキル基、R、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシル基を示す)
【化2】


(式中、R、R、R、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシル基を示す)
【化3】


(式中、R、R、R、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に関する。更に詳細には、長期間着色状態を維持した後でも消色時の褐変(色残り)が発生しない可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ラクトン誘導体からなる電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物との電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体からなる加熱消色型の可逆熱変色性組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記した従来の可逆熱変色性組成物は、消色状態において光照射による褐変を抑制することは可能であるとしても、発色状態での経時により褐変を生じ易く、よって、消色時に色残りが発生して可逆的な色変化が重要な要件である可逆熱変色性組成物の発色時と消色時のコントラストが大きく損なわれることがあった。
【特許文献1】特開2001−115153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前記した従来の可逆熱変色性組成物では成し得なかった、着色状態で経時した後の消色時の褐変を防止した可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記したように、経時による消色時の褐変を抑制する可逆熱変色性組成物を検討した結果、本発明者らは、電子授受反応による発色系において、(イ)電子供与性呈色性有機化合物として、一般式(1)乃至(3)で示されるラクトン誘導体と、これらの顕色剤として機能する(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前者の発消色を特定温度域で生起させる反応媒体を相溶させた系が前記要件を満たすことを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明可逆熱変色性組成物は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物として下記一般式(1)乃至(3)のいずれかのラクトン誘導体、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体からなる加熱消色型の可逆熱変色性組成物を要件とする。
【化1】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基を示し、R、Rはそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基、又は、炭素数1〜10のアルコキシル基を示す)
【化2】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基、又は、炭素数1〜10のアルコキシル基を示す)
【化3】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基を示す)
更には、完全消色温度(T) が30℃以上であることを要件とする。
更には、前記可逆熱変色性組成物を内包してなる可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、特定のラクトン誘導体を電子供与性呈色性有機化合物として用いることにより、発色状態での経時による褐変を防止することができ、発色時と消色時のコントラストに優れた可逆変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明の加熱消色型の可逆熱変色性組成物及びそれを用いた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を図1のグラフについて説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度T(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは完全発色状態を保持できる温度T(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは完全消色状態を保持できる温度T(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度T(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が大きい程、変色前後の各状態の保持が容易である。
ここで、TとTの差、或いは、TとTの差であるΔtが変色の鋭敏性を示す尺度であり、1℃乃至10℃の範囲が実用的である。
更に、変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態のみ存在させるためには、完全消色温度(T)が30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、且つ、発色開始温度(T)が20℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下である。
【0007】
以下に各(イ)、(ロ)、(ハ)成分について具体的に説明する。
前記(イ)電子供与性呈色性有機化合物の一般式(1)乃至(3)で示されるラクトン誘導体は青色系統の色調を示す。
一般式(1)で示される化合物としては、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3,3−ビス〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3,3−ビス〔4−(ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル〕−1(3H)−イソベンゾフラノン等を例示できる。
一般式(2)で示される化合物としては、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル〕−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−(1−ペンチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−(1−オクチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−(1−ヘキシル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル〕−3−(1−ヘキシル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン等を例示できる。
一般式(3)で示される化合物としては、
4,5,6,7−テトラクロロ−3,3−ビス(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3,3−ビス(1−ペンチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−3−(1−ヘキシル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン等を例示できる。
【0008】
前記(ロ)電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等が挙げられる。
又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0009】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、4−(4−(1−メチルエトキシフェニル)スルホニルフェノール、4−(4−ブチルオキシフェニル)スルホニルフェノール、4−(4−ペンチルオキシフェニル)スルホニルフェノール、4−(4−ヘキシルオキシフェニル)スルホニルフェノール、4−(4−ヘプチルオキシフェニル)スルホニルフェノール、4−(4−オクチルオキシフェニル)スルホニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、
4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)エタン、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、
1−フェニル−1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、それらの金属塩や、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸及びそれらの金属塩、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
更に、フルオロアルコール化合物を用いることもでき、以下に例示する。
2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピルベンゼン、
1、3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、
1、4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、
1、3−ビス(2−ヒドロキシメチル−ヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、
1、3−ビス(3−ヒドロキシ−1、1−ビストリフルオロメチルプロピル)ベンゼン、
1、4−ビス(2−ヒドロキシメチル−ヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、
1、4−ビス(3−ヒドロキシ−1、1−ビストリフルオロメチルプロピル)ベンゼン、
2−ヒドロキシメチル−ヘキサフルオロイソプロピルベンゼン、
3−ヒドロキシ−1、1−ビストリフルオロメチルプロピルベンゼン、
【0010】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
なお、マイクロカプセル化及び二次加工に応用する場合は低分子量のものは高熱処理を施すとカプセル系外に蒸散するので、安定的にカプセル内に保持させるために、炭素数10以上の化合物が好適に用いられる。
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、具体的にはデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等が挙げられる。
【0011】
エステル類としては、炭素数10以上のエステル類が有効であり、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類が挙げられ、具体的にはカプリル酸エチル、カプリル酸オクチル、カプリル酸ステアリル、カプリン酸ミリスチル、カプリン酸ドコシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸n−デシル、ミリスチン酸3−メチルブチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸ノニル、パルミチン酸シクロヘキシル、ステアリン酸n−ブチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸ペンタデシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、ベヘン酸イソプロピル、ベヘン酸ヘキシル、ベヘン酸ラウリル、ベヘン酸ベヘニル、安息香酸セチル、p−tert−ブチル安息香酸ステアリル、フタル酸ジミリスチル、フタル酸ジステアリル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジセチル、コハク酸ジラウリル、グルタル酸ジラウリル、アジピン酸ジウンデシル、アゼライン酸ジラウリル、セバシン酸ジ−(n−ノニル)、1,18−オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル、エチレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジステアレート、ヘキシレングリコールジパルミテート、1,5−ペンタンジオールジステアレート、1,2,6−ヘキサントリオールトリミリステート、1,4−シクロヘキサンジオールジデシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジミリステート、キシレングリコールジカプリネート、キシレングリコールジステアレート等が挙げられる。
【0012】
又、飽和脂肪酸と分枝脂肪族アルコールのエステル、不飽和脂肪酸又は分枝もしくは置換基を有する飽和脂肪酸と分岐状であるか又は炭素数16以上の脂肪族アルコールのエステル、酪酸セチル、酪酸ステアリル及び酪酸ベヘニルから選ばれるエステル化合物も有効である。
具体的には、酪酸2−エチルヘキシル、ベヘン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、カプリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、パルミチン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、ステアリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、カプロン酸2−メチルブチル、カプリル酸2−メチルブチル、カプリン酸2−メチルブチル、パルミチン酸1−エチルプロピル、ステアリン酸1−エチルプロピル、ベヘン酸1−エチルプロピル、ラウリン酸1−エチルヘキシル、ミリスチン酸1−エチルヘキシル、パルミチン酸1−エチルヘキシル、カプロン酸2−メチルペンチル、カプリル酸2−メチルペンチル、カプリン酸2−メチルペンチル、ラウリン酸2−メチルペンチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸3−メチルブチル、ステアリン酸1−メチルヘプチル、ベヘン酸2−メチルブチル、ベヘン酸3−メチルブチル、ステアリン酸1−メチルヘプチル、ベヘン酸1−メチルヘプチル、カプロン酸1−エチルペンチル、パルミチン酸1−エチルペンチル、ステアリン酸1−メチルプロピル、ステアリン酸1−メチルオクチル、ステアリン酸1−メチルヘキシル、ラウリン酸1,1−ジメチルプロピル、カプリン酸1−メチルペンチル、パルミチン酸2−メチルヘキシル、ステアリン酸2−メチルヘキシル、ベヘン酸2−メチルヘキシル、ラウリン酸3,7−ジメチルオクチル、ミリスチン酸3,7−ジメチルオクチル、パルミチン酸3,7−ジメチルオクチル、ステアリン酸3,7−ジメチルオクチル、ベヘン酸3,7−ジメチルオクチル、オレイン酸ステアリル、オレイン酸ベヘニル、リノール酸ステアリル、リノール酸ベヘニル、エルカ酸3,7−ジメチルオクチル、エルカ酸ステアリル、エルカ酸イソステアリル、イソステアリン酸セチル、イソステアリン酸ステアリル、12−ヒドロキシステアリン酸2−メチルペンチル、18−ブロモステアリン酸2−エチルヘキシル、2−ケトミリスチン酸イソステアリル、2−フルオロミリスチン酸2−エチルヘキシル、酪酸セチル、酪酸ステアリル、酪酸ベヘニル等が挙げられる。
【0013】
また、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を得るためには、5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が好適に用いられる。
更に、炭素数12以上の飽和直鎖二塩基酸と、分子内に芳香環を有する一価アルコールとから構成されるジエステル類を用いることもできる。
【0014】
炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等が挙げられる。
【0015】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナダカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等が挙げられる。
更には、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等が挙げられる。
【0016】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0017】
酸アミド類としては、アセトアミド、プロピオン酸アミド、酪酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベンズアミド、カプロン酸アニリド、カプリル酸アニリド、カプリン酸アニリド、ラウリン酸アニリド、ミリスチン酸アニリド、パルミチン酸アニリド、ステアリン酸アニリド、ベヘニン酸アニリド、オレイン酸アニリド、エルカ酸アニリド、カプロン酸N−メチルアミド、カプリル酸N−メチルアミド、カプリン酸N−メチルアミド、ラウリン酸N−メチルアミド、ミリスチン酸N−メチルアミド、パルミチン酸N−メチルアミド、ステアリン酸N−メチルアミド、ベヘニン酸N−メチルアミド、オレイン酸N−メチルアミド、エルカ酸N−メチルアミド、ラウリン酸N−エチルアミド、ミリスチン酸N−エチルアミド、パルミチン酸N−エチルアミド、ステアリン酸N−エチルアミド、オレイン酸N−エチルアミド、ラウリン酸N−ブチルアミド、ミリスチン酸N−ブチルアミド、パルミチン酸N−ブチルアミド、ステアリン酸N−ブチルアミド、オレイン酸N−ブチルアミド、ラウリン酸N−オクチルアミド、ミリスチン酸N−オクチルアミド、パルミチン酸N−オクチルアミド、ステアリン酸N−オクチルアミド、オレイン酸N−オクチルアミド、ラウリン酸N−ドデシルアミド、ミリスチン酸N−ドデシルアミド、パルミチン酸N−ドデシルアミド、ステアリン酸N−ドデシルアミド、オレイン酸N−ドデシルアミド、ジラウリン酸アミド、ジミリスチン酸アミド、ジパルミチン酸アミド、ジステアリン酸アミド、ジオレイン酸アミド、トリラウリン酸アミド、トリミリスチン酸アミド、トリパルミチン酸アミド、トリステアリン酸アミド、トリオレイン酸アミド、コハク酸アミド、アジピン酸アミド、グルタル酸アミド、マロン酸アミド、アゼライン酸アミド、マレイン酸アミド、コハク酸N−メチルアミド、アジピン酸N−メチルアミド、グルタル酸N−メチルアミド、マロン酸N−メチルアミド、アゼライン酸N−メチルアミド、コハク酸N−エチルアミド、アジピン酸N−エチルアミド、グルタル酸N−エチルアミド、マロン酸N−エチルアミド、アゼライン酸N−エチルアミド、コハク酸N−ブチルアミド、アジピン酸N−ブチルアミド、グルタル酸N−ブチルアミド、マロン酸N−ブチルアミド、アジピン酸N−オクチルアミド、アジピン酸N−ドデシルアミド等が挙げられる。
【0018】
本発明の可逆熱変色性組成物は、前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分を必須成分とする相溶体であり、各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜100、好ましくは0.1〜50、より好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200、より好ましくは5〜100の範囲である(前記割合はいずれも重量部である)。
又、各成分は各々2種以上の混合であってもよく、機能に支障のない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤等を添加することができる。
【0019】
前記三成分から少なくともなる均質相溶混合物は、マイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を形成することもでき、カプセル膜壁で保護することによって酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は他の溶剤成分と接触しても、その機能を低下させることがないことは勿論、耐熱安定性を向上させることができる。
更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセルは、平均粒子径0.5〜50μm、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは、0.5〜20μmの範囲が実用性を満たす。
前記マイクロカプセルは、最大外径の平均値が、50μmを越える系では、インキ、塗料、或いは熱可塑性樹脂中へのブレンドに際して、分散安定性や加工適性に欠ける。
一方、最大外径の平均値が0.1μm以下の系では、高濃度の発色性を示し難い。
また、カプセルを微小粒子化することにより、ΔH値は必須3成分の組成物の均質相溶体のΔHと比較し、更にΔHを拡大することができる。
前記マイクロカプセルは、内包物/壁膜=7/1〜1/1(重量比)の範囲が有効であり、壁膜の比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、好適には、内包物/壁膜=6/1〜1/1(重量比)である。
前記マイクロカプセル化は、従来より公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン−ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。
なお、マイクロカプセル顔料には、一般の染顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
【0020】
前記可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、必要により各種添加剤を含むビヒクル中に分散してスクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷等に用いられる印刷インキ、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等に用いられる塗料、インクジェット用インキ、マーキングペン用、ボールペン用、万年筆用、筆ペン用等の筆記具又は塗布具用インキ、クレヨン、絵の具、化粧料、繊維用着色液等の可逆熱変色性液状組成物として利用できる。
なお、前記支持体の材質は特定されず、総て有効であり、紙、合成紙、繊維、布帛、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁材、金属、木材、石材等を例示でき、平面状に限らず、凹凸状であってもよい。
前記支持体上に非熱変色性着色層(像を含む)が予め形成されているものにあっては、温度変化により前記着色層を隠顕させることができ、変化の様相を更に多様化させることができる。
更に、前記可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ワックス類等に溶融ブレンドしてペレット、粉末、又はペースト形態として可逆熱変色性成形用樹脂組成物として利用できる。
前記成形用樹脂を用いて、汎用の射出成形、押出成形、ブロー成形、又は注型成形等の手段により、任意形象の立体造形物、フィルム、シート、板、フィラメント、棒状物、パイプ等の形態の成形体が得られる。
前記添加剤としては、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、防かび剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。
なお、前記液状組成物や成形用樹脂組成物中に一般の染顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
前記液状物によって支持体に可逆熱変色層を形成した積層体、或いは、成形体上には、光安定剤及び/又は透明性金属光沢顔料を含む層を積層することによって耐光性を向上させたり、或いは、トップコート層を設けて耐久性を向上させることもできる。
前記透明性金属光沢顔料としては、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した顔料を例示できる。
【0021】
前記可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を用いた製品として具体的には、人形又は動物形象玩具、人形又は動物形象玩具用毛髪、人形の家や家具、衣類、帽子、鞄、靴等の人形用付属品、アクセサリー玩具、ぬいぐるみ、描画玩具、玩具用絵本、ジグソーパズル等のパズル玩具、積木玩具、ブロック玩具、粘土玩具、流動玩具、こま、凧、楽器玩具、料理玩具、鉄砲玩具、捕獲玩具、背景玩具、乗物、動物、植物、建築物、食品等を模した玩具、Tシャツ、トレーナー、ブラウス、ドレス、水着、レインコート、スキーウェア等の被服、靴や靴紐等の履物、ハンカチ、タオル、ふろしき等の布製身の回り品、絨毯、カーテン、カーテン紐、テーブル掛け、敷物、クッション、額縁、造花等の屋内装飾品、布団、枕、マットレス等の寝具、指輪、腕輪、ティアラ、イヤリング、髪止め、付け爪、リボン、スカーフ等のアクセサリー、筆記具、スタンプ具、消しゴム、下敷き、定規、粘着テープ等の文房具類、口紅、アイシャドー、マニキュア、染毛剤、付け爪、付け爪用塗料等の化粧品、コップ、皿、箸、スプーン、フォーク、鍋、フライパン等の台所用品、カレンダー、ラベル、カード、記録材、偽造防止用の各種印刷物、絵本等の書籍、手袋、ネクタイ、帽子、鞄、包装用容器、刺繍糸、運動用具、釣り具、歯ブラシ、コースター、時計、眼鏡、照明器具、冷暖房器具、楽器、カイロ、蓄冷剤、写真立て、財布等の袋物、傘、家具、乗物、建造物、温度検知用インジケーター、教習具を例示できる。
【実施例】
【0022】
実施例1
可逆熱変色性組成物の調製
(イ)成分として、4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン0.1重量部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン0.5重量部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン0.3重量部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0重量部を加温溶解して可逆熱変色性組成物を得た。
前記可逆熱変色性組成物の完全発色温度(T)は35℃、発色開始温度(T)は40℃、消色開始温度(T)は48℃、完全消色温度(T)は64℃であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0023】
実施例2
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として、4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン1.5重量部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン5.0重量部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0重量部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0重量部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0重量部、助溶剤40.0重量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液で微小滴になるように乳化分散し、65℃で約1時間反応を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5重量部を加え、更に6時間攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の完全発色温度(T)は−15℃、発色開始温度(T)は−7℃、消色開始温度(T)は48℃、完全消色温度(T)は62℃であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0024】
実施例3
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として、4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル〕−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0重量部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン8.0重量部、(ハ)成分としてステアリン酸ステアリル50.0重量部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0重量部、助溶剤40.0重量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液で微小滴になるように乳化分散し、65℃で約1時間反応を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5重量部を加え、更に6時間攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の完全発色温度(T)は43℃、発色開始温度(T)は52℃、消色開始温度(T)は45℃、完全消色温度(T)は58℃であり、温度変化により青緑色から無色に変色する。
【0025】
比較例1
可逆熱変色性組成物の調製
(イ)成分として、3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド0.1重量部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン0.5重量部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン0.3重量部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0重量部を均一に加温溶解して可逆熱変色性組成物を得た。
前記マイクロカプセル顔料の完全発色温度(T)は42℃、発色開始温度(T)は48℃、消色開始温度(T)は50℃、完全消色温度(T)は68℃であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0026】
比較例2
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として、3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1.0重量部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン5.0重量部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0重量部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0重量部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0重量部、助溶剤40.0重量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液で微小滴になるように乳化分散し、65℃で約1時間反応を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5重量部を加え、更に6時間攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の完全発色温度(T)は−18℃、発色開始温度(T)は−7℃、消色開始温度(T)は48℃、完全消色温度(T)は64℃であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0027】
比較例3
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド1.5重量部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン8.0重量部、(ハ)成分としてステアリン酸ステアリル50.0重量部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0重量部、助溶剤40.0重量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液で微小滴になるように乳化分散し、65℃で約1時間反応を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5重量部を加え、更に6時間攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の完全発色温度(T)は52℃、発色開始温度(T)は55℃、消色開始温度(T)は55℃、完全消色温度(T)は61℃であり、温度変化により青緑色から無色に変色する。
【0028】
試験試料の作成
実施例1及び比較例1で得られた可逆熱変色性組成物を一方の面が白色、他方の面が透明な厚み1mmのセルに封入して試験試料を得た。
実施例2、3、及び、比較例2、3で得られたマイクロカプセル顔料40重量部をそれぞれエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン52重量部、増粘剤5重量部、レベリング剤3重量部を均一混合して可逆熱変色性スクリーンインキを得た。
上質紙上に前記インキを用いて180メッシュスクリーン版にてスクリーン印刷を行い、可逆熱変色層を設けて試験試料(可逆熱変色性印刷物)を得た。
【0029】
経時消色試験
各試験試料の可逆熱変色層を発色させた状態で40℃の恒温室に2ヶ月間放置した後、色差計〔東京電色(株)製:TC−3600〕を用いて、各試料の可逆熱変色層が消色した状態の明度値を測定し、初期の明度値と比較した。
また、残色の状態を目視により観察した。
以下の表に経時消色試験結果を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
上記試験結果より、本発明の可逆熱変色性組成物及びそれを内包したマイクロカプセル顔料を用いた試料はいずれも消色時の褐変が殆ど生じることなく、一方、比較例で作成した可逆熱変色性組成物及びそれを内包したマイクロカプセル顔料を用いた試料はいずれも消色時の褐変を生じて可逆熱変色性組成物の重要な要件である発色時と消色時のコントラストを満足させていなかった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【符号の説明】
【0033】
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物として下記一般式(1)乃至(3)のいずれかのラクトン誘導体、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体からなる加熱消色型の可逆熱変色性組成物。
【化1】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基を示し、R、Rはそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基、又は、炭素数1〜10のアルコキシル基を示す。)
【化2】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基、又は、炭素数1〜10のアルコキシル基を示す。)
【化3】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
【請求項2】
完全消色温度(T) が30℃以上である請求項1記載の可逆熱変色性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の可逆熱変色性組成物を内包してなる可逆熱変色性マイクロカプセル顔料。

【図1】
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【公開番号】特開2006−193674(P2006−193674A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8590(P2005−8590)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】